JP2017160401A - インク用バインダー組成物、インク用材料セット及びインク - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性が高く、圧縮成形時の加工性及び耐アルコール性に優れたインク層が形成されるインク用バインダー組成物及びその応用を提供する。【解決手段】環状構造を有する単量体に由来の構成単位A、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位B、及びカルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cを含み、構成単位Aの含有率が全構成単位に対して40モル%以上であり、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率が全構成単位に対してそれぞれ3モル%以上であり、かつ、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率の合計が全構成単位に対して10モル%以上である重合体と、重合体100質量部に対する含有量が2質量部以上20質量部以下である金属キレート化合物と、を含むインク用バインダー組成物及びその応用である。【選択図】なし

Description

本発明は、インク用バインダー組成物、インク用材料セット及びインクに関する。
自動車、電化製品、スマートフォンなどの携帯電話、携帯端末等の部材には加飾された射出成形品が使用されている。加飾された射出成形品は、例えば、透明フィルムの裏面に樹脂を含むインクを印刷することでインク層を形成して加飾フィルムとし、加飾フィルムを圧縮成形にて曲面、凸凹又は平面を有する形状に加工した後に金型に装着し、加飾フィルムのインク層の表面に向けて溶融した樹脂を射出して、樹脂の表面と加飾フィルムとを一体化させることにより製造される。
また、加飾フィルムのインク層は、射出成形の際、溶融した高温の樹脂と接触したり、200℃〜300℃程度の高温に加温された金型に保持されたりするなど、過酷な環境に曝される。そのため、加飾フィルムのインク層形成に使用されるインクは、高温下に曝されたとしても、インク層が流動化することによりインクが流れる現象、すなわちインク流れが生じることのない高い耐熱性を有することが要求される。
インクの耐熱性は、インクに使用される樹脂の耐熱性に左右されるため、耐熱性に優れるポリカーボネート樹脂を用いたインクが開発されている。例えば、ポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として用いる耐熱性印刷インキが知られている(例えば、特許文献1参照)。
ところが、ポリカーボネート樹脂は耐候性に劣るという問題があるため、耐候性に優れたアクリル樹脂を用いたインクが開発されている。例えば、結合剤として少なくとも115℃のビカー軟化温度VST(ISO306B)を有するポリ(メタ)アクリレートを使用するインクが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2004−67838号公報 特表2005−501161号公報
特許文献2に記載のインクでは、耐熱性を高める観点から、高い軟化温度を有するアクリル樹脂が使用されているが、高い軟化温度を有するアクリル樹脂は、硬く、脆くなりやすい傾向がある。そのため、インクを用いてインク層が形成されたフィルムは、圧縮成形により加工する際、屈曲、延伸されることによって、インク層にひび割れが生じる場合がある。つまり、耐熱性を有しても、加工性に劣る課題がある。
また、射出成形を行う場合、成形前にあらかじめインク層の表面に付着した異物等を取り除くため、アルコールを染み込ませた布でインク層の表面を拭く作業が行われることがある。この場合、インク層は、アルコールによって溶解しない耐アルコール性をそなえていることが要求される。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、耐熱性が高く、圧縮成形時の加工性、及び耐アルコール性に優れたインク層が形成されるインク用バインダー組成物、インク用材料セット及びインクを提供することを目的とし、この目的を達成することを課題とする。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 環状構造を有する単量体に由来の構成単位A、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位B、及びカルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cを含み、前記構成単位Aの含有率が、全構成単位に対して40モル%以上であり、前記構成単位Bの含有率及び前記構成単位Cの含有率が、全構成単位に対してそれぞれ3モル%以上であり、かつ、前記構成単位Bの含有率及び前記構成単位Cの含有率の合計が、全構成単位に対して10モル%以上である重合体と、
前記重合体100質量部に対する含有量が2質量部以上20質量部以下である金属キレート化合物と、
を含むインク用バインダー組成物である。
<2> 前記構成単位Bに対する前記構成単位Cの含有比率が、モル基準で0.5以上10以下である前記<1>に記載のインク用バインダー組成物である。
<3> 前記金属キレート化合物が、アルミニウムキレート化合物である前記<1>又は前記<2>に記載のインク用バインダー組成物である。
<4> 前記アルミニウムキレート化合物が、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)である前記<3>に記載のインク用バインダー組成物である。
<5> 前記重合体のガラス転移温度が、70℃以下である前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載のインク用バインダー組成物である。
<6> 前記カルボキシ基以外の極性基を有する単量体の少なくとも一種が、アミノ基を有する単量体である前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載のインク用バインダー組成物である。
<7> 環状構造を有する単量体に由来の構成単位A、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位B、及びカルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cを含み、前記構成単位Aの含有率が、全構成単位に対して、40モル%以上であり、前記構成単位Bの含有率及び前記構成単位Cの含有率が、全構成単位に対してそれぞれ3モル%以上であり、かつ、前記構成単位Bの含有率及び前記構成単位Cの含有率の合計が、全構成単位に対して10モル%以上である重合体を含む第1の材料と、
前記重合体100質量部に対する比率が2質量部以上20質量部以下である金属キレート化合物を含む第2の材料と、
を含むインク用材料セットである。
<8> 前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載のインク用バインダー組成物と、有機溶媒と、を含むインクである。
<9> 更に、着色剤を含む前記<8>に記載のインクである。
<10> 射出成形用のフィルムに用いられる前記<8>又は前記<9>に記載のインクである。
本発明によれば、耐熱性が高く、圧縮成形時の加工性、及び耐アルコール性に優れたインク層が形成されるインク用バインダー組成物、インク用材料セット及びインクが提供される。
