画像形成装置とは例えば、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機などである。また、記録媒体は、例えば、紙、糸、繊維、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、フィルムコートなどである。画像形成とは、文字や図形、パターンなどの画像を記録媒体に付与することや、単に液滴を記録媒体に着弾させることである。また、液滴とは、インク、記録液、定着処理液、液体、DNA試料、レジスト、パターン材料など画像形成を行うことができる全ての素材をいう。以下では、記録媒体を「用紙」とし、液滴を「インク」として説明する。また、本実施形態の画像形成装置の構成は、特に、インクジェット記録装置の場合に効果を発揮するものであり、以下では、画像形成装置をインクジェット記録装置であるとして説明する。
[実施形態1]
まず、実施形態1の画像形成装置の機能構成例について説明する。図1に、本実施形態1の画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す。図1に示すように、画像形成装置10は、制御部11、主記憶部12、補助記憶部13、外部記憶装置I/F部14、ネットワークインターフェース部16、操作部17、表示部18、エンジン部19を含む。
制御部11は、各装置の制御やデータの演算、加工を行うCPUである。また、制御部11は、主記憶部12に記憶されたプログラムを実行する演算装置であり、入力装置や記憶装置からデータを受け取り、演算、加工した上で、出力装置や記憶装置に出力する。
主記憶部12は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などであり、制御部11が実行する基本ソフトウェアであるOSやアプリケーションソフトウェアなどのプログラムや画像データを記憶又は一時保存する記憶装置である。
補助記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)などであり、アプリケーションソフトウェアなどに関連するデータを記憶する記憶装置である。
外部記憶装置I/F部14は、USB(Universal Serial Bus)などのデータ伝送路を介して接続された記憶媒体15(例えば、フラッシュメモリ、SDカードなど)と画像形成装置10とのインタフェースである。
また、記憶媒体15に、所定のプログラムを格納し、この記憶媒体15に格納されたプログラムは外部記憶装置I/F部14を介して画像形成装置10にインストールされ、インストールされた所定のプログラムは画像形成装置10により実行可能となる。
ネットワークインターフェース部16は、有線及び/又は無線回線などのデータ伝送路により構築されたLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などのネットワークを介して接続された通信機能を有する周辺機器と画像形成装置10とのインタフェースである。
操作部17や表示部18は、キースイッチ(ハードキー)とタッチパネル機能(GUIのソフトウェアキーを含む:Graphical User Interface)を備えたLCD(Liquid Crystal Display)とから構成される。操作部17や表示部18は、画像形成装置10が有する機能を利用する際のUI(User Interface)として機能する表示及び/又は入力装置である。
エンジン部19は、インクを吐出する後述する画像形成手段(例えば、記録ヘッドやプロッタなど)などを駆動するものである。
図2に、本実施形態1の画像形成装置10の要部の機能構成例を示す。また、画像形成装置10は、用紙を搬送するための搬送ベルト15を有する。搬送ベルト15は無端形状であり、広幅形状を有する。搬送ベルト15は、駆動ローラ11と2本の従動ローラ12、13とテンションローラ14に巻きつけられて所定の張力を与えられる。搬送ベルト15は、エンジン部19(図1参照)によって図の矢印a方向に回転駆動される。
