以下、本発明の実施の形態による小型油圧ショベルを、後方小旋回式の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図7は第1の実施の形態を示している。図1において、小型油圧ショベル1(以下、油圧ショベル1という)は、種々の作業現場(一例として、市街地のように周囲に障害物が存在する狭い作業現場)で土砂等の掘削作業を行うときに用いられる。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置5とを含んで構成されている。
ここで、油圧ショベル1は、下部走行体2上で上部旋回体4を旋回駆動するときに、上部旋回体4の旋回半径が下部走行体2の車幅内に収まるようにした後方小旋回式油圧ショベルとして構成されている。作業装置5は、例えばスイングポスト式の作業装置として構成され、スイングポスト5A、ブーム5B、アーム5C、作業具としてのバケット5D、スイングシリンダ(図示せず)、ブームシリンダ5E、アームシリンダ5Fおよびバケットシリンダ5G等を備えている。
上部旋回体4は、旋回フレーム6、外装カバー7、キャブ8およびカウンタウエイト9等により構成されている。旋回フレーム6は上部旋回体4の支持構造体を構成している。この旋回フレーム6は、旋回装置3を介して下部走行体2上に取付けられている。旋回フレーム6には、その後部側にカウンタウエイト9、エンジン10が設けられ、左前側にはキャブ8が設けられている。また、旋回フレーム6には、キャブ8とカウンタウエイト9との間に位置して外装カバー7が設けられている。この外装カバー7は、旋回フレーム6、キャブ8およびカウンタウエイト9と共に、エンジン10等を内部に収容する空間(機械室)を画成するものである。
キャブ8は旋回フレーム6の左前側に搭載されている。このキャブ8は、オペレータが搭乗する運転室を内部に画成している。また、キャブ8の内部には、オペレータが着座する運転席、各種の操作レバー(例えば、図3中に示す操作レバー23A)等が配設されている。カウンタウエイト9は上部旋回体4の一部を構成している。このカウンタウエイト9は、後述するエンジン10の後側に位置して旋回フレーム6の後端部に取付けられ、作業装置5との重量バランスをとるものである。また、カウンタウエイト9の後面側は、図2に示すように円弧状をなして形成され、上部旋回体4の旋回半径を小さく収める構成となっている。
エンジン10は、旋回フレーム6の後側に横置き状態で設けられ、カウンタウエイト9の前側に配置されている。このエンジン10は、小型の油圧ショベル1に原動機として搭載されるため、例えば小型のディーゼルエンジンを用いて構成されている。図2、図3に示すように、エンジン10には過給機11が設けられている。この過給機11は、排気管10A内を流れる排気ガスを利用してエンジン10の各気筒内に空気(吸入空気)を強制的に送り込むタービンを含んで構成されている。これにより、過給機11付きのエンジン10は、燃料の燃焼効率が高められ、特に高回転数域で出力トルク(エンジン馬力としてのパワー)を増大することができる。
過給機11付きエンジン10は、例えば排気量が1.5L(リットル)程度のエンジンであっても、例えば2.2L程度のエンジン(過給機なし)と同等の出力特性を有している。このため、過給機11付きエンジン10を用いることは、原動機(エンジン)の小型化と省エネルギ化を図る上で有効な手段となる。しかし、このエンジン10は、高回転数域(例えば、図6に示す特性線32のうち回転数N3以上の領域)で過給機11が有効に機能するが、エンジン10の低回転域(例えば、図6中の規定回転数N2よりも低い領域)では、吸入空気量が不足してトルクの減少率が大きくなる傾向がある。このため、本実施の形態は、エンジン10が低回転数域で油圧ポンプ12から過負荷を受けることがない構成を後述の如く採用している。
例えば、上部旋回体4(車体)の後方からみて、エンジン10の左側には可変容量型油圧ポンプ12(以下、油圧ポンプ12という)が設けられている。この油圧ポンプ12は、作動油タンク13(図3参照)と共にメインの油圧源を構成する。メインの油圧ポンプ12は、可変容量型の斜板式、斜軸式またはラジアルピストン式油圧ポンプ等によって構成され、例えば斜板または斜軸等からなる容量可変部12Aを有している。油圧ポンプ12は、エンジン10の左側(即ち、出力軸側)に動力伝達装置(図示せず)を介して取付けられ、この動力伝達装置によりエンジン10の回転出力が伝えられる。油圧ポンプ12は、エンジン10によって駆動されることにより後述の方向制御弁22等に向けて圧油(作動油)を供給するものである。
熱交換器14はエンジン10の右側に位置して旋回フレーム6上に設けられている。この熱交換器14は、例えばラジエータ、オイルクーラ、インタクーラ等を含んで構成され、エンジン10等の冷却を行うと共に、作動油タンク13に戻される圧油(作動油)を冷却する機能も有している。
排気ガス浄化装置15は、エンジン10の排気ガスに含まれる有害物質を除去して排気ガスを浄化する装置である。この排気ガス浄化装置15は、図2に示すように、例えばエンジン10の左側上部で、前記動力伝達装置の上側となる位置に配設されている。排気ガス浄化装置15は、その上流側がエンジン10の排気管10Aに接続されている。排気ガス浄化装置15は、排気管10Aと共に排気ガス通路を構成し、上流側から下流側に排気ガスが流通する間に、この排気ガスに含まれる有害物質を除去して排気ガスの浄化を行う。
