一般に、耐火物は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の化学成分を主体として種々の化学成分を組み合わせて形成されている。特に現在は用途に応じて炭素を含有した耐火物も多く使用されている。また、耐火物の原料に関しても、高価な高純度原料から安価な天然低純度原料まで多岐にわたる原料が使用されており、耐火物の価格もこれらの組合せによって大きく異なる。
使用済み耐火物は、溶融物や付着物による損傷を受け、使用済みの残存部の一部にはこれらの浸潤や耐火物との化学反応による変質が見られる。この変質部は低級酸化金属等の低融点化合物が多く、使用済み耐火物を耐火物原料として再利用する際に耐熱性の低下を引き起こす。不定形耐火物を再利用する際には、変質部の多くは原質部と色調が大きく異なることを利用して、変質部分を分別する技術は古くから行われている。
不定形耐火物に比べ高密度な定形耐火物、特に炭素を含有した定形耐火物においてはこれらの浸潤層や変質層が少なく、変質部の分別による効果は小さい。また、炭素非含有耐火物だけを使用する場合においても複数種類の材質を組み合わせて使用することが一般的であり、変質部を分別しても化学成分の異なる材質が混在したままの状態を残している。このように従来の変質部分別によるリサイクル方法では、化学成分の異なる材質が混在した状態で回収されるため、使用済み耐火物を耐火物原料として使用する際には、前回使用した時より低級な耐火物として使用するか、人手作業による低能率、高費用な選別工程を経て使用する必要がある。
耐火物は、その化学成分に応じて固有の色調を有している。例えば炭素を含有している耐火物は黒色に近く、酸化アルミニウムや酸化ケイ素を主体とする耐火物は白色、マグネシアを主体とする耐火物は褐色又は象牙色等の色調を示す。そこで、本発明に係る使用済み耐火物の再利用方法は、化学成分による耐火物の色調の差を利用して材質毎に使用済み耐火物を分別、回収する。
これにより、人手作業に頼ることなく高精度に大量の使用済み耐火物を材質毎に分別することができる。また、再利用時に必要な化学成分を有する使用済み耐火物のみを原料化し、材質毎に適正な原料として使用できるため、使用済み耐火物を原料として使用しても品質の低下や品質のばらつきが少ない製品を得ることができる。
特に、炭素含有定形耐火物と炭素非含有定形耐火物はそれぞれ稼動面側材料及び背面側用材料として組み合わせて使用されることが多いが、炭素を含有した場合、耐火物の多くは黒色を呈し、炭素を含有しない場合は淡色を呈する場合が多く、本発明による色調の差による分別に適している。
色彩分別機を利用して色調の差に基づき使用済み耐火物を材質毎に分別、回収することにより、高能率、且つ、安価に色調による使用済み耐火物の分別回収が可能となる。具体的には、色彩分別機を利用して色調の差による使用済み耐火物の分別回収を行う際には、分離したい色調を閾値として設定し、この設定した閾値を境に使用済み耐火物を色調別に分離する。すなわち、使用済み耐火物をその色調の差に基づいて2種類の材質に分別する。さらに使用済み耐火物の分別が必要な場合には、分離したい色調を閾値として再設定し、この再設定した閾値を境に、上述した分別後の使用済み耐火物を色調別にさらに分離する。すなわち、分別された使用済み耐火物をその色調の差に基づいて2種類の材質にさらに分別する。この作業を必要な材質(分別)数に応じて繰り返すか、それぞれの段階で使用する色彩分別機を直列で設置しても同じ効果を得ることができる。色彩分別機の構成の一例を説明すると、ベルトコンベアーや滑り台から連続的に放出される対象物をカメラで撮影し、コンピューターでその色彩情報を処理する際に、予め設定された前記閾値に基づいて採取対象物と非採取対象物とを識別し、非採取対象物は飛翔ルート後方に位置するエアーガンにより軌道を変更させる方式がある。
