以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る画像形成装置10について、図面に基づき詳細に説明する。本実施形態では、画像形成装置の一例として、タンデム方式のカラープリンタを例示する。画像形成装置は、例えば、複写機、ファクシミリ装置、及びこれらの複合機等であってもよい。
図1は、画像形成装置10の内部構造を示す断面図である。この画像形成装置10は、箱形の筐体構造を備える装置本体11を備える。この装置本体11内には、シートPを給紙する給紙部12、給紙部12から給紙されたシートPに転写するトナー像を形成する画像形成部13、前記トナー像が一次転写される中間転写ユニット14、二次転写ローラー145、画像形成部13にトナーを補給するトナー補給部15、及び、シートP上に形成された未定着トナー像をシートPに定着する処理を施す定着部16が内装されている。さらに、装置本体11の上部には、定着部16で定着処理の施されたシートPが排紙される排紙部17が備えられている。
装置本体11内には、さらに、画像形成部13より右側位置に、上下方向に延びるシート搬送路111が形成されている。シート搬送路111には、適所にシートを搬送する搬送ローラー対112が設けられている。また、シートのスキュー矯正を行うと共に、後述する二次転写のニップ部に所定のタイミングでシートを送り込むレジストローラー対113も、シート搬送路111における前記ニップ部の上流側に設けられている。シート搬送路111は、シートPを給紙部12から排紙部17まで、画像形成部13(二次転写ニップ部)及び定着部16を経由して搬送させる搬送路である。
給紙部12は、給紙トレイ121、ピックアップローラー122、及び給紙ローラー対123を備える。給紙トレイ121は、装置本体11の下方位置に挿脱可能に装着され、複数枚のシートPが積層されたシート束P1を貯留する。ピックアップローラー122は、給紙トレイ121に貯留されたシート束P1の最上面のシートPを1枚ずつ繰り出す。給紙ローラー対123は、ピックアップローラー122によって繰り出されたシートPをシート搬送路111に送り出す。
画像形成部13は、シートPに転写するトナー像を形成するものであって、異なる色のトナー像を形成する複数の画像形成ユニットを備える。この画像形成ユニットとして、本実施形態では、後述する中間転写ベルト141の回転方向上流側から下流側へ(図1に示す左側から右側へ)向けて順次配設された、マゼンタ(M)色の現像剤を用いるマゼンタ用ユニット13M、シアン(C)色の現像剤を用いるシアン用ユニット13C、イエロー(Y)色の現像剤を用いるイエロー用ユニット13Y、及びブラック(Bk)色の現像剤を用いるブラック用ユニット13Bkが備えられている。各ユニット13M、13C、13Y、13Bkは、それぞれ感光体ドラム20と、感光体ドラム20の周囲に配置された帯電装置21、現像装置23及びクリーニング装置25とを備える。また、各ユニット13M、13C、13Y、13Bk共通の露光装置22が、画像形成ユニットの下方に配置されている。
感光体ドラム20は、その軸回りに回転駆動され、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。この感光体ドラム20としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。各色の画像形成ユニットに対応して、感光体ドラム20がそれぞれ配置される。帯電装置21は、感光体ドラム20の表面を均一に帯電する。帯電装置21は、帯電ローラーと、前記帯電ローラーに付着したトナーを除去するための帯電クリーニングブラシとを備える。露光装置22は、光源やポリゴンミラー、反射ミラー、偏向ミラーなどの各種の光学系機器を有し、均一に帯電された感光体ドラム20の周面に、画像データに基づき変調された光を照射して、静電潜像を形成する。また、クリーニング装置25は、トナー像転写後の感光体ドラム20の周面を清掃する。
現像装置23は、感光体ドラム20上に形成された静電潜像を現像するために、感光体ドラム20の周面にトナーを供給する。現像装置23は、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤用のものである。なお、本実施形態では、トナーはプラスの極性に帯電する特性を備える。
中間転写ユニット14は、画像形成部13とトナー補給部15との間に設けられた空間に配置される。中間転写ユニット14は、中間転写ベルト141と、駆動ローラー142と、従動ローラー143と、一次転写ローラー24と、を備える。
中間転写ベルト141は、無端状のベルト状回転体であって、その周面側が各感光体ドラム20の周面にそれぞれ当接するように、駆動ローラー142及び従動ローラー143に架け渡されている。中間転写ベルト141は、一の方向に周回駆動され、感光体ドラム20から転写されたトナー像を表面に担持する。
駆動ローラー142は、中間転写ユニット14の右端側で中間転写ベルト141を張架し、中間転写ベルト141を周回駆動させる。駆動ローラー142は金属ローラーからなる。従動ローラー143は、中間転写ユニット14の左端側で中間転写ベルト141を張架する。従動ローラー143は、中間転写ベルト141に張力を付与する。
一次転写ローラー24は、中間転写ベルト141を挟んで感光体ドラム20と一次転写ニップ部を形成し、感光体ドラム20上のトナー像を中間転写ベルト141上に一次転写する。各色の感光体ドラム20に対向して、それぞれ、一次転写ローラー24が配置される。