図3に示すように、メインの油圧ポンプ12には容量制御用のレギュレータ16が付設されている。このレギュレータ16は、油圧ポンプ12の容量可変アクチュエータを構成している。レギュレータ16は、後述の車体コントローラ30(ポンプ容量制御装置30C)から出力される制御信号に従って油圧ポンプ12の容量可変部12Aを駆動する。これによって、油圧ポンプ12は、その吐出容量(押のけ容積)が可変に制御される。レギュレータ16は、例えばソレノイド等の電磁アクチュエータまたは油圧アクチュエータにより構成される。
ここで、電磁アクチュエータでレギュレータ16を構成する場合、例えば車体コントローラ30(ポンプ容量制御装置30C)から出力される制御信号の電流値に応じて、レギュレータ16が図3中の小容量(Min)と大容量(Max)との間で伸縮するように駆動される。これにより、油圧ポンプ12は、容量可変部12Aが傾転駆動され、その吐出容量が小容量と大容量との間で可変に制御される。なお、レギュレータ16を油圧アクチュエータで構成する場合には、パイロットポンプ17からのパイロット圧が傾転制御圧としてレギュレータ16に給排される。この場合、前記傾転制御圧は、車体コントローラ30(ポンプ容量制御装置30C)からの制御信号に従って可変に圧力調整され、レギュレータ16は図3中の小容量(Min)と大容量(Max)との間で伸縮するように駆動される構成とすればよい。
パイロットポンプ17は作動油タンク13と共にパイロット油圧源を構成している。このパイロットポンプ17は、エンジン10によりメインの油圧ポンプ12と一緒に回転駆動される。パイロットポンプ17の吐出側には、作動油タンク13との間に低圧リリーフ弁18が設けられている。この低圧リリーフ弁18は、パイロットポンプ17の吐出圧力を予め決められたリリーフ設定圧以下に抑えるものである。
メインの油圧ポンプ12には、その吐出管路19と作動油タンク13との間に高圧リリーフ弁20が設けられている。この高圧リリーフ弁20は、油圧ポンプ12に過剰圧が発生するのを防ぐため、油圧ポンプ12の吐出圧力を予め決められたリリーフ設定圧以下に抑える。このリリーフ設定圧は、低圧リリーフ弁18よりも十分に高い圧力に設定されている。
油圧モータ21は、油圧ショベル1に設ける複数の油圧アクチュエータの代表例を示している。この油圧モータ21は、例えば油圧ショベル1の旋回用または走行用の油圧モータを構成する。なお、油圧アクチュエータとしては、油圧モータ21に限らず、例えば作業装置5に設けられる前記スイングシリンダ、ブームシリンダ5E、アームシリンダ5Fおよびバケットシリンダ5G等を用いることができる。
方向制御弁22は、油圧ポンプ12、作動油タンク13と油圧モータ21との間に設けられている。この方向制御弁22は、例えば6ポート3位置の油圧パイロット式方向制御弁からなり、左,右両側には油圧パイロット部22A,22Bが設けられている。方向制御弁22は、後述の操作弁23から油圧パイロット部22A,22Bにパイロット圧が供給されることにより、中立位置(I)から切換位置(II),(III)のいずれかに切換えられる。このとき、油圧ポンプ12から吐出管路19を介して油圧モータ21に給排される圧油の流量は、方向制御弁22のストローク量(即ち、後述する操作レバー23Aの傾転操作量)に対応して可変に制御される。
油圧モータ21は、方向制御弁22を介して減圧弁型のパイロット操作弁23(以下、操作弁23という)により遠隔操作される。この操作弁23は、方向制御弁22を切換操作する操作装置を構成している。操作弁23は、例えば油圧ショベル1のキャブ8内に設けられ、オペレータによって傾転操作される操作レバー23Aを有している。操作弁23は、そのポンプポートがパイロットポンプ17の吐出側に接続され、タンクポートが作動油タンク13に接続されている。操作弁23の出力ポートは、パイロット管路24A,24Bを介して方向制御弁22の油圧パイロット部22A,22Bに接続されている。
操作弁23は、オペレータが操作レバー23Aを傾転操作したときに、その操作量に対応したパイロット圧をパイロット管路24A,24Bを通じて方向制御弁22の油圧パイロット部22A,22Bに供給する。これにより、方向制御弁22は、中立位置(I)から切換位置(II),(III)のいずれか一方に切換えられ、このときのストローク量(切換え量)は、操作レバー23Aの操作量に対応して増減される。
圧力センサ25は、油圧ポンプ12の吐出圧力(例えば、図7に示す吐出圧力P)を検出する圧力検出器である。この圧力センサ25は、例えば油圧ポンプ12と方向制御弁22との間で吐出管路19に接続され、この吐出管路19内の圧力を吐出圧力Pとして検出する。圧力センサ25からの検出信号は、後述する車体コントローラ30のポンプ容量制御装置30C(図4参照)に出力される。
ガバナ装置26は、例えばエンジン10に対する燃料供給量を可変に制御する電子ガバナにより構成されている。ガバナ装置26は、後述の制御装置28(エンジンコントローラ29)から出力される制御信号に基づいてエンジン10に供給すべき燃料の噴射量を可変に制御する。これにより、エンジン10は、その回転数が前記制御信号による目標回転数Nt(図4参照)に対応した回転数となるように制御される。
回転センサ27はエンジン10の実際の回転数(実回転数)を検出する回転数検出装置である。この回転センサ27は、エンジン10の出力軸(例えば、クランク軸)の回転を検出し、その検出信号を回転数検出信号として制御装置28のエンジンコントローラ29に出力する。エンジンコントローラ29は、エンジン10の実回転数が目標回転数Nt(図4参照)に近付くように、例えば燃料噴射装置であるガバナ装置26をフィードバック制御するものである。
