JP2017152240A - 負極活物質、それを用いた負極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】レート特性に優れる負極活物質、それを用いた負極及びチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】LiとFeとOから構成される化合物であり、前記化合物におけるLiとFeのモル比Li/Fe=xが0.005≦x≦0.09で表されることを特徴とする負極活物質である。【選択図】図1
Description
本発明は、負極活物質、それを用いた負極及びリチウムイオン二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等と比べ、軽量、高容量であるため、携帯電子機器用電源として広く応用されている。また、ハイブリッド自動車や、電気自動車用に搭載される電源として有力な候補ともなっている。そして、近年の携帯電子機器の小型化、高機能化に伴い、これらの電源となるリチウムイオン二次電池への更なる高容量化が期待されている。
リチウムイオン二次電池の容量は主に電極の活物質に依存する。負極活物質には、一般に黒鉛が利用されている。しかし、黒鉛の理論容量は372mAh/gであり、実用化されている電池では、既に約350mAh/gの容量が利用されている。よって、将来の高機能携帯機器のエネルギー源として十分な容量を有する非水電解質二次電池を得るためには、さらなる高容量化を実現する必要があり、そのためには、黒鉛以上の理論容量を有する負極材料が必要である。
かかる負極活物質の一例として、鉄酸化物(鉄を構成元素として含む酸化物)が挙げられる。これら鉄酸化物は、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵および放出可能であり、黒鉛に比べて非常に大きな容量の充放電が可能である。例えばLiFeO2の放電容量は黒鉛の2倍以上の高容量を示すことが知られている。(特許文献1〜3)
しかし上記の先行技術に開示される組成はレート特性として十分であるとは言えない。
本発明は、このような実情のもとに創案されたものであって、その目的はレート特性に優れる負極活物質、それを用いた負極及びリチウムイオン二次電池を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明に係る負極活物質は、LiとFeとOから構成される化合物であり、前記化合物におけるLiとFeのモル比Li/Fe=xが0.005≦x≦0.09で表されることを特徴とする負極活物質である。
かかる構成によればLiとFeのモル比Li/Fe=xが0.005≦x≦0.09であることによりレート特性が向上する。Li含有量が少ないことにより陽イオン欠陥が多く発生し易くなることでLiイオンの拡散が速くなり、レート特性が向上するものと推測している。
更に本発明にかかる前記化合物は硫黄(以下Sと記載する)を含有しており、S成分の含有量がS換算で0.002質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。これによりレート特性が向上する。
かかる構成によればS成分の含有量がS換算で0.002質量%以上1.0質量%以下の場合、高イオン導電率が維持され、高いレート特性が得られるものと推測している。
本発明によれば、レート特性に優れた負極活物質、それを含む負極及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
(リチウムイオン二次電池)
図1に、本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池100の構成断面図を示す。リチウムイオン二次電池100は、外装体50と外装体の内部に設けられた正極10および負極20と、これらの間に配置されたセパレータ18を介して積層されることで形成される電極体30と電解質を含む非水電解液から構成され、上記セパレータ18は充放電時における正負極間でのリチウムイオンの移動媒体である上記非水電解液を保持する。さらに、負極20に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部が外装体の外部に突出される負極リード62と、正極10に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部が外装体の外部に突出される正極リード60とを備える。
図1に、本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池100の構成断面図を示す。リチウムイオン二次電池100は、外装体50と外装体の内部に設けられた正極10および負極20と、これらの間に配置されたセパレータ18を介して積層されることで形成される電極体30と電解質を含む非水電解液から構成され、上記セパレータ18は充放電時における正負極間でのリチウムイオンの移動媒体である上記非水電解液を保持する。さらに、負極20に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部が外装体の外部に突出される負極リード62と、正極10に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部が外装体の外部に突出される正極リード60とを備える。
リチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限はなく、例えば、円筒型、角型、コイン型、偏平型、ラミネートフィルム型など、いずれであってもよい。本発明では、ラミネートフィルムを外装体50として用い、下記実施例では、アルミラミネートフィルム型電池を作製し評価する。
上記正極10は、リチウムイオンを吸蔵・放出する正極活物質と、導電助剤と、バインダーとを含む正極活物質層14を正極集電体12の少なくとも一方の主面に備えて構成されており、上記負極20は、リチウムイオンを吸蔵・放出する負極活物質と、導電助剤と、バインダーとを含む負極活物質層24を負極集電体22の少なくとも一方の主面に備えて構成されている。
(負極)
本実施形態の負極20に形成される負極活物質層24は、負極活物質、バインダー、導電助剤を含有している。
本実施形態の負極20に形成される負極活物質層24は、負極活物質、バインダー、導電助剤を含有している。
この負極活物質層24は、負極活物質、バインダー、導電助剤及び溶媒を含む塗料を負極集電体22上に塗布し、負極集電体22上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
(負極活物質)
本実施形態にかかる負極活物質はLiとFeとOから構成される化合物であり、前記化合物におけるLiとFeのモル比Li/Fe=xが0.005≦x≦0.09で表されることを特徴とする。
本実施形態にかかる負極活物質はLiとFeとOから構成される化合物であり、前記化合物におけるLiとFeのモル比Li/Fe=xが0.005≦x≦0.09で表されることを特徴とする。
LiとFeのモル比Li/Fe=xが0.005≦x≦0.09であることによりレート特性が向上する。Li含有量が少ないことにより陽イオン欠陥が多く発生し易くなることでLiイオンの拡散が速くなり、レート特性が向上するものと推測している。
(負極活物質の作製方法)
本実施形態にかかる負極活物質はLi源およびFe源を混合して焼成する固相反応法により製造することができる。
本実施形態にかかる負極活物質はLi源およびFe源を混合して焼成する固相反応法により製造することができる。
Li源としては、酸化物、または加熱により酸化物となる化合物を用いることができ、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、蓚酸リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウムなどの粉末が挙げられる。各原料粉末の平均粒径は0.01〜5.0μm程度の範囲で適宜選択すればよい。
Fe源としては、炭酸鉄、水酸化鉄、蓚酸鉄、硝酸鉄、酸化鉄などを用いることができ、中でもFe2O3やFe3O4などに代表される酸化鉄を用いることが好ましい。
本実施形態にかかるFe源として用いる酸化鉄は、水熱合成法で得られたものを用いることが好ましい。水熱合成により得られる酸化鉄は粒径が小さく、これを用いた負極活物質を小粒径とすることができる。
本実施形態にかかる酸化鉄は水熱合成法により製造することができる。水熱合成法では、まず、内部を加熱、加圧する機能を有する反応容器(例えば、オートクレーブ等)内に、鉄源、水、及び中和剤を投入して、これらが分散した混合物を調製する。
鉄源としては、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、クエン酸鉄、リン酸鉄などを用いることができる。これらの水和物であっても良い。さらに、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。
中和剤としては、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、尿素等を用いることができ、反応後の水溶液中での酸の発生を抑制するため鉄源のアニオンに対して大過剰加えることが好ましい。
またこのときアルコールを添加することが望ましい。これにより得られる粒子径のばらつきを小さくすることができ、狙った平均粒子径を得られやすくなる。
アルコールとしてはポリオールが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンからなる群より選ばれることがより好ましい。濃度は0.1〜2Mが好ましい。
水熱合成法では、密閉した反応器内の混合物を加圧しながら加熱することにより、混合物中で水熱反応を進行させる。これにより、酸化鉄の前駆体が水熱合成される。なお、混合物を加圧しながら加熱する時間は、混合物の量に応じて適宜調整すればよい。
このように水熱合成法では、混合物を、加圧下で100℃以上で加熱する。混合物に加える圧力は、1.0〜5.0MPaとすることが好ましい。混合物に加える圧力が低過ぎると、酸化鉄の前駆体を得ることができない。
次に水熱合成法で得られた酸化鉄の前駆体をろ過し、乾燥する。この前駆体を270〜300℃の範囲で焼成する。このようなプロセスにより酸化鉄粒子が得られる。
本実施形態にかかる酸化鉄は他の液相法や固相法などを用いて合成してもよい。
次いで、Li源とFe源を、ボールミルにより例えば水中で撹拌を行う。LiとFeのモル比Li/Fe=xの調整はこのときにLi源と酸化鉄の混合比を変えることにより行う。
Li源とFe源を水中で撹拌することにより作製されたスラリーを乾燥、粉砕の後、300〜900℃の範囲で焼成する。焼成雰囲気は適宜必要な酸素濃度を選択すればよい。このようなプロセスによりLiとFeとOから構成される化合物が得られる。なお、焼成の保持時間は1〜5時間の範囲で適宜選択すればよい。
得られたLiとFeとOから構成される化合物は適宜ボールミルなどを用いて粉砕することで粒径を調整することができる。