地金除去等の目的で破砕した使用済み耐火物に関しても色彩分別機による分別が可能である。高温下や使用条件により耐火物の表面が変色している場合でも内部は当初の色調を維持している場合が多く、破砕により耐火物内部が見えるようになるため、破砕物の場合、色調の差による分別の精度が向上する。このような使用済み耐火物の破砕物は、その色調の差によって分別回収される前の破砕処理において、開度5mm以下の篩掛け又は遠心分級や風力分級により、粒径5mm以下の微粉を除去したものに調整される。しかしながら、分別を行っている際に風で舞ってしまうような微粉が使用済み耐火物の破砕物に多く含まれている場合、分別精度が低下する。このため、使用済み耐火物の破砕処理において開度1mmの篩掛け又は遠心分級や風力分級を行い、これにより、分別回収前の使用済み耐火物の破砕物から事前に粒径1mm以下の微粉を除去しておくことが望ましい。
色調の差による分離判定を行った後に圧縮空気を対象に当てて分別を行う型の色彩分別機を使用する場合には、圧縮空気の圧力や流量により、最適な質量範囲が決まるため、粒径分布の最大値と最小値との差を5〜15mm程度の範囲内に揃えることが望ましい。色彩分別機を利用する場合の使用済み耐火物の最大粒径は、小さすぎると再利用用途が限定されるため、最低でも5mm以上とすることが望ましい。
本発明に係る使用済み耐火物の再利用方法によって分別、回収された使用済み耐火物は、耐火物原料等の製品の原料として得られる。得られた使用済み耐火物は、それぞれの化学成分や使用原料により分別管理を行い、耐火物やその他の原料として再利用することができる。この際、分別、回収した使用済み耐火物は、必要な粒度への再粉砕や粒度調整、熱処理、化学処理等を経て耐火物やその他の原料として再利用される。このように、本発明に係る使用済み耐火物の再利用方法によって分別、回収して得た使用済み耐火物を、耐火物原料またはその他の製品の原料として使用(再利用)することにより、耐火物等の製品を製造することができる。
〔実施例1〕
製鉄工場における溶銑容器の修理時に発生した使用済み耐火物を専用に保管している場所から、使用済み耐火物を回収した。溶銑容器の稼動面側にはアルミナ−ろう石−SiC−カーボンれんがが耐火物として使用され、背面側にはろう石れんがが耐火物として使用されている。回収した耐火物はこれらの混合物である。また、これらの使用済み耐火物は、土木工事用に使用する目的でコーンクラッシャーによって40mm以下程度の粒径に粉砕し、磁力選別機により地金を除去した後に保管していたものである。
また、本実施例1では、使用済み耐火物の材質毎の分別に用いる色彩分別機について、色調の閾値を設定する事前設定を行った。この事前設定において、まず、上述した磁力選別後の使用済み耐火物の中から、回収したい材質のサンプルと除去したい材質のサンプルとを数個選定し、これらのサンプルの各々を1個ずつ色彩分別機に通す。これにより、各サンプルの色調(色合い)判定を色彩分別機に行わせて、色彩分別機による各サンプルの色調判定時の画像を、静止画で画面に表示させた。このように表示された色調判定時の画像を各サンプルについて各々確認した。
つぎに、この色彩分別機に対して、色調に関する仮の閾値を設定し、上述した色調判定時の画像のうち、この仮の閾値超過(もしくは未満)となる注目領域を、他の領域とは別の色で画面に表示させる。これと同時に、この注目領域の画像占有率を画面に表示させる。続いて、画像の赤(R)、緑(G)、青(B)の各々もしくは全体を調整することにより、上述した除去したい材質のサンプルを色彩分別機によって完全に分別除去できるように色彩分別機の閾値(上述した仮の閾値)を調整する。このように閾値を調整後の色彩分別機に対し、再度、上述した各サンプルを1個ずつ通して、この色彩分別機が希望通りに各サンプルを分別したか否かを確認した。仮に、希望通りのサンプル分別が行われなかった場合、上述した閾値の調整を再度行う。一方、希望通りのサンプル分別が行われた場合、この色彩分別機に対し、上述した各サンプルをまとめて通し、これにより、上述した除去したい材質のサンプルを分別除去できたか否かを確認した。希望通りに分別除去できなかった場合、上述した閾値の調整を再度行い、希望通りに分別除去できた場合、この時点の閾値を色彩分別機の閾値として本設定した。
