JP2017152160A - 正極活物質粒子の検査方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】残留溶媒の量との関係で正極活物質粒子を検査する方法
【解決手段】
ここで提案される正極活物質粒子の検査方法は、正極活物質粒子を撮影した画像を得る工程と、画像に基づいて1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βを得る工程とを含む。積α×βと残留溶媒の量とには、相関関係があり、積α×βに基づいて正極活物質粒子を検査するとよい。
【選択図】図7
【解決手段】
ここで提案される正極活物質粒子の検査方法は、正極活物質粒子を撮影した画像を得る工程と、画像に基づいて1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βを得る工程とを含む。積α×βと残留溶媒の量とには、相関関係があり、積α×βに基づいて正極活物質粒子を検査するとよい。
【選択図】図7
Description
本発明は、正極活物質粒子の検査方法に関する。
特開2014−11070号公報に開示された非水電解質二次電池は、集電体に保持された正極活物質層を有している。ここで、正極活物質層は、中空構造の正極活物質粒子を含んでいる。中空構造の正極活物質粒子は、殻部と、殻部の内部に形成された中空部と、殻部を貫通する貫通孔とを有している。かかる中空構造の正極活物質粒子を含む正極活物質層は、例えば、正極活物質粒子と、必要に応じて導電材、結着材等を適当な溶媒に混合してペースト状またはスラリー状の正極合材を調製する。ここで、正極合材の溶媒の好適例としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が例示される。次に、調製された正極合材を正極集電体に塗付し、乾燥により溶媒を揮発させた後、圧縮(プレス)する。このようにして正極活物質層が集電体上に形成された正極が得られる。なお、中空構造の正極活物質粒子および正極活物質層の形成方法については、特許文献1により詳しく開示されている。
ところで、本発明者は、中空構造の正極活物質粒子を含む正極活物質層は、特に、正極活物質粒子の中空部に、正極合材に用いられた溶媒が残留しうるとの問題を見出した。本発明者は、正極活物質粒子の中空部に残留する溶媒が少ない方がよいと考えている。しかし、正極活物質粒子の中空部に残留する溶媒の量を予測する方法は確立されていない。
ここで提案される正極活物質粒子の検査方法において、検査対象となる正極活物質粒子は、1次粒子で構成された殻部と、殻部の内部に形成された中空部と、殻部を貫通した貫通孔とを有しているとよい。また、好ましくは、正極活物質粒子は、平均粒径D50が2.0μm以上10.0μm以下であり、かつ、DBP吸油量が34mL/100g以上43mL/100g以下であるとよい。ここで、提案される検査方法は、正極活物質粒子を撮影した画像を得る工程と、画像に基づいて1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βを得る工程とを含んでいるとよい。かかる検査方法によれば、積α×βは、残留溶媒の量との関係で高い相関関係が認められ、残留溶媒の量を少なくしうるとの観点で、得られた正極活物質粒子の良否を判断できる。
以下、ここで提案される正極活物質粒子の検査方法の一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。本発明は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。
ここで提案される検査方法では、検査対象は、1次粒子で構成された殻部と、殻部の内部に形成された中空部と、殻部を貫通した貫通孔とを有する、いわゆる中空構造の正極活物質粒子である。正極活物質粒子は、例えば、層状のリチウム遷移金属酸化物で構成されている。リチウム遷移金属酸化物の一好適例として、例えば、Ni,CoおよびMnの全てを含むリチウム遷移金属酸化物が挙げられる。なお、かかる中空構造の正極活物質粒子について製造方法も含めて、例えば、特許文献1の段落0023から0080に詳細に開示されている。また、特許文献1には、かかる中空構造の正極活物質粒子を用いた非水電解質二次電池の製造方法についても開示されている。ここでは、かかる中空構造の正極活物質粒子および当該正極活物質粒子を含む正極活物質層を保持した集電体について、適宜に重複する説明を省略する。
