JP2017164708A - アルカリ性廃水処理方法、アルカリ性廃水処理装置、廃油処理方法、及び、廃油処理装置 - Google Patents
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また、使用済みの潤滑油(廃油)は、使用済みのPCBと混合されて保管されていることがある。
まず、廃油とアルカリ剤と混合することにより混合液を作製し、該混合液中において、リン酸エステルをアルカリ剤によってフェノール類と水溶性リン化合物とに分解する。
次に、該混合液を静置することにより、油相(リン酸エステルが除去され、主にPCBを含む液)と水相(フェノール類、水溶性リン化合物、アルカリ等を含む液)とに分離する。
そして、前記油相に関しては、固形分を除去した後、PCBを分解する。
また、前記水相に関しては、水溶性リン化合物を除去し更に中和処理した後、下水道等に移送する。
すなわち、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含有するアルカリ性廃水は、フェノール類が含有されている場合には、酸と混合されると、フェノール類が水と分離しやすくなり、言いかえれば、フェノール類相と水相とに分離しやすくなることを本発明者は見出した。また、水相は、アルカリ性廃水に比べてPCB濃度が低くなることを本発明者は見出した。水相は、アルカリ性廃水に比べてPCB濃度が低くなったのは、PCBが、水よりもフェノール類との親和性が高いためと考えられる。
該酸混合液を水相とフェノール類相とに分離することとを備える。
該アルカリ混合液を、油相と水相とに分離することと、
該水相を、前記アルカリ性廃水として前記アルカリ性廃水処理方法で処理することとを備える。
前記酸混合液を水相とフェノール類相とに分離する酸混合液分離部とを備える。
該アルカリ混合液を、油相と水相とに分離するアルカリ混合液分離部と、
該水相を、前記アルカリ性廃水として処理する、前記アルカリ性廃水処理装置とを備える。
また、前記廃油Aは、リン酸エステルやPCB以外に、鉱物油や合成油を含有し、例えば、潤滑油や絶縁油等を含有する。潤滑油や絶縁油としては、パラフィン系ベースオイル、ナフテン系ベースオイル等が挙げられる。パラフィン系ベースオイルとしては、ニュートラル油、ブライトストック油等が挙げられる。
前記リン酸エステルは、フェノール類(置換フェノールや非置換フェノール)とリン酸との縮合物である。
前記リン酸エステルは、アルカリによって分解されてフェノール類が生成されるリン酸エステルである。前記リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルを含む概念である。前記リン酸エステルとしては、例えば、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシリルホスフェート、t−ブチルフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等が挙げられる。
前記アルカリ混合部2は、容器と容器内の収容液(油)を加熱する加熱器(例えばジャケット)とを備え、更に、ホモジナイザー、ラインミキサ、回転ミル、超音波振動発生機等を用いて廃油Aと水酸化ナトリウム水溶液Bとを撹拌し混合するように構成されている。
前記リン酸エステルがTCPである場合には、廃油Aと水酸化ナトリウム水溶液Bとを混合することにより、TCPは、下記式の反応で水酸化ナトリウムと反応し分解される。
前記アルカリ混合部2での混合は、リンの量に対する水酸化ナトリウムの量のモル比を好ましくは3以上にして行い、より好ましくはこの比を3〜15にして行う。なお、前記「リンの量」は、廃油中のリン濃度と、前記水酸化ナトリウムに混合される前記廃油の量とから求めることができる。前記廃油中のリン濃度は、廃油を酸分解した後、酸分解した廃油を定容しICP分析により求めることができる。
この比が3以上であることにより、エステル結合を1分子に複数有するリン酸ジエステルやリン酸トリエステルがリン酸エステルとして廃油Aに多く含まれていても水酸化ナトリウムによってリン酸エステルを十分に分解することができる。
