JP2017171591A - リグニンからの低分子化合物の新規な製造方法 - Google Patents

リグニンからの低分子化合物の新規な製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、針葉樹等に含まれているリグニンを原料として、デヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】上記課題は、リグニンを原料として、以下の工程1〜工程5を経るデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法によって解決することができる。工程1:リグニンに対して酸化反応を行う工程工程2:工程1で得られた反応生成物を精製する工程工程3:工程2で得られた成分に対して酸化反応を行う工程工程4:工程3の反応生成物と、アルコールとエステル化反応を行う工程工程5:工程4の反応生成物に対してカップリング反応(二量化反応)を行う工程【選択図】なし

Description

本発明は植物中に含まれているリグニン化合物を原料として、その植物に由来するリグニンを分解し、精製、誘導化合成を通して、各種の有機化合物、高分子の製造に有用なビフェニル原料化合物、より具体的にはデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法に関する。
石油は枯渇資源として、エネルギー源、化学原料などに用いられている。一方、近年世界人口の増大、自然資源の破壊などの様々な問題が発生し、石油資源の代替品の需要が高まっている。特に、循環で利用できるバイオ資源が期待されている。そのバイオ資源の1つに植物由来の有機化合物を挙げることができる。
植物由来の有機化合物の1種であるリグニンとは、高等植物の木化に関与する高分子のフェノール性化合物であり、木質素とも呼ばれる。リグニンは巨大な生体高分子であり、木材に20〜30%含まれ、細胞壁に堆積して木質化を起こし、植物体を強固にする。またリグニンは最も豊富に天然存在する芳香族ポリマーであり、リグニンから芳香族原料へ製法(低分子原料化合物の製法)の利用が期待されているが、現在では主に木材からのパルプ・製紙工程における熱源を兼ねた黒液としての利用しか進んでいないのが現状である。本発明はリグニンの低分子原料化合物への利用に向けた課題を鋭意検討する間に見出すに至った。
リグニンはフェノール骨格から三次元網目構造が構成され、その基本骨格がフェニルプロパン単位である。またリグニンの芳香族の核単位を、それぞれグアイアシル核(G核)、シリンギル核(S核)、p−ヒドロキシフェニル核(H核)と称する。天然リグニンは針葉樹リグニン、広葉樹リグニン、イネ科植物リグニンに大別され、一般に針葉樹リグニンはG核、広葉樹リグニンはG核とS核、草本リグニン(イネ科植物)はG核、S核、H核を有するのが特徴である。
天然リグニンの代表的な結合様式を図1に挙げた。針葉樹リグニンにおける各結合様式の比率は、Chakarらの報告では、β−O−4結合:45〜50%、α−O−4結合:6〜8%、β−5結合:9〜12%、5−5結合:18〜25%、4−O−5結合:4〜8%、β−1結合:7〜10%、β−β結合:3%である(非特許文献1参照。)。また、Higuchiの報告では、β−O−4結合:40〜60%、β−5結合:10%、5−5結合:5〜10%、β−1結合:<5%、β−β結合:<5%、その他:10%と推定されている(非特許文献2参照。)。以上の重要なポイントとして(1)エーテル結合とC−C結合二種類が主に存在する、(2)β−O−4結合が半分以上に占めている。従って、原料への利用に対して、その構造は複雑で、低分子化により、様々な芳香族低分子が出来、単一な化合物の精製に困難という問題点がある。
近年、Katayamaらはリグニンに存在する二量体芳香族化合物(各種結合様式による化合物を含む)を分解することができるバクテリアを利用して、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸(PDC)を得ることに成功した(非特許文献3参照、図2参照。)。すなわち、多様なリグニン構造から単一な低分子原料に収斂させることに成功したとも言える。しかしながら、拡大生産において、バクテリアの培養条件は相当厳しい。一つ例として、バイオプロセス製造ではBOD値が高い大量の排水が排出され、その処理が容易でないことに加えて、微生物の生育には資源枯渇が懸念されているリン酸を必要とする。しかし、PDCの生産性は培養液量を基準にして僅かに10g/Lに過ぎない。すなわち、生産効率は現在非常に低いという問題点がある。
F. S. Chakar and A. J. Ragauskas, Industrial Crops and Products, 20, 131(2004) T. Higuchi, Stewart A. Brown, Can. J. Biochem. Physiol., 41, 10, 1963, 621 E. Masai, S.Shinohara, H.Hara, S.Nishikawa, Y.Katayama, M.fukuda, J Bacteriol. 181 (1) 55-62. 1999
