JP2017159650A - 加飾成形品、転写シート及び加飾成形品の製造方法 - Google Patents

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慶祐 小山
健太郎 秋山
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Abstract

【課題】コントラストが高く、意匠性に優れた加飾成形品を提供する。
【解決手段】樹脂成形体上に、凹凸表面を有する保護層を備え、樹脂成形体側の面に、透明粘着剤を介して黒色板を貼り合わせたサンプルの凹凸表面側から測定した正反射方向の視感反射率Y値、及び視感反射率Y値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβが特定の条件を満たす加飾成形品。
【選択図】図1

Description

本発明は、加飾成形品、転写シート及び加飾成形品の製造方法に関する。
従来、家庭用電化製品、自動車内装品、及び雑貨品等の分野において、被転写物表面に、文字や絵柄などの装飾を施すことにより、高い機能性や意匠性を発現させてきた。被転写物表面を装飾する方法として、転写法がある。転写法とは、基材上に、剥離層、図柄層、接着層などからなる転写層を形成した転写シートを用い、加熱加圧して転写層を被転写物に密着させた後、基材を剥離して、被転写物表面に転写層のみを転写して装飾を行う方法である。
また、用途によっては、被転写物表面に、高級感、及び光沢調やマット調等の異なる風合といった優れた意匠性が求められる場合がある。
例えば、特許文献1には、基体シート上に全面的にマット剤を含有する離型層と、部分的に活性エネルギー線硬化性樹脂を含有するマスク層と、転写層として剥離層と図柄層とが形成された部分マット転写シートを、転写層側を被転写物表面に密着させ、部分マット転写シートの基体シート側から熱と圧力とを加えて転写層を被転写物表面に接着させた後に基体シートと離型層とマスク層とを剥離することにより得られる加飾成形品が開示されている。
特許5095598号公報
しかしながら、特許文献1に記載の加飾成形品では、転写後の転写層表面のマット部において、被転写物の文字等が白っぽくなり、コントラストが低くなる場合がある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、コントラストが高く、意匠性に優れた加飾成形品、転写シート及び加飾成形品の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の[1]〜[9]を提供する。
[1]樹脂成形体上に、凹凸表面を有する保護層を備える加飾成形品であって、
前記樹脂成形体側の面に、透明粘着剤を介して黒色板を貼り合わせたサンプルの前記凹凸表面方向から測定した正反射方向の視感反射率Y値、及び前記視感反射率Y値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβが下記条件(1)及び(2)を満たす加飾成形品。
<条件(1)>
前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記凹凸表面に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y値が2.0%以下である。
<条件(2)>
前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記凹凸表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、前記視感反射率Y値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβを算出し、算出した前記βが3.5度以下である。
[2]前記視感反射率Y値の1/2の値を示す拡散角度の絶対値であるαが下記条件(3)を満たす[1]に記載の加飾成形品。
<条件(3)>
前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記凹凸表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、算出した前記αが2.2度以上2.8度以下である。
[3]前記保護層が、前記凹凸表面を有する領域(P)と、前記領域(P)に隣接する領域(Q)とを有し、
前記サンプルの前記領域(Q)の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(Q)の表面に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y値と、前記領域(P)の前記視感反射率Y値とが下記条件(4)を満たす[1]又は[2]に記載の加飾成形品。
1.5%≦視感反射率Y値−視感反射率Y値 (4)
[4]前記サンプルの前記領域(Q)の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(Q)の表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、視感反射率Y値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβを算出し、算出した前記βと、前記領域(P)の前記βとが下記条件(5)を満たす[1]〜[3]のいずれかに記載の加飾成形品。
0.3度≦β−β (5)
[5]領域(P’)と、前記領域(P’)に隣接する領域(Q’)とを有する基材と、
前記基材の領域(P’)上に設けられた凹凸形状を有する凹凸層と、
前記凹凸層の前記凹凸形状の上に形成された第一離型層と、
前記基材の領域(Q’)上に設けられた第二離型層と、
前記第一離型層及び前記第二離型層の上に形成された保護層とを有する転写シートであって、
前記保護層側の面に、透明粘着剤を介して黒色板に前記転写シートを貼りあわせ、前記基材、前記凹凸層、前記第一離型層、及び前記第二離型層を剥離し、前記保護層を転写したサンプルの前記領域(P’)上に設けられた前記保護層表面方向から測定した正反射方向の視感反射率Y11値、及び前記視感反射率Y11値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβ11が下記条件(I)及び(II)を満たす転写シート。
<条件(I)>
前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(P’)上に設けられた前記保護層に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y11値が2.0%以下である。
<条件(II)>
前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(P’)上に設けられた前記保護層に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、前記視感反射率Y11値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβ11を算出し、算出した前記β11が3.5度以下である。
[6]前記視感反射率Y11値の1/2の値を示す拡散角度の絶対値であるα11が下記条件(III)を満たす[5]に記載の転写シート。
<条件(III)>
前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(P’)上に設けられた前記保護層に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、算出した前記α11が2.2度以上2.8度以下である。
[7]前記サンプルの前記保護層の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(Q’)上に設けられた前記保護層の表面に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y22値と、前記領域(P’)上に設けられた前記保護層の前記視感反射率Y11値とが下記条件(IV)を満たす[5]又は[6]に記載の転写シート。
1.5%≦視感反射率Y22値−視感反射率Y11値 (IV)
[8]前記サンプルの前記保護層の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(Q’)上に設けられた前記保護層の表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、視感反射率Y22値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβ22を算出し、算出した前記β22と、前記領域(P’)上に設けられた前記保護層の前記β11とが下記条件(V)を満たす[5]〜[7]のいずれかに記載の転写シート。
0.3度≦β11−β22 (V)
[9][5]〜[8]のいずれかに記載の転写シートの保護層を被転写体に転写する工程と、
前記転写シートの基材、凹凸層、第一離型層、及び第二離型層を剥離する工程と、
を有する、加飾成形品の製造方法。
本発明によれば、コントラストが高く、意匠性に優れた加飾成形品、転写シート及び加飾成形品の製造方法を提供することができる。
本発明の加飾成形品の一実施形態を示す断面図である。 本発明の加飾成形品の他の実施形態を示す断面図である。 本発明の加飾成形品の他の実施形態を示す断面図である。 本発明の転写シートの一実施形態を示す断面図である。 本発明の転写シートの他の実施形態を示す断面図である。 本発明の転写シートの他の実施形態を示す断面図である。 実施例1の加飾成形品の領域(P)及び領域(Q)の視感反射率の分布を示す図である。
[加飾成形品]
本発明の加飾成形品は、樹脂成形体上に、凹凸表面を有する保護層を備える。本発明の加飾成形品は、樹脂成形体側の面に、透明粘着剤を介して黒色板を貼り合わせたサンプルの凹凸表面方向から測定した正反射方向の視感反射率Y値、及び視感反射率Y値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβが下記条件(1)及び(2)を満たすものである。
<条件(1)>
サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を凹凸表面に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y値が2.0%以下である。
<条件(2)>
サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を凹凸表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、視感反射率Y値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβを算出し、算出したβが3.5度以下である。
なお、本発明において、サンプルに用いる透明粘着剤の屈折率は、基材及び黒色板の屈折率との屈折率差が0.05以内のものを用いることができ、好ましくは屈折率差が0.00である。
なお、視感反射率Y値は、5回の測定を行って、5回の平均値から算出できる。また、βは、領域(P)における視感反射率の測定を5回行って、5回の平均値から算出できる。
条件(1)は、上記測定条件においてサンプルの視感反射率Y値が2.0%以下である。視感反射率Y値が2.0%を超える場合、防眩性を得ることが困難になる。また、視感反射率Y値が2.0%を超える場合、十分なマット感が得られず、意匠性の低下を招くおそれがある。視感反射率Y値の上限値は、上記観点から、好ましくは1.9%以下、より好ましくは1.8%以下である。
また、視感反射率Y値の下限値は、低すぎる場合、白化しやすくなり、防眩性が強すぎてコントラストの低下を抑制できないおそれや、マット感が強すぎて正反射が過度に低下し照りがなく、高級感が得られないおそれがあるので、好ましくは1.0%以上、より好ましくは1.2%以上、さらに好ましくは1.4%以上である。
条件(1)の測定は、視野角、光源、測定波長を以下の条件とすることが好ましい。
視野角;2度、光源;D65、測定波長;380〜780nmを0.5nm間隔
なお、視感反射率は、CIE1931標準表色系のY値のことをいう。
条件(2)の説明に際して、まず、βが意味するものを説明する。
βの基準となる「視感反射率Y値」は、上記サンプルの凹凸表面に入射し、反射する光のうち、凹凸最表面での正反射方向に反射する光の視感反射率の値を示している。
