JP2017150869A - 成分濃度測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置の大型化を抑制してより容易に測定が実施できるようにする。【解決手段】各々異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ101−1,101−2,101−3,101−4,・・・,101−nと、これらレーザを駆動するレーザ駆動部102と、レーザ駆動部102から出力された駆動信号を切り替えていずれかのレーザに出力する信号切り替え部121とを備える。【選択図】 図1
Description
本発明は、血液中に存在するグルコース,アルブミンなどの成分濃度を光音響法により測定する成分濃度測定装置に関する。
糖尿病患者には、インスリンの投与が必須となる。このインスリンの投与量は、糖尿病患者における血液中グルコース濃度により決定される。このため、インスリンの投与においては、糖尿病患者の指や腕から採取した血液を分析している。しかしながら、血液の採取においては、注射針などを刺すことになり患者への負担が大きいという問題がある。また、糖尿病予防の観点より、食事や運動の前後などで大きく変化する血液中のグルコース濃度を、高い頻度または連続的に、かつ正確に測定して監視することが重要となる。
この測定の方法として、光音響法がある。光音響法による測定によれば、連続的な血液中のグルコース濃度の監視が可能となる。また、光音響法の測定は、糖尿病患者にとって無痛であり、血液サンプルを必要とせず、糖尿病患者に不快感を与えることがない。また、光音響法の測定では、他の光学的な測定方法に比較し、散乱メディアによる効率の悪化がなく、光学と音響学の結合により高感度の特性を得ることができる。
光音響法には、パルス(pulse)法と連続波(continuous-wave、以下CWとする)法の2つの方式がある。これらの光音響法では、音響波の振幅が成分濃度と比例することを利用して、成分濃度を定量している。しかしながら、まず、パルス法には、高感度を得るために高い光パワーを使わなければいけないという欠点がある。これに対し、CW法は、高い光パワーを必要としないが、反射表面のところの特性が変わると信号強度も変わる、すなわち再現性がないという欠点があった。しかし、高い光パワーは人体にとって安全性の面で問題になる可能性があるので、CW法を採用することが好ましい(特許文献1参照、特許文献2参照、特許文献3参照)。
ところで、CW法により血液中のグルコース濃度を測定する技術として、発明者らにより、周波数シフト(frequency shift、以下FSとする)法、および光パワーバランスシフト(Optical power balance shift、以下OPBSとする)法の2つが開発され、さらに、いくつかの光波長を用いてOPBS法による測定を行い、FS法に組み合わせる方法を提案している。
まず、FS法について説明する。血液中のグルコースなどの特定成分の濃度変化に応じ、CW法の測定により得られる測定信号の位相情報は、濃度変化に応じて周波数軸に沿ってシフトする。時間の経過と共に血液中のグルコース濃度が減少した場合には、位相情報は低周波側へとシフトし、グルコース濃度が増加した場合には、位相情報は高周波側へとシフトする。この、位相情報は周波数シフトだけを受ける。FS法では、上述した位相情報に基づいて測定信号の周波数の変化量を求め、この周波数の変化量から血液中の特定成分の濃度の正確な測定を行う(特許文献4参照)。
また、OPBS法では、光波長が異なり位相差がπの2つの光ビームのパワーを増減させながら、光音響信号の振幅が極小な箇所の位相の変曲点を探し、この結果から血液中に溶解している分子濃度を求める。2つの光ビームのうち一方の光ビームのパワーを変えながら、光音響信号強度が最低となる光パワーを探すことで、光パワーの変化量より血液中のグルコース濃度などの成分濃度を正確に測定する(特許文献5参照)。
この方法では、図7に示す成分濃度測定装置が用いられている。この成分濃度測定装置は、まず、レーザ光を放射するレーザ(レーザダイオード)701−1と、レーザ光を放射する第2の光照射手段となるレーザ701−2と、レーザ701−1,701−2を駆動するレーザ駆動部702と、レーザ701−1,701−2から放射されたレーザ光を導く光ファイバ703−1,703−2と、レーザ701−1,701−2から放射されたレーザ光を合波する光カプラ704と、光カプラ704によって合波されたレーザ光を導く光ファイバ705とを備える。
また、被測定物713を収容するケースである光音響セル706と、レーザ光を透過させるガラス製の光学窓707と、光音響効果によって被測定物713から発生する光音響信号を検出し、音圧に比例した電気信号に変換する光音響信号検出手段となる音響センサ708と、音響センサ708から出力された電気信号を増幅する増幅器709と、参照信号を発生する関数発生器7010と、増幅器709の出力信号と関数発生器710から出力された参照信号とを入力として、増幅器709の出力信号から所望の周波数の測定信号を検出するロックインアンプ7011と、関数発生器710およびロックインアンプ7011を制御すると共に、ロックインアンプ7011が検出した測定信号を処理して血液グルコース濃度を導出するコンピュータからなる情報処理装置712とを備える。
ここで、このような光を用いた測定では、光源の出力が安定していることが重要となる。このためには、光源から出射する一部の光(数%から数十%)の強度を、フォトダイオードなどで測定し、測定される光強度の変動をフィードバックすることで、光源の出力を安定させ、測定精度を維持することが重要となる(特許文献1参照、特許文献2参照、特許文献3参照)。
ところで、上述したFS法は高感度であるが、まず、周波数シフトのレスポンスは波長や音響モードにかかわらず一定となっている。このため、温度やアルブミン濃度などの他成分の全てのパラメータが、測定の間は一定レベルが維持されていないと、FS法では、正しいグルコース濃度を測定することができない。しかしながら、上述した他成分のパラメータは、連続したグルコース濃度測定においては短時間の間に変化する。また、FS法は、グルコース選択性が低い。このように、FS法では、温度やアルブミンなどのグルコース以外の成分の状態が変化する環境では、グルコース濃度を正確に測定できないという問題がある。