本発明は、植物由来の成分であるリグニンを分解し、精製操作によってバニリン類化合物を抽出し、更に若干の数段階の合成段階を経由し、ビフェニル骨格を有するデヒトロジバニリン酸メチルエステルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の別の目的は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、植物の成分リグニンを低分子化し、化学合成プロセス製造で単一な低分子原料に収斂させることである。
本発明は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果なされたものである。すなわち、本発明は、リグニンを原料として、以下の工程1〜工程5を経るデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステル(BVAA)の製造方法である。
工程1:リグニンに対してアルカリ化合物および酸化剤αの存在下水中で酸化反応を行う工程
工程2:工程1で得られた反応生成物を精製する工程
工程3:工程2で得られたバニリンを含む成分に対して酸化剤βの存在下溶媒中で酸化反応を行う工程
工程4:工程3の反応生成物に対して、炭素数1〜12のアルコールの存在下エステル化反応を行う工程
工程5:工程4の反応生成物に対して酸化剤γの存在下カップリング反応(二量化反応)を行い、デヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルを製造する工程
または、リグニンを原料として、以下の工程1,2,3’,および4’を経るデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法である。
工程1:リグニンに対してアルカリ化合物および酸化剤αの存在下水中で酸化反応を行う工程
工程2:工程1で得られた反応生成物を精製する工程
工程3’:工程2で得られたデヒドロジバニリンを含む成分に対して酸化剤βの存在下溶媒中で酸化反応を行う工程
工程4’:工程3’の反応生成物に対して、炭素数1〜12のアルコールの存在下エステル化反応を行う工程
本発明により、得られるデヒドロジバニリン酸ジメチルエステルは、分子内に2つずつのフェノール性ヒドロキシル基、メチルエーテル基、およびアルキルエステル基を有しており、樹脂に配合され得る各種の配合剤の原料や、その他の化学物質の合成原料、機能性ポリマーのモノマーとして有用である。
図1は天然リグニンの代表的な基本骨格とその結合様式を表す。 図2は各種リグニン結合様式からPDCへの合成経路を示した図である。 図3は本発明における針葉樹リグニンから本発明の目的とする低分子化合物、目的化合物の代表例の1つであるデヒドロジバニリン酸ジメチルエステルへの収斂合成法の経路を示す図である。
本発明のデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステル(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメトキシ−5,5’−ビフェニルジカルボン酸ジアルキルエステル)の製造方法の1つは以下に示す工程1〜5を経由する製造方法である。
工程1:リグニンに対してアルカリ化合物および酸化剤αの存在下水中で酸化反応を行う工程
工程2:工程1で得られた反応生成物を精製する工程
工程3:工程2で得られたバニリンを含む成分に対して酸化剤βの存在下溶媒中で酸化反応を行う工程
工程4:工程3の反応生成物に対して、炭素数1〜12のアルコールの存在下エステル化反応を行う工程
工程5:工程4の反応生成物に対して酸化剤γの存在下カップリング反応(二量化反応)を行い、デヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルを製造する工程
また、本発明の他の1つは以下に示す工程1,2,3’,4’を経由するデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法である。
工程1:リグニンに対してアルカリ化合物および酸化剤αの存在下水中で酸化反応を行う工程
工程2:工程1で得られた反応生成物を精製する工程
工程3’:工程2で得られたデヒドロジバニリンを含む成分に対して酸化剤βの存在下溶媒中で酸化反応を行う工程
工程4’:工程3’の反応生成物に対して、炭素数1〜12のアルコールの存在下エステル化反応を行う工程
原料として用いるリグニンとしては、上述した通り、針葉樹、広葉樹、イネ科の植物その他の草木、竹に多く含まれていることが知られており、本発明においてもいずれの植物由来の成分から得られたリグニンについて用いることができる。
針葉樹材としては、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラック、イチョウ及びこれらの関連樹種等からなる群より選ばれる1種以上が好ましいものとして例示される。
