以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.画像形成装置の構成]
図1に左側面図を示すように、画像形成装置1は、カラー用電子写真式プリンタであり、用紙Pに対し所望のカラー画像を印刷するようになっている。この画像形成装置1は、略箱型に形成された筐体2の内部に種々の部品が配置されている。以下では、図1における右端部分を画像形成装置1の正面とし、この正面と対峙して見た場合の上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義した上で説明する。
この画像形成装置1は、筐体2内に設けられた制御部3により全体を統括制御するようになっている。筐体2内の最下部には、紙葉状の媒体である用紙Pを収容する給紙カセット4が設けられている。給紙カセット4は、例えば中空の直方体状に形成されており、上面が開放されている。因みに用紙Pは、例えばA4サイズにカットされた、いわゆるカット紙となっている。
給紙カセット4の前上方には、用紙繰出部5が設けられている。用紙繰出部5は、ピックアップローラ5A、フィードローラ5B及びリタードローラ5Cといった複数のローラや後述する給紙モータ等により構成されている。この用紙繰出部5は、各ローラを適宜回転させることにより、給紙カセット4に収納されている用紙Pのうち最上面の1枚のみを他の用紙Pから分離し、前斜め上方へ繰り出す。
用紙繰出部5の前側ないし上側には、用紙Pを搬送する下搬送部6が設けられている。下搬送部6は、用紙Pを案内する搬送ガイドにより、用紙繰出部5から引き渡される用紙Pを前上方へ進行させ、やがて後方向へ折り返すような搬送路Wを形成している。また下搬送部6には、搬送路Wを挟んで対向する2個の搬送ローラでなる搬送ローラ対7が設けられている。この搬送ローラ対7は、後述する搬送モータから駆動力が供給されることにより各搬送ローラをそれぞれ回転させ、搬送路Wに沿って用紙Pを上方へ搬送することにより、この用紙Pを給紙カセット4の上方に位置する中搬送部13へ引き渡す。また搬送ローラ対7の上流側、すなわち搬送路W上における給紙カセット4に近い側には、用紙Pを検出する用紙センサ8が設けられている。
また筐体2の前側面から前方へ突出した位置には、多目的トレイ11が設けられている。多目的トレイ11は、上下方向に薄い板状に形成されており、その上面に用紙Pが積載される。多目的トレイ11の後端近傍には、多目的用紙繰出部12が設けられている。多目的用紙繰出部12は、用紙繰出部5と同様に構成されており、多目的トレイ11に積載された用紙Pを1枚ずつに分離して繰り出し、後方の中搬送部13へ引き渡すようになっている。この多目的トレイ11は、例えば使用頻度の低い大きさや種類の用紙P、或いは厚さが比較的大きいためにできるだけ屈曲させたくない用紙P等を給紙する場合に利用される。
中搬送部13は、図2に拡大図を示すように、用紙Pを案内する搬送ガイド41により、搬送路Wを前後方向に沿った直線状に形成している。この中搬送部13には、搬送ローラ対7の後上側であり多目的用紙繰出部12の後側となる箇所に搬送ローラ対42が設けられ、該搬送ローラ対42から後方へ所定間隔だけ離れた箇所に搬送ローラ対43が設けられている。
搬送ローラ対42は、搬送路Wの下側に配置された駆動ローラ42Aと、該搬送路Wの上側に配置された従動ローラ42Bとにより構成されている。因みに中搬送部13には、複数の搬送ローラ対42が左右方向に離れた箇所にそれぞれ配置されている。
駆動ローラ42Aは、中心軸を左右方向に沿わせると共に左右方向に比較的短い、扁平な円柱状ないし円筒状に形成されており、その外周部分に摩擦係数が高い材料(例えばゴム等)でなる高摩擦部材が取り付けられている。この駆動ローラ42Aは、搬送モータ44から電磁クラッチ42Cを介して駆動力が供給されると、矢印R2方向へ回転する。
従動ローラ42Bは、駆動ローラ42Aと同様に、中心軸を左右方向に沿わせると共に左右方向に比較的短い、扁平な円柱状ないし円筒状に形成されている。また従動ローラ42Bは、図示しない支持部材により、自在に回転し得ると共に上下方向へ自在に変位し得るようになっており、さらに図示しない付勢部材により下方へ付勢されている。
これにより従動ローラ42Bは、搬送路W上において、その周側面における下端近傍の部分を駆動ローラ42Aの周側面と当接させている。この従動ローラ42Bは、搬送路Wに沿って用紙Pが搬送されてきた場合には、この用紙Pの厚さに応じて上方へ持ち上げられ、この用紙Pを駆動ローラ42Aとの間に挟持した状態となる。搬送ローラ対42は、このような状態で駆動ローラ42Aを回転させることにより、該駆動ローラ42Aから用紙Pに駆動力を伝達し、この用紙Pを前方へ搬送することができる。説明の都合上、以下では駆動ローラ42A及び従動ローラ42Bを挟持体とも呼ぶ。
因みに上述した下搬送部6の搬送ローラ対7は、この搬送ローラ対42と同様、駆動ローラ7A及び従動ローラ7Bにより構成されており、搬送モータ44から電磁クラッチ7Cを介して駆動ローラ7Aに駆動力が供給されることにより各ローラを回転させ、用紙Pを搬送するようになっている。
搬送ローラ対43は、搬送ローラ対42と概ね同様に構成されており、駆動ローラ42A及び従動ローラ42Bとそれぞれ対応する駆動ローラ43A及び従動ローラ43Bにより構成されている。ただし駆動ローラ43Aは、駆動ローラ42Aと一部異なり、電磁クラッチが組み込まれておらず、搬送モータ44からの駆動力が直接伝達される。
また中搬送部13には、搬送ローラ対42及び搬送ローラ対43それぞれのやや上流側、すなわち用紙Pが搬送されてくる前側に、搬送路Wにおける用紙Pの有無を検出する用紙センサ45及び46が設けられている。さらに中搬送部13には、搬送ローラ対42のやや下流側(すなわち後側)に、用紙Pの厚さを検出する紙厚センサ47が設けられている。