以下、本発明のインク用バインダー組成物、インク用材料セット及びインクについて詳細に説明する。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本明細書において、組成物中に含まれる各成分の量は、各々の成分について複数種を併用する場合は、特に断らない限り、いずれも複数種の成分の合計量を指す。
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方が包含されることを意味する。また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方が包含されることを意味する。
インク用バインダー組成物とは、重合体と金属キレート化合物との架橋反応が終了する前の組成物であり、例えば、液状、ペースト状、又は粉末状の組成物を指す。
また、インク層とは、重合体と金属キレート化合物との架橋反応が終了した後の層であり、例えば固形状の層を指し、インク層は着色剤(例えば顔料及び染料等)を含む着色された層でもよく、非着色の層であってもよい。
<インク用バインダー組成物>
本発明のインク用バインダー組成物は、少なくとも、重合体と、金属キレート化合物と、を含み、重合体100質量部に対する金属キレート化合物の含有量が2質量部以上20質量部以下の範囲である。
また、重合体は、環状構造を有する単量体に由来の構成単位Aと、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位Bと、カルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cと、を含み、前記構成単位Aの含有率は、全構成単位に対して、40モル%以上であり、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率は、重合体中の全構成単位に対してそれぞれ3モル%以上であり、かつ、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率の合計は、重合体の全構成単位に対して10モル%以上である。
本発明のインク用バインダー組成物は、好ましくは射出成形に用いられるものであり、例えば、自動車、電化製品、スマートフォン等の携帯電話、携帯端末等の部材として用いられる射出成形品を製造する際に用いられる。射出成形品は、具体的には以下のようにして製造される。
まず、透明フィルムの裏面にインク用バインダー組成物を含有するインクを付与(例えば印刷)し、透明フィルムの裏面にインク層を形成することで加飾フィルムとする。加飾フィルムを圧縮成形にて曲面、凸凹又は平面を有する形状に加工し、加工後の加飾フィルムを金型に装着する。そして、加飾フィルムのインク層の表面に向けて溶融した樹脂を射出し、樹脂と加飾フィルムとを一体化させる射出成形を行う。これにより、射出成形品が製造される。
従来より、アクリル樹脂を用いたインクは知られており、耐熱性を有し、インク流れが生じにくい点で有利とされている。しかし、アクリル樹脂は耐熱性が高いがゆえに硬くて脆い性質を有しており、インク層とした場合にひび割れ(クラックともいう。)が生じやすい。そのため、アクリル樹脂を用いた組成では、クラックが生じ難い加工適性が得られ難く、しかも異物除去作業に用いられるアルコールに対する耐溶解性(耐アルコール性)にも劣る傾向にあった。
このような状況に鑑み、本発明のインク用バインダー組成物では、重合体を用いつつも、架橋剤として選択的に金属キレート化合物を適用して架橋を行うことにより、高温時の弾性と粘性とが上がり、耐熱性と加工性との両立が可能である。インク用バインダー組成物に金属キレート化合物を用いるため、金属キレート化合物以外の架橋剤を用いた組成に比べ、粘性と弾性とのバランスが良好となり、耐熱性と加工性とを両立しやすい。
本発明のインク用バインダー組成物は、重合体に対する金属キレート化合物の割合が2質量%〜20質量%であるので、架橋密度を適切な範囲に調整することができ、インク流れが生じて耐熱性が悪化したり、クラックが生じて加工性が悪化するのを防ぐことができる。
更に、本発明のインク用バインダー組成物では、金属キレート化合物との反応点であるカルボキシ基を有する単量体の量と、カルボキシ基よりも反応性が低い又は反応性を有しない極性基を有する単量体の量と、の間のバランスを図ることによって、高温時の弾性と粘性をともに高めることができる。この点も、耐熱性と加工性との両立に寄与している。
上記に加えて、重合体の構成単位として、環状構造を有する単量体に由来の構成単位を40モル%以上の割合で含むので、重合体の疎水性が高められ、耐アルコール性が向上するものと考えられる。
[重合体]
本発明のインク用バインダー組成物は、重合体の少なくとも一種を含有する。特定構造を有する重合体を含むことにより、高温時の弾性及び粘性をともに高くすることができ、耐熱性と加工性とを両立できる。
本発明における重合体は、環状構造を有する単量体に由来の構成単位Aと、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位Bと、カルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cと、を含み、かつ、構成単位Aの含有率が全構成単位に対して40モル%以上であり、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位の含有率は3モル%以上であり、カルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位の含有率は3モル%以上であり、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率の合計は10モル%以上である。
また、重合体は、上記に加えて、必要に応じて、更に他の単量体由来の構成単位を含んでいてもよい。
本発明における重合体においては、疎水性を示す構造として、環状構造を有する単量体に由来の構成単位Aを一定比率含むことで、優れた耐アルコール性を具えており、かつ、反応点であるカルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位Bと、カルボキシ基よりも低反応性又は非反応性の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cと、の量的バランスが図られていることで、高温時の弾性と粘性とが高められ、耐熱性と加工性とが両立されている。
本発明における重合体は、後述する構成単位A〜C及び必要に応じて構成単位Dとして任意の構成単位を選択すればよい。中でも、本発明における重合体としては、後述する構成単位A〜Cの少なくとも一部が、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位である(メタ)アクリル系重合体を好適に用いることができる。
なお、重合体において、各構成単位の含有比率は、構成単位ごとにモル%の値にて表記する。
−環状構造を有する単量体に由来の構成単位A−
本発明における重合体は、環状構造を有する単量体に由来の構成単位A(以下、単に「構成単位A」ともいう。)を含む。なお、構成単位Aは、カルボキシ基を含む極性基を含まない単位であり、後述する構成単位B及び構成単位Cを含まない。
構成単位Aは、環状構造を有する単量体に由来して派生する構成単位であれば、特に制限されるものではなく、環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来して派生する構成単位、環状構造を有するビニル単量体に由来して派生する構成単位等が好適に挙げられる。
