本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
<作業機械の全体構成>
図1は、実施形態に係る作業機械の斜視図である。図2は、油圧ショベル100の制御システム200及び油圧システム300の構成を示すブロック図である。作業機械である油圧ショベル100は、車両本体1と作業機2とを有する。車両本体1は、旋回体である上部旋回体3と走行体としての走行装置5とを有する。上部旋回体3は、機関室3EGの内部に、動力発生装置としての内燃機関及び油圧ポンプ等の装置を収容している。実施形態において、油圧ショベル100は、動力発生装置としての内燃機関に、例えばディーゼルエンジンが用いられるが、動力発生装置はこのようなものに限定されない。
上部旋回体3は、運転室4を有する。走行装置5は、上部旋回体3を搭載する。走行装置5は、履帯5a、5bを有する。走行装置5は、左右に設けられた走行モータ5cの一方又は両方が履帯5a、5bを駆動して回転させることにより、油圧ショベル100を走行させる。
上部旋回体3は、作業機2及び運転室4が配置されている側が前であり、機関室3EGが配置されている側が後である。前に向かって左側が上部旋回体3の左であり、前に向かって右側が上部旋回体3の右である。上部旋回体3の左右方向は、幅方向とも言う。油圧ショベル100又は車両本体1は、上部旋回体3を基準として走行装置5側が下であり、走行装置5を基準として上部旋回体3側が上である。油圧ショベル100が水平面に設置されている場合、下は鉛直方向、すなわち重力の作用方向側であり、上は鉛直方向とは反対側である。
作業機2は、ブーム6とアーム7と作業具であるバケット8とブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを有する。ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して車両本体1の前部に取り付けられている。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に取り付けられている。アーム7の先端部には、バケットピン15を介してバケット8が取り付けられている。バケット8は、バケットピン15を中心として動く。バケット8は、バケットピン15とは反対側に複数の刃8BDが取り付けられている。刃先8Tは、刃8BDの先端である。
実施形態において、作業機2が上昇するとは、作業機2が油圧ショベル100の接地面から上部旋回体3に向かう方向に移動する動作を言う。作業機2が下降するとは、作業機2が油圧ショベル100の上部旋回体3から接地面に向かう方向に移動する動作を言う。油圧ショベル100の接地面は、履帯5a,5bの接地する部分における少なくとも3点で定義される平面である。接地面の定義に用いられる少なくとも3点は、2個の履帯5a,5bのうち一方に存在してもよいし、両方に存在してもよい。
上部旋回体3を有さない作業機械である場合、作業機2が上昇するとは、作業機2が作業機械の接地面から離れる方向に移動する動作を言う。作業機2が下降するとは、作業機2が作業機械の接地面に接近する方向に移動する動作を言う。作業機械が履帯ではなく車輪を備える場合、接地面は、少なくとも3個の車輪が接地する部分で定義される平面である。
作業具は、複数の刃8BDを有していなくてもよい。つまり、作業具は、図1に示すような刃8BDを有しておらず、刃先が鋼板によってストレート形状に形成されたようなバケットであってもよい。作業機2は、例えば、単数の刃を有するチルトバケットを備えていてもよい。チルトバケットとは、バケットチルトシリンダを備え、バケットが左右にチルト傾斜することで油圧ショベルが傾斜地にあっても、斜面、平地を自由な形に成形、整地をすることができる。この他にも、作業機2は、バケット8の代わりに、法面バケットを作業具として備えてもよい。
図1に示されるブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とは、それぞれ作動油の圧力(以下、適宜油圧という)によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10はブーム6を駆動して、これを昇降させる。アームシリンダ11は、アーム7を駆動して、アームピン14の周りを動作させる。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動して、バケットピン15の周りを動作させる。
ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12等の油圧シリンダと図2に示される油圧ポンプ36,37との間には、図2に示される方向制御弁64が設けられている。方向制御弁64は、油圧ポンプ36,37からブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12等に供給される作動油の流量を制御するとともに、作動油が流れる方向を切り替える。
図2に示される作業機コントローラ26が、図2に示される制御弁27を制御することにより、操作装置25から方向制御弁64に供給される作動油のパイロット圧が制御される。制御弁27は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12の油圧系に設けられている。作業機コントローラ26は、パイロット油路450に設けられた制御弁27を制御することにより、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12の動作を制御することができる。実施形態においては、作業機コントローラ26は、制御弁27を閉じる制御により、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12を減速させる制御が可能である。
上部旋回体3の上部には、アンテナ21,22が取り付けられている。アンテナ21,22は、油圧ショベル100の現在位置を検出するために用いられる。アンテナ21,22は、図2に示される、油圧ショベル100の現在位置を検出するための位置検出部である位置検出装置19と電気的に接続されている。
位置検出装置19は、RTK−GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite Systems、GNSSは全地球航法衛星システムをいう)を利用して油圧ショベル100の現在位置を検出する。以下の説明において、アンテナ21,22を、適宜GNSSアンテナ21,22という。GNSSアンテナ21,22が受信したGNSS電波に応じた信号は、位置検出装置19が受け取る。位置検出装置19は、GNSSアンテナ21,22の設置位置を検出する。位置検出装置19は、例えば3次元位置センサを含む。
<油圧システム300>
図2に示されるように、油圧ショベル100の油圧システム300は、動力発生源としての内燃機関35と油圧ポンプ36,37とを備える。油圧ポンプ36,37は、内燃機関35によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ36,37から吐出された作動油は、ブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とに供給される。