画像形成手段60は、図2の例では4色(YMCK)のライン型インクジェットヘッド(以下、「記録ヘッド61〜64」という。)を有する画像形成ヘッドユニットである。以下では、Y(イエロー)の記録ヘッドを記録ヘッド61とし、M(マゼンダ)の記録ヘッドを記録ヘッド62とし、C(シアン)の記録ヘッドを記録ヘッド63とし、K(ブラック)の記録ヘッドを記録ヘッド64とする。
画像形成手段60は、検出手段(図示せず)によって検出された用紙先端タイミングに合わせて駆動される。4色各ヘッド先端のノズルからインクが順次吐出されることによってフルカラーの画像が形成される。インク吐出の間、搬送ベルト15は速度変動がないように駆動されることで用紙を安定して搬送する。また、搬送ベルト15の両面のうち、用紙pが配置される面を配置面といい、配置面と反対側の面を反配置面という。
また、給紙手段100から給紙された用紙pは、一対のレジストローラ2、3でと搬送される。レジストローラ対2、3と搬送ベルト15の線速差は例えば、「1.05〜1.1」:「1」とする。図2に示すように、レジストローラ対2、3の線速を若干速くし、レジストローラ対2、3と搬送ベルト15との間で撓みを形成している。この撓みにより、レジストローラ対2、3の上流に位置する給紙手段100の負荷変動による速度ムラをベルト搬送に影響を与えないように出来る。また、各記録ヘッド61〜64に対向する位置における搬送ベルト15の裏面には、搬送ベルト15を平面に保つためのプラテン16が設けられている。 プラテン16によって画像形成手段60と用紙pとの間隙を精度良く維持することができ、画質が向上する。また、用紙pのうち、画像が形成される面を画像形成面paという。用紙pは、画像形成面paが、画像形成手段60に対向した状態で、搬送ベルト15により搬送される。また、画像形成手段60は、安定して画像形成するために接地されている。また、この例では、各記録ヘッド61〜64のインクの吐出面と、画像形成面paとの距離は、約1mmである。
次に画像形成手段60により画像形成された用紙の搬送について説明する。画像面paを上にして排出する場合は、搬送ベルト15で排紙手段120に搬送する。一方、画像面paを下に向けて排出する場合は、切り替え爪30で搬送方向を上に切り替え、各搬送ローラ31〜38にて排紙手段130へ排出する。
両面印刷の場合は、各搬送ローラ31〜38にて搬送後、切り替え爪41にて反転ローラ対50、51に搬送する。そして、反転ローラ対50、51により用紙pが反転されて、用紙後端を搬送ローラ対39、40に送る。そして、搬送ローラ対39、40により、画像形成されていない面が画像形成手段60と対向するようになり再度レジストローラ対2、3へ送り、両面に画像形成を行なう。両面に画像形成された用紙は、任意の排紙手段120または130などに排出される。
次に、搬送ベルト15の詳細な構成例について説明する。搬送ベルト15は、用紙pを静電力にて吸着させ搬送している。搬送ベルト15は、2層構成されており、表面(第1層)が例えば体積抵抗1014Ω・cm以上の絶縁層であり、厚みが50μmである。また、裏面(第2層)が例えば体積抵抗105Ω・cm〜107Ω・cmの導電層であり、厚みが50μmである。
また、従動ローラ12は接地(アース)されている。また、従動ローラ12と、搬送ベルト15の反配置面(用紙pが配置されている面と反体側の面)とは、接触している。従って、搬送ベルト15の反配置面すべてが接地状態となる。また、第1印加手段4は、例えば、ローラ形状のものであり、付勢手段4aの付勢力により、搬送ベルト15に圧接する。第1印加手段4は、搬送ベルト15に対して、第1電圧を印加するものであり、導電性のゴム材料からなっている。また、第1直流電源8により、第1印加手段4に電圧が印加されることで、第1印加手段4は、搬送ベルト15の配置面に第1電圧を印加する。換言すれば、第1印加手段4は、搬送ベルト15に対して電荷(以下、「第1電荷」という。)を帯電させている。この例では、第1印加手段4は正極(+極)の電圧を印加する(正極(+極)の「第1電荷」を帯電させる)。
また、第2印加手段5は、第1印加手段4と逆極性の電圧(以下、「第2電圧」という。)を搬送ベルト15に対して印加する。第2印加手段5は、図2の例では、ローラ形状である。また、第2印加手段5は、付勢手段5aの付勢力によって、搬送ベルト15に対して圧接される。第2印加手段5は、第2印加手段4を通過後の搬送ベルト15の表面に摺接するように設けられる。第2印加手段4は、従動ローラ12の上に配置される。第2印加手段4および従動ローラ12により、レジストローラ2、3より送られた用紙をニップ(圧接)する。
