JP2017180660A - 制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】油圧駆動式の摩擦係合装置を制御対象とする制御装置において、低温時にも、ソレノイド弁を適正に起動させつつ油圧サーボに適正量の油を供給可能とする。【解決手段】摩擦係合装置を制御対象とする制御装置は、ソレノイド弁に対する電流指令(C)を出力する指令出力部を備える。指令出力部は、摩擦係合装置の係合動作を開始する場合に、第一設定時間(T1)の間、第一指令値(I1)の大きさの第一電流指令(C1)を出力するとともに、油温が予め定められた設定温度以下の場合に、第一電流指令(C1)の出力前に、第二設定時間(T2)の間、第一指令値(I1)よりも大きい第二指令値(I2)の大きさの第二電流指令(C2)を出力する。【選択図】図4
Description
本発明は、油圧駆動式の摩擦係合装置を制御対象とする制御装置に関する。
例えば車両に搭載されて用いられる自動変速装置には、多くの場合、クラッチやブレーキ等の摩擦係合装置が備えられている。これらの摩擦係合装置は、例えば油圧駆動式に構成される場合があり、例えばピストンとシリンダとを有する油圧サーボに供給される油圧に応じて、係合の状態が制御される。油圧サーボに供給される油圧は、具体的には、制御装置から出力される電気信号(電流指令)に応じて動作するソレノイド弁により、その大きさが制御される。
摩擦係合装置を係合させる場合に、その係合動作に先立ち、ファストフィル制御を実行することが、例えば特開平11−82704号公報(特許文献1)に開示されている。ファストフィル制御は、油圧サーボ内に油を満たすとともに摩擦板のクリアランス分だけピストンをストロークさせて、摩擦係合装置を、当該摩擦係合装置に伝達トルク容量が生じる直前の状態とする制御である。かかるファストフィル制御では、ソレノイド弁に対する電流指令は、所定時間に亘って継続する、予め定められた油圧に対応する電流指令値の形態で出力される。
上記のようなファストフィル制御は、ソレノイド弁の内部のスプールが正常にスライドすることを前提としている。しかし、例えば低温時に作動油の粘性が高まると、それに応じてスプールの摺動抵抗が増大する。すると、通常のファストフィル制御用の電流指令によってでは、スプールの摺動抵抗に対して磁気吸引力が不足し、スプールをスライド移動させることができない場合がある。その結果、摩擦係合装置のガタ詰めが不十分となって、その後の実際の係合動作が遅延する可能性がある。一方、ファストフィル制御用の電流指令値を高くすることも考えられるが、単純に指令値を高くするだけでは、油圧サーボへの作動油の予備充填量が過剰となる可能性がある。その結果、摩擦係合装置に意図せぬ伝達トルク容量が生じて、変速ショックが発生する可能性がある。
油圧駆動式の摩擦係合装置を制御対象とする制御装置において、低温時にも、ソレノイド弁を適正に起動させつつ油圧サーボに適正量の油を供給可能とすることが望まれる。
本開示に係る制御装置は、
油圧サーボに供給される油圧に応じて係合の状態が制御される油圧駆動式の摩擦係合装置を制御対象とする制御装置であって、
前記油圧サーボへの供給油圧を調整するソレノイド弁に対する電流指令を出力する指令出力部を備え、
前記指令出力部は、前記摩擦係合装置の係合動作を開始する場合に、第一設定時間の間、第一指令値の大きさの第一電流指令を出力するとともに、油温が予め定められた設定温度以下の場合には、前記第一電流指令の出力前に、前記第一設定時間よりも短い第二設定時間の間、前記第一指令値よりも大きい第二指令値の大きさの第二電流指令を出力する。
油圧サーボに供給される油圧に応じて係合の状態が制御される油圧駆動式の摩擦係合装置を制御対象とする制御装置であって、
前記油圧サーボへの供給油圧を調整するソレノイド弁に対する電流指令を出力する指令出力部を備え、
前記指令出力部は、前記摩擦係合装置の係合動作を開始する場合に、第一設定時間の間、第一指令値の大きさの第一電流指令を出力するとともに、油温が予め定められた設定温度以下の場合には、前記第一電流指令の出力前に、前記第一設定時間よりも短い第二設定時間の間、前記第一指令値よりも大きい第二指令値の大きさの第二電流指令を出力する。
この構成によれば、油温が設定温度よりも高い場合には、ソレノイド弁に対する指令出力部からの第一電流指令により、摩擦係合装置の油圧サーボに、当該摩擦係合装置に伝達トルク容量が生じない程度に油を予備充填する(以下、「ファストフィルを行う」と言う。)ことができる。また、油温が設定温度以下の場合には、まず、ソレノイド弁に対する指令出力部からの第二電流指令により、通常のファストフィルを行う場合に比べて大きい磁気吸引力を短時間だけ発生させて、ソレノイド弁を適正に起動させることができる。一旦ソレノイド弁が起動すると、その後は第一電流指令に従い、油圧サーボに適正量の油を供給してファストフィルを適切に行うことができる。
