JP2017155135A - 変性セルロースナノファイバーの製造方法及び変性セルロースナノファイバーを含む高分子複合材料 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の製造方法に用いるセルロースナノファイバーは市販のものを用いることもでき、適宜製造したものを用いてもよく、平均繊維径が1000nm以下のセルロースナノファイバーであれば特に制限されない。平均繊維径が1000nm以下であれば、高強度や高剛性、高寸法安定性、高分子材料と複合化した際の分散性、透明性等の点で好ましい。また、セルロースナノファイバーの平均繊維径は2nm〜100nmであればより好ましい。
本発明の製造方法には、アルデヒド分子中の炭素数が5以上のモノアルデヒド又はジアルデヒド、或いは、ジオキソラン環を含む炭素数が5以上の脂肪族炭化水素を用いる。アルデヒド分子中の炭素数は5以上20以下であることが好ましく、5以上12以下であればより好ましい。炭素数が5以上であれば良好な樹脂分散性が得られ、変性セルロースナノファイバーを高分子材料と複合化するために好ましく用いることができる。炭素数が20以下であれば、セルロースの水酸基との反応性が良好であるという点で好ましい。
本発明の製造方法では、上記のセルロースナノファイバーとアルデヒド或いはジオキソラン環を含む化合物を、酸触媒を用いて反応させる。酸触媒としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸、ギ酸、パラトルエンスルホン酸、無水マレイン酸等の有機酸を用いることができるが、特にこれらに制限されない。これらの中でも、無水マレイン酸、比較的安価な無機酸である塩酸、硫酸等を好ましく用いることができる。酸触媒は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の変性セルロースナノファイバーの製造方法の原料として用いるセルロースナノファイバーは上述のとおりであり、既に調製されたものを入手して用いてもよく、調製することもできる。一例としては次のようにして、セルロース原料からセルロースナノファイバーを得る。
なお、「ナノファイバー化する」とは、セルロース原料を、平均繊維径が2〜1000nm、平均繊維長0.1〜100μm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルであるセルロースナノファイバーへと加工することを意味する。分散液とは前記セルロース原料が分散媒に分散している液である。
また、セルロース原料の解繊処理に先立って、叩解等の表面積を拡大する処理を施してもよい。これにより処理効率を高めることができ、生産性を高めることができる。叩解には各種ホモジナイザーや各種レファイナーのような強力で叩解能力のある解繊装置を用いることができる。なお、セルロース原料をリン酸エステル化、TEMPO酸化、オゾン処理、酵素処理等の化学処理を施してからナノファイバー化してもよい。
分散媒としての溶媒は通常は水が好ましいが、水以外にも目的に応じて水に可溶するアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン等)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)やN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等を使用してもよい。また、これらの混合物も好適に使用できる。
本発明の製造方法によって得られる変性セルロースナノファイバーは、例えば、反応した水酸基のIR吸収スペクトルの変化の測定という方法によって、生成物の化学構造及び反応率を確認することができる。具体的には例えば、IR吸収スペクトルに水酸基の伸縮振動由来の、3000〜3600cm−1の吸収スペクトルについて、反応前後のピークの大きさを比較することで、セルロースナノファイバーに対する変性を確認する事ができる。
本発明の製造方法によって得られた変性セルロースナノファイバーは、熱可塑性高分子に対する分散性が高く、直接練り込みを行うことが可能である。熱可塑性高分子としては例えば、オレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、不飽和ポリエステル、等)、ポリウレタン、天然ゴム、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン/ブタジエン/メチルメタクリレート共重合体、ポリビニルアルコール鹸化物、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリヒドロキシブチレート、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミドなどのポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中で、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタールが好ましく選択され、さらに好ましくはオレフィン系樹脂が好適に選択される。例えば、汎用性を考慮すると、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン/メタクリレート共重合体等を用いることが好ましい。
また、前述の高分子複合材料には、変性セルロースナノファイバーと熱可塑性高分子以外に、従来公知の各種添加剤を含有しても良く、例えば、加水分解防止剤、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、重合開始剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン等)、酸化防止剤、無機フィラー、有機フィラー等を必要に応じて含んでもよい。
用いられる熱可塑性高分子の繊維としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、エラストマーなどを含んでなる繊維が挙げられる。熱可塑性高分子の繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、ポリフェニレンスルフィド系樹脂の繊維等が好ましい。
ここで、長網抄紙機又は傾斜型抄紙機を用いて抄紙する工程では、長網抄紙機又は傾斜型抄紙機のワイヤーは、ジェットワイヤー比が0.99以下となるように走行することが好ましい。特に、傾斜型抄紙機を用いて抄紙する工程を含むものであることが好ましい。ジェットワイヤー比とは、繊維スラリーの液のインレット内における流速とワイヤー走行速度の比であり、繊維のスラリー液のインレット内の流速/ワイヤー走行速度である。