また第2印加手段5は、正極が接地された第2直流電源9の負極(−)に接続されている。この例では、第2印加手段5は、搬送ベルト15に配置されている用紙pに対して、負極(−極)の第2電圧を印加する。つまり、図6に示すように、第1印加手段4により搬送ベルト15には、正極の電荷600が帯電され、第2印加手段5により用紙pには、負極の電荷500が帯電される。そして、正極の電荷600と負極の電荷500が互いに引き寄せられることから用紙pは、搬送ベルト15に対して吸着される。
また、第1印加手段4により、搬送ベルト15には、正極の電荷600が帯電されている。この帯電により、用紙p内で誘電分極が生じ、用紙pの表面上には、表面電圧が生じる。この表面電圧により、画像形成手段60と用紙pとの間に電界が生じる。この電界が、画像形成手段60から吐出されるインクに影響を及ぼす。当該影響が及ぼされることにより、例えば、インクが分裂してサテライト(従液)がUターンして記録ヘッド61〜64の吐出面に付着したり、インク用紙pの所望の位置に着弾されなかったりする。そこで、第2印加手段5により印加される第2電圧(帯電された第2電荷500)により、生じた表面電圧を抑圧することが出来る(生じた電界を抑圧することが出来る)。
このように、第1電圧と第2電圧とは互いに逆極性である。また、第1電圧を負極とし、第2電圧を正極としてもよい。
[主な処理の流れ]
次に、本実施形態の画像形成装置10の主な処理の流れについて説明する。この処理により、記録ヘッド61〜64から吐出されたインクに対して、影響を与える表面電位を生じさせず、かつ、適切に用紙pを搬送ベルト15に対して吸着させることが出来る。この例では、第1電圧については固定とし、設定手段112(図3参照)が第2電圧の値を設定する(つまり、第2電圧の値は可変である)。
また、一般的に、搬送ベルト15に対して、高電圧を長く印加し続けると、搬送ベルト15の表面の絶縁層が破損されてしまう。絶縁層が破損されると、電荷が帯電し難くなり、用紙pを吸着できなくなり、搬送ベルト15を交換する必要があるという問題がある。また、高電圧を長く印加し続けると、電力コストが高くなるという問題がある。従って、搬送ベルト15が用紙pを吸着でき、かつ、用紙pに生じる表面電圧により画像形成手段60からのインクに対して影響が出ない範囲で、搬送ベルト15に印加する電圧値は小さい方がよいという前提がある。図3に、本実施形態の制御部11の機能構成例を示し、図4に本実施形態1の画像形成装置10の主な処理の流れを示す。図3、図4を用いて、この前提の下、説明をする。
まず、制御部11の制御により、第1印加手段4は搬送ベルトに対して、第1電圧を印加する。ここでは、第1直流電源8により、約2kVの電圧が、第1印加手段4により印加される。そして、第1印加手段4は、搬送ベルト15に対して、約1.5kVの第1電圧を印加する。
次に、取得手段110は、画像形成情報を取得する(ステップS4)。ここで、画像形成情報とは、画像形成装置10による画像形成の環境について示す情報である。本実施例では、画像形成情報を「用紙pの温度」「用紙pの湿度」「画像形成される用紙pの厚さ」「搬送ベルト15の搬送速度」のうち、少なくとも1つを含むものである。
以下の説明では、画像形成情報を「用紙pの温度」および「用紙pの湿度」であるとして説明する。
図2に示すように、温度・湿度計70が用紙pの温度および湿度を測定する。温度・湿度計70は、用紙pの温度・湿度が測定できれば、どこに配置させてもよい。図2の例では、温度・湿度計70は、用紙pが給紙される給紙手段100に配置される。
そして、取得手段110は、温度・湿度計70に測定された用紙の温度および湿度を取得する。当該測定された温度および湿度から、用紙p内に含まれる水蒸気量が定まる。そして、定まった水蒸気量により、設定手段112は、第2電圧の値を設定する。また、用紙p内の、温度と湿度と、水蒸気量(単位は、g/m3)の関係を図5に示す。図5に示すように、低温・低湿度の場合には、用紙p内の水蒸気量は少なくなり、高温・高湿度の場合には、用紙p内の水蒸気量は多くなる。例えば、温度が11℃であり、湿度が20%の場合には、水蒸気量は、2.006(g/m3)となる。
