上記のような貯蔵施設には、保管物を収容可能なピットが備えられている。トラックなどによりピット脇に移送された保管物は、搬送装置によってピット内に搬送される。ピットがピット蓋を備えている場合、保管物の収容作業の前後でピット蓋の開閉が必要となる。搬送装置がピット蓋の開閉に使用される場合、保管物を吊り上げるための吊り具を一旦取り外す必要があった。この結果、搬送装置は、吊り具着脱位置への走行、吊り具の取り外し、ピット位置への走行、ピット蓋の取り外し作業、再び吊り具着脱位置への走行、吊り具の装着、保管物の搬送作業という移動作業が必要となり、保管物の貯蔵作業に多くの時間を要するという問題があった。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ピット蓋を備えたピットへの保管物の貯蔵作業を効率的に実現することが可能な搬送装置、およびこれを備えた貯蔵施設を提供することを目的とする。
本発明の一の局面に係る搬送装置は、上面部に開閉可能なピット蓋を含むピットの内部に所定の保管物を搬送する搬送装置であって、前記ピットの上方において、水平方向に沿って配置された移動路と、前記保管物を吊り上げ可能な吊り具を備え、前記移動路に沿って移動可能な保管物搬送ユニットと、前記ピット蓋を開閉可能な開閉機構を備え、前記移動路に沿って移動可能なピット蓋開閉ユニットと、を有する。
本構成によれば、搬送装置には、保管物搬送ユニットとは別にピット蓋開閉ユニットが備えられている。このため、保管物搬送ユニットによってピットのピット蓋を開閉する必要がなく、ピット蓋の開閉のために保管物搬送ユニットから吊り具を取り外す作業が不要とされる。この結果、ピット蓋を備えたピットへの保管物の貯蔵作業を効率的に実現することが可能となる。
上記の構成において、前記ピット蓋開閉ユニットの前記開閉機構は、前記ピット蓋を吊り上げ可能なピット蓋吊り上げ部からなり、前記ピット蓋開閉ユニットは、前記ピット蓋を前記ピットから脱離させた後、前記移動路に沿って所定の待避位置まで前記ピット蓋を搬送した後、再び前記ピット蓋を前記ピットに装着することが望ましい。
本構成によれば、保管物の収容作業中にピット蓋を待機位置で待機させることができる。このため、保管物の収容作業を安全かつ効率的に実行することができる。
上記の構成において、前記ピット蓋吊り上げ部は、前記ピット蓋から上方に向かって突設された突出部に係合し、前記ピット蓋吊り上げ部に対する前記ピット蓋の位置決めを行う位置決め部を備えることが望ましい。
本構成によれば、ピット蓋吊り上げ部の下降に伴って、ピット蓋吊り上げ部に対するピット蓋の位置決め(芯出し)を行うことができる。
上記の構成において、前記位置決め部は、前記ピット蓋の前記突出部に備えられた係合部に係合可能な把持部と、前記突出部を前記把持部に向かって案内するガイド部と、を備えることが望ましい。
本構成によれば、ガイド部によってピット蓋の位置決めが短時間で確実に行われた後、ピット蓋吊り上げ部によってピット蓋を把持することができる。
上記の構成において、前記ピット蓋吊り上げ部は、所定の制御信号を受けて前記把持部を駆動し、前記把持部と前記係合部とを係合させることで前記ピット蓋を吊り上げ可能とする把持部駆動機構を備えることが望ましい。
本構成によれば、作業者によるピット蓋の玉掛け作業が不要とされ、ピット蓋の吊り上げ作業が効率的に実現される。
上記の構成において、前記ピット蓋開閉ユニットは、前記ピット蓋吊り上げ部に接続された巻き上げロープと、前記巻き上げロープの巻き上げおよび繰り出しを行うことで、前記ピット蓋吊り上げ部を上下移動させる巻き上げ機構と、前記巻き上げ機構を支持し、前記移動路に沿って移動可能な支持部と、前記支持部から下方に向かって突設された部材であって、前記ピット蓋吊り上げ部から上方に向かって突設された係合部材に係合可能な被係合部材と、を備えることが望ましい。
本構成によれば、ピット蓋吊り上げ部によって吊り上げられたピット蓋の振れを抑止することが可能となる。
上記の構成において、前記ピット蓋開閉ユニットは、前記把持部と前記係合部との係合状態を検出する検出部を備えることが望ましい。
本構成によれば、検出部によってピット蓋が把持された状態を検出することができる。