制御装置28は、例えばマイクロコンピュータ等により構成されている。この制御装置28は、エンジンコントローラ29と車体コントローラ30とを含んで構成されている。制御装置28は、その入力側に圧力センサ25、回転センサ27および回転数指示装置31等が接続され、その出力側はレギュレータ16およびガバナ装置26等に接続されている。制御装置28は、回転数指示装置31による目標回転数Nt(図4参照)に従ってエンジン10の回転数を制御する。また、制御装置28は、油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Qとの関係(図7参照)がエンジン10の馬力曲線に基づいたP−Q特性となるように、レギュレータ16を介して油圧ポンプ12の容量制御を行うものである。
回転数指示装置31は、油圧ショベル1のキャブ8内に設けられ、オペレータによって手動で操作される操作ダイヤルにより構成されている。この回転数指示装置31は、外部からのダイヤル操作によってエンジン10の目標回転数Ntを指示する装置である。なお、回転数指示装置31は、前記操作ダイヤルに限られるものではなく、例えば公知のアップダウンスイッチまたはエンジンレバー(いずれも図示せず)によっても構成することができる。
制御装置28のエンジンコントローラ29および/または車体コントローラ30は、例えば不揮発性メモリ,ROM,RAM等からなる記憶部(図示せず)を有している。この記憶部内には、後述の図5に示す目標入力トルクに従った減トルク制御用の処理プログラムと、エンジン10の回転数Nと出力トルクTとの関係を図6に示す特性線32として記憶した出力トルク算出マップと、油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Q(流量)との関係(P−Q特性)を図7に示す特性線34〜37として記憶したP−Q特性マップ等とが格納されている。
図4に示すように、制御装置28の車体コントローラ30は、出力トルク算出装置30A、ポンプ入力トルク設定装置30Bおよびポンプ容量制御装置30Cを含んで構成されている。出力トルク算出装置30Aは、回転数指示装置31により指示されたエンジン10の目標回転数Ntに基づいて、例えば図6に示す特性線32による出力トルク算出マップからエンジン10の出力トルクTを算出する。
ポンプ入力トルク設定装置30Bは、油圧ポンプ12の入力トルク(例えば、入力トルクT1,T2,Ta)を、出力トルク算出装置30Aで算出したエンジン10の出力トルク(特性線32で示す出力トルクT)よりも小さな値に余裕代(例えば、後述の余裕代ΔT1,ΔT2,ΔTa)をもって3段階の異なる目標入力トルクとして設定する。このように、油圧ポンプ12の入力トルクを、エンジン10の出力トルクよりも常に小さな値に設定しておくことにより、エンジン10は油圧ポンプ12からの油圧負荷を受けても、エンジンストールを起こす可能性を小さく減じることができる。
ポンプ容量制御装置30Cは、ポンプ入力トルク設定装置30Bにより設定された入力トルクの範囲で、即ち油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Qとの関係(P−Q特性)が後述の目標トルク特性34〜37を越えないように、図7に示すP−Q特性マップに基づき油圧ポンプ12の吐出容量Qを吐出圧力Pに応じて可変に制御する制御信号をレギュレータ16に出力する。油圧ポンプ12の入力トルクTi(i=1,2,…)は、油圧ポンプ12の吐出容量Qと吐出圧力Pに対して、定数kとすると下記の数1式に示す関係にある。
図6に示す特性線32は、エンジン10の回転数Nと出力トルクTとの関係を表している。これは、エンジン10の性能試験等に基づいて予め知ることができる。図6中の最低回転数N1は、例えば方向制御弁22に代表される全ての方向制御弁を中立位置(I)に戻してエンジン10の油圧負荷を最小にした状態(即ち、油圧ポンプ12およびパイロットポンプ17を回転駆動するエンジン10が無負荷に近い状態)でのアイドル回転数である。このときのエンジン10の出力トルクTは、例えば出力トルクTe1として表される。
規定回転数N2は、最低回転数N1よりも高く、最大トルク発生回転数N3よりも低い回転数である。過給機11付きエンジン10は、回転数Nが規定回転数N2よりも低くなると、低温状態でエンジンストールを起こす可能性がある。このため、ポンプ入力トルク設定装置30Bによる設定値(例えば、入力トルクT2から入力トルクTa)の切替えを行い、低温状態でのエンジンストールを回避するための回転数として規定回転数N2を表している。
即ち、周囲環境の摂氏温度がマイナスで、それによりエンジン10の温度が低い状態(例えば、冷却水温度が−20℃以下となる状態)では、油圧ポンプ12が作動油タンク13から吸込む作動油の粘度が高い。この状態で、操作レバー23Aを急にフル操作し、方向制御弁22が中立位置(I)から切換位置(II)または(III)に切換えられると、油圧モータ21に圧油が供給されて油圧負荷が急増する。このため、エンジン10は、油圧ポンプ12から受ける負荷が急増し、エンジンストールを起こす可能性がある。規定回転数N2は、このような低温状態でのエンジンストールの可能性を回避するために予め決められた規定の回転数を表している。