測定された水蒸気量により、第2電圧の値を設定する理由を図6、図7を用いて説明する。用紙p内の水蒸気は導電性であるため、用紙p内の水蒸気量が多いと用紙pの体積抵抗が小さくなる(例えば、体積抵抗が「109Ω・cm」)。また、搬送ベルト15は、第1印加手段4により、正極の第1電荷600が帯電されている。また、図6に示すように、第2帯電手段5と用紙の接触部Nから、負極の第2電荷500が画像形成面paに帯電される。負極の第2電荷500は、正極の第1電荷600に引き寄せられて、画像形成面paから当接面pcに移動するのであるが、体積抵抗が小さいことから、負極の電荷500は、当接面pcに移動しやすい。従って、水蒸気量が多い場合には、第2電圧の値を小さくすることが出来る。
一方、用紙p内の水蒸気量が少ないと用紙pの体積抵抗が大きくなる(例えば、体積抵抗が「1013Ω・cm」)。そして、体積抵抗が大きくなることから、用紙pは大略して絶縁体となる(絶縁レベルに達している)。また、搬送ベルト15が、第1印加手段4により、正極の第1電荷600が帯電されている。また、図7に示すように、第2帯電手段5と用紙の接触部Nから、負極の第2電荷500が画像形成面paに帯電される。負極の第2電荷500は、正極の第1電荷600に引き寄せられて、画像形成面paから当接面pcに移動するのであるが、体積抵抗が大きいことから、負極の電荷500は、当接面pcに移動し難い。そうすると、図7に示すように、負の電荷で帯電させるためには、高電圧で微小距離で、コロナ放電をしなければならない。従って、水蒸気量が少ない場合には、第2電圧の値を大きくする必要がある。
そこで、図8に示す対応表のように、測定された水蒸気量(つまり、測定された温度および湿度)と、第2電圧の値を対応付けて予め定めておく。この定めておく第2電圧の値は、用紙pを搬送ベルト15に吸着できるようにする値である。更には、第2電圧の値は、第2印加手段5が該第2電圧を搬送ベルト15に対して印加した場合に、第1電圧の印加により生じる電位(電界)の値が、吐出されたインクに対して影響を与えない程度の値であることが好ましい。ここで、「吐出されたインクに対しての影響を与えない」とは、吐出されたインクが用紙pの所望の位置に着弾されることをいう。なお、図8の5g/m3未満の水蒸気量とは、図5記載の領域αに記載されている水蒸気量であり、5〜10g/m3未満の水蒸気量とは、図5記載の領域βに記載されている水蒸気量であり、10g/m3以上の水蒸気量とは、図5記載の領域γに記載されている水蒸気量である。
そして、設定手段112は、図8に示す対応表に基づいて、第2電圧の値を設定する(ステップS6)。図8の例では、例えば、水蒸気量が5g/m2未満の場合(つまり、水蒸気量が少ない場合)には、設定手段112は、第2電圧の値として、−3kVであるとして設定する。
そして、制御部11の制御により、第2印加手段5は、設定された第2電圧で搬送ベルト15を印加する(ステップS8)。この第2電圧の印加により、用紙pは、搬送ベルト15に吸着され、かつ、第1電圧により生じる表面電圧(電界)の値が、吐出されたインクに対して影響を与えない程度の値になる。
そして、この状態で、搬送ベルト15は用紙pを搬送し、画像形成手段60は、該用紙pに対して、画像形成を行う。上述のように、第2電圧の印加により、第1電圧により発生する表面電位は、吐出されたインクに対して影響を与えない程度の値になる。従って、画像形成手段60は適切に、インクを吐出して、画像形成を行なうことができる。
また、図8の対応表はあくまで、一例であり、他の水蒸気量(温度と湿度)と、第2電圧値の対応を用いても良い。
<画像形成情報の他の例(その1)>
次に、画像形成情報の他の例(その1)について説明する。画像形成情報が、搬送ベルト15の搬送速度である場合について説明する。一般的に、用紙を搬送している搬送ベルト15の搬送速度が大きいと、第2印加手段5と用紙pの接触部N(例えば、図6参照)との接触時間は短くなる。従って、第2印加手段5からの負極の第2電荷は用紙に帯電し難い。よって、第2電圧値を大きくする必要がある。