前記アルカリ混合部2での混合温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは、70〜100℃である。
前記廃油Aと、前記水酸化ナトリウム水溶液Bとの混合時間(撹拌時間)は、好ましくは30〜500分、より好ましくは100〜300分である。
前記アルカリ性廃水は、pHが14以上である。アルカリ性廃水のpHは、pHメーターの電極にアルカリ性廃水を接触させて測定することができる。
前記酸Dとしては、無機酸、有機酸が挙げられる。前記無機酸としては、硫酸、塩酸等が挙げられる。前記有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸等が挙げられる。
前記予備混合液は、pHが、好ましくは8以上14未満、より好ましくは8以上10未満である。予備混合液のpHは、pHメーターの電極に予備混合液を接触させて測定することができる。
前記酸混合液は、pHが、好ましくは8以上14未満、より好ましくは8以上10未満である。酸混合液のpHは、pHメーターの電極に酸混合液を接触させて測定することができる。
前記酸混合液のpHが低いほど、酸混合液からフェノール類が分離されやすくなる。
なお、フェノール類相は、PCB抽出剤Eを主成分として含み、水相よりもフェノール類を多く含む相と、フェノール類を主成分として含む相とに分離することがある。
また、前記洗浄部15は、水相とPCB抽出剤Eとを混合してPCB抽出剤混合液を作製するPCB抽出剤混合部15aと、該PCB抽出剤混合液をPCB抽出剤相と水相とに分離するPCB抽出剤混合液分離部15bとを備える。
本実施形態では、前記酸混合部11は、PCB抽出剤混合部15aを兼ねている。また、前記酸混合液分離部12は、PCB抽出剤混合液分離部15bを兼ねている。
前記PCB抽出剤Eとしては、常温常圧下(例えば、25℃、1気圧下)で液状の有機化合物が挙げられる。また、前記PCB抽出剤Eとしては、天然油、合成油等が挙げられる。天然油としては鉱物油等が挙げられる。また、前記PCB抽出剤Eとしては、燃料油、潤滑油、食用油、溶剤などとして用いられるものを用いることができる。前記溶剤としては、炭化水素系溶剤が挙げられる。前記炭化水素系溶剤としては、炭化水素、アルコール、有機ハロゲン化合物等が挙げられる。炭化水素としては、n−ヘキサン、n−ペンタン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカリンなどが挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソブタノールなどが挙げられる。有機ハロゲン化合物としては、塩化メチレン、HCFC−225、ブロモプロパンなどが挙げられる。
前記リン除去部13は、前記無機充填槽の代わりに、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、ナトリウムイオン(Na2+)、アルミニウムイオン(Al3+)の少なくとも何れかのイオンを含有する水溶液を収容し、収容液を撹拌する撹拌分離槽を有してもよい。該リン除去部13は、前記酸混合液分離部12で得られた水相を前記撹拌分離槽で前記水溶液と接触させることにより、水溶性リン化合物を金属塩(例えば、アパタイト(Ca5(PO4)3(F、Cl、OH))として撹拌分離槽で晶析して分離するように構成されている。
該浄化水Cは、アルカリ性廃水処理装置10外に移送される。
なお、前記リン除去部13で水溶性リン化合物が除去された前記水相のpHが、7付近(例えば、pH5〜9)であれば、該水相を中和部14で中和させずに浄化水Cとして、アルカリ性廃水処理装置10外に移送してもよい。
また、本実施形態の廃油処理方法は、前記アルカリ混合液分離部3で得られた前記油相から固形分を前記固形分除去部4で除去することと、固形分が除去された前記油相のPCBを前記PCB分解部5で分解することとを更に備える。
さらに、本実施形態の廃油処理方法は、前記アルカリ混合液分離部3で得られた水相を、前記アルカリ性廃水として処理する、本実施形態のアルカリ性廃水処理方法を更に備える。
