近年、トナー像の高画質化や感光体ドラムの背景部に発生するトナーかぶりを抑制するために、現像ローラーには、直流バイアスに交流バイアスが重畳された現像バイアスが印加される。このような現像バイアスが特許文献1の現像ローラーに印加されると、現像ローラーのスリーブ面にトナーが現像され、トナー層が形成されやすい。特に、感光体ドラム上の背景部分ではトナーを現像ローラー側に引き戻す方向に電位が設定されているため、現像ローラーのスリーブ面上のトナー層が厚くなる。逆に、感光体ドラム上の画像部分では、トナーが感光体ドラム側に移動する方向に電位が設定されているため、現像ローラーのスリーブ面上のトナー層は薄くなる。そして、このトナー層の厚みの違いが現像ローラーのスリーブ上に残ったまま、スリーブが1回転し、再び現像を行うと、このトナー層の影響を受けて、画像濃度が変化してしまう。この現象は、特にハーフトーン画像において顕著に発生し、画像履歴(ゴースト)という形で発生した。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、それぞれ内部に磁石を備え、互いに現像剤を受け渡しあう複数のローラーを備える現像装置において、ゴーストの発生を抑制するとともに、当該現像装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明の一局面に係る現像装置は、周方向に沿って複数の磁極を含み固定された第1磁石と、前記第1磁石の周囲を第1回転方向に回転し周面にトナーおよび磁性キャリアを含む現像剤を担持する第1スリーブと、を備え、表面に静電潜像が形成される感光体ドラムに所定の現像位置で対向して配置され、前記感光体ドラムに前記トナーを供給する現像ローラーと、周方向に沿って複数の磁極を含み固定された第2磁石と、前記第2磁石の周囲を第2回転方向に回転し周面に前記現像剤を担持する第2スリーブと、を備え、前記現像ローラーに所定の対向位置で対向するように配置され、前記現像ローラーに前記現像剤を供給する搬送ローラーと、前記現像剤を攪拌するとともに、前記搬送ローラーに前記現像剤を供給する現像剤攪拌部と、を備え、前記第1回転方向および前記第2回転方向は、前記対向位置において互いに対向するように設定され、前記第1磁石は、前記現像位置よりも前記第1回転方向下流側、かつ、前記対向位置よりも前記第1回転方向上流側の第1領域において、所定の磁極からなる第1磁極と前記第1磁極に対して前記第1回転方向下流側に隣接して配置され、前記第1磁極と同極の第2磁極と、前記第1磁極に対して前記第1回転方向上流側に隣接して配置され、前記第1磁極と異極の第3磁極と、前記第2磁極に対して前記第1回転方向下流側に隣接して配置され、前記第2磁極と異極の第4磁極と、を備え、前記第1磁石の磁力の半径方向成分の前記周方向の分布において、前記第1磁極のピーク磁力および前記第2磁極のピーク磁力の平均値をTave(mT)、前記第1磁極のピーク位置と前記第2磁極のピーク位置との間に配置された前記磁力の最小値をTd(mT)とした場合、Tave−Td≧15の関係を満たすことを特徴とする。
本構成によれば、現像剤攪拌部から搬送ローラーに現像剤が供給されるとともに、搬送ローラーから現像ローラーに前記現像剤が供給される。現像位置において現像剤から一部のトナーが感光体ドラムに供給されると、現像ローラーから搬送ローラーに現像剤が回収される。そして、現像ローラーの第1磁石の第1領域には、第1、第2、第3および第4磁極が配置される。更に、第1磁極および第2磁極が、Tave−Td≧15の関係を満たすことで、第1磁極および第2磁極の反発力によって、第1スリーブ上に部分的に現像剤が滞留した滞留部が安定して形成される。したがって、現像位置において消費されたトナーの履歴が第1スリーブ上に残存した場合であっても、トナーの履歴が滞留部で滞留する現像剤の磁気ブラシによって解消される。このため、ゴーストの発生が抑止された現像装置が提供される。
上記の構成において、前記第2磁石は、前記第4磁極に対向して配置され、かつ、前記第4磁極と異極の第5磁極を備え、前記第4磁極および前記第5磁極によって形成される磁界によって、前記現像位置を通過した前記現像剤が、前記現像ローラーから前記搬送ローラーに受け渡されることが望ましい。
本構成によれば、現像剤の滞留部から溢れた現像剤が第2磁極を超えて、第4磁極に移動された後、搬送ローラーの第5磁極側に受け渡される。このため、ゴーストが抑制されつつ、現像ローラーから搬送ローラーに現像剤を安定して回収することができる。
上記の構成において、前記第1磁石は、前記第4磁極に対して前記第1回転方向下流側に前記対向位置を挟んで隣接して配置され、前記第4磁極と異極の第6磁極を備え、前記第2磁石は、前記第5磁極に対して前記第2回転方向上流側に前記対向位置を挟んで隣接し、かつ、前記第6磁極に対向して配置され、前記第5磁極と異極の第7磁極を備え、前記現像剤攪拌部から前記搬送ローラーに供給された前記現像剤が、前記第6磁極および前記第7磁極によって形成される磁界によって、前記搬送ローラーから前記現像ローラーに受け渡されることが望ましい。
本構成によれば、対向位置を挟んだ位置に、現像ローラーおよび搬送ローラー間の現像剤の受け渡し領域が安定して形成される。
上記の構成において、前記第7磁極よりも前記第2回転方向上流側において、前記搬送ローラーに対向して配置され、前記現像剤攪拌部から前記搬送ローラーに供給された前記現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を更に有することが望ましい。
本構成によれば、搬送ローラーから現像ローラーに現像剤が受け渡される前に、現像剤の層厚を安定して規制することができる。
上記の構成において、前記現像ローラーおよび前記搬送ローラーを回転可能に支持するハウジングを更に有し、前記ハウジングは、前記第1磁極、前記第2磁極、前記第3磁極および前記第4磁極に対向し、かつ、前記現像ローラーの前記第1スリーブの周面に沿うように延設された第1内壁部を備えることが望ましい。
