JP2017166059A - 高強度油井用鋼管用素材および該素材を用いた高強度油井用鋼管の製造方法 - Google Patents

高強度油井用鋼管用素材および該素材を用いた高強度油井用鋼管の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】YSが862MPa以上963MPa未満を満たす鋼管にした場合に、耐SSC性に優れ、焼戻し条件に対する強度変化を抑制した高強度油井用鋼管用素材および該素材を用いた高強度油井用鋼管の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.20〜0.50%、Si:0.05〜0.40%、Mn:0.3〜0.9%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.006%以下、Cr:0.1〜0.8%、Mo:0.1%〜2.0%、V :0.02〜0.3%、Nb:0.001〜0.04%、B:0.0003〜0.0030%、O:0.0030%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ロックウェル硬さHRCが(1)式を満たす高強度油井用鋼管用素材。
15.6×[%C]+29.2≦HRC<60.5×[%C]+31.1 ・・・(1)
[%C]は、C含有量の質量%。
【選択図】なし

Description

本発明は、油井管やラインパイプ用として好適な、湿潤硫化水素環境(サワー環境)下での耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)に優れた高強度油井用鋼管用素材および該素材を用いた高強度油井用鋼管の製造方法に関する。
近年、エネルギー資源の安定確保という観点から、高深度で腐食環境が厳しい油田や天然ガス田の開発が進められている。そのため、掘削用の油井管および輸送用のラインパイプに対して、降伏強さYS:110ksi(758MPa)以上の高強度を保持しながら、硫化水素(H2S)を含むサワー環境下での耐SSC性に優れることが、強く要求されるようになっている。
このような要求に対して、例えば特許文献1には、重量%で、C:0.2〜0.35%、Cr:0.2〜0.7%、Mo:0.1〜0.5%、V:0.1〜0.3%と、C、Cr、Mo、Vを調整して含む低合金鋼を、Ac3変態点以上で焼入れした後、650℃以上Ac1変態点以下で焼戻する油井用鋼の製造方法が提案されている。特許文献1に記載された技術によれば、析出している炭化物の総量が2〜5重量%で、総炭化物量のうちMC型炭化物の割合が8〜40重量%となるように調整でき、優れた耐硫化物応力腐食割れ性を有する油井用鋼が得られるとしている。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.15〜0.3%、Cr:0.2〜1.5%、Mo:0.1〜1%、V:0.05〜0.3%、Nb:0.003〜0.1%を含む低合金鋼を、1150℃以上に加熱した後、熱間加工を1000℃以上で終了し、引続き900℃以上の温度から焼入れし、その後、550℃以上Ac1変態点以下で焼戻し、さらに850〜1000℃に再加熱して焼入れし、650℃以上Ac1変態点以下で焼戻す焼入れ焼戻処理を少なくとも1回施す、靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼の製造方法が提案されている。特許文献2に記載された技術によれば、析出している炭化物の総量が1.5〜4質量%で、総炭化物量のうちMC型炭化物の割合が5〜45質量%、M23C6型炭化物の割合が200/t(t:肉厚(mm))質量%以下となるように調整でき、靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼となるとしている。
また、特許文献3には、質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.10〜1.0%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.1〜1.0%、Al:0.003〜0.08%、N:0.008%以下、B:0.0005〜0.010%、Ca+O:0.008%以下を含み、さらにTi:0.005〜0.05%、Nb:0.05%以下、Zr:0.05%以下、V:0.30%以下のうちの1種または2種以上を含有し、断面観察による連続した非金属介在物の最大長さが80μm以下、断面観察による非金属介在物の粒径20μm以上の個数が10個/100mm2以下である油井用鋼材が提案されている。これにより、油井用として要求される高強度を有しかつその強度に見合う優れた耐SSC性を有する油井用低合金鋼材が得られるとしている。