保護層の有する凹凸は、微小凹凸(高周波成分)と、うねり凹凸(低周波成分)とからなり、高周波成分が増加すると大きな拡散が増加し、低周波成分が増加すると正反射近傍の拡散が減少する。βはそのうちの大きな拡散による反射光が広がる範囲を示している。
したがって、βを示す条件(2)を満たすことは、高周波の凹凸による大きな拡散が過度ではないことを意味している。βが3.5度を超える場合、大きな拡散が過度であり、白化を招きやすく、コントラストが低下し、意匠性を低下させるおそれがある。
βは、好ましくは3.4度以下、より好ましくは3.3度以下である。βは、上記範囲であることで、白化を抑制し、コントラストを向上させ、視認性を高めることができる。また、βは、上記範囲であることで、凹凸表面のギラツキを抑制することができる。
なお、「ギラツキ」とは、表面の凹凸構造に起因して、映像光に微細な輝度のばらつきが見える現象のことをいう。
βは、一定量の高周波の凹凸による大きな拡散を確保することで、防眩性を確保することができ、鏡面化を防止できるという観点から、好ましくは2.7度以上、より好ましくは2.8度以上、さらに好ましくは2.9度以上である。
本発明におけるサンプルの凹凸表面の視感反射率の測定方法について説明する。
サンプルの凹凸表面の視感反射率は、サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を凹凸表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定することで得られる。このとき、入射角が0度(法線方向)ではないために生じる視感反射率の誤差を解消するため、正反射方向(受光角が−10度)を中心として±5度(受光角が−5度〜−15度)の範囲の測定を行った後、正反射方向の+n度の視感反射率Y+n値と正反射方向の−n度の視感反射率Y−n値の平均値である(視感反射率Y+n値+視感反射率Y−n値)/2を、正反射の+n度の視感反射率Y+n値、及び正反射の−n度の視感反射率Y−n値として算出する。なお、正反射方向(受光角が−10度)の視感反射率Yは、測定値そのものとする。
次いで、測定した正反射方向(受光角が−10度)の視感反射率Y値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβを算出する。
具体的なβの算出方法として、図7を例に説明する。図7は、実施例1の加飾成形品のサンプルでの視感反射率の測定結果である。図7の正反射方向(図7では正反射方向を0度としている)の視感反射率Y値は1.62%であり、視感反射率Y値の1/3の値は0.54%となる。そして、視感反射率Y値の1/3の値(0.54%)を示す拡散角度(正反射の±n度)は±3.3度であり、±3.3度の絶対値である3.3度がβとなる。
但し、実際のβの算出は、上記作業を5回行い、その平均値をβとして算出する。
後述するα、α、β、α11、α22、β11及びβ22についても、βと同様の方法にて算出する。
本発明の加飾成形品は、上記サンプルの凹凸表面側から測定した正反射方向の視感反射率Y値の1/2の値を示す拡散角度の絶対値であるαが下記条件(3)を満たすことが好ましい。
<条件(3)>
サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を凹凸表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、算出したαが2.2度以上2.8度以下である。
なお、αは、領域(P)における視感反射率の測定を5回行って、5回の平均値から算出できる。
条件(3)の説明に際して、まず、αが意味するものを説明する。
αは、上記サンプルの凹凸表面に入射し、反射する光のうち、低周波の凹凸による拡散反射した光が広がる範囲を示している。より具体的には、αは小さな拡散による反射光が広がる範囲を示している。
したがって、αを示す条件(3)を満たすことは、低周波の凹凸による小さな拡散が一定量含まれていることを意味するとともに、小さな拡散が過小又は過度ではないことを意味している。
αの上限は、過度の低周波成分がなくなることで、コントラストと照りの確保が可能になるという観点から、好ましくは2.6度以下、より好ましくは2.7度以下である。また、αの下限は、低周波の凹凸による防眩性を付与することができるという観点から、好ましくは2.3度以上、より好ましくは2.4度以上である。
本発明の加飾成形品は、保護層が、凹凸表面を有する領域(P)と、領域(P)に隣接する領域(Q)とを有し、サンプルの前記領域(Q)の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を領域(Q)の表面に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y値と、領域(P)の前記視感反射率Y値とが下記条件(4)を満たすことが好ましい。
1.5%≦視感反射率Y値−視感反射率Y値 (4)
視感反射率Y値と視感反射率Y値とが、条件(4)を満たすことで、領域(P)の表面と領域(Q)の表面とが、異なる質感を有することになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、視感反射率Y値−視感反射率Y値の下限値は、好ましくは1.6%以上、より好ましくは1.7%以上である。
また、視感反射率Y値−視感反射率Y値の上限値は、領域(P)と領域(Q)との適度なコントラスト有して、意匠性を向上させるという観点から、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.9%以下である。
なお、条件(4)に対して、領域(P)と領域(Q)との対比で、領域(P)の表面がより滑らかに視認されることにより、領域(P)の表面の方に強い光沢感を得るようにすることもできる。その際は、以下に示す条件(4’)を満たすことが好ましい。
−1.5%≦視感反射率Y値−視感反射率Y値≦−0.5% (4’)
条件(4’)を満たすことで、領域(P)よりも領域(Q)をマットにすることになり、領域(P)を携帯電話などの通信機器、自動車内部の情報機器などのディスプレイ等の直射日光の当たるような製品に適用した場合に、外光反射を抑制することができ、画像等の視認性を高めることができる。
視感反射率Y値は、上記サンプルの領域(Q)に入射し、反射する光のうち、正反射方向に反射する光の視感反射率を示している。
視感反射率Y値は、外光反射を抑制することができ、画像等の視認性を高めるという観点から、好ましくは3.6%以下、より好ましくは3.5%以下、さらに好ましくは3.4%以下である。
視感反射率Y値は、領域(Q)の光沢感を生じさせ、意匠性を向上させる観点から、好ましくは3.0%以上、より好ましくは3.1%以上、さらに好ましくは3.2%以上である。
なお、視感反射率Y値は、5回の測定を行って、5回の平均値から算出できる。
また、領域(P)の視感反射率Y値に対する領域(Q)の視感反射率Y値が下記条件(A)を満たすことが好ましい。
視感反射率Y値/視感反射率Y値≦2.3 (A)
条件(A)を満たすことで、領域(P)の表面と領域(Q)の表面とが、異なる質感を有することになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、視感反射率Y値/視感反射率Y値の上限値は、好ましくは2.2以下、より好ましくは2.1以下である。
また、視感反射率Y値/視感反射率Y値の下限値は、領域(P)と領域(Q)との適度なコントラスト有して、意匠性を向上させるという観点から、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上である。
本発明の加飾成形品は、サンプルの領域(Q)の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を領域(Q)の表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、視感反射率Y値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβを算出し、算出したβと、領域(P)の前記βとが下記条件(5)を満たすことが好ましい。
0.3度≦β−β (5)
βとβとが、条件(5)を満たすことで、領域(P)と領域(Q)において、高周波の凹凸に基づく大きな拡散が一定以上有することを意味する。つまり、βとβとが、条件(5)を満たすことで、領域(P)の表面と領域(Q)の表面とが、異なる質感を有することになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、β−βの下限値は、好ましくは0.4度以上、より好ましくは0.5度以上である。
また、β−βの上限値は、領域(P)と領域(Q)との適度なコントラスト有して、意匠性を向上させるという観点から、好ましくは0.7度以下、より好ましくは0.6度以下である。
なお、条件(5)に対して、領域(P)と領域(Q)との対比で、領域(P)の表面がより滑らかに視認されることにより、領域(P)の表面の方に強い光沢感を得るようにすることもできる。その際は、以下に示す条件(5’)を満たすことが好ましい。
−1.0度≦β−β≦−0.3度 (5’)
βは、上記サンプルの領域(Q)に入射し、反射する光のうち、拡散反射した光が広がる範囲を示している。より具体的には、βは、領域(Q)における高周波の凹凸に基づく大きな拡散による反射光が広がる範囲を示している。したがって、βは、一定以上有することで、高周波の凹凸に基づく大きな拡散が一定量含まれていることを意味する。
以上を踏まえて、βは、外光反射を抑制することができ、鏡面反射が強くなり過ぎることを抑制するという観点から、好ましくは3.7度以下、より好ましくは3.6度以下、さらに好ましくは3.5度以下である。
βは、領域(Q)において光沢感を生じさせ、意匠性を向上させる観点から、好ましくは2.8度以上、より好ましくは2.9度以上、さらに好ましくは3.0度以上である。
また、領域(Q)のβに対する領域(P)のβが下記条件(B)を満たすことが好ましい。
β/β≦1.5 (B)
条件(B)を満たすことで、領域(P)の表面と領域(Q)の表面とが、異なる質感を有することになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、β/βの上限値は、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下である。
また、β/βの下限値は、領域(P)と領域(Q)との適度なコントラスト有して、意匠性を向上させるという観点から、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上である。
本発明の加飾成形品は、サンプルの領域(Q)の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を領域(Q)の表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、視感反射率Y値の1/2の値を示す拡散角度の絶対値であるαを算出し、算出したαと、領域(P)のαとが下記条件(6)を満たすことが好ましい。
0.2度≦α−α≦0.8度 (6)
αとαとが、条件(6)を満たすことで、領域(P)と領域(Q)における低周波の凹凸に基づく小さな拡散が相違することを意味する。つまり、αとαとが、条件(6)を満たすことで、領域(P)の光沢感と領域(Q)の光沢感に差を生じさせることになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、好ましくは0.3度≦α−α≦0.75度であり、より好ましくは0.4度≦α−α≦0.6度である。
なお、条件(6)に対して、領域(P)と領域(Q)との対比で、領域(P)の表面がより滑らかに視認されることにより、領域(P)の表面の方に強い光沢感を得るようにすることもできる。その際は、以下に示す条件(6’)を満たすことが好ましい。
−0.4度≦α−α≦−0.2度 (6’)
αは、上記サンプルの領域(Q)に入射し、反射する光のうち、拡散反射した光が広がる範囲を示している。より具体的には、αは、領域(Q)における低周波の凹凸に基づく小さな拡散による反射光が広がる範囲を示している。したがって、αは、一定以上有することで、低周波の凹凸に基づく小さな拡散が一定量含まれていることを意味するとともに、小さな拡散が過小ではないことを意味している。
以上を踏まえて、αは、外光反射を抑制することができ、鏡面反射が強くなり過ぎることを抑制するという観点から、好ましくは2.6度以下、より好ましくは2.5度以下、さらに好ましくは2.4度以下である。
αは、領域(Q)において光沢感が生じさせ、意匠性を向上させる観点から、好ましくは1.8度以上、より好ましくは1.9度以上、さらに好ましくは2.0度以上である。
