以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
まず、アンテナシートの製造方法によって製造されるアンテナシートを備える非接触ICカードについて説明する。
図1の(a)部及び(b)部に示されるように、非接触ICカード1(非接触情報媒体)は、RFID付き無線情報媒体である。非接触ICカード1は、主にHF帯(例えば13.56MHz)の信号を用いて外部読み書き装置(不図示)との間でRFID技術を用いて非接触通信を行う。非接触ICカード1は、アンテナシート2を備え、アンテナシート2は、フィルム基材3とコイル回路部4とICチップ6とを有する。
フィルム基材3は、矩形状を有し、厚みが0.01mm以上0.5mm以下のシート状部材である。フィルム基材3は、絶縁性の熱可塑性樹脂により形成される。フィルム基材3は、絶縁性及び熱可塑性を有していればよく、透明樹脂又は不透明樹脂を用いてもよい。このような樹脂材料には、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレンなどがある。なお、フィルム基材3は、上述した樹脂材料からなる単層のシート部材に限定されない。フィルム基材3は、上述した樹脂材料からなるシートが積層された積層シート状の部材であってもよい。本実施形態の非接触ICカード1は、接着性及び加工性などの観点からフィルム基材3の材料として、ポリエチレンナフタレートを用いる。フィルム基材3の厚みは例えば0.038mmである。
コイル回路部4は、アンテナコイル7と、ブリッジ線8とを有する。
アンテナコイル7は、フィルム基材3の主面3aに設けられ、外部読み書き装置のアンテナと電磁結合して非接触の無線通信を行う。非接触ICカード1は、この無線通信により、信号の授受及び電力の受給を非接触状態で行う。アンテナコイル7は、アルミニウムのような導体(金属箔)から形成される。アンテナコイル7の形状は、フィルム基材3の周縁部に沿った平面視略矩形の平面渦巻き状である。図2に示されるように、アンテナコイル7は、第1のコイル部11と第2のコイル部12と短絡部13とを有する。
第1のコイル部11は、フィルム基材3の主面3aに設けられる。第1のコイル部11は、一本の導電ラインが環状又は渦巻き状に巻き回された形状を呈する。第1のコイル部11は、内側に配置された第1の接続端部11aと、外側に配置された第4の接続端部11bとを有する。
第2のコイル部12は、フィルム基材3の主面3aに設けられる。第2のコイル部12は、第1のコイル部11の内側に配置される。換言すると、第1のコイル部11は、第2のコイル部12を囲んでいる。第2のコイル部12は、一本の導電ラインが環状又は渦巻き状にされた形状を呈する。第2のコイル部12は、第2の接続端部12aと、第5の接続端部12bと、を有する。
短絡部13は、フィルム基材3の主面3aに設けられる。短絡部13は、第2のコイル部12と一体化された部分である。短絡部13は、第3の接続端部13aと第6の接続端部13bとを有する。第6の接続端部13bは、第2のコイル部12における第5の接続端部12bと一体的に形成される。
ブリッジ線8は、フィルム基材3の裏面3bに設けられ、アンテナコイル7の外周側と内周側とを電気的に接続する。ブリッジ線8の材料は、アンテナコイル7と同じであり、一例としてアルミニウムである。フィルム基材3の裏面3bに配置されたブリッジ線8によれば、アンテナコイル7に干渉することなく、アンテナコイル7の内側と外側とを電気的に接続することができる。ブリッジ線8の一端は、短絡部13における第6の接続端部13bに接続され、他端は第1のコイル部11における第4の接続端部11bに接続される。ブリッジ線8と第4の接続端部11bとは、例えばフィルム基材3を貫通する貫通電極により電気的に接続される。また、ブリッジ線8と第6の接続端部13bとも、貫通電極により電気的に接続される。
コイル回路部4には、ICチップ6が取り付けられる。ICチップ6は、ICカード又はICタグの非接触通信のためのチップである。ICチップ6は、アンテナコイル7を介して無線通信処理を行い、外部読み書き装置との間で所定の信号の授受を行う。図3は、図1に示された仮想面B1におけるアンテナシート2の断面を示す。図3に示されるように、ICチップ6は、本体部6aと、複数のバンプ9a,9b(接続電極)とを有する。バンプ9a,9bは、本体部6aのフィルム基材3と対面する下面に設けられる。ICチップ6は、フィルム基材3の主面3a上においてアンテナコイル7の経路上に配置され、バンプ9a,9bがアンテナコイル7に接続される。