これに対し、発明者らは、FS法に、混合している他成分に特異な応答が得られるOPBS法を組み合わせることを検討した。ただし、光吸収測定を基にしたOPBS法の応答は、使用される2つの光ビームの光波長に依存する。このため、発明者らは、鋭意検討の結果、いくつかの光波長を用いてOPBS法による測定を行い、FS法に組み合わせる方法を提案した(特許文献6参照)。
この組み合わせの測定方法では、例えば、目的とするグルコース濃度を知るために、温度およびアルブミンなど他の成分濃度の影響を除去し、グルコースに対する応答のみを効率良く測定するために、測定に用いる複数の波長の組み合わせが重要となる。
ここで、シミュレーション結果では、選択的かつ高精度に測定可能な選択する2つの光ビーム信号の波長の組み合わせは、例えば、光波長が1382nmから1878nmの500nm範囲に7組存在する。この中から2つの光ビーム信号を選択して測定するために、上述したような7組の波長を得るためには、2つの波長可変光源を用いることが考えられる。しかしながら、波長可変光源は高価でかつ数十nmと波長範囲が狭く、さらに出力パワーが小さいという欠点がある。
これに対し、必要とする波長毎にレーザダイオードを用いることが考えられる。単一波長のレーザダイオードは、波長可変光源に比較して出力パワーが大きく、また、より広い範囲で波長を選択することが可能となる。
しかしながら、必要とする波長数に合わせて複数のレーザダイオードを備える構成では、例えば、レーザダイオード毎に駆動部を用意するために装置が大型化してしまうという問題があった。また、波長を変更するたびに配線を繋ぎ変える必要があるため、測定時間が長くなるという問題があった。測定時間の増大は、測定環境の変化を招き、測定結果がばらついて精度が低下することに繋がる。このように、従来では、装置が大型化して測定が容易に実施できないという問題があった。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、装置の大型化を抑制してより容易に測定が実施できるようにすることを目的とする。
本発明に係る成分濃度測定装置は、第1の波長における水の吸収係数をα1、第2の波長における水の吸収係数をα2、第1の波長における対象物質の吸収係数をαs1、第2の波長における対象物質の吸収係数をαs2とし、対象物質の濃度変化係数Qsとし、Qs=[{Min(α1,α2)}/{Max(α1,α2)}]×(δαs2/α2−δαs1/α1)の式により、第1の波長および第2の波長を各々変化させて求めることで得られる第1の波長および第2の波長の各々の変化に対する濃度変化係数Qsの変化の中で、対象物質の各成分について各成分自身の依存性がゼロであり、かつ2波長の水の吸収係数αの比率係数β=α1/α2が1になる第1の波長および第2の波長からなる少なくともM個(Mは2以上の整数)の組の光を選択する波長選択ステップと、(M−1)個の成分の濃度Ca,Cb,Cc,・・・と温度TとからなるM個の未知パラメータを有する被測定物に対して、選択されたいずれかの組のいずれかの波長の1つの光を照射して周波数シフト(FS)法により測定結果を得る第1の測定ステップと、選択されたM個の組の各々の波長の2つの光を照射して光パワーバランスシフト(OPBS)法により測定結果を得る第2の測定ステップと、第1の測定ステップの測定結果と第2の測定ステップの測定結果とから被測定物中の測定対象の成分の濃度を決定する濃度導出ステップとを備え、濃度導出ステップは、第1の測定ステップの測定結果をFS(λ1)、第2の測定ステップの測定結果をOPBS(λ1,λ2),OPBS(λ1,λ3),OPBS(λ1,λ4),・・・,OPBS(λn−1,λn)としたとき(λ1,λ2,λ3,λ4,・・・,λn−1,λnは、選択されたM個の組の各々の光の波長)、第1の測定ステップの測定結果を表現する式FS(λ1)=KaCa+KbCb+KcCc+・・・+KtTと、第2の測定ステップの測定結果を表現する式OPBS(λ1,λ2)=Qaλ1,λ2Ca+Qbλ1,λ2Cb+Qcλ1,λ2Cc+・・・+Qtλ1,λ2T、OPBS(λ1,λ3)=Qaλ1,λ3Ca+Qbλ1,λ3Cb+Qcλ1,λ3Cc+・・・+Qtλ1,λ3T、OPBS(λ1,λ4)=Qaλ1,λ4Ca+Qbλ1,λ4Cb+Qcλ1,λ4Cc+・・・+Qtλ1,λ4T・・・OPBS(λn−1,λn)=Qaλn-1,λnCa+Qbλn-1,λnCb+Qcλn-1,λnCc+・・・+Qtλn-1,λnTとからなる連立方程式(Ka,Kb,Kc,・・・,Kt,Qaλi,λj,Qbλi,λj,Qcλi,λj,・・・,Qtλi,λj(i,j=1〜nで、i≠j)は所定の係数)を解くことにより、被測定物中の成分の濃度Ca,Cb,Cc,・・・を決定する成分濃度測定方法を実施するための成分濃度測定装置であり、各々異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザと、レーザを駆動するレーザ駆動部と、レーザ駆動部から出力された駆動信号を切り替えていずれかのレーザに出力する信号切り替え手段と、レーザから放射されたレーザ光を導く光ファイバと、レーザから放射されたレーザ光を合波する光カプラと、光カプラによって合波されたレーザ光を導く中継光ファイバと、被測定物を収容する光音響セルと、中継光ファイバより出射したレーザ光を光音響セル内に導入するための光学窓と、光音響セルに収容された被測定物から光音響効果によって発生する光音響信号を検出して音圧に比例した電気信号に変換する光音響信号検出手段と、光音響信号検出手段から出力された電気信号を増幅する増幅器と、参照信号を発生する関数発生器と、増幅器の出力信号と関数発生器から出力された参照信号とを入力として、増幅器の出力信号から所望の周波数の測定信号を検出するロックインアンプと、ロックインアンプが検出した測定信号を処理して成分濃度測定方法により被測定物中の測定対象の成分の濃度を決定する情報処理部とを備える。
上記成分濃度測定装置において、成分濃度測定方法の第1の測定ステップは、被測定物に対して光を照射する第1の光照射ステップと、第1の光照射ステップによって被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第1の光音響信号検出ステップと、第1の光音響信号検出ステップで得られた電気信号のうち振幅が最大となる基準周波数の信号を測定信号として、この測定信号の位相を測定する第1の位相測定ステップと、任意の時間経過後に被測定物に対して光を照射する第2の光照射ステップと、第2の光照射ステップによって被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第2の光音響信号検出ステップと、第2の光音響信号検出ステップで得られた電気信号のうち基準周波数の信号を測定信号として、測定信号の位相を測定する第2の位相測定ステップと、第2の位相測定ステップで測定する位相が第1の位相測定ステップで測定した位相と等しくなる測定信号の周波数を探索する周波数探索ステップと、周波数探索ステップで探索した周波数と基準周波数との変化量を、第1の測定ステップの測定結果として求める周波数変化導出ステップとを含む。
