JP2017179357A - 脱気後プリプレグおよび繊維強化プラスチックの製造方法 - Google Patents

脱気後プリプレグおよび繊維強化プラスチックの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、真空圧成形でありながら、成形サイクルが短く、高品質な繊維強化プラスチックを歩止まりよく生産するための、脱気後プリプレグの製造方法、およびそれを硬化させる繊維強化プラスチックの製造方法を提供せんとするものである。【解決手段】強化繊維に熱硬化性樹脂が含浸されてなるプリプレグを積層したプリプレグ積層体1をジグ4の上に配置し、プリプレグ積層体1を覆うカバーフィルム2、ジグ4および容器5によって形成され、カバーフィルム2の外側に位置する第1の空間9と、ジグ4およびカバーフィルム2によって形成され、カバーフィルム2の内側に位置する第2の空間10の両方の空間を減圧することにより、プリプレグ積層体1の揮発分を除去して脱気後プリプレグを製造する脱気後プリプレグの製造方法であって、第1の空間9の圧力よりも第2の空間10の圧力を低くして、プリプレグ積層体1の揮発分の除去を行う。【選択図】図2

Description

本発明は、繊維強化プラスチック内に発生するボイド(空孔)の発生を抑制し、良好な表面品位、高い寸法安定性、および高力学強度を発現する繊維強化プラスチック、およびそれを得るための中間基材である脱気後プリプレグの製造方法に関する。
強化繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化プラスチックは、比強度、比弾性率が高く、力学特性に優れること、耐候性、耐薬品性などの高機能特性を有することなどから産業用途においても注目され、航空機、宇宙機、自動車、鉄道、船舶、電化製品、スポーツ等の構造用途に展開され、その需要は年々高まりつつある。
繊維強化プラスチックの代表的な製造方法として、強化繊維シートに熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを複数積層してプリプレグ積層体とし、その積層体を加熱することによって樹脂を硬化する方法が多く用いられる。熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂と比較して粘度が低いため繊維中に含浸しやすく、古くから繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として用いられてきた。
上記の繊維強化プラスチックの製造方法において、ボイド等の少ない高品質な成形体を得る成形法として、オートクレーブ成形やプレス成形がある。これらの成形法では熱硬化性樹脂に圧力を加えながら樹脂を加熱硬化することができるため、比較的ボイド等の少ない繊維強化プラスチックを得られることが知られている。ただし、オートクレーブ法においては、その成形設備を導入するために多大な初期投資が必要となることが問題視されていた。またプレス成形などの手法では、対象とする成形体の形状が3次元的に複雑な場合、圧力を均一に樹脂に付与することが困難であり、場所によっては加圧不足によりボイドが発生するという課題があった。
一方、近年、真空ポンプとオーブンを用いた脱オートクレーブ成形によって繊維強化プラスチックを成形しようとする試みがある(例えば、特許文献1)。成形設備がオーブンであるため比較的初期投資が少なく、片面型による真空加圧であるため、大型部材を成形しやすいというメリットがある。一方で、樹脂含浸を促進する差圧が1気圧以下であることから、オートクレーブ成形やプレス成形に比べ含浸時間が長くかかり成形サイクルが長くなる他、ボイドが残りやすく、不良品率が高いという問題がある。
このような背景のもと、予めプリプレグ積層体の揮発成分を除去(脱気)し、その脱気後プリプレグをオーブンやオートクレーブなどの成形設備により樹脂を硬化することでボイド量の少ない繊維強化プラスチックを得る手法が知られている。
従来の脱気後プリプレグの製造方法としては、プリプレグ積層体をジグの上に配置しさらにカバーフィルムを被せ閉空間とし、内部の空気を排除し真空状態とすることで揮発分を除去するというものが一般的である。この手法ではプリプレグ積層体の表面にカバーフィルムが圧着され、プリプレグ積層体の端部のみから揮発分が除去されることとなり、効率的に揮発分を除去することが困難であった。これを回避するために、プリプレグ積層体とカバーフィルムの間に通気性の良好な基材(不織布など)を配置する手法も一般的に取られる。通気性の良好な基材を介して揮発分を除去することが可能なため、前述の手法よりも効率的に揮発分を除去可能だが、それでも揮発分の除去に多大な時間が必要であった。
このような手法に対して、従来の真空圧成形法においてカバーフィルムの外側も真空状態とし、効率的にプリプレグ積層体の揮発分を除去することで脱気後プリプレグを得る手法が提案されている(例えば特許文献2〜4)。この手法においては、プリプレグ積層体表面にカバーフィルムならびにプリプレグ積層体を圧着しないため、プリプレグ積層体の内部および表面に僅かな空隙を設けることができるため、プリプレグ積層体の表面積が増え、揮発分を効率的に除去することが可能となる。(以後、この手法を従来のプリプレグ非加圧脱気法と称する。)
ただし、従来の非加圧脱気法ではカバーフィルムによってプリプレグ積層体に付与されていた圧縮力を解放することになるため、揮発分を除去する間はプリプレグ積層体が動きやすい状態となる。例えばC字型の形状をしたプリプレグ積層体にこの手法を適用する場合、角部のプリプレグ積層体が圧力の開放に伴い開口し、基材が金型から浮き上がった状態となる。その後、成形のためにカバーフィルムの外側に空気を流入させると、金型と基材の間の隙間にカバーフィルムが挟まれることがあり、成形体の寸法が著しく乱れることがあった。また、金型に完全に沿わない状態でプリプレグ基材が金型に押し付けられることになり、角部に皺が発生することも多くあった。これを防ぐ方法として、特許文献4ではプリプレグ積層体の上に金属板などを配置する手法がとられている。ただし、成形体が3次元的に複雑な形状を有する場合は、この金属板の形状も複雑なものとなり、金属板の作製に多大な手間とコストが必要であった。また、一般にプリプレグ積層体を用いた成形では、樹脂の硬化収縮などによっても成形前と成形後で厚さが変化するが、基材上面に金属板を配置する方法では、金属板をこのような形状の変化に追従させることは困難であった。