コイル回路部4とICチップ6とを備えるアンテナシート2は、図4の(a)部及び(b)部に示された回路構成を有する。図4の(a)部及び(b)部に示されるように、コイル回路部4は、第1のコイル部11と、第2のコイル部12と、短絡部13と、ブリッジ線8と、を有する。コイル回路部4単体では、第1の接続端部11a、第2の接続端部12a及び第3の接続端部13aは、開放端である。第4の接続端部11bは、ブリッジ線8を介して第6の接続端部13bに接続される。第5の接続端部12bは、第6の接続端部13bに接続される。
次に、アンテナシート2の製造方法について、図5に示されたフロー図を参照しつつ説明する。
まず、フィルム基材3を準備する(図5:ステップS1)。次に、コイル回路部4をフィルム基材3に形成する(図5:ステップS2)。このステップS2では、同種の金属箔(厚さ5μm〜50μmの銅箔又はアルミ箔)を、フィルム基材3の表裏に接着剤で貼り合わせた後、エッチングを用いてコイルのパターンを形成する。フィルム基材3の表裏の金属箔を、同じ金属で形成することにより、フィルム基材3の表裏を同時に同じ条件でエッチングすることができる。また、同種の金属によれば溶接作業を容易にできると共に、溶接個所における電食の発生を抑制できる。
図6は、図1における領域B2を拡大して示す平面図である。図6に示されるように、ステップS2では、第1の接続端部11a、第2の接続端部12a及び第3の接続端部13aを、フィルム基材3の主面3aに設定された矩形状の接続端領域14に設ける。例えば、第1の接続端部11aを接続端領域14に設けるとは、少なくとも、第1の接続端部11aの一部分を接続端領域14の内部に設ける構成をいう。なお、第1の接続端部11aの全体を接続端領域14の内部に設けてもよい。第2の接続端部12a及び第3の接続端部13aも同様である。従って、接続端領域14は、第1の接続端部11aの一部と、第2の接続端部12aの一部と、第3の接続端部13aの一部と、を含む。さらに、接続端領域14は、第1の接続端部11aと第2の接続端部12aとの間隙と、第1の接続端部11aと第3の接続端部13aとの間隙と、第2の接続端部12aと第3の接続端部13aとの間隙と、を含む。
この接続端領域14は、ICチップ6が配置されるICチップ配置領域16に含まれる。接続端領域14がICチップ配置領域16に含まれるとは、ICチップ配置領域16が接続端領域14の全体を含むことをいう。ICチップ配置領域16は、例えば、ICチップ6の外形と略同形状の矩形状である。なお、ICチップ配置領域16は、ICチップ6の外形寸法に対して、余裕寸法を含んだ大きさとしてもよい。また、ICチップ配置領域16の一辺は、少なくともICチップ6のバンプ9a,9b間の距離よりも長い。このような構成によれば、ICチップ配置領域16にICチップ6を配置することにより、ICチップ6のバンプ9を第1の接続端部11a、第2の接続端部12a及び第3の接続端部13aに対して選択的に取り付けることができる。
フィルム基材3上における接続端領域14の位置について詳細に説明する。図7に示されるように、接続端領域14は、フィルム基材3の主面3aにおいて、フィルム基材3の外縁の近傍に設定される。具体的には、フィルム基材3は、主面3aに平行な2本の中心軸線A1,A2を有する。中心軸線A1は、フィルム基材3の長辺3cに対して平行である。中心軸線A2は、フィルム基材3の長辺3cに対して直交する。接続端領域14は、中心軸線A1と、フィルム基材3の長辺3cとの間に配置される。そして、接続端領域14から長辺3cまでの距離L1は、接続端領域14から中心軸線A1までの距離L2より短い。また、接続端領域14は、中心軸線A2と、フィルム基材3の短辺3dとの間に配置される。そして、接続端領域14から短辺3dまでの距離W1は、接続端領域14から中心軸線A2までの距離W2より短い。
次に、ICチップ6をコイル回路部4に接続する(図5:ステップS3)。このステップS3では、まず、非接触ICカード1が用いられる使用態様に応じて、非接触ICカード1が単体で有すべき共振周波数を決める(図5:ステップS3a)。続いて、式(1)を利用して、当該共振周波数に対応するインダクタンスを算出する(図5:ステップS3b)。
f:共振周波数[MHz]
L:インダクタンス[μH]
C:キャパシタンス[pF]