該高分子複合繊維シートは、目的とする成形品の形状や成形法に合わせて任意の形状に加工することができる。高分子複合繊維シートは、1枚単独、あるいは所望の厚さとなるように積層して熱プレスで加熱加圧成形したり、予め赤外線ヒーター等で予熱し、金型によって加熱加圧成形することができる。
[実施例1]〜[実施例6]、[比較例2]、[比較例3]
市販のコットンリンターパルプの1%水分散体100Kgを作製し、次いで、ディスクリファイナー(長谷川鉄工社製、SUPERFIBRATER 400−TFS)を用いて、クリアランス0.15mm、ディスク回転数1750rpmとして10回叩解処理し、リファイナー処理品を得た。このリファイナー処理品を、通常の非破砕型ホモバルブシート(中空円筒状凸部の下流端の内径/リング状端面の厚み=1.9/1)を備えたホモジナイザー(ゴーリン社製、15M8AT)を用いて、処理圧50MPaで20回処理し、繊維径が50〜300nm(平均繊維径200nm)のセルロースナノファイバーを得た。この処理した水分散体1Kgを200メッシュ布フィルターで水をろ過させて、固形分10%に濃縮した。この分散体20gに対してTHFを180g添加し、ホモミキサー(特殊機化工業社製)にて10分間分散させた。その後、下記表1([実施例1]〜[実施例6]、[比較例2]、[比較例3])に示す各化合物を、セルロースのグルコース環のOH基の当量の3倍量にあたる量を添加し、更に無水マレイン酸を全体の0.1%添加して、更に10分間分散を行った。これを50℃で30分間加熱した後、20℃まで冷却し、ヌッチェに200メッシュの布フィルターを敷き、減圧濾過を行った。ろ布上に残った反応後のセルロースナノファイバーにTHF200gを添加し、ホモミキサーで10分間分散させた後、再度減圧濾過を行い、サンプル(変性セルロースナノファイバーのTHF分散体)を得た。このサンプルを絶乾させて固形分を測定し、10%であることを確認した。
[実施例7]
コットンリンターの10%セルロースナノファイバー20gに対して、水を180g添加し、エマルゲン108(花王社製)を0.5g、無水マレイン酸0.1g、及び、セルロースのグルコース環のOH基の当量の3倍量にあたる量の1,7−ビス(1,3−ジオキソラン−2−イル)ヘプタンと2−メチル−1,7−ビス(1,3−ジオキソラン−2−イル)ヘプタンとの混合体(混合比80:20)を添加し、10分間ホモミキサーで分散させた後、オートクレーブ(耐圧硝子工業社製)にて130℃、30分間加熱を行った。加熱後、常温まで冷却し、ヌッチェに200メッシュの布フィルターを敷き、減圧濾過を行うことでサンプル(変性セルロースナノファイバーの水分散体)を得た。このサンプルを絶乾させて固形分を測定し、10%であることを確認した。
二本ロール混練機にてポリプロピレン(NOBLEN AZ064:住友化学社製)30gを140℃にて溶融させた後、上記で得られた各サンプルを6g添加して、30分混練し、樹脂に対してセルロースナノファイバーが2%となるようにした。この樹脂混練物を、冷却した後、このサンプルの一部を走査型電子顕微鏡にて観察し、樹脂中へのセルロースナノファイバーの分散性を目視にて、下記基準に従って評価を行った。
○:セルロースナノファイバーの分離した塊が見えない。セルロースナノファイバー繊維が樹脂に完全に分散している。
△:セルロースナノファイバーの塊が見えず、セルロースナノファイバーが樹脂と一部分剥がれている。
×:樹脂とセルロースナノファイバーが完全に分離して、セルロースナノファイバーの塊が見られる。
[実施例8]〜[実施例14]、[比較例4]〜[比較例6]
実施例1〜7で使用したコットンリンターパルプの替わりに、市販の針葉樹晒しクラフトパルプを原料として叩解及びホモジナイズ処理を行い、平均繊維径250nmのセルロースナノファイバーを得た。得られたセルロースナノファイバーを原料として、実施例1〜6と同じ手順で実施例8〜13、実施例7と同じ手順で実施例14の変性セルロースナノファイバーをそれぞれ作製した。また、比較例2,3と同じ方法で比較例5,6の変性セルロースナノファイバーを作製した。
また、得られたサンプルについて、実施例1と同様の方法でポリプロピレンへの分散を行った。結果は表2の通りとなった。
実施例8〜14、比較例4〜6で作製した変性セルロースナノファイバーを、エチレン/メチルメタクリレート共重合体(ACRYFT WH401:住友化学社製)に対して100℃で溶融させて実施例8〜14と同様に分散試験を行い、実施例1と同様の基準に従って評価を行った。
結果は表2と同じ結果となった。
実施例8〜14、比較例4〜6で作製した変性セルロースナノファイバーを、ポリエチレン(スミカセン G202:住友化学社製)に対して140℃で溶融させて実施例8〜14と同様に分散試験を行い、実施例1と同様の基準に従って評価を行った。
結果は表2と同じ結果となった。
Claims (5)
- 酸触媒を用いて、
アルデヒド分子中の炭素数が5以上のモノアルデヒド又はジアルデヒド、或いは、ジオキソラン環を含む炭素数が5以上の脂肪族炭化水素と、
平均繊維径が1000nm以下のセルロースナノファイバーとを、
反応させることを特徴とする変性セルロースナノファイバーの製造方法。 - 前記アルデヒド分子中の炭素数が5以上のモノアルデヒド又はジアルデヒドが、3−メチルブタナール、3−ホルミルテトラヒドロフラン、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエナール、1,9−ノナンジアール、2−メチル−1,8−オクタンジアール、1−オクタナール及びシクロヘキサンカルバルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の化合物、
又は、
ジオキソラン環を含む炭素数が5以上の脂肪族炭化水素が1,7−ビス(1,3−ジオキソラン−2−イル)ヘプタン又は2−メチル−1,7−ビス(1,3−ジオキソラン−2−イル)ヘプタンである、請求項1に記載の製造方法。 - 前記アルデヒド分子中の炭素数が5以上のモノアルデヒド又はジアルデヒドが、1−オクタナール、1,9−ノナンジアール、2−メチル−1,8−オクタンジアール、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエナール及び3−ホルミルテトラヒドロフランからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の製造方法。
- 熱可塑性高分子に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により製造される変性セルロースナノファイバーが含まれてなることを特徴とする高分子複合材料。
- 前記熱可塑性高分子が、ポリエチレンまたはポリプリピレンである、請求項4に記載の高分子複合材料。
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