かかる構成により中搬送部13は、下搬送部6又は多目的トレイ11(図1)から搬送されてきた用紙Pに対し、搬送ローラ対42及び43により駆動力を順次伝達することにより、この用紙Pを搬送路Wに沿って後方へ進行させることができる。説明の都合上、以下では、中搬送部13により用紙Pを搬送する方向である後方向を搬送方向とも呼ぶ。
中搬送部13の後側には、2次転写部14が設けられている。2次転写部14は、下側の2次転写ローラ14A及び上側の2次転写バックアップローラ14Bにより、搬送ローラ対42及び43と同様に、搬送路Wを上下から挟持するように配置されている。
一方、中搬送部13及び2次転写部14の上方には、ベルト走行部20が設けられている。このベルト走行部20は、テンションローラ21、ドライブローラ22及び2次転写バックアップローラ14Bの周囲を周回するように、幅広の無端ベルトでなる中間転写ベルト23が張架されている。中間転写ベルト23は、その下側部分において、2次転写部14の2次転写ローラ14A及び2次転写バックアップローラ14Bの間に挟持されており、且つ用紙Pの搬送路Wに当接している。ドライブローラ22は、ベルトモータ24から駆動力が供給されることにより回転し、これに伴って中間転写ベルト23を矢印B1方向へ走行させる。
ベルト走行部20の上方には、画像形成部25が設けられている。画像形成部25は、主にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色の画像を形成する4個の画像形成ユニット26(26Y、26M、26C及び26K)を中心に構成されている。各画像形成ユニット26の上側には、像担持体としてのトナーが収納されるトナーカートリッジ27(27Y、27M、27C及び27K)が配置されている。また各画像形成ユニット26内には、LED(Light Emitting Diode)ヘッド28(28Y、28M、28C及び28K)が設けられている。
画像形成ユニット26は、図1の一部を拡大した図3に示すように、その内部にトナー収容部31、供給ローラ32、現像ローラ33、現像ブレード34、感光体ドラム35及び帯電ローラ36及びクリーニングブレード37等が設けられている。また供給ローラ32、現像ローラ33、感光体ドラム35及び帯電ローラ36は、何れもドラムモータ38から駆動力が供給される。
トナー収容部31は、画像形成ユニット26の後上側に位置しており、トナーカートリッジ27から供給されるトナーを収容する。供給ローラ32、現像ローラ33及び帯電ローラ36は、何れも中心軸を左右方向に沿わせた円筒状に形成され、それぞれの中心軸を中心として図の時計回りである矢印R1方向へ回転し、またそれぞれ周側面を帯電させ得るようになっている。供給ローラ32は、その周側面を現像ローラ33と当接させている。
現像ブレード34は、左右方向に長い板状の金属材でなり、弾性変形を利用して長辺を現像ローラ33の周側面に当接させている。感光体ドラム35は、LEDヘッド28の真下に配置されており、供給ローラ32等と同様に中心軸を左右方向に沿わせた円筒状に形成され、この中心軸を中心として回転する。感光体ドラム35の周側面には、感光材料が塗布されている。
感光体ドラム35は、その周側面を現像ローラ33及び帯電ローラ36とそれぞれ当接させている。また感光体ドラム35の下側には、1次転写ローラ29が隣接配置されている。すなわち感光体ドラム35は、1次転写ローラ29との間に中間転写ベルト23を挟持した状態となっている。1次転写ローラ29は、周側面を帯電させ得るようになっており、矢印R1方向へ回転する。
LEDヘッド28は、左右方向に沿って複数のLED素子が整列配置されており、制御部3の制御に基づいた発光パターンで各LED素子を発光させるようになっている。またLEDヘッド28は、各LED素子から照射する光が感光体ドラム35の表面に焦点を合わせるよう、その取付位置が調整されている。
画像形成ユニット26は、トナー画像を形成する場合、まず制御部3(図1)の制御に基づき、ドラムモータ38から供給される駆動力により、感光体ドラム35を矢印R2方向へ回転させると共に、供給ローラ32、現像ローラ33及び帯電ローラ36を矢印R1方向へ回転させる。また中間転写ベルト23は、ベルトモータ24(図1)から供給される駆動力によってドライブローラ22が回転することにより、矢印B1の方向へ走行する。
さらに画像形成ユニット26は、供給ローラ32、現像ローラ33、現像ブレード34及び帯電ローラ36にそれぞれ所定のバイアス電圧を印加することにより、それぞれ帯電させる。供給ローラ32は、この帯電によりトナー収容部31内のトナーを周側面に付着させ、回転によりこのトナーを現像ローラ33の周側面に付着させる。回転する現像ローラ33は、現像ブレード34によって周側面から余分なトナーが除去されることにより、該トナーを所定の層厚でなる均一な薄膜状に付着させた後、この周側面を感光体ドラム35の周側面に当接させる。
一方、帯電ローラ36は、帯電した状態で感光体ドラム35と当接することにより、当該感光体ドラム35の周側面における当接箇所を一様に帯電させる。LEDヘッド28は、制御部3(図1)から供給される画像データに基づいた発光パターンで発光することにより、感光体ドラム35の周側面を露光する。これにより感光体ドラム35は、その周側面における上端近傍に、画像データに基づいた静電潜像が形成される。
続いて感光体ドラム35は、矢印R2方向への回転に伴い、静電潜像が形成された箇所を現像ローラ33に順次当接させる。これにより感光体ドラム35は、現像ローラ33の周側面からトナーが転写され、静電潜像に基づいたトナー画像を周側面に現像していく。さらに感光体ドラム35は、矢印R2方向へ回転することにより、現像されたトナー画像を下端、すなわち中間転写ベルト23を挟んで1次転写ローラ29と当接する箇所まで進行させ、該1次転写ローラ29の帯電により、その周側面からトナー画像を中間転写ベルト23へ転写させる。