インダクタンスの値が算出されると、当該インダクタンスとなる第1のコイル部11及び第2のコイル部12の組み合わせが決定される。そして、当該組み合わせとなるように、第1の接続端部11a、第2の接続端部12a及び第3の接続端部13aから2個の接続端部を選択する。そして、選択された2個の接続端部にICチップ6のバンプ9a,9bをそれぞれ接続する(図5:ステップS3c)。本実施形態のICチップ6は、ベアチップ形状であり、異方性導電ペースト(フィルム)15によりアンテナコイル7に接合される(図3参照)。なお、ICチップ6の形状として、ベアチップ、パッケージモジュール、チップサイズパッケージ(CSP)などが挙げられる。非接触ICカード1の寸法を小さくしたい場合には、ICチップ6は、ベアチップを用いたフリップチップ実装によりアンテナコイル7と接合される。フリップチップ実装方法では、異方性導電ペースト(フィルム)実装、非導電性ペースト、超音波実装などが利用される。パッケージモジュール形状やチップサイズパッケージ形状では、はんだ付けやリフローはんだなどが利用される。また、フィルム基材3上にチップオンボード(COB)モジュールを形成してもよい。
本実施形態に係るコイル回路部4とICチップ6とによれば、第1の接続形態(図8参照)と、第2の接続形態(図9参照)と、第3の接続形態(図10参照)とを選択することができる。
第1の接続形態について説明する。図8の(a)部、(b)部及び(c)部は、第1の接続形態を示す。第1の接続形態では、第1の接続端部11aにバンプ9aが接続され、第3の接続端部13aにバンプ9bが接続される(図8の(a)部参照)。この接続構成によれば、ICチップ6に第1のコイル部11が接続された回路が構成される(図8の(b)部及び(c)部参照)。この第1の接続形態は、ICチップ6と、第1のコイル部11と、短絡部13と、ブリッジ線8とを含む。従って、第1の接続形態とした場合には、コイルのターン数を2回とすることができる。
第2の接続形態について説明する。図9の(a)部、(b)部及び(c)部は、第2の接続形態を示す。第2の接続形態では、第2の接続端部12aにバンプ9bが接続され、第3の接続端部13aにバンプ9aが接続される(図9の(a)部参照)。この接続構成によれば、ICチップ6に第2のコイル部12が接続された回路が構成される(図9の(b)部及び(c)部参照)。この第2の接続形態は、ICチップ6と、第2のコイル部12と、短絡部13と、を含む。従って、第2の接続形態とした場合には、コイルのターン数を1回とすることができる。図8の(a)部に示されたICチップ6と図9の(a)部に示されたICチップ6とを参照すると、第1の接続形態のためのICチップ6に対して、第2の接続形態のためのICチップ6は、主面3aの法線まわりに90度回転させた状態である。すなわち、主面3a上におけるICチップ6が取り付けられる二次元的な位置は略同じである。
第3の接続形態について説明する。図10の(a)部、(b)部及び(c)部は、第3の接続形態を示す。第3の接続形態では、第1の接続端部11aにバンプ9bが接続され、第2の接続端部12aにバンプ9aが接続される(図10の(a)部参照)。この接続構成によれば、ICチップ6に第1のコイル部11と第2のコイル部12とが接続された回路が構成される(図10の(b)部及び(c)部参照)。第1のコイル部11と第2のコイル部12とはブリッジ線8を介して互いに直列に接続される。従って、第3の接続形態とした場合には、コイルのターン数を3回とすることができる。この第3の接続形態は、ICチップ6と、第1のコイル部11と、第2のコイル部12と、ブリッジ線8と、を含む。図8の(a)部に示されたICチップ6と図10の(a)部に示されたICチップ6とを参照すると、第1の接続形態のためのICチップ6に対して、第3の接続形態のためのICチップ6は、主面3aの法線まわりに180度回転させた状態である。すなわち、主面3a上におけるICチップ6が取り付けられる二次元的な位置は略同じである。
ところで、アンテナコイル7とICチップ6とを備える非接触ICカード1では、アンテナコイル7の共振周波数を外部読み書き装置から出射される電波の周波数に適合するように設計することが通信性能上の点から望ましい。アンテナコイル7の共振周波数は、上記式(1)に示されるように、アンテナコイルのインダクタンス(L[μH])と、ICチップ6等のキャパシタンス(C[pF])とによって決定される。
