JP2017152119A - 正極活物質、及びそれを用いた正極ならびにリチウムイオン二次電池 - Google Patents

正極活物質、及びそれを用いた正極ならびにリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】初回充放電効率を向上させると共に、サイクル特性を向上させることが可能な正極活物質、及びそれを用いてなる電極ならびにリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】組成式:LixCoyMzO2(MはNi、Mn、Co、Alから選ばれた少なくとも1種以上の金属元素;0.8<x<1.2;0.01<y<0.99;0.01<z<0.99)で表される層状岩塩型構造の第一活物質材料と、前記第一活物質材料は、一部がスピネル構造を持ち、前記第一の活物質材料の表面にLisVtO4、またはLiuPvO4(2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦v≦1.2)から選ばれる1種以上の化合物を備えている正極活物質。【選択図】図2

Description

本発明は、正極活物質、及びそれを用いた正極ならびにリチウムイオン二次電池に関する。
近年、環境・エネルギー問題の解決へ向けて、種々の電気自動車の普及が期待されている。これら電気自動車の実用化の鍵を握るモータ駆動用電源などの車載電源として、リチウムイオン二次電池の開発が鋭意行われている。しかしながら、車載電源としてリチウムイオン電池を広く普及するためには、電池を高性能にして、より安価にする必要がある。また、電気自動車の一充電走行距離をガソリンエンジン車に近づける必要があり、より高エネルギーの電池が望まれている。
リチウムイオン二次電池の正極活物質として、コバルト酸リチウム等のリチウム含有金属酸化物が使用されている。しかしコバルトは希少な資源であるため生産コストが高くなる。このため、近年では安価な正極活物質としてニッケルとマンガンとを含有するリチウム含有ニッケル−マンガン酸化物を用いることがある。しかし、従来のコバルト酸リチウムと比較して初回の充放電効率が劣る等の問題があった。
この初回充放電効率を改善するために、正極活物質表面をLiVOで覆うことが提案されている(例えば特許文献1参照)。
特開2008−235151号公報
しかしながら、市場の要求はとどまることを知らず、さらなるサイクル特性の向上が求められる。本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、初回充放電効率を向上させると共に、サイクル特性を向上させることが可能な正極活物質、及びそれを用いた正極及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る正極活物質は、一般式:LiCo〔M1はNi、Mn、Co、Alから選ばれた少なくとも1種以上の金属元素;0.8<x<1.2;0.01<y<0.99;0.01<z<0.99〕で表される層状岩塩型構造の第一活物質材料と、前記第一活物質材料は、一部がスピネル構造を持ち、さらに前記第一の活物質材料の表面にLi、またはLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦v≦1.2)から選ばれる1種以上の化合物を備えていることを特徴とする。
本発明に係る正極活物質によれば、高電圧充電でのサイクル特性の劣化を抑えることができる。これは、層状岩塩型構造に比べより安定な結晶構造である上記スピネル構造を持つ化合物が活物質内に点在することで、活物質がリチウムを挿入、放出する際の結晶の安定性が維持され、サイクル特性が改善される。また、Li、またはLiが活物質表面に存在することで、活物質と電解液の反応による劣化を抑制し、よりサイクル特性が改善される。さらに、Li、またはLiの化合物は活物質がLiを挿入脱離する際に補完的な役割を果たすため、Liの挿入脱離が不十分である場合に、その化合物からLiを補完していると考えられる。その結果、初回充放電効率が向上すると推察される。
また、前記スピネル構造は化学式:LiCo3−p(式中0.1≦p≦1.0)で表される化合物であることが望ましい。
このようにスピネル構造を持つ化学式LiCo3−pが存在することでサイクル特性をより向上することができる。
また、前記スピネル構造の割合は前記第一活物質材料全体に対し40wt%以下であることが好ましい。
また、前記第一活物質材料の表面に存在する前記化合物の膜厚は1nmから12nmであることが好ましい。
上述したように、本発明にかかる正極活物質は、従来に比べて、サイクル特性を向上させると共に、初回充放電効率を向上させることが可能な正極活物質と、それを用いてなる電極ならびにリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本実施形態の正極活物質を備えるリチウムイオン二次電池の模式断面図である。 本実施形態の正極の模式断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
(正極活物質)
以下、本発明の一実施形態として正極活物質、電極、リチウムイオン二次電池について説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態の正極活物質は、一般式:LiCo(MはNi、Mn、Co、Alから選ばれた少なくとも1種以上の金属元素;0.8<x<1.2;0.01<y<0.99;0.01<z<0.99)で表される層状岩塩型構造の第一活物質材料と、前記第一活物質材料は、一部がスピネル構造を持ち、さらに前記第一の活物質材料の表面にLi、またはLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦v≦1.2)から選ばれる1種以上の化合物を備えていることを特徴とする。