また、特許文献4には、質量%で、C:0.20〜0.35%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.05〜0.6%、P :0.025%以下、S :0.01%以下、Al:0.005〜0.100%、Mo:0.8〜3.0%、V:0.05〜0.25%、B:0.0001〜0.005%、N:0.01%以下、O:0.01%以下を含有し、12V+1−Mo≧0を満たす耐硫化物応力腐食割れ性に優れた低合金油井管用鋼が提案されている。特許文献4に記載された技術では、上記した組成に加えて、Cr:0.6%以下を、Mo−(Cr+Mn)≧0を満足するように含有してもよく、またNb:0.1%以下、Ti:0.1%以下、Zr:0.1%以下のうちの1種以上を含有してもよく、またCa:0.01%以下を含有してもよいとしている。
また、特許文献5には、質量%で、C:0.15〜0.50%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.3〜1.0%、P :0.015%以下、S :0.005%以下、Al:0.01〜0.1%、N:0.01%以下、Cr:0.1〜1.7%、Mo:0.40〜1.1%、V:0.01〜0.12%、Nb:0.01〜0.08%、Ti:0.03%以下、B:0.0005〜0.003%を含有し、焼戻しマルテンサイト相を主体とし、旧オーステナイト粒度番号が8.5以上である組織を有し、管内各位置でのビッカース硬さが295HV10以下とすることで、耐応力腐食割れ性に優れた油井用継目無鋼管が得られるとしている。
特開2000−178682号公報 特開2000−297344号公報 特開2001−172739号公報 特開2007−16291号公報 特開2013−129879号公報
しかしながら、高強度であるほど、焼戻し温度に対する強度変化が大きくなり、所望の範囲の強度を安定して得ることが困難になる傾向がある。また、高強度であるほど耐SSC性を得ることが困難になるため、耐SSC性を安定的に確保するために耐SSC性を左右する強度のばらつきをより小さくすることが必要となる。すなわち、一定の温度範囲で管理される熱処理を有する実製造ラインにおいては、それに伴うパイプ間およびパイプ内の強度のばらつきを考慮することが必要である。そして、焼戻し温度および焼戻し時間の変動に対する強度変化を小さくすることにより、パイプ全長にわたり所望の強度を逸脱するリスクが軽減され、歩留りの向上が期待できる。さらには、強度のばらつきを抑え、強度を狭レンジに管理することにより、SSC試験結果が安定する。
特許文献1〜5に記載された技術だけでは、YS:862MPa以上963MPa未満の高強度鋼および継目無鋼管の耐SSC性を、厳しい腐食環境で使用される油井用として安定して製造するには製造管理の負荷が大きく、また歩留まりが低いために経済性が悪く、技術として十分であるとはいえない。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、YS:125ksi級鋼の強度を想定し、YSが862MPa以上963MPa未満を満たす鋼管にした場合に、耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)に優れ、かつ、焼戻し条件に対する強度変化を抑制することが可能な高強度油井用鋼管用素材および該素材を用いた高強度油井用鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
なお、ここでいう「高強度」とは、鋼管の降伏応力YSが862MPa以上963MPa未満である場合をいうものとする。また、ここでいう「耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)に優れた」とは、NACE TM0177 Method Aに規定された試験方法に準拠し、分圧5kPaの硫化水素を飽和させ、pHを3.5に調整した5.0質量%食塩水溶液を含む酢酸−酢酸ナトリウム水溶液(液温:24℃)中で定荷重試験を実施し、被試験材が実際の降伏応力の90%の応力を負荷した状態で720hを超えて割れが生じない場合をいうものとする。
また、ここでいう「所望の範囲の強度を安定して得る」とは、TP=(T+273)×(log t+20) (T:焼戻し温度(℃)、t:焼戻しの保持時間(hr))とし、成分と製造条件が同じ二つの管素材を、それぞれのTPの差の絶対値ΔTPが220以上となる条件で焼戻しを行い、それらの焼戻した管の降伏応力の差の絶対値(MPa)をΔYSとし、ΔYS/ΔTP≦0.242MPaである場合をいうものとする。焼戻し温度が高いほど、また、焼戻し時間が長いほどTPは大きくなりYSは低下する。焼戻し時間、焼戻し温度が変化した場合でも、上記のTPが同一であれば同一のYSとなり、同一鋼管のYSはTPで一義的に決まるため、ΔTPに対するΔYSを一定値以下にすることは、焼戻しの条件変動による強度変化が小さいことを意味する。例えば、ΔYS/ΔTP=0.2、YSの管理範囲が68.9MPa(10ksi)とした場合、ΔTP≦344.5と導かれるため、YSの上限下限値を満足する範囲で焼戻し温度と時間の適正条件が決まる。