一方、用紙を搬送している搬送ベルト15の搬送速度が小さいと、第2印加手段5と搬送ベルト5の接触部Nとの接触時間は長くなる。従って、第2印加手段5からの負極の第2電荷は用紙に帯電しやすい。よって、第2電圧値は小さくても良い。このような前提の下、図3、図4を用いて、説明を行なう。
まず、取得手段110が、画像形成情報(ここでは、搬送ベルト15の搬送速度)を取得する(ステップS4)。搬送速度は、デフォルトで設定されている値でもよいし、ユーザが後ほど、設定した値でもよく、主記憶部12または補助記憶部13(図1参照、以下、「主記憶部12など」という。)に記憶されている。そして、取得手段110が、当該記憶されている搬送ベルト15の搬送速度を取得する。
そして、設定手段112が、第2電圧値を設定する(ステップS6)。ここで、当該設定手法の詳細について説明する。搬送ベルト15の搬送速度の第1閾値A1を定めておき、主記憶部12などに記憶させておく。そして、設定手段112が、取得した搬送速度と、第1閾値Aとの大小を比較する。設定手段112が、「取得した搬送速度」≧「第1閾値A」1と判断した場合には、第2電圧値をα1と設定する。一方、設定手段112が、「取得した搬送速度」<「第1閾値A1」と判断した場合には、第2電圧値をα2と設定する。ただし、α1>α2とする。このようにして、設定手段112は、第2電圧を設定する(ステップS6)。以後の処理については、上記で説明した通りなので、省略する。
<画像形成情報の他の例(その2)>
次に、画像形成情報の他の例(その2)について説明する。画像形成情報が、画像形成される用紙の厚さである場合について説明する。図9に示すように、画像形成されている用紙の厚さhが厚い場合には、用紙pの画像形成面paと当接面pcとの距離hが長くなる。そうすると、第2印加手段5により、用紙pの画像形成面paに帯電された負極の第2電荷500に対する、正極の第1電荷600による引き寄せる力が弱まり、負極の第2電荷500が当接面pcに移動し難い。従って、用紙の厚さhが長い(用紙pが厚い)場合には、第2電圧値を大きくする必要がある。
一方、画像形成されている用紙の厚さhが薄い場合には、第2印加手段5により、用紙pの画像形成面paに帯電された負極の第2電荷500が、搬送ベルト15に当接面pcに移動しやすい。従って、用紙の厚さhが短い(用紙pが薄い)場合には、第2電圧値は小さくすることが出来る。
まず、取得手段110が、画像形成情報(ここでは、用紙pの厚さ)を取得する(ステップS4)。用紙pの厚さの値は、ユーザにより、操作部17(図1参照)から入力するようにしてもよい。また、厚さ測定手段(図示せず)により、用紙pの厚さを測定するようにしてもよい。そして、取得手段110が、ユーザにより入力された用紙pの厚さ、および、厚さ測定手段により測定された用紙pの厚さを取得する。
そして、設定手段112が、第2電圧値を設定する(ステップS6)。ここで、当該設定手法の詳細について説明する。搬送ベルト15の搬送速度の第2閾値A2を定めておき、主記憶部12などに記憶させておく。例えば、第2閾値A2=100マイクロメートルとすればよい。そして、設定手段112が、取得した用紙pの厚さと、第2閾値A2との大小を比較する。設定手段112が、「取得した用紙の厚さ」≧「第2閾値B」と判断した場合には、第2電圧値をα1と設定する。一方、設定手段112が、「取得した用紙の暑さ」<「第2閾値B」と判断した場合には、第2電圧値をα2と設定する。ただし、α1>α2とする。このようにして、設定手段112は、第2電圧を設定する(ステップS6)。以後の処理については、上記で説明した通りなので、省略する。
また、図4のステップS2と、ステップS4〜ステップS8の処理は、並行して行ってもよく、どちらを先に行なってもよい。
また、上記説明では、画像形成情報を、用紙pの温度、用紙pの湿度や、搬送ベルト15の搬送速度、用紙pの厚さ、を個別に説明したが、画像形成情報として、これらのうち少なくとも1つを含ませたものとしてもよい。