広葉樹材としては、ユーカリ、ブナ、アカシア、パラセリアンテス・ファルカタリア、白樺、アスぺン、アメリカンブラックチェリー、イエローポプラ、ウォールナット、カバザクラ、ケヤキ、シカモア、シルバーチェリー、タモ、チーク、チャイニーズエルム、チャイニーズメープル、ナラ、ハードメイプル、ヒッコリー、ピーカン、ホワイトアッシュ、ホワイトオーク、ホワイトバーチ、レッドオーク及びこれらの関連樹種等からなる群より選ばれる1種以上が好ましいものとして例示される。
草本として、イネ、サトウキビ、ムギ、トウモロコシ、パイナップル、オイルパーム等の農産物及びその廃棄物;ケナフ、綿等の工業植物及びその廃棄物;アルファルファ、チモシー等の飼料作物、ネピアグラス、エリアンサス、ミスカンサス等からなる群より選ばれる1種以上が好ましいものとして例示される。竹としては品種を問わず公知のものを使用でき、ここで言う竹には笹を含む。
上記の針葉樹材、広葉樹材、草本や竹を本発明の製造方法において用いる際、それらの形状は特に制限されず、粉末状、チップ状、角材状、丸太状、フレーク状、繊維状(例えば、長さ0.5〜3.0cm、直径0.01〜2.0mm程度のもの)、シート状(厚さ例えば、1mm以上のもの)等の如何なる形状のものであってもよい。植物材料からリグニンを効率良く分解・抽出するという観点から、表面積の大きい粉末状、チップ状、フレーク状、繊維状が好ましい。
これらの中で針葉樹から生成したリグニンを用いることが、上述のG核を多く含む成分を得ることができるので好ましい。また本発明の製造方法においては、粒子サイズが小さい粉末針葉樹リグニンをもちいることが取り扱いやすく、上記の各工程において反応しやすいと言う点で工業的に好ましい。
原料として用いるリグニンは天然木粉から前処理を通して抽出されたリグニンである。前処理法としては、水熱処理、有機溶媒熱処理、糖化処理、蒸解処理などの方法が用いられる。蒸解、糖化処理など天然リグニン骨格の変性が少ない処理法を通して得られるリグニンの方が好ましい。
より好ましい本発明の製造方法として、リグニンの分解物において、バニリン、グアイアコール、アセトバニロン、デヒドロジバニリン(以下、これらを総称してバニリン等、V等と称することがある。)は最も好ましい分解物の1つであり、以下、バニリン、グアイアコール、アセトバニロン、デヒドロジバニリンをそれぞれ記号、V、G、A、BVとの記号で略称することがある。その中でも特にバニリン、デヒドロジバニリンを経由する本発明の製造方法は好ましい態様である。バニリン等を高収率で得ることが上記の工程1における酸化分解法の好ましい態様の基準となる。中でも、ニトロベンゼンを用いる酸化分解法は最も高い収率でバニリン(約10%)が得られる方法であることが判明した。
以下、工程1〜工程5(工程3’、工程4’を含む)について工程ごとに具体的な製造方法について説明する。
(工程1:酸化分解反応工程)
本発明においては、リグニンに対して酸化分解を行うことにより、バニリン等を多く含む成分を得ることが好ましい。一方でリグニンの酸化分解物において、バニリン(以下Vと略称する。以下同じ。)以外に、バニリン酸(VA)、デヒドロジバニリン(BV)、デヒドロジバニリン酸(BVA)などが混在している場合がある。また、これらの低分子分解物以外に、さらに相当な低分子リグニンが残留する場合がある。特に本発明の製造方法においては、V、BVを多く含む成分を用いるのが好ましい。
酸化分解反応の際に用いる酸化剤αとしては、各種の無機化合物、有機化合物が挙げられ、無機化合物としては、酸化銅(II)(酸化第二銅)、二酸化マンガン(IV)を挙げることができ、有機化合物としては、分子内にニトロ基を有する有機化合物を酸化剤αとして用いることが好ましい。具体的には、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロペンタン、ニトロヘキサン、ニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼンである。上記のニトロ基を有する脂肪族有機化合物においては、各種の構造異性体を含んでいることは言うまでもない。好ましくはニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼンである。より好ましくは酸化剤としてニトロベンゼンを用いるニトロベンゼン酸化法を、この工程1において採用することである。我々は鋭意検討の結果、ニトロベンゼン酸化法を用いることによって、リグニンの酸化分解した成分からバニリンを多く含む成分が得られることを見出した。ニトロ基を有する有機化合物はこの酸化分解反応において、酸化剤として作用し、ニトロ基を有する有機化合物自身は酸化分解反応により還元される。酸化剤αは、リグニン重量に対して1.0〜100重量倍、好ましくは10〜80重量倍、より好ましくは20〜50重量倍の量を用いることが好ましい。