上記の構成において、前記ピット蓋開閉ユニットは、前記把持部と前記係合部との係合状態を表示する表示部を備えることが望ましい。
本構成によれば、表示部に表示された表示情報によってピット蓋が把持された状態を目視にて確認することができる。
上記の構成において、前記ピット蓋開閉ユニットは、前記ピット蓋に備えられた所定の照準位置に向かって検知光を照射する光発光部を備えることが望ましい。
本構成によれば、搬送装置に備えられた光発光部が検知光をピット蓋の照準位置に照射することで、ピット蓋の位置決め作業を容易かつ短時間で実行することができる。
本発明に係る貯蔵施設は、上記の何れか1項に記載の搬送装置と、前記ピット蓋を含む前記ピットと、を備える。
本構成によれば、貯蔵施設において、ピット蓋を備えたピットへの保管物の貯蔵作業を効率的に実現することが可能となる。
上記の構成において、前記ピットは、前記ピット蓋が装着されるピット本体を備え、前記ピット蓋は、前記ピット本体に係合可能なロック機構を備え、前記ピット蓋開閉ユニットは、前記ロック機構のロックおよび前記ロックの解除を可能とするロック駆動機構を備えることが望ましい。
本構成によれば、ピット蓋吊り上げ部がピット蓋を開閉する機能に加え、ピット蓋とピット本体とのロック状態を切り替える機能を備えている。このため、ピット蓋の開閉動作を効率的に実現することが可能とされる。
本発明によれば、ピット蓋を備えたピットへの保管物の貯蔵作業を効率的に実現することが可能な搬送装置、およびこれを備えた貯蔵施設が提供される。
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る貯蔵施設1の側面図であり、図2および図3は、貯蔵施設1の断面図である。なお、図2は、後記の保管物搬送装置30を含む位置での貯蔵施設1の断面図であり、図3は、後記のピット蓋搬送装置40を含む位置での貯蔵施設1の断面図である。また、図4は、貯蔵施設1の搬送装置10が備えるピット蓋搬送装置40の周辺の拡大断面図である。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本発明に係る貯蔵施設1の構造を説明するために便宜上示すものであり、貯蔵施設1の使用態様などを限定するものではない。
貯蔵施設1は、保管物を貯蔵、保管するための施設であり、保管物を搬送する搬送装置10と、ピット20と、を備える。以下、保管物として、使用済み核燃料等の放射性物質を収容するキャスクCを例に説明する。キャスクCは、円筒状の胴部を備えている(図2参照)。なお、本発明に係る搬送装置10および貯蔵施設1は、キャスクCを搬送および保管するものに限定されるものではない。他の実施形態において、金属や液体、廃棄物などが収容されたキャスクC以外の保管物が搬送、保管されるものでもよい。ピット20は、直方体形状からなるピット本体20A(図4)と、ピット本体20Aの上面部に配置された開閉可能な偏平直方体形状のピット蓋21(図4)と、を含む。貯蔵施設1が備える不図示の建屋の内部には、複数のピット20が前後および左右方向に沿って隣接して配置されている。
搬送装置10(図1)は、輸送トラックTによって貯蔵施設1に搬入されたキャスクCをピット20の内部に搬送する。図2に示すように、前後方向から見た断面視で、搬送装置10は、略三角形状の屋根部10Aを備えている。また、屋根部10Aの下方には、上端側が開口されたコの字型の筐体部10Bが備えられている。筐体部10Bは、前後方向に間隔をおいて一対配置されている(図1)。図1に示すように、一対の筐体部10Bの間には、複数のキャスクCが配置される。また、図2に示すように、一対の筐体部10Bは、それぞれ、左右方向に間隔をおいて配置され鉛直方向に沿って延びる一対の脚部102を備える。更に、各脚部102の下方には、搬送装置10が貯蔵施設1の建屋内を移動するための本体移動用車輪103が備えられている。搬送装置10が貯蔵施設1内の所定の位置に設置されている場合、図2に示すように、一対の脚部102の間に一のピット20が配置される。
搬送装置10は、更に、一対の移動路101を備える(図2)。移動路101は、一対の脚部102の上面部において、前後方向(水平方向)に沿って配置されている。移動路101は、ピット20よりも上方に配置されている。なお、図2、図3に示すように、移動路101の上には、作業者Hが通行することができる。