この規定回転数N2は、ポンプ入力トルク設定装置30Bにより一定値に(回転数N2〜N3の範囲では)固定された目標入力トルクT2を、回転数N2以下では可変値となる目標入力トルクTaに切替えるための回転数でもある。この目標入力トルクTaは、傾斜線33の如く回転数N1〜N2に応じて可変に設定される目標入力トルクである。規定回転数N2は、エンジン10の性能試験等に基づいて予め決めることができる。図6中に示す特性線32(特性線部32B,32Cの間)のように、エンジン回転数が規定回転数N2のときに、エンジン10の出力トルクTは、例えば出力トルクTe2(Te2>Te1)として表される。ポンプ入力トルク設定装置30Bは、後述の如く目標入力トルクTaを可変に設定する構成である。このため、エンジン10の回転数Nが規定回転数N2以下の場合でも、エンジン10がエンジンストールを起こす可能性を小さく減じることができる。
図6に示すように、最大トルク発生回転数N3は、エンジン10の出力トルクTが最大トルクTmとなるときの回転数を表している。最高回転数N4は、エンジン10の出力トルクTが定格トルクTrのときの回転数Nrよりもさらに高くなって、エンジン10の回転数Nが最も高くなる回転数を表している。定格トルクTrは、最大トルクTmよりも小さく、前記出力トルクTe2,Te1よりも大きいトルク値(Tm>Tr>Te2>Te1)である。
ここで、出力トルク算出装置30Aは、回転数指示装置31により指示されたエンジン10の目標回転数Ntに基づいて、例えば図6に示す出力トルク算出マップ(特性線32)からエンジン10の出力トルクを算出する。即ち、目標回転数Ntを最大トルク発生回転数N3以上に設定した場合、出力トルク算出装置30Aは、最大トルクTm以下となるエンジン10の出力トルクTを、図6中の特性線32(特性線部32A)に基づいて算出する。
目標回転数Ntを回転数N2〜N3に設定した場合に、出力トルク算出装置30Aは、エンジン10の出力トルクTを図6中の特性線32(特性線部32B)に基づいて、例えば、出力トルクTe2〜Tmの範囲で算出する。目標回転数Ntを回転数N1〜N2に設定した場合には、エンジン10の出力トルクTが、例えば図6中の出力トルクTe1〜Te2の範囲で、特性線32の特性線部32Cに基づいて算出される。このときの出力トルクTe1〜Te2を、低域側出力トルクTe(即ち、Te=Te1〜Te2)として総称する。
ポンプ入カトルク設定装置30Bは、エンジン10が回転数N3〜N4の範囲では、エンジン10の定格トルクTrに対して第1の余裕代ΔT1だけ下げた減トルク制御用のトルクを、油圧ポンプ12の第1の目標入力トルクT1として設定する。エンジン10が回転数N2〜N3の範囲では、エンジン10の定格トルクTrに対して第1の余裕代ΔT1よりも大きい第2の余裕代ΔT2(ΔT2>ΔT1)だけ下げた減トルク制御用のトルクを、油圧ポンプ12の第2の目標入力トルクT2として設定する。
さらに、ポンプ入カトルク設定装置30Bは、エンジン10が低い回転数N1〜N2の範囲(低回転数域)で、エンジン10の低域側出力トルクTe(即ち、Te=Te1〜Te2)に対して所定の余裕代ΔTaだけ下げた減トルク制御用のトルクを、油圧ポンプ12の低域側目標入力トルクTaとして設定する。この低域側目標入力トルクTaは、エンジン10が低い回転数N1〜N2の範囲で、低域側出力トルクTeに応じて変化(増減)するトルクであり、図6中に示す傾斜線33に沿って可変に設定されている。この傾斜線33は、特性線32の特性線部32Cに対してほぼ平行な特性線である。しかし、傾斜線33は特性線部32Cに対して必ずしも平行な直線である必要はなく、曲線であってもよく、実験データ等に基づいて決定すればよい。
油圧ポンプ12の低域側目標入力トルクTaは、エンジン10の出力トルク値が出力トルクTe2のとき、目標入力トルクTa2(即ち、Ta2=Te2−ΔTa)に設定される。エンジン10の出力トルク値が出力トルクTe1まで低下したときには、油圧ポンプ12の目標入力トルクTaは、目標入力トルクTa1(即ち、Ta1=Te1−ΔTa)として設定される。このときの目標入力トルクTa1〜Ta2を、低域側目標入力トルクTa(即ち、Ta=Ta1〜Ta2)として総称する。
ポンプ容量制御装置30Cは、ポンプ入力トルク設定装置30Bにより前記第1の目標入力トルクT1が設定されるときに、図7に示す目標トルク特性34よりも小さい範囲で、油圧ポンプ12の吐出容量Qを吐出圧力Pに応じて可変に制御する制御信号をレギュレータ16に出力する。このときの目標トルク特性34は、前記目標入力トルクT1に基づいて定められるトルク特性(前記数1式参照)である。また、ポンプ入力トルク設定装置30Bにより前記第2の目標入力トルクT2が設定されるときには、図7に示す目標トルク特性35よりも小さい範囲で、油圧ポンプ12の吐出容量Qは吐出圧力Pに応じて可変に制御される。目標トルク特性35は、前記目標入力トルクT2に基づいて定められるトルク特性(前記数1式参照)である。
目標トルク特性34,34は、油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Qとの関係がそれぞれエンジン10の馬力曲線(即ち、目標入力トルクT1,T2)に基づいたP−Q特性となるように、レギュレータ16を介して油圧ポンプ12の容量制御を行うための特性である。これは、前記数1式を満たす関係である。なお、以下で説明する目標トルク特性36〜37も、これと同様である。