また、本実施形態のアルカリ性廃水処理方法は、前記酸混合液分離部12で得られた水相から水溶性リン化合物を前記リン除去部13で除去することと、該リン除去部13で水溶性リン化合物が除去された前記水相を前記中和部14で中和することとを更に備える。
該洗浄工程では、前記酸混合液を分離して得られた水相と前記PCB抽出剤Eとを前記洗浄部15で混合することにより、該水相に含有される成分を前記PCB抽出剤によって除去する。該水相に含有される成分は、PCB等の油溶性成分である。
斯かるアルカリ性廃水処理方法によれば、アルカリ性廃水に含まれるPCBの濃度を低減することができる。
斯かるアルカリ性廃水処理方法によれば、前記PCB抽出剤Eを用いることにより、アルカリ性廃水のPCB濃度をより一層低減することができる。
また、斯かるアルカリ性廃水処理方法によれば、アルカリ性廃水に水溶性リン化合物が含有されている場合には、PCBと水溶性リン化合物とを分離しやすくなる。この点詳しく説明すると、PCBは油溶性であり、水溶性リン化合物は水溶性である。また、PCB抽出剤は、油溶性成分を溶解させる性質を有する一方で、水溶性成分を溶解させ難い性質を有する。よって、PCB抽出剤を用いることにより、PCBがPCB抽出剤とともにフェノール類相側に多く含まれやすくなる一方で、水溶性リン化合物は水相に多く含まれやすくなる。従って、PCBと水溶性リン化合物とを分離しやすくなる。
PCB抽出剤(特に、炭化水素系溶剤や、潤滑油)は酸で分解されるおそれがある。よって、斯かるアルカリ性廃水処理方法によれば、酸がアルカリ性廃水により中和された後にPCB抽出剤Eを用いるので、PCB抽出剤Eが酸で分解されるのを抑制することができる。
また、油を含む液はpH計で測定し難い。また、PCB抽出剤Eは油性である。よって、斯かるアルカリ性廃水処理方法によれば、PCB抽出剤Eが用いられる前にpHを測定でき、その結果、pHを調整し易くなる。
斯かるアルカリ性廃水処理方法によれば、前記洗浄工程により、アルカリ性廃水のPCB濃度をより一層低減することができる。
また、斯かるアルカリ性廃水処理方法によれば、PCB抽出剤Eを用いるので、PCBと水溶性リン化合物とを分離しやすくなる。
斯かる廃油処理装置1によれば、廃油Aに含まれるリン酸エステルを十分に分解し、油相からリン化合物を抽出することができる。
リン酸エステル及びPCBを含有する廃油と、水酸化ナトリウム水溶液とを混合してアルカリ混合液を得、該アルカリ混合液を油相と水相(pH14)とに分離した。
次に、該水相100質量部に炭化水素系溶剤(NSクリーン(登録商標)100)を100質量部添加し、常温、400rpm、30minの条件下で撹拌して、酸混合液を作製した。
そして、酸混合液を5分間静置してフェノール類相と水相とに分離した。
その後、該水相を炭化水素系溶剤で9回(酸混合液に含まれる炭化水素系溶剤による洗浄を含めると実質的に10回)洗浄した。1回の洗浄では、該水相100質量部に炭化水素系溶剤(NSクリーン(登録商標)100)を100質量部添加し、常温、400rpm、30minの条件下で撹拌し、5分間静置して水相を得た。
次に、炭化水素系溶剤で洗浄した水相を撹拌しながら、カルシウムイオンとリンイオンとの当量比が15となるように水相にCaCl2水溶液(CaCl2が飽和している水溶液)を添加し、ヒドロキシアパタイトを析出させて、固液分離してリンを除去した。
リンを除去した水相における全リン濃度(以下、単に「リン濃度」ともいう。)、及び、PCB濃度を測定した。結果を表1に示す。
全リン濃度は、流れ分析法(JIS K0170−4:2011「流れ分析法による水質試験方法−第4部:りん酸イオン及び全りん」)によって測定した。
PCB濃度は、昭和46年環境庁告示54号に従って測定した。
アルカリ混合液から得られた水相(pH14)に塩酸を混合してpH10にし、pH10にした水相に炭化水素系溶剤を加えたこと以外は、試験例1−1と同様な処理を行った。
そして、リンを除去した水相における全リン濃度、PCB濃度、及び、フェノール類濃度を測定した。結果を表1に示す。
フェノール類濃度は、JIS K0102:2013に従って測定した。