このように画像形成ユニット26は、LEDヘッド28による露光パターンに基づいて感光体ドラム35の周側面にトナー画像を形成し、このトナー画像を中間転写ベルト23に転写する。因みにトナー画像は、中間転写ベルト23上における走行方向に沿った長さが、後に用紙Pに転写された状態における搬送方向に沿った長さと同等になっている。
ベルト走行部20(図1)は、中間転写ベルト23を走行させることにより、各画像形成ユニット26によりそれぞれ形成された各色のトナー像を中間転写ベルト23に順次重ねるように転写し、この転写されたトナー像を2次転写部14まで進行させる。2次転写部14は、2次転写ローラ14Aを適宜帯電させた状態で回転させることにより、中間転写ベルト23上の画像データを用紙Pに転写させ、この用紙Pをその後方に位置する定着部15へ進行させる。
定着部15は、中心軸を左右方向に向けると共に発熱するヒータを内蔵したアッパローラ15U及びロワローラ15Lを、搬送路Wの上下に互いに当接するようにそれぞれ配置している。この定着部15は、アッパローラ15Uを矢印R1方向へ回転させると共にロワローラ15Lを矢印R2方向へ回転させながら、搬送されてくる用紙Pに熱及び圧力を加えることにより、トナー像を用紙Pに定着させ、この用紙Pをさらに後方へ進行させる。これにより用紙Pには、画像データに基づいた画像が形成される。
定着部15の後方には、切替器16が配置されており、用紙Pの搬送先を下方の両面印刷ユニット17又は後上方の上搬送部18に切り替えるようになっている。両面印刷ユニット17は、用紙Pの搬送路を形成する複数の搬送ガイド、用紙Pを搬送する搬送ローラ対及び用紙Pの搬送先を切り替える切替器等の組合せにより構成されている。この両面印刷ユニット17は、切替器16から受け取った用紙Pをスイッチバックさせて進行方向を反転させることにより表裏を入れ替えた上で、再び中搬送部13における搬送ローラ対43(図2)の直前において搬送路Wに合流させるようになっている。
上搬送部18は、下搬送部6及び中搬送部13と同様に、用紙Pを案内する搬送ガイド及び複数の搬送ローラ対により構成されている。この上搬送部18は、下端において前側の定着部15から引き渡される用紙Pを上方へ進行させ、やがてその上端近傍で前方向へ送り出すように搬送路Wを形成している。ちなみに上搬送部18における切替器16の後ろ側には、用紙Pの有無を検出する排出センサ18Sが設けられている。
また上搬送部18の上端における前側であって、筐体2の上面には、画像が形成された用紙Pを集積(スタック)するスタッカ部19が設けられている。この上搬送部18は、定着部15から引き渡される用紙Pを搬送路Wに沿って上方へ搬送し、前方へ放出することにより、当該用紙Pをスタッカ部19に集積させる。
このように画像形成装置1は、用紙Pを中搬送部13等により搬送路Wに沿って搬送し、画像形成部25により中間転写ベルト23上に形成したトナー像を、2次転写部14において用紙Pに転写し、さらに定着させることにより、当該用紙Pに画像を形成するようになっている。
次に、画像形成装置1の回路構成について、図4のブロック図を参照しながら説明する。上述したように、画像形成装置1は、制御部3により全体を統括制御するようになっている。この制御部3は、主制御部51を中心に構成されている。主制御部51は、その内部に図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びフラッシュメモリ等を有している。主制御部51のCPUは、ROMやフラッシュメモリから各種プログラムを読み出し、RAMに展開して実行することにより、画像の印刷に関する種々の処理を実行する。また主制御部51は、内部に時間を計測するタイマカウンタ51Tを有している。
主制御部51には、オペレーションパネル61及びインタフェース部62が接続されている。オペレーションパネル61は、例えば情報を表示する液晶パネルとタッチ操作を受け付けるタッチセンサとが一体化されてなるタッチパネルや、物理的なボタン等により構成されており、ユーザに種々の情報を提示すると共に、該ユーザよる各種操作を受け付ける。
インタフェース部62は、例えばIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3u/ab等の規格に準拠した有線LAN(Local Area Network)やIEEE802.11a/b/g/n/ac等の規格に準拠した無線LANによる通信処理を行い、図示しない上位装置から画像データや印刷指示等を受信する。
また制御部3には、搬送モータ制御部52、給紙モータ制御部53、電磁クラッチ制御部54、ベルトモータ制御部55、ドラムモータ制御部56及び定着モータ制御部57が設けられている。搬送モータ制御部52は、搬送モータ44と接続されている。
搬送モータ44は、例えば2相励磁パルスモータでなり、搬送モータ制御部52から複数相の巻線に対し位相をずらして矩形波状の電流がそれぞれ供給されると、この位相をずらす順序に応じて回転方向を切り替え、また矩形波の周期(すなわちクロック周波数)が変化されると、回転速度を変化させる。この搬送モータ44の出力は、図示しないギヤを介して搬送ローラ対43の駆動ローラ43A(図2)に伝達される他、搬送ローラ対42及び7の電磁クラッチ42C及び7Cを介して駆動ローラ42A及び7A(図2)にそれぞれ伝達される。
すなわち搬送モータ制御部52は、搬送モータ44を制御することにより、駆動ローラ43A等の回転速度(以下これを駆動速度とも呼ぶ)を調整すること、すなわち中搬送部13における用紙Pの搬送速度を調整することができる。
給紙モータ制御部53は、給紙モータ5Mを制御する。給紙モータ5Mは、搬送モータ44と同様に構成されており、図示しない電磁クラッチを介して用紙繰出部5(図1)のピックアップローラ5A、フィードローラ5B及びリタードローラ5Cにそれぞれ駆動力を伝達して回転させる。