上記成分濃度測定装置において、成分濃度測定方法の第2の測定ステップは、被測定物に対して強度変調光を照射する第3の光照射ステップと、この第3の光照射ステップによって被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第3の光音響信号検出ステップと、この第3の光音響信号検出ステップで得られた電気信号の振幅が最大となる変調周波数を第1の周波数として測定する第1の周波数測定ステップと、振幅が最大のときの電気信号の位相を参照位相として測定する第3の位相測定ステップと、互いに異なる波長の2波の光を第1の周波数でかつ異なる位相の信号によりそれぞれ強度変調して被測定物に照射し、2つの強度変調光のうち少なくとも一方の強度変調光の光パワーを漸次変化させる第4の光照射ステップと、この第4の光照射ステップによって被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第4の光音響信号検出ステップと、この第4の光音響信号検出ステップで得られた電気信号の位相が0となる第1の変曲点を探索する第4の位相測定ステップと、第1の変曲点における2つの強度変調光の光パワーの差を測定する第1の光パワー測定ステップと、任意の時間経過後に被測定物に対して強度変調光を照射する第5の光照射ステップと、この第5の光照射ステップによって被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第5の光音響信号検出ステップと、この第5の光音響信号検出ステップで得られた電気信号の位相が参照位相となる変調周波数を第2の周波数として探索する第2の周波数測定ステップと、互いに異なる波長の2波の光を第2の周波数でかつ異なる位相の信号によりそれぞれ強度変調して被測定物に照射し、2つの強度変調光のうち少なくとも一方の強度変調光の光パワーを漸次変化させる第6の光照射ステップと、この第6の光照射ステップによって被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第6の光音響信号検出ステップと、この第6の光音響信号検出ステップで得られた電気信号の位相が0となる第2の変曲点を探索する第5の位相測定ステップと、第2の変曲点における2つの強度変調光の光パワーの差を測定する第2の光パワー測定ステップと、この第2の光パワー測定ステップで測定した光パワーの差と第1の光パワー測定ステップで測定した光パワーの差との変化量を、第2の測定ステップの測定結果として求める光パワー変化導出ステップとを含み、選択された組毎に、第3の光照射ステップと第3の光音響信号検出ステップと第1の周波数測定ステップと第3の位相測定ステップと第4の光照射ステップと第4の光音響信号検出ステップと第4の位相測定ステップと第1の光パワー測定ステップと第5の光照射ステップと第5の光音響信号検出ステップと第2の周波数測定ステップと第6の光照射ステップと第6の光音響信号検出ステップと第5の位相測定ステップと第2の光パワー測定ステップと光パワー変化導出ステップとを実施し、2つの光照射手段の組み合わせ毎に第2の測定ステップの測定結果を得る。
上記成分濃度測定装置において、複数のレーザより放射された一部のレーザ光を分岐して導く分岐光ファイバと、分岐光ファイバより出射したレーザ光を光電変換する光電変換手段と、光電変換手段の出力信号と関数発生器から出力された参照信号とを入力として、光電変換手段の出力信号から所望の周波数のフィードバック信号を検出するフィードバック用ロックインアンプと、フィードバック用ロックインアンプが検出したフィードバック信号を処理して複数のレーザの出力を補償する補償手段とを備える。
以上説明したことにより、本発明によれば、装置の大型化を抑制してより容易に測定が実施できるという優れた効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における成分濃度測定装置の構成を示す構成図である。この成分濃度測定装置は、まず、各々異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ101−1,101−2,101−3,101−4,・・・,101−nと、これらレーザを駆動するレーザ駆動部102と、レーザ駆動部102から出力された駆動信号を切り替えていずれかのレーザに出力する信号切り替え部121とを備える。信号切り替え部121は、たとえは、GPIB(General Purpose Interface Bus)コントローラ付き入力ポートと出力ポートのBNCスイッチである。
はじめに、本発明の実施の形態1について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における成分濃度測定装置の構成を示す構成図である。この成分濃度測定装置は、まず、各々異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ101−1,101−2,101−3,101−4,・・・,101−nと、これらレーザを駆動するレーザ駆動部102と、レーザ駆動部102から出力された駆動信号を切り替えていずれかのレーザに出力する信号切り替え部121とを備える。信号切り替え部121は、たとえは、GPIB(General Purpose Interface Bus)コントローラ付き入力ポートと出力ポートのBNCスイッチである。
また、レーザ101−1,101−2,101−3,101−4,・・・,101−nから放射されたレーザ光を導く光ファイバ103−1,103−2,103−3,103−4,・・・、103−nと、レーザ101−1,101−2,101−3,101−4,・・・、101−nから放射されたレーザ光を合波する光カプラ104と、光カプラ104によって合波されたレーザ光を導く中継光ファイバ105とを備える。各レーザは、例えば、分布帰還型(Distributed Feedback;DFB)のレーザダイオードである。また、光カプラ104は、例えば、特定波長を反射し残りを透過するダイクロイックミラーなどから構成されている。