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
制御装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、車両用の自動変速装置に備えられる油圧駆動式の摩擦係合装置5を制御対象とする制御装置1を例として説明する。摩擦係合装置5は、例えば2つの回転部材どうしを係合状態で選択的に一体回転させるクラッチ(摩擦クラッチ)や、回転部材を係合状態で選択的に回転停止させるブレーキ(摩擦ブレーキ)である。摩擦係合装置5は、当該摩擦係合装置5が有する油圧サーボ50に供給される油圧に応じて、係合の状態が制御される。
なお、摩擦係合装置5の係合の状態には、係合状態と解放状態とが含まれる。係合状態は、その摩擦係合装置に伝達トルク容量が生じている状態を意味する。伝達トルク容量は、その摩擦係合装置が摩擦により伝達可能な最大トルクである。伝達トルク容量の大きさは、その摩擦係合装置に備えられる一対の係合部材(入力側係合部材と出力側係合部材)を相互に押し付けあう圧力(係合圧)に比例して定まる。係合状態には、一対の係合部材間に回転速度差(スリップ)がない直結係合状態と、回転速度差があるスリップ係合状態とが含まれる。解放状態は、その摩擦係合装置に伝達トルク容量が生じていない状態を意味する。
図1に示すように、油圧サーボ50は、シリンダ51と、このシリンダ51に対して油密状に嵌合するピストン52とを有する。シリンダ51とピストン52との間に、油圧室53が形成されている。油圧室53は、油路7を介して、油圧制御装置(バルブボディ)に設けられるソレノイド弁3の出力ポートに連通している。また、油圧サーボ50は、ピストン52を油圧室53側に向けて付勢するリターンスプリング54を有する。油圧サーボ50は、ソレノイド弁3からの調整圧Pslが油路7を介して油圧室53に供給されると、リターンスプリング54の付勢力に抗してピストン52をスライド移動させ、摩擦係合装置5の複数の摩擦板58どうしを圧接する。
制御装置1は、例えばマイクロコンピュータを有する電子制御ユニットで構成されている。制御装置1は、摩擦係合装置5の制御用に専用に設置されても良いし、車両の各部の動作を統合制御する車両ECU(Electronic Control Unit)と一体的に設置されても良い。制御装置1は、指令出力部11を備えている。この指令出力部11は、油圧サーボ50への供給油圧を調整するソレノイド弁3に対する電流指令Cを出力する。
図1では詳細な構造の図示を省略しているが、良く知られているように、ソレノイド弁3は、ソレノイド部とバルブ部とを備えている。ソレノイド部は、筒状コイルが外装された固定コアと、その固定コアの径方向内側に配置された可動コア(プランジャ)とを有する。ソレノイド部は、筒状コイルに通電することによって発生する磁気吸引力を利用して可動コアを軸方向に移動させる。バルブ部は、入力ポート・出力ポート・ドレンポート・フィードバックポート等の各種ポートが形成されたスリーブと、そのスリーブの内部に配置されたスプールとを有する。スプールは、可動コアの軸方向移動に連動して、軸方向に移動可能となっている。
ソレノイド弁3は、指令出力部11からの電流指令Cに応じた電流を筒状コイルに流し、磁気吸引力を発生させて可動コア及びスプールを軸方向にスライド移動させる。そして、ソレノイド弁3は、当該ソレノイド弁3に供給される元圧PSをスプール位置に応じた油圧(調整圧Psl)に調圧して、油圧サーボ50(油圧室53)に供給する。元圧PSは、例えばアクセル開度やスロットルバルブの開度等に応じて生成されるライン圧や、当該ライン圧を減圧して生成されるセカンダリ圧又はモジュレータ圧等であって良い。
なお、電流指令Cは、摩擦係合装置5が係合状態とされる場合には、当該摩擦係合装置5に目標伝達トルク容量を生じさせる油圧指令に応じて定まる。つまり、基本的には、電流指令Cは油圧指令と一対一に対応していると考えることができる。但し、本実施形態では、電流指令Cは、後述するように低温時起動制御において作動油の粘性抵抗に抗して単にソレノイド弁3のスプールをスライド移動させ始める(以下、「ソレノイド弁3を起動する」と言う。)ための指令をも含む。本実施形態において、電流指令Cは、通常の油圧指令に対応する指令と、ソレノイド弁3を起動させるための追加的な指令(必要な場合のみ)とを組み合わせた概念である。