本構成によれば、現像剤の滞留部の周辺で現像剤中のトナーが飛散することが抑止される。特に、現像剤中のトナーが現像位置側に飛散することが抑止される。また、現像剤の搬送路が限定されているため、現像剤の滞留部を安定して形成することができる。
上記の構成において、前記現像ローラーおよび前記搬送ローラーを回転可能に支持するハウジングを更に有し、前記ハウジングは、前記第1磁極、前記第2磁極、前記第3磁極および前記第4磁極に対向し、かつ、前記現像ローラーの前記第1スリーブの周面に沿うように延設された第1内壁部と、前記第1内壁部に接続されるとともに、前記第5磁極に対向し、かつ、前記搬送ローラーの前記第2スリーブの周面に沿うように延設された第2内壁部と、を備えることが望ましい。
本構成によれば、現像剤の滞留部の周辺で現像剤中のトナーが飛散することが抑止される。また、第4磁極および第5磁極によって形成される磁界によって、現像ローラーから搬送ローラーに現像剤をスムーズに受け渡すことができる。
上記の構成において、前記現像ローラーの前記第1スリーブは、表面にブラスト処理が施された基材を含むことが望ましい。
本構成によれば、第1スリーブ上に、現像剤の滞留部を安定して形成することができるとともに、トナーのスリーブ表面への付着力が低減し、トナー層の解消が容易になる。
上記の構成において、前記現像ローラーの前記第1スリーブは、前記基材の前記表面に施されたメッキ層を含むことが望ましい。
本構成によれば、第1スリーブ上に、現像剤の滞留部を更に安定して形成することができる。
上記の構成において、前記第1磁石の磁力の半径方向成分の前記周方向の分布において、前記第1磁極のピーク位置と前記第3磁極のピーク位置との極間角度をX(度)、前記第2磁極のピーク位置と前記第4磁極のピーク位置との極間角度をY(度)、前記第1磁極のピーク磁力と前記第3磁極のピーク磁力との和をE(mT)、前記第2磁極のピーク磁力と前記第4磁極のピーク磁力との和をF(mT)とした場合、E/X>F/Yの関係を満たすことが望ましい。
本構成によれば、第1磁極および第2磁極の反発力によって、現像剤の滞留部は更に安定して形成される。この結果、現像剤中のトナーが現像位置側に飛散することが一層抑止される。
上記の構成において、前記現像ローラーの軸心は、前記感光体ドラムの軸心よりも下方に配置され、前記搬送ローラーの軸心は、前記現像ローラーの軸心よりも下方に配置されていることが望ましい。
本構成によれば、重力の作用とあいまって、現像剤の滞留部から溢れた現像剤が第2磁極を超えて、第4磁極に移動された後、搬送ローラー側に受け渡される。
上記の構成において、前記現像ローラーには、直流バイアスに交流バイアスが重畳された現像バイアスが印加されることが望ましい。
本構成によれば、現像位置に交流バイアスからなる振動電界が形成されゴーストが生じやすい場合であっても、滞留部の現像剤の磁気ブラシによってゴーストの発生が抑制される。
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、上記の何れか1に記載の現像装置と、前記現像装置から前記トナーが供給され、前記周面にトナー像を担持する前記感光体ドラムと、前記感光体ドラムからシートに前記トナー像を転写する転写部と、を有することを特徴とする。
本構成によれば、ゴーストの発生が抑制され、安定した画像を形成することが可能な画像形成装置が提供される。
本発明によれば、それぞれ内部に磁石を備え、互いに現像剤を受け渡しあう複数のローラーを備える現像装置において、ゴーストの発生を抑制するとともに、当該現像装置を備えた画像形成装置が提供される。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る画像形成装置10について、図面に基づき詳細に説明する。本実施形態では、画像形成装置の一例として、タンデム方式のカラープリンタを例示する。画像形成装置は、例えば、複写機、ファクシミリ装置、及びこれらの複合機等であってもよい。
図1は、画像形成装置10の内部構造を示す断面図である。この画像形成装置10は、箱形の筐体構造を備える装置本体11を備える。この装置本体11内には、シートPを給紙する給紙部12、給紙部12から給紙されたシートPに転写するトナー像を形成する画像形成部13、前記トナー像が一次転写される中間転写ユニット14、二次転写ローラー145、画像形成部13にトナーを補給するトナー補給部15、及び、シートP上に形成された未定着トナー像をシートPに定着する処理を施す定着部16が内装されている。さらに、装置本体11の上部には、定着部16で定着処理の施されたシートPが排紙される排紙部17が備えられている。
装置本体11内には、さらに、画像形成部13より右側位置に、上下方向に延びるシート搬送路111が形成されている。シート搬送路111には、適所にシートを搬送する搬送ローラー対112が設けられている。また、シートのスキュー矯正を行うと共に、後述する二次転写のニップ部に所定のタイミングでシートを送り込むレジストローラー対113も、シート搬送路111における前記ニップ部の上流側に設けられている。シート搬送路111は、シートPを給紙部12から排紙部17まで、画像形成部13(二次転写ニップ部)及び定着部16を経由して搬送させる搬送路である。
給紙部12は、給紙トレイ121、ピックアップローラー122、及び給紙ローラー対123を備える。給紙トレイ121は、装置本体11の下方位置に挿脱可能に装着され、複数枚のシートPが積層されたシート束P1を貯留する。ピックアップローラー122は、給紙トレイ121に貯留されたシート束P1の最上面のシートPを1枚ずつ繰り出す。給紙ローラー対123は、ピックアップローラー122によって繰り出されたシートPをシート搬送路111に送り出す。