米国特許第6139942号明細書 米国特許出願公開第2014/0083609号明細書 特許第5728493号公報 米国特許第7186367号明細書
本発明の課題は、かかる背景技術における課題に鑑み、ボイドの発生量が少なく、寸法精度が良好であり、力学特性に優れ、さらに表面品位が良好な繊維強化プラスチックを歩止まりよく、かつ短時間で生産できる繊維強化プラスチックおよびその中間基材である脱気後プリプレグの製造方法を提供することにある。
本発明はかかる課題を解決するために次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の脱気後プリプレグの製造方法は、強化繊維に熱硬化性樹脂が含浸されてなるプリプレグを積層したプリプレグ積層体をジグの上に配置し、プリプレグ積層体を覆うカバーフィルム、ジグおよび容器によって形成され、カバーフィルムの外側に位置する第1の空間と、ジグおよびカバーフィルムによって形成され、カバーフィルムの内側に位置する第2の空間の両方の空間を減圧することにより、プリプレグ積層体の揮発分を除去して脱気後プリプレグを製造する脱気後プリプレグの製造方法であって、第1の空間の圧力よりも第2の空間の圧力を低くして、プリプレグ積層体の揮発分の除去を行うことを特徴とする。
また、本発明の繊維強化プラスチックの製造方法は、上記脱気後プリプレグの製造方法により得た脱気後プリプレグを硬化させる繊維強化プラスチックの製造方法である。
本発明によれば、ボイドの発生量が少なく、寸法精度が良好であり、力学特性に優れ、さらに表面品位が良好な繊維強化プラスチックを歩止まりよく、かつ短時間で生産可能となる。
図1は、従来のプリプレグ積層体の揮発分除去方法および真空圧成形手法を示す概念図である。 図2は、本発明のプリプレグ積層体の揮発分除去方法および真空圧成形手法を示す概念図である。 図3は、図2の部分拡大図である。 図4は、従来のプリプレグ積層体の非加圧脱気法を示す概念図である。 図5は、従来のプリプレグ積層体の非加圧脱気法において、揮発分除去後にカバーフィルムの外側の空間に空気を流入させた際の概念図である。 図6は、プリプレグ積層体に含まれる空隙部の例を示す模式図である。 図7は、脱気後プリプレグの製造方法における揮発分の流れを示す模式的である。
本発明者らは、ボイドの発生量が少なく、寸法精度が良好であり、力学特性に優れ、さらに表面品位が良好な繊維強化プラスチックを歩止まりよく、かつ短時間で生産するために鋭意検討し、強化繊維に熱硬化性樹脂が含浸されてなるプリプレグを積層したプリプレグ積層体をジグの上に配置し、プリプレグ積層体を覆うカバーフィルム、ジグおよび容器によって形成され、カバーフィルムの外側に位置する第1の空間と、ジグおよびカバーフィルムによって形成され、カバーフィルムの内側に位置する第2の空間の両方の空間を減圧することにより、プリプレグ積層体の揮発分を除去して脱気後プリプレグを製造する脱気後プリプレグの製造方法であって、第1の空間の圧力よりも第2の空間の圧力を低くして、プリプレグ積層体の揮発分の除去を行うことで、かかる課題を解決することを究明したのである。
本発明によれば、ボイドの発生源である揮発分をプリプレグ積層体から短時間で除去することが可能となる。本発明の手法により揮発分が除去されたプリプレグ積層体は、高い圧力を付与せずともマトリックス樹脂中の揮発分が気化しにくい状態となる。そのため、本発明により得られた脱気後プリプレグ積層体は、繊維強化プラスチックの成形時に大気圧で加圧する程度でもボイドの極めて少ない良好な品位の成形体を得ることができる。オートクレーブ成形機やプレス成形機といった高価な設備を導入する必要もないため、少ない初期投資で良質な繊維強化プラスチックを得ることが可能となる。
従来行われてきた一般的な真空圧成形法の代表例を図1に模式的に示す。従来の真空圧成形法では、プリプレグ積層体1をジグ4上に配置し、カバーフィルム2を上から被せ、カバーフィルム2とジグ4とをシーラント3で接着することにより、プリプレグ積層体1の周囲をカバーフィルム2の内側に位置する閉空間(以後、第2の空間10と称する)とする。さらにこの第2の空間10から空気を除去することにより、第2の空間を真空状態とし、カバーフィルム2の外側に位置する空間(以下、第1の空間9と称する)の空気によってカバーフィルム2およびプリプレグ積層体1に圧力を付与する。この状態でプリプレグ積層体1を加熱し硬化することで、繊維強化プラスチックを得る。
この手法においては、プリプレグ積層体1の周囲を真空状態とすることにより、プリプレグ積層体1に含まれる揮発分を除去することができ、一方でプリプレグ積層体1に圧力を付与することでプリプレグ積層体1から揮発分が気化することも抑えることが可能となる。ただし、プリプレグ積層体1は大気圧で圧縮された状態であるため、プリプレグ積層体1の内部に存在する僅かな隙間も潰れた状態となる。そのためプリプレグ積層体1から気化した揮発分を排出するための揮発分の通り道がなく、繊維強化プラスチックにボイドが発生しない程度にプリプレグ積層体1から揮発分を除去しようとすれば、多大な時間を要する。そのため現状では揮発分を除去するために第2の空間10を真空とした状態で数日間放置し、揮発分を除去した後にプリプレグ積層体1を加熱硬化するという手法が一般に用いられている。ただし、この手法では成形に要する時間が数日間と長く、生産速度を向上することが困難であった。
次に、本発明の脱気後プリプレグ積層体の製造方法に係る真空圧成形法の概念図を図2に、およびその拡大図を図3に模式的に示す。従来の真空圧成形法と同様に、プリプレグ積層体1をジグ4上に配置し、カバーフィルム2を上から被せ、カバーフィルム2とジグ4とをシーラント3で接着することにより、プリプレグ積層体1の周囲をカバーフィルム2の内側に位置する閉空間(第2の空間10)とする。ここでこの第2の空間10とカバーフィルム2の外側に位置し、容器によって囲まれる空間(第1の空間9)の両方を減圧する。このようにすることで、プリプレグ積層体1の内部に存在する空隙部を潰すことなく、プリプレグ積層体1の周囲を真空状態とすることができ、効率的に揮発分をプリプレグ積層体の内部から外部に排出することが可能となる。ここで容器とは、第1の空間を構成する部材の1つであり、減圧環境下においても第1の空間を保持することが可能な程度の強度を有するものとする。容器の強度が十分でなければ、第1の空間を低圧に保つことはできず、良好な品位の繊維強化プラスチックを得ることができない。一般に、容器は高温にも耐え得る金属製(鉄、アルミ、チタン合金等)のものが好ましく、さらには圧力を均等に保持するために、球状、円筒状、半円筒状(あるいはそれらを組み合わせた形状)とするのが好ましい。