また、自動変速装置に複数の摩擦係合装置5が備えられる場合には、個々の摩擦係合装置5に対してそれぞれ1つのソレノイド弁3が設けられても良いし、いくつか(例えば2つ)の摩擦係合装置5で1つのソレノイド弁3が共用されても良い。後者の場合には、ソレノイド弁3と、当該ソレノイド弁3からの調整圧Pslが選択的に供給される複数の摩擦係合装置5とを接続する油路の分岐部に、切替バルブが設けられる。いずれにしても、複数の摩擦係合装置5に対して、複数(摩擦係合装置5と同数又はそれよりも少ない個数)のソレノイド弁3が油圧制御装置に設けられる。かかる場合には、制御装置1(指令出力部11)は、複数のソレノイド弁3に対する電流指令Cを、個別に出力する。
一般的な自動変速装置においては、複数の摩擦係合装置5のうちの特定の2つの摩擦係合装置5の直結係合状態で、特定の変速段が形成される。車両の走行状態(例えば車速及びアクセル開度等)の変化に応じて変速段が変更される場合には、クラッチ・トゥ・クラッチ変速が実行される。このクラッチ・トゥ・クラッチ変速では、それまで直結係合状態とされていた2つの摩擦係合装置5のうちの一方を直結係合状態に維持したまま、他方を解放状態とする。それと並行して、変更後の変速段を形成するために新たに係合させることが必要な他の摩擦係合装置5を、スリップ係合状態を経て直結係合状態とする。以下、クラッチ・トゥ・クラッチ変速において新たに直結係合状態とされる摩擦係合装置5を、「係合側摩擦係合装置」と言う場合がある。
係合側摩擦係合装置に対応するソレノイド弁3に対する電流指令C(以下、「係合側電流指令CE」と言う。)の基本的な形態について説明する。この係合側電流指令CEは、図2に示すように、ファストフィル指令C1と、待機指令C3と、スイープ指令C4とを含む。ファストフィル指令C1、待機指令C3、及びスイープ指令C4は、記載の順に連続して現れる指令となっている。
ファストフィル指令C1は、係合側摩擦係合装置の係合動作を開始する場合に、最初に出力される指令である。ファストフィル指令C1は、第一設定時間T1と第一指令値I1とによって規定される。具体的には、ファストフィル指令C1は、第一設定時間T1に亘って継続する、第一指令値I1の大きさの電流指令値とされている。第一設定時間T1及び第一指令値I1は、例えばソレノイド弁3から油圧サーボ50までの油路7の容積及び油圧サーボ50の容積等に応じて設定される。
第一指令値I1は、例えば、ソレノイド弁3から供給される作動油を油路7と油圧サーボ50とに急速に充填可能な油圧に基づいて設定される。第一設定時間T1は、例えばソレノイド弁3で調圧された作動油が油路7と油圧サーボ50とに充填されるのに要する時間以上(好ましくは必要十分な時間)に設定される。第一設定時間T1及び第一指令値I1は、学習制御によって設定値が更新されても良い。本実施形態では、ファストフィル指令C1が「第一電流指令」に相当する。
待機指令C3は、係合側摩擦係合装置の係合動作を開始する場合に、ファストフィル指令C1に引き続いて出力される指令である。待機指令C3は、第三設定時間T3と第三指令値I3とによって規定される。具体的には、待機指令C3は、第三設定時間T3に亘って継続する、第一指令値I1よりも小さい第三指令値I3の大きさの電流指令値とされている。第三設定時間T3及び第三指令値I3は、例えばリターンスプリング54のバネ定数及び油圧サーボ50の容積等に応じて設定される。
第三指令値I3は、例えば、リターンスプリング54の付勢力に抗して摩擦板58のクリアランス分だけピストン52をストロークさせて、摩擦係合装置5を、当該摩擦係合装置5に伝達トルク容量が生じる直前の状態とするための油圧(以下、「ストロークエンド圧」と言う。)に基づいて設定される。第三設定時間T3は、例えばソレノイド弁3でストロークエンド圧に調圧された作動油が油圧室53内で安定化するのに要する時間以上(好ましくは必要十分な時間)に設定される。第三設定時間T3及び第三指令値I3は、学習制御によって設定値が更新されても良い。
スイープ指令C4は、係合側摩擦係合装置の係合動作を実際に実施する場合に、待機指令C3に引き続いて出力される指令である。スイープ指令C4は、本実施形態では次第に上昇する電流指令値とされている。スイープ指令C4は、待機指令C3における第三指令値I3を援用しつつ、スイープ勾配αによって規定される。具体的には、スイープ指令C4は、第三指令値I3を初期値とし、時間の経過に伴いスイープ勾配αに比例して上昇する電流指令値とされている。スイープ勾配αは、例えば予め定められた目標変速時間等に応じて設定される。
