《シート1の概略構成について》
始めに、実施例1のスライドレール装置M(乗物用スライドレール装置)が適用されたシート1の構成について、図1〜図25を用いて説明する。本実施例のシート1は、図1〜図3に示すように、右ハンドル車の運転席として構成されている。上記シート1は、着座乗員の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭凭れ部となるヘッドレスト4と、を備えている。上記シートクッション3は、車両のフロアF(本発明の「乗物本体」に相当する。)上に、上記スライドレール装置Mを構成する左右一対のスライドレール10を間に介して連結された状態とされている。また、シートバック2は、上述したシートクッション3の後端部に図示しないリクライナを間に介して連結された状態とされている。また、ヘッドレスト4は、シートバック2の上部に装着されて設けられている。
ここで、以下の説明において、「シート幅方向」という場合には、シート1の横幅方向(左右方向)を指している。また、「車幅方向」という場合には、車両の横幅方向(左右方向)を指しており、「車幅方向の内側」という場合にはシート1の左側、すなわち図示しない助手席のある側を指し、「車幅方向の外側」という場合にはシート1の右側、すなわち図示しない乗降ドアのある側を指している。
上述したシート1は、その初期状態では、上述した各スライドレール10のスライドがロックされた状態に保持されていることにより、フロアF上における前後方向の位置(以下、「シートポジション」)が固定された状態として保持されている。上述した各スライドレール10は、図3に示すように、シートクッション3の前下部に設けられたループハンドル5が引き上げられる操作によって、それらのスライドのロックされた状態が一斉に解除されて、シートポジションの調節を行える状態へと切り換えられるようになっている。そして、各スライドレール10は、シートポジションの調節後にループハンドル5の操作を戻すことにより、再びスライドがロックされた状態へと戻されるようになっている。
また、上述した各スライドレール10は、図1に示すように、シートクッション3の車幅方向の外側(右側)の側部に設けられたメモリレバー6が引き上げられる操作によっても、それらのスライドのロックされた状態が一斉に解除されるようになっている。その際には、各スライドレール10は、メモリレバー6の操作が戻されたとしても、上記スライドレール装置Mを構成する後述するメモリ機構20によってそれらのスライドのロック解除された状態が保持され続けるようになっている。そして、各スライドレール10は、上記メモリレバー6の操作後には、シートポジションを自由に動かせられる状態となって、シートポジションを図1の仮想線で示すリヤモースト付近の係止位置か、実線で示す変更前の位置か、のどちらかの位置まで移動させなければ、それらのスライドのロック解除された状態が保持され続ける構成とされている。
すなわち、各スライドレール10は、上述したメモリレバー6の操作によってスライドのロックが解除された時には、後述するメモリ機構20の働きによって、シートポジションの変更前の位置が記憶された状態として、シートポジションを図1の仮想線で示すリヤモースト付近の係止位置か、実線で示す変更前の位置か、のどちらかでしか基本的にはスライドのロックが行われない状態(メモリ状態)へと切り換えられるようになっている。このような構成とされていることにより、各スライドレール10は、シートポジションを前側に詰めたドライビングポジション(実線位置)で使用していた状態から、メモリレバー6の操作を行うことにより、リヤモースト付近の乗降動作のしやすい位置(仮想線位置)へと一気に後退させて、その位置で一旦ロックさせておく、といった使用が行えるようになっている。
そして、各スライドレール10は、上記リヤモースト付近の位置(仮想線位置)で一旦ロックされた状態から、メモリレバー6の再度の操作を行うことにより、再び、シートポジションを上記リヤモースト付近の位置(仮想線位置)、或いは実線で示す変更前の位置のどちらかでしかスライドのロックが行われない状態(メモリ状態)へと切り換えられるようになっている。各スライドレール10は、このような構成とされていることにより、上述したリヤモースト付近の位置(仮想線位置)にロックされていた状態から、メモリレバー6の再操作を行うことでシートポジションを先の変更前のドライビングポジション(実線位置)まで一気に前進させて、その位置にロックさせた状態に復帰させるといった使用が行えるようになっている。
上記の流れをまとめると、上述したメモリレバー6の操作によるシートポジションの一時的な後退移動と、後退後の変更前のドライビングポジションへの復帰動作は、次の手順によって行われるようになっている。先ず、シート1がドライビングポジション等の任意の使用位置(実線位置)にある状態から、メモリレバー6の引き上げ操作を行う(図1の丸付き数字1)。次に、シートポジションを後退させてその移動が係止されるリヤモースト付近の位置(仮想線位置)まで移動させる(図1の丸付き数字2)。これにより、シートポジションが上記リヤモースト付近の位置(仮想線位置)で自動的にロックされるため、シート1の前側に広い乗降スペースが確保された状態となって、乗降動作を簡便に行うことができる状態となる。なお、上記シートポジションが係止されるリヤモースト付近の位置(仮想線位置)は、シートバック2が車両のBピラーBPと前後方向の位置が概ね重なる状態となる位置に設定されている。
次に、上記シートポジションがリヤモースト付近の位置(仮想線位置)にロックされている状態から、ドライバがシート1に乗車するなどした後に、再びメモリレバー6の引き上げ操作を行う(図1の丸付き数字3)。そして、シートポジションを前進させてその移動が係止される変更前のドライビングポジション等の使用位置(実線位置)まで移動させる(図1の丸付き数字4)。これにより、シートポジションが変更前のドライビングポジション等の使用位置(実線位置)で自動的にロックされるため、結果的に、使用位置の微調整を行うことなく、シートポジションを変更前の位置に簡便に復帰させることができる。
また、上述した各スライドレール10は、図2に示すように、上述したメモリレバー6の操作によってシートポジションの変更前の位置が記憶されている状態(メモリ状態)において、任意の位置でループハンドル5の引き上げ操作を行うことにより、上記スライドレール装置Mを構成する後述するキャンセル機構30の働きによって上述したメモリ機構20によるロックの解除保持状態がキャンセルされて、シートポジションをその位置でロックした状態にすることができるようになっている。各スライドレール10は、このような構成とされていることにより、メモリレバー6の操作によってシートポジションを図1で前述した2つの位置のどちらかでしかロックできない状態(メモリ状態)とされたとしても、必要時にはループハンドル5の操作を行うのみで適宜簡便にメモリ状態をキャンセルして、シートポジションを任意の位置にロックさせることができるようになっている。
なお、図1〜図2に示す各図では、上述したシート1がメモリレバー6の操作によってメモリ状態とされている状態をシート1に薄く色を塗った状態によって表し、シート1がループハンドル5の操作によってメモリ状態のキャンセルされた状態をシート1に色を塗らない状態によって表している。
上述した各スライドレール10は、図2で上述したループハンドル5の操作によってメモリ状態がキャンセルされたとしても、そこから再度のメモリレバー6の操作を行うことによって、上述したキャンセル操作が行われる前のメモリ状態へと戻されるようになっている。このような構成とされていることにより、各スライドレール10は、上述したループハンドル5の操作によってメモリ状態が一旦キャンセルされたとしても、そこから再度のメモリレバー6の操作を行うことによって、メモリ状態をキャンセル前の状態へと戻して、シートポジションを変更前のドライビングポジション等の使用位置(実線位置)へと一気に戻して復帰させられる状態とすることのできる構成とされている。
《スライドレール10の具体的な構成について》
以下、上述したスライドレール装置Mを構成する各スライドレール10、メモリ機構20、及びキャンセル機構30の具体的な構成について詳しく説明していく。先ず、図4〜図5を参照しながら各スライドレール10の構成について説明する。すなわち、各スライドレール10は、フロアF上に取り付けられたロアレール11と、ロアレール11に対して前後方向にスライド可能な状態に組み付けられてシートクッション3の下部に取り付けられたアッパレール12と、これら両レール11,12間のスライドをロックするロックバネ13と、を有して構成されている。ここで、ロアレール11が本発明の「固定側レール」に相当し、アッパレール12が本発明の「可動側レール」に相当し、ロックバネ13が本発明の「ロック機構」に相当する。