ここで、図1は、正極活物質粒子の顕微鏡画像である。正極活物質粒子100は、例えば、図1に示すように、2次粒子であり、外見上の幾何学的形態から判断して、単位粒子(ultimate particle)と考えられる粒子形態を有する1次粒子110の凝集体である。なお、1次粒子110は、さらにリチウム遷移金属酸化物の結晶子の集合物である。
図2は、正極活物質粒子の断面SEM画像である。かかる中空構造の正極活物質粒子は、例えば、図2に示すように、1次粒子で構成された殻部の内部に形成された中空部を有している。1次粒子で構成された殻部には、殻部を貫通した貫通孔が形成されている。かかる貫通孔は、多くの場合、1次粒子間の隙間に形成されている。正極活物質粒子は、好適には、図1および図2に示すように、1次粒子が略球形に凝集した中空構造を有しているとよい。
かかる正極活物質粒子は、例えば、溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(以下、N−メチル−2−ピロリドンは、適宜に「NMP」と称する。)と混錬して正極ペーストが作製される。そして、正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)に塗布し、乾燥させることによって、正極活物質層が得られる。正極活物質層は、その後、圧延プレスにて圧延され、密度が調整される。このように作製される正極活物質層は、正極ペーストを乾燥させる工程において正極ペースト中の溶媒成分が揮発する。しかし、中空構造の正極活物質粒子では、正極活物質粒子の中空部に正極ペーストの溶媒成分が残留しうる。中空構造の正極活物質粒子では、中空部に電解液が入り込み、電解液との接触面積が広く確保され、電池性能が向上する利点がある。本発明者は、電池性能を向上させるために、かかる正極活物質粒子の中空部に残留する溶媒が少ない方がよいと考えている。
ここでは、正極活物質粒子の中空部に残留しうる溶媒の量を少なくするとの観点において、正極活物質粒子の良否を検査する方法を提案する。かかる検査方法は、例えば、リチウムイオン二次電池を製造する際に、用いられる正極活物質粒子のサンプルを検査することによって、正極活物質層(具体的には、正極活物質粒子の中空部)に残留しうる溶媒の量を少なくするとの観点において、正極活物質粒子の適否を判定できる。かかる検査を経た正極活物質粒子を用いて二次電池を製造することによって、正極活物質粒子の中空部に残留しうる溶媒の量が多い正極が作製されるのを減らすことができる。これによって正極の不良品を減らすことができる。さらには二次電池の品質を安定させることができる。
ここで提案される正極活物質粒子の検査方法は、上述した中空構造の正極活物質粒子のうち、平均粒径D50が2.0μm以上10.0μm以下であり、かつ、DBP吸油量が34mL/100g以上43mL/100g以下である正極活物質粒子について、特に、好適に適用されうる。
ここで、正極活物質粒子の平均粒径D50は、当該分野で公知の方法、例えばレーザ回折散乱法に基づく測定による体積基準のメジアン径(D50:50%体積平均粒径)として求められる。また、例えば、電子顕微鏡写真によって少なくとも30個以上(例えば30〜100個)の正極活物質粒子を観察し、画像を2値化処理して粒子を特定し、それぞれ粒径を得る。そして、得られた粒径の算術平均値を採用してもよい。電子顕微鏡には、例えば、走査型または透過型のいずれも使用可能である。好ましくは透過型電子顕微鏡を用いるとよい。
DBP吸収量は、正極活物質粒子と溶媒との親和性を表す量として把握され得る。DBP吸収量の測定方法としては、例えば、JIS K−6217(ゴム用カーボンブラックの基本性能の試験方法)に規定されるA法に準じた方法を利用することができる。
DBP吸収量は、正極活物質粒子と溶媒との親和性を表す量として把握され得る。DBP吸収量の測定方法としては、例えば、JIS K−6217(ゴム用カーボンブラックの基本性能の試験方法)に規定されるA法に準じた方法を利用することができる。
