以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態の電源装置を搭載した電動車両の概略構成を示すブロック図である。図1中の太い実線は機械連結を示し、二重点線は電力配線を示し、細い実線の矢印は制御信号を示す。図1に示す1MOT型の電動車両は、モータジェネレータ(MG)11と、PDU(Power Drive Unit)13と、VCU(Voltage Control Unit)15と、バッテリ17と、一実施形態の電源装置100とを備える。以下、電動車両が備える各構成要素について説明する。
モータジェネレータ11は、バッテリ17及び電源装置100の少なくとも一方から供給される電力によって駆動され、電動車両が走行するための動力を発生する。モータジェネレータ11で発生したトルクは、変速段又は固定段を含むギヤボックスGB及びデファレンシャル・ギアDを介して駆動輪Wに伝達される。また、モータジェネレータ11は、電動車両の減速時には発電機として動作して、電動車両の制動力を出力する。なお、モータジェネレータ11を発電機として動作させることで生じた回生電力は、バッテリ17に蓄えられる。
PDU13は、直流電圧を三相交流電圧に変換してモータジェネレータ11に印加する。また、PDU13は、モータジェネレータ11の回生動作時に入力される交流電圧を直流電圧に変換する。
VCU15は、バッテリ17の出力電圧を直流のまま昇圧する。また、VCU15は、電動車両の減速時にモータジェネレータ11が発電して直流に変換された電力を降圧する。さらに、VCU15は、電源装置100の出力電圧を直流のまま降圧する。VCU15によって降圧された電力は、バッテリ17に充電される。
バッテリ17は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等といった複数の蓄電セルを有し、VCU15を介してモータジェネレータ11に高電圧の電力を供給する。なお、バッテリ17は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池といった二次電池に限定される訳ではない。例えば、蓄電可能容量は少ないものの、短時間に大量の電力を充放電可能なコンデンサやキャパシタをバッテリ17として用いても構わない。
電源装置100は、図1に示すように、燃料電池(FC)101と、FC−VCU(Fuel Cell Voltage Control Unit)103と、電流センサ105と、相電流センサ1051〜1054(図2参照)と、電圧センサ1071,1072と、温度センサ1091〜1094(図2参照)と、パワースイッチ111と、ECU(Electronic Control Unit)113とを備える。
燃料電池101は、水素タンク、水素ポンプ及びFCスタックを有する。水素タンクは、電動車両が走行するための燃料である水素を蓄える。水素ポンプは、水素タンクからFCスタックに送られる水素量を調整する。また、水素ポンプは、水素タンクが蓄えている乾燥した水素を、水素ポンプ内の貯水槽に経由してから、FCスタックに供給することで、水素の加湿量も調整できる。FCスタックは、水素ポンプから供給される水素と空気中の酸素を取り込み、化学反応により電気エネルギーを生成する。FCスタックで生成された電気エネルギーは、モータジェネレータ11又はバッテリ17に供給される。
燃料電池101には、固体高分子化型燃料電池(PEFC = Polymer Electrolyte Fuel Cell)以外にも、りん酸型燃料電池(PAFC = Phosphoric Acid Fuel Cell)や溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC = Molten Carbonate Fuel Cell)、固体酸化物型燃料電池(SOFC = Solid Oxide Fuel Cell)など様々な種類の燃料電池が適用できる。
なお、燃料電池101の閉回路電圧は、放電量に応じて変動する。また、燃料電池101の特性と上述したバッテリ17の特性は互いに異なる。燃料電池101は、燃料である水素と酸素を供給する限り大電流を継続して放電できる。しかし、供給される燃料ガスの電気化学反応により電気を生成する原理上、燃料電池101の出力を短時間に不連続的に変動させることは難しい。これらの特性を考慮すると、燃料電池101は高容量型の電源としての特性を備えていると言える。一方のバッテリ17は、内部の活物質の電気化学反応により電気を生成する原理上、大電流を継続して放電することは難しいが、その出力を短時間に不連続的に変動させることは決して難しくない。これらの特性を考慮すると、バッテリ17は、高出力型の電源としての特性を備えていると言える。
FC−VCU103は、燃料電池101が出力した電力(電気エネルギー)の電圧変換が可能な変換部を4つ有し、これらを互いに並列に接続し、その出力ノードと入力ノードを共通化した、いわゆる多相コンバータである。図2は、電源装置100、バッテリ17、VCU15、PDU13及びモータジェネレータ11の関係を示す電気回路図である。図2に示すように、FC−VCU103が有する各変換部は、リアクトルと、当該リアクトルに直列接続されたダイオードと、リアクトルとダイオードの間に接続されたスイッチング素子を含む昇圧チョッパ回路の回路構成を有する。なお、FC−VCU103の入力側には、4つの変換部と並列に平滑コンデンサC1が設けられ、FC−VCU103の出力側には、VCU15と並列に平滑コンデンサC2が設けられる。
FC−VCU103が有する4つの変換部は電気的に並列に接続されており、少なくとも1つの変換部のスイッチング素子を所望のタイミングでオンオフ切換動作することによって、燃料電池101の電圧を直流のまま昇圧して出力する。変換部のスイッチング素子のオンオフ切換動作は、ECU113からFC−VCU103へのパルス状の所定のデューティ比を有するスイッチング信号によって制御される。
ECU113の制御によって駆動する変換部の数は、FC−VCU103の出力電流のリプルに影響する。変換部のスイッチング素子をオンオフ切換制御すると、オン動作中にはFC−VCU103への入力電流がスイッチング素子側に流れてリアクトルはエネルギーを蓄え、オフ動作中にはFC−VCU103への入力電流がダイオード側に流れてリアクトルは蓄えたエネルギーを放出する。このため、FC−VCU103が有する4つの変換部のうち1つのみを駆動すると、図3に示すように、FC−VCU103からはオフ動作中の変換部を流れた電流が出力される。また、FC−VCU103が有する4つの変換部の全てを駆動する場合には、図4に示すように、各変換部のオンオフ切換位相を90度ずつずらすインターリーブ制御が行われる。この場合、FC−VCU103の出力電流のリプルは、各変換部の出力電流がFC−VCU103の出力ノードで合成させることにより、図3に示す1つの変換部のみを駆動する場合と比べて小さい。また、FC−VCU103が有する4つの変換部のうち2つを駆動する場合には、駆動する各変換部のオンオフ切換位相を180度ずつずらすインターリーブ制御が行われる。このときのFC−VCU103の出力電流のリプルは、図4に示す4つの変換部を駆動する場合と比べると大きいが、図3に示す1つの変換部のみを駆動する場合と比べると小さい。このように、駆動する変換部の数によって出力電流のリプルは変化する。駆動する変換部の間の位相差を、360度を駆動する変換部の数で割った値と等しくすると、出力電流のリプルを最小化できる。
また、駆動する変換部の数は、FC−VCU103で発生する損失にも影響する。FC−VCU103で発生する損失には、スイッチング素子がオンとオフ状態の間を遷移する際に生じる遷移損失ηtransと、スイッチング素子などが有する抵抗成分から生じる導通損失ηconductと、スイッチングによって生じるスイッチング損失ηswitch(Fsw)の3つが含まれる。
4つの変換部のうち1つのみを駆動する場合にFC−VCU103で発生する損失ηtotal_1は以下の式(1)によって表される。但し、「IFC」はFC−VCU103への入力電流であり、「V1」はFC−VCU103の入力電圧であり、「V2」はFC−VCU103の出力電圧である。また、「Ttrans
」は、スイッチング素子におけるオンからオフ又はオフからオンへの遷移時間であり、「Fsw
」はスイッチング周波数であり、「RDSon」は変換部を構成するスイッチング素子のオン抵抗である。また、「A」は定数である。
式(1)に示す損失ηtotal_1に基づくと、FC−VCU103への入力電流IFCが大きくなるほど特に導通損失が増大し、FC−VCU103の発熱量が増加する。そこで、駆動する変換部の数を増やし、N個(Nは2以上の整数)の変換部を駆動する場合には、FC−VCU103で発生する損失ηtotal_Nは以下の式(2)によって表される。
式(2)に示す損失ηtotal_Nに基づくと、駆動する変換部の数の増加によってスイッチング損失は増大するが、導通損失は減少する。このため、ECU113は、駆動する変換部の数N毎の損失を考慮したFC−VCU103のエネルギー効率を示すマップ等を用いて、駆動する変換部の数を選択する。図5は、駆動する変換部の数N毎の入力電流IFCに対する損失を考慮したFC−VCU103のエネルギー効率を示すグラフである。ECU113は、図5のグラフに基づくマップから、FC−VCU103への入力電流IFCに応じた適切な数Nを選択する。
図6は、図2に示したFC−VCU103が有する4つの変換部の各構成要素及び平滑コンデンサC1,C2の、Z軸方向から見た位置関係を示す図である。以下の説明では、FC−VCU103が有する4つの変換部の各々を「相」と表現する。したがって、本実施形態では、図6に示すように、リアクトルL1を含む変換部を「相1」、リアクトルL2を含む変換部を「相2」、リアクトルL3を含む変換部を「相3」、リアクトルL4を含む変換部を「相4」と表す。また、駆動する変換部(相)の数(以下、「動作相数」と記載することもある。)が1つであれば「1相」、駆動する変換部(相)の数が2つであれば「2相」といったように、駆動する変換部(相)の数Nによって動作相数を「N相」と表す。
図6に示すように、本実施形態では、相1〜相4がXY平面上に一列に並んで配置されており、XY平面での最も外側に相1及び相4が配置され、相1の内側には相2が配置され、相4の内側には相3が配置されている。また、相1を構成するリアクトルL1の鉄芯と相2を構成するリアクトルL2の鉄芯が共用化され、各リアクトルのコイルの鉄芯に対する巻線方向は互いに逆である。同様に、リアクトルL3の鉄芯とリアクトルL4の鉄芯も共用化され、各リアクトルのコイルの鉄芯に対する巻線方向は互いに逆である。このため、リアクトルL1とリアクトルL2は互いに磁気結合し、リアクトルL3とリアクトルL4は互いに磁気結合する。
さらに図6においては、互いに磁気結合したリアクトルに同一の電流を流した場合、それぞれの相に生じる磁束が相殺される点を示してる。リアクトルL3に流れる電流IL3は磁束3を、リアクトルL4に流れる電流IL4は磁束4をそれぞれ電磁誘導によって生じさせる。前述したようにリアクトルL3の鉄芯とリアクトルL4の鉄芯は共用化されているので、磁束3と磁束4は逆向きとなって互いに相殺する。したがって、リアクトルL3とリアクトルL4における磁気飽和を抑制できる。また、リアクトルL1とリアクトルL2においても同様である。