油圧ショベル100は、旋回モータ38を備える。旋回モータ38は油圧モータであり、油圧ポンプ36,37から吐出された作動油によって駆動される。旋回モータ38は、上部旋回体3を旋回させる。なお、図2では、2つの油圧ポンプ36,37が図示されているが、1つの油圧ポンプのみが設けられてもよい。旋回モータ38は、油圧モータに限らず、電気モータであってもよい。
<制御システム200>
作業機械の制御システムである制御システム200は、位置検出装置19と、グローバル座標演算部23と、操作装置25と、実施形態に係る作業機械の制御装置である作業機コントローラ26と、センサコントローラ39と、表示コントローラ28と、表示部29とを含む。操作装置25は、図1に示される作業機2及び上部旋回体3を操作するための装置である。操作装置25は、作業機2を操作するための装置である。操作装置25は、作業機2を駆動するためにオペレータが実行する操作を受け付けて、操作量に応じたパイロット油圧を出力する。
操作量に応じたパイロット油圧は、操作指令である。操作指令は、作業機2を動作させるための指令である。操作指令は、操作装置25によって生成される。操作装置25は、オペレータによって操作させるので、操作指令は、マニュアル操作、すなわちオペレータの操作によって作業機2を動作させるための指令である。マニュアル操作による作業機2の制御は、操作装置25からの操作指令に基づく作業機2の制御、つまり作業機2の操作装置25を操作することによる作業機2の制御である。
実施形態において、操作装置25は、オペレータの左側に設置される左操作レバー25Lと、オペレータの右側に配置される右操作レバー25Rと、を有する。左操作レバー25L及び右操作レバー25Rは、前後左右の動作がアーム7及び旋回の2軸の動作に対応されている。例えば、右操作レバー25Rの前後方向の操作は、ブーム6の操作に対応されている。右操作レバー25Rが前方へ操作されるとブーム6が下がり、後方へ操作されるとブーム6が上がる。前後方向の操作に応じてブーム6の下げ上げの動作が実行される。右操作レバー25Rの左右方向の操作は、バケット8の操作に対応されている。右操作レバー25Rが左側に操作されるとバケット8が掘削し、右側に操作されるとバケット8がダンプする。左右方向の操作に応じてバケット8の掘削又は開放動作が実行される。左操作レバー25Lの前後方向の操作は、アーム7の旋回に対応されている。左操作レバー25Lが前方に操作されるとアーム7がダンプし、後方に操作されるとアーム7が掘削する。左操作レバー25Lの左右方向の操作は、上部旋回体3の旋回に対応されている。左操作レバー25Lが左側に操作されると左旋回し、右側に操作されると右旋回する。
実施形態において、操作装置25は、パイロット油圧方式が用いられる。操作装置25には、油圧ポンプ36から、減圧弁25Vによって所定のパイロット圧力に減圧された作動油がブーム操作、バケット操作、アーム操作及び旋回操作に基づいて供給される。
実施形態において、操作装置25が有する左操作レバー25L及び右操作レバー25Rはパイロット油圧方式であるが、電気方式であってもよい。左操作レバー25L及び右操作レバー25Rが電気方式である場合、それぞれの操作量は、それぞれポテンショメータによって検出される。ポテンショメータによって検出された左操作レバー25L及び右操作レバー25Rの操作量は、作業機コントローラ26によって取得される。電気方式の操作レバーの操作信号を検出した作業機コントローラ26は、パイロット油圧方式と同様の制御を実行する。
右操作レバー25Rの前後方向の操作に応じて、パイロット油路450へパイロット油圧が供給可能とされて、オペレータによるブーム6の操作が受け付けられる。右操作レバー25Rの操作量に応じて右操作レバー25Rが備える弁装置が開き、パイロット油路450へ作動油が供給される。また、圧力センサ66は、そのときのパイロット油路450内における作動油の圧力をパイロット圧として検出する。圧力センサ66は、検出したパイロット圧を、ブーム操作量MBとして作業機コントローラ26へ送信する。右操作レバー25Rの前後方向の操作量を、以下、適宜ブーム操作量MBと称する。パイロット油路50には、制御弁(以下、適宜介入弁と称する)27C及びシャトル弁51が設けられる。
右操作レバー25Rの左右方向の操作に応じて、パイロット油路450へパイロット油圧が供給可能とされて、オペレータによるバケット8の操作が受け付けられる。右操作レバー25Rの操作量に応じて右操作レバー25Rが備える弁装置が開き、パイロット油路450に作動油が供給される。圧力センサ66は、そのときのパイロット油路450内における作動油の圧力をパイロット圧として検出する。圧力センサ66は、検出したパイロット圧を、バケット操作量MTとして作業機コントローラ26へ送信する。右操作レバー25Rの左右方向の操作量を、以下、適宜バケット操作量MTと称する。
左操作レバー25Lの前後方向の操作に応じて、パイロット油路450へパイロット油圧が供給可能とされて、オペレータによるアーム7の操作が受け付けられる。左操作レバー25Lの操作量に応じて左操作レバー25Lが備える弁装置が開き、パイロット油路450へ作動油が供給される。圧力センサ66は、そのときのパイロット油路450内における作動油の圧力をパイロット圧として検出する。圧力センサ66は、検出したパイロット圧を、アーム操作量MAとして作業機コントローラ26へ送信する。左操作レバー25Lの前後方向の操作量を、以下、適宜アーム操作量MAと称する。
右操作レバー25Rが操作されることにより、操作装置25は、右操作レバー25Rの操作量に応じた大きさのパイロット油圧を方向制御弁64に供給する。左操作レバー25Lが操作されることにより、操作装置25は、左操作レバー25Lの操作量に応じた大きさのパイロット油圧を方向制御弁64に供給する。操作装置25から方向制御弁64に供給されるパイロット油圧によって、方向制御弁64が動作する。
制御システム200は、第1ストロークセンサ16と第2ストロークセンサ17と第3ストロークセンサ18とを有する。例えば、第1ストロークセンサ16はブームシリンダ10に、第2ストロークセンサ17はアームシリンダ11に、第3ストロークセンサ18バケットシリンダ12に、それぞれ設けられる。
センサコントローラ39は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部と、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の記憶部とを有する。センサコントローラ39は、第1ストロークセンサ16が検出したブームシリンダ長から、油圧ショベル100のローカル座標系、詳細には車両本体1のローカル座標系における水平面と直交する方向に対するブーム6の傾斜角度θ1を算出して、作業機コントローラ26及び表示コントローラ28に出力する。センサコントローラ39は、第2ストロークセンサ17が検出したアームシリンダ長から、ブーム6に対するアーム7の傾斜角度θ2を算出して、作業機コントローラ26及び表示コントローラ28に出力する。センサコントローラ39は、第3ストロークセンサ18が検出したバケットシリンダ長から、アーム7に対するバケット8が有するバケット8の刃先8Tの傾斜角度θ3を算出して、作業機コントローラ26及び表示コントローラ28に出力する。傾斜角度θ1,θ2,θ3の検出は、第1ストロークセンサ16、第2ストロークセンサ17及び第3ストロークセンサ18以外であっても可能である。例えば、ポテンショメータ等の角度センサも、傾斜角度θ1,θ2,θ3を検出できる。