画像形成部13は、シートPに転写するトナー像を形成するものであって、異なる色のトナー像を形成する複数の画像形成ユニットを備える。この画像形成ユニットとして、本実施形態では、後述する中間転写ベルト141の回転方向上流側から下流側へ(図1に示す左側から右側へ)向けて順次配設された、マゼンタ(M)色の現像剤を用いるマゼンタ用ユニット13M、シアン(C)色の現像剤を用いるシアン用ユニット13C、イエロー(Y)色の現像剤を用いるイエロー用ユニット13Y、及びブラック(Bk)色の現像剤を用いるブラック用ユニット13Bkが備えられている。各ユニット13M、13C、13Y、13Bkは、それぞれ感光体ドラム20と、感光体ドラム20の周囲に配置された帯電装置21、現像装置23及びクリーニング装置25とを備える。また、各ユニット13M、13C、13Y、13Bk共通の露光装置22が、画像形成ユニットの下方に配置されている。
感光体ドラム20は、その軸回りに回転駆動され、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。この感光体ドラム20としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。各色の画像形成ユニットに対応して、感光体ドラム20がそれぞれ配置される。帯電装置21は、感光体ドラム20の表面を均一に帯電する。帯電装置21は、帯電ローラーと、前記帯電ローラーに付着したトナーを除去するための帯電クリーニングブラシとを備える。露光装置22は、光源やポリゴンミラー、反射ミラー、偏向ミラーなどの各種の光学系機器を有し、均一に帯電された感光体ドラム20の周面に、画像データに基づき変調された光を照射して、静電潜像を形成する。また、クリーニング装置25は、トナー像転写後の感光体ドラム20の周面を清掃する。
現像装置23は、感光体ドラム20上に形成された静電潜像を現像するために、感光体ドラム20の周面にトナーを供給する。現像装置23は、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤用のものである。なお、本実施形態では、トナーはプラスの極性に帯電する特性を備える。
中間転写ユニット14は、画像形成部13とトナー補給部15との間に設けられた空間に配置される。中間転写ユニット14は、中間転写ベルト141と、駆動ローラー142と、従動ローラー143と、一次転写ローラー24と、を備える。
中間転写ベルト141は、無端状のベルト状回転体であって、その周面側が各感光体ドラム20の周面にそれぞれ当接するように、駆動ローラー142及び従動ローラー143に架け渡されている。中間転写ベルト141は、一の方向に周回駆動され、感光体ドラム20から転写されたトナー像を表面に担持する。
駆動ローラー142は、中間転写ユニット14の右端側で中間転写ベルト141を張架し、中間転写ベルト141を周回駆動させる。駆動ローラー142は金属ローラーからなる。従動ローラー143は、中間転写ユニット14の左端側で中間転写ベルト141を張架する。従動ローラー143は、中間転写ベルト141に張力を付与する。
一次転写ローラー24は、中間転写ベルト141を挟んで感光体ドラム20と一次転写ニップ部を形成し、感光体ドラム20上のトナー像を中間転写ベルト141上に一次転写する。各色の感光体ドラム20に対向して、それぞれ、一次転写ローラー24が配置される。
二次転写ローラー145は、中間転写ベルト141を挟んで駆動ローラー142に対向して配置されている。二次転写ローラー145は、中間転写ベルト141の周面に圧接されて二次転写ニップ部を形成している。中間転写ベルト141上に一次転写されたトナー像は、給紙部12から供給されるシートPに、前記二次転写ニップ部において二次転写される。本実施形態の中間転写ユニット14および二次転写ローラー145は、本発明の転写部を構成する。転写部は、感光体ドラム20からシートPにトナー像を転写する。
トナー補給部15は、画像形成に用いられるトナーを貯留するものであり、本実施形態ではマゼンタ用トナーコンテナ15M、シアン用トナーコンテナ15C、イエロー用トナーコンテナ15Y及びブラック用トナーコンテナ15Bkを備える。これらトナーコンテナ15M、15C、15Y、15Bkは、MCYBk各色に対応する画像形成ユニット13M、13C、13Y、13Bkの現像装置23に、不図示のトナー搬送部を通して各色のトナーを補給する。
定着部16へ供給されたシートPは、定着ニップ部を通過することで加熱加圧される。これにより、前記二次転写ニップ部でシートPに転写されたトナー像は、シートPに定着される。
排紙部17は、装置本体11の頂部が凹没されることによって形成され、この凹部の底部に排紙されたシートPを受ける排紙トレイ171が形成されている。定着処理が施されたシートPは、定着部16の上部から延設されたシート搬送路111を経由して、排紙トレイ151へ向けて排紙される。
次に、図1に加え、図2乃至図6を参照して、本実施形態に係る現像装置23について、更に詳述する。図2は、本実施形態に係る現像装置23の内部構造を示す模式的な断面図である。図2では、現像装置23の各回転部材の回転方向が矢印で示されている。図3は、本実施形態に係る現像ローラー231および搬送ローラー232の磁極配置を示す模式的な断面図である。図4は、現像ローラー231の磁極配置を示す模式的な断面図である。図5は、搬送ローラー232の磁極配置を示す模式的な断面図である。図6は、本実施形態に係る現像装置23において、現像剤溜まり(滞留部TD)が発生する様子を示す模式的な断面図である。
図1乃至図6を参照して、現像装置23は、ハウジング23Hと、現像ローラー231と、搬送ローラー232と、二本の攪拌スクリュー233(現像剤攪拌部)と、仕切り板234と、層厚規制部材235と、を含む。ハウジング23Hは、現像装置23の各部材を支持する筐体部分である。
現像ローラー231は、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム20に所定の現像位置NP(図3)で対向して配置され、感光体ドラム20にトナーを供給する。現像ローラー231は、第1磁石231Aと、第1スリーブ231Bと、を備える(図3)。なお、本実施形態では、現像位置NPは、感光体ドラム20と現像ローラー231との最近接位置を含む。第1磁石231Aは、周方向に沿って複数の磁極を含み、ハウジング23Hに固定された円柱状の磁石である。第1スリーブ231Bは、第1磁石231Aの周囲を第1回転方向(図2、図3の矢印D1方向)に回転し、周面にトナーおよび磁性キャリアを含む現像剤を担持する。本実施形態では、第1スリーブ231Bは、アルミ製の円管部材(基材)からなる。第1スリーブ231Bの円管部材の周面には、サンドブラスト処理(ブラスト処理)が施されているとともに、更に、その周面上に施されたNiメッキ層を含む。第1スリーブ231BのNiメッキ層の表面は、所定の表面粗さを備えている。本実施形態では、第1スリーブ231Bの表面粗さRzjisは、4.0μmから14.0μmの範囲に設定されている。現像ローラー231の第1スリーブ231Bは、ハウジング23Hに回転可能に支持されている。