二次転写ローラー145は、中間転写ベルト141を挟んで駆動ローラー142に対向して配置されている。二次転写ローラー145は、中間転写ベルト141の周面に圧接されて二次転写ニップ部を形成している。中間転写ベルト141上に一次転写されたトナー像は、給紙部12から供給されるシートPに、前記二次転写ニップ部において二次転写される。本実施形態の中間転写ユニット14および二次転写ローラー145は、本発明の転写部を構成する。転写部は、感光体ドラム20からシートPにトナー像を転写する。
トナー補給部15は、画像形成に用いられるトナーを貯留するものであり、本実施形態ではマゼンタ用トナーコンテナ15M、シアン用トナーコンテナ15C、イエロー用トナーコンテナ15Y及びブラック用トナーコンテナ15Bkを備える。これらトナーコンテナ15M、15C、15Y、15Bkは、MCYBk各色に対応する画像形成ユニット13M、13C、13Y、13Bkの現像装置23に、不図示のトナー搬送部を通して各色のトナーを補給する。
定着部16へ供給されたシートPは、定着ニップ部を通過することで加熱加圧される。これにより、前記二次転写ニップ部でシートPに転写されたトナー像は、シートPに定着される。
排紙部17は、装置本体11の頂部が凹没されることによって形成され、この凹部の底部に排紙されたシートPを受ける排紙トレイ171が形成されている。定着処理が施されたシートPは、定着部16の上部から延設されたシート搬送路111を経由して、排紙トレイ151へ向けて排紙される。
次に、図1に加え、図2乃至図6を参照して、本実施形態に係る現像装置23について、更に詳述する。図2は、本実施形態に係る現像装置23の内部構造を示す模式的な断面図である。図2では、現像装置23の各回転部材の回転方向が矢印で示されている。図3は、本実施形態に係る現像ローラー231および搬送ローラー232の磁極配置を示す模式的な断面図である。図4は、現像ローラー231の磁極配置を示す模式的な断面図である。図5は、搬送ローラー232の磁極配置を示す模式的な断面図である。図6は、本実施形態に係る現像装置23において、現像剤溜まり(滞留部TD)が発生する様子を示す模式的な断面図である。
図1乃至図6を参照して、現像装置23は、ハウジング23Hと、現像ローラー231と、搬送ローラー232と、二本の攪拌スクリュー233(現像剤攪拌部)と、仕切り板234と、層厚規制部材235と、を含む。ハウジング23Hは、現像装置23の各部材を支持する筐体部分である。
現像ローラー231は、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム20に所定の現像位置NP(図3)で対向して配置され、感光体ドラム20にトナーを供給する。現像ローラー231は、第1磁石231Aと、第1スリーブ231Bと、を備える(図3)。なお、本実施形態では、現像位置NPは、感光体ドラム20と現像ローラー231との最近接位置を含む。第1磁石231Aは、周方向に沿って複数の磁極を含み、ハウジング23Hに固定された円柱状の磁石である。第1スリーブ231Bは、第1磁石231Aの周囲を第1回転方向(図2、図3の矢印D1方向)に回転し、周面にトナーおよび磁性キャリアを含む現像剤を担持する。本実施形態では、第1スリーブ231Bは、アルミ製の円管部材(基材)からなる。第1スリーブ231Bの円管部材の周面には、サンドブラスト処理(ブラスト処理)が施されているとともに、更に、その周面上に施されたNiメッキ層を含む。第1スリーブ231BのNiメッキ層の表面は、所定の表面粗さを備えている。本実施形態では、第1スリーブ231Bの表面粗さRzjisは、4.0μmから14.0μmの範囲に設定されている。現像ローラー231の第1スリーブ231Bは、ハウジング23Hに回転可能に支持されている。
搬送ローラー232は、現像ローラー231に所定の対向位置TP(図3)で対向するように配置され、現像ローラー231に現像剤を供給する。なお、本実施形態では、対向位置TPは、搬送ローラー232と現像ローラー231との最近接位置を含む。搬送ローラー232は、第2磁石232Aと、第2スリーブ232Bと、を備える。第2磁石232Aは、周方向に沿って複数の磁極を含み、ハウジング23Hに固定されている。第2スリーブ232Bは、第2磁石232Aの周囲を第2回転方向(図2、図3の矢印D2方向)に回転し、周面にトナーおよびキャリアを含む現像剤を担持する。搬送ローラー232の第2スリーブ232Bは、ハウジング23Hに回転可能に支持されている。
なお、現像ローラー231および搬送ローラー232には、直流バイアスに交流バイアスが重畳された現像バイアスが印加される(図2)。また、図3に示すように、現像ローラー231が回転する第1回転方向D1、および搬送ローラー232が回転する第2回転方向D2は、対向位置TPにおいて互いに対向するように設定されている(カウンタ方向)。
攪拌スクリュー233は、2成分現像剤を攪拌しながら循環搬送することで、トナーを帯電させる。攪拌スクリュー233は、第1スクリュー233Aと、第2スクリュー233Bと、を備える。なお、図2では図示していないが、ハウジング23Hは、第1スクリュー233Aが配置される不図示の第1攪拌部と、第2スクリュー233Bが配置される不図示の第2攪拌部と、を備える(図1の現像装置23参照)。現像剤は、第1スクリュー233Aと、第2スクリュー233Bとの間を循環搬送される。そして、第1スクリュー233Aは、搬送ローラー232に現像剤を供給する。仕切り板234は、ハウジング23Hに備えられた板状部材である。仕切り板234は、第1攪拌部と第2攪拌部とを第1スクリュー233Aおよび第2スクリュー233Bの軸方向に沿って仕切っている。また、トナー補給部15から補給されたトナーは、第2スクリュー233Bの軸方向の一端側からハウジング23H内に流入し、他の現像剤と攪拌される。