なお、先に挙げた特許文献2〜4に記載の手法は、第1の空間9(カバーフィルム外側の空間)と第2の空間10(カバーフィルム内側のプリプレグ積層体の周囲の空間)の空気を完全に取り除くか、第1の空間の圧力に対して第2の空間の圧力を高く設定する方法である。この手法においては、一時的にカバーフィルム2が弛んだ状態となるかあるいは風船型に膨張し、プリプレグ積層体1に与えていた圧縮力が完全に解放され、プリプレグ積層体1とジグ4との間に隙間が生じることとなる。例として、特許文献2〜4の手法によりC型の繊維強化プラスチックを作製する場合の概略図を図4に示す。揮発分除去処理が終了した後、第1の空間9に空気を戻す工程において、図5に模式的に示すように、プリプレグ積層体1に皺12が発生したり、カバーフィルム2の皺11がプリプレグ積層体1の表面に位置することで筋状の凸部13が形成されたりすることで繊維強化プラスチックの外観品位を損ねることがある。あるいは、ジグ4とプリプレグ積層体1との間にカバーフィルム2の噛みこみ14が生じ、寸法不正などの問題を引き起こすことがある。
このような問題に対して、特許文献4ではプリプレグ積層体1の上に金属板などを配置する手法がとられている。ただし、成形体が3次元的に複雑な形状を有する場合は、この金属板の形状も複雑なものとなり、作製に多大な手間とコストが必要であった。また、一般にプリプレグ積層体を用いた成形では成形前と成形後で厚さが変化するため、金属板をこのような形状の変化に追従させることは困難であった。
それに対し本発明では、第1の空間9(カバーフィルム外側の空間)と第2の空間10(カバーフィルム内側のプリプレグ積層体の周囲の空間)の両方の空間から空気を取り除き、かつ第1の空間9の圧力に対して第2の空間10の圧力を低く設定する。このような手法を用いることにより、プリプレグ積層体1に付与する圧力をプリプレグ積層体1の位置ずれや形状復元が行われない程度の微小なものとし、プリプレグ積層体1に存在する僅かな隙間を揮発分の通り道として活用することができ、効率的に揮発分をプリプレグ積層体1の内部から外部に排出することが可能となる。
本発明の脱気後プリプレグ積層体の製造方法で重要となるのは、微小圧力環境下でプリプレグ積層体の揮発分を除去することである。これによりプリプレグ積層体に存在する僅かな隙間を揮発分の通り道として活用することができ、効率的に揮発分をプリプレグ積層体の内部から外部に排出することが可能となる。この揮発分の通り道、すなわちプリプレグ積層体の内部に介在可能な空隙部の例を図6に示す。例えば図6(a)に示すように、プリプレグを積層する際にプリプレグとプリプレグの層間に形成される未接着部18(噛み込み空気部)を揮発分の通り道として活用することも有効である。また、より効率よく揮発分を除去する場合は、図6(b)に示すように、プリプレグ内部に樹脂が含浸していない未含浸部19を形成し、これを揮発分の通り道として活用することも有効である。さらには、図6(c)に示すように、プリプレグ層間に通気性の良好な基材20、例えば熱可塑性樹脂を主成分とする不織布を配置することも有効である。いずれの手法を用いた場合であっても、プリプレグ積層体の内部の空隙部を確保することにより、揮発分を効率的に除去することが可能となる。
本発明においてプリプレグ積層体の空隙部を確保した状態で揮発分の除去を行う際には、次式(1)で計算される脱気後プリプレグの圧縮率φが10%から95%の範囲内を維持しながら揮発分の除去を行うことが好ましい。
φ[%]=(T1−T)/(T1−T2) ・・・(1)。
ここで、式(1)中のTは、揮発分除去中のプリプレグ積層体の厚さ、T1は、第1の空間と第2の空間を大気圧とした際のプリプレグ積層体の厚さ、T2は、第1の空間の圧力を大気圧とし、かつ第2の空間を1hPa以下とした際のプリプレグ積層体の厚さ、である)。またT2は第2の空間の圧力を1hPa以下とした状態で1時間放置した際の値とする。
例として、未含浸部を設けたプリプレグを複数積層して得られたプリプレグ積層体を対象として、圧縮率と揮発分除去効率との関係を図7に模式的に示す。カバーフィルムの外側を大気圧の空気で満たし、カバーフィルムの内側を真空環境とする従来の真空圧成形法では、圧縮率φは100%となる。この場合は、図7(a)のようにプリプレグ積層体内部の未含浸部19が圧縮された状態となり、強化繊維16間の距離も短くなり、空隙部が潰された状態で揮発分の除去が行われることとなる。そのため、揮発分をプリプレグ積層体の外部に排出するために長時間を要することとなる。一方、上述の特許文献2〜4に記載の方法では、図7(c)のように、この圧縮率は0%となる。非加圧状態で揮発分を除去するため、プリプレグの未含浸部の強化繊維間の距離も広く、プリプレグ積層体から気化した揮発分17は容易にプリプレグ積層体の外部に排出されることとなり、短時間で揮発分を除去できる。ただし、前述のようにカバーフィルムがプリプレグ積層体とジグとの間に噛み込んだり、あるいはプリプレグ積層体の形状が復元したりすることにより、成形体の寸法が悪化する恐れがある。これらの問題を回避するためには、図7(b)に示すように、プリプレグ積層体に付与する圧力を弱め、未含浸部の炭素繊維が互いに接触しない状態とし、空隙部を確保した状態で、プリプレグ積層体の揮発分を除去することが好ましい。前記圧縮率φを用いて定量的に表現するならば、圧縮率φは10%〜95%の範囲とすることが好ましい。なお、揮発分をより短時間で除去するためには、φを10%〜85%の範囲とすることが好ましい。さらに、より好ましくはφを10%〜50%の範囲とすることである。
さらに、より短時間で脱気後プリプレグを得ようとする場合は、プリプレグ積層体が加熱された状態で揮発分の除去を行うことが好ましい。一般に温度が高ければ高いほど樹脂の粘度も低下し、短時間で揮発分を除去することが可能となる。一方で、熱硬化性樹脂の硬化が始まると樹脂の粘度が急激に上昇し、揮発分を除去することが困難となる。揮発分の除去は熱硬化性樹脂の反応開始前までに行うことが好ましい。