また、リアクトルL1とリアクトルL2とで共用化された鉄芯Coaは、相1及び相2にわたってXY平面上に配置され、リアクトルL3とリアクトルL4とで共用化された鉄芯Cobは、相3及び相4にわたってXY平面上に配置される。XY平面は、水平面であっても、鉛直面であっても良い。なお、磁気結合するリアクトルの数は2に限られない。前述したように鉄芯を共用化することで、3や4またはそれ以上のリアクトルを磁気結合させることができる。
各相のリアクトルL1〜L4の誘導電流IL1〜IL4は、スイッチング素子の一端とダイオードの一端を接続したノードにつながるノードNode2に入力される。スイッチング素子の他端のノードNode1は、グランド線に接続される。また、各相の出力電流は、ダイオードの他端のノードNode3より出力される。
なお、図7に示すように、相1〜相4を構成する各リアクトルの鉄芯が独立した構成であっても良い。但し、この場合であっても、図8に示すように、相1〜相4がXY平面上に一列に並んで配置されており、XY平面での最も外側に相1及び相4が配置され、相1の内側には相2が配置され、相4の内側には相3が配置される。
電源装置100が有する電流センサ105及び相電流センサ1051〜1054は、電流の検出対象である回路と電気的接点(ノード)を有さない、いわゆるホール型の電流センサである。各電流センサは、コア及びホール素子を有し、コアのギャップに発生する入力電流に比例した磁界を磁電変換素子であるホール素子が電圧に変換する。電流センサ105は、燃料電池101の出力電流でもあるFC−VCU103への入力電流IFCを検出する。電流センサ105が検出した入力電流IFCに応じた電圧を示す信号はECU113に送られる。図2に示される相電流センサ1051〜1054は、FC−VCU103の各相(各変換部)を流れる相電流IL1〜IL4を検出する。相電流センサ1051〜1054が検出した相電流IL1〜IL4に応じた電圧を示す信号はECU113に送られる。なお、電流センサ105の制御周期と相電流センサ1051〜1054の制御周期は、ECU113での制御の干渉を防止するために互いに異なる。本実施形態では、電流センサ105の制御周期の方が相電流センサ1051〜1054の制御周期よりも早い。これは、その検出値を用いて動作相数の変更という、FC−VCU103の効率に大きな影響を与える電流センサ105と、その検出値を用いて駆動している各相の電流値のバランスを図るという補助的な相電流センサ1051〜1054の役割の違いに起因するものである。
電圧センサ1071は、燃料電池101の出力電圧でもあるFC−VCU103の入力電圧V1を検出する。電圧センサ1071が検出した電圧V1を示す信号は、ECU113に送られる。電圧センサ1072は、FC−VCU103の出力電圧V2を検出する。電圧センサ1072が検出した電圧V2を示す信号は、ECU113に送られる。
温度センサ1091〜1094は、FC−VCU103の特に各相(各変換部)のスイッチング素子近辺の温度を検出する。温度センサ1091〜1094が検出した温度T1〜T4を示す信号はECU113に送られる。
パワースイッチ111は、電源装置100を搭載する電動車両を起動又は停止する際に運転者によって操作されるスイッチである。電動車両が停止した状態のときにパワースイッチ111が操作(オン操作)されると、ECU113には起動を示すパワースイッチ信号が入力される。一方、電動車両が作動した状態のときにパワースイッチ111が操作(オフ操作)されると、ECU113には停止を示すパワースイッチ信号が入力される。
ECU113は、燃料電池101の制御、FC−VCU103を構成する4つの相のうち駆動する相の選択、及び選択した相のスイッチング素子に供給するスイッチング信号によるオンオフ切換制御、並びに、PDU13及びVCU15の制御を行う。また、ECU113は、特性の異なる燃料電池101とバッテリ17の各々の特性を活かすよう、VCU15を用いた電力分配制御を行う。この電力分配制御を行えば、燃料電池101は、電動車両の加速走行時に一定の電力をモータジェネレータ11に電力を供給するよう用いられ、バッテリ17は、電動車両の走行のために大きな駆動力が必要なときに、モータジェネレータ11に電力を供給するよう用いられる。また、電動車両の減速走行時には、ECU113は、モータジェネレータ11が発電した回生電力によってバッテリ17を充電する。
さらに、ECU113は、FC−VCU103に対して以下説明する第1〜第11実施例の各制御を行う。以下、各実施例の制御について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施例)
第1実施例のECU113は、パワースイッチ111のオンオフ操作に基づき、FC−VCU103における相の駆動パターンを切り替える。
図9は、FC−VCU103における駆動パターン毎の駆動する相を動作相数別に示す第1実施例の図である。第1実施例のECU113は、図9に示す4つの駆動パターンのいずれかに基づきFC−VCU103を制御する。例えば、駆動パターン1でFC−VCU103を1相で駆動する場合、ECU113は、相1のスイッチング素子をオンオフ切換制御し、2相で駆動する場合には相1及び相2の各スイッチング素子を180度の位相差でオンオフ切換制御し、4相で駆動する場合には相1〜相4の各スイッチング素子を90度の位相差でオンオフ切換制御する。なお、2相の場合には、「相1及び相2」又は「相3及び相4」といったように、1相の場合に駆動する相及び当該相とリアクトルの鉄芯を共用化した相、換言すれば当該相と磁気結合した相の2つの相を駆動する。但し、図7及び図8に示した各相のリアクトルの鉄芯が独立したFC−VCU203を2相で駆動する場合には、1相の場合に駆動する相と他の3つの相のいずれか1つとが駆動される。また、図9に示したFC−VCU103における駆動パターンでは、後述する理由により3相動作が除外されているが、図7及び図8に示したFC−VCU203を用いる場合には3相で駆動しても良い。FC−VCU103,203の動作相数は、FC−VCU103への入力電流IFCに基づいてECU113が決定する。
図10は、第1実施例のECU113によるFC−VCU103の駆動パターンの選択手順を説明するフローチャートである。図10に示すように、ECU113は、電動車両が停止した状態でパワースイッチ111がオン操作されるたびに、図9に示した4つの駆動パターン1〜4のうちの1つを順番に選択する。ECU113は、図10のフローチャートに従って選択した駆動パターンが示す相のスイッチング素子がオンオフ切換動作を行うようFC−VCU103を制御する。その結果、上述した駆動パターンのローテーションにより、各相にかかる負荷が均等化されるため、FC−VCU103の高耐久化および高寿命化を図れる。
以上説明したように、第1実施例による各相の負荷を均等化するための制御は、電動車両が停止した状態でパワースイッチ111がオン操作されるたびに、FC−VCU103の駆動パターン1〜4のうちの1つを順番に選択するといった簡便な制御である。簡便な制御である点に加えて、駆動パターンのローテーションという大掛かりな制御パラメータ変更をFC−VCU103の動作中ではなく、動作が開始される前に行えるためにFC−VCU103の制御は安定する。なお、図10に示したフローチャートでは、ECU113は、パワースイッチ111がオン操作された後に駆動パターンを選択するが、パワースイッチ111がオフ操作された際に駆動パターンを選択して記憶し、その後、パワースイッチ111がオン操作された際に当該記憶した駆動パターンを読み出しても良い。また、図9に示した図には、どの駆動パターンも1相、2相及び4相に限定され、3相での駆動は含まれていないが、一部の駆動パターンには、1相、2相及び4相に加え、3相の場合に駆動する3つの相が設定されていても良い。
なお、第1実施例のECU113は、上記説明した制御に加え、第7実施例で説明するパワーセーブ制御又は第8実施例で説明する相電流バランス制御を電動車両の走行中に行っても良い。第1実施例の制御だけでは電動車両が走行中の負荷均等化は行われないが、上述の追加制御を行うことによって、電動車両の走行中にも各相の負荷を均等化でき、より一層のFC−VCU103の高耐久化および高寿命化を図れる。
加えて、第1実施例で説明した駆動パターンのローテーション、並びに、第7実施例で説明するパワーセーブ制御や第8実施例で説明する相電流バランス制御は、特定の相に対する負荷の集中を抑制することを共通の目的としている。これらの制御を組み合わせて、より適切に各相の負荷の均等化を図るためには、それぞれの制御が正常に機能するように、制御間での競合(ハンチング)を回避する必要がある。
第1実施例で説明した駆動パターンのローテーションにおける主要な制御パラメータは、パワースイッチ111のオンオフ操作であり、第7実施例で説明するパワーセーブ制御における主要な制御パラメータは、温度センサ1091〜1094の出力値であり、第8実施例で説明する相電流バランス制御における主要な制御パラメータは、相電流センサ1051〜1054の検出値である。このように、これらの制御における主要な制御パラメータは互いに異なるため、他の制御には全く影響を与えない。
さらに、第7実施例で説明するパワーセーブ制御や第8実施例で説明する相電流バランス制御は、電動車両が走行中に行われ、第1実施例で説明した駆動パターンのローテーションは、電動車両が停車中(起動時)に行われるため、適用される場面が全く異なる。
すなわち、第1実施例で説明した駆動パターンのローテーション、並びに、第7実施例で説明するパワーセーブ制御や第8実施例で説明する相電流バランス制御には、主要な制御パラメータと制御の適用場面による二重のハンチング対策が講じられているため、これらの制御を適切に組み合わせることによって、より一層のFC−VCU103の高耐久化および高寿命化を図れる。
(第2実施例)
第2実施例のECU113は、図2及び図6に示した磁気結合型のFC−VCU103を1相で駆動する際、XY平面上に一列に並んで配置された相1〜相4のうち内側に配置された相2又は相3を駆動する。
図11は、FC−VCU103における駆動パターン毎の駆動する相を動作相数別に示す第2実施例の図である。第2実施例のECU113は、図11に示す2つの駆動パターンのいずれかに基づきFC−VCU103を制御する。例えば、駆動パターン1でFC−VCU103を1相で駆動する場合、ECU113は、相2のスイッチング素子をオンオフ切換制御し、2相で駆動する場合には相1及び相2の各スイッチング素子を180度の位相差でオンオフ切換制御し、4相で駆動する場合には相1〜相4の各スイッチング素子を90度の位相差でオンオフ切換制御する。なお、2相の場合には、「相1及び相2」又は「相3及び相4」といったように、1相の場合に駆動する相及び当該相とリアクトルの鉄芯を共用化した相、換言すれば当該相と磁気結合した相の2つの相を駆動する。但し、図7及び図8に示した各相のリアクトルの鉄芯が独立したFC−VCU203を2相で駆動する場合には、1相の場合に駆動する相(相2又は相3)及び当該相に隣接する内側に配置された相(相3又は相2)が駆動される。また、図7及び図8に示したFC−VCU203を用いる場合には3相で駆動しても良い。FC−VCU103,203の動作相数は、FC−VCU103への入力電流IFCに基づいてECU113が決定する。
図12は、第2実施例のECU113によるFC−VCU103の駆動パターンの選択手順を説明するフローチャートである。図12に示すように、ECU113は、電動車両が停止した状態でパワースイッチ111がオン操作されるたびに、図11に示した2つの駆動パターン1,2のうちの1つを順番に選択する。ECU113は、図12のフローチャートに従って選択した駆動パターンに基づきFC−VCU103を制御する。