環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、芳香環構造又は脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。中でも、耐アルコール性をより効果的に向上させ得る点で、脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルの例を以下に示す。
芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド(EO)変性クレゾール、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド(EO)変性ノニルフェノール、(メタ)アクリル酸ビフェニル等が挙げられる。
また、脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル(CHMA)、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
環状構造を有するビニル単量体としては、例えば、芳香族ビニル単量体が挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン等が挙げられる。
本発明における重合体の構成単位Aとしては、脂環構造を有する単量体に由来する構成単位が好ましい。脂環構造を有する単量体に由来する構成単位を含むことで、重合体の疎水性が高められ、耐アルコール性により優れたインク層が得られる。
構成単位Aは、全構成単位に対して40モル%以上の範囲で含まれる。
環状構造を有する単量体に由来の構成単位Aが全構成単位に対して40モル%以上含まれると、重合体の疎水化が図れるのみならず、重合体の溶剤溶解性を著しく低下させることなく、重合体の耐アルコール性を効果的に向上させることができる。重合体の疎水化の観点では、例えば長鎖アルキル基を有する単量体を用いて重合体を疎水化する方法も提案されているが、長鎖アルキル基を重合体に導入する方法では、重合体の疎水化に寄与こそするものの、重合体自体の溶剤溶解性を大きく損なう傾向がある。したがって、環状構造を有する単量体に由来する構造を重合体に導入することが、重合体の耐アルコール性の向上に適している。
構成単位Aの含有率としては、圧縮成形時の加工性の観点から、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましい。
−カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位B−
本発明における重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位B(以下、単に「構成単位B」ともいう。)を含み、構成単位Bの含有率は、重合体中の全構成単位に対して3モル%以上である。カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位Bの含有率が3モル%以上であると、金属キレート化合物との反応点が保て、架橋密度が高められる。そのため、インク流れの発生が抑えられ、耐熱性を向上させることができる。
なお、構成単位Bには、上記の構成単位A及び構成単位Cは含まれない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
本発明における重合体における、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位Bの含有率は、インク層を形成した際の耐熱性をより高める点から、重合体中の全構成単位に対して、4モル%以上であることが好ましく、7モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることがさらに好ましい。また、構成単位Bの含有率は3モル%以上であれば特に制限はないが、インク層を形成した際の加工性を好適に維持し、かつ、他の構成単位、特に後述する構成単位Cとのバランスをとる観点から、30モル%以下であることが好ましい。
重合体における、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位Bは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
−カルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位C−
本発明における重合体は、カルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位C(以下、単に「構成単位C」ともいう。)を含み、構成単位Cの含有率は、重合体中の全構成単位に対して3モル%以上である。カルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cの含有率が3モル%以上であると、金属キレート化合物との反応点が保て、架橋密度が高められる。そのため、インク流れの発生が抑えられ、耐熱性を向上させることができる。
なお、構成単位Cには、上記の構成単位A及び構成単位Bは含まれない。
カルボキシ基以外の極性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、アミド基などが含まれる。
カルボキシ基以外の極性基を有する単量体としては、例えば、水酸基を有する単量体、及びアミノ基又はアミド基を有する単量体が挙げられ、好ましくは、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、及びアミノ基又はアミド基を有する(メタ)アクリル系単量体が挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、例えば、他の単量体との相溶性及び共重合性が良好である点、並びに透明フィルムなどの被印刷基材との密着性が良好である点から、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルが好ましく、炭素数2〜5のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルがより好ましく、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルがさらに好ましい。
水酸基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEMA)、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、メタリルアルコールが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。
アミノ基又はアミド基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(DEMA)、(メタ)アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチル,N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
アミノ基又はアミド基を有する単量体の中でも、インク層を形成した際、被印刷基材に対する密着性がより高まる点から、アミノ基を有する単量体が好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(DEMA)、(メタ)アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピルが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチルが好ましい。