搬送ローラー232は、現像ローラー231に所定の対向位置TP(図3)で対向するように配置され、現像ローラー231に現像剤を供給する。なお、本実施形態では、対向位置TPは、搬送ローラー232と現像ローラー231との最近接位置を含む。搬送ローラー232は、第2磁石232Aと、第2スリーブ232Bと、を備える。第2磁石232Aは、周方向に沿って複数の磁極を含み、ハウジング23Hに固定されている。第2スリーブ232Bは、第2磁石232Aの周囲を第2回転方向(図2、図3の矢印D2方向)に回転し、周面にトナーおよびキャリアを含む現像剤を担持する。搬送ローラー232の第2スリーブ232Bは、ハウジング23Hに回転可能に支持されている。
なお、現像ローラー231および搬送ローラー232には、直流バイアスに交流バイアスが重畳された現像バイアスが印加される。また、図3に示すように、現像ローラー231が回転する第1回転方向D1、および搬送ローラー232が回転する第2回転方向D2は、対向位置TPにおいて互いに対向するように設定されている(カウンタ方向)。
攪拌スクリュー233は、2成分現像剤を攪拌しながら循環搬送することで、トナーを帯電させる。攪拌スクリュー233は、第1スクリュー233Aと、第2スクリュー233Bと、を備える。なお、図2では図示していないが、ハウジング23Hは、第1スクリュー233Aが配置される不図示の第1攪拌部と、第2スクリュー233Bが配置される不図示の第2攪拌部と、を備える(図1の現像装置23参照)。現像剤は、第1スクリュー233Aと、第2スクリュー233Bとの間を循環搬送される。そして、第1スクリュー233Aは、搬送ローラー232に現像剤を供給する。仕切り板234は、ハウジング23Hに備えられた板状部材である。仕切り板234は、第1攪拌部と第2攪拌部とを第1スクリュー233Aおよび第2スクリュー233Bの軸方向に沿って仕切っている。また、トナー補給部15から補給されたトナーは、第2スクリュー233Bの軸方向の一端側からハウジング23H内に流入し、他の現像剤と攪拌される。
層厚規制部材235は、搬送ローラー232の周面に対向して配置された非磁性金属からなる板状部材である。なお、他の実施形態において、層厚規制部材235の上流側の側面には、磁性部材が固定されてもよい。層厚規制部材235は、攪拌スクリュー233の第1スクリュー233Aから搬送ローラー232に供給された現像剤の層厚を規制する。
また、図2に示すように、現像ローラー231の軸心は、感光体ドラム20の軸心よりも下方に配置され、搬送ローラー232の軸心は、現像ローラー231の軸心よりも更に下方に配置されている。
また、図2を参照して、トナーおよびキャリアからなり、攪拌スクリュー233で循環搬送された現像剤は、第1スクリュー233Aから搬送ローラー232に供給される。その後、層厚規制部材235によって現像剤の層厚が規制された後、当該現像剤は現像ローラー231に供給される。現像位置NP(図3)においてトナーの一部が感光体ドラム20に供給されると、現像ローラー231から搬送ローラー232に現像剤が回収される。その後、搬送ローラー232に回収された現像剤は、再び第1スクリュー233Aの周辺の第1攪拌部に流入する。
図3および図4を参照して、本実施形態では、現像ローラー231の第1磁石231Aは、周方向に沿って7つの磁極を備えている。現像ローラー231と搬送ローラー232との対向位置TPから第1回転方向(D1)下流側には、N1極が配置される。また、N1極の第1回転方向下流側には、S1極が配置される。S1極は、搬送ローラー232から受け取った現像剤を感光体ドラム20側に搬送する搬送極として機能する。更に、S1極の第1回転方向下流側には、感光体ドラム20にトナーを供給する主極として機能するN2極が配置される。N2極は、現像位置NPの近傍に配置されている。
更に、第1磁石231Aは、現像位置NPよりも第1回転方向下流側、かつ、対向位置TPよりも第1回転方向上流側の第1領域Rにおいて、4つの磁極(S2、N3、N4、S3)を備えている。N3極(第1磁極)は、第1領域Rの略中央部に配置される。N4極(第2磁極)は、N3極に対して第1回転方向下流側に隣接して配置され、N3と同極の磁極である。S2極(第3磁極)は、N3極に対して第1回転方向上流側に隣接して配置され、N3極と異極の磁極である。S3(第4磁極)極は、N4極に対して第1回転方向下流側に隣接して配置され、N4極と異極の磁極である。
表1には、本実施形態に係る第1磁石231Aとして、7つの磁極の角度を例示した磁石1および磁石2が示されている。なお、磁石1および磁石2は、互いに一部の極の磁力(半径方向成分のピーク値)の大きさが異なっている。また、表1に示される各磁極の角度は、図4の対向位置TPを始点(角度0°)として、第1回転方向に沿って示されている。なお、図4では、対向位置TPと現像ローラー231の回転軸心とを結ぶ直線CLが示されている。
一方、図3および図5を参照して、搬送ローラー232の第2磁石232Aは、周方向に沿って5つの磁極を備えている。現像ローラー231と搬送ローラー232との対向位置TPから第2回転方向(D2)下流側には、N11極が配置される。また、N11極の第2回転方向下流側には、S11極が配置される。更に、S11極の第2回転方向下流側には、S12極が配置される。S11極は、搬送ローラー232から現像剤を剥離する剥離極として機能する。S12極は、第1スクリュー233Aから現像剤を汲み上げる汲上極として機能する。S12極の第2回転方向下流側には、N12極およびS13極が配置されている。図5に示すように、S13極よりも第2回転方向上流側であって、S12極とN12極との間において前述の層厚規制部材235が搬送ローラー232の第2磁石232Aに所定の間隔をおいて対向して配置されている。このため、搬送ローラー232から現像ローラー231に現像剤が受け渡される前に、現像剤の層厚を安定して規制することができる。なお、S13極は、対向位置TPを挟んでN11極に隣接して配置されている。