エンジン10の低回転数域において、ポンプ容量制御装置30Cは、ポンプ入力トルク設定装置30Bによる低域側目標入力トルクTaに従って減トルク制御を行う。即ち、ポンプ入力トルク設定装置30Bにより低域側目標入力トルクTaが設定されるときに、例えば図7に示す低域側目標トルク特性36よりも小さい範囲で、油圧ポンプ12の吐出容量Qは吐出圧力Pに応じて可変に制御される。低域側目標トルク特性36は、低域側目標入力トルクTaに基づいて定められる可変なトルク特性である。
この場合、低域側目標入力トルクTaは、目標入力トルクTa1〜Ta2の範囲で可変に設定されるトルク値である。このため、低域側目標トルク特性36は、図7中に実線で示す目標トルク特性35と、図7中に点線で示す目標トルク特性37との間で、それぞれ矢印で示すように変化する可変な特性となっている。
具体的には、エンジン10の目標回転数Ntを最低回転数N1側から規定回転数N2に向けて増加させ、油圧ポンプ12の低域側目標入力トルクTaが、図6に示す目標入力トルクTa2に近付くときには、図7中に実線で示す目標トルク特性36は、目標トルク特性35に漸次接近するように近付く。低域側目標入力トルクTaが目標入力トルクTa2と一致するときは、目標トルク特性36が目標トルク特性35と同じ特性となる。一方、エンジン10の目標回転数Ntを最低回転数N1に向けて低下させ、油圧ポンプ12の目標入力トルクTaが、図6に示す目標入力トルクTa1に近付くときには、低域側目標トルク特性36が図7中に点線で示す目標トルク特性37に近付いた特性となる。目標入力トルクTaが目標入力トルクTa1と一致するときは、低域側目標トルク特性36が目標トルク特性37と同じ特性となる。
第1の実施の形態による小型の油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、油圧ショベル1のオペレータは、上部旋回体4のキャブ8に搭乗し、エンジン10を始動して油圧ポンプ12とパイロットポンプ17を駆動する。これにより、油圧ポンプ12から吐出管路19に向けて圧油が吐出され、この圧油は方向制御弁22を介して油圧モータ21に供給される。また、これ以外の方向制御弁(図示せず)からは他の油圧アクチュエータ(例えば、前記スイングシリンダ、ブームシリンダ5E、アームシリンダ5Fおよびバケットシリンダ5G等)へと供給される。
キャブ8に搭乗したオペレータが走行用の操作レバー(例えば、操作レバー23A)を操作したときには、方向制御弁22を介して油圧モータ21に圧油が供給される。これにより、下部走行体2を前進または後退させることができる。一方、キャブ8内のオペレータが作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、作業装置5を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。油圧ショベル1は、小型で上部旋回体4による旋回半径が小さいため、例えば市街地等のように狭い作業現場でも、上部旋回体4を旋回駆動しながら作業装置5により側溝堀作業等を行うことができる。このような場合に、エンジン10を負荷の軽い状態で稼働することにより騒音の低減化を図ることができる。
次に、第1の実施の形態による目標回転数に基づく出力トルクと目標入力トルクに従った減トルク制御処理について、図5を参照して説明する。
エンジン10を稼働した状態で処理動作がスタートすると、ステップ1で回転数指示装置31による目標回転数Ntを読込む。次のステップ2では、目標回転数Ntが最大トルク発生回転数N3よりも大きいか否かを判定する。ステップ2で「YES」と判定したときには、目標回転数Ntが最大トルク発生回転数N3よりも大きいので、エンジン10の出力トルクTは、図6中の特性線32のうち特性線部32Aに沿ったトルク値となる。
そこで、次のステップ3では、エンジン10が回転数N3〜N4の範囲でのポンプ入力トルクをポンプ入カトルク設定装置30Bにより第1の目標入力トルクT1として設定する。図6に示すように、第1の目標入力トルクT1は、エンジン10の定格トルクTrに対して第1の余裕代ΔT1だけ下げた一定のトルク値として設定される。
次のステップ4では、第1の目標入力トルクT1に従った減トルク制御をレギュレータ16で実行させる。即ち、ポンプ容量制御装置30Cは、ポンプ入力トルク設定装置30Bにより第1の目標入力トルクT1が設定されたときの目標トルク特性34を図7に示すように求める。このときの目標トルク特性34は、前記目標入力トルクT1に基づいて定められるトルク特性である。この上で、ポンプ容量制御装置30Cは、図7に示す目標トルク特性34よりも小さい範囲で、即ち油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Qとの関係(P−Q特性)が目標トルク特性34を越えることがないように、レギュレータ16により油圧ポンプ12の吐出容量Qを吐出圧力Pに応じて可変に制御する。
油圧ポンプ12の吐出圧力Pは、例えば油圧モータ21が受ける慣性負荷等に応じて変化するから、レギュレータ16は、油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Qとの関係が図7に示す目標トルク特性34の範囲を越えないように、油圧ポンプ12の容量可変部12Aを傾転制御するものである。その後は、次のステップ5でリターンし、ステップ1以降の処理を繰返すようにする。