また、被測定物113を収容する光音響セル106と、中継光ファイバ105より出射したレーザ光を光音響セル106内に導入するための光学窓107と、光音響セル106に収容された被測定物113から光音響効果によって発生する光音響信号を検出して音圧に比例した電気信号に変換する音響センサ(光音響信号検出手段)108とを備える。光音響セル106,光学窓107,音響センサ108により測定部が構成される。
また、この成分濃度測定装置は、音響センサ108から出力された電気信号を増幅する増幅器109と、参照信号を発生する関数発生器110と、増幅器109の出力信号と関数発生器110から出力された参照信号とを入力として、増幅器109の出力信号から所望の周波数の測定信号を検出するロックインアンプ111と、ロックインアンプ111が検出した測定信号を処理して成分濃度測定方法により被測定物113中の測定対象の成分の濃度を決定する情報処理装置112とを備える。
ここで、この成分濃度測定装置は、以下に示す成分濃度測定方法を実施するための装置である。
上記成分濃度測定方法は、第1の波長における水の吸収係数をα1、第2の波長における水の吸収係数をα2、第1の波長における対象物質の吸収係数をαs1、第2の波長における対象物質の吸収係数をαs2とし、対象物質の濃度変化係数Qsとし、Qs=[{Min(α1,α2)}/{Max(α1,α2)}]×(δαs2/α2−δαs1/α1)の式により、第1の波長および第2の波長を各々変化させて求めることで得られる第1の波長および第2の波長の各々の変化に対する濃度変化係数Qsの変化の中で、対象物質の各成分について各成分自身の依存性がゼロであり、かつ2波長の水の吸収係数αの比率係数β=α1/α2が1になる第1の波長および第2の波長からなる少なくともM個(Mは2以上の整数)の組の光を選択する波長選択ステップと、(M−1)個の成分の濃度Ca,Cb,Cc,・・・と温度TとからなるM個の未知パラメータを有する被測定物に対して、選択されたいずれかの組のいずれかの波長の1つの光を照射して周波数シフト(FS)法により測定結果を得る第1の測定ステップと、選択されたM個の組の各々の波長の2つの光を照射して光パワーバランスシフト(OPBS)法により測定結果を得る第2の測定ステップと、第1の測定ステップの測定結果と第2の測定ステップの測定結果とから被測定物中の測定対象の成分の濃度を決定する濃度導出ステップとを備える。
濃度導出ステップは、第1の測定ステップの測定結果をFS(λ1)、第2の測定ステップの測定結果をOPBS(λ1,λ2),OPBS(λ1,λ3),OPBS(λ1,λ4),・・・,OPBS(λn−1,λn)としたとき(λ1,λ2,λ3,λ4,・・・,λn−1,λnは、選択されたM個の組の各々の光の波長)、第1の測定ステップの測定結果を表現する式「FS(λ1)=KaCa+KbCb+KcCc+・・・+KtT」と、第2の測定ステップの測定結果を表現する式「OPBS(λ1,λ2)=Qaλ1,λ2Ca+Qbλ1,λ2Cb+Qcλ1,λ2Cc+・・・+Qtλ1,λ2T」、「OPBS(λ1,λ3)=Qaλ1,λ3Ca+Qbλ1,λ3Cb+Qcλ1,λ3Cc+・・・+Qtλ1,λ3T」、「OPBS(λ1,λ4)=Qaλ1,λ4Ca+Qbλ1,λ4Cb+Qcλ1,λ4Cc+・・・+Qtλ1,λ4T、・・・OPBS(λn−1,λn)=Qaλn-1,λnCa+Qbλn-1,λnCb+Qcλn-1,λnCc+・・・+Qtλn-1,λnT」とからなる連立方程式(Ka,Kb,Kc,・・・,Kt,Qaλi,λj,Qbλi,λj,Qcλi,λj,・・・,Qtλi,λj(i,j=1〜nで、i≠j)は所定の係数)を解くことにより、被測定物中の成分の濃度Ca,Cb,Cc,・・・を決定する。
上述した方法の各ステップにおける処理は、情報処理装置112で行う。情報処理装置112は、図2に示すように、関数発生器制御部201、振幅測定部202、位相測定部203と、位相オフセット調整部204、情報記録部205、周波数シフト校正部206、周波数変化率導出部207、周波数測定部208、光パワー制御部209、光パワー測定部210、光パワー変化量導出部211と、濃度導出部212と、記憶部213とを有する。
関数発生器制御部201は、関数発生器110を制御する関数発生器制御部201は、周波数探索手段を構成している。振幅測定部202は、測定信号の振幅を測定する。位相測定部203は、測定信号の位相を測定する。位相オフセット調整部204は、位相のオフセットを調整する。情報記録部205は、測定信号の振幅と位相と周波数の情報または測定信号の周波数と位相の情報を記録する。周波数シフト校正部206は、測定信号の周波数シフトを校正する。
周波数変化率導出部207は、測定信号の周波数の変化率を導出する。周波数測定部208は、測定信号の周波数を測定する。光パワー制御部209は、光パワーを制御する。光パワー測定部210は、2つの強度変調光の光パワーの差を測定する。光パワー変化量導出部211は、光パワーの変化量を導出する。濃度導出部212は、FS法による測定結果とOPBS法による測定結果とから測定対象の成分濃度を決定する。記憶部213は、各情報を記憶する。
以下、成分濃度測定装置の動作について説明する。成分濃度測定装置は、最初にFS法による測定を行い、続いてOPBS法による測定を行い、FS法による測定結果とOPBS法による測定結果とから測定対象の成分濃度を決定する。FS法では1波長で測定を行うので、レーザを1個だけ用いる。ここでは、レーザ101−1を用いるものとする。
被測定物113は、光音響セル106内に導入される。レーザ駆動部102から供給された駆動信号が、信号切り替え部121により選択されたレーザ101−1に供給されると、レーザ101−1はレーザ光を放射する。従来のCW法と同様に、レーザ101−1から放射されるレーザ光は連続波である。このレーザ光は、光ファイバ103−1によって導かれ光カプラ104を通過し、さらに光ファイバ105によって導かれ、光学窓107を通って光音響セル106内の被測定物113に照射される(ステップS101)。
音響センサ108は、被測定物113から発生する光音響信号を検出し、増幅器109は、音響センサ108から出力された電気信号を増幅する。ロックインアンプ111は、増幅器109の出力に含まれる信号のうち、関数発生器110から出力される参照信号によって決まる周波数の測定信号を検出する。