酸化分解反応の際に用いる溶媒としては、本発明の酸化分解反応に適切な溶媒である水を用いる必要がある。しかし、酸化分解反応の支障にならない程度に、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶媒を加えることができる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、ヘキサメチルホスホリックトリアミドを挙げることができる。酸化反応後、酸化剤αと反応混合物の分離が容易であるとの観点からも、ニトロベンゼンと相分離できる溶媒である水を用いることが本発明の製造方法において好ましい。
酸化分解反応を行う際に、アルカリ性水溶液中で反応を行うが、水に溶解するアルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類の水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩、アンモニア、アミン化合物を用いることが好ましい。より具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸カルシウム、コハク酸リチウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸マグネシウム、コハク酸カルシウム、アンモニア水溶液、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、アニリン、ピリジンなどを好ましく挙げることができる。
これらのアルカリ化合物を水に対して0.1〜3.0モル/Lの濃度となるように溶解した水溶液を好ましく用いることができる。より好ましくは1.0〜2.0モル/Lの濃度の水溶液を用いることである。これらの中で、これらアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、またはアルカリ金属の炭酸水素塩は化合物として反応器内に加えることが取り扱いやすさ、添加量を正確に計量できる観点から、水溶液とした場合に水溶液の作成の容易さ、溶解度が大きいといった観点から好ましい態様である。また、これらのアルカリ化合物はリグニンの重量に対して0.5〜20.0重量倍用いることが好ましい。より好ましくは1.0〜10.0重量倍用いることである。
反応温度としては、100〜200℃で行うことが好ましく、より好ましくは120〜190℃、更により好ましくは150℃〜185℃である。反応圧力は常圧〜500kPa下で行うことが好ましく、より好ましくは105〜400kPaである。反応後は固形分を濾別し、液体成分を適切な有機溶媒に溶解し、水で抽出する。抽出操作における振とう後の水層(水相)を塩酸、硫酸等の無機酸にて中和(pH=7)ないしpHが4.0程度になるまで酸性にして再び水で抽出する。その振とう後の有機層(有機相)を抽出、溶媒を留去し乾燥することで目的とするVを多く含む成分を得ることができる。
(工程2:精製工程)
上記の様な工程1で得られた成分はV、G、A、BVが多く含む成分を得ることができるものの、概ね10〜50重量%に過ぎず、最終化合物を製造するに当たっては、これらのうちVやBVをより多く含む成分を得る必要がある。特に好ましくは、よりVを多く含む成分を得ることである。そのため工程1で得られた成分を精製することが好ましい。
精製工程では、精製することでバニリン等のうち1種の化合物の成分を多く含む成分を取り出す必要がある。重量基準でバニリン等のうち1種の化合物の成分を70重量%以上含むような成分にまで精製することが好ましい。精製方法としては、蒸留、ろ過、抽出、再結晶、または再沈殿などが通常の精製操作を挙げることができるが、精製前の状態が液状であることなどを勘案すると、本発明においては蒸留操作により精製を行うことが好ましい。
蒸留操作としては、常圧下での単蒸留、分別蒸留など通常の蒸留方法を行うことができる。精製化合物の熱分解を避けるために塔頂温度が200℃以下となるような低温下での単蒸留、減圧下で蒸留精製することが好ましい。蒸留によって、軽い成分として主にグアイアコール類化合物がある。一方、未蒸留成分(高沸点成分、蒸留不能成分を含む)としてビフェニル、オリゴマーリグニンなどがある。更に、主成分として少量のアセトバ二ロン、バニリン酸など物質を含有するバニリンが得られる。
本発明の製造方法においては、上記の様にして得られたバニリンを原料にして目的化合物の製造を行う。しかし更に、特に蒸留精製操作を行った後の蒸留釜内残渣の成分や、ろ過操作を行った後の濾液成分(もしくは固形成分)、抽出操作を行った後の固形成分、再結晶操作もしくは再沈殿操作を行った後の溶媒中に溶け込んでいる成分など、通常の精製操作においては、十分に精製できていないと判断される成分中にも、既に精製・単離したV等の化合物群中の1種の化合物、またはその1種以外の化合物に該当しないが、上記のV等の化合物群に該当する成分が含まれている場合がある。本発明の製造方法においては、リグニンから目的化合物(BVAA)をより多く製造するために、これらの精製後の残渣成分に対して、以下に示す酸化反応工程からカップリング反応(二量化反応)工程の少なくとも一部の反応工程を行い、目的化合物であるデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステル(BVAA)を製造することもできる。