ステップ2で「NO」と判定したときには、目標回転数Ntが最大トルク発生回転数N3以下に設定されているので、次のステップ6では、目標回転数Ntが規定回転数N2よりも大きいか否かを判定する。ステップ6で「YES」と判定したときには、目標回転数Ntが最大トルク発生回転数N3以下で、規定回転数N2よりも大きくなっている。このとき、エンジン10の出力トルクTは、図6中の特性線32のうち特性線部32Bに沿ったトルク値となる。
そこで、次のステップ7では、エンジン10が回転数N2〜N3の範囲でのポンプ入力トルクを、ポンプ入カトルク設定装置30Bにより第2の目標入力トルクT2として設定する。図6に示すように、第2の目標入力トルクT2は、エンジン10の定格トルクTrに対して第2の余裕代ΔT2だけ下げた一定のトルク値として設定される。
次のステップ8では、第2の目標入力トルクT2に従った減トルク制御をレギュレータ16で実行させる。即ち、ポンプ容量制御装置30Cは、ポンプ入力トルク設定装置30Bにより第2の目標入力トルクT2が設定されたときの目標トルク特性35を図7に示すように求める。このときの目標トルク特性35は、前記目標入力トルクT2に基づいて定められるトルク特性である。この上で、ポンプ容量制御装置30Cは、図7に示す目標トルク特性35よりも小さい範囲で、即ち油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Qとの関係(P−Q特性)が目標トルク特性35を越えることがないように、レギュレータ16により油圧ポンプ12の吐出容量Qを吐出圧力Pに応じて可変に制御する。その後は、次のステップ5でリターンし、ステップ1以降の処理を繰返すようにする。
次に、ステップ6で「NO」と判定したときには、目標回転数Ntが規定回転数N2以下に設定されているので、次のステップ9では、目標回転数Ntに基づくエンジン10の低域側出力トルクTeを、図6中に示す特性線32の特性線部32Cに沿ったトルク値(例えば、出力トルクTe1〜Te2の間のトルク値)として算出する。即ち、出力トルク算出装置30Aは、目標回転数Ntが低い回転数N1〜N2の間で任意の回転数に設定された場合に、このときの低域側出力トルクTeを、特性線32の特性線部32Cによる出力トルクTe1〜Te2の範囲で任意のトルク値として、それぞれの場合毎に逐一的に算出する。
次のステップ10では、エンジン10が低回転数域(回転数N1〜N2)でのポンプ入力トルクを低域側目標入力トルクTaとしてポンプ入カトルク設定装置30Bにより設定する。図6に示すように、低域側目標入力トルクTa(即ち、Ta=Ta1〜Ta2)は、エンジン10の低域側出力トルクTe(即ち、Te=Te1〜Te2)に対して所定の余裕代ΔTaだけ下げたトルク値として設定される。即ち、油圧ポンプ12の低域側目標入力トルクTaは、エンジン10の低回転数域(回転数N1〜N2)で、図6中に示す傾斜線33に沿って可変に設定されるトルク値である。
次のステップ11では、低域側目標入力トルクTa(即ち、Ta=Ta1〜Ta2)に従った減トルク制御をレギュレータ16で実行させる。即ち、ポンプ容量制御装置30Cは、ポンプ入力トルク設定装置30Bにより低域側目標入力トルクTaが設定されたときの目標トルク特性36を図7に示すように求める。このときの目標トルク特性36は、前記目標入力トルクTaに基づいて定められる低域側トルク特性である。しかも、低域側目標入力トルクTaは、目標入力トルクTa1〜Ta2の範囲で可変に設定されるトルク値であるため、低域側目標トルク特性36は、図7中に実線で示す目標トルク特性35と図7中に点線で示す目標トルク特性37との間で、それぞれ矢印で示すように変化する可変な特性となっている。
具体的には、エンジン10の目標回転数Ntを最低回転数N1側から規定回転数N2に向けて増加させ、油圧ポンプ12の低域側目標入力トルクTaが、図6に示す目標入力トルクTa2に近付くときには、図7中に実線で示す低域側目標トルク特性36は、目標トルク特性35に漸次接近するように近付く。そして、低域側目標入力トルクTaが目標入力トルクTa2と一致するときは、目標トルク特性35と同じ特性となる。一方、エンジン10の目標回転数Ntを最低回転数N1に向けて低下させ、油圧ポンプ12の目標入力トルクTaが、図6に示す目標入力トルクTa1に近付くときには、低域側目標トルク特性36が図7中に点線で示す目標トルク特性37に近付いた特性となる。目標入力トルクTaが目標入力トルクTa1と一致するときは、目標トルク特性37と同じ特性となる。
この上で、ポンプ容量制御装置30Cは、図7に示す低域側目標トルク特性36(図7中に実線で示す目標トルク特性35と図7中に点線で示す目標トルク特性37との間の特性)よりも小さい範囲で、レギュレータ16により油圧ポンプ12の吐出容量Qを吐出圧力Pに応じて可変に制御する。油圧ポンプ12の吐出圧力Pは、例えば油圧モータ21が受ける慣性負荷等に応じて変化するから、レギュレータ16は、油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Qとの関係が前述の如く可変な低域側目標トルク特性36の範囲を越えないように、油圧ポンプ12の容量可変部12Aを傾転制御する。その後は、次のステップ5でリターンし、ステップ1以降の処理を繰返すようにする。
ところで、小型でコンパクトな構造となった小旋回式(小型)の油圧ショベル1は、大型、中型の機種等に比較して作業装置5による土砂の掘削力が相対的に小さくなっており、エンジン10も可能な限り小型化したいという要求がある。このため、本実施の形態では原動機となるエンジン10には過給機11付きのエンジンを用い、該過給機11によって燃料の燃焼効率を高めることにより、高回転数域での出力トルクを増大できるようにしている。