上述したロアレール11は、図5に示すように、車両の前後方向に長尺な1枚の鋼等の板材が短手方向に略U字状の形に折り曲げられて形成されている。上述したロアレール11は、その前後側の各端部が、それぞれ不図示のボルト等の締結部材によりフロアF上に締結されて一体的に固定された状態とされている。上記ロアレール11は、その横断面形状が前後方向に略一様となるレール形状に形成されている。具体的には、上記ロアレール11は、フロアF上に上方側に面を向けて配設される底面部11Aと、底面部11Aの左右両側部から上方側に延びて互いに内向する側に逆U字状に曲げ返されて延びる形状とされた左右一対のロア側ひれ部11Bと、を有する横断面形状に形成されている。上記ロアレール11は、上述した底面部11Aの前後側の各端部箇所が、それぞれ、フロアF上に上方側から面当接した状態にセットされて、上方側から差し込まれる不図示のボルト等の締結部材によってフロアF上に一体的に締結された状態とされている。
上述したロアレール11の左右のロア側ひれ部11Bには、それらの逆U字状に曲げ返された先の各縁部に、後述するロックバネ13の対応する各ロック部13Cを下側から入り込ませて係合させることのできるロック溝11Cが形成されている。これらロック溝11Cは、それぞれ、各ロア側ひれ部11Bの内側に折り返されて垂下した先の各縁部に沿って、下側に開口を向けた形となって前後方向に等間隔に複数並んで形成された状態とされている。各ロア側ひれ部11Bに形成された各ロック溝11Cは、左右対称な位置に並んで形成されている。
アッパレール12は、上述したロアレール11と同様に、車両の前後方向に長尺な1枚の鋼等の板材が短手方向に略Ω字状に折り曲げられて形成されている。上述したアッパレール12は、上述したロアレール11の長手方向のどちらか一方側の開口端部からロアレール11内に差し込まれることにより、ロアレール11に対して長手方向にスライド可能な状態に組み付けられるようになっている。具体的には、アッパレール12は、その横断面形状が、上述したシートクッション3の下部に上方側に面を向けた状態となって取り付けられる天板部12Aと、天板部12Aの左右両側部から下方側に延びて互いに相反する外側にU字状に曲げ返されて延びる形状とされた左右一対のアッパ側ひれ部12Bと、を有する横断面形状に形成されている。
上述したアッパレール12は、上述したロアレール11に対して、その左右のアッパ側ひれ部12BのU字状に曲げ返された先の各端部が、ロアレール11の左右のロア側ひれ部11Bの逆U字状に曲げ返された各形状内にそれぞれ掛かり合うように長手方向に差し込まれて組み付けられている。このように組み付けられていることにより、アッパレール12は、ロアレール11に対して、上述した左右のアッパ側ひれ部12Bとロア側ひれ部11Bとの掛かり合いによって、ロアレール11に対して高さ方向とシート幅方向とにそれぞれ外れ止めされた状態に組み付けられている。詳しくは、アッパレール12は、ロアレール11との間に組み付けられた不図示の樹脂シュー及び鋼球(転動体)を介して、ロアレール11に対して高さ方向及び車幅方向のガタ付きが抑えられつつも前後方向にはスムーズにスライドすることができる状態となって組み付けられている。
ロックバネ13は、1本の鋼線材が前後方向に長尺な平面視略U字状の形に折り曲げられて形成されている。上記ロックバネ13は、その後端部13Bが、車幅方向に折り返されて前方側に折り返される折り返し部として形成されている。そして、上記ロックバネ13は、その上述した後端部13Bから前方側へと折り返されて延びる左右一対の各線部の中間部に、それぞれ、シート幅方向の両側に向かって波打ち状に張り出す形に折り曲げられたロック部13Cが形成された構成とされている。また、上記ロックバネ13の各線部の前端部13Aは、それぞれ、互いに相反する外側に折り曲げられた形状とされている。
上述したロックバネ13は、上述した各線部の前端部13Aの折り曲げられた先の各部分が、それぞれ、上述したアッパレール12の各アッパ側ひれ部12Bの側壁部の前側領域に形成された各引掛孔12Ba内に内側から押し窄められながら引掛けられることにより、各引掛孔12Ba内に回転可能にピン連結された状態として取り付けられている。また、上記ロックバネ13は、上述した後端部13Bの両角側の折り返し部分が、それぞれ、上述したアッパレール12の各アッパ側ひれ部12Bの側壁部の後側領域に形成された内側に切り起こされた形の各引掛片12Bbに上側から引掛けられることにより、各引掛片12Bbに対して回転可能にピン連結された状態として取り付けられている。
上記取り付けにより、ロックバネ13は、その左右のロック部13Cが、アッパレール12の両アッパ側ひれ部12Bの側壁部の中央領域に形成された各通し溝12C内にそれぞれ下側から通された状態として組み付けられている。そして、上記ロックバネ13は、その前端部13Aと後端部13Bとがアッパレール12に対して回転可能にピン連結された両端支持構造により、その自由状態では、上述した各ロック部13Cをバネ付勢力によりアッパレール12の各通し溝12C内に下側から入り込ませた状態として保持されるようになっている。
上述したロックバネ13は、上述したアッパレール12のロアレール11に対する前後方向のスライド位置が、各アッパ側ひれ部12Bに形成された各通し溝12Cと各ロア側ひれ部11Bに形成された各ロック溝11Cとが互いに車幅方向に並ぶ関係となる位置に合わされることにより、これら通し溝12Cとロック溝11Cとに跨って下側から通されるようになっている。このように通されることにより、上述したロックバネ13の各ロック部13Cを介して、アッパレール12のロアレール11に対する前後方向のスライドがロックされた状態として保持される。上述したアッパレール12のロアレール11に対するスライドがロックされた状態は、図9、図12、図19及び図21の各図において、ロックバネ13のロック部13Cがロアレール11のロック溝11C内に入り込んだ状態として表されている。
上述したロックバネ13は、図10及び図13に示すように、後述するキャンセル機構30を構成するメモリリンク34がループハンドル5(図10参照)の操作やメモリレバー6(図13)の操作によって下側に押し回されることにより、同メモリリンク34の解除片34Aによってロック部13Cが下側に押し撓まされて、ロアレール11のロック溝11Cから外し出されるようになっている。上記操作により、上述したロックバネ13によるアッパレール12のスライドのロック状態が解除される。したがって、上記解除操作により、アッパレール12をロアレール11に対して前後方向にスライドさせることができるようになる。その後、メモリリンク34によるロックバネ13の押し下げられた状態が解かれることにより、ロックバネ13が再び図9等の各図に示したようにバネ付勢力によってロアレール11のロック溝11C内に入り込んだ状態(ロック状態)へと戻される。
その際、図18に示すように、アッパレール12の移動させたスライド位置が、ロックバネ13のロック部13Cがバネ付勢力によって上側に戻ろうとする移動先の位置にロアレール11のロック溝11Cが位置していない状態、すなわちロック溝11C間の棚面が直上に位置する状態となる時には、ロック部13Cは上記棚面に当たる位置までしか戻されずに、スライドをロックした状態とはならない。しかし、上記スライド位置からアッパレール12のスライド位置を前側にずらす(或いは後側にずらせれば後側にずらす)ことにより、上記ロック部13Cがロアレール11のロック溝11Cに位置合わせされてロック溝11C内に入り込んでロックするようになっている(図19参照)。
以上が、図4に示した各スライドレール10の具体的な構成とされている。なお、各スライドレール10のうち、車幅方向の外側(右側)に配置されたものには、後述するメモリ機構20及びキャンセル機構30が更に組み付けられている。上記構成により、車幅方向の外側のスライドレール10は、ループハンドル5の操作やメモリレバー6の操作によって、後述するキャンセル機構30を介してロックバネ13のロックの解除操作が行われるようになっている。一方で、車幅方向の内側(左側)に配置されたスライドレール10には、上述したループハンドル5やメモリレバー6の操作によってロックバネ13のロックの解除操作を行うように構成された解除部材14が、アッパレール12上に組み付けられている。
上記解除部材14は、後述するキャンセル機構30を構成するロッド32を介してメモリリンク34と一体的となって回動するように連結された構成とされている。上記構成により、解除部材14は、上述したメモリリンク34がループハンドル5(図10参照)の操作やメモリレバー6(図13)の操作によって下側に押し回される動作に合わせて同側のロックバネ13のロックの解除操作を行うように構成されている。上記構成により、各スライドレール10のロックと解除の各動作が、上述したループハンドル5の操作やメモリレバー6の操作によって左右で一斉に同期して行われるようになっている。