粉砕は湿式で行うことが好ましい。なお粉砕時間は1〜24時間の範囲で適宜選択すればよい。
なお本実施形態にかかる負極活物質は、水熱合成などの液相法を用いて合成をしてもよい。
以下に、本実施形態にかかる負極活物質の水熱合成法による製造を説明する。水熱合成法では、まず、内部を加熱、加圧する機能を有する反応容器(例えば、オートクレーブ等)内に、リチウム源、鉄源、水、及び中和剤を投入して、これらが分散した混合物を調製する。
リチウム源としては炭酸リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、蓚酸リチウムなどを用いることができる。
鉄源としては、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、クエン酸鉄、リン酸鉄などを用いることができる。これらの水和物であっても良い。
さらに、リチウム源および鉄源を1種または2種以上を混合して用いることができる。
中和剤としては、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、尿素等を用いることができ、反応後の水溶液中での酸の発生を抑制するためリチウム源および鉄源のアニオンに対して大過剰加えることが好ましい。
水熱合成法では、密閉した反応器内の混合物を加圧しながら加熱することにより、混合物中で水熱反応を進行させる。これにより、本実施形態における負極活物質であるLiとFeとOで構成される化合物の前駆体が水熱合成される。なお、混合物を加圧しながら加熱する時間は、混合物の量に応じて適宜調整すればよい。
このように水熱合成法では、混合物を、加圧下で100℃以上で加熱する。混合物に加える圧力は、1.0〜5.0MPaとすることが好ましい。混合物に加える圧力が低過ぎると、LiとFeとOで構成される化合物の前駆体を得ることが困難となる。
次に水熱合成法で得られたLiとFeとOで構成される化合物の前駆体をろ過し、乾燥する。この前駆体を300〜700℃の範囲で焼成する。このようなプロセスによりLiとFeとOから構成される化合物からなり、LiとFeのモル比Li/Fe=xが0.005≦x≦0.09で表される粒子が得られる。
なお本実施形態にかかる負極活物質は他の液相法を用いて合成してもよい。またLiとOから構成される化合物およびFeとOから構成される化合物、LiとFeとOから構成される化合物を任意の割合で混合してもよい。
本実施形態にかかる負極活物質の平均粒子径は0.01〜2μmであることが好ましい。更に、0.05〜1μmでありことがより好ましい。
本実施形態にかかる負極活物質の平均粒子径は、SEMを用いて測定した。この際、LiとFeとOから構成される化合物の粒子の抽出には、50個の粒子を無作為に抽出し、平均粒子径値として算出した。また、前記化合物粒子の粒度分布の標準偏差は、0.05〜0.5であることが好ましい。
更に実施形態にかかる負極活物質はSを含有しており、S成分の含有量がS換算で0.002質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。これによりレート特性が向上する。S成分の含有量をS換算で0.002質量%以上1.0質量%以下に制御することにより、高イオン導電率が維持され、高いレート特性が得られるものと推測している。
また、本実施形態に係るSの含有量が0.005質量%以上0.8質量%以下であることがより好ましい。
Sは、原料の一部に硫酸塩を用いることや、別途所定量のSを合成の各工程に混合することで含有させることができる。
本実施形態にかかる負極活物質中のS量は焼成時にキャリアガスに空気(Air)を用いて所定の流量で水蒸気を炉内に導入することによっても調整することができる。
(LiとFeのモル比Li/Fe=xおよびS量の分析)
本実施形態にかかる負極活物質のLiおよびFeの含有量はICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析にて調べることができる。またS量は赤外線吸収法炭素・硫黄分析装置にて調べることができる。
本実施形態にかかる負極活物質のLiおよびFeの含有量はICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析にて調べることができる。またS量は赤外線吸収法炭素・硫黄分析装置にて調べることができる。
負極活物質層24中の負極活物質の含有量は、負極活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、50〜95質量%であることが好ましく、75〜93質量%であることがより好ましい。上記の範囲であれば、大きな容量をもつ負極を得られる。
(バインダー)
バインダーは、負極活物質同士を結合すると共に、負極活物質と集電体22とを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであれば特に限定されない。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアルギン酸等を用いることができる。
バインダーは、負極活物質同士を結合すると共に、負極活物質と集電体22とを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであれば特に限定されない。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアルギン酸等を用いることができる。