搬送装置10は、更に、保管物搬送装置30(保管物搬送ユニット)と、ピット蓋搬送装置40(ピット蓋開閉ユニット)と、を備える。
保管物搬送装置30は、一対の移動路101に跨るように配置されたユニットであり、上下移動することでキャスクCを吊り上げ可能な保管物吊り具301(吊り具)を備えている。また、保管物搬送装置30は、移動路101に沿って前後方向に移動可能とされる。図1に示すように、保管物搬送装置30が移動路101の前端部に移動されると、保管物吊り具301によって輸送トラックTからキャスクCが吊り上げられる。保管物搬送装置30は、移動路101に沿って後方に移動し、ピット20の内部にキャスクCを収容する。
ピット蓋搬送装置40は、ピット20のピット本体20Aに対してピット蓋21を着脱することが可能とされている。ピット蓋搬送装置40は、保管物搬送装置30と同様に一対の移動路101に跨るように配置されたユニットであり、移動路101に沿って前後方向に移動可能とされている。
図4を参照して、ピット蓋搬送装置40は、本体部40A(支持部)と、一対の移動用車輪40Bと、巻き上げウインチ401(巻き上げ機構)と、巻き上げドラム402と、一対のロープ403(巻き上げロープ)と、ピット蓋吊り上げ部404(開閉機構)と、を備える。
本体部40Aは、左右方向に長く延びる板状の部材であり、ピット蓋搬送装置40の各部材を支持する。一対の移動用車輪40Bは、本体部40Aの左右の両端部に備えられており、移動路101の上を転動する。この結果、本体部40Aが移動路101に沿って移動可能とされる。
巻き上げウインチ401は、本体部40Aの上に配置され、不図示の制御部によって駆動制御される。巻き上げドラム402は、巻き上げウインチ401によって回転駆動される円筒部材である。また、ロープ403の一端は巻き上げドラム402の周面に接続され、ロープ403の他端はピット蓋吊り上げ部404に接続されている。ピット蓋吊り上げ部404は、ピット蓋21を把持することでピット蓋21を吊り上げることが可能なユニットである。換言すれば、ピット蓋吊り上げ部404は、ピット蓋21を開閉する機能を備えている。
巻き上げウインチ401によって巻き上げドラム402が回転されると、ロープ403の巻き上げおよび繰り出しによって、ピット蓋吊り上げ部404が上下に移動される。この結果、ピット蓋吊り上げ部404によって把持されたピット蓋21が吊り上げられ、ピット20の内部(ピット本体20A)にキャスクCが収容可能とされる。
ピット蓋吊り上げ部404は、把持ユニット405(位置決め部)を備える(図4)。図5Aは、本実施形態に係る把持ユニット405の周辺のピット蓋搬送装置40およびピット蓋21の拡大断面図である。図5Bは、把持ユニット405の水平方向に沿った断面図である。把持ユニット405は、ピット蓋搬送装置40に対するピット蓋21の位置決めを行う機能を備えている。把持ユニット405は、ピット蓋吊り上げ部404の端部から下方に向かって突設された略L字型の筒形状を備えている(図5B)。そして、把持ユニット405の内部には、爪部406(把持部)が備えられている。また、把持ユニット405の角状部分の側部には、下方に向かって先拡がりの傾斜面からなるガイド405G(ガイド部)(図5A、図5B)が配置されている。なお、後記の図6に示すように、把持ユニット405は、ピット蓋吊り上げ部404の四隅にそれぞれ配置されている。
一方、ピット蓋21は、ピット蓋側把持金具211(突出部)を備える(図5A)。ピット蓋側把持金具211は、ピット蓋21の上面部から上方に向かって突設された筒形状からなる。ピット蓋側把持金具211は、上記の爪部406が係合可能な係合部211Gを備えている。なお、ピット蓋側把持金具211も4つの把持ユニット405に対応して、ピット蓋21上に4つ配置されている。
巻き上げウインチ401によってピット蓋吊り上げ部404が下降されると、やがて角状の把持ユニット405が筒状のピット蓋側把持金具211に係合(嵌合)することで、ピット蓋21のピット蓋吊り上げ部404に対する位置が決定される(芯出し)。また、ピット蓋吊り上げ部404が下降された際に、ピット蓋側把持金具211の上縁部がガイド405Gの内壁に当接することで、ガイド405Gがピット蓋側把持金具211の係合部211Gを爪部406に向かって案内する。