(工程3:酸化反応工程)
工程2で得られたバニリン、バニリン酸、グアイアコール、アセトバニロン等の混合物に対して酸化反応を行うことでより収率良くバニリン酸を製造することができる。酸化反応を行うにあたって、酸化剤βを用いることが好ましい。好ましく用いられる酸化剤βとしては、酸化銀(I)、亜塩素酸ナトリウムもしくは亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸アルカリ金属塩、クロム酸ナトリウム、クロム酸カリウム、重クロム酸ナトリウム、重クロム酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムもしくは過マンガン酸カリウム等のクロム酸アルカリ金属塩、重クロム酸アルカリ金属塩、もしくは過マンガン酸アルカリ金属塩、酸化ビスマス(III)を挙げることができるが、好ましくは酸化銀(I)、または酸化ビスマス(III)である。
これらの酸化剤βは、BVの含量が少ないバニリン等1モルに対して、0.9〜3.0モル当量を用いることが好ましい。より好ましくは0.98〜2.0モル当量である。反応温度は50〜200℃で実施することが好ましい。より好ましくは60〜180℃である。また、反応時の圧力としては常圧で十分である。反応溶媒として水、炭素数1〜6のアルコール、グリコール、エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶媒を用いても良い。これらの中でも、水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、ヘキサメチルホスホリックトリアミドを用いることが好ましい。
工程3の酸化反応もアルカリ水溶液中で行うことも好ましい態様である。用いるアルカリ化合物としては、上記工程1:酸化分解反応工程で説明した化合物と同種類、同量を用いるアルカリ性水溶液中で実施することが好ましい。
更に、酸化反応終了後は、再結晶、再沈殿、蒸留、洗浄などの通常の操作にて精製することが好ましい。
(工程3’:酸化反応工程)
工程3’は工程2で得られた成分のうち、バニリンを含む成分の代わりに、デヒドロジバニリン(BV)を含む成分を用いることに特徴がある。工程2における精製・単離条件により、BVを含む成分を得ることができるであろう。デヒドロジバニリンは1分子内にアルデヒド基を2つ有するので、酸化剤βを用いる量の好ましい範囲が工程3の場合に対して2倍モル当量となる点に留意する必要がある。また、反応前の分子量も大きいので、バニリン(V)とは溶媒への溶解性が異なるとかが得られ、反応溶媒の選択に留意が必要である。更に、酸化反応後の分子量もバニリン酸(VA)の約2倍であるので、VAとは沸点が異なり蒸留精製の操作も異なる点、溶媒への溶解性が異なるので再結晶・再沈殿・洗浄操作に最適な溶媒が異なる可能性がある点に留意が必要である。
(工程4、工程4’:エステル化反応工程)
まず工程4、すなわちバニリン酸に対してエステル化反応を行う工程について述べる。
工程3で得られた、バニリン酸を炭素数1〜12のアルコールとエステル化反応を行うことによりバニリン酸アルキルエステルを製造することができる。炭素数1〜12のアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデシルアルコールを挙げることができる。これらのアルコールには、各種の構造異性体、光学異性体も含まれるのは言うまでもない。これらの中でも、メチルアルコール、またはエチルアルコールが好ましい。エステル化反応の際には、上記の炭素数1〜12のアルコールそのものを溶媒として用いて、加熱するか、又は別途添加した溶媒を還流加熱させることで反応を進行させることができる。炭素数1〜12のアルコールを溶媒として用いる場合には、バニリン酸に対して大過剰、具体的には10倍モル〜1000倍モル、好ましくは20倍モル〜500倍モルの量を用いることが好ましい。他に別途溶媒を添加して反応を行う場合には、炭素数1〜12のアルコールをバニリン酸に対して1.2〜20倍モル、好ましくは2.0〜10倍モルの量を用いることができる。反応温度としては60〜250℃が好ましい。より好ましくは反応温度63〜200℃で実施することである。また、反応時の圧力としては常圧〜3.0MPaで十分である。
またエステル化反応においては、基質であるバニリン酸自体が酸触媒として機能する場合もあるが、更に別の酸触媒化合物を用いるとエステル化反応の反応速度が向上する場合があり好ましい。このような酸触媒化合物としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硫酸、亜硝酸、亜リン酸、塩素酸、過塩素酸のような無機の酸化合物や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の有機酸化合物を用いることができる。酸触媒の使用量は基質のバニリン酸に対して微量で十分であり、バニリン酸1モルに対して、1/5モル〜1/100000モルの範囲で用いることが好ましい。より好ましくは1/3モル〜1/10000モルの範囲で用いることである。エステル化反応終了後は、再結晶、再沈殿、蒸留、洗浄などの通常の操作にて精製することが好ましい。