また、好ましい実施態様として、プリプレグが、強化繊維からなり熱硬化性樹脂を実質的に含まない第1の層と、強化繊維と熱硬化性樹脂を含む第2の層、を含むのがよい。この場合は図6(b)に示すように、プリプレグ内に未含浸部を設けることにより、プリプレグ積層体内部の空隙部の面内方向の連続性を確保し易く、効率的に揮発分を除去することが可能となる。例えば、前記プリプレグ積層体を構成するプリプレグにおいて、強化繊維からなり熱硬化性樹脂を実質的に含まない第1の層と、強化繊維と熱硬化性樹脂を含む第2の層を含むプリプレグが含まれる場合、この第1の層の空隙部が揮発分の通り道となるため、揮発分を効率的に除去可能である。ここで、熱硬化性樹脂を実質的に含まないとは、プリプレグの繊維マトリックス樹脂が付着していない炭素繊維が10本以上纏まっている状態を意味する。このとき、この炭素繊維の表面にサイジング剤(集束剤)が付着していても良い。
さらに好ましい実施態様として、前記の第1の層と第2の層を含むプリプレグにおいて、強化繊維に対する熱硬化性樹脂の含浸の割合、すなわち次式(2)で計算される含浸度ψを10〜90%の範囲とすることが好ましい。
ψ[%]=(第2の層に含まれる強化繊維)/(第1の層に含まれる強化繊維+第2の層に含まれる強化繊維)×100 ・・・(2)。
ψを10%よりも高くすることで型崩れし難いプリプレグとすることができ、さらにψが大きいほどプリプレグの形状は崩れ難くなり、ハンドリング性が向上する。一方、プリプレグの未含浸部の通気性能を考える場合は、含浸度ψを90%以下とすることで連続的な通気パスを得ることが容易となるため脱気の効率は良好となり、含浸度ψが小さいほど脱気の効率は向上する。ハンドリング性と脱気の効率の両面を鑑みる場合、好ましい含浸度ψは20〜80%の範囲であり、さらに好ましくは30〜70%の範囲である。
また、好ましい実施態様として、プリプレグに含まれる熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂の粒子または繊維を含むのがよい。一般にCFRP積層板に面外方向から衝撃負荷が付与されると、CFRP積層板の内部に層に沿った剥離が発生し、CFRP積層板の圧縮強度低下の要因となる。これにより、プリプレグを積層して成形された繊維強化プラスチックにおいて、B層は各層の強化繊維層同士の間に層間樹脂層を形成する。これにより、面外衝撃荷重が加わった際、き裂が柔軟な層間樹脂層に誘導され、かつ熱可塑性樹脂の存在により靭性が高いため剥離が抑制されることで、面外衝撃後の残存圧縮強度を高くすることができ、航空機構造などの設計において有利となる。
また、実際に成形を行う成形型とプリプレグ積層体を揮発分の除去させるための型は必ずしも同じである必要はない。航空機用の熱硬化プリプレグの樹脂の硬化温度は一般的に180℃前後である場合が多いが、一方プリプレグ積層体の揮発分の除去を行うのに最適な温度範囲は室温から樹脂の硬化開始温度付近(例えば120℃前後)までの範囲である。実際の成形に用いられる型は、高耐熱性、高寸法安定性、高剛性が必要とされるため一般に高価となり易いが、プリプレグ積層体の揮発分除去に用いられる型は120℃前後の耐熱性があればよく、しかも成形型ほどの高い寸法精度も要求されない。同様に、プリプレグ積層体の揮発分の除去を行う際に用いる型、フィルム、およびシーラントといった副資材も、120℃前後の耐熱性で十分である。そのため、耐熱性のやや低い、安価な型を何度も使いまわすことが可能であり、製造コストの低減にも繋がる。
前述のように、短時間で脱気後プリプレグを得ようとする場合は、プリプレグ積層体を加熱した状態で揮発分の除去を行うことが好ましく、そのためにはプリプレグ積層体を予め加熱する(予備加熱する)ことが必要である。ただし、上記のとおり、一般にプリプレグ積層体は層間の未接着部(噛み込み空気部)やあるいは繊維層内の未含浸部などの存在によりプリプレグの内部に空隙部が多く含まれる。そのため、前記第1の空間と第2の空間を減圧した状態で加熱しようとすれば、プリプレグ積層体の周囲には空気がなく、材料内の伝熱のみで熱を伝える必要があるため、厚さ方向の熱伝導性が悪く、基材が温まるまでに要する時間が長くなる。特に、プリプレグを完全には圧縮せず、プリプレグ積層体の空隙部を確保した状態で揮発分の除去を行う場合は、基材の加熱に長時間を要する。
そのような場合は、基材を予備加熱する際には脱気後プリプレグの圧縮率φを高くし、予備加熱が完了すれば脱気後プリプレグの圧縮率φを低下させプリプレグ積層体の揮発分の除去を行う方法が有効である。このような手段をとることにより、加熱時には層間の未接着部(噛み込み空気部)および繊維層内の未含浸部が圧縮され、層間の噛み込み空気がなくなったり、あるいは繊維層の未含浸部に含まれる繊維が互いに接触した状態となるため、厚さ方向に熱が伝わり易くなり、プリプレグ積層体の加熱時間を大幅に短縮することが可能である。一方、加熱された基材において、圧縮率を低下させ、プリプレグ内部の空隙部を大きくすることにより、プリプレグの揮発分を効率的に除去することが可能となる。この効果はプリプレグの含浸度ψが低ければ低いほど顕著に現れるが、特にψが10%〜85%の場合に効果が高く、さらにφが10%〜50%のプリプレグにおいて顕著な効果が見られる。さらに、基材を短時間で加熱することが可能な圧縮率φとしては、70〜100%の範囲であることが好ましく、より好ましくは90〜100%である。
もうひとつのプリプレグ積層体の効率的な予備加熱方法としては、前記第1の空間の空気と前記第2の空間を大気圧とした状態で基材を加熱する方法である。プリプレグ積層体の未接着部や未含浸部に空気が満たされているため、空気による伝熱により基材の伝熱性を確保することができ、短時間でプリプレグ積層体を加熱することが可能となる。プリプレグの加熱方法としては、前記第1の空間の空気を加熱し熱伝導により第2の空間を加熱する方法、および加熱源から直接あるいは接触して配置された物質を介して熱伝導によりプリプレグ積層体を加熱する方法、などが考えられるが、いずれの方法も有効である。
本発明に用いる強化繊維は、ガラス繊維、ケブラー繊維、炭素繊維、グラファイト繊維またはボロン繊維等であってもよい。この内、比強度および比弾性率の観点からは、炭素繊維が好ましい。強化繊維の形状や配向としては、一方向に引き揃えた長繊維、二方向織物、多軸織物、不織布材料、マット、編物、組紐等が挙げられる。用途や使用領域によってこれらを自由に選択できる。