更に、ピット蓋搬送装置40は、レーザー発光装置40L(光発光部)を備える(図4)。一方、ピット蓋21は、ターゲットマーク21P(照準位置)を備える。レーザー発光装置40Lは、巻き上げドラム402の先端側付近において本体部40Aに支持されている。レーザー発光装置40Lは、下方のターゲットマーク21Pに向かってレーザー光Lを照射する。レーザー光Lがターゲットマーク21Pに照射されたことが不図示のカメラなどによって撮像されることや移動路101上の作業者Hによって、ピット蓋吊り上げ部404がピット蓋21の上方に位置することが確認可能とされる。更に、上記のように、ガイド405Gのガイド機能によって、ピット蓋21がピット蓋吊り上げ部404によって精度良く吊り上げられる。
図6は、本実施形態に係るピット蓋吊り上げ部404の平面図である。ピット蓋吊り上げ部404は、吊り上げ本体部404Aと、把持用駆動部407(駆動機構)と、把持用伝達部408(駆動機構)と、を備える。吊り上げ本体部404Aは、ピット蓋吊り上げ部404の本体部分であり、上面視で矩形形状を備えている。把持用駆動部407は、吊り上げ本体部404Aの右辺の内側に配置されている。把持用駆動部407は、不図示の制御部から遠隔操作で発信された制御信号を受けて駆動されるアクチュエーターである。把持用駆動部407は、出没動作を行う出没部407Aを備える(図9参照)。把持用伝達部408は、吊り上げ本体部404Aの右辺および前後の各辺に沿って延設されている。把持用伝達部408は、把持用駆動部407によって発生された駆動力を、4つの把持ユニット405に伝達する機能を備えている。把持用駆動部407および把持用伝達部408が、各把持ユニット405を駆動させると、把持ユニット405内の爪部406がピット蓋側把持金具211の係合部211Gと係合する。この結果、ピット蓋吊り上げ部404によるピット蓋21の吊り上げが可能となる。
図1を参照して、輸送トラックTによってキャスクCが貯蔵施設1に搬入されると、保管物搬送装置30が輸送トラックTの上方の吊り上げ位置に移動し、キャスクCを吊り上げる。この際、ピット蓋搬送装置40は、キャスクCの収容先のピット20からピット蓋21を吊り上げ、脱離させた後、移動路101に沿ってピット20よりも後方の待避位置までピット蓋21を搬送する。したがって、キャスクCの吊り上げ作業と、ピット蓋21の脱離作業とを同時に行うことが可能となる。なお、他の実施形態において、上記の作業は順に行われてもよい。保管物搬送装置30によってキャスクCがピット20の内部に収容されると、ピット蓋搬送装置40はピット蓋21をピット20の上方に搬送し、再びピット20に装着する。
このように、本実施形態では、保管物搬送装置30とは別にピット蓋開閉専用のピット蓋搬送装置40が設置されている。なお、保管物搬送装置30の対象となるキャスクC、ドラム缶等の重量は1〜10t程度である。そして、これらの保管物は、ピット20内で収容される定位置に精度良く心出しされる必要がある。このため、保管物搬送装置30は、キャスクCなどの保管物を精度良く芯出し、位置決めすべく、高度な位置制御が要求される。一方、ピット蓋21は、60〜70tとキャスクCなどと比較して大きな重量からなる。したがって、保管物搬送装置30によってピット蓋21を吊り上げることは好ましくない。従来、保管物搬送装置によってピット蓋を吊り上げるためには、ピット蓋が複数に分割されることが多く、作業効率が悪化していた。更に、保管物搬送装置30の保管物吊り具301を巻き上げる巻き上げ装置には、巻き上げ作業以外の回転や速度が要求されるため、ピット蓋21の重量に対応して吊り上げ荷重を大きくすることには限界があった。また、ピット開閉用のピット蓋搬送装置40は、竜巻などの緊急時にピット蓋21に代えて飛来物防止および/または飛散防止用のネット等、ハンドリングが向上した部材をピット20に装着することができる。