層厚規制部材235は、搬送ローラー232の周面に対向して配置された非磁性金属からなる板状部材である。なお、他の実施形態において、層厚規制部材235の上流側の側面には、磁性部材が固定されてもよい。層厚規制部材235は、攪拌スクリュー233の第1スクリュー233Aから搬送ローラー232に供給された現像剤の層厚を規制する。
また、図2に示すように、現像ローラー231の軸心は、感光体ドラム20の軸心よりも下方に配置され、搬送ローラー232の軸心は、現像ローラー231の軸心よりも更に下方に配置されている。
また、図2を参照して、トナーおよびキャリアからなり、攪拌スクリュー233で循環搬送された現像剤は、第1スクリュー233Aから搬送ローラー232に供給される。その後、層厚規制部材235によって現像剤の層厚が規制された後、当該現像剤は現像ローラー231に供給される。現像位置NP(図3)においてトナーの一部が感光体ドラム20に供給されると、現像ローラー231から搬送ローラー232に現像剤が回収される。その後、搬送ローラー232に回収された現像剤は、再び第1スクリュー233Aの周辺の第1攪拌部に流入する。
図3および図4を参照して、本実施形態では、現像ローラー231の第1磁石231Aは、周方向に沿って5つの磁極を備えている。現像ローラー231と搬送ローラー232との対向位置TPから第1回転方向(D1)下流側には、N2極が配置される。また、N2極の第1回転方向下流側には、S2極が配置される。S2極は、搬送ローラー232から受け取った現像剤を感光体ドラム20側に搬送する搬送極として機能する。更に、S2極の第1回転方向下流側には、感光体ドラム20にトナーを供給する主極として機能するN3極が配置される。N3極は、現像位置NPの近傍に配置されている。
更に、第1磁石231Aは、現像位置NPよりも第1回転方向下流側、かつ、対向位置TPよりも第1回転方向上流側の第1領域Rにおいて、2つの磁極(S3、N4)を備えている。S3極は、N3極の第1回転方向下流側に配置される。N4極(第1磁極)は、S3極に対して第1回転方向下流側に隣接し、かつ、対向位置TPの第1回転方向上流側に配置された、S3と異極の磁極である。また、前述のN2極は、N4極に対して第1回転方向下流側に対向位置TPを挟んで隣接して配置されている。
表1には、本実施形態に係る第1磁石231Aとして、5つの磁極の角度および磁力(半径方向成分のピーク値)を例示したものが示されている。なお、表1に示される各磁極の角度は、図4の対向位置TPを始点(角度0°)として、第1回転方向に沿って示されている。図4では、対向位置TPと現像ローラー231の回転軸心とを結ぶ直線CL(現像ローラー231の回転軸心と搬送ローラー232の回転軸心とを結ぶ直線)が上記の始点として示されている。
一方、図3および図5を参照して、搬送ローラー232の第2磁石232Aは、周方向に沿って7つの磁極を備えている。現像ローラー231と搬送ローラー232との対向位置TPから第2回転方向(D2)下流側には、N5極が配置される。また、N5極の第2回転方向下流側には、S4極、N6極およびS5極が配置される。更に、S5極の第2回転方向下流側には、間隔をおいてS6極が配置される。S5極は、搬送ローラー232から現像剤を剥離する剥離極として機能する。S6極は、第1スクリュー233Aから現像剤を汲み上げる汲上極として機能する。S6極の第2回転方向下流側には、N1極およびS1極が配置されている。図5に示すように、S1極よりも第2回転方向上流側であって、N1極とS6極との間において前述の層厚規制部材235が搬送ローラー232の第2スリーブ232Bに所定の間隔をおいて対向して配置されている。本実施形態では、S6極が規制極として機能する。このため、搬送ローラー232から現像ローラー231に現像剤が受け渡される前に、現像剤の層厚を安定して規制することができる。なお、S1極は、対向位置TPの第2回転方向上流側に配置され、前述のN5極は、S1極に対して第2回転方向下流側に対向位置TPを挟んで隣接して配置されている。
表2には、本実施形態に係る第2磁石232Aの一例として、7つの磁極の角度および磁力(半径方向成分のピーク値)が示されている。表2に示される各磁極の角度は、図5の対向位置TPを始点(角度0°)として、第2回転方向に沿って示されている。なお、図5では、対向位置TPと搬送ローラー232の回転軸心とを結ぶ直線CL(現像ローラー231の回転軸心と搬送ローラー232の回転軸心とを結ぶ直線)が上記の始点として示されている。
更に、現像ローラー231の第1磁石231Aおよび搬送ローラー232の第2磁石232Aのうち対向位置TPの周囲に配置された4つの磁極の配置および機能について付言する。図7は、本実施形態に係る現像装置23の現像ローラー231および搬送ローラー232において、対向位置TPの周辺の様子を示す模式図である。第1磁石231AのN4極、N2極および第2磁石232AのN5極は、第2磁石232AのS1極に対して、異極の磁極である。そして、N4極およびN5極によって形成される磁界によって、現像位置NPを通過した現像剤が、現像ローラー231から搬送ローラー232に受け渡される。また、攪拌スクリュー233の第1スクリュー233Aから搬送ローラー232に供給された現像剤は、層厚規制部材235によって規制された後、S1極およびN2極によって形成される磁界によって、搬送ローラー232から現像ローラー231に受け渡される。