重合体における、カルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cの含有率は、インク層と、透明フィルムなどの被印刷基材との密着性を高める点から、全構成単位に対して5モル%以上であることが好ましく、8モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることがさらに好ましい。また、構成単位Cの含有率は、3モル%以上であれば特に限定されないが、他の構成単位、特に構成単位Bとのバランスをとる点から、50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。
重合体における、アミノ基又はアミド基を有する単量体(好ましくは、アミノ基を有する単量体)に由来の構成単位C’の含有率は、インク層を形成した際の加工性をより高める点から、全構成単位に対して0.3モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることがより好ましい。また、構成単位C’の含有率は、重合時の作業性およびインクとした際の粘度調整の容易さの点から、1.0モル%以下であることが好ましく、0.8モル%以下であることがより好ましい。
重合体における、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率の合計は、重合体中の全構成単位に対して、10モル%以上である。構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率の合計が10モル%を下回ると、弾性と粘性のバランスが崩れ、耐熱性と加工性が低下する。すなわち、インク層を形成した場合、高温時の弾性及び粘性をともに高くすることができ、耐熱性と加工性との両立が可能になる。構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率の合計としては、上記と同様の理由から、30モル%以上が好ましい。
さらに、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率の合計は、インク層を形成した際の耐熱性及び加工性を好適に維持し、かつ、構成単位A、構成単位B、及び構成単位Cのバランスをとる観点から、重合体中の全構成単位に対して、50モル%以下であることが好ましく、45モル%以下であることがより好ましい。
また、インク用バインダー組成物における、構成単位Bに対する構成単位Cの含有比率(構成単位C/構成単位B)としては、モル基準で0.5〜10が好ましい。これにより、インク層を形成した場合における延伸時のインク層の追従が良好となり、耐熱性及び加工性がより高まる。中でも、上記と同様の理由から、構成単位C/構成単位Bの比率は、0.5〜8.5がより好ましい。
−(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構成単位D−
本発明における重合体は、上記した構成単位A〜Cに加え、更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構成単位D(以下、単に「構成単位D」ということがある。)を含んでもよい。
なお、構成単位Dには、上記の構成単位A、構成単位B、及び構成単位Cは含まれない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基が直鎖状又は分枝状である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
アルキル基が直鎖状又は分枝状である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、より好ましくはアルキル基の炭素数が1〜8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
アルキル基が直鎖状又は分枝状である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、単独重合体(ホモポリマー)としたときのガラス転移温度が−40℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び単独重合体としたときのガラス転移温度が50℃以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構成単位が重合体に含まれることにより、インク層を形成した際の耐熱性と加工性とのバランスが良好となるように、重合体のガラス転移温度を調整できる。単独重合体としたときのガラス転移温度が−40℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル(−57℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(−76℃)が挙げられ、単独重合体としたときのガラス転移温度が50℃以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル(103℃)が挙げられる。
重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位Dの含有率は、特に限定されないが、インク層を形成した際の耐熱性と加工性とのバランスの観点から、全構成単位に対して、30モル%以下が好ましく、1.0モル%〜20モル%がより好ましく、1.0モル%〜15モル%が更に好ましい。重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位Dは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
−他の単量体由来の構成単位−
本発明における重合体は、上記の構成単位A〜D以外に、他の共重合性単量体に由来する構成単位を更に含んでいてもよい。
他の共重合性単量体としては、例えば、シアン化ビニル単量体、カルボン酸ビニル単量体、これらの各種誘導体が挙げられる。
シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。
カルボン酸ビニル単量体としては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、「バーサチック酸ビニル」(商品名、ネオデカン酸ビニル)が挙げられる。
本発明における重合体の重量平均分子量(Mw)には、特に制限はないが、インク層を形成した場合の耐熱性を高める観点から、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、50000以上がさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は、インク層を形成した場合の耐熱性と加工性とのバランスを図る観点から、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましく、300000以下がさらに好ましい。
重量平均分子量は、重合反応温度、時間、有機溶媒の量などにより調整することができる。
本発明における重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記(1)〜(3)にしたがって測定される値である。
(1)重合体溶液を剥離フィルムに塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状の重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2質量%になるように溶解させる。