この実施形態1の画像形成装置によれば、画像形成する画像形成情報(用紙p内の水蒸気量(用紙の温度、湿度)や、搬送ベルト15の搬送速度、用紙pの厚さ)に基づいて、第2電圧値を設定する。従って、適切な第2電圧値を設定することが出来、適切に用紙pを吸着させることや用紙pの表面電圧を抑制することが出来、結果として、画像形成手段60は適切に、画像形成を行なうことができる。
[実施形態2]
次に、実施形態2の画像形成装置について説明する。実施形態2の画像形成装置は図2に示す第3印加手段7を用いたものである。実施形態1では、原則として、用紙pの表面電圧が第2電圧により抑圧され、該抑圧された表面電圧により記録ヘッド61〜64から吐出されるインクに対して、影響を及ぼさないものになる。しかし、用紙のたわみや、用紙の両面印刷の影響(共に後述する)や、画像形成装置内の環境などにより、用紙pの表面電圧が抑圧しきれず、記録ヘッド61〜64から吐出されるインクに対して、影響を及ぼす場合がある。実施形態2では、このような場合であっても、用紙pの表面電圧が記録ヘッド61〜64から吐出されるインクに対して影響を及ぼさないようにする画像形成装置を説明する。
図2に示すように、第3印加手段7は、第2印加手段5を通過後の搬送ベルト15の表面に摺接するように設けられる。また、第3印加手段7はバネ7aの弾性力により、搬送ベルト15に圧接されている。また第3印加手段7は、正極が接地された直流電源9の負極(−)に接続されている。
図10に、実施形態2の画像形成装置の主な処理フローを示す。図10の処理フローは、図4の処理フローと比較して、ステップS8とステップS10との間に、ステップS22、S23、S24、S26の処理が追加されたものである。
ステップS2の処理(第1印加手段4による第1電圧の印加)と、ステップS8の処理(第2印加手段5による第2電圧の印加)と、が終了すると、測定手段6が、用紙pの画像形成手段60に向いている側の面の表面電圧を測定する。そして、判定手段114は、該表面電圧が許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS23)。ここで、許容範囲とは、表面電圧の値が、インクの影響に吐出しないか範囲をいい、予め定められるものである。許容範囲とは、例えば、−200V〜+200Vであるとする。
判定手段114が、測定された表面電圧の値が、許容範囲内であると判定すると(ステップS23のYes)、ステップS10に移行し、ステップS10(画像形成処理など)の処理を行う。判定手段114が、測定された表面電圧の値が、許容範囲外であると判定すると(ステップS23のNo)、ステップS24に移行する。ステップS24では、算出手段116が、用紙pの体積抵抗を算出する。ここで、体積抵抗の算出は、第1印加手段4により印加された第1電圧値、第2印加手段5により印加された第2電圧値、測定手段6により測定された表面電圧値に基づいて算出される。
設定手段112は、算出手段116により算出された用紙の体積抵抗に基づいて、表面電圧が許容範囲内になるように、第3電圧値を設定する。そして、制御部11の制御により、第3印加手段7は、該設定された第3電圧値を搬送ベルト15に印加する(ステップS26)。
次に、用紙pへの両面画像形成(両面印刷)の観点から、本実施形態2の画像形成装置の効果を説明する。両面印刷される場合には、画像形成手段60が、用紙pの表面に印刷した後に、切り替え爪30で搬送方向を上に切り換え、各搬送ローラ31〜38にて、表面に印刷された用紙pを切り替え爪41まで搬送する。そして、用紙pは、切り替え爪41により、反転ローラ対50、51方向に搬送される。そして、反転ローラ対50、51により用紙pが反転されて、画像形成手段60まで搬送される。
この場合には、図11に示すように、用紙pの表面にインクが着弾されているため、用紙pに含まれる水分量が増し、用紙の体積抵抗が減少しやすくなる。何故ならインク(水分)が導電体となるからである。そうすると、第2印加手段5により第2電圧が印加された後であっても、用紙pの表面電圧は、許容範囲外になる場合が多い。このような場合であっても、算出手段116が、用紙pの体積抵抗を算出し、該算出された体積抵抗に基づいて、設定手段112が、第3電圧を設定する。そして、第3印加手段7により設定された第3電圧を印加することで、用紙pの表面電圧を許容範囲内にすることが出来る。