また、図4で上述した車幅方向の内側(左側)に配置されたスライドレール10には、アッパレール12とロアレール11との間に引張バネ15が掛着されている。上記引張バネ15により発揮されるバネ付勢力によって、両スライドレール10には、常に、アッパレール12がロアレール11に対して前側に押し動かされる方向の力が掛けられた状態とされている。したがって、各スライドレール10のスライドのロック状態を解除することにより、アッパレール12をロアレール11に対して軽い力で前側へとスライドさせることができる。
また、車幅方向の外側(右側)のスライドレール10には、同スライドレール10を前述したメモリレバー6の操作によってメモリ状態にした状態でシートポジションをリヤモースト付近の位置(図1の仮想線位置)まで後退させることで当接によって移動規制を行うストッパブラケット16が取り付けられている。上記ストッパブラケット16は、図5〜図6に示すように、L字状に折り曲げられた鋼等の板材によって形成されており、その底板部分と立板部分とがロアレール11の底面部11Aと内側(左側)のロア側ひれ部11Bの外側面部とに沿うように、ロアレール11に外付けされた状態として組み付けられている。上記ストッパブラケット16の立板部分は、ロアレール11のロア側ひれ部11Bの外側面部よりも上側に突出する位置まで真っ直ぐ張り出した形状とされている。
《メモリ機構20の具体的な構成について》
次に、図5〜図8を参照しながらメモリ機構20の構成について説明する。すなわち、メモリ機構20は、図5〜図6に示すように、大きく分けて、ロアレール11に組み付けられたメモリ体21と、アッパレール12に組み付けられたトリガ22と、によって構成されている。前者のメモリ体21は、図6〜図7に示すように、前後方向に長尺なメモリプレート21Aと、メモリプレート21Aに対して前後方向に摺動可能に組み付けられたメモリスライダ21Bと、メモリスライダ21Bに連結されてメモリプレート21Aと係脱可能な構成とされたメモリフック21Cと、を有する構成とされている。後者のトリガ22は、アッパレール12上に組み付けられたストッパリンク22Aと、ストッパリンク22Aに連結された後側用ストッパアーム22B及び操作カム22Cと、を有する構成とされている。
前者のメモリ体21は、前述したメモリレバー6の操作によってシートポジションを変更前の位置を記憶した状態で一時的に後退移動させたり、後退後に先の記憶したドライビングポジション等の変更前の位置へと復帰させたりする際に、図15に示すようにロアレール11上の定位置に残ってシートポジションの変更前の位置を記憶しておく機能を果たす部材となっている。後者のトリガ22は、前述したメモリレバー6の操作によってシートポジションの変更前の位置を記憶した状態で一時的に後退移動させたり、後退後に先に記憶したドライビングポジション等の変更前の位置へと復帰させたりする際に、図16〜図18に示すようにロアレール11の後部領域に設けられたストッパブラケット16に前側から当てられて押し回されたり、図20〜図21に示すようにメモリ体21に後側から当てられて押し回されたりして、それぞれの位置に到達したことを検知する機能を果たす部材となっている。
上述したメモリ体21の構成について更に詳しく説明すると、図5〜図6に示すように、メモリプレート21Aは、前後方向に長尺な1枚の鋼等の板材により形成されている。上記メモリプレート21Aは、高さ方向に面を向ける形でロアレール11の底面部11A上にセットされ、その前後側の各箇所がロアレール11の底面部11A上にボルト等の締結部材により締結されて一体的に固定された状態として設けられている。上記メモリプレート21A上には、高さ方向に貫通する矩形状のメモリ孔21Aaが、前後方向に等間隔に並んで複数形成された状態とされている。また、上記メモリプレート21Aの左右両側部には、これらの間に設けられるメモリスライダ21Bを左右両側から支持して前後方向にスライドさせられるようにガイドすることのできるガイドレール21Abが形成されている。
メモリスライダ21Bは、図5〜図8に示すように、上述したメモリプレート21Aよりも横幅の狭い略平板状の部材によって形成されている。上記メモリスライダ21Bは、図6〜図8に示すように、上述したメモリプレート21Aの左右両側部に形成された各ガイドレール21Ab間に前後いずれかの方向から差し込まれることにより、これらガイドレール21Abによって左右両側からガイドされた状態として、メモリプレート21Aに対して前後方向にのみ移動可能となるように剥離防止された形に組み付けられた状態とされている。上述したメモリスライダ21Bには、その前後方向の中央部に、上側に開口した受入孔21Baが形成されている。上記受入孔21Baは、図10で後述するキャンセル機構30を構成する解除リンク35がループハンドル5の操作によって下側に押し回された際に、同解除リンク35の下端部に形成された係脱片35Aを上側から受け入れて、同解除リンク35をメモリスライダ21Bと前後方向に一体的に係合させた状態にする孔として機能する構成とされている。
メモリフック21Cは、図6〜図8に示すように、上述したメモリスライダ21Bの前部箇所に、車幅方向に軸線を向ける軸ピン21Caにより回転可能にピン連結された状態として組み付けられている。上記メモリフック21Cは、上述したメモリスライダ21Bとの間に掛着された図示しないバネの付勢力により、常時は、メモリスライダ21Bに対して軸ピン21Caを中心に前回転する方向に力が掛けられた状態とされている。上記構成により、メモリフック21Cは、図9に示すように、その自由状態では、その先端部分を上述したメモリプレート21Aのいずれかのメモリ孔21Aa内に入り込ませた状態として、メモリスライダ21Bの前後方向のスライドをロックした状態に保持された状態とされている。
上記メモリフック21Cは、図10に示すように、後述するキャンセル機構30を構成する解除リンク35がループハンドル5の操作によって下側に押し回された際に、その上縁部に形成された受圧板21Cbが上記解除リンク35の下端部に形成された係脱片35Aにより下側に押し下げられるようになっている。上記動作により、メモリフック21Cは、そのメモリプレート21Aのいずれかのメモリ孔21Aa内に入り込ませていた先端部分をメモリ孔21Aaから外し出して、メモリスライダ21Bのスライドをロックしていた状態を解除するようになっている。また、上記メモリフック21Cは、上記動作後に解除リンク35による押し下げ状態が解かれることにより、バネ付勢力によって再び図9に示したメモリプレート21Aの対応するメモリ孔21Aa内に入り込んだ状態(ロック状態)に戻されるようになっている。
次に、トリガ22の構成について更に詳しく説明する。図7〜図8に示すように、ストッパリンク22Aは、車幅方向に面を向ける高さ方向に長尺な1枚の鋼等の板材により形成されている。上記ストッパリンク22Aは、その高さ方向の中間部が、車幅方向に軸線を向ける軸ピン22Aaにより、後述するキャンセル機構30を構成するベースブラケット31の後端部箇所の内面側に回転可能にピン連結された状態として設けられている。なお、上述したベースブラケット31は、図5〜図6に示すように、アッパレール12の天板部12A上に一体的にボルト等の締結部材により締結されて固定された状態として設けられる部材となっている。上述したストッパリンク22Aは、上述したベースブラケット31との間に掛着された図示しないバネの付勢力により、常時は、ベースブラケット31に対して軸ピン22Aaを中心にその下側に延び出す下部領域を前側に起こし上げる方向に力が掛けられた状態とされている。
上記構成により、ストッパリンク22Aは、図9に示すように、その自由状態では、その下側へ向かって延びる前側用ストッパアーム22Acが前側に起こし上げられるように付勢された状態として、その前側の位置にメモリスライダ21Bが隣接して位置する時には、前側用ストッパアーム22Acをメモリスライダ21Bに後側から押し当てた起立姿勢の状態として保持されるようになっている。そして、上記ストッパリンク22Aは、図15に示すように、メモリレバー6の操作によってシートポジションがメモリ体21を残して後退する時には、前側用ストッパアーム22Acがメモリ体21から後側に離間して、上述したバネ付勢力によって、前側用ストッパアーム22Acを前側に少し起こし上げた斜めの姿勢状態となって保持されるようになっている。詳しくは、上記ストッパリンク22Aは、図5〜図6に示すように、上述したアッパレール12の天板部12Aに形成された貫通孔12Aa内に高さ方向に通された状態とされて組み付けられているが、その貫通孔12Aaの後側の縁部に当たる位置まで斜めに傾けられた状態となって保持されるようになっている。