本発明者らは、上記した目的を達成するためには、所望の高強度と優れた耐SSC性とを両立させることが必要であることから、強度と耐SSC性に及ぼす各種要因について鋭意研究した。耐SSC性は強度が低いほど優れるため、製造工程のばらつきに起因した強度の上昇により、耐SSC性が低下する。従来の鋼材では、優れた耐SSC性を得るために、焼入れによりマルテンサイト組織にし、高温で焼戻すことにより水素のトラップサイトとなる転位密度を減少させることが知られているが、高強度であるほど、焼戻しによる強度低下が大きいため、耐SSC性を満足する強度範囲に安定させることが困難であった。しかしながら、本発明者らは、焼入れで得られる組織の焼入れまま硬さを鋼材の化学成分と焼入れの際の冷却方法によって制御することにより、焼戻しによる強度変化が抑制されることを見出した。また、高強度であるほど耐SSC性を得るのが困難となるため、耐SSC性を安定的に確保するために耐SSC性を左右する強度のバラツキをより小さくすることが必要となるが、狭レンジの強度を安定して得ることにより、SSC試験結果が安定することを見出した。
このようなことから、本発明者らは、高強度鋼における耐SSC性の安定化のためには、化学組成を制御するとともに、焼入れまま組織をマルテンサイトより転位密度の低いベイナイトを含む組織に制御することにより、焼戻しによる強度変化を小さくすることに思い至った。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
[1]質量%で、C :0.20〜0.50%、Si:0.05〜0.40%、Mn:0.3〜0.9%、P :0.015%以下、S :0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、N :0.001〜0.006%、Cr:0.1〜0.8%、Mo:0.1〜2.0%、V :0.02〜0.3%、Nb:0.001〜0.04%、B:0.0003〜0.0030%、O(酸素):0.0030%以下、を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ロックウェル硬さHRCが(1)式を満たす高強度油井用鋼管用素材。
15.6×[%C]+29.2≦HRC<60.5×[%C]+31.1・・・(1)
(1)式中、[%C]は、Cの含有量の質量%である。
[2]前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.003〜0.025%を含有し、N含有量に対するTi含有量の比(Ti/N):2.0〜5.0を満足する前記[1]に記載の高強度油井用鋼材。
[3]前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、W:3.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する前記[1]または[2]に記載の高強度油井用鋼管用素材。
[4]前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%を含有する前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の高強度油井用鋼管用素材。
[5]前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の高強度油井用鋼管用素材を用いた鋼管の製造方法であり、
焼入れ後の前記素材に焼戻処理を施す工程を含む、降伏応力YSが862MPa以上963MPa未満である高強度油井用鋼管の製造方法。
本発明によれば、YSが862MPa以上963MPa未満を満たす鋼管にした場合に、耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)に優れ、かつ、焼戻し条件に対する強度変化を抑制することが可能な高強度油井用鋼管用素材および該素材を用いた高強度油井用鋼管の製造方法が提供される。
本発明の高強度油井用鋼管用素材は、質量%で、C:0.20〜0.50%、Si:0.05〜0.40%、Mn:0.3〜0.9%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.001〜0.006%、Cr:0.1〜0.8%、Mo:0.1%〜2.0%、V:0.02〜0.3%、Nb:0.001〜0.04%、B:0.0003〜0.0030%、O(酸素):0.0030%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ロックウェル硬さHRCが以下の(1)式を満たす。
15.6×[%C]+29.2≦HRC<60.5×[%C]+31.1 ・・・(1)
なお、(1)式中、[%C]は、Cの含有量の質量%である。また、ロックウェル硬さHRCは焼入れままのロックウェル硬さである。
まず、本発明の高強度油井用鋼管用素材の組成限定理由について説明する。以下、組成における質量%は、単に%で記す。
C:0.20〜0.50%
Cは、固溶して鋼の強度増加に寄与するとともに、鋼の焼入性を向上させ、焼入れ時にマルテンサイト相を主相とする組織の形成に寄与する。このような効果を得るためには、Cは0.20%以上の含有を必要とする。一方、Cの0.50%を超える含有は、焼入れ時に割れを発生させ、製造性を著しく低下させる。このため、Cは0.20〜0.50%とする。好ましくは、Cは0.20〜0.35%である。より好ましくは、Cは0.22〜0.32%である。