情報処理装置112の関数発生器制御部201は、関数発生器110が発生する参照信号の周波数を変化させることにより、ロックインアンプ111が検出する測定信号の周波数を漸次変化させる周波数掃引を行う(ステップS102)。こうして、測定信号の共鳴ピークを探索する。
次に、情報処理装置112の位相オフセット調整部204は、ロックインアンプ111を通じてレーザ駆動部102を制御し、レーザ駆動部102からレーザ101−1に供給される駆動電流の位相を変化させ、被測定物113に照射するレーザ光の位相を変化させることにより、測定信号の位相P0を0に設定する(ステップS103)。
次に、測定信号の振幅のピークを見つけたときに、情報処理装置112の振幅測定部202は、このピークの周波数(基準周波数f0)における測定信号の振幅A0を測定し(ステップS104)、位相測定部203は、基準周波数f0における測定信号の位相P0を測定する(ステップS105)。
情報記録部205は、振幅測定部202が測定した振幅A0と、位相測定部203が測定した位相P0(P0=0)と、ピークの周波数(基準周波数f0)とを記憶部213に記憶させる(ステップS106)。
次に、ステップS101〜S106の最初の測定から任意の時間経過後の時刻tにおける測定について説明する。最初の測定の場合と同様に、被測定物113にレーザ光を照射する(ステップS107)。ここでは、レーザ駆動部102から出力されて信号切り替え部121で選択されたレーザ101−1に供給される駆動電流の位相をステップS103の場合と同じにすることにより、被測定物113に照射されるレーザ光の位相をステップS103の場合と同じにしている。
情報処理装置112の関数発生器制御部201は、関数発生器110が発生する参照信号の周波数を変化させることにより、ロックインアンプ111に基準周波数f0の測定信号を検出させる。情報処理装置112の位相測定部203は、基準周波数f0における測定信号の位相P1を測定する(ステップS108)。測定信号の位相P1が位相P0(P0=0)と等しい場合、時刻tにおける血液グルコース濃度は、ステップS101〜S106の最初の測定のときの血液グルコース濃度と同じとなる。
一方、測定信号の位相P1が位相P0(P0=0)と異なる場合、情報処理装置112の関数発生器制御部201は、関数発生器110が発生する参照信号の周波数を変化させることにより、測定信号の位相P1がP0と等しくなる(ここでは、位相P1が0になる)測定信号の周波数を探す(ステップS109)。位相P1がP0と等しくなる周波数をf1とする。
周波数f1を見つけたときに、情報処理装置112の振幅測定部202は、周波数f1における測定信号の振幅A1を測定する(ステップS110)。次いで、情報記録部205は、振幅測定部202が測定した振幅A1と、測定信号の位相P1(P1=P0=0)と、周波数f1とを記憶部213に記憶させる(ステップS111)。
情報処理装置112の周波数変化率導出部207は、測定信号の周波数変化率(f1−f0)/f0×100を算出する(ステップS112)。レーザ101−1から放射される光の波長をλ1とし、測定結果である信号レスポンス(周波数変化率導出部207が算出した周波数変化率)をFS(λ1)と表現する。以上で、成分濃度測定装置のFS法による測定時の動作が終了する。
FS法による測定では、測定信号の振幅を測定しなくてもよい。ただし、血液グルコース濃度に変化が生じていない場合について、振幅A0と振幅A1とを使うことにより、グルコース濃度変化以外の他の影響によって生じる測定信号の周波数シフトを校正することができる。以下、この周波数シフトの校正について説明する。
グルコース濃度変化以外の他の成分が混合している場合において、グルコース濃度変化による測定信号の位相変化を打ち消され、ステップS108において測定信号の位相P1を測定したときに位相P1が位相P0(P0=0)と等しい場合が生じる。この場合は、情報処理装置112の振幅測定部202は、基準周波数f0における測定信号の振幅A1を測定する。測定信号の振幅A1が振幅A0と異なる場合、測定信号の振幅A1からグルコース以外の他の成分、例えば、アルブミンなどの成分を推定することができる。
グルコース濃度変化以外の他の成分が混合している場合において、測定信号の位相P1と位相P0(P0=0)とが異なる場合は、情報処理装置112の周波数シフト校正部206は、関数発生器110が発生する参照信号の周波数を変化させることにより、ロックインアンプ111が検出する測定信号の周波数を漸次変化させる周波数掃引を行い、基準周波数f0に最も近いピークを探索する。
周波数シフト校正部206は、測定信号の振幅のピークを見つけたときに、このピークの周波数を新たな基準周波数f0とする。こうして、基準周波数f0を更新することができ、グルコース濃度変化以外の他の影響によって生じる測定信号の周波数シフトを校正することができる。
血液グルコース濃度が変化してしまうと校正ができなくなるので、定期的(例えば数時間毎)にステップS101〜S106の処理を実施して、振幅A0と位相P0と基準周波数f0とを適宜更新すればよい。
OPBS法では、光音響信号の位相が0の点を探すために、光パワーを変化させる。より具体的には、光パワーを変化させるために、レーザ101−1,101−2の駆動電圧を変化させる。血液グルコース濃度Cgは、グルコースに特有な新しい光パワーバランスのシフト値δP1と相対的な光吸収係数δα1とδα2から求めることができる(特許文献7参照)。測定したい成分濃度がアルブミン濃度の場合も同様にして求めることができる。なお、光吸収係数α1,α2と光吸収係数変化量δα1,δα2とは、光吸収スペクトル測定から求めることができる。
OPBS法は、非侵襲的に光音響測定に基づく溶液の成分を測るために、効率的な方法である。この測定方法は、2つの光学波長を選ぶことによって1つの特定の合成物に非常に選択的なアプローチを最適化することができる。利用できる多様な光学波長を考慮すれば、異なる溶媒において多くの溶質を検出できることは明らかである。また、対応する光学パワーを調節しパワーバランスを求める方法により、どのような吸収係数(濃度)の違いに対しても測定可能である。
光学波長の選択は吸収係数によって制限されない。さらにまた、位相0の変曲点に基づく測定方法は、速く収束して非常に正確な測定を提供する。光音響信号の位相を測定するため、数ポイントの測定点を記憶しておく必要がある。ノイズを完全に無視するならば、パラボラ(2次多項式)が3ポイントの測定データを必要とするのに対し、2ポイントの測定データから線形斜面を決定することは可能である。この観点から、光音響信号の直線的な特性の方が、位相が0の変曲点を早く求めることができる。