また、上記ストッパリンク22Aは、図16〜図18に示すように、上述したメモリレバー6の操作によってシートポジションが後退して、同ストッパリンク22Aに取り付けられた後側用ストッパアーム22Bがロアレール11の後部箇所に取り付けられたストッパブラケット16に前側から押し込まれる形で当てられることにより、同ストッパブラケット16の当接した前面16Aの形に沿って図9で示した状態と同じように起立した姿勢状態に変えられて保持されるようになっている。
上述した後側用ストッパアーム22Bは、図7に示すように、前後方向に面を向ける略平板状の部材によって形成されている。上記後側用ストッパアーム22Bは、前後方向に軸線を向ける軸ピン22Baにより、上述したストッパリンク22Aの上縁側の後部箇所から車幅方向の内側(左側)に折り曲げられて形成された領域部の前面側に回転可能にピン連結された状態として設けられている。上記後側用ストッパアーム22Bは、図25に示すように、上述したストッパリンク22Aとの間に掛着された図示しないバネの付勢力により、常時は、ストッパリンク22Aに対して軸ピン22Baを中心に図示反時計回り方向に回転する力が掛けられた状態とされている。
上記構成により、後側用ストッパアーム22Bは、その自由状態では、図25の実線状態で示すように、その車幅方向の内側(左側)に延出する形に形成されたストッパ片22Bbを、前述したシートポジションを後退させた時にストッパブラケット16と当接させられる軌跡上の位置に張り出させた状態として、ストッパリンク22Aとの当接により位置保持された状態とされるようになっている。上記後側用ストッパアーム22Bは、図10に示すように、後述するキャンセル機構30を構成する解除操作部材33がループハンドル5の操作によって押し回された際に、同後側用ストッパアーム22Bの車幅方向の外側(右側)の縁部から前側に折り曲げられて延びるアーム片22Bc(図7参照)が、解除操作部材33の後端側の折り曲げられた先端片33Bによって押し下げられるように動かされるようになっている。
上記動作により、後側用ストッパアーム22Bは、図25の仮想線状態で示すように、そのストッパ片22Bbがストッパブラケット16と当接する位置から上側に退けられた状態して保持された状態となる。したがって、上述したループハンドル5の操作によってシートポジションを変更する時には、シートポジションを後退させても、ストッパ片22Bbがストッパブラケット16と当たって移動規制されることがない。よって、この場合には、シートポジションをリヤモースト付近の位置(図1の仮想線位置)よりも更に後退させる位置まで移動させることができるようになる。上記後側用ストッパアーム22Bは、上述したループハンドル5の操作が戻されることにより、バネ付勢力によって再び図25の実線状態で示すストッパブラケット16と当接する関係となる位置まで戻されるようになっている。なお、上述した後側用ストッパアーム22Bは、図12〜図14に示すように、上述したメモリレバー6の操作によってメモリリンク34が操作される時には、何ら操作されないようになっている。
上述したストッパリンク22Aは、図20〜図21に示すように、上述したメモリレバー6の操作によってシートポジションを一時的に後退させた後に再び変更前の位置へと戻す動作により、その下側へ向かって延びる前側用ストッパアーム22Acが上述したメモリスライダ21Bに後側から押し当てられて、図9に示した状態と同じように起立した姿勢状態に戻されて保持されるようになっている。
操作カム22Cは、図6〜図8に示すように、車幅方向に面を向ける略平板状の部材によって形成されている。上記操作カム22Cは、車幅方向に軸線を向ける軸ピン22Caにより、上述したストッパリンク22Aの前部領域の内面側に回転可能にピン連結された状態として設けられている。また、上記操作カム22Cは、その後部箇所から車幅方向の外側(右側)に折り曲げられて形成された規制片22Cbが、ストッパリンク22Aに形成された扇形状に貫通した規制孔22Ab内に車幅方向に通された状態として組み付けられている。上記構成により、操作カム22Cは、そのストッパリンク22Aに対する回動範囲が、上記規制片22Cbが規制孔22Abの各縁部と当接する範囲内に規制された状態とされている。
上記操作カム22Cは、図9に示すように、上述したストッパリンク22Aとの間に掛着された図示しないバネの付勢力により、常時は、ストッパリンク22Aに対して軸ピン22Caを中心に図示時計回り方向に回転する力が掛けられた状態とされている。上記構成により、操作カム22Cは、その自由状態では、上述した規制片22Cbをストッパリンク22Aの規制孔22Abの下側の縁部に押し付けて移動規制された状態に保持された状態とされている。
上記操作カム22Cは、図10に示すように、後述するキャンセル機構30を構成する解除リンク35に取り付けられた保持部材36がループハンドル5の操作によって押し回された際に、その前上側へと先細り状に延びる先端側の操作突起22Ccが、保持部材36の受圧アーム36Cによって上側から押圧されて、軸ピン22Caを中心に図示反時計回り方向に押し回されるように操作されるようになっている。しかし、上記操作カム22Cは、上記の動作によって押し回される動きについては、ストッパリンク22Aに対して規制片22Cbが規制孔22Ab内で移動することができる範囲内で回転することにより、保持部材36の受圧アーム36Cによって押し動かされる操作移動量を逃がして、その後にバネ付勢力により回転位置を初期状態に戻して、保持部材36との回転位置関係を逆転させた状態をとるようになっている。
また、上記操作カム22Cは、上記動作の後、ループハンドル5の操作が戻されて保持部材36が操作前の位置に戻される時には、上記とは逆に保持部材36の受圧アーム36Cによって図示時計回り方向に押し回される力を受ける。しかし、その際には、操作カム22Cは、上記回転方向の移動が上述した規制片22Cbと規制孔22Abとの当接により規制されていることから、その先端側の操作突起22Ccによって保持部材36を押し返す形で回しながら、解除リンク35の初期位置に戻される動きに伴って、保持部材36を図9に示す操作前の位置に戻させるようになっている。
上述した操作カム22Cは、図16〜図18に示すように上述したメモリレバー6の操作によってシートポジションをリヤモースト付近の位置まで後退させた時、及び図20〜図21に示すようにシートポジションを変更前の記憶位置に戻した時に、それぞれ、後述するキャンセル機構30を構成する保持部材36を保持位置から解除させる位置まで図示時計回りに押し回すように機能するものとなっている。
すなわち、上記操作カム22Cは、常時は上述したバネ付勢力によってストッパリンク22Aに対する軸ピン22Ca回りの図示時計回り方向の回転移動が規制された状態とされている。そのため、上記操作カム22Cは、上記ストッパリンク22Aが上記各図(図16〜図18及び図20〜図21)に示したシートポジションを動かす各動作によって押し回されることにより、ストッパリンク22Aと一体的となって回転して、上述した保持部材36をキャンセル位置まで押し動かすようになっている。なお、上述した操作カム22Cも、図12〜図14に示すように、上述したメモリレバー6の操作によってメモリリンク34が操作される時には、何ら操作されないようになっている。
《キャンセル機構30の具体的な構成について》
次に、図5〜図8を参照しながらキャンセル機構30の構成について説明する。すなわち、キャンセル機構30は、図6〜図8に示すように、基台となるベースブラケット31と、ベースブラケット31に対して回転可能にピン連結されたロッド32と、ループハンドル5と一体的に取り付けられてロッド32を軸中心として回転操作される解除操作部材33と、ベースブラケット31に対して回転可能にピン連結されてメモリレバー6の操作により回転操作されるメモリリンク34と、メモリリンク34と並んでベースブラケット31に対して回転可能にピン連結されてループハンドル5の操作により回転操作される解除リンク35と、解除リンク35に取り付けられてメモリリンク34と係脱可能な構成とされた保持部材36と、メモリレバー6とメモリリンク34とを繋ぐメモリ操作ケーブル37と、を有する構成とされている。ここで、メモリ操作ケーブル37が本発明の「メモリ操作部材」に相当する。
ベースブラケット31は、車幅方向に面を向ける前後方向に長尺な1枚の鋼等の板材により形成されている。上記ベースブラケット31は、図5〜図6に示すように、その前部領域の下縁部分が車幅方向の内側(左側)に折り曲げられた形状とされて、同部分がアッパレール12の天板部12A上に当てられてボルト等の締結部材による締結により一体的に固定された状態として設けられている。また、図7〜図8に示すように、上記ベースブラケット31の後部領域の上縁部分にも、車幅方向の内側に折り曲げられた係止片31Aが形成されている。上記係止片31Aは、図9に示すように、後述する解除リンク35がバネ付勢力により図示反時計回り方向に動かされる移動を当接により規制する規制部として機能するものとなっている。