Si:0.05〜0.40%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中に固溶して鋼の強度を増加させ、さらに焼戻時の軟化を抑制する作用を有する元素である。このような効果を得るためには、Siは0.05%以上含有する必要がある。一方、Siの0.40%を超える含有は、軟化相であるフェライト相の生成を促進し、所望の高強度化を阻害し、さらに粗大な酸化物系介在物の形成を促進して、耐SSC性や靭性を低下させる。また、Siは偏析して局部的に鋼を硬化させる元素であり、0.40%を超えるSiの含有は、局部的硬化領域を形成し、耐SSC性を低下させるという悪影響をおよぼす。このようなことから、本発明では、Siは0.05〜0.40%とする。より好ましくは、Siは0.10〜0.30%である。
Mn:0.3〜0.9%
Mnは、Cと同様に、鋼の焼入性を向上させ、鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、Mnは0.3%以上の含有を必要とする。一方、Mnは、偏析して局部的に鋼を硬化させる元素であり、0.9%を超えるMnの含有は、局部的硬化領域を形成し、耐SSC性を低下させるという悪影響をおよぼす。このため、本発明では、Mnは0.3〜0.9%とする。好ましくは、Mnは0.4〜0.8%である。より好ましくは、Mnは0.5〜0.8%である。
P:0.015%以下
Pは、粒界に偏析して粒界脆化を引き起こすだけでなく、偏析して局部的に鋼を硬化させる元素であり、本発明では、Pは不可避的不純物として、できるだけ低減することが好ましいが、0.015%までは許容できる。このため、Pは0.015%以下とする。好ましくは、Pは0.012%以下である。
S:0.005%以下
Sは、不可避的不純物として、鋼中ではそのほとんどが硫化物系介在物として存在し、延性、靭性、さらには耐SSC性を低下させるため、できるだけ低減することが好ましいが、0.005%までは許容できる。このため、Sは0.005%以下とする。好ましくは、Sは0.003%以下である。
Al:0.005〜0.10%
Alは、脱酸剤として作用するとともに、Nと結合してAlNを形成して、加熱時のオーステナイト粒の微細化に寄与する。また、Alは、Nを固定し、固溶BがNと結合するのを防止して、Bの焼入性向上効果の低減を抑制する。このような効果を得るためには、Alは0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超えるAlの含有は、酸化物系介在物の増加をもたらし、鋼の清浄度を低下させて、延性、靭性、さらには耐SSC性の低下を招く。このため、Alは0.005〜0.10%とする。好ましくは、Alは0.01〜0.08%である。
N:0.001〜0.006%
Nは、不可避的不純物として鋼中に存在するが、Alと結合してAlNを形成し、また、Tiを含有する場合はTiNを形成して、結晶粒を微細化し、靭性を向上させる作用を有する。このような効果を得るために、Nは0.001%以上の含有を必要とする。しかし、0.006%を超えるNの含有は、形成される窒化物が粗大化し、耐SSC性や靭性を著しく低下させる。このため、Nは0.001〜0.006%とする。
Cr:0.1〜0.8%
Crは、焼入性の向上を介して鋼の強度を増加させるとともに、耐食性を向上させる元素である。また、Crは、焼戻処理時にCと結合し、M3C、M7C3、M23C6(Mは金属元素)などの炭化物を形成し、焼戻軟化抵抗を向上させる元素であり、特に鋼管の高強度化に際しては必要な元素である。上記のM3C型炭化物は、焼戻軟化抵抗を向上させる作用が強い。このような効果を得るためには、Crは0.1%以上の含有を必要とする。一方、0.8%を超えてCrを含有すると、焼入性が過剰に高くなり、工業的な焼入れ時の冷却制御では、所定の範囲内の焼入れ硬さを得ることができず、焼戻し温度による強度変化が大きくなる。また、多量のM7C3、M23C6を形成し、水素のトラップサイトとして作用して耐SSC性を低下させる。このようなことから、Crは、0.1〜0.8%とする。好ましくは、Crは0.3〜0.6%である。
Mo:0.1〜2.0%
Moは、炭化物を形成し、析出強化により鋼の強化に寄与する元素であり、焼戻により転位密度を低減させたうえで所望の強度を確保するのに有効に寄与する。また、転位密度の低減により耐SSC性が向上する。また、Moは、鋼中に固溶して、旧オーステナイト粒界に偏析して、耐SSC性の向上に寄与する。さらに、Moは、腐食生成物を緻密化し、さらに割れの起点となるピットの生成および成長を抑制する作用を有する。このような効果を得るためには、Moは0.1%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えるMoの含有は、針状のMC析出物や、場合によってはLaves相(Fe2Mo)の形成を促進して、耐SSC性を低下させる。このため、Moは0.1〜2.0%とする。Moは、好ましくは、0.3〜2.0%であり、より好ましくは、0.5〜2.0%である。