なお、工程4’はデヒドロジバニリン酸に対してエステル化反応を行う工程であるが、工程3で得られた反応生成物を用いる代わりに工程3’で得られた反応生成物を用いること、およびエステル化される炭素数1〜12のアルコール及び触媒の量が2モル倍となることに関する事項に留意する以外は同じ条件を採用することでエステル化反応を進めることができる。触媒については微量で反応が進行するのであれば、特段留意する必要はないであろう。
(工程5:カップリング反応工程)
工程4で得られたバニリン酸メチルエステルに対して、酸化剤γ(カップリング剤)の存在下で2分子同士をカップリング反応することで目的生成物である、デヒドロジバニリン酸ジメチルエステルを製造することができる。
カップリング反応を行うにあたって、酸化剤γ(カップリング剤)を用いることが好ましい。好ましく用いられる酸化剤γ(カップリング剤)としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過マンガン酸カリウムを上げることができるが、好ましくは過硫酸ナトリウムまたは過硫酸カリウムである。
これらの酸化剤γ(カップリング剤)は、バニリン酸メチルエステル1モルに対して、0.5〜2.0モル当量用いることが好ましい。より好ましくは0.80〜1.8モル当量である。酸化剤γを循環利用するために、少量な酸化鉄(III)の導入は酸化剤の再生に役に立つ。
反応温度は50〜200℃で実施することが好ましい。より好ましくは反応温度63〜180℃で実施することである。また、反応時の圧力としては常圧で十分である。反応溶媒として水、炭素数1〜6のアルコール、グリコール、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒を用いても良い。これらの中でも、水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレンを用いることが好ましい。酸化反応終了後は、再結晶、再沈殿、蒸留、洗浄などの通常の操作にて精製することが好ましい。
1)GC分析
表1、表2及び表3に示したリグニンの酸化分解反応における反応生成物、その後の蒸留精製後の各留分の分析評価結果(転化率、収率等)は以下に示したGC分析操作により行った。
転化率はガスクロマトグラフィー(Agilent Technologies 6850 InertCap1-MS 0.25m×30mH=0.25μm)によって組成の分析を行い、算出した。基質の溶媒には、市販のDMF(和光社製、純度99.0%以上)、シリル化剤にはN,O−ビストリメチルシリルアセトアミド(和光社製、純度99.0%以上)を用いた。以下により詳細な実験操作を示した。
試料は、0.1gの反応生成物サンプルに、0.8mLシリル化剤、10mLのDMFをサンプル瓶に混合し、90℃で20分間シリル化を行った後、得られたサンプルを0.1ml注入して測定を行った。
2)HPLC分析
蒸留精製後の酸化反応、エステル化反応、カップリング反応の反応生成物の分析評価結果は以下に示したGC分析操作により行った。
転化率はHPLC(Agilent Technologies 1200 Infinity Series カラム ODS MG−5 2.0/250)によって分析を行う条件は0.1%トリフルオロ酢酸90wt%水溶液10wt%DMF流速1.2mL/minとなる。
[実施例1](バニリン、バニリン酸を経る工程)
以下に示した操作にて、デヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルを製造した。
1)リグニンのニトロベンゼン酸化分解
ステンレス製オートクレーブ中に針葉樹リグニン(スギ)2.0g、2N水酸化ナトリウム溶液700mL及びニトロベンゼン40mL(48.0g)を封入し、170℃で2時間処理することによって行われた。反応液のGC分析結果を下記の表1に示した。
G:グアイアコール、V:バニリン
VA:バニリン酸、A:アポシニン
BV:デヒドロジバニリン(ビスバニリン)
VVA:2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメトキシ−5−アルデヒド−ビフェニル−5’−カルボン酸
次に、ろ過によって固体分を除去した後、酢酸エチルを加え、水で抽出した。水溶液をろ過して回収した。回収された水溶液をpH4.0にして、酢酸エチルを加えた。有機相を抽出、乾燥した。0.19gの黒色オイルが得られた。HPLC及びGCの測定によって、黒色オイルの成分の分析結果を下記の表2に示した。
V:バニリン、A:アポシニン(アセトバニロン)、VA:バニリン酸、
G:グアイアコール、BV:デヒドロジバニリン(ビスバニリン)