図6を参照して、ハウジング23Hは、現像ローラー231および搬送ローラー232に対向する複数の内壁部を備えている。詳しくは、ハウジング23Hは、第1内壁部23H1と、第2内壁部23H2と、第3内壁部23H3と、第4内壁部23H4と、を備える。第1内壁部23H1は、S3極およびN4極に対向し、かつ、現像位置NPからN4極に対向する位置まで現像ローラー231の第1スリーブ231Bの周面に沿うように延設されている。第2内壁部23H2は、第1内壁部23H1に接続されるとともに、N5極、S4極およびN6極に対向し、かつ、搬送ローラー232の第2スリーブ232Bの周面に沿うように延設されている。同様に、第3内壁部23H3は、第1内壁部23H1とは反対側でS2極およびN2極に対向し、かつ、現像位置NPからN2極に対向する位置まで現像ローラー231の第1スリーブ231Bの周面に沿うように延設されている。第1内壁部23H1と第3内壁部23H3との間において、現像ローラー231の第1スリーブ231Bが部分的に露出され、感光体ドラム20に対向して配置されている。第4内壁部23H4は、第3内壁部23H3に接続されるとともに、S1極およびN1極に対向し、かつ、搬送ローラー232の第2スリーブ232Bの周面に沿うように延設されている。なお、図6に示すように、各内壁部と現像ローラー231の第1スリーブ231Bおよび搬送ローラー232の第2スリーブ232Bとの間には、略均等な隙間H(現像剤の搬送路)が形成されている。本実施形態では、当該隙間Hの高さは、現像ローラー231および搬送ローラー232の半径よりも小さく、0.5mmから2.0mmの範囲に設定されている。なお、層厚規制部材235の位置調整が必要なため、第3内壁部23H3、第4内壁部23H4を含むハウジング23Hの一部は、取り外し可能である事が望ましい。
前述のように、感光体ドラム20上の静電潜像を現像する現像動作時に、現像ローラー231および搬送ローラー232には、直流バイアスに交流バイアスが重畳された現像バイアスが印加される。これによって、現像位置NP(現像ニップ)では交流バイアスによる振動電界が形成されるため、感光体ドラム20上の背景部に付着したかぶりトナーを回収することができる。しかしながら、このような振動電界は、トナーを現像ローラー231の第1スリーブ231B上にも引き付ける。この結果、第1スリーブ231Bの表面には、トナー層(トナー膜)が形成されやすくなる。
現像ローラー231の第1スリーブ231Bに形成されるトナー層の厚みは、画像部と背景部で異なり、この厚みの差が履歴として残存する。図8は、このようなトナーの消費履歴によってハーフトーン画像上に発生したゴースト画像を示す模式図である。プロセス方向(シートの搬送方向)の上流側で形成されたリング状の画像の履歴が後続のハーフトーン画像上に現れている。このような履歴は、上記のトナー層におけるトナーの消費量の差に基づくものであり、次のハーフトーン画像では残存するトナーの電荷分だけ第1スリーブ231Bと感光体ドラム20との間の電位差が部分的にシフトすることに起因している。
本実施形態では、2本の磁気ローラー(現像ローラー231、搬送ローラー232)が配置された現像装置23において、感光体ドラム20に対向する1本のローラーである現像ローラー231上に薄いトナー層が形成され、上記のようなゴースト画像が発生することが好適に抑止される。すなわち、このようなゴースト画像の抑止のために、現像装置23の現像ローラー231は前述のN4極を備え、搬送ローラー232はN5極を備えている(図7)。
このように、現像ローラー231から搬送ローラー232への現像剤の受け渡し部分に同極の磁極が対向して配置されることで、N4極およびN5極によって反発磁界が形成される。この場合、図6を参照して、現像ローラー231のN3極からS3極、更にN4極に搬送された現像剤は、対向するN5極がN4極と同極のため、すぐには搬送ローラー232側に移動できない。更に、現像ローラー231の第1回転方向下流側にも、N4極と同極のN2極が配置されている。このため、対向位置TP付近には、磁気シールドMSが形成される(図7)。そして、N4−N5極間の反発磁界によって、N4極上の現像ローラー231において部分的に現像剤が滞留する。この結果、現像ローラー231の第1スリーブ231B上には現像剤の滞留部TDが形成される。滞留部TDでは、現像剤の磁気ブラシが第1スリーブ231B上でスリップしながら滞留している。したがって、現像位置NPにおいて消費されたトナーの履歴が第1スリーブ231B上のトナー層に残存した場合であっても、トナーの履歴が滞留部TDで滞留する現像剤の磁気ブラシによって解消(研磨)される。このため、前述のようなゴーストの発生が抑止された現像装置23が提供される。特に、本実施形態のように、現像ローラー231と搬送ローラー232との対向位置TPに磁極のピーク位置が存在しない場合、搬送ローラー232上の現像剤の磁気ブラシの研磨力(掻き取り力)が、第1スリーブ231Bの表面に及びにくい。このような場合であっても、現像ローラー231および搬送ローラー232間のN4−N5極の反発力によって滞留部TDを好適に形成することができる。
N4極の磁力では保持しきれなくなった現像剤は、やがて滞留部TDから飛翔する。本実施形態では、後述のとおり、N4極とN5極の直線距離の方が、N4極とN2極の周方向の距離よりも小さい。この結果、N4極周辺から飛翔した現像剤は、N5極側に移動する。その後、現像剤は、搬送ローラー232のS4極、N6極およびS5極によって搬送された後、搬送ローラー232から分離される。