以上説明したように、第2実施例によれば、FC−VCU103を1相で駆動する際に駆動される相は、図6に示す一例に並んで配置された相1〜相4のうちの内側に配置された相2又は相3である。このように相2又は相3が優先的に利用される理由は、相2又は相3から平滑コンデンサC1,C2への配線の長さ(l12,l13,l22,l23)が、相1又は相4から平滑コンデンサC1,C2への配線の長さ(l11,l14,l21,l24)よりも短いためである。配線が長いとL成分が増加して平滑コンデンサC1,C2による平滑能力が低下する。このため、相1又は相4が選択されるとパワースイッチ111の動作によるスイッチングリプルが増大する。しかし、本実施例のように、電圧変換を行う相として平滑コンデンサC1,C2までの配線長が最も短い相2又は相3が優先的に利用し、平滑コンデンサC1,C2までの配線長が最も長い相1及び相4を利用しなければ、FC−VCU103の入出力電流が平滑コンデンサC1,C2によって十分に平滑されてリプルが抑制される。また、相2及び相3がFC−VCU103の外部へ及ぼすノイズレベルは、外側に配置された相1及び相4よりも低く、これら相1及び相4によって周囲に設けられた他の電装品からのノイズが遮られるために、ノイズレベルは遮蔽効果によって低くリプルも小さい。このため、ECU113は、FC−VCU103を1相で駆動する際には相2又は相3を優先的に利用する。その結果、一部の相への負荷の集中を防ぐことができ、かつ、周囲に設けられた他の電装品に対する悪影響を極力抑制できる。なお、図11に示した図には、どの駆動パターンも1相、2相及び4相に限定され、3相での駆動は含まれていないが、一部の駆動パターンには、1相、2相及び4相に加え、3相の場合に駆動する3つの相が設定されていても良い。
第2実施例による第1の効果として、FC−VCU103の出力電流の低リプル化によって平滑コンデンサC1,C2の体格を小さくできるため、FC−VCU103を軽量かつ小型化できる点が挙げられる。加えて第2の効果として、各相にかかる負荷が均等化されるため、FC−VCU103を高耐久化および高寿命化できる点が挙げられる。つまり、第2実施例によってこれら第1および第2の効果の双方を、同時に奏することができる。
また、第1実施例で説明した駆動パターンのローテーションと同様に、第2実施例で説明した駆動パターンのローテーションを、第7実施例で説明するパワーセーブ制御や第8実施例で説明する相電流バランス制御と組み合わせることで、より一層のFC−VCU103の高耐久化および高寿命化が可能となる。第1実施例と同様に、第2実施例で説明した駆動パターンのローテーションは、第7実施例で説明するパワーセーブ制御や第8実施例で説明する相電流バランス制御に対して、主要な制御パラメータと制御の適用場面による二重のハンチング対策が講じられているため、これらの制御を適切に組み合わせることによって、より一層のFC−VCU103の高耐久化および高寿命化を図れる。
なお、第2実施例で説明した駆動パターンのローテーションは、4相の磁気結合型多相コンバータ以外にも適用可能である点に留意されたい。第2実施例の第1変形例としては、隣接する2つの相が互いに磁気結合した、2N相の磁気結合型多相コンバータにおける駆動パターンのローテーションが挙げられる。なお、Nは3以上の自然数である。例えば6相の磁気結合型多相コンバータおいては、第2実施例で述べてきたように、1相で駆動する場合には多相コンバータの中心に位置する相3または相4の一方を用い、2相で駆動する場合には互いに磁気結合した相3と相4の双方を用い、3相で駆動する場合には、相3と相4の次に多相コンバータの中心に位置する相2または相5のいずれか一方を用いる。即ち、多相コンバータのより中心に位置する相と当該相と磁気結合した相が、優先的に駆動される駆動パターンとすれば良い。
なお、第2実施例で説明した駆動パターンのローテーションは、磁気結合した相の数が2以外の多相コンバータにも適応可能である点に留意されたい。第2実施例の第2の変形例としては、隣接するM個の相が互いに磁気結合した、L×M相の磁気結合型多相コンバータにおける駆動パターンのローテーションが挙げられる。なお、Mは3以上の自然数であり、Lは1以上の自然数である。例えば6相の磁気結合型多相コンバータにおいては、第1の駆動パターンとして、1相で駆動する場合には多相コンバータの中心に位置する相3を用い、2相で駆動する場合には相3と互いに磁気結合した相1,相2のうち多相コンバータの中心に近い相2を用い、3相で駆動する場合には相1〜3を用い、4相で駆動する場合は、相1〜3に加えて多相コンバータの中心に位置する相4を用いる。第2の駆動パターンとして、1相で駆動する場合には多相コンバータの中心に位置する相4を用い、2相で駆動する場合には相4と互いに磁気結合した相5,相6のうち多相コンバータの中心に近い相5を用い、3相で駆動する場合には相4〜6を用い、4相で駆動する場合は、相4〜6に加えて多相コンバータの中心に位置する相3を用いる。これら第1と第2の駆動パターンをローテーションする。
さらに、第2実施例で説明した駆動パターンのローテーションは、磁気結合していない多相コンバータにも適応可能である点に留意されたい。第2実施例の第3変形例としては、磁気結合していない多相コンバータにおける駆動パターンのローテーションが挙げられる。第3変形例では、全ての相が互いに磁気結合していないため、駆動する相が増える度に、多相コンバータの中心に位置する相ほど優先的に用いる。
(第3実施例)
第3実施例のECU113は、燃料電池101の出力電流でもあるFC−VCU103への入力電流IFCと、燃料電池101の出力電圧でもあるFC−VCU103の入力電圧V1と、目標値であるFC−VCU103の出力電圧V2とに基づき予め作成した損失マップから、入力電流IFCのみに基づいてFC−VCU103の動作相数を決定する。なお、以下の説明では、「出力電圧V2/入力電圧V1」をFC−VCU103の昇圧率という。
図13は、FC−VCU103の入力電力(=IFC×V1)を一定とした場合の、動作相数N毎の入力電流IFCに対するFC−VCU103での損失ηtotal_Nを示すグラフである。また、図14は、入力電力を一定とし所定の相数でFC−VCU103を駆動した場合の、昇圧率に対するFC−VCU103での損失を示すグラフである。図13に示すように、FC−VCU103での損失の大きさは入力電流IFCによって異なり、動作相数Nによっても異なる。このため、入力電力を一定とした場合の損失が最も小さくなる動作相数Nは入力電流IFCから求められる。但し、図14に示すように、FC−VCU103での損失の大きさは昇圧率(=出力電圧V2/入力電圧V1)によっても異なる。定電力電源である商用電力系統などは、図13と図14のみに基いて、適切な動作相数の変更が可能であるが、後述するように出力電流に応じて出力電圧が変動するIV特性を有する電源においては、このIV特性を考慮しなければ、適切な動作相数の変更ができない。
したがって、本実施例では、入力電流IFCに対するFC−VCU103での損失を、FC−VCU103の出力電圧V2毎に予め導出して、動作相数N毎の損失マップを作成する。本実施例では、図2及び図6に示したFC−VCU103を後述する理由により1相、2相及び4相のいずれかで駆動するため、図15に示す1相、2相及び4相の各損失マップを作成する。図15に示す各損失マップの横軸は入力電流IFCであり、縦軸は出力電圧V2を示し、各入力電流IFC及び所定範囲から抽出された各出力電圧V2に対応するFC−VCU103での損失値が記載されている。入力電流IFCはそれぞれI1〜I20で表されており、これらI1〜I20は等間隔で設けられた値となっている。また、出力電圧V2はそれぞれV2_1〜V2_21で表されており、これらV2_1〜V2_21は等間隔に設けられた値となっている。なお、「出力電圧V2=昇圧率×入力電圧V1 …(3)」の関係が成り立つ。また、図15と後述の図17に示す各損失マップに記載された損失は、実際の損失値(W)ではなく、各条件における損失値の大小関係を説明するための値であり、例えば実際の損失値を正規化したものである点に留意されたい。
入力電圧V1は、入力電流IFCに対して図16に示す燃料電池101のIV特性に基づく所定の関係を有するため、入力電流IFCから導出できる。したがって、前出の式(3)において入力電圧V1を係数とすると、図15に示す出力電圧V2は昇圧率を間接的に示す変数である。
図15の各損失マップには、同じ入力電流IFC及び同じ出力電圧V2に対応する3つの損失値のうち、最も小さい値のマス、換言すれば最も効率が良いマスにハッチングがされている。本実施例では、図15に示した3つの損失マップでハッチングされた最小の損失値を抽出した図17に示す合成損失マップを作成し、この合成損失マップに基づいてFC−VCU103の動作相数を切り替える入力電流IFCのしきい値を設定する。
図17の合成損失マップが示すように、同じ入力電流IFCであっても損失値が最小となる動作相数が出力電圧V2によって異なる場合、同入力電流IFCに対しては、異なる出力電圧V2の各々に対応する損失値が最小なマスの数が多い動作相数が電圧変換を行う動作相数に設定される。例えば、図17に示す例では、入力電流IFCがI12(A)のときの異なる出力電圧V2の各々に対応する損失値が最小なマスの数が、動作相数が4相では3つであるが2相では18つであるため、入力電流IFCがI12(A)のときの動作相数は2相に設定し、2相と4相を切り替える入力電流IFCのしきい値をI12(A)とI13(A)の間の値IFCbに設定する。また、損失値が最小なマスの数が最も少ない動作相数を除くことによって合成損失マップが作成されても良い。合成損失マップに基づき設定されるしきい値は、上述のマスの数に応じた設定に限らず、所定の出力電圧V2での各動作相数の損失値の大小に応じて設定されても良い。所定の出力電圧V2は、例えば、損失マップにおける出力電圧V2の範囲の平均値又は中央値である。所定の出力電圧V2がV2_11であれば、1相と2相を切り替える入力電流IFCのしきい値がI5(A)とI6(A)の間の値IFCaに設定され、2相と4相を切り替える入力電流IFCのしきい値がI12(A)とI13(A)の間の値IFCbに設定される。
なお、動作相数を切り替える入力電流IFCのしきい値には、入力電流IFCが上昇する場合と下降する場合でヒステリシスが設けられても良い。例えば、2相と4相を切り替えるポイントであるしきい値IFCbは、入力電流IFCが上昇して2相から4相に切り替える場合はI13(A)に設定され、入力電流IFCが下降して4相から2相に切り替える場合はI13−Δ(A)に設定される。このヒステリシスが設けられることによって制御の競合を排除できる。
また、図15に示した損失マップ及び図17に示した合成損失マップは損失値のマップであるが、損失値の代わりに効率のマップが用いられても良い。この場合、入力電流IFCのしきい値は、効率が最大の動作相数に基づく合成効率マップが用いられる。