センサコントローラ39には、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)24が接続されている。IMU24は、図1に示される油圧ショベル100のピッチ及びロール等といった車体の傾斜情報を取得し、センサコントローラ39に出力する。
作業機コントローラ26は、CPU等の処理部26Pと、RAM及びROM(Read Only Memory)等の記憶部26Mとを有する。作業機コントローラ26は、図2に示されるブーム操作量MB、バケット操作量MT及びアーム操作量MAに基づいて、介入弁27C及び制御弁27を制御する。
図2に示される方向制御弁64は、例えば比例制御弁であり、操作装置25から供給される作動油によって制御される。方向制御弁64は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12及び旋回モータ38等の油圧アクチュエータと、油圧ポンプ36,37との間に配置される。方向制御弁64は、油圧ポンプ36,37からブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12及び旋回モータ38に供給される作動油の流量及び方向を制御する。
制御システム200が備える位置検出装置19は、前述したGNSSアンテナ21,22を含む。GNSSアンテナ21,22で受信されたGNSS電波に応じた信号が、グローバル座標演算部23に入力される。GNSSアンテナ21は、自身の位置を示す基準位置データP1を測位衛星から受信する。GNSSアンテナ22は、自身の位置を示す基準位置データP2を測位衛星から受信する。GNSSアンテナ21,22は、所定の周期で基準位置データP1、P2を受信する。基準位置データP1,P2は、GNSSアンテナが設置されている位置の情報である。GNSSアンテナ21,22は、基準位置データP1、P2を受信する毎に、グローバル座標演算部23に出力する。
グローバル座標演算部23は、CPU等の処理部とRAM及びROM等の記憶部とを有する。グローバル座標演算部23は、2つの基準位置データP1,P2に基づいて、上部旋回体3の配置を示す旋回体配置データを生成する。本実施形態において、旋回体配置データには、2つの基準位置データP1,P2の一方の基準位置データPと、2つの基準位置データP1,P2に基づいて生成された旋回体方位データQとが含まれる。旋回体方位データQは、上部旋回体3、すなわち作業機2が向いている方位を示している。グローバル座標演算部23は、所定の周期でGNSSアンテナ21,22から2つの基準位置データP1,P2を取得する毎に、旋回体配置データ、すなわち基準位置データPと旋回体方位データQとを更新して、表示コントローラ28に出力する。
表示コントローラ28は、CPU等の処理部と、RAM及びROM等の記憶部とを有する。表示コントローラ28は、グローバル座標演算部23から旋回体配置データである基準位置データP及び旋回体方位データQを取得する。実施形態において、表示コントローラ28は、作業機位置データとして、バケット8の刃先8Tの3次元位置を示すバケット刃先位置データSを生成する。そして、表示コントローラ28は、バケット刃先位置データSと目標施工情報Tとを用いて、目標施工地形データUを生成する。
目標施工情報Tは、油圧ショベル100が備える作業機2が施工する対象(以下、適宜、施工対象と称する)仕上がりの目標となる情報である。目標施工情報Tは、例えば、油圧ショベル100の施工対象の設計情報が挙げられる。作業機2が施工する対象は、例えば、地面である。施工対象に対して作業機2が実行する作業としては、例えば、掘削作業及び地面の均し作業が挙げられるが、これらに限定されない。
表示コントローラ28は、目標施工地形データUに基づく表示用の目標施工地形データUaを導出し、表示用の目標施工地形データUaに基づいて、表示部29に作業機2の施工対象の目標となる形状、例えば地形を表示させる。
表示部29は、例えば、タッチパネルによる入力を受け付ける液晶表示装置であるが、これに限定されるものではない。実施形態においては、表示部29に隣接してスイッチ29Sが設置されている。スイッチ29Sは、後述する介入制御を実行させたり、実行中の介入制御を停止させたりするための入力装置である。
作業機コントローラ26は、圧力センサ66からブーム操作量MB、バケット操作量MT及びアーム操作量MAを取得する。作業機コントローラ26は、センサコントローラ39からブーム6の傾斜角度θ1、アーム7の傾斜角度θ2、バケット8の傾斜角度θ3を取得する。
作業機コントローラ26は、表示コントローラ28から、目標施工地形データUを取得する。目標施工地形データUは、目標施工情報Tのうち、油圧ショベル100がこれから作業する範囲の情報である。すなわち、目標施工地形データUは、目標施工情報Tの一部である。したがって、目標施工地形データUは、目標施工情報Tと同様に、作業機2の施工対象の仕上がりの目標となる形状を表す。この仕上がりの目標となる形状を、以下においては適宜、目標施工地形と称する。
作業機コントローラ26は、センサコントローラ39から取得した作業機2の姿勢及び寸法からバケット8の刃先8Tの位置(以下、適宜刃先位置と称する)を算出する。作業機コントローラ26は、目標施工地形データUに沿ってバケット8の刃先8Tが移動するように、目標施工地形データUとバケット8の刃先8Tとの距離及び作業機2の速度に基づいて作業機2の動作を制御する。この場合、作業機コントローラ26は、バケット8が予め定められた目標の形状に侵入することを抑制するために、作業機2が施工対象に接近する方向の速度が制限速度以下になるように制御する。この制御を、適宜介入制御と称する。介入制御における目標の形状は、例えば目標施工地形データU、すなわち作業機2の施工対象の目標とする形状である目標施工地形、及び目標施工地形から予め定められた距離だけ離れた地形等が挙げられる。
介入制御は、例えば、油圧ショベル100のオペレータが、図2に示されるスイッチ29Sを用いて介入制御を実行することを選択した場合に実行される。すなわち、介入制御は、操作装置25の操作に基づいて、つまりオペレータの操作に基づいて作業機2が動作する場合に、作業機コントローラ26が作業機を動作させる制御である。作業機コントローラ26が目標施工地形とバケット8との距離を算出する場合、バケット8の基準となる位置は刃先8Tに限らず任意の場所でよい。