(第一活物質材料)
本実施形態の第一活物質材料は、一部がスピネル構造を持っているがその主成分となる正極活物質母材は、下記組成式(1)で表される。
LiCo ・・・(1)
〔M1はNi、Mn、Co、Alから選ばれた少なくとも1種以上の金属元素;0.8<x<1.2;0.01<y<0.99;0.01<z<0.99〕、
上記スピネル構造は、化学式:LiCo3−p(式中0.1≦p≦1.0)で表される化合物であるとよりサイクル特性を向上させることができる。
その時のスピネル構造の割合は、第一活物質材料全体に対し40wt%以下であることが好ましい。なお、LiCo3−pの割合は粉末X線回折のデータからリートベルト解析をすることで容易に確認することができる。
(化合物)
上記化合物としては、下記組成式(2)または(3)で表される化合物が挙げられるが、いずれか1種でもかまわない。もちろん両方であってもかまわない。3種類以上であってもかまわない。
Li ・・・(2)
〔2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2〕、
Li ・・・(3)
〔2.5≦u≦3.2、0.8≦v≦1.2〕、
なお、上述した組成式(1)、(2)、(3)はいずれも化学両論組成である必要はなく、例えばX線回折分析により組成式(1)、(2)、(3)と同定される物質は全て含むものとする。したがって、一部に酸素欠損を含んでいてもよいことは言うまでもない。
また、上記化合物は、第一活物質材料の表面に粒子として備えていれば良いが、被膜として形成されていてもよく、組成も組成式(2)、(3)の範囲内であれば均一な組成でなくても良い。なお、その被膜は第1活物質材料を完全に被覆する必要はなく本発明の効果が発生する程度であれば特に限定されない。また、その被膜の膜厚は1nmから12nmであることが好ましい。
なお、被膜の厚みは、例えば、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy, TEM))で観察することにより、容易に確認することができる。
上述した第一活物質材料は、1次粒子であっても2次粒子であってもよく、第一活物質材料の2次粒子に上述した化合物が被覆した構成が好ましい。
(正極活物質の製造方法)
以下では、本発明の実施形態に係る正極活物質の製造方法について説明する。本実施形態に係る正極活物質の製造方法によれば、上述した本実施形態に係る正極活物質を形成することができる。
本発明に係る正極活物質は、組成式(1)で表される第一活物質材料の一部を後述する方法でスピネル構造を形成し、更に後述する方法でLi、またはLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦v≦1.2)から選ばれる1種以上の化合物を備えることでサイクル特性の劣化を抑制できる。ただし、正極活物質を製造方法する方法は後述する方法に限定されるものではない。
第一活物質材料と被覆層を形成する材料となる酸化バナジウム、VOPO、リン酸リチウムから選ばれる1種類以上を混合し第一活物質材料の表面に付着させる。混合の方法として、特に限定はされないが乳鉢を使った混合、ポットミル、メカノフュージョンなどが挙げられる。混合する量によって被膜の厚さ、スピネル量が決まるので、請求項の範囲内に収まるように適宜調整すればよい。その後、前記混合を焼成することで被覆層を形成する材料が第一活物質材料からリチウムを奪い、Li、Li(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦v≦1.2)が形成される。また、この焼成過程において第一活物質材料の一部にスピネル構造が形成される。スピネルの量は第一活物質材料から脱離するリチウム量と焼成温度に関係するので、焼成温度を適宜調整すればよい。
(正極)
上記正極活物質を用いて正極は作製される。図2は、正極10の断面構造を示している。正極10は、板状(膜状)の正極集電体12と、正極集電体12上に形成された正極活物質層14とを有している。
(正極活物質層)
また、正極活物質層14は、正極活物質、導電助剤としての炭素、バインダーから主に構成されるものである。
(導電助剤)
導電助剤としての炭素は、カーボンブラック類、黒鉛類、カーボンナノチューブ(CNT)、気相成長炭素繊維(VGCF)などが挙げられる。カーボンブラック類としてはアセチレンブラック、オイルファーネス、ケッチェンブラック、などがある。またカーボンブラック類および黒鉛類、カーボンナノチューブ(CNT)、気相成長炭素繊維(VGCF)など含む1種類以上の炭素を含むことがより好ましい。
また導電助剤は、レート特性を向上させるという観点から炭素の一次粒子径が10nm〜50nmかつ比表面積が500〜1500m/gのものが、活物質と分散性よく混合できるため好ましい。もちろん上記の数値に特に制限されるわけではない。
(バインダー)
バインダーとしてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、芳香族ポリアミド、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等を用いてもよい。また、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子を用いてもよい。更に、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等を用いてもよい。電極密度を高くするという観点からバインダーとして用いられる高分子の比重は1.2g/cmより大きいことが好ましい。また電極密度を高くし、且つ接着力を高める点から重量平均分子量が70万以上であることが好ましい。