(3)以下の条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算値として重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
<条件>
・GPC:HLC−8220 GPC〔東ソー株式会社製〕
・カラム:TSK−GEL GMHXL4本使用
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:0.6ml/min
・カラム温度:40℃
本発明における重合体のガラス転移温度(Tg)は、20℃以上であることが好ましい。これにより、インク用バインダー組成物は、インク層を形成した際に、インク流れの発生が抑制され、耐熱性に優れたものとなる。加えて、後述する射出成形用のフィルムにインク用バインダー組成物を印刷、乾燥させた後、フィルムを積み重ねて保管する際、ブロッキングと呼ばれる印刷部と別のフィルムとが密着してしまう不具合を抑制できる。また、本発明における重合体のガラス転移温度(Tg)は、インク層を形成した際に、インク流れの発生をより好適に抑制し、耐熱性をより高める点から、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。
本発明における重合体のガラス転移温度(Tg)は、インク層を形成した際、延伸時のインク層の追従がより良好となることで加工性がより高まる点から、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
本発明における重合体のガラス転移温度(Tg)は、下記式の計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値である。なお、絶対温度(K)から273を引くことで絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算可能であり、セルシウス温度(℃)に273を足すことでセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に換算可能である。
式中、Tg、Tg、・・・・・及びTgは、単量体1、単量体2、・・・・・及び単量体nそれぞれの単量体を単独重合体としたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度である。m、m、・・・・・及びmは、それぞれの単量体のモル分率である。
なお、「単独重合体としたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度」は、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度をいう。単独重合体のガラス転移温度は、その単独重合体を、示差走査熱量測定装置(DSC)(セイコーインスツルメンツ社製、EXSTAR6000)を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られたDSCカーブの変曲点を、単独重合体のガラス転移温度としたものである。
本発明における重合体の製造方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法で単量体を重合して製造できる。なお、製造後に本発明におけるインク用バインダー組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単かつ短時間で行えることから、溶液重合が好ましい。
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる等の方法を使用することができる。なお、本発明における重合体の重量平均分子量は、例えば、反応温度、時間、溶媒量、触媒の種類や量を調整することにより、所望の値に調整できる。
本発明における重合体の製造に用いられる重合用の有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物などが挙げられる。これらの有機溶媒はそれぞれ1種単独でも、2種以上混合して用いてもよい。また、重合開始剤としては、例えば、通常の重合方法で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。
[金属キレート化合物]
本発明のインク用バインダー組成物は、既述の重合体に対して所定の量に相当する金属キレート化合物を含有する。金属キレート化合物は、一種単独で含有されてもよいし、二種以上を併用してもよい。
金属キレート化合物を含有することで重合体を架橋することにより、高温時の弾性及び粘性を高め、耐熱性と加工性とを両立することができる。
金属キレート化合物は、本発明の効果が奏される化合物の中から適宜選択することができる。金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、コバルトキレート化合物等が挙げられる。中でも、アルミニウムキレート化合物が好ましい。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)が挙げられる。中でも、インク層を形成した場合の耐熱性と加工性とのバランスがより良好になる点で、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
また、アルミニウムキレート化合物としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、川研ファインケミカル株式会社製のアルミキレートD、アルミキレートA、ALCH−TRが挙げられる。
金属キレート化合物の含有量は、重合体100質量部に対して、2質量部〜20質量部である。金属キレート化合物の含有量が上記範囲内であると、架橋密度を適切な範囲に調整できる。金属キレート化合物の含有量が2質量部を下回ると、架橋密度が上がらず、インク流れが生じて耐熱性が悪化する。また、金属キレート化合物の含有量が20質量部を越えると、架橋密度が上がり過ぎてインク層の粘性が下がり、クラックが発生しやすくなり、加工性は低下する。
金属キレート化合物の含有量としては、重合体100質量部に対して、5質量部〜20質量部が好ましく、7質量部〜20質量部がより好ましい。
[他の成分]
本発明のインク用バインダー組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲内において、重合体及び金属キレート化合物以外の他の成分を更に含んでもよい。
他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、金属キレート化合物以外の架橋剤、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤等が挙げられる。
〜インク用バインダー組成物の物性〜
本発明のインク用バインダー組成物の、架橋後におけるゲル分率は、架橋時における架橋密度を高めてインク流れの発生を抑制する観点から、73%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。
なお、架橋後におけるゲル分率は、酢酸エチルを抽出溶媒として用いて測定される、溶媒不溶分の割合であり、以下の実施例に記載する方法により測定される値である。
インク用バインダー組成物では、インク層とした場合の耐熱性をより高めるため、架橋後における250℃の貯蔵弾性率(E’)は、4.0×10Pa以上が好ましく、5.0×10Pa以上がより好ましく、6.0×10Pa以上がさらに好ましい。また、インク用バインダー組成物の、架橋後における250℃の貯蔵弾性率(E’)は、3.0×10Pa以下が好ましく、2.0×10Pa以下がより好ましい。