図示は省略されているが、係合側電流指令CEは、スイープ指令C4の後に、直結指令をさらに含んでも良い。直結指令は、摩擦係合装置5が伝達するトルクの変動によらずに当該摩擦係合装置5を定常的に直結係合状態とする油圧である完全係合油圧に基づいて設定される。
上述したようなファストフィル指令C1、待機指令C3、及びスイープ指令C4を含む係合側電流指令CEに従い、ソレノイド弁3は、調整圧Pslに調圧された作動油を油圧室53に供給する。なお、図2には、係合側電流指令CEを太実線で示すとともに、係合側電流指令CEに対して所定の制御遅れを伴って油圧室53に作用する実油圧を細実線で示している。この図から良く理解できるように、ファストフィル指令C1に応じて、油圧室53内の実油圧が迅速にストロークエンド圧付近まで上昇しているとともに、待機指令C3に応じて、油圧室53内の実油圧がストロークエンド圧付近で安定している。このようなファストフィル制御及び待機制御を経てから係合側摩擦係合装置の係合動作を実際に実施することで、その後のトルクフェーズを遅滞なく適切に進行させることができる。なお、トルクフェーズは、変速動作のうち、係合側摩擦係合装置と解放される他の摩擦係合装置5との間のトルク分担比を変更するフェーズである。
ところで、例えば低温時に作動油の粘性が高まると、それに応じてソレノイド弁3の内部においてスプールの摺動抵抗が増大する。すると、上述した通常のファストフィル指令C1によってでは、スプールに作用する低温の油の大きな摺動抵抗に対して磁気吸引力が不足し、スプールをスライド移動させることができない場合がある。その結果、図2に破線で示すように、油圧室53内の実油圧の立ち上がりが遅れてしまう場合がある。
そこで本実施形態の指令出力部11は、図3に示すように、油温が予め定められた設定温度である設定油温ts以下の場合には、ファストフィル指令C1の出力前に低温時起動指令C2を出力する。これにより、制御装置1は、ファストフィル制御の実行前に低温時起動制御を実行する。自動変速機内のオイルパン又は油圧制御装置若しくはいずれかの油路には、作動油の温度を検出する油温センサが設けられている。設定油温tsは、例えば作動油の粘性が高くなって、スプールの摺動抵抗がファストフィル制御の実行時における筒状コイルへの通電によって生じる磁気吸引力よりも大きくなるような温度に基づき、所定の余裕代を加味して設定されている。
油温が設定温度以下の場合に出力される低温時起動指令C2は、第二設定時間T2と第二指令値I2とによって規定される。具体的には、低温時起動指令C2は、図4に示すように、第一設定時間T1よりも短い第二設定時間T2に亘って継続する、第一指令値I1よりも大きい第二指令値I2の大きさの電流指令値とされている。ここで、第二設定時間T2の長さ設定に関して「第一設定時間T1よりも短い」とは、油温が設定温度よりも高い場合のファストフィル指令C1における第一設定時間T1との比較において、当該第一設定時間T1よりも短いことを意味する。
第二指令値I2は、例えば筒状コイルへの通電によって生じる磁気吸引力が低温の作動油の粘性によるスプールの摺動抵抗よりも大きくなるような値に設定される。第二指令値I2は、第一指令値I1の例えば1.01倍〜2倍程度の値に設定される。第二設定時間T2は、例えば上記の磁気吸引力が摺動抵抗に勝った場合にスプールが実際に動き出すまでに要する時間以上(好ましくは必要十分な時間)に設定される。第二設定時間T2は、第一設定時間T1の例えば1/100〜1/2程度の長さに設定される。本実施形態では、低温時起動指令C2が「第二電流指令」に相当する。
第二設定時間T2及び第二指令値I2は、予め一定の値に設定されていても良いし、他のパラメータに依存して可変に設定されても良い。本実施形態では、第二設定時間T2及び第二指令値I2は、油温や、ソレノイド弁3の前回動作時からの動作間隔に応じて可変に設定されている。
この点について詳述すると、第二指令値I2は、油温及びソレノイド弁3の前回動作時からの動作間隔に応じて可変に設定される。本実施形態では、第二指令値I2は、以下に述べる油温に基づく大きさ設定と、ソレノイド弁3の前回動作時からの動作間隔に基づく大きさ設定との両方の観点を総合的に考慮して設定される。
第二指令値I2は、図5に示すように、油温が低くなるに従って高くなるように設定される。より具体的には、第二指令値I2は、油温が設定油温tsよりも低くなるに従って一定の変化率で高くなり、且つ、油温が設定油温tsよりも低い温度に予め定められた第一油温t1以下となる場合には油温によらずに一定値となるように設定される。なお、油温が設定油温tsより高い場合の第二指令値I2は、ファストフィル指令C1における第一指令値I1に等しい値に設定される。このため、油温が設定油温tsよりも高く通常であれば低温時起動制御が実行されない場合に仮に低温時起動指令C2が出力されたとしても、問題なく通常のファストフィル制御を実行することができる。