しかしながら、ノイズと必要な測定精度の依存関係に基づき、測定ポイントの数は抜本的に増加させられるべきである。光音響信号の変化が線形的な挙動であれば、2ポイントの測定データから位相0の位置を非常に正確な精度で得ることができ、小さい範囲の中で位置を検索することができる。一方、光音響信号の変化が放物線状の場合には、二分検索アルゴリズム(二分探索)は最高の方法である。ただし、位相が0の位置を求めるのに要する時間は非常に長くなる。実験的な見解からセンサの反応時間に関連して、測定時間の量的増加を推定することは困難である。しかしながら、光音響信号の位相の線形的な挙動を利用すれば、より早く測定することができ、正確な成分濃度値を提供することができる。
次に、OPBS法による測定についてさらに詳細に説明する。初めに時刻t0の初期状態において参照レベルの決定を行うために、レーザ101−1のみを動作させる。被測定物113は、光音響セル106内に導入される。レーザ駆動部102から駆動電流が信号切り替え部121により選択されたレーザ101−1に供給されると、レーザ101−1はレーザ光を放射する。このとき、レーザ駆動部102から矩形波の駆動電流が供給されることにより、レーザ101−1は強度変調光を放射する。光の波長は例えば1384nmである。この強度変調光は、光ファイバ103−1によって導かれ光カプラ104を通過して、さらに光ファイバ105によって導かれ、光学窓107を通って光音響セル106内の被測定物113に照射される(ステップS201)。
音響センサ108は、被測定物113から発生する光音響信号を検出し、増幅器109は、音響センサ108から出力された電気信号を増幅する。ロックインアンプ111は、増幅器109の出力に含まれる信号のうち、関数発生器110から出力される参照信号によって決まる周波数の測定信号を検出する。
情報処理装置112の関数発生器制御部201は、関数発生器110が発生する参照信号の周波数を変化させることにより、レーザ駆動部102から信号切り替え部121により選択されたレーザ101−1に供給される駆動電流の周波数を変化させ、光変調周波数を漸次変化させると共に、ロックインアンプ111が検出する測定信号の周波数(光変調周波数と同一の周波数)を漸次変化させる光変調周波数掃引を行う(ステップS202)。こうして、音響共振ピークを探索する。
次に、測定信号の最大振幅を見つけたときに、情報処理装置112の周波数測定部208は、この最大振幅時の測定信号の周波数(参照周波数F0)を測定し、位相測定部203は、最大振幅時の測定信号の位相(参照位相P0)を測定する(ステップS203)。情報処理装置112の情報記録部205は、周波数測定部208が測定した参照周波数F0と位相測定部203が測定した参照位相P0とを記憶部213に記憶させる(ステップS204)。
次に、レーザ駆動部102から出力される駆動信号の供給先を、信号切り替え部121により2つのレーザ101−1,101−2としてこれらを動作させて、2つの光を合波して測定を行う。レーザ駆動部102から駆動電流が信号切り替え部121により選択されたレーザ101−1,101−2に供給されると、レーザ101−1,101−2はレーザ光を放射する。このとき、レーザ駆動部102は、同一周波数で逆位相の矩形波の駆動電流をレーザ101−1,101−2に供給することにより、レーザ101−1,101−2から放射される光を同一周波数で逆位相の信号によりそれぞれ強度変調する。
各レーザから放射される光の波長は、選択されたいずれかの組の第1の波長および第2の波長である。また、2つの光のパワーは同一である。レーザ101−1,101−2から放射された強度変調光は、それぞれ光ファイバ103−1,103−2によって導かれ、光カプラ104によって合波され、さらに光ファイバ105によって導かれ、光学窓107を通って光音響セル106内の被測定物113に照射される(ステップS205)。
続いて、情報処理装置112の関数発生器制御部201は、関数発生器110が発生する参照信号の周波数を変化させることにより、レーザ駆動部102から信号切り替え部121を経由してレーザ101−1,101−2に供給される駆動電流の周波数を変化させ、光変調周波数を参照周波数F0に設定すると共に、ロックインアンプ111が検出する測定信号の周波数を参照周波数F0に設定する。情報処理装置112の光パワー制御部209は、レーザ駆動部102からレーザ101−1に供給される駆動電流の大きさを変化させることにより、レーザ101−1から放射される光のパワーを漸次変化させる光パワー掃引を行う(ステップS206)。
情報処理装置112の位相測定部203は、測定信号の位相の変曲点、すなわち位相が0になる点を探索する(ステップS207)。位相の変曲点が見つかったときに、情報処理装置112の光パワー測定部210は、変曲点における2つの光の光パワーの差を測定する(ステップS208)。光パワー測定部210は、レーザ101−1に供給される駆動電圧とレーザ101−2に供給される駆動電圧との差である参照駆動電圧差VOPBS0を光パワーの差として測定する。
なお、ステップS204の時点における2つの光パワーは同一なので、2つの光のうち一方の光のパワーのみを変化させる場合には、この一方の光についてステップS204時点の初期の光パワーと変曲点における光パワーとの差(駆動電圧差)を求めるようにしてもよい。また、ステップS205における光パワー掃引において、2つのレーザ101−1,101−2から放射される光のパワーを変化させるようにしてもよい。
次に、時刻t0から任意の時間経過後の時刻tにおける測定について説明する。初めに、一方のレーザ101−1のみを動作させて、1つの光のみによる測定を行う。レーザ101−1から放射された強度変調光は、光ファイバ103−1によって導かれ光カプラ104を通過して、さらに光ファイバ105によって導かれ、光学窓107を通って光音響セル106内の被測定物113に照射される(ステップS209)。
情報処理装置112の関数発生器制御部201は、関数発生器110が発生する参照信号の周波数を変化させることにより、レーザ駆動部102からレーザ101−1に供給される駆動電流の周波数を変化させ、光変調周波数を参照周波数F0に設定する。さらに、関数発生器制御部201は、関数発生器110が発生する参照信号の周波数を変化させることにより、光変調周波数を参照周波数F0から変化させる。