また、本実施形態では、1本の現像ローラー231が感光体ドラム20に対向して配置され、感光体ドラム20上の静電潜像を現像する。したがって、複数の現像ローラーが感光体ドラム20の周面に沿って隣接して配置される他の現像装置と比較して、1つの現像位置NPにおいて静電潜像を安定して顕在化する必要がある。換言すれば、上記のように感光体ドラム20の回転方向に沿って複数の現像ローラーが配置される場合、上流側の現像ローラーによって形成されたゴースト画像の濃度低下部分を下流側の現像ローラーが補正することができる。一方、本実施形態では、現像ローラー231の第1スリーブ231B上に形成されたトナー消費の履歴が次の周回においてゴースト画像となってしまうと補正が困難となる。したがって、上記のように2つのローラー間に同極磁極が配置されることで、トナー層の履歴が次の現像位置NPに向かって周回することを好適に抑止することができる。この結果、現像装置23の構造が複雑化することが抑止されるとともに、現像装置23のコストアップが抑止される。
更に、本実施形態では、第1スリーブ231Bは、アルミ製の円管部材(基材)からなる。また、第1スリーブ231Bの円管部材の周面には、サンドブラスト処理(ブラスト処理)が施されているとともに、更に、その周面上に施されたNiメッキ層を含む。このため、ブラスト処理が施された第1スリーブ231Bの表面性によって、現像剤がスリップしやすく、現像剤の滞留部TDが安定して形成される。更に、現像ローラー231上のメッキ層によって、正帯電トナーの帯電量が低下されやすくなる。この結果、現像剤の帯電量が低下し、滞留部TDでの現像剤のスリップが促進されるとともに、トナーがスリーブ表面に付着する力も小さくなる。したがって、ゴースト画像の発生が更に抑制される。なお、後述のとおり、他の実施形態において、現像ローラー231の第1スリーブ231Bは、ブラスト処理が施されたものではなく、公知の溝形状を備えるものでもよい。この場合、溝形成の前もしくは後工程でセンタレス加工などの外周研磨を行う、または、溝形成後にブラスト処理を行うことで、トナーのスリーブ表面への付着力が低下し、ゴースト画像の発生が単なる溝形状だけのものよりも抑制される。
また、本実施形態では、N4極の第1回転方向下流側にはN2極が配置され、N5極の第2回転方向上流側には、S1極が配置されている。そして、S1極およびN2極によって形成される磁界によって、搬送ローラー232から現像ローラー231に安定して現像剤を供給することができる。搬送ローラー232から現像ローラー231に受け渡される現像剤は、その後、現像位置NPにおいて感光体ドラム20上の静電潜像の現像に供される。このため、異極同士の磁極によって形成される磁界によって、現像剤の磁気ブラシを崩すことなく受け渡すことが望ましい。一方、現像ローラー231から搬送ローラー232への現像剤は、現像位置NPを通過した後の現像剤である。このため、同極同士の磁極によって形成される反発磁界によって、現像剤の磁気ブラシを崩しながら受け渡しても構わない。したがって、本実施形態では、現像ローラー231から搬送ローラー232に現像剤が受け渡される領域に、現像剤の滞留部TDを形成することが可能とされる。
このように、本実施形態では、対向位置TPを挟んだ位置に、異なる方向に向かって現像ローラー231および搬送ローラー232間の現像剤の受け渡し領域が安定して形成される。特に、搬送ローラー232から現像ローラー231へは、異極同士の磁極によって現像剤が受け渡され、現像ローラー231から搬送ローラー232へは、同極同士の磁極によって現像剤が受け渡される。なお、本実施形態では、一例として、現像ローラー231と感光体ドラム20との間のギャップ(現像位置NP)が、0.25mmよりも大きく0.40mm以下に設定される。一方、現像ローラー231と搬送ローラー232との間のギャップ(対向位置TP)は、0.18mm以上0.25mm以下に設定される。換言すれば、現像ローラー231と搬送ローラー232との間のギャップは、現像ローラー231と感光体ドラム20との間のギャップよりも狭く設定される。そして、このように狭く設定された対向位置TPを挟むように、現像ローラー231と搬送ローラー232との間で現像剤の受け渡しが行われる。なお、前述のように、対向位置TPには、いずれの磁極のピーク位置も対向していない。このため、上記のように対向位置TPのギャップが狭く設定されても、対向位置TPに現像剤が介在し現像剤の固着が発生することが抑止される。また、周方向において対向位置TPを挟むように、受け渡しの現像剤の磁気ブラシが2つ形成されるため、対向位置TPでトナーが飛散した場合でも、当該トナーを封じ込めることができる。
また、本実施形態では、図6を参照して、現像ローラー231の軸心は感光体ドラム20の軸心よりも下方に配置され、搬送ローラー232の軸心は現像ローラー231の軸心よりも下方に配置されている。このため、現像剤の滞留部TDから溢れた現像剤が、重力の作用とあいまって、搬送ローラー232側に安定して受け渡される。この際、第1内壁部23H1および第2内壁部23H2が、現像ローラー231および搬送ローラー232の周面に沿って形成されながら互いに接続されているため、現像ローラー231から搬送ローラー232に現像剤をスムーズに受け渡すことができる。また、現像剤の滞留部TDが第1内壁部23H1に接触または近接して配置されるため、滞留部TDの周辺で現像剤中のトナーが飛散することが抑止される。また、現像剤中のトナーが現像位置NP側に飛散することが抑止される。更に、現像剤の搬送路が限定されているため、現像剤の移動範囲が規制され、現像剤の滞留部TDを安定して形成することができる。同様に、搬送ローラー232から現像ローラー231への現像剤の受け渡し領域においても、第3内壁部23H3および第4内壁部23H4によって、搬送ローラー232から現像ローラー231に現像剤をスムーズに受け渡すことができる。