ロッド32は、図6〜図8に示すように、車幅方向に軸線を向ける1本の円鋼管材により形成されている。上記ロッド32は、その車幅方向の外側の端部に操作軸32Aが一体的に装着されて、同操作軸32Aを介してベースブラケット31の前部領域に車幅方向の内側から差し込まれて回転可能にピン連結された状態とされている。上記ロッド32の車幅方向の内側(左側)の端部は、図4で前述した解除部材14に一体的に連結されている。
解除操作部材33は、図7〜図8に示すように、前後方向に細長く延びる1枚の鋼等の板材により形成されている。上記解除操作部材33は、その前後方向の途中箇所に上述したロッド32が車幅方向に通されることにより、ロッド32に対して回転可能に軸支された状態に組み付けられた状態とされている。上記解除操作部材33は、そのロッド32に通された途中箇所から前側へと延び出る部分に、上述したループハンドル5の一端部が一体的に溶接されて組み付けられている。また、上記解除操作部材33のロッド32に通された途中箇所から後側へと延び出る部分は、車幅方向の外側(右側)にクランク状に折り曲げられた形となって後側へと延びる操作アーム33Aとして構成されている。
上記操作アーム33Aは、図9に示すように、後述する解除リンク35の下縁部に形成された車幅方向の内側(左側)へと張り出す受圧片35Dの直上位置と、後述する保持部材36に形成された車幅方向の内側へと張り出す受圧アーム36Cの直上位置と、を通って後側へと延びるように配置されている。また、図8に示すように、上記操作アーム33Aの後側へと延びた先の端部には、車幅方向の外側(右側)に折り曲げられた先端片33Bが形成されている。上記先端片33Bは、前述したメモリ機構20を構成する後側用ストッパアーム22Bに形成されたアーム片22Bcの直上位置を通るように配置されている。
上記解除操作部材33は、図9に示すように、上述したループハンドル5と図示しないシートクッション3の骨格との間に掛着された図示しないバネの付勢力により、常時は、ベースブラケット31に対してロッド32を中心に図示反時計回り方向に回転する力が掛けられた状態とされている。上記構成により、解除操作部材33は、その自由状態では、ループハンドル5が引き下げられた状態として保持される、操作アーム33Aが保持部材36や解除リンク35とは高さ方向に離間した状態となる姿勢位置に保持された状態とされている。
上記解除操作部材33は、図10に示すように、ループハンドル5が引き上げられる操作によってロッド32を中心に図示時計回り方向に回転し、上述した操作アーム33Aによって保持部材36の受圧アーム36Cや解除リンク35の受圧片35Dに上側から当接してこれらを下側へ押し回したり、先端片33Bによって後側用ストッパアーム22Bのアーム片22Bcに上側から当接してこれを下側へ押し回したりするようになっている。
詳しくは、上記解除操作部材33は、そのループハンドル5の引き上げ操作に伴う回転移動の進行によって、上述した各部材と次の順番で当接してこれらを下側へと押し回すようになっている。すなわち、解除操作部材33は、その回転移動の進行によって、先ず、図23に示すように、操作アーム33Aが保持部材36の受圧アーム36Cに当たって保持部材36を下側へと押し回す。次いで、更なる回転移動の進行によって、図24に示すように、操作アーム33Aが解除リンク35の受圧片35Dに当たって解除リンク35を下側へと押し回す。そして、そこからの更なる回転移動の進行により、図10に示すように、先端片33Bが最後に後側用ストッパアーム22Bのアーム片22Bcに当たって後側用ストッパアーム22Bを下側へと押し回す。
上記のように、解除操作部材33は、上述した各部材と順番に当接してこれらを下側へと押し回すように、これらとの高さ方向の離間幅が設定されている。このような構成とされていることにより、解除操作部材33は、図23に示すように上述した解除リンク35と当接して解除リンク35を押し回す段階となる時には、保持部材36を先に押し回して、保持部材36によるメモリリンク34の解除操作位置での保持状態を解除することができるようになっている。したがって、解除操作部材33に対し、メモリリンク34を解除操作した位置から更に解除操作方向に無理やり押し回すといった過負荷が掛からない。
メモリリンク34は、図7〜図8に示すように、車幅方向に面を向ける前後方向に長尺な1枚の鋼等の板材により形成されている。上述したメモリリンク34は、その前部領域に上述したロッド32の端部に一体的に装着された操作軸32Aが車幅方向の内側(左側)から通されて一体的に連結された状態として、同操作軸32Aを介してベースブラケット31の前部領域の内面側に回転可能にピン連結された状態として設けられている。上述したメモリリンク34のロッド32に通された前部領域から後側へ延びた先の後部領域には、下側へ向かって延びると共にその延びた先の位置に平面視U字状に折り曲げられた形とされた解除片34Aが形成されている。
上述した解除片34Aは、図6及び図9に示すように、その平面視U字状に折り曲げられた左右の各片が、前述したスライドレール10のロックバネ13の左右のロック部13Cの直上位置にそれぞれ配置された状態とされている。上記解除片34Aは、前述したループハンドル5の操作(図10参照)やメモリレバー6の操作(図13)によってメモリリンク34が下側へ押し回されることにより、上記ロックバネ13の各ロック部13Cに上側から当接してこれら下側へと押し撓ませてロアレール11のロック溝11Cから外し出すように機能するようになっている。
また、図7〜図8に示すように、上述したメモリリンク34の後部領域には、同メモリリンク34の回転中心である操作軸32Aの軸線まわりに描かれる円弧形状に湾曲した縦長形状の通し孔34Bが車幅方向に貫通した形となって形成されている。上記通し孔34Bは、後述する解除リンク35の内面側(左面側)に回転可能に取り付けられた後述する保持部材36に形成された車幅方向の外側(右側)に折り曲げられた操作片36Bを、上記解除リンク35に形成された操作孔35Bを通じて車幅方向の内側から通した状態として、保持部材36の回動範囲を規制する孔として機能するものとなっている。
上記通し孔34Bの上端側の孔領域には、その孔形状が部分的に後側に長く延び出すように延長された引き込み孔34Baが形成されている。上記引き込み孔34Baは、通し孔34Bの上端側の孔領域と共に、後ろ上側に凹となる円弧形状に湾曲した形となって形成されている。上記引き込み孔34Baの湾曲は、上述した保持部材36の操作片36Bがその回転中心である軸ピン36Aのまわりに回転する軌跡に沿った円弧形状に湾曲した形状となっている。
上記メモリリンク34は、図9に示すように、上述したベースブラケット31との間に掛着された図示しないバネの付勢力により、常時は、ベースブラケット31に対して操作軸32Aを中心に図示反時計回り方向に回転する力が掛けられた状態とされている。上記構成により、メモリリンク34は、その自由状態では、後述する解除リンク35に形成された庇片35Cを間に介して、上述したベースブラケット31の後部領域の上縁部分に形成された係止片31Aに下側から押し付けられて移動規制された状態に保持された状態とされている。
上記メモリリンク34は、図10に示すように、後述する解除リンク35がループハンドル5の操作によって操作軸32Aを中心に図示時計回り方向に回転操作されることにより、上述した解除リンク35の庇片35Cにより下側に押圧されて押し回されるようになっている。また、図13に示すように、メモリリンク34は、その上縁部分にメモリ操作ケーブル37を介して接続されたメモリレバー6が操作されることによっても、上記と同様に操作軸32Aを中心に図示時計回り方向に回転操作されるようになっている。これらの回転操作により、メモリリンク34は、その下端部に形成された解除片34Aがロックバネ13の各ロック部13Cを下側に押し撓ませて、スライドレール10のスライドのロック状態を解除するようになっている。
解除リンク35は、図6〜図8に示すように、車幅方向に面を向ける前後方向に長尺な1枚の鋼等の板材により形成されている。上述した解除リンク35は、その前部領域に上述したロッド32の端部に一体的に装着された操作軸32Aが車幅方向の内側(左側)から通されて回転可能に連結された状態として、同操作軸32Aを介してベースブラケット31の前部領域の内面側(左面側)に回転可能にピン連結された状態として設けられている。上記解除リンク35は、上述したベースブラケット31の内面側に配置されるメモリリンク34の更に内面側(左面側)に並んで配置されており、メモリリンク34と互いに同軸(操作軸32A)まわりに回転することのできる状態となって設けられている。