情報処理装置112の位相測定部203は、測定信号の位相が参照位相P0となる点を探索し、情報処理装置112の周波数測定部208は、この点における周波数F1を測定する。こうして、参照位相P0に対応する周波数F1を探索する(ステップS210)。なお、周波数F1は参照周波数F0の近傍に位置する。
次に、2つのレーザ101−1,101−2を動作させて、2つの光を合波して測定を行う。レーザ駆動部102は、同一周波数で逆位相の矩形波の駆動電流を信号切り替え部121を経由してレーザ101−1,101−2に供給することにより、レーザ101−1,101−2から放射される光を同一周波数で逆位相の信号によりそれぞれ強度変調する。上記と同様に、レーザ101−1から放射される光の波長は例えば1384nm、レーザ101−2から放射される光の波長は例えば1610nmである。また、2つの光のパワーは同一である。レーザ101−1,101−2から放射された強度変調光は、それぞれ光ファイバ103−1,103−2によって導かれ、光カプラ104によって合波され、さらに光ファイバ105によって導かれ、光学窓107を通って被測定物113に照射される(ステップS211)。
続いて、情報処理装置112の関数発生器制御部201は、関数発生器110が発生する参照信号の周波数を変化させることにより、レーザ駆動部102からレーザ101−1,101−2に供給される駆動電流の周波数を変化させ、光変調周波数を周波数F1に設定すると共に、ロックインアンプ111が検出する測定信号の周波数を周波数F1に設定する。情報処理装置112の光パワー制御部209は、レーザ駆動部102からレーザ101−1に供給される駆動電流の大きさを変化させることにより、レーザ101−1から放射される光のパワーを漸次変化させる光パワー掃引を行う(ステップS212)。
情報処理装置112の位相測定部203は、測定信号の位相の変曲点、すなわち位相が0になる点を探索する(ステップS213)。位相の変曲点が見つかったときに、情報処理装置112の光パワー測定部210は、変曲点における2つの光の光パワーの差を測定する(ステップS214)。光パワー測定部210は、レーザ101−1に供給される駆動電圧とレーザ101−2に供給される駆動電圧との差である駆動電圧差VOPBS1を光パワーの差として測定する。
なお、ステップS211の時点における2つの光パワーは同一なので、2つの光のうち一方の光のパワーのみを変化させる場合には、この一方の光についてステップS211時点の初期の光パワーと変曲点における光パワーとの差(駆動電圧差)を求めるようにしてもよい。また、ステップS212における光パワー掃引において、2つのレーザ101−1,101−2から放射される光のパワーを変化させるようにしてもよい。
情報処理装置112の記憶部213には、駆動電圧差VOPBS1と参照駆動電圧差VOPBS0との差(VOPBS1―VOPBS0)と、光パワー変化量δPとの関係を示すキャリブレーションデータが予め記憶されている。このようなキャリブレーションデータは、予め実測することにより求めることができる。情報処理装置112の光パワー変化量導出部211は、記憶部213を参照して駆動電圧差(VOPBS1―VOPBS0)に対応する光パワー変化量δPを取得する(ステップS215)。レーザ101−1から放射される光の波長をλ1、レーザ101−2から放射される光の波長をλ2とし、測定結果である信号レスポンス(光パワー変化量導出部211が求めた光パワー変化量)をOPBS(λ1,λ2)と表現する。以上で、レーザ101−1,101−2を用いた測定が終了する。
次に、ステップS201に戻り、信号切り替え部121により、レーザ駆動部102から出力される駆動信号の供給先を、レーザ101−1,101−2の組から、レーザ101−1,101−3の組に切り替え、を用いてステップS201〜S215の測定を行う。このように、信号切り替え部121により、レーザ101−1,101−2,101−3,101−4,・・・,101−nの中から2つを選択し、選択された組の第1波長および第2波長に対応する2つのレーザの全ての組み合わせについてステップS201〜S214の測定を実施する。
1回の測定が終了した後に、次の波長の組み合わせになるように、信号切り替え部121を切り替えて逐次的に測定を実施すればよい。このようにすることで、光源となるレーザを駆動するレーザ駆動部や、ロックインアンプの数を、光源毎に用意することなく測定が可能となり、装置の大型化が抑制でき、より容易に測定が実施できるようになる。
例えば、レーザ101−3から放射される光の波長をλ3、レーザ101−4から放射される光の波長をλ4とすれば、レーザ101−1,101−3の組み合わせを用いたときの測定結果である信号レスポンス(光パワー変化量導出部211が求めた光パワー変化量)はOPBS(λ1,λ3)と表現され、レーザ101−1,101−4の組み合わせを用いたときの測定結果である信号レスポンスはOPBS(λ1,λ4)と表現される。
選択し得る2つのレーザダイオードの全ての組み合わせについてステップS201〜S214の測定が終了した時点で(ステップS216においてYES)、成分濃度測定装置のOPBS法による測定時の動作が終了する。
なお、OPBS法では、2つの光を同一周波数でかつ逆位相の信号により強度変調しているが、位相差が180°以外の信号で光を強度変調してもよい。
次に、情報処理装置112の濃度導出部212は、FS法による測定結果とOPBS法による測定結果とから測定対象の成分濃度を決定する。
人体組織には多種類の分子がある濃度レベルで存在し、かつ、時間とともに変容している。1つの組成物(ここでは、グルコース)を正確にモニタするには、それゆえ、いくつかの偏在的偏り(それらの変化がグルコース濃度測定に影響を与える組成物やパラメータ)を取り除く必要がある。さらには、ノイズや測定の不確定性などのため、その結果の一貫性や精度を見積もるためには、測定値を得るために必要な測定よりも多くの測定が必要である。
ところで、各成分について各成分自身の依存性がない(依存性がゼロ)の2波長によるOPBS法をn波長によるOPBS法に拡張すると、n(n−1)/2の組み合わせを取り得る。ただし、nは、前述した選択された波長の数となる。例えば、3組の第1の波長および第2の波長が選択された場合、単純にはnは6となる。また、OPBS法による測定を実施する前に、周波数シフトは評価され、補正されなければならない。しかし、この周波数シフトはFS測定を導くことにもなる。この方法は、光波長に依存しないので、どの光波長でも実施可能であり、かつ、一度の実施でよい。FS法は高感度であるが、グルコース選択性が低い。さらに、周波数シフトのレスポンスは波長や音響モードにかかわらず一定となっている。