また、入力電流IFCの指令値の上昇速度の絶対値と、入力電流IFCの指令値の下降速度の絶対値のうち、絶対値が小さい方のしきい値IFCbをI13(A)に、絶対値が大きい方のしきい値IFCbをI13−Δ(A)に設定することが好ましい。絶対値が小さい方が、しきい値近傍にIFCが属する時間が長いため、より適切に動作相数の切替が行え、損失が減少するからである。本実施例では、入力電流IFCの指令値の上昇速度の絶対値の方が、入力電流IFCの指令値の下降速度の絶対値より小さいため、入力電流IFCが上昇して2相から4相に切り替える場合には、しきい値IFCbはI13(A)に設定され、入力電流IFCが下降して4相から2相に切り替える場合には、しきい値IFCbはI13−Δ(A)に設定される。
本実施例のECU113は、上記説明した図17に示す合成損失マップに応じた動作相数の切替ポイントである入力電流IFCのしきい値IFCa,IFCbを基準値として、電流センサ105が検出した入力電流IFCのみ又は相電流センサ1051〜1054の検出値から得られた入力電流IFCのみに基づいてFC−VCU103の動作相数を決定する。なお、図15に示した損失マップ及び図17に示した合成損失マップは、ECU113とは別の計算機によって事前に作成される。
以上説明したように、第3実施例のEC113がFC−VCU103の動作相数を決定するために必要な値は、FC−VCU103への入力電流IFCのみであり、EC113は、しきい値IFCa,IFCbを基準値とした簡便な制御によって動作相数を決定できる。このように、動作相数の決定に入力電流IFC以外の値を必要としないため、効率の良い適切な動作相数の切替制御が可能である。その結果、燃料電池101の出力が変化しても、FC−VCU103は効率良く動作する。
なお、上記説明では、図2及び図6に示す磁気結合型のFC−VCU103の動作相数が1相、2相又は4相であると説明したが、図7及び図8に示した各相のリアクトルの鉄芯が独立したFC−VCU203を用いる場合には、3相を含む1相〜4相の4つの損失マップに基づく合成損失マップに応じて、1相と2相、2相と3相及び3相と4相の間の切替ポイントである各しきい値を設定する。また、第3実施例のECU113は、FC−VCU103を複数相で駆動する場合には、第8実施例で説明する相電流バランス制御を行っても良い。
なお、上記説明では図15と図17において、FC−VCU103に要求される出力電圧V2の範囲であるV2_1〜V2_21(V)において、所定電圧(V)間隔で各条件における損失を計算しているが、変形例として、FC−VCU103に要求される出力電圧V2の範囲の平均値のみにおいて各条件における損失を計算し、これに基づき入力電流IFCに対する動作相数を決定しても良い。図17に示す合成損失マップにおいて、FC−VCU103に要求される出力電圧V2の範囲の平均値であるV2_11(V)のみに注目しても、入力電流IFCのしきい値を得ることが可能である。この変形例によれば、効率の良い点でFC−VCU103の動作相数を変更できるのみならず、当該動作相数に関する制御構築に掛かる工数を格別に削減できる。
また、本実施例では入力電流IFCのみに基づいて動作相数を変更する場合について説明したが、より高効率の電圧変換を行うべく、本実施例の変形例として、入力電流IFCに加え出力電圧V2に基づいて動作相数を変更しても良い。当該変形例においては、入力電流IFCがI12(A)かつ出力電圧V2がV2_1〜V2_3(V)では4相で駆動し、入力電流IFCがI12(A)かつ出力電圧V2がV2_4〜V2_21(V)では2相で駆動する。
(第4実施例)
第4実施例のECU113は、図2及び図6に示した磁気結合型のFC−VCU103の動作相数として、1相を除く奇数相を禁止する。
図18は、FC−VCU103における駆動パターン毎の駆動する相を動作相数別に示す第4実施例の図である。第4実施例のECU113は、図18に示す4つの駆動パターンのいずれかに基づきFC−VCU103を制御する。例えば、駆動パターン1でFC−VCU103を1相で駆動する場合、ECU113は、相1のスイッチング素子をオンオフ切換制御し、2相で駆動する場合には相1及び相2の各スイッチング素子を180度の位相差でオンオフ切換制御し、4相で駆動する場合には相1〜相4の各スイッチング素子を90度の位相差でオンオフ切換制御する。なお、2相の場合には、「相1及び相2」又は「相3及び相4」といったように、1相の場合に駆動する相及び当該相とリアクトルの鉄芯を共用化した相の2つの相を駆動する。
図19は、FC−VCU103を4相で駆動する際の各相を流れる相電流IL1〜IL4の経時変化を示す図である。図19に示すように、FC−VCU103を4相で駆動する際の相電流IL1〜IL4の振幅の変化は、第8実施例で説明する相電流バランス制御によって各相の入力電流のバランスが図られているため、均等である。同様に、FC−VCU103を2相で駆動する場合において、相1及び相2を駆動する際の相電流IL1,IL2の振幅の変化及び相3及び相4を駆動する際の相電流IL3,IL4の振幅の変化は均等である。
図20は、FC−VCU103を3相で駆動する際の各相を流れる相電流IL1〜IL4の経時変化を示す図である。第8実施例で説明する相電流バランス制御によって各相の入力電流のバランスが図られていても、動作相数を4相から3相に変更すると、相4に流れていた相電流IL4が減少して図6に示す鉄芯Cobの磁束3を打ち消す方向に作用していた磁束4が減少し、逆巻きの磁気結合のペアとなる相3の相電流IL3が増加する。その結果、図20に示すように、相電流IL1,IL2の振幅の変化に対して相電流IL3の振幅の変化が大きくなり、相3への負荷が他の相に比べて高くなってしまう。したがって、本実施例のECU113は、1相を除き奇数相でのFC−VCU103の駆動を禁止する。なお、動作相数を2相から3相に変更する際にも同様の相電流のアンバランスが生じる。
なお、1相での駆動も禁止すると、図5に示すようにFC−VCU103のエネルギー効率は特に入力電流IFCが低い状態で低下してしまう。したがって、本実施例のECU113は、磁気結合型のFC−VCU103であっても、1相での駆動は許可する。
以上説明したように、第4実施例によれば、磁気結合型のFC−VCU103の動作相数として、1相を除く奇数相は禁止される。このため、1つの相への負荷の集中を防止できるため、FC−VCU103の高寿命化と高耐久化が図れる。また、奇数相での駆動が禁止されると、動作相数1の場合を除き、鉄芯を共用化した相の組の一方は駆動されないため、駆動する相の相電流の振幅の変化は均等となり、FC−VCU103の制御は安定する。さらに、駆動する相の相電流の振幅の変化は均等なため、前述したインターリーブ制御によって、FC−VCU103の出力電流のリプルが低減され、平滑コンデンサC2の体格を小さくでき、ひいてはFC−VCU103の軽量・小型化が可能となる。
なお、第4実施例においては隣接する2つの相が互いに磁気結合している場合について説明したが、本実施例の変形例としては、隣接するN個の相が互いに磁気結合している場合では、1相とNの倍数の相のみが動作相数として用いられ、1相を除き、互いに磁気結合しているN相の一部のみを動作相数に用いることを禁止する。なお、Nは3以上の自然数である。
また、上記説明では特に入力電流IFCが低い状態におけるFC−VCU103のエネルギー効率の低下を抑制すべく、例外的に1相動作を許可しているが、変形例としてFC−VCU103のより一層の高耐久化と高寿命化を図るべく、1相動作を禁止しても良い。
(第5実施例)
第5実施例のECU113は、FC−VCU103の動作相数を切り替える際に、駆動を開始する相又は駆動を停止する相のスイッチング素子に対するオンオフ切換制御のデューティ比を段階的かつ連続的に変更する。
図21は、FC−VCU103の動作相数を1相から2相に切り替える際の、駆動を継続する相1及び駆動を開始する相2のスイッチング素子に対するオンオフ切換制御のデューティ比D1,D2、各相電流IL1,IL2及び入力電流IFCの経時変化の一例を示す第5実施例の図である。本実施例のECU113は、図21に示すように、駆動中の相1に加えて相2の駆動を新たに開始する際には、1相から2相への相数切替期間Tiを設定し、この期間Ti中に、駆動を継続する相1のスイッチング素子に対するオンオフ切換制御のデューティ比D1は固定したまま、駆動を開始する相2のスイッチング素子に対するオンオフ切換制御のデューティ比D2を段階的に上げる。なお、相数切替期間Ti後の相2の最終的なデューティ比は、相1のデューティ比である。
仮に相数切替期間Tiを設定せずに、ECU113が相2の駆動をFC−VCU103における所望の昇圧率に応じたデューティ比で開始すると、図21に一点鎖線で示すように、入力電流IFCが変動する。この入力電流IFCの変動は、制御の安定性を損ねるばかりか、平滑コンデンサC1,C2の体格の増大、ひいてはFC−VCU103の軽量化及び小型化を阻害する。しかし、本実施例のように、駆動を開始する相のデューティ比を駆動中の相のデューティ比に向けて段階的に上げることによって、駆動を開始する相を流れる相電流が徐々に変化するため、入力電流IFCの変動を抑止できる。
一方、FC−VCU103の動作相数を2相から1相に切り替えるために、例えば相2の駆動を停止する際には、本実施例のECU113は、図22に示すように、2相から1相への相数切替期間Tdを設定し、この期間Td中に、駆動を継続する相1のスイッチング素子に対するオンオフ切換制御のデューティ比D3は固定したまま、駆動を停止する相2のスイッチング素子に対するオンオフ切換制御のデューティ比D4を段階的に0まで下げる。図22は、FC−VCU103の動作相数を2相から1相に切り替える際の、駆動中の相1及び駆動を停止する相2に対するオンオフ切換制御のデューティ比D3,D4、各相電流IL1,IL2及び入力電流IFCの経時変化の一例を示す図である。
図21のように動作相数を増やす場合には、駆動する相(以下「駆動相」という。)の1つにかかる負荷は軽減されるため、FC−VCU103の制御安定性は向上し、かつ、負荷の軽減がFC−VCU103の高耐久化と高寿命化に寄与する。一方、図22のように動作相数を減らす場合には、1つあたりの駆動相にかかる負荷は増加するため、FC−VCU103の制御安定性は低下し、かつ、負荷の増加がFC−VCU103の高耐久化と高寿命化を阻害する。このように、動作相数を減らすとFC−VCU103の制御安定性が低下する状態に移行するため、ECU113は、動作相数を減らす際に設定される相数切替期間Tdを、動作相数を増やす際に設定される相数切替期間Tiよりも長く設定して、デューティ比D2の変化率を図21の場合よりも小さくする。
上記説明した図21及び図22に示す例は、動作相数を1相と2相の間で切り替える場合であるが、2相と4相の間で切り替える場合も同様である。但し、図23に示すように、FC−VCU103で発生する損失に基づいて予め決定された動作相数を切り替える入力電流IFCのしきい値IFCa,IFCbを基準に動作相数を切り替える場合、ECU113は、動作相数の切り替えに伴う駆動相である、駆動を継続する相を流れる相電流の変化量又は駆動を開始若しくは停止する相を流れる相電流の変化量が大きいほど相数切替期間Ti,Tdを長く設定してデューティ比の変化率を小さくする。図23に示す例では、1相と2相を切り替える場合の駆動相における相電流の変化量は「IFCa/2」であり、2相と4相を切り替える場合の駆動相における相電流の変化量は「IFCb/2−IFCb/4」である。なお、2相と4相の間の切り替えといったように動作相数を不連続に切り替える場合の相電流の変化量は、動作相数を連続して切り替える場合の相電流の変化量よりも大きい可能性が高い。このため、動作相数の不連続な切り替え時の相数切替期間は、連続切替時よりも長く設定される。