本発明の熱硬化性樹脂に含まれる熱硬化性樹脂は特に制限されず、熱硬化性樹脂が熱により架橋反応を起こし少なくとも部分的な三次元架橋構造を形成するものであればよい。これらの熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の変形および2種以上のブレンドの樹脂を用いることもできる。また、これらの熱硬化性樹脂は熱により自己硬化する樹脂であってもよいし、硬化剤や硬化促進剤等とブレンドしてもよい。
これらの熱硬化性樹脂の内、耐熱性、力学的特性および炭素繊維への接着性のバランスに優れていることから、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。特に、アミン、フェノールおよび炭素−炭素二重結合を持つ化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましく用いられる。具体的には、アミンを前駆体とする、アミノフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアニリン型エポキシ樹脂およびテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、テトラグリシジルジアミノジフェニル、トリグリシジル−p−アミノフェノールおよびトリグリシジルアミノクレオソール等の変形が挙げられる。高純度テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂である平均エポキシド当量(EEW)が100〜115の範囲のテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂、および高純度アミノフェノール型エポキシ樹脂である平均EEWが90〜104の範囲のアミノフェノール型エポキシ樹脂が、得られる繊維強化複合材料にボイドを発生させる恐れのある揮発性成分を抑制するために好ましく用いられる。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンは耐熱性に優れており、航空機の構造部材の複合材料用樹脂として好ましく用いられる。
また、前駆体としてフェノールを用いるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も、熱硬化性樹脂として好ましく用いられる。これらのエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレオソールノボラック型エポキシ樹脂およびレゾルシノール型エポキシ樹脂が挙げられる。高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂である平均EEWが170〜180の範囲のビスフェノールA型エポキシ樹脂、および高純度ビスフェノールF型エポキシ樹脂である平均EEWが150〜65の範囲のビスフェノールF型エポキシ樹脂が、繊維強化プラスチックにボイドを発生させる恐れのある揮発分を抑制するために好ましく用いられる。
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂は、粘度が低いため他のエポキシ樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。
また、室温(約25℃)で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、室温(約25℃)で液体のビスフェノールA型エポキシ樹脂と比較すると硬化樹脂中の架橋密度が低い構造となるため、硬化樹脂の耐熱性はより低くなるが靭性はより高くなり、そのためグリシジルアミン型エポキシ樹脂、液体のビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂を組み合わせて用いることが好ましい。
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂は、吸収性が低く耐熱性が高い硬化樹脂となる。また、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂およびフェニルフッ素型エポキシ樹脂も吸収性の低い硬化樹脂となるため、好ましく用いることができる。
ウレタン変性エポキシ樹脂およびイソシアネート変性エポキシ樹脂は、破壊靭性と伸度の高い硬化樹脂となるため、好ましく用いることができる。
これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし適宜ブレンドして用いてもよい。2官能、3官能またはそれ以上のエポキシ樹脂を樹脂に添加すると、系がプリプレグとしての作業性や加工性および繊維強化複合体としての湿潤条件下における耐熱性の両方を提供できるため好ましい。特に、グリシジルアミン型とグリシジルエーテル型エポキシの組合せは、加工性、耐熱性および耐水性を達成することができる。また、少なくとも1種の室温で液体のエポキシ樹脂と少なくとも1種の室温で固体のエポキシ樹脂とをブレンドすることは、プリプレグに好適なタック性とドレープ性の両方を付与するのに有効である。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂およびクレオソールノボラック型エポキシ樹脂は、耐熱性が高く吸収性が低いため、耐熱耐水性の高い硬化樹脂となる。これらのフェノールノボラック型エポキシ樹脂およびクレオソールノボラック型エポキシ樹脂を用いることによって、耐熱耐水性を高めつつプリプレグのタック性およびドレープ性を調節することができる。
エポキシ樹脂の硬化剤は、エポキシ基と反応し得る活性基を有するいずれの化合物であってもよい。アミノ基、酸無水物基またはアジド基を有する化合物が硬化剤として好適である。硬化剤のより具体的な例としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、他のカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタン、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体および他のルイス酸錯体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独または組み合わせて用いることができる。
