JP2017155266A - 缶用鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.020%超え0.040%以下、Mn:0.10%以上1.00%以下、P:0.100%以下、N:0.0120%超え0.0200%以下、Nb:0.004%以上0.040%以下を含有する成分組成を有する鋼スラブを、仕上げ圧延温度がAr3変態点以上990℃以下で圧延し、400℃以上600℃未満で巻き取る熱間圧延工程と、酸洗し、圧下率が80%以上で圧延する一次冷間圧延工程と、均熱温度が650℃以上780℃以下、均熱時間が10s以上55s以下で連続焼鈍する焼鈍工程と、少なくとも2基の圧延機スタンドを用い、うち少なくとも1基の圧延機スタンドにおいて表面粗さRaが0.9μm以上3.0μm以下かつPPIが150以上400以下の圧延ロールを用い、1.0%以上19%以下の圧下率で圧延する二次冷間圧延工程とを有する。
【選択図】なし
Description
さらに、耐食性に支障のない範囲の元素添加量(特に、Mn,Pの含有量範囲を制限)で成分設計を行うことにより、腐食性の強い内容物に対しても良好な耐食性を示すことを確認した。
加えて、従来の二次冷間圧延における圧下率に比べ低い圧下率での加工強化を施すことも有効である。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
本発明では、Nbを析出強化元素として添加し、Nを固溶強化元素として添加し、焼鈍後に圧下率1.0%以上19%以下の二次冷間圧延を行うことによる加工強化で高強度を達成する。析出強化元素、固溶強化元素を添加しつつ、成分組成、製造条件を適正化することで、溶接部平均ビッカース硬度/母材部平均ビッカース硬度≦3.4、穴拡げ率(%)≧30である缶用鋼板が得られる。
本発明の缶用鋼板においては、二次冷間圧延工程に所定値以上の上降伏点(450〜600MPa)を達成することが必要であり、Nb添加で生成するNbCによる析出強化を利用することが重要となる。NbCによる析出強化を利用するためには、C含有量を0.020%超えとすることが必要である。一方、C含有量が0.040%を超えるとセメンタイトが粗大に成長して析出し、穴拡げ加工時に、粗大なセメンタイトを起点として割れ(クラック)が発生し、フランジ加工性が劣化する。このためC含有量は0.040%以下とする。
Siは固溶強化により鋼を高強度化させる元素である。しかし、Si含有量が0.04%を超えると耐食性が著しく損なわれる。よって、Si含有量は0.04%以下とする。
Mnは固溶強化により鋼の強度を増加させる元素である。この効果を得るためには、0.10%以上の含有を必要とする。また、目標の降伏強度を確保するには0.10%以上にする必要がある。一方、Mn含有量が1.00%を超えると耐食性が劣る。また、フランジ成形におけるクラックの起点となるMnS介在物の生成量が増加し、フランジ成形性を劣化させる。よって、Mn含有量の上限を1.00%以下とする。
Pは固溶強化能が大きい元素である。しかし、Pの含有量が0.100%を超えると耐食性が劣る。このため、P含有量は0.100%以下とする。
本発明の缶用鋼板はNb、C、N含有量が多いため、連続鋳造時に矯正帯でスラブエッジが割れやすくなる。Sの含有量が0.030%を超えると、連続鋳造時に温度が低下する矯正帯でひずみ誘起により多量のMnSが生じ、スラブ割れが多発する。スラブ割れを防止する観点からS含有量は0.030%以下にする。また、S含有量が多くなると、フランジ成形におけるクラックの起点となるMnS介在物の生成量が増加し、フランジ成形性を劣化させる。好ましくは、S含有量は0.020%以下である。より好ましくは、S含有量は0.010%以下である。
Al含有量を増加すると、再結晶温度の上昇がもたらされるため、焼鈍温度を高く設定する必要がある。本発明においては、上降伏点を上昇させるために添加する他の元素の影響で再結晶温度が上昇し、焼鈍温度を高く設定しなければならない。そこで、Al添加による再結晶温度の上昇を極力回避することが必要であり、Al含有量を0.10%以下とする。なお、Alは鋼の精錬において脱酸剤として用いられる元素であり、この効果を得るためにはAl含有量を0.010%以上とすることが好ましい。