しかし、非接触情報媒体の構成材料、ICチップ6の特性、非接触ICカード1の使用環境、非接触ICカード1の運用方法によっては、アンテナコイル7の共振周波数が大きく変動することがある。アンテナコイル7の共振周波数が変化すると、外部読み書き装置との間における通信性能の低下を招く虞がある。特に、非接触ICカード1を複数枚重ねて運用する場合に通信特性が大きく変動する。例えば、非接触ICカード1を複数枚重ねて自動改札を通過する場合や、カードゲームにおいて積み重ねられた複数枚のカードを一括して認識する場合が挙げられる。このような場合には、想定される運用態様において、重ねられた非接触ICカード1におけるアンテナコイル7の周波数が外部読み書き装置の電波の周波数に適合するように、1枚当たりのアンテナコイル7の共振周波数を調整する。
例えば、アンテナコイル7の共振周波数を調整する手段として、アンテナ回路に予め調整用のコイルやキャパシタを設けておき、パターンをカットしたり、ICチップの取付位置を変更することにより所望の特性を得ることがある。しかし、このような構成にあっては、パターンをカットするための作業工程が必要になる。また、ICチップの取付位置を変更した場合には、非接触ICカードの曲げ耐性が低下する虞がある。
本実施形態に係るアンテナシートの製造方法によれば、第1のコイル部11と第2のコイル部12と短絡部13とを有する。そして、第1のコイル部11、第2のコイル部12及び短絡部13の接続端部同士は、ICチップ6のバンプ9a,9bによって接続される。この回路構成によれば、ICチップ6と第1のコイル部11とを含む回路と、ICチップ6と第2のコイル部12とを含む回路と、ICチップ6と第1のコイル部11及び第2のコイル部12とを含む回路と、を選択し得る。従って、アンテナシート2は、第1のコイル部11及び第2のコイル部12の組み合わせにより複数のインダクタンスを選択することができる。そして、このインダクタンスの選択は、ICチップ6のバンプ9a,9bを利用した電気的な接続による。第1のコイル部11の第1の接続端部11a、第2のコイル部12の第2の接続端部12a、及び短絡部13の第3の接続端部13aは、接続端領域14に設けられる。この接続端領域14は、ICチップ6が配置されるICチップ配置領域16に含まれる。従って、ICチップ配置領域16においてICチップ6を取り付ける向きを変更するだけで、第1のコイル部11、第2のコイル部12及び短絡部13の接続態様を選択し得る。従って、所望のインダクタンスの設定が簡易に行えるので、アンテナコイル7の共振周波数を容易に設定することができる。
また、第1のコイル部11の長さは、第2のコイル部12の長さと異なる。具体的には、第1のコイル部11の内側に設けられた第2のコイル部12の長さは、第1のコイル部11の長さより短い。従って、第2のコイル部のインダクタンスは、第1のコイル部のインダクタンスより大きくすることができる。
また、ICチップ配置領域16がフィルム基材3の中心軸線A1,A2から離れた位置に配置されるので、ICチップ6が中心軸線A1,A2から離れた位置に取り付けられる。中心軸線A1,A2から離れた位置は、曲げによる曲率が小さくなる傾向にある。従って、フィルム基材3が曲げられた場合であっても、ICチップ6は曲率が小さい位置に取り付けられているので、ICチップ6に作用する物理的な負荷が抑制される。従って、アンテナシート2の曲げ耐性を確保することができる。
また非接触ICカード1では、フィルム基材3に対するICチップ6の向きを変更することにより、インダクタンスを調整する。このICチップ6を取り付けるステップは、非接触ICカード1の製造ステップに含まれていた作業である。従って、非接触ICカード1は、インダクタンスを調整するためだけの追加的な後工程作業を要しないので、容易に製造することができる。
<実施例>
まず、図7に示されるようなコイル回路部4を有するシートを3枚作成した。コイル回路部4の具体的な構成は以下のとおりである。
アンテナコイルの外形寸法:長さ76mm、幅46mm
第1のコイル部、第2のコイル部の線幅:1.0mm
第1のコイル部、第2のコイル部の厚み:0.030mm(=30μm)
コイル部同士の間隔:0.5mm
ブリッジ線の厚み:0.010mm(=10μm)
フィルム基材の厚み:0.038mm(=38μm)
ICチップのキャパシタ:20pF
そして、それぞれのシートにICチップ6を取り付けて第1の接続形態を有するアンテナシート2と、第2の接続形態を有するアンテナシート2と、第3の接続形態を有するアンテナシート2とを作成した。