硬化剤として芳香族ジアミンを用いることにより、耐熱性の良好な硬化樹脂を得ることができる。特に、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐熱性の良好な硬化樹脂が得られるため最も好適である。芳香族ジアミンの硬化剤の添加量は、化学量論的に当量であることが好ましいが、場合によっては、約0.7〜0.9の当量比を用いることにより高弾性率の硬化樹脂を得ることができる。
また、イミダゾール、またはジシアンジアミドと尿素化合物(例えば、3−フェノール−1,1−ジメチル尿素、3−(3−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−トルエンビスジメチル尿素、2,6−トルエンビスジメチル尿素)との組合せを硬化剤として用いることにより、比較的低温で硬化しながらも高い耐熱性および耐水性を達成することができる。酸無水物で硬化させるとアミン化合物硬化に比べて比較的吸収性の低い硬化樹脂が得られる。さらに、これらの硬化剤の内の1つを形成する可能性を有する物質、例えばマイクロカプセル化物質を用いることにより、プリプレグの保存安定性を高めることができ、特に、タック性およびドレープ性が室温放置しても変化しにくくなる。
また、これらのエポキシ樹脂と硬化剤、またはそれらを部分的に予備反応させた生成物を組成物に添加することもできる。場合によっては、この方法は粘度調節や保存安定性向上に有効である。
マトリックスに用いる熱硬化性組成物は熱可塑性樹脂を前記熱硬化性樹脂にブレンドし溶解させることが好ましい。このような熱可塑性樹脂は、通常は炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合より選択される結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましいが、部分的に架橋構造を有していても構わない。
また、熱可塑性樹脂は結晶性を有していてもいなくてもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダゾールからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を熱硬化性樹脂にブレンドし溶解させることが好ましい。
これらの熱可塑性樹脂は、市販のポリマーでもよいし、市販のポリマーより分子量の低いいわゆるオリゴマーであってもよい。オリゴマーとしては、熱硬化性樹脂と反応し得る官能基を末端または分子鎖中に有するオリゴマーが好ましい。
マトリックスとして熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とのブレンドを用いる場合、これらの一方のみを用いた場合よりも結果は良好なものとなる。熱硬化性樹脂の脆さを熱可塑性樹脂の靭性でカバーすることができ、また熱可塑性樹脂の成形の困難さを熱硬化性樹脂でカバーすることができるため、バランスのとれた主剤とすることができる。熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との比(質量部)は、バランスの点で100:2〜100:50の範囲が好ましく、100:5〜100:35の範囲がより好ましい。
本発明においては、第2の層のB層には熱可塑性樹脂の粒子または繊維を用いることで、優れた耐衝撃性を実現できる。本発明で用いる熱可塑性樹脂の粒子または繊維の素材は、熱硬化性樹脂にブレンドし溶解させる熱可塑性樹脂として先に例示した各種熱可塑性樹脂と同様であってもよい。中でも、優れた靭性のため耐衝撃性を大きく向上させることから、ポリアミドが最も好ましい。ポリアミドの中でも、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド6/12共重合体や特開平1−104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物にてセミIPN(高分子相互侵入網目構造)化されたポリアミド(セミIPNポリアミド)は特に良好なエポキシ樹脂との接着強度を与える。この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。ポリアミド粒子の市販品としては、SP−500、SP−10、TR−1、TR−2、842P−48、842P−80(以上、東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD、2001EXD、2002D、3202D、3501D,3502D、(以上、アルケマ(株)製)等を使用することができる。これらのポリアミド粒子は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
なお、ポリアミド粒子は一般的にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と比較して吸水し易い。ポリアミド粒子を含むプリプレグを成形する際は、粒子から排出される水分がボイドの発生原因となる。そのため、本発明の効果が特に顕著に現れる。
熱可塑性樹脂の繊維を用いる場合、熱可塑性樹脂繊維の形状は、短繊維でも長繊維でもよい。短繊維の場合、特開平2−69566号公報に示されるように繊維を粒子と同じように用いる方法、またはマットに加工する方法が可能である。長繊維の場合、特開平4−292634号公報に示されるように長繊維をプリプレグの表面に平行に配列させる方法、または国際公開第94/016003号に示されるように繊維をランダムに配列させる方法を用いることができる。また、繊維を加工して、特開平2−32843号公報に示されるような織物、または国際公開第94/016003号に示されるような不織布材料もしくは編物等のシート型の基材として用いることもできる。また、短繊維チップ、チョップドストランド、ミルドファイバーおよび短繊維を糸に紡いだ後、平行またはランダムに配列させて織物や編物とする方法も用いることができる。
以下、本発明の特徴および効果をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の態様に限定されるものではない。
(プリプレグ基材)