上記解除リンク35は、図9に示すように、上述したベースブラケット31との間に掛着された図示しないバネの付勢力により、常時は、ベースブラケット31に対して操作軸32Aを中心に図示反時計回り方向に回転する力が掛けられた状態とされている。上記構成により、解除リンク35は、その自由状態では、その後部領域の上縁部分に車幅方向の外側(右側)に折り曲げられて形成された庇片35Cが、上述したベースブラケット31に形成された係止片31Aに下側から押し付けられて移動規制された状態に保持された状態とされている。
上述した解除リンク35のロッド32に通された前部領域から後側へ延びた先の後部領域には、下側へ向かって延び出る形に突出した係脱片35Aが形成されている。上記係脱片35Aは、図10に示すように、シートポジションが、上述したメモリ機構20のトリガ22を構成するストッパリンク22Aがメモリスライダ21Bの後側に起立姿勢で押し付けられた状態となっている時には、上述した解除リンク35がループハンドル5の操作によって下側に押し回されることにより、メモリスライダ21Bの受入孔21Ba内に向かって押し込まれるように操作されるようにされている。
上記押し込まれる操作により、係脱片35Aは、上記メモリスライダ21Bの受入孔21Baの直上位置にあるメモリフック21Cの受圧板21Cbに上側から当接して、同受圧板21Cbを下側に押し込みながらそれ自体もメモリスライダ21Bの受入孔21Ba内に押し込まれるようになっている。上記押し込みにより、メモリフック21Cがメモリプレート21Aのメモリ孔21Aaから外し出されると共に、係脱片35Aがメモリスライダ21Bの受入孔21Ba内に入り込んで解除リンク35がメモリスライダ21Bと前後方向に一体的する形に係合した状態となる。
更に、上記解除リンク35は、上記のように下側に押し回される操作により、併せて、その庇片35Cの直下に位置する上述したメモリリンク34を下側へ押し込むように操作して、ロックバネ13によるスライドレール10のスライドのロック状態を解除するようになっている。したがって、図11に示すように、上記解除リンク35の操作状態を維持したまま、スライドのロック状態が解除されたシートポジションを後退させることにより、解除リンク35がメモリスライダ21Bを後側へ引き連れる形でメモリスライダ21Bを一緒に後退移動させる。また、前進移動時にも、解除リンク35がメモリスライダ21Bを前側へ引き連れる形でメモリスライダ21Bを一緒に前進移動させる。これにより、メモリスライダ21Bが、シートポジションの移動に合わせて、シートポジションの変更後の位置に対応する位置へと前後方向に動かされるようになる。
上記係脱片35Aは、上述したループハンドル5の操作が戻されて解除リンク35の操作が戻されることにより、メモリスライダ21Bの受入孔21Ba内から外し出されて、メモリフック21Cの受圧板21Cbの押し込み状態を解除する。これにより、メモリフック21Cが、再びバネ付勢力によってメモリプレート21Aの対応するメモリ孔21Aa内に入り込んだ状態(ロック状態)へと戻されるようになっている。
また、図7〜図8に示すように、上記解除リンク35の後部領域には、上述したメモリリンク34に形成された引き込み孔34Baと同じように円弧形状に湾曲した形に貫通した操作孔35Bが形成されている。上記操作孔35Bは、図9に示すように、解除リンク35及びメモリリンク34が初期位置に保持されている状態では、メモリリンク34に形成された通し孔34Bにおける引き込み孔34Baよりも下側の領域に位置して、上記通し孔34Bの下端側の孔領域と形状の一部を車幅方向に重ねた状態として、後述する保持部材36の操作片36Bを互いの重なる孔形状に跨って車幅方向に通した状態とするようになっている。
上述した解除リンク35の操作孔35Bは、前述したメモリレバー6の操作によってメモリリンク34が解除リンク35を残して単独で下側に押し回されることにより、図13〜図14に示すように、メモリリンク34がロックバネ13をロック解除位置(図12の位置)を越える位置まで押し撓ませる位置まで回転したところで、メモリリンク34の通し孔34Bの上端に形成された引き込み孔34Baと車幅方向に形状を重ねた状態をとるようになっている。そして、上記のように解除リンク35の操作孔35Bとメモリリンク34の引き込み孔34Baとが重なる状態となることにより、これらに跨って通されている後述する保持部材36の操作片36Bが、図14に示すようにバネ付勢力によって引き込み孔34Ba内に入り込む位置まで動かされるようになっている。これにより、上記保持部材36の操作片36Bを介して、メモリリンク34の解除リンク35に対する反時計回り方向の回転移動が規制された状態となり、メモリリンク34が解除操作された位置に保持された状態となる。
また、図7〜図9に示すように、上述した解除リンク35のロッド32に通された前部領域から後側へ延び出る途中領域の下縁部分には、車幅方向の内側(右側)に折り曲げられて張り出す受圧片35Dが形成されている。上記受圧片35Dは、図10に示すように、上述した解除操作部材33がループハンドル5の操作によって下側に押し回されることにより、同解除操作部材33の操作アーム33Aの下縁部が上側から押し当てられて、同操作アーム33Aによって下側に押し回される受け部として機能するものとなっている。なお、上述した解除リンク35は、図12〜図14に示すように、上述したメモリレバー6の操作によってメモリリンク34が操作される時には、何ら操作されないようになっている。
保持部材36は、図7〜図8に示すように、車幅方向に面を向ける1枚の鋼等の板材により形成されている。上記保持部材36は、上述した解除リンク35の後部領域の内面側(左面側)、詳しくは操作孔35Bの後ろ上側の内面側位置に、車幅方向に軸線を向ける軸ピン36Aにより回転可能にピン連結された状態として設けられている。上記保持部材36には、その前下側の縁部分に、車幅方向の外側(右側)に折り曲げられて張り出す操作片36Bが形成されている。また、上記保持部材36の後下側の縁部分には、車幅方向の内側(左側)に折り曲げられて張り出す受圧アーム36Cが形成されている。
上述した操作片36Bは、保持部材36の解除リンク35への組み付けに伴って、解除リンク35に形成された操作孔35Bとメモリリンク34に形成された通し孔34Bとに跨って通された状態に組み付けられるようになっている。上記組み付けにより、保持部材36は、上述した操作片36Bが解除リンク35に形成された操作孔35Bとメモリリンク34に形成された通し孔34Bとが車幅方向に重なって形成される孔形状の範囲内において、解除リンク35に対して回転することができる状態に組み付けられた状態とされている。
受圧アーム36Cは、保持部材36から車幅方向の内側(左側)に張り出して、上述した解除操作部材33の操作アーム33Aの直下位置にそのアーム形状を位置させた状態として設けられている。上記受圧アーム36Cは、図23で前述したように、上述した解除操作部材33がループハンドル5の操作によって下側に押し回されることにより、同解除操作部材33の操作アーム33Aの下縁部が上側から押し当てられて、同操作アーム33Aによって下側に押し回される受け部として機能するものとなっている。
上述した保持部材36は、図9に示すように、上述した解除リンク35との間に掛着された図示しないバネの付勢力により、常時は、解除リンク35に対して軸ピン36Aを中心に図示反時計回り方向に回転する力が掛けられた状態とされている。上記構成により、保持部材36は、解除リンク35及びメモリリンク34が初期位置に保持されている状態では、上述した操作片36Bがメモリリンク34の通し孔34Bの後側面に押し付けられた回転位置に保持された状態とされている。
上記保持部材36は、図13に示すように、前述したメモリリンク34がメモリレバー6の操作によってロックバネ13をロック解除位置を越える位置まで押し撓ませる位置まで回転させて、メモリリンク34の通し孔34Bの上端に形成された引き込み孔34Baと解除リンク35の操作孔35Bとが互いに車幅方向に形状を重ねた状態となることにより、上述した操作片36Bがバネ付勢力によって図14に示すように引き込み孔34Ba内に入り込む位置まで回転する。これにより、上記保持部材36は、上述した操作片36Bを介して、メモリリンク34の解除リンク35に対する反時計回り方向の回転移動を規制した状態となって、メモリリンク34を解除操作した位置に保持するようになっている。