2)蒸留精製
蒸留精製のモデル混合物として、市販の試薬であるバニリン(V)(特級、純度98%以上、和光純薬工業)、バニリン酸(VA)(純度98%以上、東京化成工業)、アセトバニロン(A)(純度98%以上、東京化成工業)、グアイアコール(G)(純度98%以上、東京化成工業)を発明者らの以前の分析によるリグニン分解物成分の比率で混合調製した。調製した479.5g混合物の単蒸留を行った。蒸留の結果は以下の表3に示した。主留成分が約86.1重量%でVが含有している成分であることが確認された。また、蒸留器の器底にBVとVAはほぼ残っていたことが分かった。
G:グアイアコール、V:バニリン、A:アポシニン(アセトバニロン)、
VA:バニリン酸、BV:デヒドロジバニリン(ビスバニリン)
以下、下記のスキーム(合成経路)に沿って目的化合物BVAAの1種であるデヒドロジバニリン酸ジメチルエステル(BVAM)を製造する。なお、以下の合成経路内に示した反応条件は一例であって、詳細な反応条件まで以下の操作の記載と一致していることを保証するものではない。
3)蒸留精製物の酸化反応(バニリン酸の合成)
1Lナスフラスコに、20.0g蒸留物(バニリン含量86.1%)、24.1g酸化銀(I)、17.2g水酸化ナトリウム、125mLの水を加えた。マントルヒータを用いて、80℃で3時間撹拌した。反応液をろ過により、銀塩(或いは無機銀)を除去した。反応液温度を氷水浴で下げた後、200mLの2M塩酸を徐々に反応液に加えて中和した。反応液を酢酸エチル(100mL×3回)で抽出した。得られた有機相を濃縮し、乾燥して、約19.4g白色固体を回収した。水中二回で再結晶することにより、目的物であるバニリン酸11.2gを得た。
収率:58.9%、融点:211.5℃、IR(KBr)3483cm−1、1673cm−1、1203cm−1H−NMR(500MHz、DMSO−d、298K)、δ=9.69(s、1H)、7.44〜7.50(m、J=8.7Hz、2H)、6.84(d、1H)、3.82(s、3H)ppm、Td5:204.3℃
4)バニリン酸メチルエステルの合成
20.0gバニリン酸を250mLのメチルアルコールに溶解させて、濃硫酸1mLを加え、100℃高圧オートクレーブ中2.5時間撹拌した。反応液を50mLまでに濃縮して、300mLの0℃の水に落として、白色結晶が析出した。ろ過、乾燥により、19.1g目的物を得た。
収率:88.1%、融点:64℃、IR(KBr)3538cm−1、1698cm−1、1298cm−1H−NMR(500MHz、DMSO−d、328K)δ=9.80(s、1H)、7.48〜7.45(m、2H)、6.88(d、J=8.1Hz、1H)、3.82(s、3H)、3.80(s、3H)ppm、Td5:174.5℃
5)デヒドロジバニリン酸メチルエステルの合成
バニリン酸メチル20.0g、1.2g硫酸鉄(III)、過硫酸ナトリウム20.0g、水400mLを加えて80℃で1.5時間撹拌した。ろ過により、固体を回収した。水(50mL×3回)及び酢酸エチル(50mL×2回)で洗浄した。最後にアセトン中再結晶(2回)により、18.8gの目的化合物を得た。
収率:94.5%、融点:230℃、IR(KBr):2955cm−1、1713cm−1、1227cm−1H−NMR(500MHz、DMSO−d、298K)δ=9.53(s、2H)、7.48(dd、J=8.1、3.0Hz、4H)、3.91(s、6H)、3.81(s、6H)ppm、Td5:314.7℃
全工程において、収率は下式により2.92%であった。
1)リグニンを酸化分解する工程:9.50%
2)蒸留精製工程:62.6%
3)バニリンを酸化し、バニリン酸を得る酸化工程:58.9%
4)バニリン酸とメチルアルコールからバニリン酸メチルエステルを得るエステル化反応工程:88.1%
5)バニリン酸メチルエステル2分子を結合するカップリング反応工程:94.5%
全収率=0.0950×0.626×0.589×0.881×0.945×100=2.92(%)
[実施例2](デヒドロジバニリン、デヒドロジバニリン酸を経る製造工程)
3’)デヒドロジバニリン(BV)の酸化反応(デヒドロジバニリン酸の合成)
1Lナスフラスコに、上記の工程2の精製工程で得てデヒドロジバニリンを含む成分から得た20.0gのBV、14.1gの酸化銀(I)、14.0gの水酸化ナトリウムを、250mLの水に加えた。マントルヒータを用いて、80℃で60分撹拌した。反応液をろ過により、銀塩(或いは無機銀)を除去した。反応液温度を氷水浴で下げた後、20mLの2M塩酸を徐々に反応液に加えて中和した。反応液を30分静置して、白色固体が析出した。ろ過、乾燥により、約19.4g白色固体を回収した。水中二回で再結晶により、収率は約60.2%目的物であるデヒドロジバニリン酸11.2g(98.7%)を得た。
収率50.6%、mp211.5℃;IR(KBr)3483cm−1,1673cm−1,1203cm−1H−NMR(500MHz,DMSO−d,298K)δ=9.69(s,1H),7.44〜7.50(m,J=8.7Hz,2H),6.84(d,1H),3.82(s,3H);Td5:204.3℃