介入制御において、作業機コントローラ26は、目標施工地形データUにバケット8が侵入しないように作業機2を制御するためにブーム指令信号CBIを生成して、図2に示される介入弁27Cに出力する。ブーム6は、ブーム指令信号CBIに応じて動作することにより、作業機2、より詳細にはバケット8が目標施工地形データUに近づく速度が、バケット8と目標施工地形データUとの距離に応じて制限される。
作業機コントローラ26は、介入制御において、施工対象の目標形状である設計地形を示す目標施工地形データUとバケット8の位置を求めるための傾斜角度θ1,θ2,θ3とに基づき、目標施工地形とバケット8との距離に応じてバケット8が目標施工地形に近づく速度が小さくなるように、ブーム6の速度を制御する。
実施形態において、オペレータによる操作装置25の操作に基づいて作業機2が動作する場合、バケット8の刃先8Tが目標施工地形に侵入しないように、作業機コントローラ26はブーム指令信号CBIを生成し、これを用いてブーム6の動作を制御する。詳細には、作業機コントローラ26は、介入制御においてバケット8の刃先8Tが目標施工地形に侵入しないように、ブーム6を上昇させる。介入制御において実行されるブーム6を上昇させる制御を、適宜、ブーム介入制御と称する。
本実施形態において、作業機コントローラ26がブーム介入制御を実現するために、作業機コントローラ26は、ブーム介入制御に関するブーム指令信号CBIを生成し、介入弁27Cに出力する。介入弁27Cは、パイロット油路50のパイロット油圧を調整する。
ブーム介入制御は、介入制御において実行されるブーム6を上昇させる制御であるが、介入制御において、作業機コントローラ26は、ブーム6の上昇に加えて又はブーム6の上昇の代わりに、アーム7及びバケット8の少なくとも一方を上昇させてもよい。すなわち介入制御において、作業機コントローラ26は、作業機2を構成するブーム6、アーム7及びバケット8の少なくとも1つを上昇させることにより、作業機2の作業対象の目標形状、実施形態では目標施工地形43Iから離れる方向に作業機2を移動させる。ブーム介入制御は、介入制御の一態様である。
<作業機コントローラ26の詳細>
図3は、作業機コントローラ26のブロック図である。図4は、目標施工地形43I及びバケット8を示す図である。図5は、ブーム制限速度Vcy_bmを説明するための図である。作業機コントローラ26は、制御部26CNTと切替部26Jを含む。これらは、作業機コントローラ26の処理部26Pに含まれる。処理部26Pは、制御部26CNT及び切替部26Jの機能を実現する。
作業機コントローラ26の処理部26Pは、作業機2を制御するためのコンピュータプログラムを実行して、作業機2を制御する。作業機2の制御には、介入制御及び実施形態に係る作業機械の制御方法による制御が含まれる。記憶部26Mは、作業機2を制御するためのコンピュータプログラムを記憶している。
制御部26CNTは、相対位置算出部26A、距離算出部26B、目標速度算出部26C、介入速度算出部26D、介入指令算出部26E及び介入速度修正部26Fを含む。制御部26CNTは、介入制御を実行する。実施形態において、制御部26CNTは、介入制御時には目標の形状にバケット8が侵入しないように作業機2を制御する。実施形態において、介入制御における目標の形状は、図5に示される目標施工地形43I又は目標施工地形43Iから予め定められた距離Offだけ離れたオフセット地形43Ivである。
介入制御が実行されるにあたって、作業機コントローラ26は、ブーム操作量MB、アーム操作量MA、バケット操作量MT、表示コントローラ28から取得した目標施工地形データU及びセンサコントローラ39から取得した傾斜角度θ1,θ2,θ3及びバケット8の形状を用いて、介入制御に必要なブーム指令信号CBIを生成し、また必要に応じてアーム指令信号及びバケット指令信号を生成し、制御弁27及び介入弁27Cを動作させて作業機2を制御する。
相対位置算出部26Aは、表示コントローラ28からバケット刃先位置データSを取得し、センサコントローラ39から傾斜角度θ1,θ2,θ3を取得する。相対位置算出部26Aは、取得した傾斜角度θ1,θ2,θ3からバケット8の刃先8Tの位置である刃先位置Pbを求める。
距離算出部26Bは、相対位置算出部26Aによって求められた刃先位置Pbと、表示コントローラ28から取得した目標施工地形データUとから、バケット8の刃先8Tと、目標施工情報Tの一部である目標施工地形データUで表される目標施工地形43Iとの間の最短となる距離dを算出する。距離dは、刃先位置Pbと、目標施工地形43Iに直交し、かつ刃先位置Pbを通る直線と、目標施工地形データUとが交差する位置Puとの距離である。
介入制御における目標の形状がオフセット地形43Ivである場合、距離算出部26Bは、表示コントローラ28から距離Offを取得し、目標施工地形43Iの位置に加算することにより、オフセット地形43Ivを求める。距離算出部26Bは、バケット8の刃先8Tと、オフセット地形43Ivとの間の最短となる距離dを算出する。距離Offは、図2に示される表示部29のタッチパネルから、油圧ショベル100のオペレータが入力し、表示コントローラ28に記憶される。
目標施工地形43Iは、作業機2の動作平面と、複数の目標施工面で表される目標施工情報Tとの交線から求められる。作業機2の動作平面は、上部旋回体3の前後方向で規定され、かつ掘削対象位置Pdgを通る平面であり、作業機2が上部旋回体3の前後方向に動作することにより掘削対象位置Pdgを掘削するように、作業機2が駆動されるときの平面である。目標施工地形43Iは、より詳細には、前述した交線のうち、目標施工情報Tの掘削対象位置Pdgの前後における単数又は複数の変曲点とその前後の線が目標施工地形43Iである。図5に示される例では、2個の変曲点Pv1、Pv2とその前後の線とが目標施工地形43Iである。掘削対象位置Pdgは、バケット8の刃先8Tの位置、すなわち刃先位置Pbの直下の点である。このように、目標施工地形43Iは、目標施工情報Tの一部である。目標施工地形43Iは、図2に示される表示コントローラ28が生成する。
目標速度算出部26Cは、ブーム目標速度Vc_bmと、アーム目標速度Vc_amと、バケット目標速度Vc_bktとを決定する。ブーム目標速度Vc_bmは、ブームシリンダ10が駆動されるときの刃先8Tの速度である。アーム目標速度Vc_amは、アームシリンダ11が駆動されるときの刃先8Tの速度である。バケット目標速度Vc_bktは、バケットシリンダ12が駆動されるときの刃先8Tの速度である。ブーム目標速度Vc_bmは、ブーム操作量MBに応じて算出される。アーム目標速度Vc_amは、アーム操作量MAに応じて算出される。バケット目標速度Vc_bktは、バケット操作量MTに応じて算出される。
介入速度算出部26Dは、バケット8の刃先8Tと目標施工地形43Iとの間の距離dに基づいて、ブーム6の制限速度であるブーム制限速度Vcy_bmを求める。介入速度算出部26Dは、図1に示される作業機2全体の制限速度Vc_lmtから、アーム目標速度Vc_am及びバケット目標速度Vc_bktを減算することにより、ブーム制限速度Vcy_bmを求める。制限速度Vc_lmtは、バケット8の刃先8Tが目標施工地形43Iに接近する方向において許容できる刃先8Tの移動速度である。