インク用バインダー組成物の、架橋後における250℃の損失弾性率(E’’)は、インク層とした場合の加工性をより高めるため、3.0×10Pa以上が好ましく、3.5×10Pa以上がより好ましく、4.0×10Pa以上がさらに好ましい。また、インク用バインダー組成物の、架橋後における250℃の損失弾性率(E’’)は、9.0×10Pa以下が好ましく、8.0×10Pa以下がより好ましい。
上記の貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E’’)は、以下の方法で測定される値である。
インク用バインダー組成物を、剥離フィルムの離型剤処理面に塗布し、剥離フィルム上に塗布されたバインダー組成物を乾燥させ、剥離フィルム上にインク層が形成されたバインダーシートを作製する。作製したバインダーシートからバインダーを10mm×20mm幅でカットし、カットしたバインダーを二つ折りにして5mm幅にした試料を用い、動的粘弾性測定装置Rheogel−E4000(株式会社ユービーエム製)にて貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E’’)を測定する。測定条件を以下に示す。得られた測定値から損失正接(tanδ=E’’/E’)を求める。
<条件>
・測定長さ:10mm
・測定モード:引っ張り
・温度条件:10℃〜280℃
・昇温速度:5℃/min
・周波数:10Hz
インク用バインダー組成物の、架橋後における250℃の損失正接(tanδ=E’’/E’)は、インク層とした場合の耐熱性及び加工性のバランスを図る観点から、2.0×10−2〜2.0×10−1が好ましく、2.0×10−2〜9.5×10−2がより好ましい。
<インク用材料セット>
本発明のインク用材料セットは、環状構造を有する単量体に由来の構成単位A、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位B、及びカルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cを含み、かつ、前記構成単位Aの含有率が、全構成単位に対して、40モル%以上であり、前記構成単位Bの含有率及び前記構成単位Cの含有率が、全構成単位に対してそれぞれ3モル%以上であり、前記構成単位Bの含有率及び前記構成単位Cの含有率の合計が、全構成単位に対して10モル%以上である重合体を含む第1の材料と、前記重合体100質量部に対する比率が2質量部以上20質量部以下である金属キレート化合物を含む第2の材料と、を有する。
既述の重合体を含む第1の材料と、所定量の金属キレート化合物を含む第2の材料と、を用いてインク層を形成すると、高温時の弾性及び粘性をともに高くすることができ、耐熱性と加工性とを両立できる。
本発明のインク用材料セットは、重合体を含む材料と、金属キレート化合物を含む材料と、の2つの材料を有する点で、既述のインク用バインダー組成物と区別される。
<インク>
本発明のインクは、既述のインク用バインダー組成物と、有機溶媒と、を含有する。これにより、インク層を形成した場合に、高温時の弾性及び粘性をともに高くすることができ、耐熱性と加工性とを両立できる。
インクは、射出成形用のフィルムに用いられるものであってもよく、例えば、射出成形用のフィルムに印刷され、射出成形品を製造するために用いられるものであってもよい。
[有機溶媒]
本発明のインクは、有機溶媒を含む。有機溶媒を含むことにより、透明フィルムなどの被印刷基材に対する塗布性が向上する。
有機溶媒としては、特に制限はなく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンに代表される炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパンに代表されるハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコールに代表されるアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランに代表されるエーテル系溶媒、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンに代表されるケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸エチルに代表されるエステル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルに代表されるポリオール系溶媒、並びにこれらの誘導体等が挙げられる。
なお、本発明のインクは、既述の重合体の重合溶媒として用いられる有機溶媒を含んでいてもよい。本発明のインクが有機溶媒を含むことにより、被印刷基材に対する塗布性を向上させることができる。本発明のインクに含まれる有機溶媒は、既述の(メタ)アクリル系重合体における重合溶媒と同一であってもよいし異なっていてもよい。
本発明のインクは、前述のインク用バインダー組成物と同様に、その他の成分を含んでいてもよい。また、本発明におけるインクは、顔料、染料などの着色剤を含む着色インクであってもよく、着色剤を含まないクリアインクであってもよい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
<(メタ)アクリル系重合体の製造>
(製造例1)
温度計、攪拌機、及び還流冷却管を備えた反応器内に、アクリル酸n−ブチル(BA)4.8質量部、アクリル酸(AA)5.1質量部、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)18.9質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEMA)5.1質量部、メタクリル酸2(ジエチルアミノ)エチル(DEMA)0.3質量部、エチレングリコールモノフェニルエーテル99質量部、及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.02質量部を入れて混合し、反応器内を窒素置換した。その後、得られた混合物を撹拌しながら80℃まで昇温した。その温度を0.5時間保った後、アクリル酸n−ブチル(BA)9.2質量部、アクリル酸(AA)9.9質量部、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)36.1質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEMA)9.9質量部、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル(DEMA)0.7質量部、エチレングリコールモノフェニルエーテル47質量部、及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.15質量部の混合液を2.5時間にわたって逐次滴下した。
滴下終了後、1時間重合反応を行い、さらにエチレングリコールモノフェニルエーテル15質量部、及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.34質量部の混合液を1時間逐次滴下した。滴下終了後、さらに1.5時間重合反応を行った。重合反応終了後の反応混合物をエチレングリコールモノフェニルエーテルで希釈し、重合体の固形分を30質量%に調整した。
以上のようにして、(メタ)アクリル系重合体の溶液を得た。
(製造例2〜製造例6、製造例7〜製造例12)