V:0.02〜0.3%
Vは、炭化物や炭窒化物を形成し、鋼の強化に寄与する元素である。このような効果を得るためには、Vは0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.3%を超えてVを含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果を期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Vは0.02〜0.3%とする。好ましくは、Vは0.03〜0.2%である。
Nb:0.001〜0.04%
Nbは、炭化物やあるいはさらに炭窒化物を形成し、析出強化により鋼の強度増加に寄与するとともに、オーステナイト粒の微細化にも寄与する。このような効果を得るためには、Nbは0.001%以上の含有を必要とする。一方、Nb析出物は、SSC(硫化物応力腐食割れ)の伝播経路と成りやすく、0.04%を超えるNbの含有による多量のNb析出物の存在は、とくに降伏強さ862MPa以上の高強度油井用鋼管において、耐SSC性の顕著な低下に繋がる。このため、所望の高強度と優れた耐SSC性との両立の観点から、本発明では、Nbは0.001〜0.04%とする。
B:0.0003〜0.0030%
Bは、オーステナイト粒界に偏析し、粒界からのフェライト変態を抑制することにより、微量の含有でも、鋼の焼入性を高める作用を有する。このような効果を得るためには、Bは0.0003%以上の含有を必要とする。一方、0.0030%超えてBを含有すると、炭窒化物等として析出し、焼入性が低下し、靭性が低下する。このため、Bは0.0003〜0.0030%とする。好ましくは、Bは0.0007〜0.0025%である。
O(酸素):0.0030%以下
O(酸素)は、不可避的不純物として、鋼中では酸化物系介在物として存在している。この介在物は、SSCの発生起点となり、耐SSC性を低下させるため、本発明ではO(酸素)は、できるだけ低減することが好ましい。しかし、過剰な低減は精錬コストの高騰を招くため、0.0030%までのO(酸素)の含有は許容できる。このため、O(酸素)は0.0030%以下とする。好ましくは、O(酸素)は0.0020%以下である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物としては、Mg:0.0008%以下、Co:0.05%以下が許容できる。
また、基本の組成に加えてさらに、選択元素として、Ti:0.003〜0.025%を含有することができる。さらに、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、W:3.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することもできる。また、さらに、Ca:0.0005〜0.005%を含有することもできる。
Ti:0.003〜0.025%
Tiは、溶鋼の凝固時にNと結合し微細なTiNとして析出して、そのピンニング効果により、オーステナイト粒の微細化に寄与する。このような効果はTi含有量が0.003%以上で得られる。一方、Tiを0.025%を超えて含有すると、TiNが粗大化し、上記したピンニング効果が発揮できず、かえって靭性が低下する。また、さらに粗大なTiNが起因となり、耐SSC性が低下する。このようなことから、Tiを含有する場合には、Tiは0.003〜0.025%とすることが好ましい。
N含有量に対するTi含有量の比(Ti/N):2.0〜5.0
Tiを含有する場合、Ti/Nが2.0未満では、Nの固定が不足しBNを形成し、Bによる焼入性向上効果が低下する。一方、Ti/Nが5.0を超える場合には、TiNが粗大化する傾向が顕著になり、靭性や耐SSC性が低下する。このようなことから、Tiを含有する場合、Ti/Nは2.0〜5.0とする。好ましくは、Ti/Nは2.5〜4.5である。
Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、W:3.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Wはいずれも、鋼の強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。
Cuは、鋼の強度増加に寄与するとともに、さらに、靭性および耐食性を向上させる作用を有する元素である。特に、厳しい腐食環境下での耐SSC性の向上に、極めて有効な元素である。Cuを含有する場合には、緻密な腐食生成物が形成されて耐食性が向上するとともに、さらに割れの起点となるピットの生成および成長が抑制される。このような効果はCu含有量が0.03%以上で得られる。一方、Cuは1.0%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず経済性に不利となる。このため、Cuを含有する場合には、Cuは1.0%以下とすることが好ましい。