また、第二指令値I2は、図6に示すように、ソレノイド弁3の前回動作時からの動作間隔が短くなるに従って低くなるように設定される。ソレノイド弁3の前回動作とは、今回係合される摩擦係合装置5を前回係合させた際のソレノイド弁3の動作である。ソレノイド弁3の前回動作時からの動作間隔とは、今回係合される摩擦係合装置5を前回の係合後に解放させた際のソレノイド弁3の動作終了時(筒状コイルへの通電終了時)からの経過時間である。第二指令値I2は、より具体的には、前回動作時からの動作間隔が予め定められた設定動作間隔ΔTsよりも短くなるに従って一定の変化率で低くなり、且つ、前回動作時からの動作間隔が設定動作間隔ΔTsよりも短い長さに予め定められた第一動作間隔ΔT1以下となる場合には油温によらずに一定値となるように設定される。
なお、前回動作時からの動作間隔が第一動作間隔ΔT1以下である場合の第二指令値I2は、ファストフィル指令C1における第一指令値I1に等しい値に設定される。このため、例えば前回動作時からの動作間隔が極端に短い場合であっても、通常のファストフィル制御に影響が及ぶことはない。
第二設定時間T2は、油温に応じて可変に設定される。第二設定時間T2は、図7に示すように、油温が低くなるに従って長くなるように設定される。より具体的には、第二設定時間T2は、油温が設定油温tsよりも低くなるに従って第一変化率で長くなり、且つ、油温が設定油温tsよりも低い温度に予め定められた第二油温t2よりも低くなるに従って絶対値基準で第一変化率よりも小さい第二変化率で長くなり、且つ、油温が第二油温t2よりもさらに低い温度に予め定められた第三油温t3以下となる場合には油温によらずに一定の長さとなるように設定される。
なお、低温時起動制御が実行される場合には、図4に示すように、その後のファストフィル制御の長さは、低温時起動制御の長さに応じて短くなるように設定される。本実施形態では、油温が設定油温ts以下である場合のファストフィル指令C1における第一設定時間T1’は、油温が設定油温tsよりも高い場合のファストフィル指令C1における第一設定時間T1から、低温時起動指令C2における第二設定時間T2を差し引いた値に設定される。つまり、電流指令Cの最初の出力時からファストフィル制御の終了時までの時間は、油温によらずに(言い換えれば、低温時起動制御の実行の有無によらずに)一定(=第一設定時間T1)に維持される。
自動変速装置に複数の摩擦係合装置5が備えられる(油圧制御装置に複数のソレノイド弁3が備えられる)場合には、全てのソレノイド弁3に対して一律の電流指令Cが出力されても良いし、少なくとも1つのソレノイド弁3に対して他とは異なる電流指令Cが出力されても良い。すなわち、複数の摩擦係合装置5に対応する各ソレノイド弁3に対する電流指令Cにおける低温時起動指令C2を規定する第二設定時間T2及び第二指令値I2は、全て同一に設定されても良いし、少なくとも1つに対して他とは異なる値が設定されても良い。
また、同じ摩擦係合装置5に対して、アップシフト時(変速比が相対的に小さい変速段への変速時)とダウンシフト時(変速比が相対的に大きい変速段への変速時)とで、ソレノイド弁3に対して同じ電流指令Cが出力されても良いし、異なる電流指令Cが出力されても良い。すなわち、各ソレノイド弁3に対する電流指令Cにおける低温時起動指令C2を規定する第二設定時間T2及び第二指令値I2は、アップシフト時とダウンシフト時とで、同一の値に設定されても良いし、互いに異なる値に設定されても良い。
以上説明したように、本実施形態では、油温が設定油温ts以下である場合には、指令出力部11からの低温時起動指令C2に基づき、低温時起動制御が実行される。この低温時起動制御実行により、低温の油の大きな摺動抵抗がスプールに作用する場合であっても、通常のファストフィル制御の実行時に比べて大きい磁気吸引力を短時間だけ発生させて、ソレノイド弁3のスプールを強制的に移動させ始めることができる。一旦ソレノイド弁3が適正に起動した後は、指令出力部11からのファストフィル指令C1に基づくファストフィル制御の実行により、ストロークエンド圧付近の適正量の作動油で油圧室53内を満たして、摩擦係合装置5のガタ詰めを適切に行うことができる。その結果、低温時にも、変速動作(具体的にはトルクフェーズ)を遅滞なく適切に進行させることができる。