ここで、正極活物質粒子の検査方法は、以下の工程を含んでいる。
正極活物質粒子を撮影した画像を得る工程;
上記工程で得られた画像に基づいて1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βを得る工程;
正極活物質粒子を撮影した画像を得る工程;
上記工程で得られた画像に基づいて1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βを得る工程;
ここで、正極活物質粒子を撮影した画像を得る工程では、例えば、電子顕微鏡が使用可能である。ここでは、試料として得られる複数個の正極活物質粒子について、1次粒子が観察可能な解像度にて画像を得るとよい。例えば、正極活物質粒子の試料をカーボンテープに貼り付け、SEM観察用試料台に貼り付ける。次に、倍率4万倍でSEM観察を行ない、所要の画像を得るとよい。ここでは、1試料当たり正極活物質粒子(2次粒子)を10〜20粒程度撮影し、そこから抽出される約300粒の1次粒子を解析するとよい。
上記工程で得られた画像に基づいて1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βを得る工程では、例えば、上記工程で得られた画像を、画像処理ソフトで処理することによって、1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとが求められる。ここで、面積相当径αとアスペクト比βは、例えば、解析された1次粒子の平均値でそれぞれ評価するとよい。そして、求められた1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとに基づいて、積α×βを得るとよい。
ここで、1次粒子の抽出は、例えば、画像を2値化処理した後、画像の濃淡を基にして、1次粒子に相当する画素領域(又は、1次粒子の輪郭)を抽出する。この際、1次粒子が重なっている場合や、写りが悪く画像から欠けている場合などは、例えば、予めプログラムされた自動処理や、画像を目視により確認することによって修正し、抽出領域から除外するとよい。このような作業によって1次粒子に相当する領域(又は、1次粒子の輪郭)を、一つのサンプルについて相当数(300程度)抽出するとよい。抽出する1次粒子の数が多ければ多いほど、かつ、1次粒子の輪郭を精度良く抽出すればするほど精度の良い検査ができる。そして、得られた1次粒子に相当する領域(又は、1次粒子の輪郭)を抽出し、画像処理ソフトに組み込まれた演算処理によって、当該1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとが算出される。そして、算出された1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとに基づいて、積α×βが得られる。
ここで、画像処理ソフトには、例えば、フェノムワールド製の粒子画像解析ソフト「パーティクルメトリック」が挙げられる。また、これに限らず、2値化や画像の濃淡に基づく抽出、面積相当径αとアスペクト比βとが算出可能なソフトを採用できる。また、複数のソフトを組み合わせてもよい。このような画像処理ソフトは、上記に挙げたソフトに限定されない。
本発明者の知見では、1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βと、実際に正極活物質粒子を用いて作製した電極に残留する溶媒の量とには、高い相関関係がある。このため、正極活物質粒子の当該積α×βに基づいて、当該正極活物質粒子を用いて作製した電極に残留する溶媒の量を高い精度で予測することができる。このため、正極活物質粒子について、当該積α×βに適当な閾値を設定することによって、正極活物質層(具体的には、正極活物質粒子の中空部)に残留しうる溶媒の量を少なくするとの観点において、正極活物質粒子の適否を判定できる。
以下、正極活物質粒子と、正極活物質層に残留しうる溶媒の量との相関関係を説明する。