次に、図12を用いて、用紙pのたわみの観点から、本実施形態2の画像形成装置の効果を説明する。上述のように、搬送ベルト15と、レジストローラ対2,3は速度差があるために、搬送ベルト15とレジストローラ対2、3との間に、たわみpbが発生する。たわみpbの量は、用紙pの先端(画像形成手段60側の端)側では小さいが、後端(画像形成手段60と反対側の端)側では大きくなる。そして、用紙pの搬送方向長手方向の長さが、長くなるほどたわみが大きくなる。
そして、用紙後端部では、たわみpbが発生することから、搬送ベルト15と用紙pの距離Lが大きくなる。当該距離Lが長くなると、第2印加手段5により帯電された負極の電荷の、搬送ベルト15に帯電された正極の電荷に引き寄せられる力も弱まり、負極の電荷が、当接面pcに移動し難くなる。よって、当接面pcには、負極の電荷が少なくなってしまい、用紙pの画像形成面paの表面電位は、正極性が強まる。つまり、用紙の先端部は、表面電位は、許容範囲内の値(例えば、0に近い値)となるが、用紙pの後端部には、正極の表面電位が発生する。
また、当接面pcには、負極の電荷が少なくなることから、吸着力も減少する。しかし本実施形態2の構成の場合には、第3印加手段7の部分では用紙pのたわみが無いため、第3印加手段7は、適切にフィードバックによる第3電圧の印加を行なうことができる。
また、本実施形態2では、上流側から、第1印加手段4、第2印加手段5、測定手段6、第3印加手段7の順番で配置されている。従って、第3印加手段7は、測定手段6が測定した、用紙pの全ての領域の表面電圧に基づいた(用紙pの全ての領域の表面電圧をフィードバックした)第3電圧を印加することが出来る。
この実施形態2の画像形成装置によれば、用紙のたわみや、用紙の両面印刷の影響や、画像形成装置内の環境などにより、用紙の表面電圧の値が、許容範囲外であったとしても、第3印加手段7により、第3電圧を印加することから、適切に用紙の表面電圧の値を許容範囲内とすることが出来る。従って、画像形成手段60は、適切に画像形成処理を行うことができる。
[実施形態3]
次に、実施形態3の画像形成装置について説明する。実施形態3では、第3印加手段5の更なる処理について説明する。
実施形態1や2において、第1印加手段4は、正極の第1電圧を搬送ベルト15に印加する。そして、第2印加手段5が、多大な負極の第2電圧を印加したとする。その結果、用紙pの表面電圧が、許容範囲外になった場合には、第3印加手段7は正極の第3電圧を印加する。しかし、この構成では、電圧コストが高くなる。
そこで、実施形態3の第3印加手段7は、第2印加手段5が印加する第2電圧と、第3印加手段7が印加する第3電圧と、を同極性にする。つまり、第2電圧および第3電圧を正極にする、または、第2電圧および第3電圧を負極にする。更に詳細には、本実施形態3では、第2電圧を、用紙pを吸着できる最低限の電圧値とし、第3電圧を用紙pの表面電圧を抑圧することが出来る電圧値とする。つまり、図13に示すように、実施形態3で印加する第2電圧値は、実施形態1で印加する第2電圧値より、所定量小さくする。そして、第2電圧で抑圧しきれなかった表面電圧を、第3電圧で抑圧する。
この実施形態3のように、第2電圧と第3電圧とを同極性にすることで、電力コストを抑えることが出来る。
[実施形態4]
次に、実施形態4の画像形成装置について説明する。実施形態1では、第1電圧は固定で、第2電圧が可変である場合を説明した。実施形態4の画像形成装置では、画像形成情報によっては、第2電圧だけではなく、第1電圧も可変とするものである。
まず、画像形成情報が、用紙の厚さである場合について、第1電圧を変化させる例について説明する。一般的に、用紙の厚さに応じて、搬送ベルト15に吸着させる吸着力が異なる。例えば、用紙pの先端部が浮いている状態である(つまり、カールがある)場合に、薄紙であれば小さい吸着力で、搬送ベルト15への吸着が可能である。一方、厚紙の場合には、大きな吸着力が必要である。実験では、厚紙を搬送ベルト15へ吸着させるには、約4000Pa以上の吸着力が必要である。また、薄紙を搬送ベルト15へ吸着させるには、約2000Pa以上の吸着力が必要である。また、吸着力を変化させるには、第1印加手段4により印加される第1電圧の値(つまり、第1電圧による電荷の量)を変化させる。