Niは、鋼の強度増加に寄与するとともに、さらに、靭性および耐食性を向上させる元素である。このような効果はNi含有量が0.03%以上で得られる。一方、Niは1.0%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず経済性に不利となる。このため、Niを含有する場合には、Niは1.0%以下とすることが好ましい。
Wは、炭化物を形成し、析出強化により鋼の強度増加に寄与するとともに、固溶して、旧オーステナイト粒界に偏析して耐SSC性の向上に寄与する元素である。このような効果はW含有量が0.03%以上で得られる。一方、Wは3.0%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず経済性に不利となる。このため、Wを含有する場合には、Wは3.0%以下とすることが好ましい。
Ca:0.0005〜0.005%
Caは、Sと結合しCaSを形成して、硫化物系介在物の形態制御に有効に作用する元素であり、硫化物系介在物の形態制御を介して、靭性、耐SSC性の向上に寄与する。このような効果はCa含有量が0.0005%以上で得られる。一方、Caを0.005%を超えて含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済性に不利となる。このため、Caを含有する場合には、Caは0.0005〜0.005%とすることが好ましい。
ロックウェル硬さHRC:15.6×[%C]+29.2以上、60.5×[%C]+31.1未満([%C]は、Cの含有量の質量%)
焼入れままでマルテンサイトの体積率が高いほど硬さは高くなり、その後の焼戻しによる軟化が顕著である。そのため、製造過程において存在する焼戻し温度のばらつき等による強度の変化がより助長されることになる。また、マルテンサイト組織は耐SSC性にとって有害とされる転位が多量に導入された組織であるため、高温で焼戻す必要があり、焼戻し温度に依存する強度を制御することが困難になる。そこで、本発明者らは、ロックウェル硬さ(焼入れままのロックウェル硬さ)HRCを制御して所望の降伏応力YSおよび優れた耐SSC性を安定に得ることに着目し、本発明では、焼入れままのロックウェル硬さHRCをCの含有量により制限し、15.6×[%C]+29.2≦HRC<60.5×[%C]+31.1とする。ここで、[%C]は、Cの含有量の質量%である。
焼入れままのロックウェル硬さHRC が60.5×[%C]+31.1以上となり、焼入れまま硬さが高くなると、焼戻し条件による強度変化が所定の範囲を超える。一方、焼入れままのロックウェル硬さHRCが15.6×[%C]+29.2未満となると、焼戻しによる強度変化は小さいが、焼戻し後に862MPa以上の降伏応力を得ることができなくなる。そのため、焼入れままのロックウェル硬さHRCは、15.6×[%C]+29.2≦HRC<60.5×[%C]+31.1とする。好ましくは、焼入れままのロックウェル硬さHRCは60.5×[%C]+28.5未満である。
焼入れままのロックウェル硬さHRCは、焼入れままの厚鋼板の全厚の1/2位置から圧延方向と平行な断面(L断面)の硬さ測定用試験片を採取し、JIS Z 2245に基づいてロックウェル硬さ測定を実施することで測定することができる。
本発明の高強度継目無鋼管用素材における上記の焼入れまま組織については、肉厚(板厚)および焼入れ時の冷却方法で決まる焼入れ時の冷却速度と化学組成を適正に選択することにより調整することができる。すなわち、本発明の焼入れ硬さ範囲とするためには、焼入れの冷却速度によって成分を選択する必要があり、冷却速度を制御する技術を用いれば、その成分範囲を広げることが可能になる。
次に、本発明の高強度油井用鋼管用素材を用いた高強度油井用鋼管の製造方法について説明する。
本発明の高強度油井用鋼管の製造方法では、焼入れをした前述の素材に焼戻処理を施して高強度油井用鋼管を得ることができる。より具体的に、高強度油井用鋼管の製造方法の一例としては、鋼片素材を加熱し、熱間加工を施して所定形状とし、加熱の加熱温度を、1050〜1350℃の範囲の温度とし、熱間加工後に、空冷以上の冷却速度で表面温度が200℃以下となる温度まで冷却を施し、該冷却後、850〜1000℃の範囲の温度に再加熱し、表面温度で200℃以下となる温度まで急冷する焼入れ処理を1回以上施し、焼入れ処理後625℃以上Ac1変態点温度未満の範囲の温度に加熱し、焼戻処理を施す。
上記のように、本発明では、上記した組成の鋼片素材を加熱し、熱間加工を施して所定形状の厚鋼板または継目無鋼管とする。
本発明で使用する鋼片素材は、上記した組成を有する溶鋼を、電気炉や転炉等の常用の溶製方法で溶製・鋳造方法で、鋳片(丸鋳片)とすることが好ましい。鋳片をさらに熱間圧延し所定形状の鋼片としてもよい。
ついで、上記した組成を有する鋳片(鋼片素材)に、加熱温度:1050〜1350℃に加熱し熱間加工を施して、所定寸法の鋼板または継目無鋼管とする。
加熱温度:1050〜1350℃