図8には、様々な温度環境下で摩擦係合装置5の係合動作を行った場合の、電流指令C(具体的にはスイープ指令C4)に対する実油圧の遅れに起因する無駄時間をプロットして示している。「〇」は、低温時にファストフィル制御の実行前に本実施形態の低温時起動制御を実行した場合のデータであり、「×」は、低温時にも本実施形態の低温時起動制御を実行することなくファストフィル制御を実行した場合のデータである。また、着色した領域は、それぞれの油温における許容可能な無駄時間の範囲を示している。この図を参照すれば、本実施形態の低温時起動制御の実行により、かかる制御を実行しない場合に比べて、低温時における無駄時間のバラツキが効果的に低減されていることが容易に理解できる。また、全ての温度領域で、無駄時間が許容範囲内に抑えられていることが分かる。
なお、本実施形態とは異なり、単純にファストフィル指令C1における第一指令値I1を高く設定するだけでは、ソレノイド弁3を起動させることはできるものの、別の懸念が生じる。すなわち、第一指令値I1を高く設定することで、ファストフィル制御において油圧室53内の実油圧がストロークエンド圧を超えて上昇してしまい、摩擦係合装置5に意図せぬ伝達トルク容量が生じて変速ショックが発生してしまう可能性がある。これに対して本実施形態では、低温時には、ファストフィル制御の実行前の低温時起動制御において、ソレノイド弁3を起動させるのに必要な大きさの磁気吸引力を短時間だけ発生させるので、そのような問題は生じない。
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、低温時起動指令C2における第二指令値I2が、油温が低くなるに従って高くなるように設定される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第二指令値I2が、油温によらない一定の値に設定されても良い。
(1)上記の実施形態では、低温時起動指令C2における第二指令値I2が、油温が低くなるに従って高くなるように設定される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第二指令値I2が、油温によらない一定の値に設定されても良い。
(2)上記の実施形態では、低温時起動指令C2における第二指令値I2が、ソレノイド弁3の前回動作時からの動作間隔が短くなるに従って低くなるように設定される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第二指令値I2が、ソレノイド弁3の前回動作時からの動作間隔によらない一定の値に設定されても良い。
(3)上記の実施形態では、低温時起動指令C2における第二設定時間T2が、油温が低くなるに従って長くなるように設定される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第二設定時間T2が、油温によらない一定の値に設定されても良い。
(4)上記の実施形態では、低温時起動制御が実行される場合に、その後のファストフィル制御の長さが低温時起動制御の長さに応じて短くなるように設定される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば低温時起動制御の実行の有無によらずに、その後のファストフィル制御の長さが一定(=第一設定時間T1)とされても良い。
(5)上記の実施形態で説明した電流指令C(係合側電流指令CE)の態様は単なる一例であるに過ぎない。上記のような構成に限定されることなく、係合側電流指令CEにおけるファストフィル指令C1後の具体的態様は、任意に設定されて良い。
(6)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
〔実施形態の概要〕
以上をまとめると、本開示に係る制御装置は、好適には、以下の各構成を備える。
以上をまとめると、本開示に係る制御装置は、好適には、以下の各構成を備える。
油圧サーボ(50)に供給される油圧(Psl)に応じて係合の状態が制御される油圧駆動式の摩擦係合装置(5)を制御対象とする制御装置(1)であって、
前記油圧サーボ(50)への供給油圧(Psl)を調整するソレノイド弁(3)に対する電流指令(C)を出力する指令出力部(11)を備え、
前記指令出力部(11)は、前記摩擦係合装置(5)の係合動作を開始する場合に、第一設定時間(T1)の間、第一指令値(I1)の大きさの第一電流指令(C1)を出力するとともに、油温が予め定められた設定温度(ts)以下の場合には、前記第一電流指令(C1)の出力前に、前記第一設定時間(T1)よりも短い第二設定時間(T2)の間、前記第一指令値(I1)よりも大きい第二指令値(I2)の大きさの第二電流指令(C2)を出力する。