負極活物質層24中のバインダーの含有量は、負極活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。上記の範囲であれば大きな容量をもつ負極を得られる。
(導電助剤)
導電助剤としては負極活物質層24の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等の炭素繊維、およびグラファイトなどの炭素材料が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
導電助剤としては負極活物質層24の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等の炭素繊維、およびグラファイトなどの炭素材料が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
負極活物質層24中の導電助剤の含有量も特に限定されないが、添加する場合には通常、負極活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜10質量%であることが好ましい。
(溶媒)
溶媒としては、前述の負極活物質、導電助剤、バインダーを塗料化できる物であれば特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
溶媒としては、前述の負極活物質、導電助剤、バインダーを塗料化できる物であれば特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
(負極集電体)
負極集電体22は、導電性の板材で厚みの薄いものであることが好ましく、厚みが8〜30μmの金属箔であることが好ましい。負極集電体22は、リチウムと合金化しない材料から形成されていることが好ましく、特に好ましい材料としては、銅が挙げられる。このような銅箔としては電解銅箔が挙げられる。電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られる銅箔である。
負極集電体22は、導電性の板材で厚みの薄いものであることが好ましく、厚みが8〜30μmの金属箔であることが好ましい。負極集電体22は、リチウムと合金化しない材料から形成されていることが好ましく、特に好ましい材料としては、銅が挙げられる。このような銅箔としては電解銅箔が挙げられる。電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られる銅箔である。
また、鋳造した銅塊を所望の厚さに圧延することによって製造される圧延銅箔であってもよく、圧延銅箔の表面に電解法により銅を析出させ表面を粗面化した銅箔であっても良い。
このように、上述した負極活物質、バインダー、導電助剤及び溶媒を含む塗料を塗布する塗布方法としては、特に制限はなく、通常、電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
負極集電体22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する方法は特に限定されず、塗料が塗布された負極集電体22を、例えば80℃〜150℃で乾燥させればよい。
そして、このようにして負極活物質層24が形成された負極20を、その後、必要に応じて、例えば、ロールプレス装置等によりプレス処理すればよい。ロールプレスの線圧は例えば、100〜5000kgf/cmとすることができる。
(非水電解液)
非水電解液は、非水溶媒に電解質が溶解されており、非水溶媒として環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、を含有してもよい。
非水電解液は、非水溶媒に電解質が溶解されており、非水溶媒として環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、を含有してもよい。
環状カーボネートとしては、電解質を溶媒和することができるものであれば特に限定されず、公知の環状カーボネートを使用できる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートなどを用いることができる。
鎖状カーボネートとしては、環状カーボネートの粘性を低下させることができるものであれば特に限定されず、公知の鎖状カーボネートを使用できる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが挙げられる。その他、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどを混合して使用してもよい。
非水溶媒中の環状カーボネートと鎖状カーボネートの割合は体積にして1:9〜1:1にすることが好ましい。
電解質としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiCF3、CF2SO3、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiN(CF3CF2CO)2、LiBOB等のリチウム塩が使用できる。なお、これらのリチウム塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に、導電性の観点から、LiPF6を含むことが好ましい。
LiPF6を非水溶媒に溶解する際は、非水電解液中の電解質の濃度を、0.5〜2.0mol/Lに調整することが好ましい。電解質の濃度が0.5mol/L以上であると、非水電解液の導電性を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすい。また、電解質の濃度が2.0mol/L以内に抑えることで、非水電解液の粘度上昇を抑え、リチウムイオンの移動度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすくなる。