制限速度Vc_lmtは、距離dが正の場合は負の値、すなわち作業機2が下降する場合の下降速度であり、距離dが負の場合は正の値、すなわち作業機2が上昇する場合の上昇速度である。距離dが負の値とは、バケット8が目標施工地形43Iに侵入した状態である。制限速度Vc_lmtは、距離dが小さくなるにしたがって、速度の絶対値が小さくなり、距離dが負の値になると、距離dの絶対値が大きくなるにしたがって速度の絶対値が大きくなる。
介入指令算出部26Eは、介入速度修正部26Fによって求められたブーム制限速度Vcy_bmから、ブーム指令信号CBIを生成する。ブーム指令信号CBIは、介入弁27Cの開度を、ブーム6がブーム制限速度Vcy_bmで上昇するために必要なパイロット圧力をシャトル弁51に作用させるために必要な大きさとするための指令である。ブーム指令信号CBIは、実施形態において、ブーム指令速度に応じた電流値である。
切替部26Jは、目標施工地形43Iに対するバケット8の姿勢に基づいて、介入制御における目標の形状を、目標施工地形43Iから予め定められた距離Offだけ離れたオフセット地形43Iv又は目標施工地形43Iとする。この場合、切替部26Jは、操作装置25からのアーム操作指令Sga、センサコントローラからの傾斜角度θ1,θ2,θ3及び制御部26CNTからの介入制御状態Cas又は停止制御状態Cstを取得し、オフセット係数K及び固定フラグFfを距離算出部26Bに与える。
アーム操作指令Sgaは、アーム7を操作するレバーである左操作レバー25Lがアーム7の操作について中立であるか否かを示す信号である。左操作レバー25Lがアーム7の操作について中立である場合、アーム7は停止する。介入制御状態Casは介入制御が実行中であることを示し、停止制御状態Cstは停止制御が実行中であることを示す。停止制御は介入制御の1つであり、介入制御における目標の形状、すなわち目標施工地形43I又はオフセット地形43Ivにバケット8が侵入した場合に作業機2を停止させる制御である。停止制御は、作業機2が介入制御における目標の形状に侵入しないように作業機2を制御するものである。
オフセット係数Kは、掘削制御における目標の地形を、目標施工地形43I又はオフセット地形43Ivに切り替えるための係数である。固定フラグFfは、作業機2が目標の形状の施工を開始してから一連の施工を終了するまでは、目標の形状の施工を開始したときにおける目標の形状を制御部26CNT、詳細には距離算出部26Bに維持させるフラグである。固定フラグFfが1である場合、制御部26CNTは、作業機2が目標の形状の施工を開始してから一連の施工を終了するまで、目標の形状を、目標の形状の施工を開始したときのものとする。
例えば、目標の形状の施工を開始したときの目標の形状がオフセット地形43Ivである場合、制御部26CNTは、作業機2が目標の形状の施工を開始してから一連の施工を終了するまで、目標の形状をオフセット地形43Ivとする。目標の形状の施工を開始したときの目標の形状が目標施工地形43Iである場合、制御部26CNTは、作業機2が目標の形状の施工を開始してから一連の施工を終了するまで、目標の形状を目標施工地形43Iとする。
図6及び図7は、法面を形成する施工例を示す図である。油圧ショベル100が法面を形成する場合、油圧ショベル100は施工対象を掘削した後、バケット8の底面8Bで施工対象を目標施工地形43Iまで押さえ付けて法面を仕上げる。作業機コントローラ26は、目標施工地形43Iから予め定められた距離Off(以下、適宜オフセット量と称する)だけ離れたオフセット地形43Ivを介入制御における目標の形状とすることにより、法面を施工する際の押し付け代を確保できる。実施形態において、オペレータは、油圧ショベル100の作業に応じたオフセット量Offを、図2に示される表示部29のタッチパネルから設定することができる。
施工対象に法面を形成する場合、オペレータがオフセット量Offを設定すると、作業機コントローラ26は、介入制御における目標の形状をオフセット地形43Ivとする。作業機コントローラ26は、バケット8が施工対象の表土SHPを掘削する際に、バケット8がオフセット地形43Ivに侵入しないように介入制御を実行する。オフセット地形43Ivまで施工対象が掘削されたら、オペレータはオフセット量Offを解除する。オフセット量Offが解除された状態で、油圧ショベル100はバケット8の底面8Bを施工対象に押し付けて、施工対象の表面を目標施工地形43Iの位置に仕上げる。
仕上げにおいて、オペレータは、図2に示される表示部29のタッチパネルからオフセット量Offを解除する。作業機コントローラ26は、介入制御における目標の形状を目標施工地形43Iとする。作業機コントローラ26は、バケット8が施工対象に押し付けられると、バケット8の底面8Bが目標施工地形43Iに侵入しないように介入制御を実行する。仕上げにより、オフセット量Offの分の表土SHPが目標施工地形43Iまで押し付けられることにより、施工対象の表面が押し固められて法面が完成する。
一箇所に法面が形成されると、油圧ショベル100は、次の場所も同様に法面を形成する。この場合、オペレータは再度オフセット量Offを設定する。また、法面を形成する場合、表土SHPの掘削と仕上げとでオフセット量Offを設定し直す必要がある。このため、法面を形成する場合、オペレータの作業が煩雑になる。
法面を形成する場合におけるオペレータの作業が煩雑になることを抑制するため、作業機コントローラ26は、目標施工地形43Iに対するバケット8の姿勢に基づいて、介入制御における目標の形状を、オフセット地形43Ivと目標施工地形43Iとに切り替える。詳細には、図7に示されるように、作業機コントローラ26の切替部26Jは、例えば目標施工地形43Iとバケット8の底面8Bとのなす角度αの大きさに基づいて、介入制御における目標の形状を、オフセット地形43Ivと目標施工地形43Iとに切り替える。
角度αの絶対値が大きい場合、バケット8は施工対象を掘削すると判定できる。また、角度αの絶対値が小さい場合、バケット8は底面8Bを施工対象に押し付けると判定できる。例えば、角度αの絶対値が予め定められた閾値αcの絶対値よりも大きい場合、切替部26Jは、介入制御における目標の形状を、オフセット地形43Ivとする。角度αの絶対値が予め定められた閾値αcの絶対値以下である場合、切替部26Jは、介入制御における目標の形状を、目標施工地形43Iとする。
このような処理によって、介入制御における目標の形状は、表土SHPの掘削時と仕上げ時とで自動的に切り替わる。その結果、法面の形成において、オペレータは表土SHPの掘削時と施工対象の仕上げ時とでオフセット量Offを設定し直す必要がなくなるので、法面を形成する場合においてオペレータの作業が煩雑になることが抑制される。
図8は、バケット8の底面8Bの角度θbを求める手法を説明するための図である。実施形態において、バケット8の底面8Bの角度(以下、適宜、底面角度と称する)θbは、図8に示されるように車体座標系におけるXm−Ym平面と平行、かつバケット8の刃先8Tと接する平面PHを基準として、バケット8側においては符号を−(負)、バケット8とは反対側においては符号を+(正)とする。水平面は、例えばグローバル座標系(Xg,Yg,Z,)のXg−Yg平面である。底面角度θbは、バケット8の底面8Bと平面PHとのなす角度である。バケット8の底面8Bは、バケット8の刃先8Tと、バケット8の尻部8Hの刃先8T側における端部8pBとの間である。尻部8Hは、バケット8の外側の湾曲した部分である。角度θbは、式(1)で求めることができる。