前記油圧サーボ(50)への供給油圧(Psl)を調整するソレノイド弁(3)に対する電流指令(C)を出力する指令出力部(11)を備え、
前記指令出力部(11)は、前記摩擦係合装置(5)の係合動作を開始する場合に、第一設定時間(T1)の間、第一指令値(I1)の大きさの第一電流指令(C1)を出力するとともに、油温が予め定められた設定温度(ts)以下の場合には、前記第一電流指令(C1)の出力前に、前記第一設定時間(T1)よりも短い第二設定時間(T2)の間、前記第一指令値(I1)よりも大きい第二指令値(I2)の大きさの第二電流指令(C2)を出力する。
この構成によれば、油温が設定温度(ts)よりも高い場合には、ソレノイド弁(3)に対する指令出力部(11)からの第一電流指令(C1)により、摩擦係合装置(5)の油圧サーボ(50)に、当該摩擦係合装置(5)に伝達トルク容量が生じない程度に油を予備充填する(以下、「ファストフィルを行う」と言う。)ことができる。また、油温が設定温度(ts)以下の場合には、まず、ソレノイド弁(3)に対する指令出力部(11)からの第二電流指令(C2)により、通常のファストフィルを行う場合に比べて大きい磁気吸引力を短時間だけ発生させて、ソレノイド弁(3)を適正に起動させることができる。一旦ソレノイド弁(3)が起動すると、その後は第一電流指令(C1)に従い、油圧サーボ(50)に適正量の油を供給してファストフィルを適切に行うことができる。
一態様として、
前記第二電流指令(C2)における前記第二指令値(I2)が、油温が低くなるに従って高くなるように設定されていることが好ましい。
前記第二電流指令(C2)における前記第二指令値(I2)が、油温が低くなるに従って高くなるように設定されていることが好ましい。
作動油の粘性抵抗は油温が低くなるに従って大きくなる傾向にあるため、ソレノイド弁(3)を適正に起動させるためには、油温が低くなるに従ってより大きな磁気吸引力が必要となる。逆に、作動油の粘性抵抗は油温が高くなるに従って小さくなる傾向にあるため、油温が設定温度(ts)以下であってもあまり低くはない状況で過大な磁気吸引力が作用すると、油圧サーボ(50)への作動油の予備充填量が過剰となる可能性がある。この点に鑑み、上記の構成によれば、油温によらずに、ソレノイド弁(3)を適正に起動させつつ油圧サーボ(50)への供給油量を適正化することができる。
一態様として、
前記第二電流指令(C2)における前記第二設定時間(T2)が、油温が低くなるに従って長くなるように設定されていることが好ましい。
前記第二電流指令(C2)における前記第二設定時間(T2)が、油温が低くなるに従って長くなるように設定されていることが好ましい。
作動油の粘性抵抗は油温が低くなるに従って大きくなる傾向にあるため、ソレノイド弁(3)を適正に起動させるためには、油温が低くなるに従ってより長く磁気吸引力を作用させることが好ましい。逆に、作動油の粘性抵抗は油温が高くなるに従って小さくなる傾向にあるため、油温が設定温度(ts)以下であってもあまり低くはない状況で過度に長時間に亘って大きな磁気吸引力を作用させると、油圧サーボ(50)への作動油の予備充填量が過剰となる可能性がある。この点に鑑み、上記の構成によれば、油温によらずに、ソレノイド弁(3)を適正に起動させつつ油圧サーボ(50)への供給油量を適正化することができる。
一態様として、
前記第二電流指令(C2)における前記第二指令値(I2)が、前記ソレノイド弁(3)の前回動作時からの動作間隔が短くなるに従って低くなるように設定されていることが好ましい。
前記第二電流指令(C2)における前記第二指令値(I2)が、前記ソレノイド弁(3)の前回動作時からの動作間隔が短くなるに従って低くなるように設定されていることが好ましい。
摩擦係合装置(5)の係合動作及び解放動作を繰り返し行うためにソレノイド弁(3)を繰り返し動作させるような場合に、前回動作時からの動作間隔が短ければ、油温が設定温度(ts)以下であっても、ソレノイド弁(3)の内部で作動油の流動性がある程度保たれていると考えられる。このため、ソレノイド弁(3)を適正に起動させるために必要な磁気吸引力は小さくて済む。逆に、作動油の流動性が保たれている状況で過大な磁気吸引力が作用すると、油圧サーボ(50)への作動油の予備充填量が過剰となる可能性がある。この点に鑑み、上記の構成によれば、ソレノイド弁(3)の前回動作時からの動作間隔に応じて、ソレノイド弁(3)を適正に起動させつつ油圧サーボ(50)への供給油量を適正化することができる。