本実施例において使用した熱硬化性樹脂は、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂 “jER(登録商標)”828(三菱化学(株))、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン セイカキュアS(和歌山精化工業(株))、ポリエーテルスルホン “スミカエクセル(登録商標)”5003P(住友化学(株))、ポリアミド粒子“オルガソール(登録商標)”2002(アルケマ(株))をそれぞれ100:33:18:15質量部で混合したものである。まず、混練装置中に液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂とポリエーテルスルホンを投入し、加熱混練を行い、ポリエーテルスルホンを溶解させた。次いで、混練を続けたまま降温し、セイカキュアSおよびポリアミド粒子を加えて撹拌し、熱硬化性樹脂を得た。
次に、一方向に配列させた炭素繊維(引張強度5,900MPa、引張弾性率290GPa)の両面に前記熱硬化性樹脂を加熱・加圧しながら含浸させ、単位面積あたりの炭素繊維重さ200g/m、樹脂重さ110g/mのプリプレグ基材を作製した。このプリプレグを80℃のニップローラーにて加熱・加圧した。また、本プリプレグをナイフにより切断し、その表面および切断面をSEMにより観察することで、プリプレグの表面にポリアミド粒子が局在していることが確認した。また、本プリプレグの切断面のSEM観察により、熱硬化性樹脂が付着していない炭素繊維からなる第1の層と、熱硬化性樹脂が付着していない炭素繊維からなる第2の層を定め、含浸度ψ[%]=(第2の層に含まれる強化繊維)/(第1の層に含まれる強化繊維+第2の層に含まれる強化繊維)×100 の式によりプリプレグの含浸度ψを求め、含浸度ψは80%であることを確認した。
(実施例1)
前述のプリプレグ基材から、繊維配列方向と、繊維配列方向から45度ずらした方向に、それぞれ200×200mmの大きさに切り出した。この切り出したプリプレグ基材24枚を金属平板上に疑似等方([45/0/−45/90]3S)に積層し、真空圧着を5分間行い、プリプレグ積層体を得た。プレートヒーターの上面に金属平板を配置し、厚さ100μmのPTFEフィルムで表面を覆い、このプリプレグ積層体を金属平板の上に配置した。さらにこのプリプレグ積層体の上面にPTFEフィルムを被せ、ポリアミド製のカバーフィルムでプレートヒーター全面を覆い、端部をシーラントで接着することで、プリプレグ積層体の周囲を閉空間(第2の空間)とした。このプリプレグ積層体を含む成形設備を真空ポートつきの容器の内部に配置した。
まず、前記第2の空間から真空ポンプにより空気を排除した。このとき、プリプレグ積層体の上面においてカバーフィルムに皺が発生したが、手でフィルムを調整することによって、この皺を除去した。その後、この容器の第2の空間を1hPa以下になるようにさらに減圧した。その後、容器に鉄製の蓋を被せ密閉空間(第1の空間)とし、第1の空間を700hPaまで減圧した。その後、室温環境下で600分放置した後、第1の空間に空気を流入させ大気圧とし、180℃で2時間加熱して樹脂を硬化し、繊維強化プラスチックを得た。
得られた繊維強化プラスチックの品位は良好であり、その断面を光学顕微鏡で観察しても、ボイドは観察されなかった。
(実施例2〜4、および比較例1)
第1の空間の圧力を表1に記載の条件とする以外は実施例1と同様の手順により繊維強化プラスチックを得た。その結果を表1に纏めて示す。なお、ボイドの発生量の基準として、繊維強化プラスチックの断面を観察した際にボイドが面積比で2%以上観察された場合をD、1%〜2%観察された場合をC、0%〜1%観察された場合をB、さらにはボイドが観察されなかった場合をAと表現した。その結果、第1の空間を大気圧(1010hPa)とし、圧縮率φを100%とする従来の方法ではボイドが発生したが、第1の空間を減圧することにより圧縮率φを減少するにつれ、ボイドが抑制され、良好な品位の繊維強化プラスチックが得られることが明らかになった。
(実施例5〜8)
減圧状態での放置時間を600分から120分と変更する以外は、実施例1〜4と同様の手順により繊維強化プラスチックを得た。その結果を表2に纏めて示す。その結果、実施例1〜4と同様に比較的良好な品位の繊維強化プラスチックを得ることができたが、圧縮率φが大きい実施例5、6においてはややボイドの発生量が増加していた。すなわち、圧縮率が大きくなることで揮発分を除去するのに必要となる時間も長くなったことが、ボイド発生の原因と考えられた。
(実施例9〜11)
金型温度を80℃とし、かつ基材を予め80℃に熱した状態で金型の上に配置する以外は実施例5〜7と同様の手順により繊維強化プラスチックを得た。その結果を表3に纏めて示す。実施例5、6のように23℃で成形した場合は繊維強化プラスチックにボイドが発生していたが、80℃で成形した繊維強化プラスチックにおいてボイドは観察されなかった。すなわち、温度を上昇させることにより揮発分を短時間で除去可能であり、ボイド発生リスクを低減可能であることが明らかとなった。
(実施例12、13、14、15)
積層体とする前のプリプレグを50℃、および90℃に加熱しニップローラーによって加圧することでプリプレグの含浸度を向上させる以外は実施例5、6と同様の手順により繊維強化プラスチックを得た。このときの含浸度は50%、および95%であった。その結果を表4に纏めて示す。第1の空間の圧力を700hPaおよび500hPaとするいずれの場合においても、含浸度が低下するほど、ボイド発生量の少ない成形体を得ることができた。含浸度を低下させることにより、プリプレグ積層体内部の空隙部を増やし、面内方向の連続性を向上できたことが、ボイド発生量の低下に繋がったものと考えられた。
(比較例2)
第1の空間の圧力を1hPa以下、第2の空間の圧力を50hPaとする以外は実施例1と同様の手順により繊維強化プラスチックを得ようと試みた。ただし、第2の空間の圧力を50hPaとした状態で第1の空間を減圧すると、圧力が50hPaを下回ったあたりからカバーフィルムが風船状に膨らみ、やがてカバーフィルムと金型とを接着するシーラント部にて剥離および空気漏れが発生した。そのため、繊維強化プラスチックを得ることはできなかった。結果を表5に示す。
(比較例3)