θb=−270+θ1+θ2+θ3+β・・・(1)
θ1はブーム6の傾斜角度、θ2はアーム7の傾斜角度、θ3はバケット8の傾斜角度、βは刃先8Tの角度である。傾斜角度θ1は、軸線Zbと、ブームピン13の中心軸及びアームピン14の中心軸を結ぶ軸線とのなす角度である。軸線Zbは、油圧ショベル100の車体座標系(Xm,Ym,Zm)のZm軸と直交し、かつブームピン13の中心軸を通る直線である。傾斜角度θ2は、ブームピン13の中心軸及びアームピン14の中心軸を結ぶ直線と、アームピン14の中心軸及びバケットピン15の中心軸を結ぶ直線とのなす角度である。傾斜角度θ3は、アームピン14の中心軸及びバケットピン15の中心軸を結ぶ直線と、バケットピン15の中心軸とバケット8の刃先とを結ぶ直線とのなす角度である。刃先8Tの角度βは、バケットピン15の中心軸とバケット8の刃先とを結ぶ直線と、バケット8の底面8Bとのなす角度である。刃先8Tの角度βは、バケット8の種類によって定まる値であり、作業機コントローラ26の記憶部26Mに記憶されている。
図9は、目標施工地形43Iとバケット8の底面8Bとのなす角度αを求める手法を説明するための図である。目標施工地形43Iとバケット8の底面8Bとのなす角度αは、式(2)によって求めることができる。角度γは、前述した平面PHに対して目標施工地形43Iが傾く角度である。角度γは、平面PHに対してバケット8の底面8B側に回動する方向においては符号を−(負)、平面PHに対してバケット8の底面8B側から離れるように回動する方向においては符号を+(正)とする。
α=θb−γ・・・(2)
図10及び図11は、オフセット係数Kを切り替えるための閾値α1,α2を含むマップMPA,MPBを示す図である。マップMPA及びマップMPBは、いずれも縦軸がオフセット係数K、横軸が角度αである。角度αの符号は負である。閾値α1の絶対値は、閾値α2の絶対値よりも小さい。マップMPAにおいて、角度αの絶対値が閾値α1の絶対値以下になった場合、オフセット係数Kは1から0になる。角度αの絶対値が閾値α1の絶対値よりも大きく、閾値α2の絶対値以上になった場合、オフセット係数Kは0から1になる。
マップMPBにおいて、角度αの絶対値が閾値α2の絶対値以下になった場合、角度αの絶対値が小さくなるにしたがって、オフセット係数Kは1から徐々に減少する。角度αの絶対値が閾値α1の絶対値以下になると、オフセット係数Kは0になる。
マップMPA又はマップMPBは、図3に示される作業機コントローラ26の記憶部26Mに記憶されている。作業機コントローラ26の切替部26Jは、角度αを求めたらマップMPA又はマップMPBを記憶部26Mから読み出し、求めた角度αに対応するオフセット係数KをマップMPA又はマップMPBから取得する。切替部26Jは、取得したオフセット係数Kを、距離算出部26Bに与える。
距離算出部26Bは、切替部26Jから受け取ったオフセット係数Kを、オペレータによって設定されたオフセット量Offに乗じて、介入制御に用いるオフセット量Offcとする。すなわち、Offc=K×Offである。距離算出部26Bは、オフセット量Offcを目標施工地形43Iの位置に加算することにより、介入制御における目標の形状とする。マップMPAによってオフセット係数Kが求められる場合を考える。介入制御における目標の形状がオフセット地形43Ivである場合、オフセット係数Kは1なので、介入制御における目標の形状はオフセット地形43Ivとなる。介入制御における目標の形状が目標施工地形43Iである場合、オフセット係数Kは0なので、介入制御における目標の形状は目標施工地形43Iとなる。
マップMPAは、オフセット係数Kを1から0、すなわちオフセット地形43Ivから目標施工地形43Iに変更するときと、オフセット係数Kを0から1、すなわち目標施工地形43Iからオフセット地形43Ivに変更するときとでヒステリシスを持たせる。このようにすることで、オフセット係数Kの変更にともなうハンチングが抑制される。詳細には、オフセット係数Kの変更にともなってバケット8が上下する現象が抑制される。マップMPAは、オフセット係数Kの切り換えについてヒステリシスを持たせなくてもよい。すなわち、単一の閾値αcを用いてオフセット係数Kを切り替えてもよい。
マップMPBによってオフセット係数Kが求められる場合、オフセット係数Kは、閾値α2からα1の間で、角度αの大きさに応じて変化する。このため、介入制御における目標の形状は、目標施工地形43Iからオフセット地形43Ivまでの間の地形となる。
図12は、介入制御における目標の形状をオフセット地形43Ivとした場合のバケットの動きを示す図である。法面を形成する際にバケット8が施工対象の表土SHPを掘削する場合、介入制御における目標の形状は、オフセット地形43Ivになる。バケット8が表土SHPを掘削する場合、掘削の開始位置SPから終了位置EPまでの間で、バケット8の姿勢が変化する。掘削の開始位置SPから法面の下端側における下端位置HSまでの部分、及び下端位置HSから終了位置EPまでの部分に、オフセット地形43Ivが存在する。
この場合、バケット8は、開始位置SPから下端位置HSを通って終了位置EPまで、連続して施工対象を掘削する。この掘削において、オペレータの操作は、アーム7の操作が主体であり、バケット8の操作はほとんど発生しない。このため、バケット8は、開始位置SPから徐々に刃先8Tを寝かしつつ、すなわちバケット8の底面8Bと目標施工地形43Iとのなす角度αの絶対値を小さくしつつ、下端位置HSに接近する(図12の状態A,B)。介入制御における目標の形状は、オフセット地形43Ivである。
バケット8が下端位置HSに接近しているときに、角度αの絶対値が閾値以下になると、オフセット係数Kは0になるので、図12の状態Cに示されるように、刃先8Tが目標施工地形43Iまで落ちる。図12の状態Dに示されるように、バケット8の刃先8Tが下端位置HSを超えて、刃先8Tの直下に存在する目標施工地形43Iが法面に切り替わると、角度αの絶対値が大きくなって閾値の絶対値を超えるので、オフセット係数Kは1になる。その結果、図12の状態Eに示されるように、刃先8Tがオフセット地形43Ivまで上昇する。
バケット8は、図12の状態Fに示されるように、オフセット地形43Ivに侵入しないように法面を掘削する。図12の状態Gに示されるように、バケット8が終了位置EPに向かって移動している最中に刃先8Tが法面の所定位置を超えると、角度αの絶対値が小さくなる。角度αの絶対値が閾値の絶対値以下になると、オフセット係数Kは0になるので、図12の状態Hに示されるように、刃先8Tが目標施工地形43Iまで落ちる。