ここで、図7において、仮に、S1極が配置されていない場合の課題について更に付言する。この場合、同極のN極のみが2つのローラーの最近接位置付近に3つ配置される。このような構成では、反発磁界が集中しているため、3つのN極のうち1つの磁極の磁力や位置が少しでも変わると、互いの磁極間に形成される磁界が大きな影響を受けやすい。この結果、現像剤の飛翔状態が変化しやすく、更に、対向位置TPを多量の現像剤が通過する現象が発生しやすくなる。また、3つのN極が互いに反発しあっているため、第1磁石231Aおよび第2磁石232Aの磁極角度を設定することが困難となる。第1磁石231Aおよび第2磁石232Aの軸方向の端部には、不図示の固定軸が配置されている。そして、当該固定軸の端部がDカット形状とされ、ハウジング23Hに磁石のDカット形状と勘合する位置決め部材が取り付けられる。この結果、現像装置23における第1磁石231Aおよび第2磁石232Aの磁極の角度位置が決定される。しかし、上記のように、本実施形態のS1極が備えられない場合、3つのN極が互いに反発しあっているため、現像剤の搬送条件によって、磁力の公差や磁極位置の公差の範囲内で、この反発磁界が変動する場合がある。この結果、Dカット形状の勘合の遊び(クリアランス)の範囲で、不安定な磁界が発生する。この磁界の変動は、画像形成動作中に現像位置NPにおいて画像むらとなって現れる。更に、この場合、第2磁石232AのS6極の位置も変動するため、第1スクリュー233A(図2)から搬送ローラー232への現像剤の供給量も変動しやすい。このように、対向位置TPに同極磁極のみが配置された構成では、攪拌スクリュー233、搬送ローラー232および現像ローラー231における現像剤の受け渡しが不安定となりやすい。
一方、本実施形態では、S1極およびN2極の異極磁極同士が引きつけ合うため、両者の間に強い磁力線が形成される。この結果、N2極およびS1極が、N4極およびN5極間に形成される反発磁界に大きな影響を与えることが抑止され、対向位置TP周辺の磁界が安定しやすい。このように、本実施形態では、搬送ローラー232から現像ローラー231への現像剤の受け渡し領域において、搬送ローラー232側には、S1極が配置されている。そして、S1極は、同じく現像剤の受け渡し機能を備えるN4極、N2極およびN5極に対して異極の磁極である。そして、現像位置NPを通過しトナー濃度が充分ではない現像剤が、N4極からN2極側に移動しないためにも、4つの磁極のうち異極のS1極は、第1磁石231A側ではなく第2磁石232A側にあることが好適となる(図7)。
なお、N4極上で滞留する現像剤量が多いほど、第1スリーブ231B上のトナー層のクリーニング効果は高くなる。このため、クリーニング効果に対しては、N4極とN5極との間の反発磁界はより強い方が望ましい。この滞留部TDの溜まりやすさのためには、N4極とN5極との間の反発磁界に加え、N4極よりも第1回転方向上流側のS3極が、N4極に近い位置に配置されることが望ましい。この場合、S3極からN4極に延びる磁力線が強くなり、滞留部TDが大きく形成される。なお、このS3極が滞留部TDに影響する度合いは、S3極とN4極との間の磁力の水平方向成分(Tangential成分、接線方向成分ともいう)で表すことが出来る。磁力の水平方向成分が強いほど、滞留部TDが大きく形成される。更に、磁力の水平方向成分のピーク位置がN4極に近いほど、滞留部TDは増大し、トナー層のクリーニング性が向上する。換言すれば、S3極とN4極との間にある磁力の垂直方向成分(Radial成分、半径方向成分ともいう)が0となる点よりも、水平方向成分のピーク位置がN4極に近くなるように、第1磁石231Aの磁極配置が設定されることが望ましい。
図9は、現像ローラー231および搬送ローラー232の対向位置TPの周辺の模式図である。本実施形態では、現像ローラー231および搬送ローラー232の回転における軸方向と直交する断面で見た場合(図9)、第1磁石231Aおよび第2磁石232Aの磁力の半径方向成分において、N4極のピーク位置に対向する第1スリーブ231Bの周上の位置を第1外周位置P1、N2極のピーク位置に対向する第1スリーブ231Bの周上の位置を第2外周位置P2、N5極のピーク位置に対向する第2スリーブ232Bの周上の位置を第3外周位置P3とし、第1外周位置P1と第3外周位置P3との直線距離をX(mm)、第1外周位置P1と第2外周位置P2との第1スリーブ231Bの周面上の距離をY(mm)、N4極のピーク磁力をA(mT)、N2極のピーク磁力をB(mT)、N5極のピーク磁力をC(mT)、層厚規制部材235(図6)によって規制された搬送ローラー232上の現像剤の搬送量をM(g/m2)とした場合、以下の式1の関係が満たされることが望ましい。
3.48≦β/α≦6.28、(α=(A+C)/X,β=(A+B)/Y) ・・・(式1)
上記において、3.48≦β/αが満たされることで、N4極およびN5極が同極の磁極であっても、現像ローラー231から搬送ローラー232に現像剤が安定して受け渡される。また、β/α≦6.28が満たされることで、滞留部TDの現像剤量が過剰に増大することに起因して現像ローラー231または搬送ローラー232の駆動トルクが増大することが抑止され、現像ローラー231または搬送ローラー232に回転むらが生じることが抑止される。
次に、実施例に基づいて、本発明を更に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。後記の実験1および実験2では、以下の実験条件において実験を行った。