ベルトモータ制御部55は、ベルト走行部20のベルトモータ24を制御することにより、中間転写ベルト23を走行又は停止させ、またその走行速度を調整する。ドラムモータ制御部56は、ドラムモータ38を制御することにより、画像形成ユニット26の感光体ドラム35等を回転させ、又は停止させる。定着モータ制御部57は、定着部15の定着モータ15Mを制御することにより、アッパローラ15U及びロワローラ15Lをそれぞれ回転させ、又は停止させる。
このように制御部3は、内部に設けられた搬送モータ制御部52によって搬送モータ44を制御することにより、中搬送部13(図2)の搬送ローラ対42及び43並びに下搬送部6の搬送ローラ対7により用紙Pを搬送させ、またその速度を調整し得るようになっている。
[2.中搬送部による用紙の搬送]
次に、用紙Pが比較的厚い場合、例えば厚さが0.2[mm]以上である場合における、中搬送部13による該用紙Pの搬送及び2次転写部14におけるトナー画像の転写について説明する。
[2−1.ショックラインの発生]
まず、制御部3の搬送モータ制御部52(図4)により、搬送モータ44(図2)に対し、一定の速度で回転させるように制御する場合を想定する。この場合、この搬送モータ44から駆動力が伝達される搬送ローラ対43の駆動ローラ43Aが一定の回転速度で回転し、用紙Pが一定の搬送速度で搬送されることが期待される。
上述したように、中搬送部13の搬送ローラ対43(図2)は、下側の駆動ローラ43A及び上側の従動ローラ43Bの間に用紙Pを挟持した状態で、搬送モータ44からの駆動力を駆動ローラ43Aに伝達して回転させることにより、この用紙Pを搬送路Wに沿って後方の2次転写部14へ搬送する。
ところで画像形成装置1では、仮に中間転写ベルト23の走行速度と用紙Pの搬送速度とが相違した場合、2次転写部14において用紙Pに転写される画像が前後方向に伸縮してしまい、画質を劣化させる恐れがある。このため画像形成装置1では、中間転写ベルト23の走行速度及び用紙Pの搬送速度を、何れも高精度に制御する必要がある。
そこで中搬送部13では、搬送ローラ対43における駆動ローラ43Aを所望の回転速度で回転させると共に、該駆動ローラ43Aの駆動力を用紙Pに対し滑ること無く確実に伝達することが望まれる。このため搬送ローラ対43では、該駆動ローラ43Aに対し従動ローラ43Bが比較的強い力で付勢されている。
これに伴い搬送ローラ対43は、図2の一部を拡大した図5(A)に示すように、用紙Pが比較的厚い場合、この用紙Pのうち駆動ローラ43A及び上側の従動ローラ43Bにより挟持された部分を、僅かに押し潰すように変形させる。
これは、用紙Pが繊維状部材の集合体であり繊維同士の間に隙間を設けた状態で1枚の紙として形成されており、外力が加えられると各繊維がこの隙間を狭めるように変形すること等が原因であると推測される。因みにこの変形は弾性変形であり、またその変形量は極めて微小なものとなる。このため駆動ローラ43A及び上側の従動ローラ43Bの間隔は、圧力が加えられていない状態における用紙Pの厚さ、すなわち該用紙Pの本来の厚さよりも僅かに狭くなっている。
説明の都合上、以下では、駆動ローラ43A及び上側の従動ローラ43Bそれぞれの回転中心点同士を結ぶ、上下方向に沿った仮想的な線を挟持線43Lと呼び、また従動ローラ43Bにおける最も下側、すなわち挟持線43Lと交差する部分を挟持箇所43BHと呼ぶ。
用紙Pは、後方への搬送に伴って搬送ローラ対43により挟持される箇所が末端側へ移っていくと、新たに挟持された箇所が押し潰されるように変形されると共に、挟持されなくなった箇所が弾性作用等によって元の形状に戻っていく。これを換言すれば、用紙Pは、搬送ローラ対43により挟持されている箇所において、あたかも本来の厚さよりも僅かに薄くなっていると見なすことができる。
ここで用紙Pは、上述したようにカット紙であるために、その製造時に各端辺が裁断されている。用紙Pは、この裁断がなされたときに、端辺の周囲に対し圧力が加えられている。これにより用紙Pは、端辺の近傍において繊維の隙間がやや詰まった状態に変化し、他の部分と比較して硬度が高められ、「堅く」なっている。
このため搬送ローラ対43は、図5(B)に示すように、用紙Pにおける末端の近傍、すなわち末端から約5〜10[mm]の範囲(以下これを末端範囲EAと呼ぶ)を挟持しようとしたときに、その直前までのように用紙を弾性変形させることができず、駆動ローラ43A及び上側の従動ローラ43Bの間隔を用紙Pの本来の厚さに広げる必要が生じる。これを換言すれば、従動ローラ43Bは、用紙Pにおける厚さが他の部分よりも僅かに大きい末端範囲EAに乗り上げる必要が生じる。
ここで中搬送部13では、図6(A)に模式的な波形図を示すように、搬送モータ制御部52から搬送モータ44に指示する速度(以下これを搬送制御速度と呼ぶ)を一定の速度V1としている。これにも拘わらず中搬送部13では、用紙Pの末端範囲EAが従動ローラ43Bの挟持箇所43BH、すなわち挟持線43Lに差し掛かる時点T1以降、従動ローラ43Bの「乗り上げ」に伴い、該従動ローラ43B及び駆動ローラ43Aの回転速度が低下してしまう。この結果、該用紙Pの搬送速度は、図6(A)と対応する図6(B)に示すように、速度V1よりも低い速度V2に低下してしまう。
このとき2次転写部14(図2)では、トナー画像が転写されている中間転写ベルト23が本来の走行速度である速度V1で走行する一方、用紙Pの搬送速度が一時的に速度V2に低下してしまう。これにより2次転写部14は、図7に模式的に示すように、用紙Pに対しトナー画像を搬送方向(すなわち前後方向)に圧縮させたように転写することになり、その濃度を本来よりも高めた高濃度領域AHを形成してしまう。