LiPF6をその他の電解質と混合する場合にも、非水電解液中のリチウムイオン濃度が0.5〜2.0mol/Lに調整することが好ましく、LiPF6からのリチウムイオン濃度がその50mol%以上含まれることがさらに好ましい。
(正極)
本実施形態の正極10は、正極集電体12の片面または両面に、正極活物質を含む正極活物質層14が形成された構造を有している。正極活物質層14は、負極製造方法と同様の工程にて、正極活物質、バインダー、導電助剤及び溶媒を含む塗料を正極集電体12上に塗布し、正極集電体12上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
本実施形態の正極10は、正極集電体12の片面または両面に、正極活物質を含む正極活物質層14が形成された構造を有している。正極活物質層14は、負極製造方法と同様の工程にて、正極活物質、バインダー、導電助剤及び溶媒を含む塗料を正極集電体12上に塗布し、正極集電体12上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、ClO4 −)とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質材料を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、及び、一般式:LiNixCoyMnzO2(x+y+z=1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV2O5)、LiMPO4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、FeまたはVOより選ばれる少なくとも一種、を示す)が挙げられる。
また、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な酸化物、硫化物も正極活物質として使用できる。
更に、正極活物質材料以外の各構成要素(導電助剤、バインダー)は、負極20で使用されるものと同様の物質を使用することができる。
正極集電体12は、リチウムイオン二次電池用の集電体に使用されている各種公知の金属箔を用いることができる。例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金などの金属箔を用いることができ、特にアルミニウム箔が好ましい。
(セパレータ)
セパレータ18は絶縁性の多孔体から形成されていれば、材料、製法等は特に限定されず、リチウムイオン二次電池に用いられている公知のセパレータを使用することができる。例えば、絶縁性の多孔体としては、公知のポリオレフィン樹脂、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどを重合した結晶性の単独重合体または共重合体が挙げられる。これらの単独重合体または共重合体は、1種を単独で使用することができるが、2種以上のものを混合して用いてもよい。また、単層であっても複層であってもよい。
セパレータ18は絶縁性の多孔体から形成されていれば、材料、製法等は特に限定されず、リチウムイオン二次電池に用いられている公知のセパレータを使用することができる。例えば、絶縁性の多孔体としては、公知のポリオレフィン樹脂、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどを重合した結晶性の単独重合体または共重合体が挙げられる。これらの単独重合体または共重合体は、1種を単独で使用することができるが、2種以上のものを混合して用いてもよい。また、単層であっても複層であってもよい。
外装体50は、非水電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されず、金属缶、アルミラミネートフィルムなどが使用できる。アルミラミネートフィルムは、例えば、ポリプロピレン、アルミニウム、ナイロンがこの順に積層されてなる3層構造として構成されている。
負極リード62、正極リード60はアルミニウムやニッケルなどの導電材料から形成されていればよい。
以上、実施の形態により本発明の例を詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態においては、ラミネートフィルム構造を有するリチウムイオン二次電池について説明したが、本発明は、正極および負極を折り畳んだり、あるいは積み重ねた構造を有するリチウムイオン二次電池についても同様に適用することができる。さらにコイン型、角型あるいは扁平型などのリチウムイオン二次電池についても好適に応用することができる。
作製したリチウムイオン二次電池について、以下の方法によって、レート特性を評価した。
(レート特性の測定)
二次電池充放電試験装置を用いて、電圧範囲を4.0Vから1.0Vまでとし、負極活物質重量当たり1C=1200mAh/gとしたときの0.1Cでの電流値で充電、0.1Cでの電流値で放電したときの放電容量に対する0.5Cでの電流値で充電、1Cでの電流値で放電したときの放電容量との比をレート特性とした。レート特性は以下の数式(1)で表される。
このレート特性が高いほど、特性が良好であることを意味する。実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池は、上記の条件によってレート特性を評価した。