図11は比較例によるエンジンの回転数Nと出力トルクTとの関係を示している。比較例によるエンジン(過給機なし)は、図11に示すように、低回転域でも出力トルクが大きく減少することはなく、定格トルクTrと同等以上のトルクとなっている。このため、油圧ポンプ入力トルクTpは、定格トルクTrに対して約10%くらい小さい一定のトルク値に設定すればよく、低回転数域でもエンジンストールを起こす虞れはない。
これに対し、第1の実施の形態では、過給機11付きエンジン10を用いることにより、例えば排気量が1.5L(リットル)程度のエンジンであっても、例えば2.2L程度のエンジン(過給機なし)と同等の出力特性を有しているために、エンジン10の小型化と省エネルギ化を図ることができる。しかし、過給機11付きのエンジン10は、エンジン10の低回転域(例えば、図6中の規定回転数N2よりも低い領域)で、吸入空気量が不足してトルクの減少率が大きくなる傾向がある。このため、エンジン10は、低回転数域で油圧ポンプ12を駆動するときに過負荷を受けることがあり、場合によってはエンジンストールを起こす虞れがある。
そこで、第1の実施の形態では、エンジン10の回転数N(エンジン回転数)が最大トルク発生回転数N3以上となる高回転数域では、エンジン10の定格トルクTrに対して第1の余裕代ΔT1だけ下げたトルクを油圧ポンプ12の第1の目標入力トルクT1として設定する。エンジン回転数が回転数N2〜N3の範囲(中域回転数)では、前記定格トルクTrに対して第2の余裕代ΔT2(ΔT2>ΔT1)だけ下げたトルクを第2の目標入力トルクT2として設定する。さらに、エンジン回転数が規定回転数N2以下となる低回転数域(回転数N1〜N2)では、エンジン10の低域側出力トルクTe(即ち、Te=Te1〜Te2)に対して所定の余裕代ΔTaだけ下げたトルク値(ポンプ入力トルク)を低域側目標入力トルクTaとして設定する。
これにより、ポンプ入力トルク設定装置30Bは、ポンプ入力トルクを第1,第2の目標入力トルクT1,T2と低域側目標入力トルクTaとの3段階で設定することができる。また、ポンプ容量制御装置30Cは、ポンプ入力トルク設定装置30Bにより低域側目標入力トルクTaが設定されたときの目標トルク特性36を図7に示すように求める。しかも、低域側目標入力トルクTaは、目標入力トルクTa1〜Ta2の範囲で可変に設定されるため、低域側目標トルク特性36は、図7中に実線で示す目標トルク特性35と図7中に点線で示す目標トルク特性37との間で、それぞれ矢印で示すように変化する可変な特性となっている。
従って、図6に示すように、特性線32によるエンジン10の出力トルクTに対して、油圧ポンプ12の目標入力トルクT1,T2,Taを出力トルクTよりも小さく設定することができ、エンジン10が油圧ポンプ12を駆動するときの油圧負荷が、エンジン10に対し過剰な負荷となって作用するのを防ぐことができる。このため、過給機11付きエンジン10を用いて、該エンジン10の小型化と省エネルギ化を図ることができる上に、エンジン10の低回転数域でもエンジンストールの発生を抑えることができる。
この場合、油圧ポンプ12の吐出圧力Pは、例えば油圧モータ21が受ける慣性負荷等に応じて変化する。しかし、レギュレータ16は、制御装置28(ポンプ容量制御装置30C)からの制御信号に従って、油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Qとの関係が前述の如く可変な低域側目標トルク特性36の範囲を越えないように、油圧ポンプ12の容量可変部12Aを傾転制御する。このため、エンジン10の低回転数域(回転数N1〜N2)でも、油圧ポンプ12からエンジン10が過負荷を受けるのを抑えることができ、エンジンストールの発生を防ぐことができる。
次に、図8ないし図10は第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、ポンプ入力トルク設定装置によりポンプ入力トルクを、第3の目標入力トルクT3(一定値に固定された目標入力トルク)と低域側目標入力トルクTaとの2段階で設定する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、ポンプ入カトルク設定装置30Bは、エンジン10が規定回転数N2よりも大きい範囲(N2〜N4)で、エンジン10の定格トルクTrに対して第3の余裕代ΔT3だけ下げたトルクを油圧ポンプ12の第3の目標入力トルクT3として設定する。エンジン10が規定回転数N2以下となる低回転数域(N1〜N2)の範囲では、前述した第1の実施の形態と同様に低域側目標入力トルクTaが設定される。
第3の目標入力トルクT3は、定格トルクTrに対する余裕代ΔT3を、第1の実施の形態で述べた第2の余裕代ΔT2と等しい値に設定してもよく、これとは異なる値に設定してもよい。換言すると、規定回転数N2は、エンジン10が低温状態で操作レバー23A等の急操作時にエンジンストールを起す可能性を回避できる回転数であればよい。このため、規定回転数N2は、最低回転数N1よりも高く、最大トルク発生回転数N3よりも低い回転数であって、前述の如き条件下でエンジン10のエンジンストールを回避できる回転数であれば、任意の回転数を規定の回転数N2とすることができる。