また搬送ローラ対43では、従動ローラ43Bの挟持箇所43BH、すなわち挟持線43Lが用紙Pの末端PEを通過する時点T2において、該従動ローラ43Bに作用する付勢力の作用により、該用紙Pが搬送方向である後方へ弾き出される。ここで用紙Pは、比較的厚いため、剛体と同様に作用し、撓みを生じること無く、2次転写部14により挟持されている箇所も含めて一体として後方へ弾き出される。これと同時に2次転写部14では、2次転写ローラ14Aから用紙Pに対し、低下した搬送速度を本来の速度V1に戻そうとする力が作用する。
このため中搬送部13では、図6(B)に示したように、この時点T2から僅かな時間が経過した時点T3にかかる短い期間に、用紙Pの搬送速度を、本来の速度V1よりも高い、すなわち中間転写ベルト23の走行速度よりも高い速度V3にまで高めてしまう。これにより2次転写部14は、図7に示したように、用紙Pに対しトナー画像を搬送方向(すなわち前後方向)に引き延ばしたように転写してしまい、その濃度を本来よりも低下させた低濃度領域ALを形成してしまう。
その後、2次転写部14は、2次転写ローラ14A等により用紙Pを本来の搬送速度である速度V1で搬送させながら、中間転写ベルト23から用紙Pに対し、トナー画像を前後方向に伸縮させること無く、正しい比率で転写することができる。
このように中搬送部13及び2次転写部14では、比較的厚い用紙Pの末端範囲EAを搬送ローラ対43により挟持するときに、搬送モータ44を一定の速度V1に応じた一定の回転速度で回転するよう制御しているにも拘わらず、用紙Pの搬送速度を一時的に変動させる恐れがあった。このような用紙Pの速度変化は、あたかも搬送ローラ対43及び該用紙Pの間に「粘り」のような力が発生しているように見なすこともできる。このとき用紙Pでは、転写されたトナー画像中に高濃度領域AH及び低濃度領域ALが形成される可能性があった。説明の都合上、以下では、高濃度領域AH及び低濃度領域ALをまとめてショックラインSLと呼ぶ。
因みに用紙Pの厚さが比較的薄い場合、中搬送部13では、搬送ローラ対43(図5(A))による挟持線43Lにおいて、用紙Pの変形度合が相対的に小さくなる。これにより中搬送部13では、末端範囲EAにおいて従動ローラ43Bが乗り上げる必要が無く、転写された画像にショックラインSLも殆ど発生しない。
[2−2.ショックラインの解消]
そこで画像形成装置1では、比較的厚い用紙Pに画像を印刷する場合に、中搬送部13における該用紙Pの搬送速度を適切に制御することにより、ショックラインSL(図7)の解消を図るものとした。
すなわち画像形成装置1の制御部3は、図6(A)と対応する図8(A)に示すように、搬送モータ制御部52から搬送モータ44を制御することにより、搬送ローラ対43の挟持線43Lが用紙Pの末端範囲EAに差し掛かる時点T1に、搬送制御速度を速度V1から、より高い速度V5に変動させるようにした。
因みに制御部3は、用紙センサ46における用紙Pの検出箇所から、搬送ローラ対43における挟持線43Lまでの距離LS(図5(A))を、予め記憶している。このため制御部3は、用紙Pの速度V1と、該用紙Pの先端PSが用紙センサ46により検出された時点からの経過時間と、距離LSとを用いた演算により、該用紙Pのうち挟持線43Lを通過している部分における先端PSからの距離を、精度良く把握することができる。
ここで、適切な速度V5の値を探るべく、厚さが0.2[mm]から0.65[mm]まで0.05[mm]刻みで異なる用紙Pをそれぞれ用い、搬送制御速度を速度V1に対し1[%]から5[%]まで1[%]刻みで増加させたそれぞれの場合について、ショックラインSL(図7)の出現状態を評価する評価試験を行った。
この評価試験では、ショックラインSLの出現状態を目視により評価した。またショックラインSLに対する評価としては、ショックラインSLを良好に抑制できたか、若しくは該ショックラインSLをある程度抑制できたか、又はショックラインSLが出現したか、の3段階とした。ここで、用紙PにおけるショックラインSLを良好に抑制できた場合、このことは該用紙Pの搬送速度を図8(B)のように一定の速度V1にほぼ維持できたことを意味する。
この評価試験を行った結果、図9に表形式でまとめたような評価結果が得られた。この図9から、搬送制御速度を1〜3[%]の範囲で速度V1よりも増加させた場合に、少なくともショックラインSLをある程度は抑制できることがわかる。またこの図9から、特に厚さが0.35[mm]〜0.65[mm]の用紙Pに対し、搬送制御速度を2〜3[%]の範囲で速度V1よりも増加させた場合に、ショックラインSLを良好に抑制できることが分かる。
因みに画像形成装置1では、次の用紙Pを正常に印刷するために、図8(A)に示したように、時点T4において、搬送制御速度を減少させて元の速度V1に戻す必要がある。この時点T4は、時点T1以降に搬送ローラ対43の挟持線43Lを用紙Pの末端PEが通過するのに十分な時間が経過した時点であり、且つ次の用紙Pが搬送されてくるよりも前となるように設定されている。
また画像形成装置1では、中搬送部13に設けた紙厚センサ47(図2)により、用紙Pの厚さを検知できる。このため制御部3は、該紙厚センサ47から検知結果を取得することにより、中搬送部13により搬送されている用紙Pの厚さを認識し、この厚さに応じた処理を実行することができる。
そこで画像形成装置1の制御部3では、厚さが0.2[mm]以上の用紙Pに印刷を行う場合、搬送モータ44を制御することにより、搬送ローラ対43の挟持線43Lが用紙Pの末端範囲EAに差し掛かる時点T1(図8(A))に、搬送制御速度を速度V1から2[%]だけ増加させるようにした。また制御部3は、時点T1から所定の時間が経過した時点T4に、搬送制御速度を減少させて元の速度V1に戻すようにした。これにより画像形成装置1は、用紙Pの搬送速度を図8(B)のように一定の速度V1に維持でき、ショックラインSL(図7)の抑制を図ることができる。
[2−3.搬送処理手順]