なお、動作相数を切り替えるポイントである入力電流IFCのしきい値には、入力電流IFCが上昇する場合と下降する場合でヒステリシスが設けられても良い。この場合の動作相数の変化に伴う駆動相における相電流の変化量は、入力電流IFCが上昇する場合と下降する場合とで異なる。
図24は、FC−VCU103の動作相数を切り替える際の第5実施例のECU113が行う動作を示すフローチャートである。図24に示すように、ECU113は、動作相数を切り替えるか否かを判断し(ステップS501)、動作相数を切り替える場合はステップS503に進む。ステップS503では、ECU113は、動作相数の増減及び動作相数の切替前後の駆動相における相電流の変化量に基づき、相数切替期間Tを設定する。このとき、ECU113は、動作相数を増やす場合より減らす場合の相数切替期間Tを長く設定し、動作相数の切替前後の駆動相における相電流の変化量が大きいほど相数切替期間Tを長く設定する。さらに、ECU113は、動作相数を連続して切り替える場合より不連続に切り替える場合の相数切替期間Tを長く設定する。
次に、ECU113は、駆動を継続する相のデューティ比Dを取得する(ステップS505)。次に、ECU113は、時間を示すカウント値tを0に設定する(ステップS507)。次に、ECU113は、カウント値tに制御周期Δtを足した値を新たなカウント値tに設定する(ステップS509)。次に、ECU113は、駆動を継続する相のデューティ比Dは固定したまま、動作相数を増やす場合には駆動を開始する相のスイッチング素子を(t/T)×Dのデューティ比でオンオフ切換制御し、動作相数を減らす場合には駆動を停止する相のスイッチング素子をD−(t/T)×Dのデューティ比でオンオフ切換制御する(ステップS511)。次に、ECU113は、カウント値tが相数切替期間T以上(t≧T)であるか否かを判断し(ステップS513)、t≧Tであれば一連の処理を終了し、t<TであればステップS509に戻る。
以上説明したように、第5実施例のECU113は、FC−VCU103の動作相数を切り替える際に、駆動を開始する相又は駆動を停止する相のスイッチング素子に対するオンオフ切換制御のデューティ比を段階的に変更することによって、駆動を開始する相又は駆動を停止する相を流れる相電流が徐々に変化するため、動作相数の切替時における入力電流IFCの変動を抑止できる。また、動作相数を減らす際のFC−VCU103の制御安定性は低下するが、当該制御安定性は低下に応じて相数切替期間が長く設定されるため、動作相数を減らす場合であっても動作相数の切替時における入力電流IFCの変動を抑止できる。同様に、動作相数の切替時における駆動相の相電流の変化量が大きいほど制御安定性が低下するため、この場合の相数切替期間を長く設定することによって、動作相数の切替時における入力電流IFCの変動を抑止できる。また、動作相数を不連続に切り替える場合も相電流の変化量が大きく制御安定性が低下する可能性が高いため、この場合の相数切替期間を長く設定することによって、動作相数の切替時における入力電流IFCの変動を抑止できる。従って、制御の安定性を確保しつつ、平滑コンデンサC1,C2の体格の増大に伴う、FC−VCU103の重量化及び大型化を抑制できる。
なお、図23に示した例は、図2及び図6に示す磁気結合型のFC−VCU103の動作相数が1相、2相又は4相である場合を示すが、図7及び図8に示した各相のリアクトルの鉄芯が独立したFC−VCU203を用いる場合には、3相を含む1相〜4相の動作相数が利用される。この場合は、図25に示すように、FC−VCU103で発生する損失に基づいて予め決定された動作相数を切り替える入力電流IFCのしきい値IFCaa,IFCbb,IFCccを基準に動作相数が切り替えられ、ECU113は、動作相数の切り替えに伴う駆動相を流れる相電流の変化量が大きいほど相数切替期間Ti,Tdを長く設定してデューティ比の変化率を小さくする。
(第6実施例)
第6実施例のECU113は、平滑コンデンサC1,C2の入出力電流のリプルがしきい値以下となるよう、FC−VCU103への入力電流IFCに基づきスイッチング信号の周波数(以下「スイッチング周波数」という。)を設定し、FC−VCU103の動作相数の変更をスイッチング周波数の設定変更と同期させる。
図26は、スイッチング周波数fで制御するFC−VCU103の動作相数が1相である場合、スイッチング周波数f/2で制御するFC−VCU103の動作相数が1相である場合、及びスイッチング周波数f/2で制御するFC−VCU103の動作相数が2相で前述したインターリーブ制御されている場合の、FC−VCU103の出力電流及び入力電流IFCの経時変化の例を示す図である。図26の左側の例に示すように、ECU113がFC−VCU103を1相で駆動する際に、駆動相のスイッチング素子をスイッチング周波数fでオンオフ切換制御すると、FC−VCU103の出力電流及び入力電流IFCの各周波数は、スイッチング周波数fと同じ「f」になる。ここで動作相数は1相のままスイッチング周波数f/2に変更すると、FC−VCU103の出力電流及び入力電流IFCの各周波数は、スイッチング周波数f/2と同じ「f/2」になる。この周波数f又はf/2が、FC−VCU103の入力側に設けられた平滑コンデンサC1を含む回路とFC−VCU103の上流に設けられた回路の共振周波数、又は、FC−VCU103の出力側に設けられた平滑コンデンサC2を含む回路とFC−VCU103の下流に設けられた回路の共振周波数であると、FC−VCU103の出力電流及び入力電流IFCのリプルが大きくなるために好ましくない。本実施例では、周波数f/2が共振周波数であると仮定して説明する。
また、特に入力電流IFCが低くFC−VCU103が1相で駆動されている場合のスイッチング周波数が低く設定されると、入力電流IFCは値が0となる期間を含む(ゼロクロスする)不連続な波形になる場合がある。こういった不連続な波形の入力電流IFCはFC−VCU103の制御安定性を低下させるため好ましくない。
このように、FC−VCU103が1相で駆動されるときのスイッチング周波数が低いと、リプルの増加及び制御安定性の低下といった問題が生じるため、このときのスイッチング周波数は、上記問題が発生しない程度に高いことが望ましい。但し、この高い周波数を2相以上の動作相数にも適用すると、FC−VCU103全体におけるスイッチング損失が増大し、スイッチング素子の発熱によるFC−VCU103の過熱といった別の問題が生じる可能性がある。このため、FC−VCU103のスイッチング周波数は、動作相数の増加に応じて低く設定されることが望ましい。図26には、左側の例に対して右側の例に示すように、FC−VCU103を2相で駆動する際には、駆動相のスイッチング素子をスイッチング周波数f/2でオンオフ切換制御する。このときのFC−VCU103の出力電流の周波数は、FC−VCU103がインターリーブ制御されているため左側の例に示す場合の周波数と変わらず、共振周波数f/2を回避できる。
図27は、第6実施例のECU113がFC−VCU103を制御する際の入力電流IFCとスイッチング周波数、動作相数及び入出力電流の周波数との関係を示す図である。本実施例のECU113は、図27に示す関係に基づいてFC−VCU103のスイッチング周波数と動作相数を決定する。すなわち、ECU113は、FC−VCU103への入力電流IFCに応じたスイッチング周波数を設定し、スイッチング周波数の設定変更に同期して動作相数を切り替える。なお、FC−VCU103を1相で駆動する際のスイッチング周波数fは、FC−VCU103の出力電流及び入力電流IFCのリプルの振幅がしきい値以下となる値が設定される。また、多相動作時においてインターリーブ制御を行う場合は、スイッチング周波数に動作相数を掛けた値が共振周波数にならないように、入力電流IFCに応じたスイッチング周波数が設定される。好ましくは、動作相数を変更しても出力電流の周波数が変動しないように、入力電流IFCに応じたスイッチング周波数が設定される。
なお、本実施例のように動作相数の変更をスイッチング周波数の設定変更と同期させずに、例えば図28に示すように、FC−VCU103での損失に基づく入力電流IFCのしきい値IFCxに基づいて動作相数を変更すると、エネルギー効率が常に高い状態でFC−VCU103を駆動できる。しかし、入力電流IFCの値によっては、FC−VCU103の入出力電流の周波数が共振周波数f/2となってリプルが増加してしまう。
以上説明したように、第6実施例では、FC−VCU103の入出力側での共振によるリプルがしきい値以下となるよう、FC−VCU103への入力電流IFCに基づきスイッチング信号の周波数(以下「スイッチング周波数」という。)が設定され、FC−VCU103の動作相数は、入力電流IFCに基づくスイッチング周波数の設定変更と同期して変更される。このように、仮にFC−VCU103の設定を変更した場合であっても、ハードウェアの構成変更を行うことなくソフトウェアの変更を行えば、FC−VCU103の入出力側における共振の発生を防止でき、FC−VCU103の制御安定性を向上できる。
また、入力電流IFCが低いときに設定されるスイッチング周波数はFC−VCU103の過熱問題が発生しない程度に高い値が設定されるため、入力電流IFCがゼロクロスせずに連続した波形となる電流レベルの下限を下げることができる。すなわち、所定レベル以上の制御安定性を担保可能な入力電流の領域を広めることができる。さらに、FC−VCU103の出力電流及び入力電流IFCのリプルの振幅がしきい値以下となるので、平滑コンデンサC1,C2の体格の増大を回避でき、FC−VCU103の小型化及び軽量化が可能となる。
なお、図27に示した例は、図2及び図6に示す磁気結合型のFC−VCU103の動作相数が1相、2相又は4相である場合を示すが、図7及び図8に示した各相のリアクトルの鉄芯が独立したFC−VCU203を用いる場合には、3相を含む1相〜4相の動作相数が利用される。この場合、入力電流IFCとスイッチング周波数及び動作相数との関係は図29に示される。また、スイッチング周波数及び動作相数を切り替える入力電流IFCのしきい値には、入力電流IFCが上昇する場合と下降する場合でヒステリシスが設けられても良い。例えば、1相と2相を切り替えるポイントである図27及び図29に示すしきい値IFCaは、入力電流IFCが上昇して1相から2相に切り替える場合に設定される値に対し、入力電流IFCが下降して2相から1相に切り替える場合には当該値よりも低い値が設定される。このヒステリシスが設けられることによって制御の競合(ハンチング)を排除できる。
(第7実施例)
第7実施例のECU113は、FC−VCU103の温度がしきい値を超えると、FC−VCU103の動作相数を現在の相数よりも大きな相数に増やす。
本実施例のECU113は、温度センサ1091〜1094が検出した温度T1〜T4の少なくとも1つ(以下、単に「温度T」という。)がしきい値th1を超えると、FC−VCU103の過熱を防止するために、燃料電池101の出力電流である入力電流IFCを低減する制御(以下「パワーセーブ制御」という。)を行う。しかし、ECU113が図30に示すグラフに基づいてFC−VCU103の動作相数を入力電流IFCに基づいて決定する場合においては、パワーセーブ制御を行うことで入力電流IFCが低下して動作相数が減らされると、図31に示すように、駆動相を流れる相電流が増加して、思惑とは逆にFC−VCU103の温度Tがさらに上昇してしまう可能性があった。なお、パワーセーブ制御は、駆動相のデューティ比を変更することによるFC−VCU103に対して行われる制御であるが、燃料電池101に対して行う出力制御であっても良い。