アルカリ混合液から得られた水相(pH14)に塩酸を混合してpH8にしたこと以外は、試験例1−1と同様な処理を行った。
そして、リンを除去した水相における全リン濃度、PCB濃度、及び、フェノール類濃度を測定した。結果を表1に示す。
アルカリ混合液に酸を加えることにより、全リン濃度を低減できたのは以下の理由によるものと考えられる。すなわち、アルカリ混合液に酸を加えることにより、水相のフェノール類濃度を低減でき、その結果、リンとカルシウムとが反応しやすくなったことによるものと考えられる。
リンの除去率に関する試験を行った。
まず、リン酸エステルとしてのトリクレジルホスフェート(TCP)と表2、3の溶媒油とを表2、3のリン濃度となるようにして仮想廃油を調製した。
なお、溶媒油としては、JX日鉱日石エネルギー社製の炭化水素系洗浄剤(商品名:NS200)と、出光興産社製の電気絶縁油(商品名:出光トランスフォーマーオイルH)(以下、「出光H」ともいう。)とを用いた。
また、表2、3の水酸化ナトリウム濃度となる水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
次に、表2、3に示す仮想廃油の処理条件で、仮想廃油と、水酸化ナトリウム水溶液とを混合した。
そして、混合後(処理後)の仮想廃油中のリン濃度を測定し、リンの除去率を算出した。結果を表2、3に示す。
なお、混合後(処理後)の仮想廃油中のリン濃度は、仮想廃油を酸分解した後、酸分解した仮想廃油を定容しICP分析により求めた。或いは、混合後(処理後)の仮想廃油中のリン濃度は、水相中のリン濃度より算出した。なお、水相中のリン濃度は、流れ分析法(JIS K0170−4:2011「流れ分析法による水質試験方法−第4部:りん酸イオン及び全りん」)によって測定した。
10:アルカリ性廃水処理装置、11:酸混合部、12:酸混合液分離部、13:リン除去部、14:、中和部、15:洗浄部、15a:PCB抽出剤混合部、15b:PCB抽出剤混合液分離部、
A:廃油、B:水酸化ナトリウム水溶液、C:浄化水、D:酸、E:PCB抽出剤
Claims (7)
- アルカリ性廃水処理方法であって、
ポリ塩化ビフェニル及びフェノール類を含有するアルカリ性廃水と、酸とを混合して、酸混合液を作製することと、
該酸混合液を水相とフェノール類相とに分離することとを備える、アルカリ性廃水処理方法。 - 前記酸混合液は、前記アルカリ性廃水と、前記酸と、PCB抽出剤とを混合して作製する、請求項1に記載のアルカリ性廃水処理方法。
- 前記酸混合液は、前記アルカリ性廃水と前記酸とを混合して予備混合液を作製し、前記予備混合液と前記PCB抽出剤とを混合して作製する、請求項2に記載のアルカリ性廃水処理方法。
- 前記水相をPCB抽出剤で1回又は複数回洗浄する洗浄工程をさらに実施し、
該洗浄工程は、前記水相と前記PCB抽出剤とを混合することにより、前記水相に含有される成分を前記PCB抽出剤によって除去する、請求項1〜3の何れか1項に記載のアルカリ性廃水処理方法。 - 廃油処理方法であって、
リン酸エステル及びポリ塩化ビフェニルを含有する廃油と、アルカリ水溶液とを混合して、アルカリ混合液を作製することと、
該アルカリ混合液を、油相と水相とに分離することと、
該水相を、前記アルカリ性廃水として請求項1〜4の何れか1項に記載のアルカリ性廃水処理方法で処理することとを備える、廃油処理方法。 - アルカリ性廃水処理装置であって、
ポリ塩化ビフェニル及びフェノール類を含有するアルカリ性廃水と、酸とを混合して酸混合液を作製する酸混合部と、
前記酸混合液を水相とフェノール類相とに分離する酸混合液分離部とを備える、アルカリ性廃水処理装置。 - 廃油処理装置であって、
リン酸エステル及びポリ塩化ビフェニルを含有する廃油と、アルカリ水溶液とを混合して、アルカリ混合液を作製するアルカリ混合部と、
該アルカリ混合液を、油相と水相とに分離するアルカリ混合液分離部と、
該水相を、前記アルカリ性廃水として処理する、請求項6に記載のアルカリ性廃水処理装置とを備える、廃油処理装置。
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