次に、画像形成装置1において用紙Pに画像を印刷する場合における、具体的な用紙搬送処理手順について、図10のフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、予めユーザにより給紙カセット4や多目的トレイ11にセットされた用紙Pのサイズや種類等、用紙Pに関する設定(以下これを用紙設定と呼ぶ)が登録され、制御部3における主制御部51内のフラッシュメモリに記憶されているものとする。
画像形成装置1の制御部3(図4)は、パーソナルコンピュータ等の上位装置(図示せず)からインタフェース部62を介して画像データ及びその印刷指示を取得すると、主制御部51においてフラッシュメモリ等から用紙搬送プログラムを読み出して実行することにより、用紙搬送処理手順RT1(図10)を開始し、ステップSP1へ移る。
因みに制御部3は、この用紙搬送処理手順RT1と並行して所定の画像形成プログラムを実行し、画像形成部25及びベルト走行部20(図1)等を適宜制御することにより、中間転写ベルト23上に画像データに基づいたトナー画像を形成し、これを2次転写部14に到達させるようになっている。
ステップSP1において制御部3は、主制御部51内のフラッシュメモリから用紙設定を読み込み、次のステップSP2へ移る。ステップSP2において制御部3は、搬送モータ制御部52等により搬送モータ44等の各モータの駆動を開始させ、次のステップSP3へ移る。
ステップSP3において制御部3は、印刷指示により上位装置から指定された給紙方法で用紙Pを給紙すると共に搬送し、その先端を搬送ローラ対42(図2)に、すなわち用紙センサ45により検知する箇所に到達させて、次のステップSP4へ移る。このとき制御部3は、用紙Pの給紙元として給紙カセット4が指定されていた場合には、用紙繰出部5により給紙カセット4から最上面の1枚の用紙Pを繰り出し、下搬送部6により搬送路Wに沿って搬送し、その先端を搬送ローラ対42に到達させる。また制御部3は、用紙Pの給紙元として多目的トレイ11が指定されていた場合には、多目的用紙繰出部12により該多目的トレイ11から最上面の1枚の用紙Pを繰り出して後方へ送り出し、その先端を搬送ローラ対42に到達させる。
ステップSP4において制御部3は、搬送ローラ対42により引き続き搬送路Wに沿って用紙Pを搬送させながら、紙厚センサ47(図2)により該用紙Pの厚さを検知し、次のステップSP5へ移る。ステップSP5において制御部3は、検知した用紙Pが厚紙であるか否か、具体的には厚さが0.2[mm]以上であるか否かを判定する。ここで肯定結果がえらえると、このことは用紙Pの印刷時にショックラインSL(図7)が発生する恐れがあり、これを抑制する必要があることを表している。このとき制御部3は、次のステップSP6へ移る。
ステップSP6において制御部3は、搬送モータ44を継続して一定の速度で回転させることにより、搬送ローラ対42の各ローラを回転させて用紙Pを速度V1(図8)で搬送させ、次のステップSP7へ移る。ステップSP7において制御部3は、用紙センサ46(図2)により用紙Pの先端PSを検出したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、制御部3は再びステップSP6へ戻ることにより、用紙Pの先端PSが用紙センサ46の位置、すなわち搬送ローラ対43の直前に到達するのを待ち受ける。
一方、ステップSP7において肯定結果が得られると、このことは用紙Pの先端PSが用紙センサ46の検出箇所、すなわち搬送ローラ対43の直前に到達したために、この時点を基準として搬送ローラ対43による用紙Pの搬送量(すなわち搬送した長さ)を把握し得ることを表している。このとき制御部3は、次のステップSP8へ移る。
ステップSP8において制御部3は、所定の搬送時間TC1に渡り搬送ローラ対43の各ローラを回転させて用紙Pを速度V1(図8)で搬送させることにより、該用紙Pの末端範囲EA、すなわち末端PEの直前部分を該搬送ローラ対43の挟持線43L(図5)に到達させ、次のステップSP9へ移る。
このように用紙Pの先端PSが用紙センサ46により検知されてから搬送時間TC1が経過してステップSP9に移る時点は、図8(A)における時点T1に相当する。因みに制御部3は、ユーザに設定された用紙Pの大きさを基に搬送方向に沿った長さを取得し、先端PSから末端範囲EAまでの距離を算出した上で、予め記憶している距離LS(図5(A))及び速度V1を基に、適切な搬送時間TC1を算出している。
ステップSP9において制御部3は、搬送モータ制御部52によって搬送モータ44を制御することにより、搬送制御速度を速度V1から2[%]増加させて速度V5とし(図8(A))、次のステップSP10へ移る。これにより制御部3は、用紙Pの末端範囲EAが搬送ローラ対43により挟持された場合に(図5(B))、該用紙Pの用紙速度を速度V1に維持することができる(図8(B))。
ステップSP10において制御部3は、搬送制御速度を速度V5としたまま、搬送ローラ対43を時点T4(図8(A))になるまで所定時間に渡ってそのまま回転させることにより、用紙Pの末端PEを搬送ローラ対43の挟持線43Lよりも前方まで進行させた後、次のステップSP11へ移る。このことは、用紙Pを搬送ローラ対43から後方へ送り出したことを表している。
ステップSP11において制御部3は、搬送モータ制御部52によって搬送モータ44を制御することにより、搬送制御速度を速度V5から減少させて元の速度V1に戻し(図8(A))、次のステップSP12へ移る。これにより搬送ローラ対43は、次の用紙Pが搬送されてきたときに、この用紙Pを適切な速度V1で搬送することができる。
ステップSP12において制御部3は、引き続き搬送モータ44等の各モータを所定時間に渡って回転させることにより、2次転写ローラ14Aや各部の搬送ローラ対を適宜回転させて用紙Pを搬送路Wに沿って搬送し、次のステップSP16へ移る。因みに制御部3は、定着部15により用紙Pにトナー画像を定着させた後、上搬送部18(図1)により該用紙Pを搬送路Wに沿って搬送させ、さらにスタッカ部19(図1)に排出させる。