Nは固溶強化に必要な元素である。固溶強化の効果を発揮させるためには、N含有量を0.0120%超えとする必要がある。一方、N含有量が0.0200%を超えると連続鋳造時の温度が低下する下部矯正帯で高NによりNb窒化物の析出が促進されて硬化することにより、スラブ割れが生じやすくなる。よって、N含有量は0.0200%以下とする。好ましくは、0.0130%以上0.0170%以下である。
本発明において、Nbは重要な添加元素である。Nbは炭化物生成能の高い元素であり、微細な炭化物を形成する。これにより、鋼板の上降伏点が上昇する。Nb含有量が0.004%以上の場合にこの効果が生じるため、Nb含有量の下限は0.004%に限定する。一方、Nbは再結晶温度の上昇をもたらす。Nb含有量が0.040%を超えると、650℃以上780℃以下の均熱温度、10s以上55s以下の均熱時間での連続焼鈍(均熱温度、均熱時間については後述)では未再結晶粒が一部残存するなど、焼鈍し難くなる。このため、Nb含有量の上限を0.040%に限定する。好ましくは、0.006%以上0.025%以下である。
母材部硬度と溶接部硬度の比率は、フランジ成形性に大きな影響を及ぼす。溶接部硬度が上昇して母材部硬度と差が生じると、フランジ成形時に硬度差が生じている領域にひずみが集中して、割れが発生する。このため、硬度比を出来るだけ小さくすることで、ひずみの集中を抑制し、フランジ成形時の割れを防ぐことが出来る。フランジ成形性で割れの発生しない硬度比を具体的に検討したところ、母材部平均ビッカース硬度に対する溶接部平均ビッカース硬度の比を3.4以下とすればよいことがわかった。硬度はビッカース硬度を用い、断面を研磨した面に対して測定する。ビッカース硬度は微小領域を測定する試験方法であり、測定値にバラツキが生じるのを防ぐため、複数個所を測定して平均値を求めることが好ましい。本願の実施例では、30点測定した平均値を用いた。溶接部硬度は加熱により熱影響を受けているナゲットの部分を測定し、母材部硬度は溶接部から10mm以上離れた熱影響受けていない部分を測定する。溶接はシーム溶接方式により行い、チリ発生の電流を上限電流とし、溶接部の剥がれが生じなくなる電流を下限電流とし、その中間の電流で溶接する。母材部硬度と溶接部硬度の比は、C量を適正範囲とすることにより制御できる。
フランジ成形時のクラックは溶接部のHAZ部より数ミリ離れた箇所で発生する。このため、母材の穴拡げ率を大きくすることで、フランジ成形時の割れを防ぐことが可能となり、穴拡げ率が両面(表面と裏面)ともに30%以上の場合にはフランジ割れは発生しない。
穴拡げ率は、Mn量を0.10%以上1.00%以下とし、圧延機スタンドにおいて表面粗さRaが0.9μm以上3.0μm以下かつPPIが150以上400以下の圧延ロールで圧延することにより制御できる。Mn量を少なくするとMnS析出量が減少するので穴拡げ率は大きくなり、Mn量を多くするとMnS析出量が増加するので穴拡げ率は小さくなる。圧延ロールのRaを小さくすると表層が均一に硬化するので穴拡げ率は小さくなり、Raを大きくすると鋼板の表層の一部に軟質部ができるため穴拡げ率は大きくなる。ロールPPIを小さくすると表層が均一に硬化するので穴拡げ率は小さくなり、PPIを大きくすると鋼板の表層の一部に軟質部ができるため穴拡げ率は大きくなる。
ここで、穴拡げ率λ(%)は初期穴径:d0、割れ直後穴径:d1のとき
λ={(d1−d0)/d0}×100
で表すことができる。
また、試験片の穴の端面性状が穴拡げ性に影響するため、バリ等が発生しにくい研削加工により穴開け加工の仕上げを行い、穴拡げ性の評価に供する。なお、穴拡げ率は、JIS Z 2256に規定された方法で測定することができる。本願では、表裏それぞれの穴拡げ率を測定し、表裏両方の面とも30%以上であることが好ましい。
板厚が薄い缶用鋼板では表裏の加工度の差が小さくなるのでパンチ接触面でもクラックが発生する。このため、穴拡げ試験は両面に対して実施することが必要であり、両面の穴拡げ率の差が大きい場合には表裏を貫通する大きなクラックの発生頻度が多くなることがあるため好ましくない。具体的には、鋼板両面の穴拡げ率の差は10パーセンテージポイント以下であることが好ましい。