本実施例のECU113は、温度Tがしきい値th1を超えてパワーセーブ制御を行う場合であっても、図32に示すように、入力電流IFCによらずにFC−VCU103の動作相数をパワーセーブ制御前の相数より増やす。図32に示す例では、FC−VCU103を2相で駆動しているときに温度Tがしきい値th1を超えると、パワーセーブ制御を行うと共に、FC−VCU103の動作相数を4相に変更する。その結果、FC−VCU103の各相を流れる相電流ILは低下して各相にかかる負荷は軽減されるため、FC−VCU103の温度Tは下降する。
本実施例のECU113は、パワーセーブ制御を行ってFC−VCU103の動作相数を増やした状態を所定時間τ以上継続する。すなわち、ECU113は、所定時間τを経過する前のパワーセーブ制御の停止及び動作相数の変更を禁止する。所定時間τが経過した後、温度Tがしきい値th2を下回れば、ECU113は、パワーセーブ制御を停止し、パワーセーブ制御を停止した後の入力電流IFCに応じた動作相数に変更する。なお、しきい値th2は、しきい値th1未満の値である。
図33は、FC−VCU103の温度がしきい値を超えた際の第7実施例のECU113が行う動作を示すフローチャートである。図33に示すように、ECU113は、温度Tがしきい値th1を超えた(T>th1)か否かを判断し(ステップS701)、T>th1の場合はステップS703に進む。ステップS703では、ECU113は、パワーセーブ制御を開始する。次に、ECU113は、FC−VCU103の動作相数をパワーセーブ制御前の相数より増やす(ステップS705)。なお、動作相数を増やす際、ECU113は、第5実施例で説明したように相数切替期間を設定し、駆動を開始する相のデューティ比を段階的かつ連続的に上げる。但し、ステップS705で設定される相数切替期間は、FC−VCU103の温度がしきい値以下のときパワーセーブ制御を行わず単に動作相数を増やす際の相数切替期間よりも短く設定される。その結果、ステップS705で行われる動作相数の増加は早く完了する。
次に、ECU113は、時間を示すカウント値tを0に設定する(ステップS707)。次に、ECU113は、カウント値tに制御周期Δtを足した値を新たなカウント値tに設定する(ステップS709)。次に、ECU113は、カウント値tが所定時間τ以上(t≧τ)であるか否かを判断し(ステップS711)、t≧τであればステップS713に進み、t<τであればステップS709に戻る。ステップS713では、ECU113は、温度Tがしきい値th2を下回った(T<th2)か否かを判断し、T<th2の場合はステップS715に進む。ステップS715では、ECU113は、ステップS703で開始したパワーセーブ制御を停止する。次に、ECU113は、パワーセーブ制御を停止した後の入力電流IFCに応じた動作相数に変更する(ステップS717)。
以上説明したように、第7実施例によれば、FC−VCU103の温度がしきい値を超えてパワーセーブ制御を行う場合は、FC−VCU103の動作相数を現在の相数よりも大きな相数に増やすことによって駆動相にかかる負荷を軽減する。このため、FC−VCU103の駆動を維持しつつ、FC−VCU103が過熱状態に至る前の温度上昇を抑制でき、正常状態を維持できる。
なお、図32に示した例は、図2及び図6に示す磁気結合型のFC−VCU103の動作相数が1相、2相又は4相である場合を示している。第4実施例で示したように、磁気結合型のFC−VCU103においては、一部の相に対する負荷の集中を回避するため、互いに磁気結合した複数の相の一部のみを使用することは好ましくない。仮に動作相数を増やして、駆動相にかかる負荷の軽減を図っても、一部の相に負荷が集中するため、FC−VCU103の過熱状態に至る可能性を解消できないからである。
一方、図7及び図8に示した各相のリアクトルの鉄芯が独立したFC−VCU203を用いる場合には、3相を含む1相〜4相の動作相数が利用される。この場合、FC−VCU203を2相で駆動しているときに温度Tがしきい値th1を超えると、パワーセーブ制御を行うと共に、FC−VCU103の動作相数を2相より多い3相又は4相に変更する。また、ECU113は、磁気結合型のFC−VCU103及び非磁気結合型のFC−VCU203のいずれでの場合も、温度Tがしきい値th1を超えた際の動作相数にかかわらず、最大の動作相数に変更しても良い。最大の動作相数に変更することで、駆動相にかかる負荷を最大限に低減でき、FC−VCU103が過熱状態に至る可能性をより早期に解消でき、正常状態を維持できる。
なお、図2と図7に示した例では、スイッチング素子の近傍にのみ温度センサ1091〜1094を設けているが、ダイオードやリアクトルL1〜L4といったFC−VCU103,203内部の他の箇所や、燃料電池101や平滑コンデンサC1,C2といったFC−VCU103,203外部に温度センサを設け、それらが検出した温度に基づいて本実施例で述べたパワーセーブ制御を行っても良い。
(第8実施例)
第8実施例のECU113は、相電流センサ1051〜1054の少なくとも1つ又は電流センサ105が故障した際に、故障状態に応じた適当な制御を行う。なお、電流センサ105及び相電流センサ1051〜1054の故障判定は、ECU113によって行われる。電流センサ105及び相電流センサ1051〜1054の故障判定には、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、特開平10−253682号公報に開示されている上張り付き故障や中間張り付き故障、下張り付き故障の判定方法を用いる場合、ECU113は、検出された電流値に応じた電圧を示す信号が規定範囲外の値を表す状態が所定時間以上継続した場合に、故障した異常な状態と判定する。
本実施例では、電流センサ105及び相電流センサ1051〜1054の全てが正常である場合、電流センサ105が検出したFC−VCU103への入力電流IFCの値は、ECU113がFC−VCU103の動作相数を決定するために用いられる。また、相電流センサ1051〜1054が検出した相電流IL1〜IL4の各値は、ECU113が相電流バランス制御を行うために用いられる。相電流バランス制御は、相電流IL1〜IL4の移動平均値の総和をFC−VCU103の動作相数で割った値を目標値として、駆動相における各相電流が当該目標値となるよう、各駆動相に対するスイッチング信号のデューティ比を増減する制御をいう。
動作相数の切替制御は、第3実施例で記述したように、FC−VCU103への入力電流IFC又は相電流IL1〜IL4の合計値に基づいて行われる。しかし、相電流センサの製品誤差やインターリーブ制御によって各相の相電流の位相が異なる事によって、相電流IL1〜IL4の合計値が必ずしもFC−VCU103への入力電流の真値を示すとは限らないので、FC−VCU103への入力電流IFCを用いることが好ましい。一方、相電流バランス制御を行うには、相電流IL1〜IL4の各値が必要なため、相電流センサ1051〜1054を用いる。いずれの制御によっても、一部の相に負荷が集中することを防止できる。
図34は、動作相数決定のための電流値、相電流バランス制御のための電流値、及びパワーセーブ制御実行の有無を、電流センサ105及び相電流センサ1051〜1054の異なる状態毎に示す第8実施例の図である。図34に示すように、相電流センサ1051〜1054の少なくとも1つが故障した場合、FC−VCU103の動作相数は、正常時と変わらずに電流センサ105が検出したFC−VCU103への入力電流IFCの値に基づき決定され、かつ、相電流バランス制御は行われない。また、電流センサ105が故障した場合、FC−VCU103の動作相数は、相電流センサ1051〜1054が検出した相電流IL1〜IL4の合計に基づき決定され、かつ、相電流バランス制御は正常時と変わらずに相電流センサ1051〜1054が検出した相電流IL1〜IL4に基づき行われる。
なお、相電流センサ1051〜1054の少なくとも1つが故障した場合も、電流センサ105が故障した場合も、燃料電池101の出力電流である入力電流IFCを低減する制御(以下「パワーセーブ制御」という。)が行われる。なお、パワーセーブ制御は、駆動相のデューティ比を変更することによるFC−VCU103に対して行われる制御であるが、燃料電池101に対して行う出力制御であっても良い。相電流センサ1051〜1054の少なくとも1つが故障した場合に行われるパワーセーブ制御は、相電流バランス制御を行わないことで低下する制御安定性を補完するために行われる。また、電流センサ105が故障した場合に行われるパワーセーブ制御は、FC−VCU103の動作相数を決定するための相電流IL1〜IL4の合計に基づく制御の周期と、相電流IL1〜IL4に基づく相電流バランス制御の周期とが同調することで低下する制御安定性を補完するために行われる。加えて、前述したように相電流センサの製品誤差やインターリーブ制御によって各相の相電流の位相が異なる事によって、相電流IL1〜IL4の合計値が必ずしもFC−VCU103への入力電流の真値を示すとは限らないので、この点を補完するためにも行われる。
なお、電流センサ105の制御周期と相電流センサ1051〜1054の制御周期は、ECU113での制御の干渉を防止するために互いに異なる。本実施形態では、電流センサ105の制御周期の方が相電流センサ1051〜1054の制御周期よりも早い。これは前述したように、その検出値を用いて動作相数の変更という、FC−VCU103の効率に大きな影響を与える電流センサ105と、その検出値を用いて駆動している各相の電流値のバランスを図るという補助的な相電流センサ1051〜1054の役割の違いに起因するものである。
図35は、電流センサ105及び相電流センサ1051〜1054の状態に応じて第8実施例のECU113が行う動作を示すフローチャートである。図35に示すように、ECU113は、電流センサ105及び相電流センサ1051〜1054の故障判定を行う(ステップS801)。次に、ECU113は、ステップS801で行った故障判定の結果、電流センサ105が正常であるか故障した異常な状態であるかを判定し(ステップS803)、正常であればステップS805に進み、故障した異常な状態であればステップS817に進む。ステップS805では、ECU113は、相電流センサ1051〜1054が正常であるか故障した異常な状態であるかを判定し、相電流センサ1051〜1054の全てが正常であればステップS807に進み、相電流センサ1051〜1054の少なくとも1つが故障した異常な状態であればステップS811に進む。
ステップS807では、ECU113は、例えば第3実施例で述べた動作相数の切替制御を用いて、入力電流IFCに基づきFC−VCU103の動作相数を決定する。次に、ECU113は、相電流IL1〜IL4の各値に基づき相電流バランス制御を行う(ステップS809)。ステップS811では、ECU113は、パワーセーブ制御を実行する。次に、ECU113は、入力電流IFCに基づきFC−VCU103の動作相数を決定する(ステップS813)。さらに、ECU113は、相電流バランス制御を停止する(ステップS815)。なお、上記の説明によれば、相電流バランス制御の停止(ステップS815)に先立って、ECU113は、パワーセーブ制御を実行する(ステップS811)。これはパワーセーブによって制限された入力電流IFCの値に基づいて動作相数が減少し、相電流バランス制御を停止しても、各相の相電流の偏差が生じにくくなるからである。