製造例1において、(メタ)アクリル系重合体の製造に用いる単量体を下記表1に示す単量体に変更し、表1に示すガラス転移温度(Tg)及び重量平均分子量(Mw)となるように重合条件を調整したこと以外は、製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系重合体の溶液を得た。
なお、下記表1に記載の各成分の詳細は以下の通りである。
・MMA:メタクリル酸メチル
・BA:アクリル酸n−ブチル
・2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
・CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル(環状構造を有する単量体)
・St:スチレン(環状構造を有する単量体)
・AA:アクリル酸(カルボキシ基を有する単量体)
・2HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(カルボキシ基以外の極性基を有する単量体)
・DEMA:メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル(アミノ基を有する単量体)
ここで、製造例1〜製造例6は、(メタ)アクリル系重合体は、環状構造を有する単量体に由来の構成単位A、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位B、及びカルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cを含み、構成単位Aの含有率が全構成単位に対して40モル%以上であり、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率がそれぞれ3モル%以上であり、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率の合計が10モル%以上である。
これに対して、製造例7は、構成単位Aを含まず、製造例8〜9は、構成単位Aの含有率が40モル%未満である。また、製造例10は、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率の合計が10モル%未満であり、製造例11は、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率がともに3モル%未満であり、かつ、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率の合計が10モル%未満である。また、製造例12は、構成単位Bの含有率が3モル%未満である。
なお、表1に記載の組成は、構成単位ごとにモル%の値を記載している。また、表中の「−」は、該当する組成を含まないことを意味する。
(実施例1)
上記の製造例1で得た(メタ)アクリル系重合体の溶液333質量部(重合体の固形分30質量%(100質量部))と、金属キレート化合物としてアルミキレートD(川研ファインケミカル株式会社製のアルミニウムキレート:アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)76質量%イソプロパノール溶液)9.6質量部と、アセチルアセトン(有機溶媒)9.6質量部と、を充分に撹拌混合し、バインダー組成物を調製した。調製されたバインダー組成物に有機溶媒を加えることで、インクとして好ましく用いられる。
なお、バインダー組成物中の金属キレート化合物の含有量は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して7.3質量部である。
上記で得たバインダー組成物を用い、以下の手順でバインダーシートを作製した。
まず、シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルムの離型剤処理面に、乾燥後の塗布量が30g/mになるようにバインダー組成物を塗布した。次いで、剥離フィルム上に塗布されたバインダー組成物を、熱風循環式乾燥機を用いて80℃で1時間乾燥させることにより、剥離フィルム上にインク層を形成し、バインダーシートとした。
(実施例2)
実施例1において、上記の製造例1で得た(メタ)アクリル系重合体の溶液に代えて上記の製造例2で得た(メタ)アクリル系重合体の溶液をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、バインダー組成物を調製し、バインダーシートを作製した。
(実施例3〜4)
実施例1において、架橋剤である金属キレート化合物の添加量を7.3質量部から19.7質量部又は2.3質量部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バインダー組成物を調製し、バインダーシートを作製した。
(実施例5〜8)
実施例1において、上記の製造例1で得た(メタ)アクリル系重合体の溶液に代えて上記の製造例3〜6で得た(メタ)アクリル系重合体の溶液をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、バインダー組成物を調製し、バインダーシートを作製した。
(比較例1〜3、6〜8)
実施例1において、上記の製造例1で得た(メタ)アクリル系重合体の溶液に代えて上記の製造例7〜12で得た(メタ)アクリル系重合体の溶液をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、バインダー組成物を調製し、バインダーシートを作製した。
(比較例4〜5)
実施例1において、架橋剤である金属キレート化合物の添加量を7.3質量部から1.8質量部又は22.0質量部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バインダー組成物を調製し、バインダーシートを作製した。
(比較例9〜10)
実施例1において、架橋剤として、金属キレート化合物7.3部を下記のイソシアネート系架橋剤10.0部(固形分換算)又はエポキシ系架橋剤2.5部(固形分換算)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、バインダー組成物を調製し、バインダーシートを作製した。
・イソシアネート系架橋剤:コロネートL−45E、東ソー社製
・エポキシ系架橋剤:TETRAD−CS、三菱ガス化学社製
(評価)
上記の実施例及び比較例で得られたバインダー組成物及びバインダーシートについて、以下の測定及び評価を行った。測定及び評価の結果は、下記表2に示す。
なお、表2に記載の「質量部」は固形分換算の値であり、(メタ)アクリル系重合体のMw及びTgは、既述の方法により求めた。
−1.ゲル分率の測定−
下記(1)から(3)の操作を行ない、下記式(A)からバインダー組成物のゲル分率(質量%)を算出した。
(1)バインダーシートの片面の剥離フィルムを剥離した後、バインダー約0.5gを精秤した250メッシュの金網(100mm×100mm)で包み、抽出用試料とした。この抽出用試料の質量(金網及びバインダーの総質量)を精密天秤にて測定した。
(2)抽出溶媒として酢酸エチル80gが入ったガラス瓶の中に、抽出用試料を入れて3日間浸漬した。
(3)浸漬終了後、抽出用試料を取り出して少量の酢酸エチルで洗浄し、120℃で24時間乾燥させた。この乾燥後の抽出用試料の質量(金網及びバインダーの不溶分の総質量)を精密天秤にて測定した。
ゲル分率(質量%)=[(Z−X)/(Y−X)]×100 ・・・(A)
X:金網の質量(g)
Y:抽出用試料の質量(金網及びバインダーの総質量;g)
Z:浸漬後、乾燥させた抽出用試料の質量(金網及びバインダーの不溶分の総質量;g)