表2には、本実施形態に係る第2磁石232Aの一例として、5つの磁極の角度および磁力(半径方向成分のピーク値)が示されている。表2に示される各磁極の角度は、図5の対向位置TPを始点(角度0°)として、第2回転方向に沿って示されている。なお、図5では、対向位置TPと搬送ローラー232の回転軸心とを結ぶ直線CLが示されている。
図2および図3を参照して、現像ローラー231の第1磁石231Aおよび搬送ローラー232の第2磁石232Aの磁極の配置および機能について、更に付言する。第2磁石232AのN11極(第5磁極)は、第1磁石231AのS3極に対向して配置され、かつ、S3極とは異極の磁極である。そして、N11極およびS3極によって形成される磁界によって、現像位置NPを通過した現像剤が、現像ローラー231から搬送ローラー232に受け渡される。
また、第1磁石231AのN1極(第6磁極)は、S3極に対して第1回転方向下流側に対向位置TPを挟んで隣接して配置され、S3極とは異極の磁極である。更に、第2磁石232AのS13極(第7磁極)は、N11極に対して第2回転方向上流側に対向位置TPを挟んで隣接し、かつ、N1極に対向して配置され、N11極とは異極の磁極である。そして、攪拌スクリュー233の第1スクリュー233Aから搬送ローラー232に供給された現像剤は、層厚規制部材235によって規制された後、N1極およびS13極によって形成される磁界によって、搬送ローラー232から現像ローラー231に受け渡される。
図6を参照して、ハウジング23Hは、現像ローラー231および搬送ローラー232に対向する複数の内壁部を備えている。詳しくは、ハウジング23Hは、第1内壁部23H1と、第2内壁部23H2と、第3内壁部23H3と、第4内壁部23H4と、を備える。第1内壁部23H1は、S2極、N3極、N4極およびS3極に対向し、かつ、現像ローラー231の第1スリーブ231Bの周面に沿うように延設されている。第2内壁部23H2は、第1内壁部23H1に接続されるとともに、N11極およびS11極に対向し、かつ、搬送ローラー232の第2スリーブ232Bの周面に沿うように延設されている。同様に、第3内壁部23H3は、S1極およびN1極に対向し、かつ、現像ローラー231の第1スリーブ231Bの周面に沿うように延設されている。第1内壁部23H1と第3内壁部23H3との間において、現像ローラー231の第1スリーブ231Bが部分的に露出され、感光体ドラム20に対向して配置されている。第4内壁部23H4は、第3内壁部23H3に接続されるとともに、S13極およびN12極に対向し、かつ、搬送ローラー232の第2スリーブ232Bの周面に沿うように延設されている。なお、図6に示すように、各内壁部と現像ローラー231の第1スリーブ231Bおよび搬送ローラー232の第2スリーブ232Bとの間には、略均等な隙間H(現像剤の搬送路)が形成されている。本実施形態では、当該隙間Hの高さは、現像ローラー231および搬送ローラー232の半径よりも小さく、0.5mmから2.0mmの範囲に設定されている。
前述のように、感光体ドラム20上の静電潜像を現像する現像動作に、現像ローラー231および搬送ローラー232には、直流バイアスに交流バイアスが重畳された現像バイアスが印加される。これによって、現像位置NP(現像ニップ)では交流バイアスによる振動電界が形成されるため、感光体ドラム20上の背景部に付着したかぶりトナーを回収することができる。しかしながら、このような振動電界は、トナーを現像ローラー231の第1スリーブ231B上にも引き付ける。この結果、第1スリーブ231Bの表面には、トナー層(トナー膜)が形成されやすくなる。
現像ローラー231の第1スリーブ231Bに形成されるトナー層の厚みは、画像部と背景部とで異なり、この厚みの差が履歴として残存する。図9は、このようなトナーの消費履歴によってハーフトーン画像上に発生したゴースト画像を示す模式図である。プロセス方向(シートの搬送方向)の上流側で形成されたリング状の画像の履歴が後続のハーフトーン画像上に現れている。このような履歴は、上記のトナー層におけるトナーの消費量の差に基づくものであり、次のハーフトーン画像では残存するトナーの電荷分だけ第1スリーブ231Bと感光体ドラム20との間の電位差が部分的にシフトすることに起因している。
本実施形態では、2本の磁気ローラー(現像ローラー231、搬送ローラー232)が配置された現像装置23において、感光体ドラム20に対向する1本のローラーである現像ローラー231上にトナー層が形成され、上記のようなゴースト画像が発生することが好適に抑止される。すなわち、このようなゴースト画像の抑止のために、現像装置23の現像ローラー231は、前述のN3極およびN4極を備えている。
図7は、本実施形態に係る現像装置23の現像ローラー231において、隣接する同極磁極であるN3極およびN4極の間の半径方向成分の磁力分布を示すグラフである。なお、図7では、N3極のピーク磁力およびN4極のピーク磁力は、ほぼ等しい値として図示されている。本実施形態では、第1磁石231Aの磁力の半径方向成分(Radial成分)の周方向の分布において、N3極のピーク磁力およびN4極のピーク磁力の平均値をTave(mT)、N3極のピーク位置とN4極のピーク位置との間に配置された磁力の最小値(磁力の谷部分)をTd(mT)とした場合、
Tave−Td≧15 ・・・(式1)
の関係が満たされる。