<実験条件>
・プリント速度:55枚/分
・感光体ドラム20:アモルファスシリコン感光体(a−Si)、直径φ30mm、表面電位Vo(白地部、背景部)=+270V、VL(画像部)=+20V、周速=300mm/sec
・層厚規制部材235と第2スリーブ232Bとのギャップ:200〜600μm
・搬送ローラー232、現像ローラー231上の現像剤搬送量(層厚規制後):100〜300g/m2
・キャリア:体積平均粒径35μm、磁力80emu/g、フェライト樹脂コートキャリア
・トナー:体積平均粒径6.8μm、トナー濃度7%、正帯電性
現像ローラー231の条件は以下のとおりである。
・現像ローラー231:直径φ20mm
・現像ローラー231の感光体ドラム20に対する周速比:1.8(対向位置で同方向、ウィズ方向)
・現像ローラー231と感光体ドラム20とのギャップ:300μm
・現像バイアス:直流バイアス=170V、交流バイアス=Vpp1.4kV、周波数f3.7kHz、Duty50%、矩形波(なお、搬送ローラー232および層厚規制部材235も同電位である)。なお、実験1では、Vppを更に可変とする。
・第1スリーブ231Bの表面条件:
(条件1)サンドブラスト(Rzjis7μm)、Niメッキ処理
(条件2)サンドブラスト(Rzjis7μm)、メッキ処理なし
また、実験に用いた現像ローラー231の磁極分布は、先の表1に示された条件である。なお、以下の現像ローラー231および搬送ローラー232の磁力測定は、日本電磁測器株式会社 GAUSS METER Model GX−100を用いて行った。
また、実験に用いた搬送ローラー232の条件は以下のとおりである。
・搬送ローラー232:直径φ20mm
・第2スリーブ232Bの表面条件:ローレットV溝(溝深さ80μm、溝幅0.2mm、溝本数120本)
・搬送ローラー232の現像ローラー231に対する周速比:1.4(対向位置で逆方向、カウンタ方向)
・搬送ローラー232と現像ローラー231とのギャップ:250μm
また、実験に用いた搬送ローラー232の磁極分布は、先の表2に示されたものである。
上記の実験条件において、実験1では、第1スリーブ231Bの表面条件において、Niメッキが施されていないもの、施されたものをそれぞれ、実施例1、実施例2とした。また、図10に実施例1、実施例2と比較される比較例の現像装置を図示する。当該現像装置では、感光体ドラム20Zに対向して配置される現像ローラー231Zと、現像ローラー231Zに対向して配置される搬送ローラー232Zと、を備える。なお、ハウジングなどの構造は、実施例1、2(図6)と同様である。特に、比較例では、現像ローラー231Zと搬送ローラー232Zとが対向する対向位置において、異極のN4極とS4極によって現像ローラー231Zから搬送ローラー232Zに現像剤が受け渡される。なお、比較例の現像ローラー231Zの第1磁石231AZの各磁極の磁力(半径方向成分)を表3に示し、搬送ローラー232Zの第2磁石232AZの各磁極の磁力(半径方向成分)を表4に示す。
上記の条件において、図8に示すゴースト確認パターン画像の印字を行い、発生しているゴーストの個数で評価を行った。ゴースト確認パターンは横方向に5個のパターン(ドーナツ状の元画像)が並び、その後方にハーフトーン画像が形成されている。ハーフトーン画像のパターンは5個それぞれで濃度が異なっており、そのハーフトーン部分に何個のゴーストが発生するかを評価した。ゴーストは元画像から4周までをカウントし、プリント1枚あたり最大20個のゴーストが発生する。更に、現像交流バイアスVppを1.0kV、1.2kV、1.4kV、1.6kV、1.8kVの5水準で変化させて、上記の評価を行った(合計最大100個のゴーストが発生)。実施例1、実施例2および比較例でのゴースト評価結果を表5に示す。
表5に示すように、本発明の一例として実施した実施例1および実施例2では、ゴースト発生個数が比較例に対して改善される結果となった。また、実施例2のように、第1スリーブ231Bにメッキを施すことでゴーストが大きく改善する結果となった。正荷電性のトナーに対しては、第1スリーブ231BにNiメッキを行うことで、トナーの帯電性が低下され、滞留部TDが安定して形成される。なお、第1スリーブ231Bの表面に、アルミまたはSUSの地肌が露出した場合、いずれも表面に不動態層が形成される。この不動態層は負荷電性であり、正荷電性のトナーの帯電量を上げる性能を持っている。現像ローラー231の第1スリーブ231B上に付着したトナーが、上記の不動態層で荷電されると、トナーの鏡像力がアップし、より第1スリーブ231Bの表面から離れにくくなる。これに対して、Niメッキは正荷電性であり、トナーの帯電量を下げやすい。この結果、メッキ層のすべり性でN4極でのクリーニング性が増大するとともに、トナーの荷電も低下するため、よりゴーストが解消される。
なお、第1スリーブ231Bの条件1、条件2については、Rzjis4μm以上14μm以下の範囲で同様の評価を行った結果、上記と同様の結果が得られることがわかった。また、Niメッキの膜厚が3μm以上5μm以下の範囲であれば、メッキ前とメッキ後との間で第1スリーブ231BのRzjisに相違がないことが確認された。
<実験2>