第1の空間の圧力を1hPa以下、第2の空間の圧力を2hPaとする以外は実施例1と同様の手順により繊維強化プラスチックを得た。第2の空間の圧力を2hPaとした状態で第1の空間を減圧すると、圧力が2hPaを下回ったあたりからカバーフィルムが弛み、カバーフィルムが若干膨張した状態となったが、シーラントとカバーフィルムが剥がれることなく、そのままの形状で保持できた。その後、第1の空間に空気を流入させる工程において、プリプレグ積層体の上面にカバーフィルムの皺が発生した。また得られた強化プラスチックにおいてボイドは観察されなかったが、繊維強化プラスチックの表面には筋状の模様が残り、外観品位が良好ではなかった。結果を表5に示す。
(比較例4)
熱硬化性樹脂を作製する際にポリアミド粒子の添加を行わないこと以外は比較例1と同様の手順により繊維強化プラスチックを得た。得られた繊維強化プラスチックの断面を観察すると多くのボイドを観察することができ、外観品位も良好ではなかった。結果を表6に示す。
(実施例16)
熱硬化性樹脂を作製する際にポリアミド粒子の添加を行わないこと以外は実施例6と同様の手順により繊維強化プラスチックを得た。得られた繊維強化プラスチックの断面を観察してもボイドは観察されず良好な品位であった。実施例6と比較して、水分を含み易いポリアミド粒子を添加しなかったために成形中に排出される揮発分が少なかったことがボイド抑制の一因と示唆された。結果を表6に示す。
また、比較例4との比較により、ポリアミド粒子を含まないプリプレグであっても短い脱気時間でボイドを大幅に抑制できていることが確認できた。ポリアミド粒子添加プリプレグに限定されるものではなく、ポリアミド粒子を含まない一般的なプリプレグにおいても同様に本発明によりボイドの少ない繊維強化プラスチックが得られるものと考えられる。結果を表6に示す。
(実施例17)
金属平板の上に、直角二等辺三角柱状であって、直角部をR=6で面取りした金属ブロックを、長辺面がヒーター側となるように配置し、その金属ブロック上に前記プリプレグを積層すること以外は実施例4と同様の手法で繊維強化プラスチックの成形を行った。得られた繊維強化プラスチックの品位は良好であり、ボイドもなく、目立った樹脂過多部や皺も観察されなかった。結果を表7に示す。
(比較例5)
プリプレグ積層体の外側に、プリプレグ積層体の外形に合わせた金属板を配置すること以外は実施例17に記載の方法にて繊維強化プラスチックの成形を行った。得られた繊維強化プラスチックの角部は黄色がかっており外観品位は良好ではなかった。成形時に金属板が成形体に沿わず、金属板とプリプレグ積層体との間に僅かな隙間ができたために、角部に樹脂過多部が形成されたものと考えられた。結果を表7に示す。
1:プリプレグ積層体
2:カバーフィルム
3:シーラント
4:ジグ
5:剛直な外壁
6:加熱源
7:真空ポート1
8:真空ポート2
9:第1の空間
10:第2の空間
11:カバーフィルムの皺
12:プリプレグ積層体の皺
13:プリプレグ積層体表面の凸部
14:カバーフィルムの噛みこみ
15:熱硬化性樹脂
16:強化繊維
17:揮発分
18:未接着部
19:未含浸部
20:通気性の良好な基材
21:圧力
22:排気方向
23:非加圧時の基材形状(外枠)

Claims (8)

  1. 強化繊維に熱硬化性樹脂が含浸されてなるプリプレグを積層したプリプレグ積層体をジグの上に配置し、プリプレグ積層体を覆うカバーフィルム、ジグおよび容器によって形成され、カバーフィルムの外側に位置する第1の空間と、ジグおよびカバーフィルムによって形成され、カバーフィルムの内側に位置する第2の空間の両方の空間を減圧することにより、プリプレグ積層体の揮発分を除去して脱気後プリプレグを製造する脱気後プリプレグの製造方法であって、第1の空間の圧力よりも第2の空間の圧力を低くして、プリプレグ積層体の揮発分の除去を行う、脱気後プリプレグ積層体の製造方法。
  2. 次式(1)で計算される脱気後プリプレグの圧縮率φが10%から95%の範囲内を維持しながら揮発分の除去を行う、請求項1に記載の脱気後プリプレグの製造方法。
    φ[%]=(T1−T)/(T1−T2) ・・・(1)
    (式(1)中、Tは、揮発分除去中のプリプレグ積層体の厚さ、T1は、第1の空間と第2の空間を大気圧とした際のプリプレグ積層体の厚さ、T2は、第1の空間の圧力を大気圧かつ第2の空間を1hPa以下とした際のプリプレグ積層体の厚さ、である。)
  3. プリプレグ積層体が加熱された状態で揮発分の除去を行う、請求項1または2に記載の脱気後プリプレグの製造方法。
  4. プリプレグが、強化繊維からなり熱硬化性樹脂を実質的に含まない第1の層と、強化繊維と熱硬化性樹脂を含む第2の層を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の脱気後プリプレグの製造方法。
  5. 次式(2)で計算されるプリプレグの含浸度ψが10〜90%である、請求項4に記載の脱気後プリプレグの製造方法。
    ψ[%]=(第2の層に含まれる強化繊維)/(第1の層に含まれる強化繊維+第2の層に含まれる強化繊維)×100 ・・・(2)
  6. 熱硬化性樹脂が熱可塑性樹脂の粒子または繊維を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の脱気後プリプレグの製造方法。
  7. プリプレグ積層体を圧縮しながらプリプレグ積層体の温度を上昇させる昇温過程の後、プリプレグ積層体の温度を一定に保つか、あるいは温度上昇速度を前記昇温過程における温度上昇速度よりも低くし、さらに次式(1)で計算される脱気後プリプレグの圧縮率φを前記昇温過程における脱気後プリプレグの圧縮率φよりも低くしてプリプレグ積層体の揮発分の除去を行う、請求項1〜6のいずれかに記載の脱気後プリプレグの製造方法。
    φ[%]=(T1−T)/(T1−T2) ・・・(1)
    (式(1)中、Tは、揮発分除去中のプリプレグ積層体の厚さ、T1は、第1の空間と第2の空間を大気圧とした際のプリプレグ積層体の厚さ、T2は、第1の空間の圧力を大気圧かつ第2の空間を1hPa以下とした際のプリプレグ積層体の厚さ、である。)
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の脱気後プリプレグの製造方法により得た脱気後プリプレグを硬化させる繊維強化プラスチックの製造方法。
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