上述した事前設定を行った後、磁力選別後の使用済み耐火物を所定の篩目で分級し、その後、事前設定済みの色彩分別機により黒色の破砕物と白色の破砕物と中間色の破砕物とに分別した。この際、本実施例1における使用済み耐火物を、設定した閾値を境にして、白色の破砕物と、黒色の破砕物及び中間色の破砕物の混合物とに分別した。さらに、この分別後の混合物を、再設定した閾値を境にして、黒色の破砕物と中間色の破砕物とにさらに分別した。このようにして、使用済み耐火物を材質別に白色の破砕物と黒色の破砕物とに分別(材質分別)して回収し、且つ、上述の混合物から分別した中間色の破砕物を除去した。その後、これらの回収物および除去物を各々目視で確認し、希望通りに分別されているか否かを確認した。希望通りに分別できなかった場合、上述した事前設定を再度行い、希望通りに分別できた場合、本分別処理を終了した。
なお、本実施例1では、上述した色彩分別機の閾値設定以外にも、分別対象の使用済み耐火物の粒度に対応するために、粒度の判定範囲に応じて、分別対象への圧縮空気の噴出範囲(例えば、判定範囲の両端の粒度を有する分別対象へ圧縮空気を同時噴射する数個のノズルの噴射範囲)を調整したり、この圧縮空気の噴射時間を調整(例えば、粒度が大きい分別対象を分別する場合は長く吹くように調整)したり、その噴出タイミングを調整する等、分別に関する様々な設定を行った。
ここで、本実施例1において、中間色の破砕物は、白色と黒色との間の色調を呈するものであり、具体的には、付着スラグ及び磁力選別機では除去しきれなかった地金等を含む不純物であった。比較のため、色彩分別機による分別を行わないものと、中間色の不純物を除去しないものと、中間色の不純物のみ除去したものとを用意した。これらの使用済み耐火物をさらに乾燥、粉砕して耐火物原料(例えば炭素含有定形耐火物原料)とし、得られた耐火物原料を使用して、新たに溶銑搬送容器耐火物等の炭素含有定形耐火物、詳細にはアルミナ−ろう石−SiC−カーボンれんがを製造した。れんがの製造に際し、使用済み耐火物の配合比率は材料の内掛け量で30%又は50%とした。
使用済み耐火物は使用前に一部を採取し、化学成分を分析した後、新規の原料と併せてベース材としたれんがの組成値であるアルミナ(Al2O3)50%、シリカ(SiO2)30%を目標にしてれんがを製造した。新規の原料はアルミナ源としてバンド頁岩を、シリカ源としてろう石を使用した。また、黒鉛及びSiCは使用済み耐火物からの再利用材混合分以外を補填する分使用した。
回転ドラム試験機を利用して製造したれんがを侵食試験に供した。れんが製造条件及び試験結果を以下の表1及び表2に示す。侵食試験には、CaOとSiO2との比(CaO/SiO2)が2.2となるよう調合した合成スラグを用いた。また、このスラグのFeOとMnOの含有量の合計値が17%となるよう調合を行った。侵食試験は回転ドラム試験機に内張りしたサンプルを回転させながらバーナーにより加熱し、試験温度1500℃に到達した後に合成スラグを投入、3時間保持して行った。評価には試験前後のサンプルの厚み変化を測定し、ベース材の厚み変化を100とした侵食性指数を用いた。侵食性指数が100より小であれば侵食性が良好であることを示し、侵食性指数が100より大であれば侵食性が不良であることを示す。
表1及び表2において、不純物除去「あり」且つ材質分別「あり」の例は、使用済み耐火物を白色の破砕物と黒色の破砕物と中間色の不純物とに分別し且つ分別後の中間色の不純物を除去した例である。不純物除去「無し」且つ材質分別「無し」の例は、使用済み耐火物に対して色彩分別機による分別を行わなかった例である。不純物除去「あり」且つ材質分別「無し」の例は、使用済み耐火物から中間色の不純物のみ除去した例である。この例では、白色の破砕物と黒色の破砕物とが分別されず混在した状態で回収された。不純物除去「無し」且つ材質分別「あり」の例は、使用済み耐火物から中間色の不純物を除去しなかった例である。この例では、白色の破砕物と、黒色の破砕物及び中間色の不純物の混合物とが分別された状態で回収された。このような各例の区別は、本実施例1において同様である。