正極活物質粒子は、製造方法を少し変えると、1次粒子径の大きさや形状(針状、塊状など)が変わりうる。本発明者が鋭意研究したところでは、正極活物質粒子の1次粒子の大きさや形状が異なると、正極活物質層に残留しうる溶媒の量が異なる。例えば、1次粒子の形状が針状に近ければ近いほど、正極活物質粒子の貫通孔が大きくなりやすい傾向がある。反対に、1次粒子の形状が塊状に近ければ近いほど、正極活物質粒子の貫通孔が小さくなりやすい傾向がある。また、1次粒子の粒径が小さければ小さいほど、正極活物質粒子の貫通孔が大きくなりやすい傾向がある。反対に、1次粒子の粒径が大きければ大きいほど、正極活物質粒子の貫通孔が小さくなりやすい傾向がある。そして、正極活物質粒子の貫通孔が大きければ大きいほど、内部の溶媒が揮発しやすい傾向がある。反対に、正極活物質粒子の貫通孔が小さければ小さいほど、正極活物質粒子の内部に溶媒が残留しやすい傾向がある。
ここでは、具体的には、正極ペーストの溶媒が、正極活物質層を作製した後で、正極活物質層に残留する量を評価するとよい。このため、正極活物質粒子を用いて所定の方法で正極シートを作製する。例えば、予め定められた条件で正極ペーストを用意する。そして、用意された正極ペーストを、正極集電箔(ここでは厚さが凡そ15μmの帯状のアルミニウム箔)の表面に、予め定められた条件で塗布、乾燥、プレスすることによって、正極活物質層が形成された正極シートを得る。その後、予め定められた形状に正極シートを切り取る。そして、切り取られた正極シートに残留している溶媒を検出する。ここで、残留溶媒を検出する装置としては、ガスクロマトグラフィ検査器(例えば、株式会社島津製作所製GCMS−QP2010)を用いるとよい。株式会社島津製作所製GCMS−QP2010を用い、残留溶媒(ここでは、NMP)の量を分析する手順および条件の一例を、以下のA.〜D.に説明する。なお、残留溶媒は、NMPに限定されない。また、残留溶媒の検出方法は、ここで例示される方法に限定されない。
A.標準溶液の調整
標準溶液は、以下の手順によって調整される。
(1)所定のNMPにアセトンを希釈してA液を得る。
ここで、NMPとアセトンの量から、NMP濃度(A)が求められる。
(2)A液にアセトンを加えてに希釈して秤量し、基準溶液を得る。
ここで、A液と、加えるアセトンの量、およびA液のNMP濃度(A)を基に、基準溶液のNMP濃度(B)が求められる。
(3)基準溶液を(2)の方法にてさらに希釈して検量線用の標準溶液を調整する。
ここで、標準溶液のNMP濃度(C)=基準溶液g÷[基準溶液g+アセトン量g]×基準溶液のNMP濃度(B)の式によって、標準溶液のNMP濃度(C)が求められる。
検量線用の標準溶液は、例えば、試料のNMP濃度に応じて、NMP濃度が異なるものを複数用意するとよい。また、試料の濃度が予め用意された標準溶液の濃度から外れる場合には、適した標準溶液を追加するとよい。
(4)所定量の標準溶液をGC-MS用スクリューバイアルに注ぐ。
標準溶液は、以下の手順によって調整される。
(1)所定のNMPにアセトンを希釈してA液を得る。
ここで、NMPとアセトンの量から、NMP濃度(A)が求められる。
(2)A液にアセトンを加えてに希釈して秤量し、基準溶液を得る。
ここで、A液と、加えるアセトンの量、およびA液のNMP濃度(A)を基に、基準溶液のNMP濃度(B)が求められる。
(3)基準溶液を(2)の方法にてさらに希釈して検量線用の標準溶液を調整する。
ここで、標準溶液のNMP濃度(C)=基準溶液g÷[基準溶液g+アセトン量g]×基準溶液のNMP濃度(B)の式によって、標準溶液のNMP濃度(C)が求められる。
検量線用の標準溶液は、例えば、試料のNMP濃度に応じて、NMP濃度が異なるものを複数用意するとよい。また、試料の濃度が予め用意された標準溶液の濃度から外れる場合には、適した標準溶液を追加するとよい。
(4)所定量の標準溶液をGC-MS用スクリューバイアルに注ぐ。
B.NMPの抽出
(1)正極シートを、試料打ち抜き機(例えば、株式会社ウイスタ製のトリミングカッター)を用いて所定の形状に切り取る。この場合に切り取られた正極シートの形状を基に、正極の打ち抜き面積(D)が求められる。切り取られた正極シートは、セラミック製のはさみで、所定の大きさに裁断される。打ち抜きおよび裁断時に発生した切り粉は、裁断された正極シートと一緒に試料として扱われる。