ここで、薄紙も厚紙も常に4000Pa以上の吸着力が生じるようにすれば良い。しかし、そのためには、第1印加手段4は、常に高電圧を搬送ベルト15に印加し続ける必要がある。上述のように、搬送ベルト15に高電圧を印加し続けると、搬送ベルト15の絶縁層の破損などが生じる。従って、印刷される用紙pが普段多く使われる薄紙である場合には、第1電圧を低く設定しておき、印刷される用紙pが厚紙である場合には、第1電圧を高く設定する。これにより、電力コストの削減、搬送ベルト15の保護などを行なうことができる。
具体的には、用紙pが厚紙である場合には、第1印加手段4は第1電圧(例えば、+3kV)を搬送ベルト15に印加する。その後、第2印加手段5は第2電圧(例えば、−2kV)を搬送ベルト15に印加し、第3印加手段7は、表面電位が許容範囲内になるように、第3電圧(例えば、−1kV)を印加する。
また、用紙pが薄紙である場合には、第1印加手段4は第1電圧(例えば、+2kV)を搬送ベルト15に印加する。その後、第2印加手段5は第2電圧(例えば、−1kV)を搬送ベルト15に印加し、第3印加手段7は、表面電位が許容範囲内になるように、第3電圧(例えば、−1kV)を印加する。
次に、用紙p内の水蒸気量(用紙p内の温度と湿度)により、該用紙pの吸着に必要な吸着力も異なる。簡略化していえば、用紙p内の水蒸気量が少ない(用紙pが低音低湿(10度、10%))であれば、大きな吸着力が必要である。一方、用紙p内の水蒸気量が多い(用紙pが高温高湿(30度、80%))であれば、吸着力は小さくてよい。理由は、用紙p内に水蒸気量が多いと、該用紙pはカールし難い。従って、小さな吸着力で、用紙pを搬送ベルト15に吸着できる。一方、用紙p内に水蒸気量が少ないと該用紙pはカールしやすい。従って、大きな吸着力が必要である。
また、実験では、用紙pが厚紙の場合には、低温低湿では、4000Pa以上、高温高湿では2000Pa以上の吸着力が必要であると判明した、また、用紙pが薄紙の場合には、低温低湿では、2000Pa以上、高温高湿では1200Pa以上の吸着力が必要であると判明した。
また、例えば、用紙pが高温高湿の厚紙である場合には、第1印加手段4は、搬送ベルト15に第1電圧として、+2kV印加させ、その後、第2印加手段5、第3印加手段7では印加しない(接地(アース)のみ)。第1帯電ローラ5及び第2帯電ローラ7に印加させない理由は、高温高湿の用紙pでは体積抵抗約109Ω・cm程度の導電レベルであるため、アースから負の電荷が移動するため、第2電圧、第3電圧は必要ない。
この実施形態4の画像形成装置によれば、画像形成情報により、第2電圧のみではなく、第1電圧も可変とする。従って、画像形成情報に応じて、用紙pの吸着力も可変とすることが出来、搬送ベルト15は、更に安定した用紙の搬送を行うことができる。
[実施形態5]
次に、実施形態5の画像形成装置について説明する。実施形態5の画像形成装置では、第1電圧、第2電圧を交流電圧(AC alternating current)とする。
もし、第1電圧、第2電圧を直流電圧(DC Direct Current)である場合について説明する。図14に示すように、用紙p上の表面電圧の値が許容範囲内ではなく、負の極性(−)が大きい電圧値である場合には、画像形成手段60は接地(アース)されているので、正極(+)が引き寄せられ、電界(電場)が生じてしまう。つまり、この電界により、記録ヘッド61〜64からのインク吐出へ影響を与えてしまう。
そこで、本実施形態5では、第1電圧、第2電圧をそれぞれ交流電圧とする。つまり、図15に示すように、搬送ベルト15に対して、+の電荷、−の電荷を略交互に帯電させること。このようにすることで、図16に示すように、用紙p上の表面電位があったとしても、隣り合った異極の電荷同士で電界ができ、画像形成手段60への電界の影響は小さくすることができる。
この実施形態5によれば、第1電圧を交流電圧とすることで、用紙pに表面電位が存在する場合でも、隣接する電荷間で電界が生じることから、記録ヘッド61〜64から吐出されるインクに及ぼす影響を少なくすることが出来る。