このように、開始位置SPから終了位置EPまでバケット8が移動する間に、バケット8が上下する現象が発生することがある。この現象を回避するため、切替部26Jは、制御部26CNTに、作業機2が介入制御における目標の形状の施工を開始してから一連の施工を終了するまでは、目標の形状の施工を開始したときにおける目標の形状を維持させる。例えば、介入制御における目標の形状がオフセット地形43Ivである場合、切替部26Jは、オフセット係数Kを1かつ固定フラグFfを1にして、制御部26CNTの距離算出部26Bに与える。
距離算出部26Bは、固定フラグFf=1を受け取ると、固定フラグFfが0になるまで、オフセット係数K=1を維持する。実施形態において、切替部26Jは、左操作レバー25Lがアーム7の操作について中立、すなわちアームが停止しており、かつ停止制御でない場合に、固定フラグFfを0にする。これは、法面の一連の施工が終了するまで、すなわち開始位置SPから終了位置EPまでバケット8が移動することに相当する。
このようにすることで、一連の法面の施工が終了するまで、制御部26CNTは、介入制御における目標の形状であるオフセット地形43Ivの施工を開始してから一連の施工を終了するまで、介入制御における目標の形状をオフセット地形43Ivに維持する。その結果、開始位置SPから終了位置EPまでバケット8が移動する間において、バケット8が上下する現象が回避される。
介入制御における目標の形状が目標施工地形43Iである場合、切替部26Jは、オフセット係数K=0かつ固定フラグFf=1にして、制御部26CNTの距離算出部26Bに与える。この場合も、距離算出部26Bは、固定フラグFf=1を受け取ると、固定フラグFfが0になるまで、オフセット係数K=1を維持する。この処理によって、法面の一連の施工が終了するまで、制御部26CNTは、介入制御における目標の形状である目標施工地形43Iの施工を開始してから一連の施工を終了するまで、介入制御における目標の形状を目標施工地形43Iに維持する。その結果、開始位置SPから終了位置EPまでバケット8が移動する間において、バケット8が上下する現象が回避される。
<実施形態に係る作業機械の制御方法>
図13は、実施形態に係る作業機械の制御方法の一例を示すフローチャートである。実施形態に係る作業機械の制御方法は、作業機コントローラ26が実現する。法面の施工が開始される前に、油圧ショベル100のオペレータは、図2に示されるスイッチ29Sを操作して、介入制御を実行する指令を入力する。また、オペレータは、オフセット量Offを図2に示される表示部29のタッチパネルから入力する。作業機コントローラ26の記憶部26Mに、予めオフセット量Offを記憶させておき、オペレータは、表示部29のタッチパネルを操作して、記憶部26Mからオフセット量Offを読み出してもよい。介入制御は、アーム7が操作される、すなわち左操作レバー25Lがアーム7の操作方向に操作されることによって開始される。
ステップS101において、作業機コントローラ26、詳細には切替部26Jは角度αを求める。この場合、切替部26Jは、センサコントローラ39から傾斜角度θ1,θ2、θ3を、記憶部26Mから刃先8Tの角度βを取得し、式(1)から底面角度θbを求める。また、切替部26Jは、表示コントローラ28から目標施工地形データUを取得して目標施工地形43Iを求め、得られた目標施工地形43Iから角度γを求める。切替部26Jは、角度γ及び底面角度θbを式(2)に与え、角度αを求める。
ステップS102において、切替部26Jは、ステップS101で求めた角度αと閾値αcとを比較する。前述した説明では、切替部26Jは、マップMPA又はマップMPBを用いてオフセット係数Kを求め、介入制御における目標の地形を決定したが、ここでは説明を容易にするために、角度αと閾値αcとを比較して、介入制御における目標の地形を決定する例を説明する。
ステップS101で求めた角度αの絶対値が閾値の絶対値以下である場合(ステップS102、Yes)、ステップS103において、切替部26Jは介入制御における目標の地形を目標施工地形43Iとする。すなわち、切替部26Jは、オフセット係数Kを0にする。ステップS101で求めた角度αの絶対値が閾値の絶対値よりも大きい場合(ステップS102、No)、ステップS104において、切替部26Jは介入制御における目標の地形をオフセット地形43Ivとする。すなわち、切替部26Jは、オフセット係数Kを1にする。
ステップS103において、介入制御における目標の地形が目標施工地形43Iになった場合、切替部26Jは、ステップS105において、固定フラグFfを決定する。実施形態において、固定フラグFfは、次の(1)から(4)に示されるように決定される。この場合、切替部26Jは、操作装置25からアーム操作指令Sgaを取得し、かつ制御部26CNTから介入制御状態Cas又は停止制御状態Cstを取得する。
(1)固定フラグFfの前回値が1である場合、左操作レバー25Lがアーム7の操作について中立であり、かつ停止制御が実行中でない、すなわち停止制御状態Cstでなければ、切替部26Jは固定フラグFfを0にする。
(2)固定フラグFfの前回値が1である場合、左操作レバー25Lがアーム7の操作について中立でないか、又は停止制御が実行中でなければ、切替部26Jは固定フラグFfを1にする。
(3)固定フラグFfの前回値が0である場合、前回の制御状態が介入制御、すなわち介入制御状態Casであれば、切替部26Jは固定フラグFfを1にする。
(4)固定フラグFfの前回値が0である場合、前回の制御状態が介入制御でなければ、すなわち介入制御状態Casでなければ、切替部26Jは固定フラグFfを0にする。
切替部26Jは、ステップS103で求めたオフセット係数K及びステップS105で決定した固定フラグFfを、距離算出部26Bに与える。固定フラグFfが0である場合(ステップS106,Yes)、現時点における目標の地形は維持されないので、ステップS107において、距離算出部26Bは、介入制御における目標の地形を、ステップS103で求められたオフセット係数Kにしたがって、目標施工地形43Iとする。
固定フラグFfが1である場合(ステップS106,No)、現時点における目標の地形は維持されるので、ステップS108において、距離算出部26Bは、介入制御における目標の地形を前回値に維持する。前回値がオフセット地形43Ivであれば介入制御における目標の地形はオフセット地形43Ivであり、前回値が目標施工地形43Iであれば介入制御における目標の地形は目標施工地形43Iである。
ステップS104において、介入制御における目標の地形がオフセット地形43Ivになった場合、切替部26Jは、ステップS109において、固定フラグFfを決定する。固定フラグFfを決定する方法は前述した通りである。
切替部26Jは、ステップS104で求めたオフセット係数K及びステップS109で決定した固定フラグFfを、距離算出部26Bに与える。固定フラグFfが0である場合(ステップS110,Yes)、現時点における目標の地形は維持されないので、ステップS111において、距離算出部26Bは、介入制御における目標の地形を、ステップS104で求められたオフセット係数Kにしたがって、オフセット地形43Ivとする。固定フラグFfが1である場合(ステップS110,No)、現時点における目標の地形は維持されるので、ステップS112において、距離算出部26Bは、介入制御における目標の地形を前回値に維持する。