(2)(1)で得られた試料をサンプル管に入れ、所定量のアセトンをサンプル管に注入し、秤量する。このとき注入されたアセトンの量を基に、抽出溶媒アセトンの質量(E)が得られる。
(3)サンプル管の蓋口部にシールテープを巻き、超音波抽出機を用いて所定時間抽出する。
(4)抽出溶液をシリンジフィルターで濾過しながらGC−MS用のスクリューバイアルに全量注ぐ。
(1)正極シートを、試料打ち抜き機(例えば、株式会社ウイスタ製のトリミングカッター)を用いて所定の形状に切り取る。この場合に切り取られた正極シートの形状を基に、正極の打ち抜き面積(D)が求められる。切り取られた正極シートは、セラミック製のはさみで、所定の大きさに裁断される。打ち抜きおよび裁断時に発生した切り粉は、裁断された正極シートと一緒に試料として扱われる。
(2)(1)で得られた試料をサンプル管に入れ、所定量のアセトンをサンプル管に注入し、秤量する。このとき注入されたアセトンの量を基に、抽出溶媒アセトンの質量(E)が得られる。
(3)サンプル管の蓋口部にシールテープを巻き、超音波抽出機を用いて所定時間抽出する。
(4)抽出溶液をシリンジフィルターで濾過しながらGC−MS用のスクリューバイアルに全量注ぐ。
C.GC−MS測定
(1)標準溶液と抽出溶液の入ったスクリューバイアルをGC−MSのオートサンプラーにセットし、所定の装置条件にてGS−MS測定を行なう。
(1)標準溶液と抽出溶液の入ったスクリューバイアルをGC−MSのオートサンプラーにセットし、所定の装置条件にてGS−MS測定を行なう。
D.NMP量の定量計算
(1)標準溶液のピーク面積値をx、NMP濃度をyにして検量線(原点を通らない一次近似式)を導く。
(2)一次近似式(x)に試料のピーク面積値をあて、NMP濃度(F)を導く。ここで、NMP濃度(F)は、以下の式によって導かれる。
NMP濃度(F)=a(勾配)×x(試料のピーク面積)+b(切片)
(3)NMP全量(G)を求める。ここで、NMP全量(G)は、以下の式で求められる。
NMP全量(G)=NMP濃度(F)×抽出溶媒アセトンの質量(E)
(4)正極1cm2あたりのNMP量(H)を求める。ここで、正極1cm2あたりのNMP量(H)は、以下の式で求められる。
正極1cm2あたりのNMP量(H)=NMP全量(G)÷正極の打ち抜き面積(D)
(5)合材1mg当たりのNMP量(I)を求める。
合材1mg当たりのNMP量(I)=正極1cm2あたりのNMP量(H)÷目付量
(1)標準溶液のピーク面積値をx、NMP濃度をyにして検量線(原点を通らない一次近似式)を導く。
(2)一次近似式(x)に試料のピーク面積値をあて、NMP濃度(F)を導く。ここで、NMP濃度(F)は、以下の式によって導かれる。
NMP濃度(F)=a(勾配)×x(試料のピーク面積)+b(切片)
(3)NMP全量(G)を求める。ここで、NMP全量(G)は、以下の式で求められる。
NMP全量(G)=NMP濃度(F)×抽出溶媒アセトンの質量(E)
(4)正極1cm2あたりのNMP量(H)を求める。ここで、正極1cm2あたりのNMP量(H)は、以下の式で求められる。
正極1cm2あたりのNMP量(H)=NMP全量(G)÷正極の打ち抜き面積(D)
(5)合材1mg当たりのNMP量(I)を求める。
合材1mg当たりのNMP量(I)=正極1cm2あたりのNMP量(H)÷目付量
図3は、正極活物質粒子の表面細孔径と正極活物質層に残留しうる溶媒の量との関係を示すグラフである。ここでは、正極ペーストの溶媒として、NMPが用いられているので、正極シートに残留するNMPの量が評価されている。正極活物質層に残留しうる溶媒の量は、図3では、「残留NMP」と称している。正極活物質層に残留しうる溶媒の量について、図4〜図7のグラフでも同様である。図3では、表面細孔径が異なる正極活物質粒子を用意して、それぞれ表面細孔径を測定するとともに、残留NMPの量を測定し、表面細孔径と残留NMPの量との関係を調べたものである。残留NMPの量の測定方法は、上述の通りであり、正極活物質粒子を用いて予め定められた条件で正極シートを作製し、当該正極シートを基に、残留NMPの量を測定している。正極活物質粒子の表面細孔径は、例えば、図2に示すように、水銀圧入式細孔分布測定装置(Hgポロシメータ)を用いて測定されうる。ここで、水銀圧入式細孔分布測定装置としては、例えば、株式会社島津製作所製オートポア9520が用いられ得る。図3に示すように、表面細孔径と残留NMPの量との関係に基づいて回帰分析を行なうと、重相関係数Rの2乗である寄与率は、大凡0.886であった。評価の精度は、悪くはない。しかしながら、Hgポロシメータによって表面細孔径する必要がある。水銀使用を少なくしたいとの考えから、Hgポロシメータを使用する評価法は避けたい。また、評価の精度についてもより高くしたい。