加熱温度が1050℃未満では、鋼管素材中の炭化物の溶解が不十分となる。一方、1350℃を超えて加熱されると、結晶粒が粗大化するとともに、凝固時に析出したTiNなどの析出物が粗大化し、また、セメンタイトが粗大化するため、鋼管靭性が低下する。また、1350℃を超える高温に加熱すると、鋼管素材表面にスケール層が厚く生成し、圧延時に表面疵等の発生原因になるとともに、エネルギーロスが増大し省エネルギーの観点から好ましくない。このようなことから、加熱温度は1050〜1350℃とする。好ましくは、加熱温度は1100〜1300℃である。
加熱された鋼片の熱間圧延により厚鋼板とするか、加熱された鋼管素材をマンネスマン−プラグミル方式、あるいはマンネスマン−マンドレル方式の熱間圧延機を用いて熱間加工(造管)を施し、所定寸法の継目無鋼管とする。なお、プレス方式による熱間押出しで継目無鋼管としてもよい。
所定の製品形状(厚鋼板や継目無鋼管)にする熱間加工を終了した後、表面温度が200℃以下となるまで空冷以上の冷却速度で冷却する冷却処理を施す。
熱間加工終了後の冷却処理:冷却速度;空冷以上、冷却停止温度;200℃以下
本発明の組成範囲では、熱間加工後に空冷以上の冷却速度で冷却すれば、マルテンサイト相を主相とする組織を得ることができる。表面温度が200℃超えで空冷(冷却)を停止すると、変態が完全に完了していない場合がある。そのため、熱間加工後の冷却処理は、表面温度が200℃以下となるまで、空冷以上の冷却速度で冷却することとした。また、本発明において、「空冷以上の冷却速度」とは、0.1℃/s以上のことを指す。0.1℃/s未満の冷却速度であると、冷却後の金属組織が不均一になり、その後の熱処理後の金属組織が不均一となる。
焼入れ処理のための再加熱温度:850〜1000℃
再加熱温度が、850℃未満では、オーステナイト単相域に加熱されないため、マルテンサイト相を主相とする組織が得られない。一方、1000℃を超えると、結晶粒が粗大化し靭性が低下することに加え、表面の酸化スケールが厚くなり、剥離しやすくなり、鋼板表面に疵が発生しやすくなる等の悪影響がある。さらに、熱処理炉への負荷が過大となり、省エネルギーの観点からも問題となる。このようなことから、焼入れ処理のための再加熱温度は、850〜1000℃とする。好ましくは、焼入れ処理のための再加熱温度は950℃以下である。
焼入れ処理:1回以上
また、再加熱した後に、焼入れ処理を少なくとも1回施し、本発明の高強度油井用鋼材を得る。焼入れ処理の冷却は、好ましくは板厚中心位置の温度で400℃以下の温度まで、2℃/s以上の平均冷却速度で水冷し、表面温度が200℃以下となるまで、好ましくは100℃以下の温度まで冷却する。なお、焼入れ処理は、2回以上繰り返してもよい。
焼入れ処理後の焼戻処理での焼戻温度:625℃以上Ac1変態点温度未満
本発明の高強度油井用鋼管用素材に対する焼戻処理は、焼入れ処理(熱間加工後の冷却を含む)で形成された組織における転位密度を減少させ、靭性および耐SSC性を向上させるために行う。本発明では焼戻処理として、625℃以上、Ac1変態点温度未満の範囲の温度(焼戻温度)に加熱し、高強度油井用鋼管を得ることができる。また、この加熱ののち、空冷する処理を行うことが好ましい。
なお、Ac1変態点は、下記式で算出された値を使用するものとする。
Ac1変態点(℃)=751 -26.6C +17.6Si -11.6Mn -169Al -23Cu -23Ni +24.1Cr +22.5Mo +233Nb -39.7V -5.7Ti -895B
(ここで、C、Si、Mn、Al、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、B:各元素の含有量(質量%))
Ac1変態点の計算にあたっては、上記した式に記載された元素を含有しない場合には、当該元素の含有量を零%として算出するものとする。
なお、焼入れ処理、焼戻処理を施したのち、必要に応じて、温間または冷間で、鋼管の形状不良を矯正する矯正処理を施してもよい。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
表1に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法で鋳片とし、鋼管素材とした。ついで、これら鋼管素材を、加熱炉に装入し、表2に示す加熱温度に加熱し保持(保持時間:2h)した。ついで、加熱された鋼管素材に、マンネスマン−プラグ方式の熱間圧延機を用いて造管し、表2に示す管厚の継目無鋼管178.0〜224.5mmφ×肉厚12〜40mm)とした。熱間加工後、表2に示す表面温度で100℃未満の温度まで空冷する冷却を行った。
なお、焼戻処理については、ΔTPが297〜500となるように処理した。ここで、TP=(T+273)×(log t+20)である(T:焼戻し温度(℃)、t:焼戻しの保持時間(hr))。また、ΔYS:2種類の降伏応力の差の絶対値(MPa)、ΔTP:焼戻しパラメータTPの差の絶対値としたとき、焼戻し温度と焼戻しの保持時間から計算される焼戻しパラメータTPに対する降伏応力YSの変化:ΔYS/ΔTPは0.242MPa以下で合格である。