前述したステップS102においては、角度αと閾値αcとを比較した。切替部26JがマップMPAを用いてオフセット係数Kを求め、介入制御における目標の地形を決定する例を説明する。ステップS102において、切替部26Jは、記憶部26MからマップMPAを読み出し、ステップS101で求めた角度αに対応するオフセット係数Kを求める。マップMPAを用いたオフセット係数Kの決定は、次の(1)から(4)に示すようになる。
(1)現時点における目標の地形がオフセット地形43Ivである場合、角度αの絶対値が閾値α1の絶対値以下であれば、ステップS102においてYesとなる。この場合、切替部26Jはオフセット係数Kを0にする。すなわち、ステップS103において、目標の地形は目標施工地形43Iになる。
(2)現時点における目標の地形がオフセット地形43Ivである場合、角度αの絶対値が閾値α2の絶対値よりも大きければ、ステップS102においてNoとなる。この場合、切替部26Jはオフセット係数Kを1にする。すなわち、ステップS104において、切替部26Jは目標の地形はオフセット地形43Ivになる。
(3)現時点における目標の地形が目標施工地形43Iである場合、角度αの絶対値が閾値α1の絶対値以下であれば、ステップS102においてYesとなる。この場合、切替部26Jはオフセット係数Kを0にする。すなわち、ステップS103において、目標の地形は目標施工地形43Iになる。
(4)現時点における目標の地形がオフセット地形43Ivである場合、角度αの絶対値が閾値α2の絶対値よりも大きければ、ステップS102においてNoとなる。この場合、切替部26Jはオフセット係数Kを1にする。すなわち、ステップS104において目標の地形はオフセット地形43Ivになる。
<目標施工地形43Iが現況の地形よりも上にある場合>
図14は、実施形態において、目標施工地形43Iが現況の地形よりも上にある場合における施工例を示す図である。例えば、盛り土をして法面を形成する場合、現況の地形よりも上に目標施工地形43Iがある。この場合、油圧ショベル100は、施工対象の表土SHPに盛り土をした後、盛り土をした部分にバケット8の底面8Bを押し付けて整形しながら、目標施工地形43Iの位置まで盛り土及び整形を繰り返す。
目標施工地形43Iが現況の地形よりも上にある場合、オフセット地形43Ivfは目標施工地形43Iよりも下方に存在する。この場合、作業機コントローラ26、詳細には切替部26Jは、介入制御における目標の形状を、オフセット地形43Ivsとすることができる。
また、オフセット地形43Ivfは目標施工地形43Iよりも下方に存在する場合、切替部26Jは、目標施工地形43Iに対するバケット8の姿勢に基づいて、介入制御における目標の形状を、オフセット地形43Ivfから目標施工地形43Iの側に予め定められた距離Off2だけ離れた地形としてもよい。実施形態において、目標施工地形43Iよりも下方に存在するオフセット地形43IVfを適宜、第1オフセット地形43Ivfと称する。第1オフセット地形43Ivfから目標施工地形43Iの側に予め定められた距離Off2だけ離れた地形を適宜、第2オフセット地形43Ivsと称する。
第1オフセット地形43Ivfは、目標施工地形43Iからその下方に距離Off1だけ離れた地形である。距離Off1は、図2に示される表示部29のタッチパネルから、オペレータによって設定される。第2オフセット地形43Ivsを規定するための距離Off2は、図2に示される表示部29のタッチパネルから、オペレータによって設定される。第2オフセット地形43Ivfには、前述したオフセット係数Kが乗じられる。オフセット係数Kが0である場合、介入制御における目標の地形は第1オフセット地形43Ivfである。オフセット係数Kが1である場合、介入制御における目標の地形は第2オフセット地形43Ivsである。オフセット係数Kが変更される条件は、前述した通りである。
角度αの絶対値が閾値よりも大きい場合、油圧ショベル100は、施工対象の表面に土を盛ったり、盛った土を平坦にしたり、盛り過ぎた土を取り除いたりする。このため、切替部26Jは、角度αの絶対値が閾値よりも大きい場合、オフセット係数Kを1として、介入制御における目標の地形を第2オフセット地形43Ivfとする。
角度αの絶対値が閾値以下である場合、油圧ショベル100は、施工対象をバケット8の底面8Bで押し付けて、施工対象の表面を第1オフセット地形43Ivfの位置に固める。このため、切替部26Jは、角度αの絶対値が閾値以下である場合、オフセット係数Kを0として、介入制御における目標の地形を第1オフセット地形43Ivfとする。
以上、実施形態は、目標施工地形に対するバケット8の姿勢に基づいて、介入制御における目標の形状を、目標施工地形43Iから予め定められた距離Offだけ離れたオフセット地形43I又は目標施工地形43Iとする。このような処理によって、油圧ショベル100のオペレータは、オフセット地形43Ivを設定するための距離Offを一度設定すれば、法面等の施工毎に距離Offを設定する必要がなくなるので、法面等の形成におけるオペレータの煩雑な作業が低減される。
実施形態は、作業機2が介入制御における目標の形状の施工を開始してから一連の施工を終了するまでは、目標の形状の施工を開始したときにおける前記目標の形状が維持される。このような処理によって、実施形態は、法面の施工時においてバケット8が上下することを抑制できるので、転圧作業における転圧量を一定として、法面のムラを抑制できる。
実施形態は、アーム7が停止しており、かつ介入制御において作業機2を停止させる停止制御が実行されない場合に、施工開始時における目標の形状を維持することを解除する。このような処理により、作業機2が介入制御における目標の形状の施工を開始してから一連の施工を終了した後は、バケット8の新たな姿勢に基づいて介入制御における目標の形状が設定されるので、オペレータの意図に沿った作業機の動作を実現できる。
実施の形態は、オフセット地形43Ivfが目標施工地形43Iよりも下方に存在する場合、介入制御における目標の形状をオフセット地形43Ivfとしてもよい。このような処理により、制御が簡単になる。
実施の形態は、オフセット地形43Ivfが目標施工地形43Iよりも下方に存在する場合、目標施工地形43Iに対するバケット8の姿勢に基づいて、介入制御における目標の形状を、第1オフセット地形43Ivfから目標施工地形43Iの側に予め定められた距離Off2だけ離れた第2オフセット地形43Ivsとしてもよい。このような処理により、施工対象の表面に盛った土を平にしたり、盛り過ぎた土を取り除いたりする場合に、バケット8が第1オフセット地形43Ivfに侵入することを抑制できる。
実施形態において、作業具はバケット8であるが、作業具はチルトバケットでもよい。この場合、例えば、チルトバケットの幅方向と直交する平面でチルトバケットを切ったときの断面の底面と、目標施工地形43Iとのなす角度が、実施形態における角度αとされる。
以上、実施形態を説明したが、前述した内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。