以下に示す表3は侵食試験の結果をまとめたものである。比較例1と本発明例1との比較、比較例2と本発明例2との比較、及び比較例3と本発明例4との比較から、色彩分離処理を行った場合に侵食性指数の分布範囲が狭くなり、侵食性指数の平均値が低減し、耐食性が向上することが知見された。また、本発明例1と本発明例2との比較により、色彩分離処理を行う前に1mm以下の微粉を予め除去した場合、侵食性指数の分布範囲がさらに狭くなり、耐食性がさらに向上することが知見された。一方、本発明例1と本発明例2及び本発明例5との比較から、予め除去する微粉の粒径を5mm以下にした場合と1mm以下にした場合とで耐食性は変わらなかった。このことから、予め除去する微粉の粒径が5mm以下であれば、耐食性が十分に向上することが知見された。しかし、分別後の使用済み耐火物の回収量を多くして分別回収の効率を高めるという観点から、予め除去する微粉の粒径を1mm以下にすることが望ましい。
さらに、本発明例2と本発明例3との比較により、色彩分離処理時の粒径分布範囲を狭めることで、侵食性指数の標準偏差が7.2から5.3まで低下し、侵食性指数の平均値も106から103まで低下することが知見された。さらに、比較例3と本発明例1〜4との比較により、色彩分離処理によって再利用材の添加量が50%であっても従来の30%と同程度の耐食性が得られることが知見された。また、粒度範囲を狭めた場合、再利用材の添加量が50%であってもベース材とほぼ同等の侵食性指数であることから、前回使用時と同じ品位を求められる耐火物に使用済み耐火物を適用可能であることが知見された。さらに、比較例2と比較例4との比較により、本発明の材質分別が行われていなければ、不純物のみ除去した場合の侵食性指数は、不純物を除去していない場合と殆ど変わらないことが知見された。また、比較例2と本発明例6との比較により、本発明の材質分別が行われていれば、不純物の除去を行わなかった故に不純物が含まれる状態であっても、侵食性指数の平均値及び標準偏差が低下することから、耐食性の向上が得られることが知見された。これに加えて、本発明例2と本発明例6との比較により、侵食性指数の標準偏差は変わらないが、平均値は108から106に低下しており、このことから、本発明の材質分別を行った上で不純物の除去を行うことにより、耐食性が向上することが知見された。これらの結果より、従来技術の不純物除去だけでは耐食性の向上が得られず、本発明の材質分別の有効性が確認された。
〔実施例2〕
製鉄工場におけるタンディッシュの修理時に発生する使用済み耐火物を回収した。タンディッシュの稼動面側にはアルミナ系不定形耐火物が耐火物として使用され、背面側にはアルミナれんがとろう石れんがとが耐火物として使用されている。回収された使用済み耐火物はこれらの混合物である。これらの使用済み耐火物をコーンクラッシャーによって40mm以下程度の粒径に粉砕し、磁力選別機によって地金を除去した。
また、本実施例2では、使用済み耐火物の材質毎の分別に用いる色彩分別機について、上述した実施例1の場合と同様に、色調の閾値を設定する事前設定を行った。この際、本実施例2における磁力選別後の使用済み耐火物の中から、回収したい材質のサンプルと除去したい材質のサンプルとを数個選定し、これらのサンプルを用いて、色彩分別機の色調の閾値を設定した。
上述した事前設定を行った後、磁力選別後の使用済み耐火物を所定の篩目で分級し、分級後の使用済み耐火物を、設定した閾値を境にして材質別に、事前設定済みの色彩分別機によって黒色の破砕物と、黒色以外の色調の破砕物、具体的には、アルミナ系不定形耐火物とアルミナれんがとろう石れんがとの混合物とに分別し、これらのうち黒色の破砕物を除去した。本実施例2において、黒色の破砕物は、付着スラグ、スラグや酸化鉄等の低級酸化物が耐火物に浸潤した浸潤層、及び磁力選別機では除去しきれなかった地金等を含む不純物であった。一方、上述した分別後の混合物を、再設定した閾値を境にして材質別に色彩分別機によってアルミナ系不定形耐火物とアルミナれんがとろう石れんがとにさらに分別した。このようにして、これらの使用済み耐火物から色彩分別機によってアルミナ系不定形耐火物を分別し、回収した。その後、これらの回収物および除去物を各々目視で確認し、希望通りに分別されているか否かを確認した。希望通りに分別できなかった場合、上述した事前設定を再度行い、希望通りに分別できた場合、本分別処理を終了した。