正極活物質層14に含まれるバインダーの含有率は、活物質層の質量を基準として4〜10質量%であることが好ましい。バインダーの含有率が4質量%未満となると、バインダーの量が少なすぎて強固な活物質層を形成できなくなる可能性が大きくなる。また、バインダーの含有率が10質量%を超えると、電気容量に寄与しないバインダーの量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる可能性が大きくなる。また、この場合、特にバインダーの電子伝導性が低いと活物質層の電気抵抗が上昇し、十分な電気容量が得られなくなる可能性が大きくなる。
(正極集電体)
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム、SUS箔の金属薄板を用いることができる。
次に、上述した正極を備えるリチウム二次電池の構成を説明する。
(リチウムイオン二次電池)
本実施形態におけるリチウムイオン二次電池の構成例を図1に示す。リチウムイオン二次電池は、リチウムを吸蔵放出可能な正極、負極およびセパレータより構成される。正極、負極、およびセパレータは容器に封入されており、電解質が含浸された状態で充電および放電がおこなわれる。リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容する容器50、及び積層体30に接続された一対のリード60,62を備えている。
積層体30は、一対の正極10、負極20がセパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、正極集電体12上に正極活物質層14が設けられたものであり、負極20は、負極集電体22上に負極活物質層24が設けられたものである。また、正極活物質層14及び負極活物質層24は、セパレータ18の両側にそれぞれ接触している。さらに正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60,62が接続されており、リード60,62の端部は容器50の外部にまで延びている。
(負極)
負極20は、板状の負極集電体22と、負極集電体22上に形成された負極活物質層24を備える。負極集電体22、バインダー、導電助剤は、それぞれ、正極と同様のものを使用できる。負極活物質層としてLi箔を用いることができる。または、公知の電池用の負極活物質を使用することができる。負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出(インターカレート・デインターカレート、或いはドーピング・脱ドーピング)可能な黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、SiO、SiO、SnO等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、または、酸化ケイ素とケイ素との複合体、チタン酸リチウム(LiTi12)等を含む粒子が挙げられる。中でも不可逆容量などの点から黒鉛を用いることが好ましい。
(電解質)
電解質は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含浸させるものである。電解質としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解液(非水電解液)であることが好ましい。電解液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiCF、CFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFCFCO)、LiBOB等の塩が使用できる。なお、これらの塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、有機溶媒としては、環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合物を用いることができる。環状カーボネートとしてプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、鎖状カーボネートとしてジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等が好ましく挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
なお、本実施形態において、電解質は液状以外にゲル化剤を添加することにより得られるゲル状電解質であってもよい。また、電解液に代えて、固体電解質(固体高分子電解質又はイオン伝導性無機材料からなる電解質)が含有されていてもよい。
(セパレータ)
セパレータ18は、電気絶縁性の多孔体であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いは、セルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
(容器)
容器50は、その内部に積層体30及び電解液を密封するものである。容器50は、電解液の外部への漏出や、外部からの電気化学デバイス100内部への水分等の侵入等を抑止できるものであれば特に限定されない。例えば、容器50として、図1に示すように、金属箔を高分子膜で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。容器50は外装体とも呼ばれる。また、金属ラミネートフィルムを外装体に用いるとレート放電特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。その理由は定かでないが、電極にリチウムイオンが挿入される際に電極は膨張または収縮する。金属ラミネートフィルムは電極の膨張および収縮に追従し、リチウムイオンの移動を阻害しないため、レート放電特性に優れるものと推測される。金属箔としては例えばアルミ箔を、高分子膜としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜の材料としては融点の高い高分子例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜の材料としてはポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましい。