−2.粘弾性(E’、E’’)の測定−
バインダーシートよりバインダーを10mm×20mm幅でカットし、カットしたバインダーを二つ折りにして5mm幅にした試料を、動的粘弾性測定装置Rheogel−E4000(株式会社ユービーエム製)にて、以下の条件で貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E’’)を測定し、損失正接(tanδ=E’’/E’)を求めた。表2には、温度250℃のときのE’、E’’及びtanδを示した。
<条件>
・測定長さ:10mm
・測定モード:引っ張り
・温度条件:10℃〜280℃
・昇温速度:5℃/min
・周波数:10Hz
−3.耐アルコール性−
上記の実施例及び比較例で得られたバインダー組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに乾燥後の塗布量が30g/mになるように塗布し、PETフィルムに塗布されたバインダー組成物を、熱風循環式乾燥機を用いて80℃で1時間乾燥させることにより、PETフィルム上にインク層が配置された評価用シートを作製した。次いで、評価用シートのインク層の表面を、メタノールが含浸された綿棒で20回往復して擦り、擦ったインク層の表面のタック性を指触にて下記の評価基準にしたがって評価した。
評価基準のうち、ランクAが許容範囲である。
なお、タック性により、アルコールに対する溶けやすさの程度を評価できる。タック性とは、インク層の擦過部に触れて指を移動させた場合の粘着感の程度をいう。
<評価基準>
A:擦過直後のタック性はみられない。
B:擦過直後はタック性がみられるが、30秒後にはタック性が消えている。
C:擦過直後のみならず30秒後もタック性がみられる。
−4.耐熱性及び加工性−
上述の測定方法により得られた貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E’’)を用い、耐熱性及び加工性を以下の基準で評価した。耐熱性及び加工性のいずれも、A,B,Cが許容範囲である。
<耐熱性の評価基準>
A:250℃のE’が6.0×10Pa以上である。
B:250℃のE’が5.0×10Pa以上6.0×10Pa未満である。
C:250℃のE’が4.0×10Pa以上5.0×10Pa未満である。
D:250℃のE’が4.0×10Pa未満である。
<加工性の評価基準>
A:250℃のE’’が4.0×10Pa以上である。
B:250℃のE’’が3.5×10Pa以上4.0×10Pa未満である。
C:250℃のE’’が3.0×10Pa以上3.5×10Pa未満である。
D:250℃のE’’が3.0×10Pa未満である。
−5.ポットライフ−
各々の実施例及び比較例における調製直後のバインダー組成物を測定サンプルとし、測定サンプルの粘度(η)をB型粘度計にて測定した。その後、測定サンプルを密閉し、23℃で24時間静置した後、再びB型粘度計を用い、静置前と同様にして測定サンプルの粘度(η)を測定した。得られた測定値から、初期粘度(η)に対する24時間静置後の粘度(η)の比率(η/η)を求め、下記の評価基準にしたがってポットライフを評価した。
<評価基準>
A:η/ηの値が1.2倍以下である。
B:η/ηの値が1.2倍より大きく、かつ、2倍以下である。
C:η/ηの値が2倍より大きい。
表2に示すように、実施例で得られたバインダー組成物は、耐熱性が高く、圧縮成形時の加工性に優れ、耐アルコール性にも優れるものであった。
これに対して、比較例で得られたバインダー組成物は、いずれも耐熱性、圧縮成形時の加工性、及び耐アルコール性の全てを満足するものではなかった。具体的に以下に示す。
環状構造を有する単量体に由来の構成単位Aの含有率が40モル%未満である比較例1〜3では、いずれも耐アルコール性が著しく劣っていた。
架橋剤として用いた金属キレート化合物の添加量が少なくなり過ぎると、比較例4のように耐アルコール性及び耐熱性が劣っていた。また、金属キレート化合物の添加量が多過ぎると、比較例5のように所望とする加工性を保つことができなかった。
また、構成単位B,Cの量的関係について、構成単位Bの含有率及び構成単位Cの含有率、並びに構成単位B及び構成単位Cの合計含有率が低い比較例6〜7では、耐アルコール性に劣り、かつ、耐熱性及び加工性も悪化した。構成単位Bの含有率が3モル%に満たない、つまり酸基の量が少ない比較例8では、耐熱性及び加工性が著しく低下した。
また、架橋剤として金属キレート化合物以外の化合物を用いた比較例9〜10では、加工性、ポットライフが劣る結果となった。

Claims (10)

  1. 環状構造を有する単量体に由来の構成単位A、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位B、及びカルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cを含み、前記構成単位Aの含有率が、全構成単位に対して40モル%以上であり、前記構成単位Bの含有率及び前記構成単位Cの含有率が、全構成単位に対してそれぞれ3モル%以上であり、かつ、前記構成単位Bの含有率及び前記構成単位Cの含有率の合計が、全構成単位に対して10モル%以上である重合体と、
    前記重合体100質量部に対する含有量が2質量部以上20質量部以下である金属キレート化合物と、
    を含むインク用バインダー組成物。
  2. 前記構成単位Bに対する前記構成単位Cの含有比率が、モル基準で0.5以上10以下である請求項1に記載のインク用バインダー組成物。
  3. 前記金属キレート化合物が、アルミニウムキレート化合物である請求項1又は請求項2に記載のインク用バインダー組成物。
  4. 前記アルミニウムキレート化合物が、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)である請求項3に記載のインク用バインダー組成物。
  5. 前記重合体のガラス転移温度が、70℃以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインク用バインダー組成物。
  6. 前記カルボキシ基以外の極性基を有する単量体の少なくとも一種が、アミノ基を有する単量体である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインク用バインダー組成物。
  7. 環状構造を有する単量体に由来の構成単位A、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位B、及びカルボキシ基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位Cを含み、前記構成単位Aの含有率が、全構成単位に対して40モル%以上であり、前記構成単位Bの含有率及び前記構成単位Cの含有率が、全構成単位に対してそれぞれ3モル%以上であり、かつ、前記構成単位Bの含有率及び前記構成単位Cの含有率の合計が、全構成単位に対して10モル%以上である重合体を含む第1の材料と、
    前記重合体100質量部に対する比率が2質量部以上20質量部以下である金属キレート化合物を含む第2の材料と、
    を含むインク用材料セット。
  8. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインク用バインダー組成物と、有機溶媒と、を含むインク。
  9. 更に、着色剤を含む請求項8に記載のインク。
  10. 射出成形用のフィルムに用いられる請求項8又は請求項9に記載のインク。
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