上記保持部材36は、図22〜図23に示すように、上記メモリリンク34を解除操作した位置に保持した状態から、ループハンドル5の操作によって解除操作部材33が下側に押し回されることにより、上記解除操作部材33の操作アーム33Aにより図示時計回り方向に押し回されて、引き込み孔34Baから外し出されるようになっている。上記操作により、保持部材36を介したメモリリンク34の解除操作位置での保持状態が解除され、図24に示すように、メモリリンク34がバネ付勢力によって解除リンク35の庇片35Cに下側から押し当てられる位置まで操作位置が戻されるようになっている。しかし、上記解除リンク35もループハンドル5の操作によって解除操作部材33により下側に押し回されるように操作されていることから、上記庇片35Cに当接した後には、解除リンク35と共に再び下側に押し回されて、ロックバネ13を再び下側に押し撓ませるように操作されるようになっている。
《全体の動作》
以上をまとめると、上述したメモリ機構20及びキャンセル機構30は、上述したループハンドル5が引き上げられる操作や、メモリレバー6が引き上げられる操作によって、それぞれ次のように動かされるようになっている。すなわち先ず、図9に示すように、シート1が上述したループハンドル5やメモリレバー6の操作が行われていない初期状態となっている時には、キャンセル機構30は、ロックバネ13の各ロック部13Cをロアレール11の各ロック溝11C内に入り込ませてロックさせた状態となっている。また、メモリ機構20は、メモリ体21のメモリフック21Cがメモリプレート21Aのメモリ孔21Aa内に入り込んでロックしていると共に、トリガ22がメモリスライダ21Bに後側から押し付けられてくっつけられた位置関係を成す状態とされている。
上記初期状態から、ループハンドル5の引き上げ操作が行われると、図10に示すように、解除操作部材33がロッド32を中心に図示時計回り方向に回転操作されて、保持部材36、解除リンク35及びメモリリンク34がそれぞれ順番に図示時計回り方向に回転操作される。これにより、メモリリンク34を介してロックバネ13が下側に押し撓まされて、スライドのロック状態が解除される。また、解除リンク35の係脱片35Aがメモリフック21Cの受圧板21Cbを下側へ押し込みながらメモリスライダ21Bの受入孔21Ba内に入り込み、メモリスライダ21Bが解除リンク35と共に前後方向に一体的に移動することができる状態となる。また、メモリ機構20のトリガ22を構成する後側用ストッパアーム22Bも、上記解除操作部材33によって押し回されて、ロアレール11の後部箇所に取り付けられたストッパブラケット16と当接することのできる張出位置から退けられた状態となる。
したがって、図11に示すように、上記ループハンドル5を引き上げたまま、シート1を前後方向に動かしてアッパレール12をロアレール11に対して前後方向にスライドさせることで、メモリスライダ21Bを一緒に引き連れながらシートポジションを変更することができる。なお、この場合には、シートポジションをリヤモースト付近の位置まで大きく後退させても、後側用ストッパアーム22Bがストッパブラケット16とは当接しないことから、シートポジションをリヤモースト位置まで大きく後退移動させることができる。そして、上記移動後にループハンドル5の操作を戻すことにより、キャンセル機構30及びメモリ機構20が図9の初期位置の状態へと戻されて、シートポジションをその変更した位置にロックさせることができる。以上の操作により、ループハンドル5を用いたシートポジションの調節操作が完了する。
次に、上記図9に示した初期状態に戻って、メモリレバー6の操作が行われた場合には、図12〜図13に示すように、メモリリンク34がロッド32を中心に図示時計回り方向に回転操作されて、ロックバネ13がメモリリンク34により下側に押し回されて、スライドのロック状態が解除される。そして、これに併せて、図14に示すように、保持部材36がメモリリンク34の引き込み孔34Ba内に引き込まれるように動かされて、メモリリンク34が上記ロックバネ13を解除操作した位置に保持された状態となる。
したがって、上記操作後にメモリレバー6の操作を戻しても、メモリリンク34は解除操作されたままの状態に保持されるため、この位置からシートポジションを後退させることができる(図15参照)。しかし、上記位置からシートポジションを前進させることはできない。その理由は、メモリフック21Cがメモリプレート21Aのメモリ孔21Aa内に入り込んでロックしたままの状態となっており、シートポジションを前進させようとしてもストッパリンク22Aが固定位置にあるメモリスライダ21Bに後側から当たって移動できないからである。
上記メモリレバー6の操作後に、図16に示すように、シートポジションをトリガ22の後側用ストッパアーム22Bがストッパブラケット16の前面16Aに当たる位置まで後退させると、そこからの更なる後退移動の進行に伴って、図17〜図18に示すように、後側用ストッパアーム22Bの取り付けられたストッパリンク22Aが、後側用ストッパアーム22Bがストッパブラケット16の前面16Aに押し重ねられる状態となる位置まで反時計回り方向に押し回される。そして、この回転により、図17に示すように、ストッパリンク22Aに取り付けられた操作カム22Cが保持部材36を時計回り方向に押し回し、保持部材36によるメモリリンク34の解除操作位置での保持状態が解除される。これにより、図18に示すように、メモリリンク34が解除操作される前の初期位置へと戻されて、ロックバネ13がロアレール11のロック溝11C内に入り込む方向に復元する。
しかし、上記位置では、ロックバネ13の復元する移動軌跡上にロアレール11のロック溝11Cが位置しないようにロック溝11Cの位置がずらされていることにより、上記位置ではロックバネ13がロアレール11のロック溝11Cに入り込んでロックすることがないように設定されている。したがって、上記状態から図19に示すようにシートポジションを僅かに前側にずらすことにより、ロックバネ13がロアレール11のロック溝11Cと互いの位置関係が合わされて、ロック溝11C内に入り込んでロックする。このような構成とされていることにより、各部品間に建て付け誤差が生じても、ロックバネ13をリヤモースト付近の位置で適切にロックさせられる構成とすることができる。上記ロックにより、シートポジションをリヤモースト付近の位置(図1の仮想線位置)に一時的にロックさせておくことができ、シート1の前側に広い乗降スペースが確保された状態となって保持される。
次に、上記シートポジションがリヤモースト付近の位置(図1の仮想線位置)にロックされている状態から、再びメモリレバー6の操作が行われると、図20に示すように、メモリリンク34が再び下側に押し回されるように操作されて、ロックバネ13がロック溝11Cから外し出される。そして、メモリリンク34が再び保持部材36により上記解除操作位置に保持された状態となる。すなわち、キャンセル機構30が図14に示した先の状態と同じ状態に戻される。したがって、上記操作後にメモリレバー6の操作を戻しても、メモリリンク34は解除操作されたままの状態に保持されるため、この位置からシートポジションを前進させることができる。
その後、図21に示すように、シートポジションをストッパリンク22Aの前側用ストッパアーム22Acがメモリスライダ21Bの後面に当たる位置まで前進させると、そこからの更なる前進移動の進行に伴って、ストッパリンク22Aが図17〜図18にて前述した動きと同じように操作カム22Cにより保持部材36を時計回り方向に押し回して、メモリリンク34の解除操作位置での保持状態を解除させる。これにより、メモリリンク34が解除操作される前の初期位置へと戻されて、ロックバネ13がロアレール11のロック溝11C内に入り込む方向に復元する。これにより、シートポジションが図9で示した先の変更前の位置に戻されたところで、スライドがロックされた初期の状態に復帰した状態へと戻される。
また、図22に示すように、シート1が上述したメモリレバー6の操作後に上述した変更前の記憶位置(図2の実線位置)とリヤモースト付近の位置(図1の仮想線位置)との間の中間位置に動かされた状態で、上述したループハンドル5の引き上げ操作が行われると、図23に示すように、解除操作部材33が再びロッド32を中心に図示時計回り方向に回転操作される。これにより、解除操作部材33の回転操作の進行に伴って、先ず、保持部材36が解除操作部材33により押し回されて、メモリリンク34の解除操作位置での保持状態が解除される。これにより、図24に示すように、メモリリンク34が解除操作される前の初期位置へ向かって戻されて、ロックバネ13がロアレール11のロック溝11C内に入り込む方向に復元する。
したがって、上記動作後にループハンドル5の操作を戻せば、ロックバネ13がロアレール11のロック溝11C内に入り込んで、シートポジションがその位置でロックされた状態となる。また、上記動作後にループハンドル5を更に引き上げていけば、図10に示すように、解除操作部材33により解除リンク35を下側に押し回して、メモリリンク34を再び下側に押し回してスライドのロック状態を解除することができる。