このように、N3極およびN4極のピーク磁力の平均値Taveと両者の谷部分の磁力Tdとの差が大きく設定されることによって、N3極およびN4極によって形成される反発磁力が高くなる。この場合、図6を参照して、現像ローラー231のN2極からS2極、更にN3極に搬送された現像剤は、N4極に移動しにくいため、N3極上において部分的に滞留する。この結果、現像ローラー231の第1スリーブ231B上には現像剤の滞留部TDが形成される。滞留部TDでは、現像剤の磁気ブラシが第1スリーブ231B上でスリップしながら滞留している。したがって、現像位置NPにおいて消費されたトナーの履歴が第1スリーブ231B上のトナー層に残存した場合であっても、トナーの履歴が滞留部TDで滞留する現像剤の磁気ブラシによって解消(研磨)される。このため、前述のようなゴーストの発生が抑止された現像装置23が提供される。特に、本実施形態のように、現像ローラー231と搬送ローラー232との対向位置TPに磁極のピーク位置が存在しない場合、搬送ローラー232上の現像剤の磁気ブラシの研磨力(掻き取り力)が、第1スリーブ231Bの表面に及びにくい。このような場合であっても、現像ローラー231が自ら備えるN3−N4極の反発力によって滞留部TDを好適に形成することができる。なお、このような滞留部TDの形成は、公知の現像剤の剥離極では充分に形成できない。上記のように式1が満たされることで、第1スリーブ231B上のトナー層を研磨可能な滞留部TDが形成可能とされる。そして、本実施形態では、1本の現像ローラー231が感光体ドラム20に対向して配置され、感光体ドラム20上の静電潜像を現像する。したがって、複数の現像ローラーが感光体ドラム20の周面に沿って隣接して配置される他の現像装置と比較して、1つの現像位置NPにおいて静電潜像を安定して顕在化する必要がある。換言すれば、上記のように感光体ドラム20の回転方向に沿って複数の現像ローラーが配置される場合、上流側の現像ローラーによって形成されたゴースト画像の濃度低下部分を下流側の現像ローラーが補正することができる。一方、本実施形態では、現像ローラー231の第1スリーブ231B上に形成されたトナー消費の履歴が次の周回においてゴースト画像となってしまうと補正が困難となる。したがって、上記の式1が満たされることで、トナー層の履歴が次の現像位置NPに向かって周回することを好適に抑止することができる。この結果、現像装置23の構造が複雑化することが抑止されるとともに、現像装置23のコストアップが抑止される。
本実施形態では、N3極およびN4極は1つの扇形状のフェライト磁石からなり、扇形状の周方向の中央部において部分的に切欠き部が形成されることで、2つの同極磁極が形成されている。そして、N3極のピーク値とN4極のピーク値との磁力差は、25mT以下の範囲に設定される。この範囲であれば、両極のピーク値の平均値Taveによって滞留部TDの形成具合を判断することが可能とされる。また、2つの同極磁極が隣接する2つの磁石ピースによって形成される場合も、N3極のピーク値とN4極のピーク値との磁力差が25mT以下の範囲に設定されれば、同様に、両極のピーク値の平均値Taveによって滞留部TDの形成具合を判断することが可能とされる。
更に、本実施形態では、第1スリーブ231Bは、アルミ製の円管部材(基材)からなる。また、第1スリーブ231Bの円管部材の周面には、サンドブラスト処理(ブラスト処理)が施されているとともに、更に、その周面上に施されたNiメッキ層を含む。このため、ブラスト処理が施された第1スリーブ231Bの表面性によって、現像剤がスリップしやすく、現像剤の滞留部TDが安定して形成される。更に、現像ローラー231上のメッキ層によって、正帯電トナーの帯電量が低下されやすくなる。この結果、現像剤の帯電量が低下し、滞留部TDでの現像剤のスリップが促進されるとともに、トナーがスリーブ表面に付着する力も小さくなる。したがって、ゴースト画像の発生が更に抑制される。なお、後述のとおり、他の実施形態において、現像ローラー231の第1スリーブ231Bは、ブラスト処理が施されたものではなく、公知の溝形状を備えるものでもよい。この場合、溝形成の前もしくは後工程でセンタレス加工などの外周研磨を行う、または、溝形成後にブラスト処理を行うことで、トナーのスリーブ表面への付着力が低下し、ゴースト画像の発生が単なる溝形状だけのものよりも抑制される。
図6を参照して、現像ローラー231上の滞留部TDの現像剤量が次第に増えていくと、N3極の磁力によって保持しきれなくなり溢れた現像剤(余剰現像剤)が、N4極を飛び越えて、S3極に移動される。その後、S3極およびN11極によって形成される磁界によって、現像ローラー231から搬送ローラー232に現像剤が受け渡される。N3極からS3極に向かって現像剤がジャンプする際に、現像剤中のトナーの飛散が懸念される。このため、現像ローラー231の第1領域R(図3)に着目すると、第1磁石231Aの磁力の半径方向成分の周方向の分布において、N3極のピーク位置とS2極のピーク位置との極間角度をX(度)、N4極のピーク位置とS3磁極のピーク位置との極間角度をY(度)、N3極のピーク磁力とS2極のピーク磁力との和をE(mT)、N4極のピーク磁力とS3極のピーク磁力との和をF(mT)とした場合、式2の関係が満たされることが望ましい。
E/X>F/Y ・・・ (式2)
式2では、N3極およびS2極によって形成される現像剤の保持力と、N4極およびS3極によって形成される現像剤の保持力と、が不等式で規定されている。同極のN3極およびN4極を挟んで、第1回転方向上流側の方が、極間角度が小さい場合や、ピーク磁力の和が大きい場合に、上記の式2が満たされやすい。そして、このように第1回転方向上流側における現像剤の保持力が大きい場合、図6の現像剤の滞留部TDが安定して、かつ、より隆起して形成される。この結果、滞留部TDの頂部がハウジング23Hの第1内壁部23H1と接触しやすくなる。この場合、滞留部TDの現像剤によって、現像剤の搬送路が部分的に塞がれる。したがって、N4極の周辺でトナーが飛散した場合であっても、当該トナーが、現像位置NP側に至ることが抑止される。このため、画像上にトナーかぶりやトナー汚れが発生することが抑止される。また、式2の関係が満たされる場合、第1内壁部23H1と第1スリーブ231Bとの間で、滞留部TDの現像剤に圧力が付与される。このため、滞留部TDの現像剤による第1スリーブ231Bの表面の研磨力が増大される。