一方、ステップSP5において否定結果が得られた場合、このことは用紙Pが比較的薄く、ショックラインSLが発生するおそれが無いことを表している。このとき制御部3は、次のステップSP13及びその次のステップSP14において、上述したステップSP6及びSP7と同様の処理をそれぞれ行うことにより、用紙Pの先端を用紙センサ46の位置、すなわち搬送ローラ対43の直前に到達させた後、ステップSP15へ移る。
ステップSP15において制御部3は、所定の搬送時間TC2に渡り搬送ローラ対43の各ローラを回転させて用紙Pを速度V1で搬送させることにより、該用紙Pを搬送ローラ対43から後方に送り出させた後、次のステップSP16へ移る。因みに制御部3は、ユーザに予め設定された用紙Pの大きさを基に得られる、該用紙Pの搬送方向に沿った長さと、予め記憶している距離LSと、速度V1とを基に、適切な搬送時間TC2を算出している。
ステップSP16において制御部3は、上位装置から取得した印刷指示を参照することにより、次の用紙Pにも印刷を行うか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、制御部3は次のステップSP17へ移り、ステップSP3と同様、印刷指示により上位装置から指定された給紙方法で次の用紙Pを給紙すると共に搬送し、その先端を搬送ローラ対42(図2)に到達させて、再度ステップSP4へ戻り、一連の処理を繰り返す。
一方、ステップSP16において否定結果が得られると、制御部3は、ステップSP18へ移り、搬送モータ制御部52等により搬送モータ44等の各モータを制御して停止させ、これにより各搬送ローラ対を停止させた後、その次のステップSP19へ移って用紙搬送処理手順RT1を終了する。
[3.効果等]
以上の構成において、画像形成装置1の制御部3は、用紙Pが厚紙である場合、搬送モータ制御部52(図4)から搬送モータ44を制御することにより、搬送ローラ対43(図5)により該用紙Pの末端範囲EA、すなわち末端PEの直前部分を挟持する時点T1(図8)に、搬送制御速度を2[%]だけ増加させるようにした(図8(A))。
このため画像形成装置1は、搬送制御速度を一定の速度V1に維持した場合に生じ得る、用紙Pの末端範囲EAが搬送ローラ対43の挟持線43Lを通過する際の一時的な速度低下(図6(B))を適切に打ち消し、ほぼ一定の速度V1で搬送できる(図8(B))。これにより画像形成装置1は、用紙Pの速度が一時的に変化してしまうことにより発生する恐れがあったショックラインSL(図7)の発生を良好に抑制し、若しくは解消することができる。
特に画像形成装置1は、用紙Pの厚さ及び搬送制御速度の増加幅を様々に相違させた場合のショックラインSLの発生状況をそれぞれ評価した上で(図9)、用紙Pが0.2[mm]以上である場合に、搬送制御速度の増加幅を2[%]とするようにした。これにより画像形成装置1は、用紙Pの厚さが0.2〜0.3[mm]であればショックラインSLをある程度抑制でき、さらに用紙Pの厚さが0.35〜0.6[mm]であればショックラインSLを良好に抑制することができる。
また画像形成装置1は、紙厚センサ47による用紙Pの厚さを検知し、この厚さが0.2[mm]以上であった場合、すなわち用紙Pが厚紙であった場合には、搬送制御速度を一時的に増加させる一方、該用紙Pの厚さが0.2[mm]未満であった場合、すなわち薄紙であった場合には、搬送制御速度を一定のままとするようにした(図10)。これにより画像形成装置1は、本来的にショックラインSLが発生しない薄紙の場合にまで搬送制御速度を変化させることによる画質の低下を適切に回避できる。
ところで画像形成装置1では、用紙センサ46から搬送ローラ対43の挟持線43Lまでの距離LS(図5)が比較的短くなっている。また用紙Pにおいては、本来的に、末端範囲EAの前後方向に沿った長さが5〜10[mm]のように極めて短い。このため画像形成装置1では、用紙センサ46により用紙Pの末端PEを検出する時点と、末端範囲EAが挟持線43Lに到達する時点との時間差が極めて短くなっている。すなわち制御部3は、仮に用紙センサ46により用紙Pの末端PEを検出した時点を基準とした場合、該末端範囲EAが挟持線43Lに到達する時点の算出処理が間に合わない可能性や、既に末端範囲EAが挟持線43Lに到達している可能性もある。
そこで画像形成装置1は、用紙センサ46により用紙Pの末端PEを検出した時点では無く、該用紙Pの先端PSを検出した時点を基準として、末端範囲EAが搬送ローラ対43の挟持線43Lに到達する時点T1を算出し、これに合わせて搬送制御速度を変化させるようにした(図10、ステップSP8)。これにより画像形成装置1は、末端範囲EAが実際に挟持線43Lに到達するよりも十分に早い時点で、該末端範囲EAが該挟持線43Lに到達する時点T1を精度良く算出できるため、遅れを生じること無く、適切なタイミングで搬送制御速度を増加させることができる。
以上の構成によれば、画像形成装置1の制御部3は、用紙Pが厚紙である場合、搬送ローラ対43(図5)により該用紙Pの末端範囲EAを挟持する時点T1(図8)に、搬送制御速度を2[%]だけ増加させるようにした(図8(A))。これにより画像形成装置1は、用紙Pの末端範囲EAが搬送ローラ対43の挟持線43Lを通過する際の一時的な速度低下(図6(B))を適切に打ち消し、ほぼ一定の速度V1で搬送することができる(図8(B))。この結果、画像形成装置1は、ショックラインSL(図7)の発生を良好に抑制し、若しくは解消することができる。
[4.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、用紙Pが厚紙である場合に、時点T1(図8(A))における搬送制御速度の増加割合を2[%]とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば3[%]等、他の値としても良い。要は、図9のようにショックラインSLを良好に抑制し得る範囲の値であれば良い。