一方、本実施形態では、保管物搬送装置30とは異なるピット蓋搬送装置40がピット蓋21を吊り上げるため、ピット蓋搬送装置40の吊り上げ可能な定格荷重をピット蓋21にあわせて大きく設定することが可能となる。このため、ピット蓋21を分割する必要も低減され、キャスクCの収容作業が効率的に実現可能とされる。また、キャスクCの収容作業中に、保管物搬送装置30の保管物吊り具301を着脱する必要がないため、作業効率が更に向上する。また、キャスクCの収容作業中にピット蓋21を別の場所で待機させることができるため、キャスクCの収容作業を安全に実行することができる。
更に、本実施形態では、ピット蓋搬送装置40が把持ユニット405を備え、ピット蓋21がピット蓋側把持金具211を備えている。このため、ピット蓋吊り上げ部404の下降に伴って、ピット蓋吊り上げ部404に対するピット蓋21の位置決め(芯出し)を容易に行うことができる。特に、把持ユニット405のガイド405Gによってピット蓋21の位置決めを短時間で確実に行うことができる。
また、本実施形態では、ピット蓋搬送装置40がレーザー発光装置40Lを備えている。このため、レーザー発光装置40Lがレーザー光Lをピット蓋21のターゲットマーク21Pに照射することで、ピット蓋吊り上げ部404のピット蓋21に対する位置決め作業を容易かつ短時間で実行することができる。また、ピット蓋吊り上げ部404が把持用駆動部407を備えているため、作業者によるピット蓋21の玉掛け作業が不要とされ、ピット蓋21の吊り上げ作業が効率的に実現される。
次に、本発明の第2実施形態に係るピット蓋搬送装置40Mについて説明する。図7は、本実施形態に係る貯蔵施設の移動路101およびピット蓋搬送装置40Mの周辺の拡大断面図である。図8は、本実施形態に係る吊り具振れ止めガイド411および振れ止め用ピン412の拡大断面図である。なお、本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、ピット蓋搬送装置40Mが上記の吊り具振れ止めガイド411(被係合部材)および振れ止め用ピン412(係合部材)を備える点で相違するため、当該相違点について説明し、その他の共通する点の説明を省略する。
本実施形態では、ピット蓋吊り上げ部404から上方に向かって、複数の振れ止め用ピン412が突設されている。振れ止め用ピン412は先細形状を備えた円柱状部材である。なお、図7では、2つの振れ止め用ピン412が示されているが、実際には、前後方向にも間隔をおいて更に2つの振れ止め用ピン412が配置されているため、ピット蓋吊り上げ部404は4つの振れ止め用ピン412を備えている。なお、振れ止め用ピン412の数はこの態様に限定されるものではない。
また、吊り具振れ止めガイド411は、本体部40Aから下方に向かって突設されている。吊り具振れ止めガイド411は、内部に振れ止め用ピン412を収容可能な円筒部材であり、その先端(下端)には傾斜部411Gが備えられている。傾斜部411Gは、下方に進むに従って、吊り具振れ止めガイド411の内径が拡がるように傾斜されている。
このような構成によれば、ピット蓋21(図2)を吊り上げたピット蓋吊り上げ部404が本体部40Aに近づくと、振れ止め用ピン412が傾斜部411Gにガイドされながら、吊り具振れ止めガイド411の内部に収容されることで吊り具振れ止めガイド411と係合する。このため、ピット蓋吊り上げ部40によって吊り上げられたピット蓋21の振れを抑止することが可能となる。また、ピット蓋搬送装置40Mが移動路101に沿って移動する場合には、ピット蓋21の搬送時の揺れが抑止される。この結果、ピット20(図1)に対するピット蓋21の再装着時のピット蓋21の位置決め(芯出し)も容易に実現可能とされる。なお、他の実施形態において、振れ止め用ピン412と同様の形状が本体部40A側に備えられ、吊り具振れ止めガイド411と同様の形状がピット蓋吊り上げ部404側に備えられてもよい。
次に、本発明の第3実施形態に係るピット蓋搬送装置について説明する。図9は、本実施形態に係る貯蔵施設のピット蓋吊り上げ部404Pの拡大平面図である。図10は、本実施形態に係る表示部413および爪部406、ピット蓋側把持金具211の拡大図である。なお、本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、ピット蓋吊り上げ部404Pが表示部413および開閉センサ414(検出部)を備える点で主に相違するため、当該相違点について説明し、その他の共通する点の説明を省略する。