次に、N4極およびN5極の同極磁極の間での現像剤の受け渡しについて評価を行った。表6乃至表10は、層厚規制部材235によって規制された現像剤の搬送量、現像ローラー231および搬送ローラー232の直径、磁力(半径方向成分のピーク磁力)、磁極配置(角度)、および現像ローラー231と搬送ローラー232とのギャップ(DMS)を変化させた各実験条件、および評価結果を示したものである。なお、表6〜表10におけるN2極、N4極およびN5極の角度とは、現像ローラー231の回転軸心と搬送ローラー232の回転軸心とを結ぶ直線CLを始点として、各磁極のピーク位置を示したものである。この際、N2極の角度は、直線CLから第1回転方向下流側に測定し、N4極の角度は、直線CLから第1回転方向上流側に測定し、N5極の角度は、直線CLから第2回転方向下流側に測定している。また、各磁極のピーク位置とは、最大磁力(ピーク磁力)の80%の磁力を示す2点の中心位置に相当する。
表6〜表10では、前述のように、現像ローラー231および搬送ローラー232の回転における軸方向と直交する断面で見た場合(図9)、第1磁石231Aおよび第2磁石232Aの磁力の半径方向成分について、N4極のピーク位置に対向する第1スリーブ231Bの周上の位置を第1外周位置P1、N2極のピーク位置に対向する第1スリーブ231Bの周上の位置を第2外周位置P2、N5極のピーク位置に対向する第2スリーブ232Bの周上の位置を第3外周位置P3に対し、第1外周位置P1と第3外周位置P3との直線距離をX(mm)、第1外周位置P1と第2外周位置P2との第1スリーブ231Bの周面上の距離をY(mm)とし、XおよびYの値がそれぞれの実験条件において算出されている。また、表6〜表10では、N4極のピーク磁力をA(mT)、N2極のピーク磁力をB(mT)、N5極のピーク磁力をC(mT)とした場合、α=(A+C)/X,β=(A+B)/Yと定義されたα、βおよびα/βが、それぞれの実験条件において算出されている。
また、各実験で行った評価結果は、駆動ムラおよび受け渡し不良の2点である。駆動ムラありとは、滞留部TD(図6)の現像剤量が多すぎることで、現像ローラー231の駆動トルクが増大し、回転むらが発生したことを意味している。なお、この場合でも、現像ゴーストの発生は抑止されている。また、受け渡し不良とは、N4極からN5極に飛翔すべき現像剤の一部が、僅かに対向位置TPを通過してN2極側に移動することをいう。なお、この場合でも、現像ゴーストの発生は抑止されている。
N4極、N5極およびN2極は同じ極性のため、互いに反発しあう。このN4極とN5極との間の反発磁界が強すぎると、現像剤はN4極の周辺で溜まった後、僅かながらN2極の方向へ搬送されてしまう場合がある。このため、現像剤の受け渡しの観点では、このN4極、N5極およびN2極の磁力・角度位置の関係が重要となる。本発明者は、N4極のピーク磁力が30mT以上65mT以下の範囲において、この3つの同極磁極の条件の最適な条件を新たに知見するに至った。図11は、表6〜表10の実験結果に基づいて、横軸を層厚規制部材235(図6)によって規制された搬送ローラー232上の現像剤の搬送量とし、縦軸をα/βとした場合の駆動ムラおよび受け渡し不良の評価結果をプロットしたグラフである。α/βが回帰直線K1よりも上の範囲では、駆動ムラが発生する。また、α/βが回帰直線K2よりも下の範囲では、駆動ムラが全く発生しない。一方、α/βが回帰直線K4よりも下の範囲では、受け渡し不良が発生する。また、α/βが回帰直線K3よりも上の範囲では、受け渡し不良が全く発生しない。
現像ローラー231上を搬送される現像剤に対して、単位距離あたりの磁力量(2つの磁極の磁力の総和/2つの磁極の距離)が強い方が、反発磁力は強くなる。本発明の場合、N4極とN5極とは互いに向かいあっているが、N4極とN2極とは隣り合っている。また、N4極からN5極への現像剤の移動は、現像ローラー231から搬送ローラー232への飛翔となる。そのため、N4−N5極間とN4−N2極間とでは、反発磁力の働き方(作用)が異なる。したがって、表6〜表10、図11の結果から、層厚規制部材235(図6)によって規制された搬送ローラー232上の現像剤の搬送量をM(g/m2)とした場合、前述の式1の関係が満たされることが望ましい。この場合、同極間での現像剤の受け渡しが安定して実現される。
なお、実験1および実験2のそれぞれにおいて、トナー濃度5%以上12%以下の範囲で、上記と同様の評価を行ったところ、現像剤の滞留部TDの発生量には変化がなく、現像ゴーストの抑制効果および現像剤の受け渡し、駆動ムラに関して同様の結果が得られた。更に、現像ローラー231および搬送ローラー232の直径が16mm以上35mm以下の範囲、感光体ドラム20の周速が200mm/sec以上400mm/sec以下の範囲で同様の評価を行った場合も、現像ゴーストの抑制効果および現像剤の受け渡し、駆動ムラに関して同様の結果が得られた。
以上、本発明の一実施形態に係る現像装置23およびこれを備える画像形成装置10につき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、例えば以下のような変形実施形態を取ることができる。
(1)上記の実施形態では、第1磁石231Aおよび第2磁石232Aにおいて、対向する2つの同極の磁極がN4極、N5極にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。対向する2つの同極の磁極はS極からなるものでもよい。この場合、対向位置TPの周辺の他の磁極がS極とN極との間で反転されればよい。
(2)上記の実施形態では、層厚規制部材235が搬送ローラー232に対向して配置される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。層厚規制部材235は、現像ローラー231のS1極周辺などに対向して配置されてもよい。この場合、現像剤を搬送するための他の磁極が第1磁石231Aに追加されてもよい。