また、領域(Q)のαに対する領域(P)のαが下記条件(C)を満たすことが好ましい。
α/α≦1.5 (C)
条件(C)を満たすことで、領域(P)の表面と領域(Q)の表面とが、異なる光沢感を有することになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、α/αの上限値は、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下である。
また、α/αの下限値は、領域(P)と領域(Q)との適度なコントラスト有して、意匠性を向上させるという観点から、好ましくは1.0を超え、より好ましくは1.1以上である。
視感反射率Y値、α及びβが上記条件を満たす方法としては、保護層の領域(P)上の凹凸を、例えば、凹凸層上に緩和層を形成した積層体の表面形状を転写して形成する手段が挙げられる。凹凸層上に緩和層を形成すると、凹凸層の高周波成分を減らすことができるため、転写した形状も高周波成分が少ないものとなる。
なお、緩和層を形成する材料としては、保護層との接着力が低く、積層体から保護層を容易に剥離し得る材料であれば特に限定されず用いることができる。
また、視感反射率Y値、α及びβが上記条件を満たす方法としては、保護層の領域(Q)を、例えば、凹凸層上に緩和層を2層形成した積層体の表面形状を転写して形成する手段が挙げられる。
(加飾成形品の構成)
図1乃至図3は、本発明の加飾成形品の一実施形態を示す断面図である。図1の加飾成形品10は、樹脂成形体1上に保護層2が設けられている。保護層2は、凹凸を有する領域(P)と、領域(P)に隣接する領域(Q)とを有する。
また、本発明の加飾成形品20は、図2及び図3に示すように、樹脂成形体11と保護層12との間に、アンカー層13、印刷層14、接着層15が設けられていてもよい。
なお、領域(P)及び領域(Q)の位置は特に限定されず、図2に示すように領域(Q)の間または領域(Q)の内部に領域(P)が配置されていてもよいし、図3に示すように、領域(P)の間または領域(P)の内部に領域(Q)が配置されていてもよい。
以下、本発明の加飾成形品を構成する各層について具体的に説明する。
(保護層)
保護層は、摩耗や光、薬品等から加飾成形品を保護するための層である。
保護層は、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの硬化性樹脂を用いて形成することが好ましい。電離放射線硬化性とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋・重合させうるエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線等の照射により励起して、重合反応を生じることにより架橋・硬化する性能のことである。また、電離放射線硬化性官能基とは、上記電離放射線硬化性を発現しうる官能基のことであり、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種である。
保護層は、可視光線に対して透明であることが好ましいので、着色材料を実質的に含まない。
保護層は、電離放射線硬化性樹脂を含むインキ組成物から形成されることが好ましく、更に、無機粒子の表面に反応性官能基を有する反応性無機粒子と、多官能イソシアネートとを含むインキ組成物から形成されることがより好ましい。このインキを、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、およびグラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段により塗布・乾燥させて形成することができる。
電離放射線硬化性官能基を有するポリマーとしては、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびポリエーテル(メタ)アクリレートを挙げることができ、特にウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。本発明においては、これらのポリマーを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
電離放射線硬化性官能基を有するポリマーの重量平均分子量は、好ましくは5000〜150000程度であり、より好ましくは20000〜100000である。数平均分子量が上記範囲内であれば、インキ組成物のチキソ性が得られ、良好な成形性も得られる。ここで、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された値であり、標準サンプルにポリスチレンを用いた条件で測定された値である。また、優れた高硬度性および耐スクラッチ性を得る観点から、ポリマーの二重結合当量は、50〜1000、好ましくは100〜1000、より好ましくは100〜500である。ここで、二重結合当量は、電離放射線硬化性官能基1個あたりの分子量を意味する。
なお、本明細書において「AA〜BB」の記載は「AA以上BB以下」を意味する。以下も同様である。
反応性無機粒子は、無機粒子の表面に反応性官能基を有するものである。反応性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、エポキシ基、およびシラノール基等が好ましく挙げられ、高硬度性および耐スクラッチ性の向上の観点から、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、およびアリル基がより好ましい。
無機粒子としては、シリカ粒子(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカなど)、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、酸化亜鉛粒子などの金属酸化物粒子が好ましく挙げられ、高硬度性および耐スクラッチ性の向上の観点から、シリカ粒子が好ましい。
無機粒子の形状としては、球、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、これらの形状が均一で、整粒であることが好ましく、また無機粒子は、粒子同士の相互作用が弱く、単一分散された粒子であることが好ましい。無機粒子の平均粒子径は、インキ組成物により形成する層の厚さにより適宜選択しうるが、通常0.05〜5.0μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。ここで、平均粒子径は、溶液中の該粒子を動的光散乱方法で測定し、粒子径分布を体積累積分布で表したときの50%粒子径(d50:メジアン径)であり、Microtrac粒度分析計(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
また、無機粒子のなかでも、高硬度性の観点からは、異形無機粒子が好ましい。異形無機粒子は、無機粒子が平均連結数2〜40個の連結凝集した無機粒子群からなるものであり、本発明においては無機粒子に包含されるものである。連結凝集は、規則的であっても不規則的であってもよい。該無機粒子群を形成する無機粒子としては、シリカ(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカなど)、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛などの金属酸化物からなる無機粒子が好ましく挙げられ、高硬度性および耐スクラッチ性の向上の観点から、シリカからなる無機粒子であることが好ましい。すなわち、異形無機粒子は、シリカ粒子が平均連結数2〜40個の連結凝集したシリカ粒子群からなるものであることが好ましい。
このような反応性異形無機粒子としては、シランカップリング剤で表面装飾された異形無機粒子が好ましく挙げられる。シランカップリング剤としては、アルコキシ基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基などを有する公知のシランカップリング剤が挙げられ、より具体的には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが好ましく挙げられ、より好ましくは、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシランである。
異形無機粒子をシランカップリング剤で表面装飾する方法は、特に制限はなく公知の方法であればよく、シランカップリング剤をスプレーする乾式の方法や、異形無機粒子を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式の方法などが挙げられる。
多官能イソシアネートは、イソシアネート基を2個以上有する化合物である。多官能イソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、あるいは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(ないしは脂環式)イソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。また、これら各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等や、ブロック化されたイソシアネート化合物等も挙げられる。
また、多官能イソシアネートのうち、電離放射線硬化性官能基としてビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも一種をさらに有するものが、高硬度性の観点から特に好ましい。具体的には「Laromer LR9000(商品名)」(BASF社製)のように、エチレン性不飽和結合を有する官能基を少なくとも1個と、2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが好ましい。
上記のインキ組成物中の反応性無機粒子および/または反応性異形無機粒子の含有量は、好ましくは15〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%である。ここで、インキ組成物中の反応性無機粒子および/または反応性異形無機粒子の含有量は、ポリマーならびに反応性無機粒子および/または反応性異形無機粒子の合計に対する反応性無機粒子および/または反応性異形無機粒子の含有量を意味し、ポリマーは固形分である。反応性無機粒子の含有量が上記範囲内であれば、優れた高硬度性および耐スクラッチ性が得られる。
上記のインキ組成物は、粘度を調整する目的で溶媒を含有してもよい。溶媒としては、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、メチルグリコール、メチルグリコールアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ニトロメタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロルエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンなどのその他の物;またはこれらの混合物が好ましく挙げられる。より好ましい溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
インキ組成物中の溶媒の量は、該組成物の粘度に応じて適宜選定すればよいが、上記ポリマーの固形分、反応性無機粒子や反応性異形無機粒子およびその他後述する光重合開始剤などを合わせた固形分の含有量が通常10〜50質量%程度、好ましくは20〜40量%となるような量である。
上記のインキ組成物は、光重合開始剤を配合することができる。光重合開始剤としては、凹凸層の項で説明したものを挙げることができる。
光重合開始剤の含有量は、上記のポリマーと無機粒子の合計に対して、0.5〜10質量%程度とすることが好ましく、より好ましくは1〜8質量%、さらに好ましくは3〜8質量%であり、該ポリマーおよび無機粒子は固形分を基準としたものである。
上記のインキ組成物は、得られる所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、チキソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤などが挙げられる。
また、保護層が熱硬化性樹脂から構成される場合、熱硬化性樹脂としては、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、アクリルポリオールをイソシアネートで硬化させた樹脂、ポリエステルポリオールをイソシアネートで硬化させた樹脂、アクリル酸をメラミンで硬化させた樹脂などを用いることができる。さらに、保護層が熱硬化性樹脂から構成される場合、熱硬化性樹脂に無機粒子を添加してもよい。熱硬化性樹脂に添加する無機粒子としては、保護層が電離放射線硬化性樹脂から構成される場合と同様に、上述の無機粒子を用いることができる。
また、保護層が熱可塑性樹脂から構成される場合、熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂などを用いることができる。さらに、保護層が熱可塑性樹脂から構成される場合、熱可塑性樹脂に無機粒子を添加してもよい。熱可塑性樹脂に添加する無機粒子としては、保護層が電離放射線硬化性樹脂から構成される場合と同様に、上述の無機粒子を用いることができる。
保護層は、上述の樹脂と適当な溶媒等を含む保護層用塗工液を調製し、該塗工液をグラビア印刷法、スクリーン印刷法、スリットリバース法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
通常、保護層の乾燥後の厚みT(以下、保護層の厚みTと称する)は、0.5〜30μmの範囲内であることが好ましく、1〜15μmの範囲内であることがより好ましい。保護層の厚みが、上記範囲内であると、優れた高硬度性、耐スクラッチ性、耐薬品性、および耐汚染性等の表面物性が得られ、さらに優れた成形性および形状追従性を得ることができる。領域(P)、領域(Q)ともに上記範囲であることが好ましい。なお、保護層の厚みは、基部から頂部までを厚みとし、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から20箇所の厚みを測定し、20箇所の値の平均値から算出できる。STEMの加速電圧は10kv〜30kVとすることが好ましい。STEMの倍率は、測定膜厚がミクロンオーダーの場合は1000〜7000倍とすることが好ましく、測定膜厚がナノオーダーの場合は5万〜30万倍とすることが好ましい。
(樹脂成形体)
樹脂成形体としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、公知の様々な樹脂を用いることができる。
本発明の加飾成形品をインモールド成形により製造する場合には、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂(耐熱ABS樹脂を含む)、AS樹脂、AN樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、およびポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。
本発明の加飾成形品は、樹脂成形体と保護層との間に、アンカー層、印刷層、接着層等の機能層を有していてもよい。
(アンカー層)
アンカー層は、インモールド成形等の高温環境に置かれる場合において、耐熱性を向上させるために設けられる層であり、硬化性樹脂を用いて形成される。硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の電離放射線硬化性官能基を有するポリマーを用いることができる。例えば、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびポリエーテル(メタ)アクリレートを挙げることができ、特にウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、アクリルポリオールをイソシアネートで硬化させた樹脂、ポリエステルポリオールをイソシアネートで硬化させた樹脂、およびアクリル酸をメラミンで硬化させた樹脂が挙げられる。
また、アンカー層は、アクリルポリオールとイソシアネートとを反応してなる樹脂を含むことが好ましい。アンカー層が、アクリルポリオールとイソシアネートとを反応してなる樹脂を含み、印刷層または接着層がアクリルポリオールを含むことで、印刷層または接着層の密着性を向上することができる。また、保護層の樹脂とアンカー層のアクリルポリオールとイソシアネートとを反応してなる樹脂との親和性により、保護層、アンカー層、および印刷層または接着層の各層間の密着性を向上させることができる。
さらに、アンカー層は、上記の樹脂に必要な添加剤を加えたものを適当な溶媒に溶解または分散させて調製したアンカー層用塗工液を、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、およびグラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段により塗布・乾燥させて形成することができる。通常、アンカー層の厚みは、0.1〜6μmの範囲内であることが好ましく、1〜5μmの範囲内であることがより好ましい。
(印刷層)
印刷層は、加飾成形品に所望の意匠性を付与するための層であり、所望により設けられる層である。印刷層の絵柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄を挙げることができる。また、印刷層は、上記絵柄を表現する柄パターン層及び全面ベタ層を単独で又は組み合わせて設けることができ、全面ベタ層は、通常、隠蔽層、着色層、着色隠蔽層などとして用いられる。
印刷層は、通常は、保護層上、あるいはアンカー層上に、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂をバインダーとし、適当な色の顔料又は染料を着色剤として含有する印刷インキによる印刷を行うことで形成する。印刷方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷法が挙げられる。
印刷層の厚みは、意匠性の観点から0.5〜40μmが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
(接着層)
接着層は、樹脂成形体と保護層等他の層とを密着させるために形成される層である。この接着層には、樹脂成形体の素材に適した感熱性又は感圧性の樹脂を適宜使用する。例えば、樹脂成形体の材質がアクリル系樹脂の場合は、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂成形体の材質がポリフェニレンオキサイド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用することが好ましい。さらに、樹脂成形体の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂を使用することが好ましい。
上記の樹脂には、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。
接着層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。なお、印刷層が樹脂成形体に対して充分な接着性を有する場合には、接着層を設けなくてもよい。
接着層の厚みは、通常0.1〜5μm程度が好ましい。
本発明の加飾成形品の領域(P)または領域(Q)における全光線透過率は、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
また、本発明の加飾成形品のヘイズは意匠によって調整すればよいが、ディスプレイなどの表示部は40%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0〜40%、さらに好ましくは1.0〜30%以下である。上記ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定することができる。
[加飾成形品の製造方法]
本発明の加飾成形品の製造方法は、転写シートの保護層を被転写体(樹脂成形体)に転写する工程と、上記転写シートの離型シート(基材、凹凸層、第一離型層、及び第二離型層)を剥離する工程と、を有する。
加飾成形品の製造方法には、公知の転写法を用いることができる。例えば、(i)予め成形された被転写体(樹脂成形体)に転写シートを貼着し、転写シートの保護層を転写した後、転写シートの離型シートを剥離する方法、(ii)平板状の被転写体(樹脂成形体)に転写シートを貼着し、転写シートの保護層を転写した後、転写シートの離型シートを剥離し、その後、樹脂成形体に保護層が積層された積層体に曲げ加工を行う方法、(iii)被転写体(樹脂成形体)を射出成形する際に転写シートと一体化させ、その後、転写シートの離型シートを剥離する方法〔インモールド成形(射出成形同時転写加飾法)〕等が挙げられる。中でも、インモールド成形(射出成形同時転写加飾法)によれば、三次元曲面などの複雑な表面形状を有する樹脂成形体に加飾成形することができる。
インモールド成形による本発明の転写シートを用いる加飾成形品の製造方法の一実施態様としては、
(a)転写シートの保護層側をインモールド成形用金型の内側に向けて配置する工程と、
(b)インモールド成形用金型内に溶融した射出樹脂を射出注入する工程と、
(c)転写シートと、射出樹脂とを一体化させて、樹脂成形体(被転写体)の表面上に転写シートの保護層を転写する工程と、
(d)樹脂成形体(被転写体)を金型から取り出した後、転写シートの離型シートを剥離する工程と、を有するものである。
このような製造工程により加飾成形品を製造することで、樹脂成形体の表面に複雑な意匠を表現することができる。
[転写シート]
本発明の転写シートは、領域(P’)と、領域(P’)に隣接する領域(Q’)とを有する基材と、基材の領域(P’)上に設けられた凹凸形状を有する凹凸層と、凹凸層の凹凸形状の上に形成された第一離型層と、基材の領域(Q’)上に設けられた第二離型層と、第一離型層及び第二離型層の上に形成された保護層とを有する。本発明の転写シートは、保護層側の面に、透明粘着剤を介して黒色板に転写シートを貼りあわせ、基材、凹凸層、第一離型層、及び第二離型層を剥離し、保護層を転写したサンプルの領域(P’)上に設けられた保護層表面方向から測定した正反射方向の視感反射率Y11値、及び視感反射率Y11値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβ11が下記条件(I)及び(II)を満たすものである。
<条件(I)>
サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を領域(P’)上に設けられた保護層に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y11値が2.0%以下である。
<条件(II)>
サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を領域(P’)上に設けられた保護層に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、視感反射率Y11値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβ11を算出し、算出した前記β11が3.5度以下である。
条件(I)は、上記測定条件においてサンプルの視感反射率Y11値が2.0%以下である。視感反射率Y11値が2.0%を超える場合、防眩性を得ることが困難になる。また、視感反射率Y11値が2.0%を超える場合、十分なマット感が得られず、意匠性の低下を招くおそれがある。視感反射率Y11値の上限値は、上記観点から、好ましくは1.9%以下、より好ましくは1.8%以下である。
また、視感反射率Y11値の下限値は、低すぎる場合、白化しやすくなり、防眩性が強すぎてコントラストの低下を抑制できないおそれや、マット感が強すぎて正反射が過度に低下し照りがなく、高級感が得られないおそれがあるので、好ましくは1.0%以上、より好ましくは1.2%以上、さらに好ましくは1.4%以上である。
条件(I)の測定は、視野角、光源、測定波長を以下の条件とすることが好ましい。
視野角;2度、光源;D65、測定波長;380〜780nmを0.5nm間隔
なお、視感反射率は、CIE1931標準表色系のY値のことをいう。
β11を示す条件(II)を満たすことは、高周波の凹凸による大きな拡散が過度ではないことを意味している。β11が3.5度を超える場合、大きな拡散が過度であり、加飾成形品において、白化を招きやすく、コントラストが低下し、意匠性を低下させるおそれがある。