(リード)
リード60,62は、アルミニウム等の導電材料から形成されている。
次に、本実施形態の正極およびリチウムイオン二次電池における製造方法について説明する。
(正極の製造方法)
本実施形態にかかる電極の製造方法は、複合化工程とスラリー作製工程、電極塗布工程、および圧延工程とを備える。
(スラリー作製工程)
次に、正極活物質と導電助剤からなる複合化粒子にバインダー及びそれらの種類に応じた溶媒、例えばPVDFの場合はN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒を混合しスラリーを作製する。
(電極作製工程)
そのスラリーを、ドクターブレード、スロットダイ、ノズル、グラビアロールなどの公知の方法の中から適宜選択し塗布を行う。塗布の量やライン速度の調整により正極担持量を調整することができる。スラリーの塗布の後は、乾燥を行い、溶媒を揮発させる。
(圧延工程)
最後にロールプレスにより圧延を行い正極が完成する。このとき、ロールを加熱しバインダーを柔らかくすることにより、より高い電極密度を得ることができる。ロールの温度は100℃〜200℃の範囲が好ましい。
(負極の製造方法)
負極は、正極と同様にスラリー作製工程、電極塗布工程、および圧延工程により作製することができる。なお各工程は、正極と同様の条件にて作製可能である。また、集電箔にLi箔を圧着したものを負極とすることもできる。
このようにして得られた正極及び負極の間にセパレータを挟んだ状態で、電解液と共に容器50内に挿入し、容器50の入り口をシールすればリチウムイオン二次電池が完成する。
なお、引き出しのための電極として、リード60、62を正極集電体12、負極集電体22にそれぞれ溶接しておくことにより、図1のようなリチウムイオン二次電池が完成する。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3とVOPOを重量比(活物質/VOPO)で80/20の割合で秤量し、乳鉢で30分混合粉砕を行った。この混合物を大気環境の電気炉を使用し400℃で6時間焼成を行った。焼成によりLiCo1/3Mn1/3Ni1/3のLiの一部がVOPOに奪われるとともに、空いたLiサイトにCoが入り、一部がスピネル構造のLiCo3−pになっている正極活物質を合成した。
粉末X線回折測定を行い、VOPOの回折ピークは無くLiVOとLiPOのピークが存在することを確認し、さらに透過電子顕微鏡観察及びSTEM−EDS分析から正極活物質表面にLiVOとLiPOが存在すること、および被覆膜厚を確認した。未反応のVOPOは無く、VOPOはすべて、LiVOとLiPO及びLiとLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)に変化したことを確認した。上記スピネル構造は、リートベルト解析から確認した。
Liサイト(3bサイト)に存在するCo量とLiCo3−pの定量は粉末X線回折測定を行い、リートベルト解析から算出した。このときLiCo3−pについてはCoの8bサイトのCoをLiに0.5置換したモデルLi0.5Co2.5と仮定しリートベルト解析を行った。解析結果からLiCo3−pは第1活物質材料の総量に対し37wt%存在することを確認した。
評価用のセルは以下の通り作製した。焼成によって得られた活物質と導電助剤としてケッチェンブラック、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比で活物質:ケッチェンブラック:PVDF=90:5:5となるように混合した。そして、溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えてスラリーを調製した後、固練りを1時間行った。その後NMPを追加して粘度を5000mPa・sに調整した。ドクターブレード法により集電体であるアルミニウム箔上に塗布し、100℃で10分間乾燥を行った。その後100℃に加熱したロールプレスにより線圧2tcm−1で圧延をおこない、正極を作製した。正極の活物質担持量は12mg/cmとなるように調整した。負極はLi箔をCu集電体に圧着させることで作製した。正極と負極の間にポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを挟んで積層し、積層体(電池素体)を得た。この積層体を、外装体となるアルミラミネートパック(アルミニウム箔の2つの主面にポリプロピレン(PP)とポリエチレンテレフタラート(PET)とをそれぞれ被覆した積層シートの袋体)に入れた。
電解液はエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比3:7で混合し、支持塩としてLiPFを1.5mol/Lになるよう溶解した。積層体を入れたアルミラミネートパックに、上記電解液を注入した後、真空シールし、実施例1の評価用セルを作製した。
(実施例2)
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3とVOPOを重量比(活物質/VOPO)で85/15の割合で秤量し、実施例1と同様の工程で活物質を得た。実施例1と同じ条件で3bサイトのCo量とLiCo3−pの定量を行った。実施例1と同様に未反応のVOPOは無く、VOPOはすべて、LiVOとLiPO及びLiとLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)に変化したことを確認した。この活物質を用いて実施例1と同条件で評価用セルを作製した。