図9を参照して、開閉センサ414は、ピット蓋吊り上げ部404Pの吊り上げ本体部404Aに備えられている。開閉センサ414は、第1センサ部414Aおよび第2センサ部414Bを備える。また、把持ユニット405に伝達される駆動力を発生する把持用駆動部407は、出没部407Aの先端部に検出片415を備えている。把持ユニット405への駆動力の伝達に際して、把持用駆動部407の出没部407Aが後方に突出されると、検出片415の接点が第2センサ部414Bから第1センサ部414Aに切り替えられる。この結果、把持ユニット405の爪部406とピット蓋側把持金具211(図5A)との係合状態、換言すれば、ピット蓋21の吊り上げが可能となったことが、開閉センサ414によって検出される。このように、開閉センサ414は、ピット蓋21が把持されている状態を検出可能な電気的なインターロックとして機能する。
更に、表示部413は、一の把持ユニット405に隣接して配置された表示装置である。表示部413は、把持ユニット405の爪部406とピット蓋側把持金具211との係合状態を表示する機能を備えている。表示部413は、把持ユニット405の爪部406の回転動作に連動した機械的なロック表示機構である。すなわち、図10(A)に示すように、爪部406とピット蓋側把持金具211とが係合していない場合、表示部413は「開」状態を表示する。一方、図10(B)に示すように、爪部406とピット蓋側把持金具211とが係合し、ピット蓋21が把持されている状態では、表示部413は「閉」状態を表示する。このように、表示部413が備えられていることによって、本体部40A(図4)や搬送装置10の屋根部10Aに備えられた不図示のカメラによって、爪部406とピット蓋側把持金具211との機械的なロック状態を確認することが可能となる。また、移動路101(図2)上の作業者Hによって、表示部413の表示情報が目視で確認されてもよい。このため、電気的にロック状態を検出する開閉センサ414に誤動作が生じた場合でも、ピット蓋21が把持されている状態を安定して検出することが可能となる。なお、他の実施形態において、表示部413は開閉センサ414の検出情報を表示するものでもよい。
次に、本発明の第4実施形態に係るピット蓋搬送装置40Nについて説明する。図11は、本実施形態に係る貯蔵施設のピット蓋搬送装置40Nのピット蓋吊り上げ部404およびピット20の周辺の拡大断面図である。図12は、ピット蓋搬送装置40Nのピット蓋吊り上げ部404の拡大平面図である。図13は、本実施形態に係るピット蓋21の平面図である。また、図14は、図13のピット蓋21の一部を拡大した拡大図である。図15は、本実施形態に係るロック爪223およびピット20の上面部の周辺の拡大断面図である。図16は、ロック爪223およびピット20のロック係合部20Sの周辺の平面図である。なお、本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、ピット蓋21およびピット本体20Aが互いにロックされる構成を備える点で主に相違するため、当該相違点について説明し、その他の共通する点の説明を省略する。
図11、図13および図15を参照して、ピット蓋21はロック爪223(ロック機構)を備える。ロック爪223は、ピット蓋21の下面部から突設された突片である。ロック爪223の先端は側面視で略三角形状からなるとともに、上面視で略矩形形状からなる。また、ピット本体20Aは、ロック係合部20Sを備える。ロック係合部20Sは、ピット本体20Sの上面部(ピット上面部20T)に形成された空間部である。ロック係合部20Sの上方部分には、ピット上面部20Tと面一の天井部20S2と、天井部20S2に形成された入り口20S1とが配置されている。なお、ロック係合部20Sの入り口20S1は、ロック係合部20Sの内部と比較して開口が小さく設定されている。ロック爪223は、ロック係合部20Sに係合可能とされる。ロック爪223を上方から見た場合、ロック爪223の長辺は入り口20S1の開口よりも長く、ロック爪223の短辺は入り口20S1の開口よりも短く設定されている。ロック爪223のロック係合部20Sに対する係合は、ロック爪223が入り口20S1からロック係合部20S内に挿入された後、鉛直方向に延びる軸線周りに90度回転されることで行われる。