また、上記ループハンドル5の操作後に、再びメモリレバー6の操作が行われると、メモリリンク34が再び下側に押し回されるように操作されて、ロックバネ13がロック溝11Cから外し出される。そして、メモリリンク34が再び保持部材36により上記解除操作位置に保持された状態となる。すなわち、キャンセル機構30が図22に示したキャンセルされる前と同じメモリ状態に戻される。したがって、上記操作後にメモリレバー6の操作を戻しても、メモリリンク34は解除操作されたままの状態に保持されるため、この位置からシートポジションをメモリ状態を維持したまま動かすことができる状態となる。
《まとめ》
以上をまとめると、本実施例のスライドレール装置Mは次のような構成とされている。すなわち、シートポジションをロック機構(ロックバネ13)の解除操作により調節可能なスライドレール(スライドレール10)と、シートポジションの変更前の位置を記憶して変更前の位置に復帰させられるようにするメモリ機構(メモリ機構20)と、を有する乗物用スライドレール装置(スライドレール装置M)であって、ロック機構を解除操作する解除操作部材(解除操作部材33)と、メモリ機構を位置記憶させる状態としつつロック機構を解除操作して解除位置に保持するメモリ操作部材(メモリ操作ケーブル37)と、各操作部材とロック機構との間の動力伝達経路に介設されてメモリ操作部材の操作が行われた状態から解除操作部材が操作されることでロック機構の解除位置での保持状態を解除するキャンセル機構(キャンセル機構30)と、を有する。このような構成とされていることにより、キャンセル機構により、シートポジションのメモリ機能が働いている間であっても、解除操作部材の操作を行うことでロック機構の解除位置での保持状態が解除される。したがって、スライドロックの解除保持状態を任意の位置でキャンセルすることができる。
また、キャンセル機構(キャンセル機構30)が、メモリ操作部材(メモリ操作ケーブル37)の操作によってロック機構(ロックバネ13)を解除操作するように動作するメモリリンク(メモリリンク34)と、メモリリンクの操作位置を解除可能に保持することのできる保持部材(保持部材36)と、を有する。保持部材は、メモリリンクがメモリ操作部材の操作によってロック機構を解除操作する位置まで動かされることによりメモリリンクの操作位置を保持する状態となり、この保持状態から解除操作部材(解除操作部材33)が操作されることにより上記の保持状態を解除するように動かされるようになっている。このような構成とされていることにより、メモリリンクをロック機構の解除操作を行った位置に保持する保持部材を、解除操作部材の操作によって保持状態から解除する構成とすることで、キャンセル機構を簡素合理化した形で成立させられるように構成することができる。
また、キャンセル機構(キャンセル機構30)が、更に、解除操作部材(解除操作部材33)の操作によってメモリリンク(メモリリンク34)と当接してメモリリンクを介してロック機構(ロックバネ13)を解除操作するように動作する解除リンク(解除リンク35)を有する。解除操作部材の操作により、解除リンクがメモリリンクと当接するよりも先に、保持部材(保持部材36)がメモリリンクの操作位置の保持状態を解除するように動かされるようになっている。このような構成とされていることにより、解除リンクが保持部材によって位置保持されている状態のメモリリンクに更なる操作方向への過負荷を掛けない構成とすることができる。
また、保持部材(保持部材36)が、メモリリンク(メモリリンク34)の操作位置を解除リンク(解除リンク35)に対して保持させる構成とされている。解除リンクが、解除操作部材(解除操作部材33)の操作によって解除操作部材と当接して動かされる構成とされている。解除操作部材の操作により、解除リンクが解除操作部材と当接するよりも先に、保持部材がメモリリンクの解除リンクに対する操作位置の保持状態を解除するよう動かされるようになっている。このような構成とされていることにより、保持部材をメモリリンクと解除リンクとの間で機能させる合理化した構成としつつも、各部材に解除操作部材の操作に伴う過負荷を掛けない構成とすることができる。
また、メモリ機構(メモリ機構20)が、初期状態ではシートポジションの変更前の位置を記憶した状態として保持される構成とされている。解除リンク(解除リンク35)が、解除操作部材(解除操作部材33)の操作によってメモリ機構の位置記憶状態を解除操作するように動作する構成とされている。このような構成とされていることにより、メモリ操作部材(メモリ操作ケーブル37)の操作による時にはメモリリンク(メモリリンク34)によってロック機構(ロックバネ13)の解除操作を行いメモリ機構を位置記憶させたままの状態とし、解除操作部材の操作による時には解除リンクによってメモリリンクを介してロック機構の解除操作を行うと共にメモリ機構の位置記憶状態を解除操作する構成として、構造の簡素合理化を図ることができる。
また、メモリリンク(メモリリンク34)と解除リンク(解除リンク35)とが互いに同じ方向に延びてシート幅方向を向く同軸(操作軸32A)回りに回転可能となる状態に設けられ、保持部材(保持部材36)が解除リンクに設けられて径方向の付勢による移動によりメモリリンクと係合してメモリリンクの位置保持をする構成とされている。このような構成とされていることにより、メモリリンクと解除リンクとをコンパクトに配設しつつ、メモリリンクを保持部材によって解除リンクに適切に位置保持させることができる。
また、スライドレール(スライドレール10)が、乗物本体(フロアF)に対して固定される固定側レール(ロアレール11)と、固定側レールに対してスライド可能な状態に組み付けられる可動側レール(アッパレール12)と、を有する。メモリ機構(メモリ機構20)が、固定側レールと係脱可能に設けられたメモリ体(メモリ体21)と、可動側レールに設けられてメモリ体とのスライド方向の当接により保持部材(保持部材36)によるメモリリンク(メモリリンク34)の操作位置での保持状態を解除してロック機構(ロックバネ13)をロック状態に復帰させるトリガ(トリガ22)と、を有する。メモリ体が、初期状態では固定側レールとの係合によりシートポジションの変更前の位置を記憶した状態として保持されて、解除操作部材(解除操作部材33)の操作により固定側レールとの係合が外されて可動側レールに追従して記憶位置を変化させる構成とされている。このような構成とされていることにより、スライドロックの解除保持状態を任意の位置でキャンセルすることができる保持部材の構成を利用して、メモリ機構を少ない部品点数で簡素合理化した形に具現化して構成することができる。
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の乗物用スライドレール装置の構成は、自動車の運転席以外のシートの他、鉄道等の自動車以外の車両に適用されるシートや、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。
また、スライドレールは、シートポジションを車幅方向に変化させるものであってもよい。また、スライドレールは、固定側レールが乗物の側壁に取り付けられるなどして横向きに倒された形で使われるものであってもよい。このような用途で使われる例としては、特開2010−274738号公報等の文献に開示されているような、シートバックを乗物の側壁に対して背凭れ角度の調節を行える状態に連結する用途で使われるもの等が挙げられる。
また、スライドレールのロック機構は、上記実施例で示したようなアッパレール(可動側レール)に取り付けられたバネ自体が付勢によりロアレール(固定側レール)のロック溝内に入り込んでロックするタイプの構成に限らない。例えば、特開2014−189218号公報等の文献に開示されているような、アッパレールに取り付けられたロック爪が、バネ付勢力によりロアレールのロック溝内に入り込んでロックするタイプの構成であってもよい。
また、ロック機構を解除操作する解除操作部材は、ループハンドル等のレバー自体によって構成されていてもよい。また、メモリ操作部材も同様に、メモリレバー等のレバー自体によって構成されていてもよい。これらの動作形態は、回転運動に限らず、直線運動その他の運動形態で動作するものであってもよい。
また、キャンセル機構を構成する保持部材は、メモリリンクを解除リンクに対して解除操作位置に保持するものに限らず、ベースブラケット等のその他の部材に対して位置保持するように構成されていてもよい。上記保持部材は、回転運動に限らず、直線運動その他の運動形態で動作するものであってもよい。
また、メモリ機構は、シートポジションの変更前の位置を記憶して同記憶位置からシートポジションを一時的に後退させられるように用いられるものに限らず、シートポジションを上記記憶位置から一時的に前進させられるように用いられるものであってもよい。