4’)デヒドロジバニリン酸(BVA)のエステル化反応(デヒドロジバニリン酸メチルエステルの合成)
20.0gのBVAを250mLメタノールに溶解させて、濃硫酸1mLを加え、100℃高圧オートクレーブ中2.5時間撹拌した。反応液を50mLまでに濃縮して、300mLの0℃の水に落として、白色結晶が析出した。水(50mL×3回)及び酢酸エチル(50mL×2回)で洗浄した。アセトン中再結晶(2回)により、15.3gの目的物を得た。
収率70.6%、融点:230℃、IR(KBr):2955cm−1、1713cm−1、1227cm−1H−NMR(400MHz、DMSO−d、298K)δ=9.53(s、2H)、7.48(dd、J=8.1、3.0Hz、4H)、3.91(s、6H)、3.81(s、6H)ppm、Td5:314.7℃
本発明により、得られるデヒドロジバニリン酸ジメチルエステルは、分子内に2つずつのフェノール性ヒドロキシル基、メチルエーテル基、およびアルキルエステル基を有しており、樹脂に配合され得る各種の配合剤の原料や、その他の化学物質の合成原料、機能性ポリマーのモノマーとして有用である。

Claims (9)

  1. リグニンを原料として、以下の工程1〜工程5を経るデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法。
    工程1:リグニンに対してアルカリ化合物および酸化剤αの存在下水中で酸化反応を行う工程
    工程2:工程1で得られた反応生成物を精製する工程
    工程3:工程2で得られたバニリンを含む成分に対して酸化剤βの存在下溶媒中で酸化反応を行う工程
    工程4:工程3の反応生成物に対して、炭素数1〜12のアルコールの存在下エステル化反応を行う工程
    工程5:工程4の反応生成物に対して酸化剤γの存在下カップリング反応を行い、デヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルを製造する工程
  2. 前記工程1において、アルカリ化合物がアルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物である請求項1に記載のデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法。
  3. 前記工程1において、酸化剤αがニトロ基を有する有機化合物または金属酸化物である請求項1〜2のいずれか1項に記載のデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法。
  4. 前記工程2において、精製工程が蒸留、ろ過または抽出により反応生成物を精製する工程である請求項1〜3のいずれか1項に記載のデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法。
  5. 前記工程3において、酸化剤βが酸化銀(I)である請求項1〜4のいずれか1項に記載のデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法。
  6. 前記工程4において、炭素数1〜12のアルコールがメチルアルコールまたはエチルアルコールである請求項1〜5のいずれか1項に記載のデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法。
  7. 前記工程5において、酸化剤γが過硫酸ナトリウムである請求項1〜6のいずれか1項に記載のデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法。
  8. 前記工程3において酸化剤βが酸化銀(I)であり、且つ、前記工程4において炭素数1〜12のアルコールがメチルアルコールまたはエチルアルコールである請求項1〜7のいずれか1項に記載のデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法。
  9. リグニンを原料として、以下の工程を経るデヒドロジバニリン酸ジアルキルエステルの製造方法。
    工程1:リグニンに対してアルカリ化合物および酸化剤αの存在下水中で酸化反応を行う工程
    工程2:工程1で得られた反応生成物を精製する工程
    工程3’:工程2で得られたデヒドロジバニリンを含む成分に対して酸化剤βの存在下溶媒中で酸化反応を行う工程
    工程4’:工程3’の反応生成物に対して、炭素数1〜12のアルコールの存在下エステル化反応を行う工程
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JP2020037065A (ja) * 2018-09-03 2020-03-12 国立大学法人東京農工大学 リグニンの分解方法及び芳香族化合物の製造方法

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