ポンプ容量制御装置30Cは、ポンプ入力トルク設定装置30Bにより第3の目標入力トルクT3が設定されるときに、当該目標入力トルクT3に基づいて定められる目標トルク特性41の範囲で、油圧ポンプ12の吐出容量Qを吐出圧力Pに応じて可変に制御する。即ち、レギュレータ16は、油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Qとの関係が目標トルク特性41の範囲を越えないように、油圧ポンプ12の容量可変部12Aを傾転制御する。
次に、第2の実施の形態による目標回転数Ntに基づく出力トルクの算出と目標入力トルクに従った減トルク制御処理について、図8を参照して説明する。
エンジン10を稼働した状態で図8の処理動作がスタートすると、ステップ21で回転数指示装置31による目標回転数Ntを読込む。次のステップ22では、目標回転数Ntが規定回転数N2よりも大きいか否かを判定する。ステップ22で「YES」と判定したときには、目標回転数Ntが規定回転数N2よりも大きいので、エンジン10の出力トルクTは、図9中の特性線32のうち特性線部32A,32Bに沿ったトルク値となる。
そこで、次のステップ23では、エンジン10が回転数N2〜N4の範囲でのポンプ入力トルクを、ポンプ入カトルク設定装置30Bにより第3の目標入力トルクT3として設定する。図9に示すように、第3の目標入力トルクT3は、エンジン10の定格トルクTrに対して第3の余裕代ΔT3だけ下げた一定のトルク値として設定される。
次のステップ24では、第3の目標入力トルクT3に従った減トルク制御をレギュレータ16で実行させる。即ち、ポンプ容量制御装置30Cは、ポンプ入力トルク設定装置30Bにより第3の目標入力トルクT3が設定されたときの目標トルク特性41を図10に示すように求める。このときの目標トルク特性41は、前記目標入力トルクT3に基づいて定められるトルク特性である。この上で、ポンプ容量制御装置30Cは、図10に示す目標トルク特性41よりも小さい範囲で、即ち油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Qとの関係(P−Q特性)が目標トルク特性41を越えることがないように、レギュレータ16により油圧ポンプ12の吐出容量Qを吐出圧力Pに応じて可変に制御する。その後は、次のステップ25でリターンし、ステップ21以降の処理を繰返すようにする。
ステップ22で「NO」と判定したときには、目標回転数Ntが規定回転数N2以下に設定されているので、エンジン10の回転数Nは低回転数域となる。このため、次のステップ26〜28にわたる処理を、前述した第1の実施の形態による図5のステップ9〜11にわたる処理と同様に行う。その後は、次のステップ25でリターンし、ステップ21以降の処理を繰返すようにする。
エンジン10の低回転数域において、ポンプ容量制御装置30Cは、図10に示す低域側目標トルク特性42(即ち、図10中に実線で示す目標トルク特性41と図10中に点線で示す目標トルク特性43との間の特性)よりも小さい範囲で、レギュレータ16により油圧ポンプ12の吐出容量Qを吐出圧力Pに応じて可変に制御する。油圧ポンプ12の吐出圧力Pは、例えば油圧モータ21が受ける慣性負荷等に応じて変化するから、レギュレータ16は、油圧ポンプ12の吐出圧力Pと吐出容量Qとの関係が前述の如く可変な低域側目標トルク特性43の範囲を越えないように、油圧ポンプ12の容量可変部12Aを傾転制御する。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、過給機11付きのエンジン10を用いて、該エンジン10の小型化と省エネルギ化を図ることができる上に、エンジン10の低回転数域でもエンジンストールの発生を抑えることができ、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
特に、第2の実施の形態では、ポンプ入力トルク設定装置30Bによりポンプ入力トルクを、第3の目標入力トルクT3(一定値の目標入力トルク)と低域側目標入力トルクTaとの2段階で設定する構成としている。このため、ポンプ入力トルク設定装置30Bによるポンプ入力トルク(目標入力トルク)の設定処理を簡素化することができ、制御処理全体の単純化、効率化を図ることができる。
できる。
なお、前記第2の実施の形態では、定格トルクTrに対する第3の余裕代ΔT3を、例えば第1の実施の形態で述べた第2の余裕代ΔT2と等しい値に設定する場合を図示して説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、第3の余裕代ΔT3および第3の目標入力トルクT3は、これとは異なる値に設定してもよい。即ち、規定回転数N2は、エンジン10が低温状態で操作レバー23A等の急操作時にエンジンストールを起すのを回避可能な回転数であればよい。このため、規定回転数N2は、最低回転数N1よりも高く、最大トルク発生回転数N3よりも低い回転数であって、前述の如き条件下でエンジン10のエンジンストールを回避できる回転数であれば、任意の回転数を規定の回転数N2とすることができる。従って、第3の目標入力トルクT3(第3の余裕代ΔT3)は、規定回転数N2をどのような回転数に規定(選択)するかに応じて変更できるものである。
また、前記各実施の形態では、小型油圧ショベルとしてスイングポスト式の作業装置5を用いる構成とした後方小旋回式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばスイングアーム式の作業装置を用いる型式の小型油圧ショベルに適用してもよい。また、キャブ8に替えてキャノピを用いて運転席を上方から覆う型式の油圧ショベルであってもよい。