ステップS817では、ECU113は、相電流センサ1051〜1054が正常であるか故障した異常な状態であるかを判定し、相電流センサ1051〜1054の全てが正常であればステップS819に進み、相電流センサ1051〜1054の少なくとも1つが故障した異常な状態であればステップS825に進む。ステップS819では、ECU113は、パワーセーブ制御を実行する。次に、ECU113は、相電流IL1〜IL4の合計に基づきFC−VCU103の動作相数を決定する(ステップS821)。次に、ECU113は、相電流IL1〜IL4の各値に基づき相電流バランス制御を行う(ステップS823)。ステップS825では、ECU113は、FC−VCU103の制御を停止する。
以上説明したように、第8実施例によれば、相電流センサ1051〜1054の少なくとも1つ又は電流センサ105が故障しても、一部の相に負荷が集中しないための動作相数の切替制御や相電流バランス制御を行うために正常な電流センサの検出値を相補的に用いることによって、これらの制御を継続できる。その結果、一部の電流センサが故障しても、上記制御の効果である各相の負荷の均等化や1つの相への負荷の集中の抑制を維持できる。
(第9実施例)
第9実施例のECU113は、FC−VCU103を制御する当該ECU113におけるフィードバック制御のループ(以下「フィードバックループ」という。)の外部で、フィードバックループから出力されたFC−VCU103のスイッチング素子をオンオフ切換制御するための制御信号(以下、単に「制御信号」という。)に交流信号を重畳する。さらに、ECU113は、交流信号が重畳された制御信号に基づきパルス状のスイッチング信号を生成し、当該スイッチング信号をFC−VCU103の各スイッチング素子に出力する。なお、スイッチング信号に含まれる交流成分は、燃料電池101のインピーダンスを測定するために重畳される。また、交流信号の振幅値は後述する第10実施例又は第11実施例に基づいて設定される。
図36は、第9実施例のECU113を有する電源装置を搭載した電動車両の概略構成を示すブロック図である。図36に示すように、第9実施例のECU113は、フィードバック制御部121と、交流信号発生部123と、スイッチング信号生成部125とを有する。なお、本実施例ではFC−VCU103は電流制御モードで制御されるためECU113には、FC−VCU103の入力電流IFCの目標値(以下「IFC電流目標値」という。)を入力としてフィードバック制御部121が出力した結果、つまり電流センサ105の検出値(入力電流IFC)を帰還するフィードバックループが形成されている。
フィードバック制御部121は、IFC電流目標値と電流センサ105が検出した入力電流IFCの値の差分に基づく制御信号を出力する。交流信号発生部123は、燃料電池101のインピーダンスを測定するために制御信号に重畳する交流信号を発生する。交流信号発生部123が発生した交流信号は、フィードバックループの外部で、フィードバック制御部121が出力した制御信号に重畳される。スイッチング信号生成部125は、交流信号が重畳された制御信号に基づきパルス状のスイッチング信号を生成し、当該スイッチング信号をFC−VCU103の各スイッチング素子に出力する。
なお、上述のフィードバックループでの制御周期と、フィードバックループの外部で制御信号に交流信号を重畳する段での制御周期とは互いに異なり、フィードバックループでの制御周期に比べて、交流信号を重畳する段での制御周期の方が遅い。これはFC−VCU103が後述する電流制御モードにおいては目標電圧を、後述する電流制御モードにおいては目標電流を出力できるように、フィードバックループにおいては比較的が早い制御周期が求められるためである。一方、交流信号を重畳する段での制御周期には、そこまでの早い制御周期に対する要請がなく、正確に燃料電池101のインピーダンスを測定できるように比較的遅いほうが好ましい。
なお、上記説明では、ECU113は、電圧V2がモータジェネレータ11の駆動効率がしきい値以上となる最適電圧となるよう駆動する電圧制御モードでFC−VCU103を制御しているために、フィードバックループにはV2電圧目標値を入力し、電圧V2を帰還させている。ECU113は、FC−VCU103の制御が安定する電流制御モードでFC−VCU103を制御しても良い。この場合、フィードバックループには、FC−VCU103の出力電流の目標値が入力され、当該出力電流の検出値が帰還される。この場合においても、交流信号発生部123が発生した交流信号は、フィードバックループの外部で、フィードバック制御部121が出力した制御信号に重畳される。
ECU113は、交流成分を含むスイッチング信号に応じてオンオフ切換制御されたFC−VCU103の入力電流IFC及び入力電圧V1でもある燃料電池101の出力電圧に基づいて、交流インピーダンス法により燃料電池101のインピーダンスを測定し、間接的に燃料電池101内部の含水状態を把握する。なお、交流インピーダンス法によれば、ECU113は、電流センサ105及び電圧センサ1071の各検出値を所定のサンプリングレートでサンプリングし、フーリエ変換処理(FFT演算処理やDFT演算処理)などを施した後、フーリエ変換処理後の電圧値をフーリエ変換処理後の電流値で除するなどして燃料電池101のインピーダンスを求める。燃料電池101内部の含水状態は、燃料電池101内部の電解質におけるイオン伝導に影響を与えるため、燃料電池101のインピーダンスとの間に相関関係を有する。従って、前述した交流インピーダンス法により燃料電池101のインピーダンスを測定することで、間接的に燃料電池101内部の含水状態を把握できる。
以上説明したように、第9実施例によれば、FC−VCU103のスイッチング素子をオンオフ切換制御するスイッチング信号に含まれる交流成分を重畳するタイミングは、ECU113におけるフィードバックループの外部である。仮にフィードバックループ内で交流信号を重畳すると、特に交流信号が高周波の場合には帰還成分であるFC−VCU103の入力電流IFCの揺れが大きくなり、この揺れに追従されるためフィードバックループにおけるゲインを高くする必要があり、FC−VCU103の制御安定性が低下する可能性がある。
加えて原理上、重畳させる交流信号よりフィードバックループにおける制御周期を充分に早くしないと、ECU113が交流信号を認識できないため、交流重畳が行えない。従って、特に交流信号が高周波の場合にはフィードバックループにおける制御周期が超高速となり、ECU113の計算負荷が膨大なものとなってしまう。
しかし、フィードバックループの外部での制御周期はフィードバックループにおける制御周期よりも遅いため、本実施例のようにフィードバックの外部で交流信号を重畳することによって、上述した問題は発生せず、FC−VCU103の制御安定性とECU113の計算負荷の抑制を担保しつつ、燃料電池101のインピーダンスを測定することができる。当該測定した燃料電池101のインピーダンスに基づいて、燃料電池101に供給する燃料ガスの加湿量を調整することで、燃料電池101の含水状態を適切な状態に常に保持することができ、燃料電池101の劣化や効率低下を抑制できる。
また、本実施例のECU113におけるフィードバックループは入力電流IFCが帰還しているが、FC−VCU103の出力電圧V2が帰還するフィードバックループであっても良い。
(第10実施例)
FC−VCU103を単相で駆動する場合、FC−VCU103が有する複数のスイッチング素子のうち1つのスイッチング素子のみがオンオフ切換制御される。したがって、スイッチング素子を制御するスイッチング信号に交流成分が重畳されていても、当該交流成分の振幅が適正であれば、相電流におけるゼロクロスは抑制されるため、FC−VCU103の制御安定性は損なわれない。しかし、FC−VCU103を多相で駆動する場合には、複数のスイッチング素子がオンオフ切換制御されるため、各スイッチング信号に重畳された交流成分により、いずれかの相電流のゼロクロスや、スイッチング素子に対し通常のデューティ制御やインターリーブ制御に加えて行われる交流重畳制御に起因して、FC−VCU103の制御安定性が低下する可能性がある。この可能性は、スイッチング素子のオンオフ切換位相をずらすインターリーブ制御を行う場合に高くなる。なお、FC−VCU103へのスイッチング信号に含まれる交流成分は、第9実施例で説明した燃料電池101のインピーダンスの測定のために重畳される。
上記事情を鑑みて、第10実施例のECU113は、FC−VCU103への入力電流IFCに基づいて決定したFC−VCU103の動作相数に対応する区間を設定する。そしてECU113は、各駆動相のスイッチング素子をオンオフ切換制御するための制御信号(以下、単に「制御信号」という。)に、区間毎に適した振幅値の交流信号を重畳する。ECU113は、このようにして交流信号が重畳された制御信号に基づきパルス状のスイッチング信号を生成し、当該スイッチング信号をFC−VCU103に出力する。さらに、FC−VCU103を1相で駆動する場合に対応する区間は2つに分けられ、ECU113は、駆動相の制御信号に、区間毎に適した振幅値の交流信号を重畳して得られたスイッチング信号を出力する。
図37は、FC−VCU103の動作相数に応じた交流信号の基本振幅と当該基本振幅合計値の経時変化を示す第10実施例の図である。また、図38は、FC−VCU103を1相で駆動する際に重畳する交流信号の振幅の大小による入力電流IFCの波形の違いを説明するための、入力電流IFCの値が0(A)近傍の拡大図である。図38の左側には周期が同じで、振幅が異なる2つの交流信号が示してある。図38の左側の上の交流信号の振幅は、図38の左側の下の交流信号の振幅より小さい。また、図38の右側には、図38の左側に示した交流信号に対応する交流成分を含んだ入力電流IFCの波形が示されている。なお、入力電流IFCの直流成分は、制御信号の大きさに基づく。
重畳する交流信号の振幅が小さいと、電流センサ105及び電圧センサ1071の各検出値に十分な交流成分が現れず、正確に燃料電池101のインピーダンスが測定できない。従って、重畳する交流信号の振幅は、燃料電池101の性能に影響を与えたり、燃料電池101やFC−VCU103の制御安定性を損なわない程度に大きいことが好ましい。しかし、FC−VCU103が1相で駆動される際の入力電流IFCは多相で駆動される場合と比較して小さく、このような入力電流IFCのときに駆動相の制御信号に大きな振幅の交流信号を重畳すると、当該交流信号のために現れる入力電流IFCの振幅が大きくなり、図38の右下に示すように、入力電流IFCは値が0となる期間を含む(ゼロクロスする)不連続な波形になる。こういった不連続な波形の入力電流IFCは、燃料電池101の制御を不安定にするため、好ましくない。したがって、本実施例では、図37に示すように、FC−VCU103を1相で駆動する場合には、入力電流IFCの大小によって2つの区間、区間1と区間2に分ける。入力電流IFCが小さな区間1では、ECU113は、1駆動相あたりの交流信号の基本振幅(以下「基本重畳量」という。)を入力電流IFCの増加に伴い、入力電流IFCが不連続な波形にならないように徐々に上げる。そして、当該基本重畳量がしきい値thacに到達する入力電流IFC以上を区間2に設定する。区間2では、当該基本重畳量として好適なしきい値thacを、入力電流IFCを不連続にすることなく重畳できるため、ECU113は、基本重畳量を入力電流IFCの大きさによらずしきい値thacに設定する。