(実施例3)
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3とVOPOを重量比(活物質/VOPO)で90/10の割合で秤量し、実施例1と同様の工程で活物質を得た。実施例1と同じ条件で3bサイトのCo量とLiCo3−pの定量を行った。実施例1と同様に未反応のVOPOは無く、VOPOはすべて、LiVOとLiPO及びLiとLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)に変化したことを確認した。この活物質を用いて実施例1と同条件で評価用セルを作製した。
(実施例4)
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3とVOPOを重量比(活物質/VOPO)で95/5の割合で秤量し、実施例1と同様の工程で活物質を得た。実施例1と同じ条件で3bサイトのCo量とLiCo3−pの定量を行った。実施例1と同様に未反応のVOPOは無く、VOPOはすべて、LiVOとLiPO及びLiとLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)に変化したことを確認した。この活物質を用いて実施例1と同条件で評価用セルを作製した。
(実施例5)
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3とVOPOを重量比(活物質/VOPO)で80:/20の割合で秤量し、450℃で6時間大気環境にて焼成し活物質を得た。実施例1と同じ条件で3bサイトのCo量とLiCo3−pの定量を行った。実施例1と同様に未反応のVOPOは無く、VOPOはすべて、LiVOとLiPO及びLiとLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)に変化したことを確認した。この活物質を用いて実施例1と同条件で評価用セルを作製した。
(実施例6)
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3とVOPOを重量比(活物質/VOPO)で80/20の割合で秤量し、500℃で6時間大気環境にて焼成し活物質を得た。実施例1と同じ条件で3bサイトのCo量とLiCo3−pの定量を行った。実施例1と同様に未反応のVOPOは無く、VOPOはすべて、LiVOとLiPO及びLiとLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)に変化したことを確認した。この活物質を用いて実施例1と同条件で評価用セルを作製した。
(実施例7)
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3とVOPOを重量比(活物質/VOPO)で90/10の割合で秤量し、450℃で6時間大気環境にて焼成し活物質を得た。実施例1と同じ条件で3bサイトのCo量とLiCo3−pの定量を行った。実施例1と同様に未反応のVOPOは無く、VOPOはすべて、LiVOとLiPO及びLiとLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)に変化したことを確認した。この活物質を用いて実施例1と同条件で評価用セルを作製した。
(実施例8)
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3とVOPOを重量比(活物質/VOPO)で90/10の割合で秤量し、500℃で6時間大気環境にて焼成し活物質を得た。実施例1と同じ条件で3bサイトのCo量とLiCo3−pの定量を行った。実施例1と同様に未反応のVOPOは無く、VOPOはすべて、LiVOとLiPO及びLiとLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)に変化したことを確認した。この活物質を用いて実施例1と同条件で評価用セルを作製した。
(比較例1)
VOPOと混合せず、正極としてLiCo1/3Mn1/3Ni1/3のみを用いた以外は、すべて実施例1と同じとした。
(評価方法)
実施例1〜8、比較例1の評価セルを0.1Cレート(25℃で定電流放電を行ったときに10時間で放電終了となる電流値)で4.6Vまで定電流定電圧充電。2.8Vまで定電流放電を1サイクル行い初回充放電効率を求めた。その後、1Cレートで50サイクル行い容量の維持率(50サイクル後維持率)を求めた。実施例1〜8、比較例1の結果を表1に示す。
(表1)
Figure 2017152119
表1において、実施例1〜8においては、比較例1よりも50サイクル後の容量保持率が特に高く、且つ初回充放電効率、レート特性が高い結果を示し、LiCo3−pを持ち、前記第一の活物質材料の表面にLi及びLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)から選ばれる1種以上の化合物を備えた効果がみられた。
(実施例9〜16)
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3をLi(Li0.2Ni0.17Co0.07Mn0.56)Oに変え、活物質とVOPOの割合(活物質/VOPO)、焼成温度は表2に示す通りにし、それ以外は実施例1の条件で作製した。
(比較例2)
比較例2はVOPOと混合と焼成をせず、正極としてLi(Li0.2Ni0.17Co0.07Mn0.56)Oのみを用いた以外は、すべて実施例9と同じ条件で作製した。
上記実施例9〜16、比較例2について上述した実施例1の分析方法及び評価方法と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
(表2)
Figure 2017152119