二次電池充放電試験装置を用いて、電圧範囲を4.0Vから1.0Vまでとし、負極活物質重量当たり1C=1200mAh/gとしたときの0.1Cでの電流値で充電、0.1Cでの電流値で放電したときの放電容量に対する0.5Cでの電流値で充電、1Cでの電流値で放電したときの放電容量との比をレート特性とした。レート特性は以下の数式(1)で表される。
このレート特性が高いほど、特性が良好であることを意味する。実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池は、上記の条件によってレート特性を評価した。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
[実験例1]
(負極活物質の作製)
LiとFeとOから構成される化合物の作製に用いる酸化鉄は水熱合成法により作製した。その作製手順を詳細に説明する。まず、塩化鉄水和物が0.4M、尿素が1.5M、エチレングリコールが0.5Mとなるように鉄水溶液を調製した。次にこの鉄水溶液を密閉された反応器内で2MPaの圧力を掛けながら100℃で5時間加熱した。
(負極活物質の作製)
LiとFeとOから構成される化合物の作製に用いる酸化鉄は水熱合成法により作製した。その作製手順を詳細に説明する。まず、塩化鉄水和物が0.4M、尿素が1.5M、エチレングリコールが0.5Mとなるように鉄水溶液を調製した。次にこの鉄水溶液を密閉された反応器内で2MPaの圧力を掛けながら100℃で5時間加熱した。
得られた酸化鉄の前駆体をろ過・洗浄した。次にこの前駆体を300℃で3時間焼成し、平均粒子径が0.1μmの酸化鉄を得た。
得られた酸化鉄の生成相をX線回折装置により同定し、α−Fe2O3であることを確認した。
表1の比較例1〜4、実施例1〜7は固相反応法を用いてLiとFeとOから構成される化合物を作製した。
この固相反応法の手順を詳細に説明する。まず、炭酸リチウム及び水熱合成で得られたα−Fe2O3のモル比Li/Fe=xが表1の値になるように秤量し、混合することで混合物を得た。その混合物に水を加え、ボールミルで6時間湿式混合した後、乾燥し水を除去することで乾燥物を得た。
次いで、その乾燥物を大気中、900℃で3時間焼成した。その後6時間粉砕し、目標とするLiとFeとOから構成される化合物を得た。
得られたLiとFeとOから構成される化合物のLiおよびFeの含有量はICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析にて調べた。比較例1〜4、実施例1〜7のLiとFeのモル比Li/Fe=xは表1の通りである。
(負極の作製)
上述の通り作製した負極活物質を85質量部、導電助剤としてケッチェンブラックを5質量部、バインダーとしてポリアミドイミドを10質量部とを混合して負極合剤とした。続いて、負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の負極合剤塗料とした。この塗料を、厚さ10μmの電解銅箔の一面に、負極活物質の塗布量が2.5mg/cm2となるように塗布し、100℃で乾燥することで負極活物質層を形成した。その後、線圧2000kgf/cmでローラープレスにより加圧成形し、真空中、350℃で3時間熱処理し、厚みが70μmの負極を作製した。
上述の通り作製した負極活物質を85質量部、導電助剤としてケッチェンブラックを5質量部、バインダーとしてポリアミドイミドを10質量部とを混合して負極合剤とした。続いて、負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の負極合剤塗料とした。この塗料を、厚さ10μmの電解銅箔の一面に、負極活物質の塗布量が2.5mg/cm2となるように塗布し、100℃で乾燥することで負極活物質層を形成した。その後、線圧2000kgf/cmでローラープレスにより加圧成形し、真空中、350℃で3時間熱処理し、厚みが70μmの負極を作製した。
(正極の作製)
正極活物質としてLiCoO2を90質量部と、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを5質量部とを混合して正極合剤とした。続いて、正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の正極合剤塗料とした。この塗料を、厚さ20μmのアルミニウム箔の一面に、正極活物質の塗布量が18.4mg/cm2となるように塗布し、100℃で乾燥することで正極活物質層を形成した。その後、ロールプレスにより加圧成形し厚みが132μmの正極を作製した。
正極活物質としてLiCoO2を90質量部と、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを5質量部とを混合して正極合剤とした。続いて、正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の正極合剤塗料とした。この塗料を、厚さ20μmのアルミニウム箔の一面に、正極活物質の塗布量が18.4mg/cm2となるように塗布し、100℃で乾燥することで正極活物質層を形成した。その後、ロールプレスにより加圧成形し厚みが132μmの正極を作製した。
(評価用リチウムイオン二次電池の作製)