また、FC−VCU103を2相で駆動する場合に対応する区間3では、ECU113は、2つの駆動相の各制御信号に重畳する交流信号の振幅の合計値が上述した当該基本重畳量として好適なしきい値thacに等しくなるよう、基本重畳量を入力電流IFCの大きさによらず「thac/2」に設定する。同様に、FC−VCU103を4相で駆動する場合に対応する区間4では、ECU113は、4つの駆動相の各制御信号に重畳する交流信号の振幅の合計値が当該基本重畳量として好適なしきい値thacに等しくなるよう、基本重畳量を入力電流IFCの大きさによらず「thac/4」に設定する。なお、ECU113は、FC−VCU103を多相(n相)で駆動する場合の区間における基本重畳量を、入力電流IFCの増加に従って「thac/n」から減らした値に設定しても良い。
さらに、ECU113は、FC−VCU103の昇圧率に応じて異なる係数を基本重畳量に乗算する。図39は、FC−VCU103の昇圧率と基本重畳量に乗算する係数との関係を示す図である。図39に示すように、基本重畳量に乗算する係数は、昇圧率が大きいほど小さい。これは、昇圧率が大きいほど入力電流IFCのリプルが大きくなるため、交流重畳が容易になるからである。ECU113は、FC−VCU103の昇圧率に応じた係数を、図37の関係に基づき導出した基本重畳量に乗算した上で、当該算出値が示す振幅値の交流信号を各駆動相の制御信号に重畳して得られたスイッチング信号を出力する。
以上説明したように、第10実施例によれば、スイッチング信号に含まれる交流成分の振幅は区間毎に適した値であるため、当該交流成分によってFC−VCU103の制御安定性が損なわれることなく、燃料電池101のインピーダンスを正確に測定できる。
なお、図37に示した例は、図2及び図6に示す磁気結合型のFC−VCU103の動作相数が1相、2相又は4相である場合を示すが、図7及び図8に示した各相のリアクトルの鉄芯が独立したFC−VCU203を用いる場合には、3相を含む1相〜4相の動作相数が利用される。この場合、FC−VCU103を3相で駆動する場合に対応する区間では、ECU113は、3つの駆動相の各制御信号に重畳する交流信号の振幅の合計値が上述した当該基本重畳量として好適なしきい値thacに等しくなるよう、基本重畳量を入力電流IFCの大きさによらず「thac/3」に設定する。
(第11実施例)
FC−VCU103を単相で駆動する場合、FC−VCU103が有する複数のスイッチング素子のうち1つのスイッチング素子のみがオンオフ切換制御される。したがって、スイッチング素子を制御するスイッチング信号に交流成分が重畳されていても、当該交流成分の振幅が適正であれば、相電流におけるゼロクロスは抑制されるため、FC−VCU103の制御安定性は損なわれない。しかし、FC−VCU103を多相で駆動する場合には、複数のスイッチング素子がオンオフ切換制御されるため、各スイッチング信号に重畳された交流成分により、いずれかの相電流のゼロクロスや、スイッチング素子に対し通常のデューティ制御やインターリーブ制御に加えて行われる交流重畳制御に起因して、FC−VCU103の制御安定性が低下する可能性がある。また、FC−VCU103を多相で駆動する場合の動作相数が多いほど、各スイッチング信号に含まれた交流成分による制御安定性の低下が顕著になる。なお、FC−VCU103へのスイッチング信号に含まれる交流成分は、第9実施例で説明した燃料電池101のインピーダンスの測定のために重畳される。
上記事情を鑑みて、第11実施例のECU113は、FC−VCU103への入力電流IFCに基づいて決定したFC−VCU103の動作相数に対応する区間を設定する。そしてECU113は、各駆動相のスイッチング素子をオンオフ切換制御するための制御信号(以下、単に「制御信号」という。)に、区間毎に適した振幅値の交流信号を重畳する。ECU113は、このようにして交流信号が重畳された制御信号に基づきパルス状のスイッチング信号を生成し、当該スイッチング信号をFC−VCU103に出力する。さらに、FC−VCU103を1相で駆動する場合に対応する区間は2つに分けられ、ECU113は、駆動相の制御信号に、区間毎に適した振幅値の交流信号を重畳して得られたスイッチング信号を出力する。
図40は、FC−VCU103の動作相数に応じた交流信号の基本振幅と当該基本振幅合計値の経時変化を示す第11実施例の図である。また、図41は、FC−VCU103を1相で駆動する際に重畳する交流信号の振幅の大小による入力電流IFCの波形の違いを説明するための、入力電流IFCの値が0(A)近傍の拡大図である。図41の左側には周期が同じで、振幅が異なる2つの交流信号が示してある。図41の左側の上の交流信号の振幅は、図41の左側の下の交流信号の振幅より小さい。また、図41の右側には、図41の左側に示した交流信号に対応する交流成分を含んだ入力電流IFCの波形が示されている。なお、入力電流IFCの直流成分は、制御信号の大きさに基づく。
重畳する交流信号の振幅が小さいと、電流センサ105及び電圧センサ1071の各検出値に十分な交流成分が現れず、正確に燃料電池101のインピーダンスが測定できない。従って、重畳する交流信号の振幅は、燃料電池101の性能に影響を与えたり、燃料電池101やFC−VCU103の制御安定性を損なわない程度に大きいことが好ましい。しかし、FC−VCU103が1相で駆動される際の入力電流IFCは多相で駆動される場合と比較して小さく、このような入力電流IFCのときに駆動相の制御信号に大きな振幅の交流信号を重畳すると、当該交流成分のために現れる入力電流IFCの振幅が大きくなり、図41の右下に示すように、入力電流IFCは値が0となる期間を含む(ゼロクロスする)不連続な波形になる。こういった不連続な波形の入力電流IFCは、燃料電池101の制御を不安定にするため、好ましくない。したがって、本実施例では、図40に示すように、FC−VCU103を1相で駆動する場合には、入力電流IFCの大小によって2つの区間、区間1と区間2に分ける。入力電流IFCが小さな区間1では、ECU113は、1駆動相あたりの交流信号の基本振幅(以下「基本重畳量」という。)を入力電流IFCの増加に伴い、入力電流IFCが不連続な波形にならないように徐々に上げる。そして、当該基本重畳量がしきい値thacに到達する入力電流IFC以上を区間2に設定する。区間2では、当該基本重畳量として好適なしきい値thacを、入力電流IFCを不連続にすることなく重畳できるため、ECU113は、基本重畳量を入力電流IFCの大きさによらずしきい値thacに設定する。
また、FC−VCU103を2相で駆動する場合に対応する区間3では、ECU113は、2つの駆動相の各制御信号に重畳する交流信号の振幅の合計値が上述した当該基本重畳量として好適なしきい値thacに等しくなるよう、基本重畳量を入力電流IFCの大きさによらず「thac/2」に設定する。なお、ECU113は、基本重畳量を、入力電流IFCの増加に従って「thac/2」から減らした値に設定しても良い。これは、入力電流IFCが増大するほど、入力電流IFCのリプルが大きくなるため、交流重畳が容易になるからである。また、FC−VCU103を4相で駆動する場合に対応する区間4では、ECU113は、基本重畳量を入力電流IFCの大きさによらず0に設定する。すなわち、ECU113は、FC−VCU103を4相で駆動する場合における交流信号の重畳を禁止する。なお、本実施例では、第4実施例と同様の理由でFC−VCU103の動作相数として、1相を除く奇数相を禁止する。したがって、FC−VCU103を3相で駆動する場合の交流信号の重畳も行われない。
さらに、ECU113は、FC−VCU103の昇圧率に応じて異なる係数を基本重畳量に乗算する。図42は、FC−VCU103の昇圧率と基本重畳量に乗算する係数との関係を示す図である。図42に示すように、基本重畳量に乗算する係数は、昇圧率が大きいほど小さい。これは前述した通り、昇圧率が大きいほど入力電流IFCのリプルが大きくなるため、交流重畳が容易になるからである。ECU113は、FC−VCU103の昇圧率に応じた係数を、図40の関係に基づき導出した基本重畳量に乗算した上で、当該算出値が示す振幅値の交流信号を各駆動相の制御信号に重畳して得られたスイッチング信号を出力する。
図43は、駆動相の制御信号に交流信号を重畳する際の第11実施例のECU113が行う動作を示すフローチャートである。図43に示すように、ECU113は、FC−VCU103への入力電流IFCに応じた区間の基本重畳量を導出する(ステップS1101)。次に、ECU113は、FC−VCU103の昇圧率に応じた係数を導出する(ステップS1103)。次に、ECU113は、基本重畳量に係数を乗算した振幅値の交流信号を各駆動相の制御信号に重畳して得られたスイッチング信号を出力する(ステップS1105)。次に、ECU113は、第9実施例で説明した交流インピーダンス法により燃料電池101のインピーダンスを測定する(ステップS1107)。次に、ECU113は、燃料電池101のインピーダンスに応じた燃料電池101の含水状態を判別する(ステップS1109)。次に、ECU113は、ステップS1109で判別した含水状態に応じた量の加湿を燃料電池101に対して行う(ステップS1111)。
以上説明したように、第11実施例によれば、スイッチング信号に含まれる交流成分の振幅は区間毎に適した値であるため、当該交流成分によってFC−VCU103の制御安定性が損なわれることなく、燃料電池101のインピーダンスを測定できる。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、上述の第1〜第11実施例はそれぞれ独立に説明したが、2つ以上の実施例を組み合わせた電源装置としても良い。また、上記説明した電動車両は、エネルギー源として燃料電池101及びバッテリ17を備えるが、燃料電池101の代わりに、バッテリ17よりもエネルギー重量密度が高いリチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池を用いても良い。この場合、図44に示すように、FC−VCU103が有する各変換部には、リアクトルに直列接続されたダイオードと並列にスイッチング素子が設けられ、ECU113がハイサイドとローサイドから成る2つのスイッチング素子をオンオフ切換動作することによって、燃料電池101の代わりに設けられた二次電池の電圧を昇圧して出力する。
また、上記説明した電動車両は、1MOT型のEV(Electrical Vehicle)であるが、複数のモータジェネレータを搭載したEVであっても、少なくとも1つのモータジェネレータと共に内燃機関を搭載したHEV(Hybrid Electrical Vehicle)又はPHEV(Plug-in Hybrid Electrical Vehicle)であっても良い。また、本実施形態では、電源装置100が電動車両に搭載されているが、輸送を目的としない電気機器に電源装置100が設けられても良い。電源装置100は大電流が出力可能な電源に対して好適であり、近年大電流化が著しいコンピュータへの適用が特に好ましい。
本実施形態のVCU15は、バッテリ17の電圧を昇圧するが、燃料電池101の電圧がバッテリ17の電圧よりも低い場合、バッテリ17の電圧を降圧するVCUが用いられる。また、双方向に昇降圧が可能なVCUを用いても良い。また、FC−VCU103は、昇圧型に限らず、降圧型又は昇降圧型であっても良い。