第1の接続形態(図8の(a)部、(b)部及び(c)部参照)は、第1のコイル部11を含む回路であり、アンテナコイルの共振周波数が66MHzであった。第2の接続形態(図9の(a)部、(b)部及び(c)部参照)では、第2のコイル部12を含む回路であり、アンテナコイルの共振周波数が60MHzであった。第2のコイル部12のインダクタンスは、第1のコイル部11のインダクタンスよりも大きいので、共振周波数が第1の接続形態よりも小さくなるのは妥当な結果である。第3の接続形態(図10の(a)部、(b)部及び(c)部参照)は、第1のコイル部11及び第2のコイル部12を含む回路であり、アンテナコイルの共振周波数が48MHzであった。この回路は、第1のコイル部11のインダクタンスと第2のコイル部12のインダクタンスとが足し合わされた合計インダクタンスを有する。従って、第3の接続形態の回路の合計インダクタンスは、第1の接続形態及び第2の接続形態のインダクタンスよりも大きいので、共振周波数が第1の接続形態及び第2の接続形態よりも小さくなるのは妥当な結果である。
ところで、外部読み書き装置から出射される電波の周波数が13.56MHzであるとすると、上述した第1の接続形態、第2の接続形態及び第3の接続形態におけるアンテナコイルの共振周波数は、外部読み書き装置から出射される電波の周波数よりも大きい。
これらのアンテナシート2は、複数枚重ね合わせて利用されるICカードへの適用を想定したものである。ICカードを重ね合わせたとき、各カードに含まれるコイルは、所定の結合係数に基づくインダクタンスを有する。具体的には、カードを重ね合わせると、コイルのインダクタンスは大きくなる傾向にある。すなわち、カードを重ね合わせると共振周波数が低下する傾向にある(式(1)参照)。従って、ICカードの使用形態が、複数枚のカードを重ね合わせて用いる場合には、想定されるカード枚数を重ね合わせたときに、アンテナコイルの共振周波数が外部読み書き装置から出射される電波の周波数に適合するように予め高めに設定する。
例えば、共振周波数が66MHzである第1の接続形態は、18枚を重ね合わせたときに、アンテナコイルの共振周波数が13.56MHzに最も近づく。すなわち、第1の接続形態は、18枚を重ね合わせて利用するカードに対して好適に用いることができる。例えば、共振周波数が60MHzである第2の接続形態は、15枚を重ね合わせたときに、アンテナコイルの共振周波数が13.56MHzに最も近づく。すなわち、第2の接続形態は、15枚を重ね合わせて利用するカードに対して好適に用いることができる。例えば、共振周波数が48MHzである第3の接続形態は、5枚を重ね合わせたときに、アンテナコイルの共振周波数が13.56MHzに最も近づく。すなわち、第3の接続形態は、5枚を重ね合わせて利用するカードに対して好適に用いることができる。
なお、第1の接続形態を備えたICカードは、18枚を重ね合わせたときに外部読み書き装置から出射される電波の周波数に最も近づく。この状態は、最も効率のよい外部読み書き装置とICカードとの通信状態を実現するものである。従って、第1のアンテナシートを備えたICカードを、例えば15枚重ね合わせた場合には、アンテナコイルの共振周波数は13.56MHzから離れるが、通信効率が低下するものの、通信自体が行えなくなるものではない。18枚を重ね合わせた状態が使用形態として想定されたカードにおいて、どの枚数まで増加又は減少させても通信が成立するか否かは、外部読み書き装置の特性等による。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、コイル回路部の構成は、上記実施形態に開示された構成に限定されない。例えば、コイル回路部は、2以上のコイル部を有していてもよい。すなわち、コイル回路部は、第1のコイル部11及び第2のコイル部12に加えて、さらに第3のコイル部を有していてもよい。また、各コイル部の構成も上記実施形態に開示された構成に限定されない。すなわち、予め準備すべきインダクタンスの値の候補に応じて、第1のコイル部のインダクタンス及び第2のコイル部のインダクタンスを所望の値に設定するように、各コイル部の構成を適宜選択してよい。例えば、図11に示されるように、第2のコイル部17は、複数回巻き回された渦巻き状であってもよい。
また、アンテナシートを備えた非接触ICカード1は、資産管理、来場者情報、工程管理、物品使用履歴トレーサビリティ、NFC、コンテンツ配信サービス、来店誘引プロモーション、スマートポスター、ディスプレイカード、ソーシャルネットワークサービス、各種決済、本人認証等に利用することができる。