β11は、好ましくは3.4度以下、より好ましくは3.3度以下である。β11は、上記範囲であることで、加飾成形品において、白化を抑制し、コントラストを向上させ、視認性を高めることができる。また、β11は、上記範囲であることで、加飾成形品において、凹凸表面のギラツキを抑制することができる。なお、高周波成分の凹凸は剥離を重くする傾向にある。このため、β11を3.5度以下とすることにより、保護層からその他の層(基材、凹凸層等)を剥離しやすくできる。
β11は、一定量の高周波の凹凸による大きな拡散を確保することで、加飾成形品における防眩性を確保することができ、鏡面化を防止できるという観点から、好ましくは2.7度以上、より好ましくは2.8度以上、さらに好ましくは2.9度以上である。
本発明の転写シートは、上記サンプルの領域(P’)上に設けられた保護層側から測定した正反射方向の視感反射率Y11値の1/2の値を示す拡散角度の絶対値であるα11が下記条件(III)を満たすことが好ましい。
<条件(III)>
サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を領域(P’)上に設けられた保護層に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、算出したα11が2.2度以上2.8度以下である。
α11の上限は、過度の低周波成分がなくなることで、コントラストと照りの確保が可能になるという観点から、好ましくは2.7度以下、より好ましくは2.6度以下である。また、α11の下限は、低周波の凹凸による防眩性を付与することができるという観点から、好ましくは2.3度以上、より好ましくは2.4度以上である。
本発明の転写シートは、サンプルの保護層の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を第二離型層上の保護層の表面に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y22値と、第一離型層上の視感反射率Y11値とが下記条件(IV)を満たすことが好ましい。
1.5%≦視感反射率Y22値−視感反射率Y11値 (IV)
視感反射率Y22値と視感反射率Y11値とが、条件(IV)を満たすことで、加飾成形品の領域(P)の表面と領域(Q)の表面とが、異なる質感を有することになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、視感反射率Y22値−視感反射率Y11値の下限値は、好ましくは1.6%以上、より好ましくは1.7%以上である。
また、視感反射率Y22値−視感反射率Y11値の上限値は、加飾成形品の領域(P)と領域(Q)との適度なコントラスト有して、意匠性を向上させるという観点から、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.9%以下である。
なお、条件(IV)に対して、加飾成形品の領域(P)と領域(Q)との対比で、領域(P)の表面がより滑らかに視認されることにより、領域(P)の表面の方に強い光沢感を得るようにすることもできる。その際は、以下に示す条件(IV’)を満たすことが好ましい。
−1.5%≦視感反射率Y22値−視感反射率Y11値≦−0.5% (IV’)
視感反射率Y22値は、上記サンプルの領域(Q’)上に設けられた保護層に入射し、反射する光のうち、正反射方向に反射する光の視感反射率を示している。
視感反射率Y22値は、外光反射を抑制することができ、画像等の視認性を高めるという観点から、好ましくは3.6%以下、より好ましくは3.5%以下、さらに好ましくは3.4%以下である。
視感反射率Y22値は、加飾成形品における領域(Q)の光沢感を生じさせ、意匠性を向上させる観点から、好ましくは3.0%以上、より好ましくは3.1%以上、さらに好ましくは3.2%以上である。
なお、視感反射率Y22値は、5回の測定を行って、5回の平均値から算出できる。
また、領域(P’)上に設けられた保護層の視感反射率Y11値に対する領域(Q’)上に設けられた保護層の視感反射率Y22値が下記条件(A’)を満たすことが好ましい。
視感反射率Y22値/視感反射率Y11値≦2.3 (A’)
条件(A’)を満たすことで、加飾成形品の領域(P)の表面と領域(Q)の表面とが、異なる質感を有することになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、視感反射率Y値/視感反射率Y値の上限値は、好ましくは2.2以下、より好ましくは2.1以下である。
また、視感反射率Y22値/視感反射率Y11値の下限値は、加飾成形品の領域(P)と領域(Q)との適度なコントラスト有して、意匠性を向上させるという観点から、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上である。
本発明の転写シートは、サンプルの保護層の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を領域(Q’)上に設けられた保護層の表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、視感反射率Y22値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβ22を算出し、算出したβ22と、領域(P’)上に設けられた保護層のβ11とが下記条件(V)を満たすことが好ましい。
0.3度≦β11−β22 (V)
β11とβ22とが、条件(V)を満たすことで、領域(P’)上と領域(Q’)上の保護層において、高周波の凹凸に基づく大きな拡散が一定以上有することを意味する。つまり、β11とβ22とが、条件(V)を満たすことで、加飾成形品の領域(P)の表面と領域(Q)の表面とが、異なる質感を有することになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、β11−β22の下限値は、好ましくは0.4度以上、より好ましくは0.5度以上である。
また、β11−β22の上限値は、加飾成形品の領域(P)と領域(Q)との適度なコントラスト有して、意匠性を向上させるという観点から、好ましくは0.7度以下、より好ましくは0.6度以下である。
なお、条件(V)に対して、加飾成形品の領域(P)と領域(Q)との対比で、領域(P)の表面がより滑らかに視認されることにより、領域(P)の表面の方に強い光沢感を得るようにすることもできる。その際は、以下に示す条件(V’)を満たすことが好ましい。
−1.0度≦β11−β22≦−0.3度 (V’)
β22は、外光反射を抑制することができ、鏡面反射が強くなり過ぎることを抑制するという観点から、好ましくは3.7度以下、より好ましくは3.6度以下、さらに好ましくは3.5度以下である。
β22は、加飾成形品の領域(Q)において光沢感を生じさせ、意匠性を向上させる観点から、好ましくは2.8度以上、より好ましくは2.9度以上、さらに好ましくは3.0度以上である。
また、領域(Q’)上に設けられた保護層のβ22に対する領域(P’)上に設けられた保護層のβ11が下記条件(B’)を満たすことが好ましい。
β11/β22≦1.5 (B’)
条件(B’)を満たすことで、加飾成形品の領域(P)の表面と領域(Q)の表面とが、異なる質感を有することになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、β11/β22の上限値は、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下である。
また、β11/β22の下限値は、加飾成形品の領域(P)と領域(Q)との適度なコントラスト有して、意匠性を向上させるという観点から、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上である。
本発明の転写シートは、サンプルの保護層の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を領域(Q’)上に設けられた保護層の表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、視感反射率Y22値の1/2の値を示す拡散角度の絶対値であるα22を算出し、算出したα22と、領域(P’)上に設けられた保護層のα11とが下記条件(VI)を満たすことが好ましい。
0.2度≦α11−α22≦0.8度 (VI)
α11とα22とが、条件(VI)を満たすことで、加飾成形品の領域(P)と領域(Q)における低周波の凹凸に基づく小さな拡散が相違することを意味する。つまり、α11とα22とが、条件(VI)を満たすことで、加飾成形品の領域(P)の光沢感と領域(Q)の光沢感に差を生じさせることになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、好ましくは0.3度≦α11−α22≦0.75度であり、より好ましくは0.4度≦α11−α22≦0.6度である。
なお、条件(VI)に対して、加飾成形品の領域(P)と領域(Q)との対比で、領域(P)の表面がより滑らかに視認されることにより、領域(P)の表面の方に強い光沢感を得るようにすることもできる。その際は、以下に示す条件(VI’)を満たすことが好ましい。
−0.4度≦α11−α22≦−0.2度 (VI’)
α22は、加飾成形品において外光反射を抑制することができ、鏡面反射が強くなり過ぎることを抑制するという観点から、好ましくは2.6度以下、より好ましくは2.5度以下、さらに好ましくは2.4度以下である。
α22は、加飾成形品の領域(Q)において光沢感が生じさせ、意匠性を向上させる観点から、好ましくは1.8度以上、より好ましくは1.9度以上、さらに好ましくは2.0度以上である。
また、領域(Q’)上に設けられた保護層のα22に対する領域(P’)上に設けられた保護層のα11が下記条件(C’)を満たすことが好ましい。
α11/α22≦1.5 (C’)
条件(C’)を満たすことで、加飾成形品の領域(P)の表面と領域(Q)の表面とが、異なる光沢感を有することになり、意匠性を向上させることができる。上記観点から、α11/α22の上限値は、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下である。
また、α11/α22の下限値は、加飾成形品の領域(P)と領域(Q)との適度なコントラスト有して、意匠性を向上させるという観点から、好ましくは1.0を超え、より好ましくは1.1以上である。
図4乃至図6は、本発明の転写シートの一実施形態を示す断面図である。図4の転写シート40は、領域(P’)と、領域(P’)に隣接する領域(Q’)とを有する基材31を有する。基材31の領域(P’)上に凹凸形状を有する凹凸層32が設けられており、凹凸層32の凹凸形状の上に第一離型層33が設けられている。また、基材31の領域(Q’)上に第二離型層34が設けられている。さらに、第一離型層33及び第二離型層34の上に保護層35が設けられている。
また、図5に示すように、本発明の転写シート50は、基材41の領域(Q’)上に凹凸層42が形成されていてもよい。この場合、基材41の領域(Q’)上に形成された凹凸層42上に緩和層46が設けられ、緩和層46上に第二離型層44が設けられる。また、保護層45上に、アンカー層47、印刷層48、接着層49が設けられていてもよい。このように、転写シート50は、基材41、凹凸層42、第一離型層43、第二離型層44、及び緩和層46を有する離型シートXと、保護層45、アンカー層47、印刷層48、及び接着層49を有する転写層Yとから構成される。
なお、領域(P’)及び領域(Q’)の位置は特に限定されず、図5に示すように領域(Q’)の間または領域(Q’)の内部に領域(P’)が配置されていてもよいし、図6に示すように、領域(P’)の間または領域(P’)の内部に領域(Q’)が配置されていてもよい。
以下、本発明の転写シートを構成する各層について具体的に説明する。
(基材)
本発明の転写シートに用いられる基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ナイロン6又はナイロン66などで代表されるポリアミド系樹脂などによるものが利用される。これらのうち、利用条件により基材を選定する。例えば、耐熱性重視の観点からはポリエチレンテレフタレート等が、湾曲形状等の被転写物表面形状追随性重視の観点からはナイロン等を用いることができる。
基材の厚みとしては、成形性や形状追従性、取り扱いが容易であるとの観点から、25〜150μmの範囲が好ましく、30〜100μmの範囲がより好ましい。
また、基材の表面には、凹凸層等との接着性を高めるために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理や、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行ってもよい。