また上述した実施の形態においては、紙厚センサ47において用紙Pが厚紙であるか薄紙であるかを判断する閾値を0.2[mm]とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば1.5[mm]や2.5[mm]等、他の値としても良い。要は、搬送制御速度を一定のままとした場合にショックラインSLが出現する下限値を閾値とすれば良い。さらには、例えば紙厚に応じて適切な搬送制御速度の増加割合が相違する場合に、複数の閾値を設定して紙厚を複数段階に区分し、区分された紙厚ごとに搬送制御速度の増加割合を変化させても良い。或いは、例えば比較的薄い用紙Pに対し搬送制御速度を増加させても画質の低下が認められない場合に、紙厚センサ47を省略し、用紙Pの厚さに拘わらず、時点T1に搬送制御速度を増加させるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、用紙Pの末端範囲EAを末端PEから5〜10[mm]の範囲とし(図5(B))、この末端範囲EAが搬送ローラ対43の挟持線43Lを通過するときを時点T1(図8)として搬送制御速度を増加させる場合について述べた(図8)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば駆動ローラ43Aにおいて最も前側(すなわち上流側)に位置する前側端部43AFを通り上下方向に沿った仮想的な前端線43LF(図5(B))を想定した場合に、この前側端部43AFよりも後側に用紙Pの末端PEが到達したときを、時点T1としても良い。この場合、少なくとも前端線43LFから挟持線43Lまでの範囲を用紙Pの末端PEが通過する間は、搬送制御速度を増加させておけば良い。
さらに上述した実施の形態においては、時点T1から所定の時間が経過した時点T4に、搬送制御速度を減少させて元の速度V1に戻す場合について述べた(図8(A))。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば用紙Pの末端PEが搬送ローラ対43の挟持線43Lを通過するときに、元の速度V1に戻すようにしても良い。これにより、上流側の下搬送部6等において搬送精度の問題等により次の用紙Pが搬送されてくるまでの間隔が比較的短くなった場合であっても、次の用紙Pを本来の速度V1で搬送することができる。要は、搬送ローラ対43の挟持線43Lを用紙Pの末端PEが通過した後であって、且つ次の用紙Pが到達する前に、元の速度V1に戻すことができれば良い。
或いは、例えば図11に示す搬送ローラ対143のように、駆動ローラ143Aの外周部分に設けられた高摩擦部材143ARが比較的柔らかく、従動ローラ43Bに付勢された用紙Pと当接する箇所を潰すように変形させても良い。この場合、高摩擦部材のうち変形して用紙Pと当接する部分のうち最も上流側(すなわち前側)の箇所143ARFを該用紙Pの末端PEが通過したときを時点T1とすれば良く、また少なくとも末端PEが高摩擦部材と当接している間は搬送制御速度を増加させるようにすれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、回転する駆動ローラ43A及び従動ローラ43Bにより用紙Pを挟持して搬送する場合について述べた(図5(A))。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図12に示す中搬送部213のように、回転するローラ243と搬送ベルト部250のベルト251とにより用紙Pを挟持して搬送しても良い。この場合、例えば搬送ベルト部250においてローラ243と対向する箇所にローラ253を配置することにより、用紙Pに対し十分な力を加えて挟持するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、搬送モータ44(図2)を2相励磁パルスモータとする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばDC(Direct Current)モータとしても良い。このDCモータは、電極に印加する電圧を変化させることにより回転速度を調整でき、また各電極に印加する電圧の極性(すなわち正又は負)を入れ替えることにより回転方向を切り替えることができる。要は、供給する電気信号の電圧や極性、或いは周期や位相等の特性を適宜変化させることにより、回転速度や回転方向を調整し得るモータであれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、いわゆるプリンタとして構成された画像形成装置1に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばファクシミリ装置や複写機、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等、電子写真方式により媒体としての用紙にトナー画像を転写して定着させることにより印刷する種々の電子機器に適用しても良い。
さらに本発明は、上述した実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した実施の形態においては、搬送部としての中搬送部13と、速度制御部としての搬送モータ制御部52と、検知部としての用紙センサ46と、画像形成部としての画像形成部25と、転写部としての2次転写部14とによって画像形成装置としての画像形成装置1を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる搬送部と、速度制御部と、検知部と、画像形成部と、転写部とによって画像形成装置を構成しても良い。