得られた鋼管から、試験片を採取し、硬さ測定、引張試験、硫化物応力腐食割れ試験を実施した。試験方法はつぎの通りとした。
(1)硬さ測定
得られた焼入れままの鋼管の全厚の1/2位置から圧延方向と平行な断面(L断面)の硬さ測定用試験片を採取し、JIS Z 2245に基づいてロックウェル硬さ測定を実施した。
(2)引張試験
得られた焼戻し後の鋼管の全厚の1/2位置を中心に引張方向が圧延方向と垂直な方向となるように、平行部径が6mmφ、平行部長さ35mmの丸棒状引張試験片を採取し、JIS Z2241に基づいて引張試験を実施し、引張特性(降伏応力YS(0.7%耐力)、引張強さTS)を求めた。
(3)硫化物応力腐食割れ試験
得られた焼戻し後の鋼管について、YSが862MPa以上963MPa未満の場合に、1/2t位置を中心に引張方向が圧延方向と垂直な方向となるように、引張試験片(平行部径:6.35mmφ×平行部長さ25.4mm)を採取した。
上記した引張試験片を用い、NACE TM0177 Method Aに規定された試験方法に準拠して、硫化物応力腐食割れ試験を実施した。硫化物応力腐食割れ試験は、上記した引張試験片に対して、分圧5kPaの硫化水素を飽和させ、pHを3.5に調整した5.0質量%食塩水溶液を含む酢酸−酢酸ナトリウム水溶液(液温:24℃)中で実際の降伏応力の90%の応力を負荷した状態で720hを超えて割れが生じない場合を耐SSC性が良好であると判断した。なお、鋼管素材No.21を用いたNo.21-1とNo.21-2については双方で硫化物応力腐食割れ試験を実施した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2017166059
Figure 2017166059
Figure 2017166059
本発明例はいずれも、焼戻しパラメータTPに対する降伏応力YSの変化(ΔYS/ΔTP)0.242MPa以下であり、降伏応力YS:862MPa以上963MPa未満の高強度の鋼管とした場合に、優れた耐SSC性を兼備する。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、少なくとも焼戻しパラメータに対する降伏応力YSの変化が大きいか、耐SSC性が低下している。No.5-1、5-2は発明例の板厚40mmのNo.3-1、3-2と同じ鋼Bであるが、板厚12mm材を水冷したため、焼入れ硬さが本発明の範囲を高く外れ、ΔYS/ΔTPが本発明の範囲外である。一方、No.21-1、21-2は発明例の板厚40mmのNo.7-1、7-2と同じ鋼Cであるが、板厚12mm材の焼入れ処理を空冷としたために冷却速度が十分でなく、焼入れ硬さが本発明の範囲を低く外れ、耐SSC性が低下している。No.12〜19は、化学組成が本発明の範囲をはずれており、耐SSC性が低下している。No.14は焼入れままのロックウェル硬さ(As Q硬さ)が本発明の範囲内であるが、C含有量が本発明の範囲外であり、ΔYS/ΔTPが本発明の範囲外である。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C :0.20〜0.50%、 Si:0.05〜0.40%、
    Mn:0.3〜0.9%、 P :0.015%以下、
    S :0.005%以下、 Al:0.005〜0.10%、
    N :0.001〜0.006%、 Cr:0.1〜0.8%、
    Mo:0.1〜2.0%、 V :0.02〜0.3%、
    Nb:0.001〜0.04%、 B:0.0003〜0.0030%、
    O(酸素):0.0030%以下、
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ロックウェル硬さHRCが(1)式を満たす高強度油井用鋼管用素材。
    15.6×[%C]+29.2≦HRC<60.5×[%C]+31.1 ・・・(1)
    (1)式中、[%C]は、Cの含有量の質量%である。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.003〜0.025%を含有し、N含有量に対するTi含有量の比(Ti/N):2.0〜5.0を満足する請求項1に記載の高強度油井用鋼管用素材。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、W:3.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する請求項1または2に記載の高強度油井用鋼管用素材。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度油井用鋼管用素材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度油井用鋼管用素材を用いた鋼管の製造方法であり、
    焼入れ後の前記素材に焼戻処理を施す工程を含む、降伏応力YSが862MPa以上963MPa未満である高強度油井用鋼管の製造方法。
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