(凹凸層)
凹凸層は、凹凸形状を有する層であり、基材の領域(P’)上に形成される。
凹凸層は、フィラーとバインダー樹脂を主体とする樹脂組成物を用いて凹凸形状を形成する方法や、フィラーを含まず樹脂等のみを含んだ樹脂組成物を用いて相分離により凹凸形状を形成する方法や、フィラーを含まず樹脂等のみを含んだ樹脂組成物を型に転写させて凹凸形状を形成する方法等により形成することができる。本発明では、凹凸層は、フィラーとバインダー樹脂を主体とする樹脂組成物から形成されてなるものが好ましい。該樹脂組成物を用いることで、凹凸層の保護層と接する表面を凹凸形状にすることができる。バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が挙げられ、皮膜強度の観点から硬化性樹脂が好ましい。
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、及び光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂から選択することができる。熱硬化性樹脂としては、加熱すると硬化(不溶化)する樹脂として通常知られているものを適用できる。例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アクリルポリオールをイソシアネートで硬化させた樹脂、ポリエステルポリオールをメラミンで硬化させた樹脂、及びアクリル酸をメラミンで硬化させた樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂の構成成分であるモノマーを組み合わせて用いてもよい。
また、光硬化性樹脂を用いた組成物としては、例えば、分子中にビニル基等の反応性二重結合を有する化合物(低分子量物に限らず、高分子をも含む)と、光重合開始剤とを主成分とするものが挙げられる。また、電子線硬化性樹脂を用いた組成物としては、例えば、分子中にビニル基等の反応性二重結合を有する化合物と、必要により樹脂とを主成分とするものが挙げられる。上記分子中に反応性二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの1官能タイプや、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能タイプがある。また、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、ポリアルキドアクリレート、ポリオールアクリレートなどのオリゴマー等もある。さらに、ビニル基やアリル基を有する、例えば、スチレンモノマー、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、ペンテン、ヘキセン、不飽和化合物等がある。
光重合開始剤は、特に、紫外線で硬化させる場合に添加される。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系などの光重合開始剤が好適に用いられる。上記ベンゾインエーテル系としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等がある。アセトフェノン系としては、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−ter−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等がある。ベンゾフェノン系としては、ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ジベンゾスベレノン等がある。チオキサントン系としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−エチルアントラキノン等がある。
光重合開始剤は、反応性二重結合を有する化合物100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で添加される。また、光重合開始剤は1種に限らず、2種以上を併用してもよい。
上記の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、あるいは電子線硬化性樹脂の硬化性樹脂を凹凸層に使用することにより、フィラーを強固に担持し、また凹凸層の被膜が強固となる。このように、フィラーを強固に担持しているため、フィラーが取れることを契機とした凹凸層の剥離(転写)が起こらない。これにより、転写シートの転写層が転写して形成された加飾成形品の表面には、微細な凹凸形状が安定して形成され、不揃いの部分が生じない。
凹凸層に含有するフィラーは、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、有機フィラー、あるいは無機フィラーを用いることができる。ここで、本発明では、光透過式遠心沈降法により求められる全フィラーの50質量%点にあるフィラーの「等価球形直径」をフィラーの平均粒径と定義する。平均粒径を0.5μm以上とすることで、加飾成形品の表面に十分な微細凹凸を設けることができ、十分なマット感が得られる。平均粒径を10μm以下とすることで、フィラーを多量に添加しなくても十分なマット感が得られ、また、離型シートを保護層との界面で剥離しやすくすることができる。
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、ゼオライト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、ガラスビーズなどのフィラーが挙げられる。また、有機フィラーとしては、各種の合成樹脂粒子、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン/メラミン/ホルマリン縮合物、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂等が挙げられ、これらの1種又は2種を混合して用いることもできる。特に、メラミンとホルムアルデヒドの縮合物や、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドの縮合物の有機フィラーが、加飾成形品の表面のマット感を向上させ、反射防止性の効果を高める点、あるいは塗工時のインキの安定性の点から好ましい。
上記のフィラーは、バインダー樹脂100質量部(固形分)に対し、0.5〜30質量部(固形分)で含有していることが好ましい。0.5質量部以上とすることで、凹凸層表面に適度な微細凹凸形状を形成することができ、30質量部以下とすることで、凹凸層の膜強度の低下を抑制し、離型シートを保護層との界面で剥離しやすくすることができる。
凹凸層は、上記のフィラーとバインダー樹脂に、必要に応じて、添加剤を加え、適当な溶媒により、溶解または分散させて凹凸層用塗工液を調製し、これを基材上に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スリットリバース法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により塗布、乾燥し、必要に応じて硬化して形成することができる。
凹凸層の乾燥後の厚みT(以下、凹凸層の厚みTと称する)は、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜8μmである。なお、凹凸層の厚みTとは、凹凸層の基部から頂部までの厚みを指すものである。
(第一離型層)
第一離型層は、基材及び凹凸層から転写層を容易に剥離すると共に、加飾成形品のコントラストを向上させるために設けられる層であり、上述の領域(P’)の上に形成される。したがって、第一離型層の表面形状は、凹凸層の凹凸形状に追随した形状、即ち、凹凸形状となる。
凹凸層の厚みTと第一離型層の乾燥後の厚みT(以下、第一離型層の厚みTと称する)との比(T/T)は、好ましくは0.2〜200、より好ましくは1.0〜100、更に好ましくは2.0〜50、より更に好ましくは3.0〜10である。0.2以上とすることで、低周波成分の凹凸による防眩性を付与しやすくすることができ、200以下とすることで、加飾成形品のコントラストが向上するとともに、ギラツキを抑制し、意匠性を高めることができる。
なお、凹凸層の厚みT及び第一離型層の厚みTは、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から20箇所の厚みを測定し、20箇所の値の平均値から算出できる。STEMの加速電圧は10kv〜30kVとすることが好ましい。STEMの倍率は、測定膜厚がミクロンオーダーの場合は1000〜7000倍とすることが好ましく、測定膜厚がナノオーダーの場合は5万〜30万倍とすることが好ましい。
第一離型層は、保護層との接着力が低く、基材から転写層を容易に剥離し得る材料であれば特に限定されず、例えば、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル−メラミン系樹脂が含まれる。)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用いて形成することができる。
本発明では、特に、エステル基含有硬化性樹脂を用いて形成することが好ましい。エステル基含有硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、側鎖にエステル基を有する電離放射線硬化性樹脂であればよく、側鎖にエステル基を有するアクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびポリエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、側鎖にエステル基および水酸基を有するポリマーとイソシアネートとを反応してなる樹脂であればよく、例えば、側鎖にエステル基および水酸基を有するアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、並びにフェノール樹脂とイソシアネートとを反応してなる樹脂を用いることでき、特にアクリルポリオールとイソシアネートとを反応してなる樹脂を用いることが好ましい。
第一離型層は、平均粒子径0.5μm以上のフィラーを含まないことが好ましく、平均粒子径0.2μm以上のフィラーを含まないことがより好ましい。第一離型層が平均粒子径0.5μm以上のフィラーを含まないことで第一離型層上の凹凸の高周波成分を減少させることができる。したがって、本発明の転写シートを用いて得られる加飾成形品は、その表面に第一離型層によって凹凸層の高周波成分の凹凸が緩和された凹凸形状(第一離型層の表面の凹凸形状)が形成されることにより、凹凸形状部分のコントラストが向上し、意匠性を高めることができる。また、凹凸形状部分のギラツキを抑制することができる。
第一離型層は、塗工液にチキソ性を付与するため、0.5μm未満のフィラーを添加してもよい。ただし、高周波成分の凹凸を少なくする観点から、該フィラーの平均粒子径は0.2μm未満であることが好ましく、その含有量は樹脂成分100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。
第一離型層は、第一離型層を構成する樹脂と適当な溶媒等を含む第一離型層用塗工液を調製し、これを凹凸層の凹凸形状の上に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スリットリバース法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
第一離型層の厚みTは、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
(第二離型層)
第二離型層は、基材及び緩和層から転写層を容易に剥離するために設けられる層であり、基材の領域(Q’)上に設けられる。
第二離型層は、保護層との接着力が低く、基材から転写層を容易に剥離し得る材料であれば特に限定されず、例えば、第一離型層の項で例示した樹脂を用いて形成することができ、上記第一離型層に用いられる樹脂組成物と同じであってもよく、異なっていてもよい。
第二離型層は、平均粒子径0.5μm以上のフィラーを含まないことが好ましく、平均粒子径0.2μm以上のフィラーを含まないことがより好ましい。第二離型層が平均粒子径0.5μm以上のフィラーを含まないことで、第二離型層の表面の平滑性が向上し、それによって、第二離型層上に設けた保護層の面の平滑性を向上させることができる。その結果、保護層を備える転写層が被転写体に転写された時、加飾成形品の表面に保護層の平滑な面が形成されるため、凹凸層及び第一離型層により形成される凹凸形状と異なる風合いを表現できる。