図4は、細孔面積相当径と残留NMPの量との関係を示すグラフである。図4は、細孔面積相当径が異なる正極活物質粒子を用意して、それぞれ細孔面積相当径を測定するとともに、残留NMPの量を測定し、細孔面積相当径と残留NMPの量との関係を調べたものである。ここで、残留NMPの量は、図3と同じ方法で測定される。「細孔面積相当径」は、例えば、図2のような断面SEM画像などの画像によって観察可能な細孔120(貫通孔)を解析することによって得られる。図4に示すように、細孔面積相当径と残留NMPの量との関係に基づいて回帰分析を行なうと、重相関係数Rの2乗である寄与率R2は、大凡0.0986であった。細孔径は、約0.1μmと非常に小さく、精度良く観察することは難しい。かかる細孔面積相当径に基づいて残留NMPの量を評価する場合、評価の精度は良くならないと考えられる。
図5は、1次粒子の面積相当径αと残留NMPの量との関係を示すグラフである。図5に示すように、1次粒子の面積相当径αが異なる正極活物質粒子を用意して、それぞれ1次粒子の面積相当径αを測定するとともに、残留NMPの量を測定した。ここで、残留NMPの量は、図3と同じ方法で測定される。「1次粒子の面積相当径α」は、上述のように1次粒子が観察可能な程度の解像度で撮影された正極活物質粒子の画像に基づいて、画像処理ソフトを利用して得られる。ここで、「粒子の面積相当径」は、一般的には、例えば、粒子と同じ面積を持つ円の直径として定義されうる。図5に示すように、1次粒子の面積相当径αと残留NMPの量との関係に基づいて回帰分析を行なうと、重相関係数Rの2乗である寄与率R2は、大凡0.8816であった。
図6は、1次粒子のアスペクト比βと残留NMPの量との関係を示すグラフである。図6は、1次粒子のアスペクト比βが異なる正極活物質粒子を用意して、それぞれ1次粒子のアスペクト比βを測定するとともに、残留NMPの量を測定した。ここで、残留NMPの量は、図3と同じ方法で測定される。「1次粒子のアスペクト比β」は、上述のように1次粒子が観察可能な程度の解像度で撮影された正極活物質粒子の画像に基づいて、画像処理ソフトを利用して得られる。図6に示すように、1次粒子のアスペクト比βと残留NMPの量との関係に基づいて回帰分析を行なうと、重相関係数Rの2乗である寄与率R2は、大凡0.9024であった。ここで、アスペクト比βは、一般的には、例えば、粒子の最も長い辺の長さと最も短い辺の長さの比として規定され、1に近いほど塊状であり、数値が小さいほど針状に近いことが分かる値である。ここでは、画像処理ソフトに予め組み込まれているアスペクト比を算出するためのプログラムによって、粒子の画像から得られる値を採用してよい。
図7は、1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βと、残留NMPの量との関係を示すグラフである。図7では、用意された正極活物質粒子について、それぞれ1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとが測定されるとともに、残留NMPの量が測定された結果が示されている。ここで、残留NMPの量は、図3と同じ方法で測定される。「1次粒子の面積相当径α」および「1次粒子のアスペクト比β」は、上述のように1次粒子が観察可能な程度の解像度で撮影された正極活物質粒子の画像に基づいて、画像処理ソフトを利用して得られる。積α×βは、得られた1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積である。図7に示すように、1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βと、残留NMPの量との関係に基づいて回帰分析を行なうと、重相関係数Rの2乗である寄与率R2は、大凡0.9681であった。このように、1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βと、残留NMPの量との関係は、図3から図6で示されるような他の指標に比べても非常によい相関関係が得られる。