表2において、実施例9〜16においては、比較例2よりも50サイクル後の容量維持率が高く、且つ初回充放電効率、レート特性が高い結果を示し、LiCo3−pを持ち、前記第一の活物質材料の表面にLi及びLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)から選ばれる1種以上の化合物を備えた効果がみられた。
(実施例17〜24)
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3をLiNi0.8Co0.15Al0.05に変え、活物質とVOPOの割合(活物質/VOPO)、焼成温度は表3に示す通りにし、それ以外は実施例1の条件と同様にして作製した。
(比較例3)
VOPOと混合せず、正極として LiNi0.8Co0.15Al0.05のみを用いた以外は、すべて実施例1と同様にして作製した。
上記実施例17〜24、比較例3について上述した実施例1の分析方法及び評価方法と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
(表3)
Figure 2017152119
表3において、実施例17〜24においては、比較例3よりも50サイクル後の容量維持率が高く、且つ初回充放電効率、レート特性が高い結果を示し、LiCo3−pを持ち、前記第一の活物質材料の表面にLi及びLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)から選ばれる1種以上の化合物を備えた効果がみられる。
(実施例25〜32)
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3をLiCoOに変え、活物質とVOPOの割合(活物質/VOPO)、焼成温度は表4に示す通りにし、それ以外は実施例1の条件と同様にして作製した。
(比較例4)
VOPOと混合せず、正極として LiCoOのみを用いた以外は、すべて実施例1と同様にして作製した。
上記実施例25〜32、比較例4について上述した実施例1の分析方法及び評価方法と同様にして評価した。その結果を表4に示す。
(表4)
Figure 2017152119
表4において、実施例25〜32においては、比較例4よりも50サイクル後の容量維持率が高く、且つ初回充放電効率、レート特性が高い結果を示し、LiCo3−pを持ち、前記第一の活物質材料の表面にLi及びLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦t≦1.2)から選ばれる1種以上の化合物を備えた効果がみられる。
(実施例33〜36)
VOPOを表5に示す通りの比率のVに変えた以外は、実施例1と同じである。
(実施例37〜40)
VOPOを表5に示す通りの比率のVに変えた以外は、実施例9と同じである。
(実施例41〜44)
VOPOを表5に示す通りの比率のVに変えた以外は、実施例17と同じである。
(実施例45〜48)
VOPOを表5に示す通りの比率のVに変えた以外は、実施例25と同じである。
実施例33〜44において電子顕微鏡による被覆膜の分析を行い、実施例1と同様に未反応のVは無く、Vはすべて、LiVO及びLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2)に変化したことを確認した。
上記実施例33〜48についても上述した実施例1の分析方法及び評価方法と同様にして評価した。その結果を表5に示す。
(表5)
Figure 2017152119
表5から混合物をVに変えてもLiCo3−pが生成され初回充放電効率、50サイクル後維持率、レート特性ともに向上しており、LiCo3−pを持ち、前記第一の活物質材料の表面にLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2)から選ばれる1種以上の化合物を備えた効果がみられる。
10・・・正極,20・・・負極、12・・・正極集電体、14・・・正極活物質層、18・・・セパレータ、22・・・負極集電体、24・・・負極活物質層、30・・・積層体、50・・・容器、60,62・・・リード、100・・・リチウムイオン二次電池。

Claims (5)

  1. LiCo(MはNi、Mn、Co、Alから選ばれた少なくとも1種以上の金属元素;0.8<x<1.2;0.01<y<0.99;0.01<z<0.99)で表される層状岩塩型構造の第一活物質材料と、前記第一活物質材料は、一部がスピネル構造を持ち、さらに前記第一の活物質材料の表面にLi、またはLi(式中2.8≦s≦3.2、0.8≦t≦1.2、2.5≦u≦3.2、0.8≦v≦1.2)から選ばれる1種以上の化合物を備えていることを特徴とする正極活物質。
  2. 前記スピネル構造は化学式:LiCo3−p(式中0.1≦p≦1.0)で表される化合物である請求項1の正極活物質。
  3. 前記第一活物質材料の表面に存在する前記化合物の膜厚は1nmから12nmである請求項1または2のうちいずれか1項に記載の正極活物質。
  4. 請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の正極活物質を含有する正極。
  5. 請求項4の正極と、負極活物質を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと非水電解質と、を備えてなるリチウムイオン二次電池。



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WO2013047877A1 (ja) * 2011-09-30 2013-04-04 旭硝子株式会社 リチウムイオン二次電池用正極活物質、およびその製造方法

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