第二離型層は、塗工液にチキソ性を付与するため、0.5μm未満のフィラーを添加してもよい。ただし、高周波成分の凹凸を少なくする観点から、フィラーの平均粒子径は0.2μm未満であることが好ましく、その含有量は樹脂成分100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。
第二離型層は、上述の樹脂と適当な溶媒等を含む第二離型層用塗工液を調製し、これを基材上に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スリットリバース法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
基材の領域(Q’)上に凹凸層を有さない場合、並びに基材の領域(Q’)上に凹凸層及び緩和層を有する場合の第二離型層の乾燥後の厚みT(以下、第二離型層の厚みTと称する)は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。また、基材の領域(Q’)上に凹凸層を有し、緩和層を有さない場合の第二離型層の厚みTは、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
(緩和層)
本発明の転写シートは、基材の領域(Q’)上に凹凸層を形成した場合には、凹凸層の凹凸形状をより滑らかにするために、該凹凸層と第二離型層との間に、さらに緩和層を設けることが好ましい。
緩和層は、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂のみから形成してもよいし、これらの樹脂をバインダーとし、適当な色の顔料又は染料を着色剤として含有する着色インキにより形成してもよい。緩和層が着色剤を含むことで、転写層に図柄を印刷する場合の位置あわせ、及び被転写体との位置あわせをするためのマーカーを、緩和層形成と同時に形成することができる。この場合、色とは、人の感じられる色に限らず、赤外線等、機械的に検知できる色を含む。中でも緩和層は、光電管の光源の種類によらず確実に検出される観点から黒色が好ましい。印刷方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷法が挙げられる。なお、第二離型層に着色剤を含有させず、緩和層に着色剤を含有させることにより、第二離型層の表面に着色剤に起因する凹凸を形成させにくくできるとともに、第二離型層と保護層との剥離性を良好にしやすくできる。
緩和層の厚みは、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。着色剤の平均粒径は5nm〜500nmであることが、凹凸を緩和させる観点から好ましい。ここで、平均粒子径は、溶液中の該着色剤を動的光散乱方法で測定し、粒子径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50:メジアン径)であり、Microtrac粒度分析計(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
基材の領域(Q’)上に凹凸層を形成する場合の凹凸層の厚みと凹凸層上に存在する離型シートを構成する層の厚みの合計との比[凹凸層の厚み/凹凸層上に存在する離型シートを構成する層の厚みの合計]は、好ましくは0.01〜70であり、より好ましくは0.1〜15である。
(剥離層)
本発明の転写シートは、第一離型層及び第二離型層と、保護層との間に、さらに剥離層を設けてもよい。剥離層を設けることで、転写シートから離型シートを剥離して、該剥離層を含む転写層を確実かつ容易に被転写体へ転写させることができる。
剥離層は、アクリル系樹脂を含んでなり、ビニル系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。アクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、およびポリ(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。ビニル系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、およびポリビニルブチラール等が挙げられる。剥離層は、アクリル系樹脂と、ビニル系樹脂および/またはポリエステル系樹脂とを組み合わせて含むことで、離型層との密着強度を向上させることができる。
剥離層は、離型剤をさらに含んでもよい。離型剤としては、合成ワックスや天然ワッス等のワックス類が挙げられる。合成ワックスとしては、ポリエチレンワックスやポリプピレンワックス等のポリオレフィンワックスが好ましい。剥離層は離型剤を含むことで、離型性を向上させることができる。
本発明の転写シートは、保護層の基材とは反対側の面上に、さらに、アンカー層、印刷層、接着層等の機能層を有していてもよい。保護層、アンカー層、印刷層、及び接着層の材料等は「加飾成形品」の項で説明したとおりである。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
1.物性及び評価
実施例及び比較例で得られた加飾成形品について、以下の測定及び評価を行った。
1−1.視感反射率Y値及び視感反射率Y
加飾成形品の樹脂成形体側の面に、透明粘着剤を介して黒色板を貼り合わせたサンプルを作製した。サンプルは、樹脂成形体、透明粘着剤及び黒色板の屈折率差が0.05以内のものを用いる。ここでは、樹脂成形体、透明粘着剤及び黒色板の屈折率をそれぞれ1.49で一致させた。サンプルの領域(P)の凹凸表面に対して垂直に入射する可視光線の入射角を0度として、入射角10度で凹凸表面に可視光線を入射させた際に、入射光の正反射光の視感反射率Y値を測定した。また、サンプルの領域(Q)に対して垂直に入射する可視光線の入射角を0度として、入射角10度で凹凸表面に可視光線を入射させた際に、入射光の正反射光の視感反射率Y値を測定した。
そして、上記測定した視感反射率Y値及び視感反射率Y値から、視感反射率Y値−視感反射率Y値の値を算出した。
視感反射率Y値及び視感反射率Y値の測定装置は、三次元変角分光測色システム(村上色彩技術研究所製、商品名:GCMS−11)を用い、受光角は−10度とした。
なお、実施例1で得られた加飾成形品の保護層の領域(Q)は、略平滑であることから視感反射率Y値の測定を省略した。
1−2.拡散角度
上記作製したサンプルの領域(P)の凹凸表面に対して垂直に入射する可視光線の入射角を0度として、入射角10度で凹凸表面に可視光線を入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定した、また、サンプルの領域(Q)に対して垂直に入射する可視光線の入射角を0度として、入射角10度で凹凸表面に可視光線を入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定した。測定した領域(P)及び領域(Q)のそれぞれの視感反射率から、α、α、β及びβを算出した。
そして、上記算出したα、α、β及びβから、α−α及びβ−βを算出した。
視感反射率の測定装置は、三次元変角分光測色システム(村上色彩技術研究所製、商品名:GCMS−11)を用い、正反射の±5度(受光角が−5度〜−15度)の範囲内を0.1度間隔とした。
なお、実施例1で得られた加飾成形品の保護層の領域(Q)は、略平滑であることからα及びβの測定を省略し、α−α及びβ−βの算出を省略した。
2.コントラスト
実施例及び比較例で得られた加飾成形品の透明アクリルシート側の面を、画像が印刷された黒色アクリル樹脂板の印刷面上に貼り合わせた。蛍光灯のついた明るい室内で、加飾成形品の保護層の領域(P)上の凹凸部分を目視で観察し、黒色の背景と画像とのコントラストが極めてよいものを3点、黒色の背景と画像とのコントラストがよいものを2点、黒色の背景と画像とのコントラストが悪いものを1点として、20人の被験者が評価を行い、平均点を算出した。
<評価基準>
○:平均点が2.5以上
△:平均点が1.5以上2.5未満
×:平均点が1.5未満
3.ギラツキ
実施例及び比較例で得られた加飾成形品の透明アクリルシート側の面を表示装置の画面に貼り合わせ、表示装置の画面の領域(P)及び領域(Q)について、正面から目視により観察し、映像光に微細な輝度のばらつきが全くなかったものを3点、映像光に微細な輝度のばらつきがほとんどなかったものを2点、映像光に微細な輝度のばらつきがみられたものを1点として、20人の被験者が評価を行い、平均点を算出した。
<評価基準>
○:平均点が2.5以上
△:平均点が1.5以上2.5未満
×:平均点が1.5未満
4.意匠性
実施例及び比較例で得られた加飾成形品の保護層の領域(P)及び領域(Q)について、該保護層側から目視により観察し、領域(P)及び領域(Q)の光沢感に極めて差があり、且つ領域(P)の正反射が強すぎないものを3点、領域(P)及び領域(Q)の光沢感に差があり、且つ領域(P)の正反射が強すぎないものを2点、領域(P)及び領域(Q)の光沢感に差がないものを1点として、20人の被験者が評価を行い、平均点を算出した。
<評価基準>
○:平均点が2.5以上
△:平均点が1.5以上2.5未満
×:平均点が1.5未満
(実施例1)
(1)転写シートの製造
基材として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(東レ(株)製、S105、コロナ処理)を準備し、PET基材の一方の面の領域(P’)上に、下記処方の凹凸層用塗工液を乾燥後の塗布量が3.0g/mとなるように塗布し、塗膜を形成した後、室温(25℃)で72時間エージングし、プレ硬化させた凹凸層を形成した。
<凹凸層用塗工液>
・アクリルポリオール(綜研化学(株)製、商品名:サーモラックSU100A、固形分:50%、溶剤:トルエン/酢酸エチル混合溶剤):40質量部
・フィラー((株)日本触媒製、商品名:エポスターS12、平均粒子径1.2μm):4質量部
・イソシアネート(三井化学(株)製、タケネートD−110N、固形分:75%、溶剤:酢酸エチル)(タケネートは登録商標):14質量部
・酢酸エチル:40質量部
次いで、基材の領域(P’)上に形成したプレ硬化の凹凸層上、及び基材の領域(P’)に隣接する領域(Q’)上に、下記処方の離型層用塗工液を乾燥後の塗布量が0.6g/mとなるように塗布した後、40℃で96時間エージングし、硬化させ、プレ硬化の凹凸層を完全に硬化させると共に、離型層(凹凸層上の第一離型層(厚み:0.5μm)、及び領域(Q’)上の第二離型層(厚み:0.5μm)を形成した。なお、完全硬化後の凹凸層の厚みは2.5μmであった。
<離型層用塗工液>
・アクリルポリオール(綜研化学(株)製、商品名:サーモラックSU100A、固形分:50%、溶剤:トルエン/酢酸エチル混合溶剤):70質量部
・イソシアネート(三井化学(株)製、タケネートD−110N、固形分:75%、溶剤:酢酸エチル)(タケネートは登録商標):25質量部
・酢酸エチル:161質量部
・メチルイソブチルケトン:56質量部
次いで、第一離型層及び第二離型層上に下記処方の保護層用塗工液を乾燥後の塗布量が6.5g/mとなるように塗布し、塗膜を形成した後、フュージョンUVランプシステムを用いて光源をHバルブ、搬送速度20m/min、出力40%の条件で照射し、保護層を半硬化させた。このときの積算光量を、アイグラフィックス(株)製、照度計UVPF−A1により測定したところ、15mJ/mであった。なお、半硬化後の保護層の厚みは6μmであった。
<保護層用塗工液>
・ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物(大日精化(株)製、商品名:セイカビームHT−X、固形分:35%、溶剤:トルエン/酢酸エチル混合溶剤):70質量部
・ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物(大日精化(株)製、商品名:セイカビームEXF−HT−1、固形分:40%、溶剤:トルエン/メチルエチルケトン混合溶剤):30質量部
次いで、保護層上に下記処方のアンカー層用塗工液を乾燥後の塗布量が3.0g/mとなるように塗布し、塗膜を形成した後、40℃で72時間乾燥し、硬化させ、厚さ2μmのアンカー層を形成した。
<アンカー層用塗工液>
・アクリルポリオール(大日精化(株)製、商品名:TM−VMAC、固形分25%、溶剤:トルエン/酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶剤):100質量部