上記作製した負極と正極とを、厚さ16μmのポリプロピレン製のセパレータを介して積層し、負極3枚と正極2枚とを負極と正極が交互に積層されるようセパレータ4枚を介して積層することで積層体を作製した。さらに、上記積層体の負極において、負極活物質層を設けていない銅箔の突起端部にニッケル製の負極リードを取り付け、一方、積層体の正極においては、正極活物質層を設けていないアルミニウム箔の突起端部にアルミニウム製の正極リードを超音波溶接機によって取り付けた。そしてこの積層体を、アルミラミネートフィルムの外装体内に挿入して周囲の1箇所を除いてヒートシールすることにより閉口部を形成し、上記外装体内にEC/DECが3:7の割合で配合された溶媒中に、リチウム塩として1M(mol/L)のLiPF6が添加された非水電解液を注入した後に、残りの1箇所を真空シール機によって減圧しながらヒートシールで密封し、実験例1〜7及び比較例1〜4に係るリチウムイオン二次電池を作製し、レート特性を評価した。得られた結果を表1に示す。
上記作製した負極と正極とを、厚さ16μmのポリプロピレン製のセパレータを介して積層し、負極3枚と正極2枚とを負極と正極が交互に積層されるようセパレータ4枚を介して積層することで積層体を作製した。さらに、上記積層体の負極において、負極活物質層を設けていない銅箔の突起端部にニッケル製の負極リードを取り付け、一方、積層体の正極においては、正極活物質層を設けていないアルミニウム箔の突起端部にアルミニウム製の正極リードを超音波溶接機によって取り付けた。そしてこの積層体を、アルミラミネートフィルムの外装体内に挿入して周囲の1箇所を除いてヒートシールすることにより閉口部を形成し、上記外装体内にEC/DECが3:7の割合で配合された溶媒中に、リチウム塩として1M(mol/L)のLiPF6が添加された非水電解液を注入した後に、残りの1箇所を真空シール機によって減圧しながらヒートシールで密封し、実験例1〜7及び比較例1〜4に係るリチウムイオン二次電池を作製し、レート特性を評価した。得られた結果を表1に示す。
[実験例2]
(S含有量の異なる負極活物質の作製)
表2のLiとFeとOから構成される化合物を固相反応法を用いて作製した。
(S含有量の異なる負極活物質の作製)
表2のLiとFeとOから構成される化合物を固相反応法を用いて作製した。
この固相反応法の手順を詳細に説明する。まず、炭酸リチウム及び水熱合成で得られたα−Fe2O3のモル比Li/Fe=xが0.05となるよう秤量した。S含有量は硫酸鉄を炭酸リチウムと酸化鉄の合計質量に対して2質量%含有させた。その原料混合物に水を加え、ボールミルで6時間湿式混合した後、乾燥し水を除去した。
次いで、その乾燥物を大気中、900℃で3時間焼成した。その際、キャリアガスに空気(Air)を用いて3L/min.の流量で水蒸気を炉内に導入した。水蒸気の露点を変えることによりS含有量を調整した。実施例8は露点95℃、実施例9は90℃、実施例10は85℃、実施例11は80℃、実施例12は75℃、実施例13は70℃、実施例14は60℃、実施例15は50℃、実施例16は45℃、実施例17は40℃、実施例18は35℃、実施例19は30℃、実施例20は25℃とした。その後、実施例8〜20ともに6時間粉砕し、目標とするLiとFeとOから構成される化合物を得た。
得られたLiとFeとOから構成される化合物のLiおよびFeの含有量はICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析にて調べた。実施例8〜20のLiとFeのモル比は0.05であった。またS量は赤外線吸収法炭素・硫黄分析装置にて調べた。実施例8〜20のS含有量は表2の通りである。
得られたLiとFeとOから構成される化合物を用いたことを除いて、実験例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製し、このリチウムイオン二次電池についてレート特性の評価を行った。各サンプルのレート特性の値を表2中に示す。
表1に示される結果より本発明の効果は明らかである。すなわちLiとFeとOから構成される化合物からなり、前記化合物におけるLiとFeのモル比Li/Fe=xが0.005≦x≦0.09においてレート特性に優れる効果を発現する。
また表2から明らかなようにLiとFeとOから構成される化合物のS成分含有量がS換算で0.002質量%以上1.0質量%以下とすることでより優れたレート特性を得ることができた。
このようにLiとFeとOから構成される化合物からなり、前記化合物におけるLiとFeのモル比Li/Fe=xが0.005≦x≦0.09であることにより優れたレート特性を有することがわかった。
本発明によって優れたレート特性を持つ負極活物質およびリチウムイオン二次電池を提供することができる。
10…正極、12…正極集電体、14…正極活物質層、18…セパレータ、20…負極、22…負極集電体、24…負極活物質層、30…積層体、50…外装体、60…正極リード、62…負極リード、100…リチウムイオン二次電池
Claims (4)
- LiとFeとOから構成される化合物であり、前記化合物におけるLiとFeのモル比Li/Fe=xが0.005≦x≦0.09で表されることを特徴とする負極活物質。
- 前記化合物はSを含有しており、S成分の含有量がS換算で0.002質量%以上1.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
- 請求項1または2のいずれか一項に記載の負極活物質を用いた負極。
- 請求項3に記載の負極と正極と非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池。
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