ロック爪223がロック係合部20Sに係合されると(図16(A)参照)、ロック爪223の長辺が天井部20S2に係合するため、ピット蓋21がピット本体20Aにロックされる。この場合、ピット蓋21はピット本体20Aから脱離することができない。一方、ロック爪223が上記軸線回りに回転され、ロック爪223のロック係合部20Sに対する係合が解除されると(図16(B)参照)、ピット蓋21のピット本体20Aに対するロックが解除される。この場合、ピット蓋21はピット本体20Aから上方に脱離可能とされる。すなわち、ピット蓋吊り上げ部404によるピット蓋21の吊り上げが可能となる。
ピット蓋吊り上げ部404は、ピット蓋ロック開閉装置421(図11)と、ロック用駆動部422(図12)(ロック駆動機構)と、を備える。ピット蓋ロック開閉装置421は、ピット蓋吊り上げ部404の上面部から下面部に貫通するように配置された駆動伝達機構である。ロック用駆動部422は、ロック爪223を回転させる駆動力を発生し、ロック爪223のロックおよび前記ロックの解除を可能とする。ロック用駆動部422は、不図示の制御部によって遠隔操作される。また、図11、図13を参照して、ピット蓋21は、駆動入力部220と、ロック伝達部221と、リンク支点部222と、を備える。駆動入力部220は、ピット蓋21の上面に配置され、ピット蓋ロック開閉装置421と連結可能とされる。また、ロック伝達部221は、駆動入力部220に連結されたリンク機構である。ロック伝達部221は、リンク支点部222(図13、図14)を支点として前後方向に沿って往復運動する。ロック伝達部221は、駆動入力部220に入力された駆動力をロック爪223に伝達する。
ピット蓋吊り上げ部404の把持ユニット405(図11)がピット蓋21のピット蓋側把持金具211に係合すると、ピット蓋ロック開閉装置421(図11)が駆動入力部220に連結される。そして、把持用駆動部407(図12)によって把持ユニット405の爪部406が駆動されると、ピット蓋吊り上げ部404によってピット蓋21が把持される。更に、ロック用駆動部422(図12)が駆動され、ロック爪223(図15)のロック係合部20Sに対するロックが解除されることで、ピット蓋吊り上げ部404によるピット蓋21の吊り上げが可能とされる。
このように、本実施形態では、ピット蓋吊り上げ部404がピット蓋21の開閉およびピット蓋21を吊り上げる機能に加え、ピット蓋21とピット本体20Aとのロック状態を切り替える機能を備えている。このため、ピット蓋21の着脱動作を効率的に実現することが可能とされる。
以上、本発明の各実施形態に係る搬送装置、およびこれを備えた貯蔵施設について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明に係る搬送装置、貯蔵施設として、以下のような変形実施形態が可能である。
(1)上記の第1から第4実施形態では、それぞれの実施形態の特徴的な構造について説明したが、本発明に係る搬送装置および貯蔵施設は、各実施形態の特徴を部分的に、または全て備える態様であってもよい。
(2)また、上記の第1実施形態では、搬送装置10が本体移動用車輪103を備え、前後方向に沿って移動可能とされる態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。搬送装置10の筐体部10Bは貯蔵施設の建屋に固定されたものでもよい。
(3)また、上記の各実施形態では、ピット蓋搬送装置40がピット蓋21を吊り上げることで、ピット蓋21をピット本体20Aから脱離させる態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ピット蓋21は、所定のヒンジ部(支点)を中心にピット本体20Aに対して回動されることで開閉可能とされる構造でもよい。この場合、ピット蓋搬送装置40に代わる、本発明に係るピット蓋開閉装置が、ピット蓋21を把持しながら回動させ、ピット蓋21を開閉する態様でもよい。