・キサンメチレンジイソシアネート(大日精化(株)製、商品名:PTC−RC3、固形分:75%、溶剤:酢酸エチル):10質量部
次いで、アンカー層上に下記処方の接着層用塗工液を塗布量2.5g/mで塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を乾燥し、厚み2μmの接着層を形成し、転写シートを得た。
<接着層用塗工液>
・アクリル系樹脂(大日精化(株)製、商品名:TM−R600、固形分20%、溶剤:酢酸エチル/酢酸−n−プロピル/メチルエチルケトン混合溶剤):100質量部
・メチルエチルケトン:40質量部
(2)加飾成形品の製造
得られた転写シートの接着層側の面を透明アクリルシート(クラレ(株)製、商品名:コモグラスDK3、厚み2mm)に重ね合わせ、転写シートの基材側から加熱転写した。次いで、転写シートの離型シート(基材、凹凸層、第一離型層、及び第二離型層)を剥離した後、樹脂成形体に紫外線照射(大気中、Hバルブ、800mJ/cm)し、保護層(厚み6μm)を完全に硬化させ、加飾成形品を得た。
(実施例2)
(1)転写シートの製造
基材として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(東レ(株)製、S105、コロナ処理)を準備し、PET基材の一方の面上に、下記処方の凹凸層用塗工液を乾燥後の塗布量が3.0g/mとなるように塗布し、塗膜を形成した後、室温(25℃)で72時間エージングし、プレ硬化させた凹凸層を形成した。
<凹凸層用塗工液>
・アクリルポリオール(綜研化学(株)製、商品名:サーモラックSU100A、固形分:50%、溶剤:トルエン/酢酸エチル混合溶剤):40質量部
・フィラー((株)日本触媒製、商品名:エポスターS12、平均粒子径1.2μm):4質量部
・イソシアネート(三井化学(株)製、タケネートD−110N、固形分:75%、溶剤:酢酸エチル)(タケネートは登録商標):14質量部
・酢酸エチル:40質量部
次いで、基材の領域(Q’)上に形成したプレ硬化の凹凸層上に下記処方の緩和層用塗工液を塗布量1.0g/mで塗布し、該塗膜を80℃で乾燥し、厚さ0.8μmの緩和層をグラビア印刷により形成した。
<緩和層用塗工液>
・黒色グラビアインキ((株)昭和インク工業所製、商品名:EIS(NT)黒 固形分:32% メチルエチルケトン/酢酸エチル/メチル磯ブチルケトン混合溶剤):100質量部
・メチルエチルケトン:65質量部
次いで、基材の領域(P’)上のプレ硬化した凹凸層上、及び基材の領域(Q’)上の緩和層上に、下記処方の離型層用塗工液を乾燥後の塗布量が0.6g/mとなるように塗布した後、40℃で96時間エージングし、硬化させ、プレ硬化の凹凸層を完全に硬化させると共に、離型層(凹凸層上の第一離型層(厚み:0.5μm)、及び緩和層上の第二離型層(厚み:0.5μm)を形成した。なお、完全硬化後の凹凸層の厚みは2.5μmであった。
<離型層用塗工液>
・アクリルポリオール(綜研化学(株)製、商品名:サーモラックSU100A、固形分:50%、溶剤:トルエン/酢酸エチル混合溶剤):70質量部
・イソシアネート(三井化学(株)製、タケネートD−110N、固形分:75%、溶剤:酢酸エチル)(タケネートは登録商標):25質量部
・酢酸エチル:161質量部
・メチルイソブチルケトン:56質量部
次いで、実施例1と同様にして、第一離型層及び第二離型層上に、保護層、アンカー層、及び接着層を順次形成し、転写シートを得た。
(2)加飾成形品の製造
得られた転写シートの接着層側の面を透明アクリルシート(クラレ(株)製、商品名:コモグラスDK3、厚さ2mm)に重ね合わせ、転写シートの基材側から加熱転写した。転写シートの離型シート(基材、凹凸層、緩和層、第一離型層、及び第二離型層)を剥離した後、樹脂成形体に紫外線照射(大気中、Hバルブ、800mJ/cm)し、保護層(厚み6μm)を完全に硬化させ、加飾成形品を得た。
(実施例3)
(1)転写シートの製造
実施例1において、凹凸層用塗工液のフィラーを5.0質量部に変更した以外は実施例1と同様にして転写シートを得た。
(2)加飾成形品の製造
得られた転写シートを用いて、実施例1と同様にして加飾成形品を得た。
(実施例4)
(1)転写シートの製造
実施例2において、凹凸層用塗工液のフィラーを3.5質量部に変更した以外は実施例2と同様にして転写シートを得た。
(2)加飾成形品の製造
得られた転写シートを用いて、実施例2と同様にして加飾成形品を得た。
(比較例1)
(1)転写シートの製造
実施例2で、基材の領域(P’)上に形成した凹凸層上に第一離型層を形成しなかった以外は実施例2と同様にして転写シートを得た。
(2)加飾成形品の製造
得られた転写シートを用いて、実施例2と同様にして加飾成形品を得た。
(比較例2)
(1)転写シートの製造
実施例2において、凹凸層用塗工液のフィラーを平均粒子径1.0μmのものとし、3.5質量部に変更した以外は実施例2と同様にして転写シートを得た。
(2)加飾成形品の製造
得られた転写シートを用いて、実施例2と同様にして加飾成形品を得た。

本発明の加飾成形品は、携帯電話などの通信機器、自動車内部の情報機器、家電製品などの分野において好適に用いることができる。特に、コントラストが高く、意匠性に優れると共に表面のギラツキが抑制されるため、携帯電話などの通信機器、自動車内部の情報機器などのディスプレイに好適に用いることができる。
10、20、30 加飾成形品
40、50、60 転写シート
1、11、21 樹脂成形体
2、12、22、35、45、55 保護層
13、23、47、57 アンカー層
14、24、48、58 印刷層
15、25、49、59 接着層
31、41、51 基材
32、42、52 凹凸層
33、43、53 第一離型層
34、44、54 第二離型層
46、56 緩和層
P 領域(P)
Q 領域(Q)
P’ 領域(P’)
Q’ 領域(Q’)

Claims (9)

  1. 樹脂成形体上に、凹凸表面を有する保護層を備える加飾成形品であって、
    前記樹脂成形体側の面に、透明粘着剤を介して黒色板を貼り合わせたサンプルの前記凹凸表面方向から測定した正反射方向の視感反射率Y値、及び前記視感反射率Y値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβが下記条件(1)及び(2)を満たす加飾成形品。
    <条件(1)>
    前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記凹凸表面に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y値が2.0%以下である。
    <条件(2)>
    前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記凹凸表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、前記視感反射率Y値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβを算出し、算出した前記βが3.5度以下である。
  2. 前記視感反射率Y値の1/2の値を示す拡散角度の絶対値であるαが下記条件(3)を満たす請求項1に記載の加飾成形品。
    <条件(3)>
    前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記凹凸表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、算出した前記αが2.2度以上2.8度以下である。
  3. 前記保護層が、前記凹凸表面を有する領域(P)と、前記領域(P)に隣接する領域(Q)とを有し、
    前記サンプルの前記領域(Q)の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(Q)の表面に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y値と、前記領域(P)の前記視感反射率Y値とが下記条件(4)を満たす請求項1又は2に記載の加飾成形品。
    1.5%≦視感反射率Y値−視感反射率Y値 (4)
  4. 前記サンプルの前記領域(Q)の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(Q)の表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、視感反射率Y値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβを算出し、算出した前記βと、前記領域(P)の前記βとが下記条件(5)を満たす請求項1〜3のいずれか1項に記載の加飾成形品。
    0.3度≦β−β (5)
  5. 領域(P’)と、前記領域(P’)に隣接する領域(Q’)とを有する基材と、
    前記基材の領域(P’)上に設けられた凹凸形状を有する凹凸層と、
    前記凹凸層の前記凹凸形状の上に形成された第一離型層と、
    前記基材の領域(Q’)上に設けられた第二離型層と、
    前記第一離型層及び前記第二離型層の上に形成された保護層とを有する転写シートであって、
    前記保護層側の面に、透明粘着剤を介して黒色板に前記転写シートを貼りあわせ、前記基材、前記凹凸層、前記第一離型層、及び前記第二離型層を剥離し、前記保護層を転写したサンプルの前記領域(P’)上に設けられた前記保護層表面方向から測定した正反射方向の視感反射率Y11値、及び前記視感反射率Y11値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβ11が下記条件(I)及び(II)を満たす転写シート。
    <条件(I)>
    前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(P’)上に設けられた前記保護層に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y11値が2.0%以下である。
    <条件(II)>
    前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(P’)上に設けられた前記保護層に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、前記視感反射率Y11値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβ11を算出し、算出した前記β11が3.5度以下である。
  6. 前記視感反射率Y11値の1/2の値を示す拡散角度の絶対値であるα11が下記条件(III)を満たす請求項5に記載の転写シート。
    <条件(III)>
    前記サンプルの法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(P’)上に設けられた前記保護層に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、算出した前記α11が2.2度以上2.8度以下である。
  7. 前記サンプルの前記保護層の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(Q’)上に設けられた前記保護層の表面に入射させた際の正反射方向の視感反射率Y22値と、前記領域(P’)上に設けられた前記保護層の前記視感反射率Y11値とが下記条件(IV)を満たす請求項5又は6に記載の転写シート。
    1.5%≦視感反射率Y22値−視感反射率Y11値 (IV)
  8. 前記サンプルの前記保護層の表面の法線方向から10度傾いた可視光線を前記領域(Q’)上に設けられた前記保護層の表面に入射させた際の正反射方向に対して±5度の範囲で0.1度ごとに視感反射率を測定し、正反射方向の角度を0度とした場合における、視感反射率Y22値の1/3の値を示す拡散角度の絶対値であるβ22を算出し、算出した前記β22と、前記領域(P’)上に設けられた前記保護層の前記β11とが下記条件(V)を満たす請求項5〜7のいずれか1項に記載の転写シート。
    0.3度≦β11−β22 (V)
  9. 請求項5〜8のいずれか1項に記載の転写シートの保護層を被転写体に転写する工程と、
    前記転写シートの基材、凹凸層、第一離型層、及び第二離型層を剥離する工程と、
    を有する、加飾成形品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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