なお、本実施例2では、上述した実施例1の場合と同様に、色彩分別機の閾値設定以外にも、分別対象の使用済み耐火物の粒度に対応するために、粒度の判定範囲に応じて、分別対象への圧縮空気の噴出範囲を調整したり、この圧縮空気の噴射時間を調整したり、その噴出タイミングを調整する等、分別に関する様々な設定を行った。
一方、本実施例2では、比較のため、色彩分別機による分別を全く行わないものと、不純物だけを除去したものとを用意した。これら比較例および本実施例2の使用済み耐火物をさらに乾燥、粉砕して耐火物原料(例えば炭素非含有耐火物からなる耐火物原料)とし、得られた耐火物原料を使用して、新たに溶鋼保持容器耐火物等の炭素非含有定形耐火物、詳細にはアルミナ焼成れんがを製造した。
アルミナ焼成れんがの製造に際し、使用済み耐火物の配合比率は材料の内掛け量で50%又は70%とした。使用済み耐火物は使用前に一部を採取し、化学成分を分析した後、新規の原料と併せてベース材としたれんがの組成値であるアルミナ55%を目標にしてアルミナ焼成れんがを製造した。新規の原料はアルミナ源としてバンド頁岩を、シリカ源としてろう石を使用した。
回転ドラム試験機を利用して製造したアルミナ焼成れんがを侵食試験に供した。アルミナ焼成れんがの製造条件及び試験結果を以下の表4に示す。侵食試験には、CaOとAl2O3との比(CaO/Al2O3)が1.5となるよう調合した合成スラグを用いた。侵食試験は回転ドラム試験機に内張りしたサンプルを回転させながらバーナーにより加熱し、試験温度1650℃に到達した後に合成スラグを投入、2時間保持して行った。評価には試験前後のサンプルの厚み変化を測定し、ベース材の厚み変化を100とした侵食性指数を用いた。
表4において、不純物除去「あり」且つ材質分別「あり」の例は、使用済み耐火物をアルミナ系不定形耐火物とアルミナれんがとろう石れんがと黒色の不純物とに分別し且つ分別後の黒色の不純物を除去した例である。不純物除去「無し」且つ材質分別「無し」の例は、使用済み耐火物に対して色彩分別機による分別を行わなかった例である。不純物除去「あり」且つ材質分別「無し」の例は、使用済み耐火物から黒色の不純物のみ除去した例である。この例では、アルミナ系不定形耐火物とアルミナれんがとろう石れんがとが分別されず混在した状態で回収された。このような各例の区別は、本実施例2において同様である。
以下に示す表5は侵食試験の結果をまとめたものである。表5に示すように、比較例1と比較例2との比較から不純物を除去する従来技術の効果がわかるが、比較例1及び比較例2の侵食性指数はベース材に対し20%以上、大きかった。また、比較例2と本発明例1との比較、比較例3と本発明例2との比較から、色彩分離処理により材質分別を行った場合、侵食性指数の分布範囲が狭くなり、侵食性指数の平均値が減少することから、耐食性を改善できることが知見された。
また、比較例2と比較例3との比較、本発明例1と本発明例2との比較から、再利用材の質量比率が上がると侵食性指数の分布範囲が広くなり、侵食性指数の平均値が増加することが知見された。さらに、比較例2、比較例3、本発明例1、及び本発明例2の比較から、色彩分離処理によって材質を分別することにより、再利用材の質量比率が70%であっても、材質分別を行わない材料を50%添加したものよりも侵食性指数の平均値及び最大値が小さく、さらに侵食性指数の分布範囲が狭くなり、ベース材と同程度の耐食性が得られることが知見された。
このように、本発明に係る使用済み耐火物の再利用方法によれば、色調に基づいて使用済み耐火物を材質毎に分別、回収することにより、人手作業に頼ることなく高精度に大量の使用済み耐火物を材質毎に分別することできる。また、使用済み耐火物を原料として使用する際、材質混合比率の変化に伴う品質のばらつきを低減し、性能が安定した製品を得ることができる。
また、品質のばらつきの安定化によって、使用済み耐火物を原料とした耐火物を従来適用できなかった部位や設備に適用できる。また、使用済み耐火物を他の用途に適用することが容易になるため、使用済み耐火物の再利用適用範囲及び再利用可能量が増大し、廃棄物の減少によって廃棄物処理費用が削減され、安価原料としての使用済み耐火物使用量が増加することにより製造業のコストを削減できる。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。