更に、本実施形態では、図6に示すように、N4極の第1回転方向下流側には、N4極とは異極のS3極が配置されている。このため、N3極から脱離された現像剤をS3極で安定して捕獲することができる。更に、S3極とは異極のN11極が配置されることで、現像ローラー231から搬送ローラー232に安定して現像剤を受け渡すことができる。この際、第1内壁部23H1および第2内壁部23H2が、現像ローラー231および搬送ローラー232の周面に沿って形成されながら互いに接続されているため、現像ローラー231から搬送ローラー232に現像剤をスムーズに受け渡すことができる。また、図6を参照して、現像ローラー231の軸心は感光体ドラム20の軸心よりも下方に配置され、搬送ローラー232の軸心は現像ローラー231の軸心よりも下方に配置されている。このため、重力の作用とあいまって、現像剤の滞留部TDから溢れた現像剤がN4極を超えて、S3極に移動された後、搬送ローラー232側に安定して受け渡される。
また、本実施形態では、S3極の第1回転方向下流側にはN1極が配置され、N11極の第2回転方向上流側には、S13極が配置されている。そして、N1極およびS13極によって形成される磁界によって、搬送ローラー232から現像ローラー231に安定して現像剤を供給することができる。このため、対向位置TPを挟んだ位置に、異なる方向に向かって現像ローラー231および搬送ローラー232間の現像剤の受け渡し領域が安定して形成される。また、現像剤の滞留部TDからN4極を超え、S3極からジャンプした現像剤は、S13極側に移動しにくい。S13極がS3極と同極の磁極からなるためである。なお、本実施形態では、一例として、現像ローラー231と感光体ドラム20との間のギャップ(現像位置NP)が、0.25mmよりも大きく0.40mm以下に設定される。一方、現像ローラー231と搬送ローラー232との間のギャップ(対向位置TP)は、0.18mm以上0.25mm以下に設定される。換言すれば、現像ローラー231と搬送ローラー232との間のギャップは、現像ローラー231と感光体ドラム20との間のギャップよりも狭く設定される。そして、このように狭く設定された対向位置TPを挟むように、現像ローラー231と搬送ローラー232との間で現像剤の受け渡しが行われる。なお、前述のように、対向位置TPには、いずれの磁極のピーク位置も対向していない。このため、上記のように対向位置TPのギャップが狭く設定されても、対向位置TPに現像剤が介在し現像剤の固着が発生することが抑止される。また、周方向において対向位置TPを挟むように、受け渡しの現像剤の磁気ブラシが2つ形成されるため、対向位置TPでトナーが飛散した場合でも、当該トナーを封じ込めることができる。
次に、実施例に基づいて、本発明を更に説明する。
<実験1>
実験1では、以下の実験条件において実験を行った。
<実験条件>
・感光体ドラム20:アモルファスシリコン感光体(a−Si)、直径φ30mm、表面電位Vo=270V、周速=300mm/sec
・層厚規制部材235と第2スリーブ232Bとのギャップ:200〜600μm
・現像ローラー231上の現像剤搬送量(層厚規制後):250g/m2
・キャリア:体積平均粒径35μm、磁力80emu/g
・トナー:体積平均粒径6.8μm、トナー濃度7%
実験1に用いた現像ローラー231の条件は以下のとおりである。
・現像ローラー231:直径φ20mm
・現像ローラー231の感光体ドラム20に対する周速比:1.6
・現像ローラー231と感光体ドラム20とのギャップ:300μm
・現像バイアス:直流バイアス=170V、交流バイアス=Vpp1.4kV、周波数f4.7kHz、Duty50%、矩形波(なお、搬送ローラー232の現像バイアスも同電位である)
・第1スリーブ231Bの表面条件:
(条件1)ローレットV溝(溝深さ80μm、溝幅0.2mm、溝本数120本)、Niメッキ処理
(条件2)サンドブラスト(メッキ前のRzjis8μm)、Niメッキ処理
(条件3)サンドブラスト(Rzjis8μm)、メッキ処理なし
また、実験1に用いた現像ローラー231の磁極分布は、先の表1に示された磁石1および磁石2である。なお、以下の現像ローラー231および搬送ローラー232の磁力測定は、日本電磁測器株式会社 GAUSS METER Model GX−100を用いて行った。
また、実験1に用いた搬送ローラー232の条件は以下のとおりである。
・搬送ローラー232:直径φ20mm
・第2スリーブ232Bの表面条件:ローレットV溝(溝深さ80μm、溝幅0.2mm、溝本数120本)
・搬送ローラー232の現像ローラー231に対する周速比:1.0
・搬送ローラー232と現像ローラー231とのギャップ:250μm
また、実験1に用いた搬送ローラー232の磁極分布は、先の表2に示されたものである。
実験1では、上記の条件のもと、磁力1、磁石2の2つの第1磁石231Aにおいて、N3極およびN4極の極間の磁力波形の関係を変更して行った。表3は、実験1の実施例および比較例の一覧と、それぞれの条件における現像ゴースト(ゴースト画像)の評価結果を示したものである。
なお、現像ゴーストの発生レベルは、図9に示すようなパターン画像を印刷した上で、下記の基準をもとに目視にてランク付けし、レベル3以上をOKレベルと判定している。
5:全くない(実使用上、問題なし)
4:よくみると確認できるが気にならないレベル(実使用上、問題なし)
3:発生しているが気にならないレベル(実使用上、問題なし)
2: 確認できる
1:はっきりと確認できる