つまり、本発明者の検討によれば、1次粒子の面積相当径αは1次粒子の大きさに相当する評価が得られるものであり、アスペクト比βは、1次粒子の針状(塊状)の度合いに相当する評価が得られるものである。積α×βは、1次粒子の大きさと、針状(塊状)の度合いを重ねて評価でき、残留溶媒の量との相関関係がより高くなるものと考えられる。このため、例えば、1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βに一定の閾値を設定することによって、正極活物質粒子の良否を判定することができる。1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βに対して設定する閾値は、許容しうる残留溶媒の量の程度を考慮して適宜に定めるとよい。
従って、正極活物質粒子を正極の製造に使用する前に、ここで提案される、正極活物質粒子の当該積α×βに基づく検査を行なうことによって、正極活物質粒子の適否を判断できる。そして、本検査によって適合する正極活物質粒子を用いることによって、正極活物質層(具体的には、正極活物質粒子の中空部)に残留しうる溶媒の量を安定して少なくできる。このため、正極活物質層(具体的には、正極活物質粒子の中空部)に残留しうる溶媒の量が多いことに起因する不良を低減させることができる。
また、本発明者の知見では、1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βを用いた検査方法では、上述のように平均粒径D50が2.0μm以上10.0μm以下であり、かつ、DBP吸油量が34mL/100g以上43mL/100g以下であるとよい。つまり、このような正極活物質粒子では、1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βと残留溶媒の量とに、高い相関関係が得られる。
以上、ここで提案される正極活物質粒子の検査方法について、種々説明したが、特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態および実施例は、本発明を限定しない。
例えば、上述した実施例では、正極ペーストの溶媒にNMPが用いられており、残留溶媒として、NMPが挙げられているが、残留溶媒は、正極ペーストの溶媒に応じて適宜に変更され、NMPに限定されない。
100 正極活物質粒子
110 1次粒子
120 細孔(貫通孔)
110 1次粒子
120 細孔(貫通孔)
Claims (1)
- 正極活物質粒子の検査方法であって、
検査対象となる正極活物質粒子は、
1次粒子で構成された殻部と、
前記殻部の内部に形成された中空部と、
前記殻部を貫通した貫通孔と
を有し、
平均粒径D50が2.0μm以上10.0μm以下であり、かつ、
DBP吸油量が34mL/100g以上43mL/100g以下であり、
当該検査方法は、
前記正極活物質粒子を撮影した画像を得る工程と、
前記画像に基づいて前記1次粒子の面積相当径αとアスペクト比βとの積α×βを得る工程と
を含む、正極活物質粒子の検査方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2016032530A JP2017152160A (ja) | 2016-02-23 | 2016-02-23 | 正極活物質粒子の検査方法 |
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- 2016-02-23 JP JP2016032530A patent/JP2017152160A/ja active Pending
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