缶の耐圧強度等を確保するために、上降伏強度を450MPa以上とすることが好ましい。一方、600MPa超えの上降伏強度を得ようとすると多量の元素含有が必要となる。多量の元素含有は本発明の缶用鋼板の耐食性を阻害するおそれがある。そこで、上降伏強度は600MPa以下とすることが好ましい。上記成分組成を採用するとともに、後述する製造条件を採用することで、缶用鋼板の上降伏強度を450〜600MPaに制御することができる。
フランジ割れの発生には板厚も影響する。板厚が薄い場合には、割れの起点となるクラックが板厚方向に貫通しやすく、割れが生じやすい。缶用鋼板でフランジ成形が行われている鋼板の板厚は0.26mm以下であり、本発明はこの範囲の板厚を主な対象とする。
原料となる鋼スラブは、上記成分組成に調整された溶鋼を、転炉等を用いた通常公知の方法により溶製し、次いで連続鋳造法等の通常用いられる鋳造方法で得られる。
熱間圧延工程の後に酸洗を行う。酸洗は表層スケールが除去できればよく、特に条件は規定しない。公知の方法により、実施することができる。なお、酸洗以外の方法でスケールを除去することもできる。
一次冷間圧延工程の後に、連続焼鈍を施す。均一な組織と良好な伸びを得るため、均熱温度は650℃以上とする。一方、均熱温度が780℃超えの場合、上降伏点が低下し、缶体強度が不足する。また、780℃超えの条件で連続焼鈍するためには、鋼板の破断を防止するために搬送速度を落とす必要があり、生産性が低下する。このため、均熱温度は780℃以下とする。
焼鈍工程の後に、二次冷間圧延を施す。本発明では、少なくとも2基のスタンドを有する圧延機を用い、うち少なくとも1基のスタンドにおいては表面粗さRa(算術平均粗さ)が0.9μm以上3.0μm以下かつPPI(Peak Per Inch)が150以上400以下の圧延ロールを用いる。用いる圧延スタンドが1基のみでは、圧延時に十分な張力を得ることが困難であり、少なくとも2基とする。このようなロールを用いて二次冷間圧延を施すことにより、鋼板の最表層の一部に軟質部が生じ、穴拡げ加工時に応力が軟質部分で緩和されて、クラックが発生しにくくなり、鋼板表裏の穴拡げ率の差を小さくすることができる。Raが0.9μm未満またはPPIが150未満では、最表層が均一に硬化し、穴拡げ加工時に最表層への応力が高くなり、クラックが発生しやすくなり、好ましくない。一方、Raが3.0μm超またはPPIが400超では、ロール凸部により押込まれて生成した硬質相の硬度が高くなり、穴拡げ加工時に最表層の硬質相への応力がより一層高くなるので、クラックが発生しやすくなり好ましくない。上記のような圧延ロールは少なくとも1基のスタンドに適用する。なお、Raとは、JIS B 0601の算術平均粗さのことであり、PPIとは、Peak Per Inchであり1インチあたりに観察される山の数を表す。
得られた結果を表3に示す。
Claims (1)
- 質量%で、C:0.020%超え0.040%以下、Si:0.04%以下、Mn:0.10%以上1.00%以下、P:0.100%以下、S:0.030%以下、Al:0.10%以下、N:0.0120%超え0.0200%以下、Nb:0.004%以上0.040%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、仕上げ圧延温度がAr3変態点以上990℃以下の条件で圧延し、巻取り温度が400℃以上600℃未満の条件で巻き取る熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後に、酸洗し、圧下率が80%以上の条件で圧延する一次冷間圧延工程と、
前記一次冷間圧延工程後に、均熱温度が650℃以上780℃以下、均熱時間が10s以上55s以下の条件で連続焼鈍する焼鈍工程と、
前記焼鈍工程後に、少なくとも2基の圧延機スタンドを用い、うち少なくとも1基の圧延機スタンドにおいて表面粗さRaが0.9μm以上3.0μm以下かつPPIが150以上400以下の圧延ロールを用い、1.0%以上19%以下の圧下率で圧延する二次冷間圧延工程を有することを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
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