比較例1−1においては、N3−N4極間の磁力差が小さく、現像剤の滞留部TD(図6)が充分形成されなかったため、現像ゴーストが発生している。また、実施例1−1、1−2、1−3においては、N3−N4極間の磁力差が充分あり、N3極からN4極での現像剤の搬送が一時的に阻害されるため、現像剤の滞留部TDが充分に形成された。この結果、現像ゴーストの発生が抑制される結果となった。一方、比較例1−2においては、比較例1−1に比べて現像ローラー231の第1スリーブ231Bの搬送性能が低下し滞留部TDが形成されやすいものの、N3−N4極間の磁力差が小さいため、滞留部TDが充分形成されず、現像ゴーストが発生する結果となった。実施例1−4、1−5、1−6においては、実施例1−1、1−2、1−3に比べて第1スリーブ231Bの搬送性能が低下したことも加わって、現像剤の滞留部TDが顕著に形成され、現像ゴーストが更に改善されている。実施例1−7においては、第1スリーブ231Bのブラスト面にメッキ処理が施されていない分だけ、現像ゴーストの抑制効果がやや低下しているものの、実使用上は問題ないレベルとなっている。また、実施例1−8では、現像剤が第1スリーブ231B上で滑りにくいローレット溝のみの条件であるが、N3−N4極間の磁力差が最低限の15mT確保されているため、同様に、実使用上は問題ないレベルとなっている。このように、前述の式1の関係が満たされることで、現像ゴーストが抑制される結果が得られた。
なお、第1スリーブ231Bの条件2、条件3については、Rzjis4μm以上14μm以下の範囲で同様の評価を行った結果、上記と同様の結果が得られることがわかった。また、Niメッキの膜厚が3μm以上5μm以下の範囲であれば、メッキ前とメッキ後との間で第1スリーブ231BのRzjisに相違がないことが確認された。
<実験2>
次に、実験1の第1スリーブ231Bの表面条件を(条件1)ローレットV溝に設定した上で、N3極―N4極の極間の磁力差(Tave−Td)15mTの条件において、S2極、N2極、N3極、S3極の磁力(ピーク磁力)と角度(ピーク位置)を異なる条件に調整しながら、各条件におけるトナー飛散を評価した。また、トナー飛散の評価については、現像装置23のハウジング23Hのトナー汚れで判断した。確認した場所は、現像領域NPよりも感光体ドラム20の回転方向下流側のハウジング23Hの壁面であり、耐久試験10000枚での汚れ具合を確認した。なお、ハウジング23Hのトナー汚れの評価は、以下の基準に基づいて行い、◎、○が実使用上問題ないレベルに相当する。
×:非常に汚れている
○:汚れているが軽微
◎:ほとんど汚れていない
上記の実験条件で行った評価結果を、表4および表5に示す。
表4および表5の実験結果より、第1磁石231Aの磁力の半径方向成分の周方向の分布において、N3極のピーク位置とS2極のピーク位置との極間角度をX(度)、N4極のピーク位置とS3磁極のピーク位置との極間角度をY(度)、N3極のピーク磁力とS2極のピーク磁力との和をE(mT)、N4極のピーク磁力とS3極のピーク磁力との和をF(mT)とした場合、E/X>F/Yの関係(式2)が満たされると、現像剤の滞留部TDが増大し、トナー飛散が抑制される結果となった。E/X―F/Y>0.5の関係が満たされると、更にトナー飛散が抑制される。
なお、図8は、上記の式2が満たされた場合の第1磁石231AのN3極およびN4極の周辺の半径方向成分の磁力分布(垂直分布)および接線方向成分の磁力分布(水平分布)の一例を示したグラフである。S2極とN3極の磁力の和および角度によってS2−N3極間に位置する水平磁力の最大値が決まる。また、N4極とS3極の磁力の和および角度によってN4−S3極間に位置する水平磁力の最大値が決まる。そして、水平磁力の最大値の位置は垂直磁場が0となる点と重なるため、水平磁力が0となる点は水平磁力の最大値同士を結んだ直線と近似される。この場合、水平磁力が0となる点の位置Gは、S2−N3極間に位置する水平磁力の最大値の位置と、N4−S3極間に位置する水平磁力の最大値の位置とのうち、水平磁力の値が低い方に近くなる。したがって、式2の関係が満たされると、水平磁力が0となる点の位置Gは、N3極のピークとN4極のピークとの中央の位置PLよりもN4極側に位置することとなる。
なお、実験1および実験2のそれぞれにおいて、層厚規制部材235と第2スリーブ232Bとのギャップ(ブレードギャップ)を調整し、第1スリーブ231B上のトナー搬送量を100g/m2以上400g/m2以下の範囲で同様の評価を行ったところ、現像剤の滞留部TDの発生量には変化がなく、トナー飛散および現像ゴーストの抑制効果に関しては同様の結果が得られた。更に、実験1および実験2のそれぞれにおいて、トナー濃度5%以上12%以下の範囲で、上記と同様の評価を行ったところ、現像剤の滞留部TDの発生量には変化がなく、トナー飛散および現像ゴーストの抑制効果に関しては同様の結果が得られた。更に、現像ローラー231および搬送ローラー232の直径が16mm以上35mm以下の範囲、感光体ドラム20の周速が200mm/sec以上400mm/sec以下の範囲で同様の評価を行った場合も、トナー飛散および現像ゴーストの抑制効果に関しては同様の結果が得られた。
以上、本発明の一実施形態に係る現像装置23およびこれを備える画像形成装置10につき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、例えば以下のような変形実施形態を取ることができる。
(1)上記の実施形態では、第1磁石231Aにおいて、隣接する2つの同極の磁極がN3極、N4極にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。隣接する2つの同極の磁極はS極からなるものでもよい。この場合、他の磁極がS極とN極との間で反転されればよい。
(2)上記の実施形態では、第1磁石231AのN3極の上流側にS2極が配置され、N4極の下流側にS3極が配置される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図3の第1領域Rにおいて、S2−N3−N4−S3極を挟むように他の磁極が配置されてもよい。
(3)また、上記の実施形態では、層厚規制部材235が搬送ローラー232に対向して配置される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。層厚規制部材235は、現像ローラー231のS1極周辺などに対向して配置されてもよい。この場合、現像剤を搬送するための他の磁極が第1磁石231Aに追加されてもよい。