一態様として、
前記第一電流指令(C1)は、前記油圧サーボ(50)の容積及び前記ソレノイド弁(3)から前記油圧サーボ(50)までの油路(7)の容積に応じて前記第一設定時間(T1)及び前記第一指令値(I1)が設定される、ファストフィル指令であることが好ましい。
前記第一電流指令(C1)は、前記油圧サーボ(50)の容積及び前記ソレノイド弁(3)から前記油圧サーボ(50)までの油路(7)の容積に応じて前記第一設定時間(T1)及び前記第一指令値(I1)が設定される、ファストフィル指令であることが好ましい。
この構成によれば、第一電流指令(C1)に基づくファストフィルにより、摩擦係合装置(5)を当該摩擦係合装置(5)に伝達トルク容量が生じ始める直前の状態とすることができる。よって、その後の摩擦係合装置(5)を介したトルク伝達の応答性を高めることができる。
本開示に係る制御装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。
1 制御装置
3 ソレノイド弁
5 摩擦係合装置
7 ソレノイド弁から油圧サーボまでの油路
11 指令出力部
50 油圧サーボ
C 電流指令
C1 ファストフィル指令(第一電流指令)
C2 低温時起動指令(第二電流指令)
I1 第一指令値
I2 第二指令値
T1 第一設定時間
T1’ 第一設定時間
T2 第二設定時間
ts 設定油温(設定温度)
3 ソレノイド弁
5 摩擦係合装置
7 ソレノイド弁から油圧サーボまでの油路
11 指令出力部
50 油圧サーボ
C 電流指令
C1 ファストフィル指令(第一電流指令)
C2 低温時起動指令(第二電流指令)
I1 第一指令値
I2 第二指令値
T1 第一設定時間
T1’ 第一設定時間
T2 第二設定時間
ts 設定油温(設定温度)
Claims (5)
- 油圧サーボに供給される油圧に応じて係合の状態が制御される油圧駆動式の摩擦係合装置を制御対象とする制御装置であって、
前記油圧サーボへの供給油圧を調整するソレノイド弁に対する電流指令を出力する指令出力部を備え、
前記指令出力部は、前記摩擦係合装置の係合動作を開始する場合に、第一設定時間の間、第一指令値の大きさの第一電流指令を出力するとともに、油温が予め定められた設定温度以下の場合には、前記第一電流指令の出力前に、前記第一設定時間よりも短い第二設定時間の間、前記第一指令値よりも大きい第二指令値の大きさの第二電流指令を出力する制御装置。 - 前記第二電流指令における前記第二指令値が、油温が低くなるに従って高くなるように設定されている請求項1に記載の制御装置。
- 前記第二電流指令における前記第二設定時間が、油温が低くなるに従って長くなるように設定されている請求項1又は2に記載の制御装置。
- 前記第二電流指令における前記第二指令値が、前記ソレノイド弁の前回動作時からの動作間隔が短くなるに従って低くなるように設定されている請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
- 前記第一電流指令は、前記油圧サーボの容積及び前記ソレノイド弁から前記油圧サーボまでの油路の容積に応じて前記第一設定時間及び前記第一指令値が設定される、ファストフィル指令である請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016068557A JP2017180660A (ja) | 2016-03-30 | 2016-03-30 | 制御装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN110185787A (zh) * | 2018-02-23 | 2019-08-30 | 通用汽车环球科技运作有限责任公司 | 控制螺线管电流再循环路径的方法 |
-
2016
- 2016-03-30 JP JP2016068557A patent/JP2017180660A/ja active Pending
Cited By (2)
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CN110185787A (zh) * | 2018-02-23 | 2019-08-30 | 通用汽车环球科技运作有限责任公司 | 控制螺线管电流再循环路径的方法 |
CN110185787B (zh) * | 2018-02-23 | 2021-02-05 | 通用汽车环球科技运作有限责任公司 | 机动车辆推进系统及其用于控制机动车辆变速器的方法 |
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