結果として、n個の光波長から、(n(n−1)/2+1)の方程式を得ることができる。ここで、M個(Mは2以上の整数)の未知パラメータ、例えばCa,Cb,Cc,・・・,Tを有するシステムを考える。Ca,Cb,Cc,・・・は被測定物中のある成分の濃度であり、Tは被測定物の温度である。濃度Caの例としては、血液中のグルコース濃度がある。濃度Cbの例としてはアルブミン濃度がある。M個の未知パラメータの中の1つのパラメータに注目したとしても、少なくともM個の方程式を得るためにシステム全体を解析しなければならない。しかしながら、n個のレーザダイオードから(n(n−1)/2+1)の方程式を得ることができるので、nは(n(n−1)/2+1)>=Mを満たす整数である必要がある。
一度nを決定すれば、それぞれの波長の組に対して下記のような方程式を得ることができる。
FS法による測定結果である信号レスポンスFS(λ1)は、次式のように表現できる。
FS(λ1)=KaCa+KbCb+KcCc+・・・+KtT ・・・(2)
ここで、Ka,Kb,Kc,・・・,Ktは比例係数である。
ここで、Ka,Kb,Kc,・・・,Ktは比例係数である。
OPBS法による測定結果である信号レスポンスOPBS(λ1,λ2),OPBS(λ1,λ3),OPBS(λ1,λ4),・・・,OPBS(λn−1,λn)は、次式のように表現できる。n個のレーザダイオードの中から選択し得る2つのレーザダイオードの全ての組み合わせはn(n−1)/2通りであるから、OPBS法により得られる信号レスポンスもn(n−1)/2個となる。
OPBS(λ1,λ2)=Qaλ1,λ2Ca+Qbλ1,λ2Cb+Qcλ1,λ2Cc+・・・+Qtλ1,λ2T
OPBS(λ1,λ3)=Qaλ1,λ3Ca+Qbλ1,λ3Cb+Qcλ1,λ3Cc+・・・+Qtλ1,λ3T
OPBS(λ1,λ4)=Qaλ1,λ4Ca+Qbλ1,λ4Cb+Qcλ1,λ4Cc+・・・+Qtλ1,λ4T
・・・
OPBS(λn−1,λn)=Qaλn-1,λnCa+Qbλn-1,λnCb+Qcλn-1,λnCc+・・・+Qtλn-1,λnT ・・・(3)
OPBS(λ1,λ3)=Qaλ1,λ3Ca+Qbλ1,λ3Cb+Qcλ1,λ3Cc+・・・+Qtλ1,λ3T
OPBS(λ1,λ4)=Qaλ1,λ4Ca+Qbλ1,λ4Cb+Qcλ1,λ4Cc+・・・+Qtλ1,λ4T
・・・
OPBS(λn−1,λn)=Qaλn-1,λnCa+Qbλn-1,λnCb+Qcλn-1,λnCc+・・・+Qtλn-1,λnT ・・・(3)
ここで、Qaλi,λj,Qbλi,λj,Qcλi,λj,・・・,Qtλi,λj(i,j=1〜nで、i≠j)は比例係数である。式(2)、式(3)を行列で記述すると、以下のようになる。
式(4)における中央の行列式(係数行列)には、係数Ka,Kb,Kc,・・・,Ktと、Qaλi,λj,Qbλi,λj,Qcλi,λj,・・・,Qtλi,λjとが含まれている。この係数Ka,Kb,Kc,・・・,KtとQaλi,λj,Qbλi,λj,Qcλi,λj,・・・,Qtλi,λjの値は、想定されるそれぞれの組成物(グルコースやアルブミン、その他の血液成分等)を1つ1つ評価したキャリブレーション測定で予め実験的に得ることができる。従って、式(2)、式(3)の連立方程式を解くことにより、M個の未知パラメータCa,Cb,Cc,・・・,Tを決定することができる。
係数行列が正方行列であれば、未知パラメータCa,Cb,Cc,・・・,Tについて1つの解が存在する。係数行列の行が列より多ければ、複数の解が存在するので、最も確からしいCa,Cb,Cc,・・・,Tを決定するには、いくつかの計算(数学的なプロセス)が必要になる。解は一義的には決定できないが、複数の解の中でどれが最適解かはチェックすることができる。不安定性と雑音を考慮すると、(n(n−1)/2+1)=Mである1つめのアプローチより、(n(n−1)/2+1)>Mである2つめのアプローチが、より安定であることは疑いようがない。
このようにして得られた波長の組み合わせを用い、まず、いずれかの組のいずれかの波長の1つの光を照射してFS法により測定し、次に、得られた組の各々の波長の2つの光を照射してOPBS法により測定し、FS法の測定結果とOPBS法の測定結果とから被測定物中の測定対象の成分であるグルコース濃度を決定すればよい。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態2における成分濃度測定装置の構成を示す構成図である。この成分濃度測定装置は、まず、各々異なる波長のレーザ光を出射するn個のレーザ301−1,・・・,301−i,・・・(nは整数)と、これらレーザを駆動するレーザ駆動部302と、レーザ駆動部302から出力された駆動信号を切り替えていずれかのレーザに出力する信号切り替え部321とを備える。
次に、本発明の実施の形態2について図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態2における成分濃度測定装置の構成を示す構成図である。この成分濃度測定装置は、まず、各々異なる波長のレーザ光を出射するn個のレーザ301−1,・・・,301−i,・・・(nは整数)と、これらレーザを駆動するレーザ駆動部302と、レーザ駆動部302から出力された駆動信号を切り替えていずれかのレーザに出力する信号切り替え部321とを備える。
また、レーザ301−1,・・・,301−i,・・・から放射されたレーザ光を導くn本の光ファイバ303−1a,・・・,303−ia,・・・と、レーザ301−1,・・・,301−i,・・・から放射されたレーザ光を合波する光カプラ304と、光カプラ304によって合波されたレーザ光を導く中継光ファイバ305とを備える。各レーザは、例えば、分布帰還型のレーザダイオードである。また、光カプラ304は、例えば、特定波長を反射し残りを透過するダイクロイックミラーなどから構成されている。
また、被測定物313を収容する光音響セル306と、中継光ファイバ305より出射したレーザ光を光音響セル306内に導入するための光学窓307と、光音響セル306に収容された被測定物313から光音響効果によって発生する光音響信号を検出して音圧に比例した電気信号に変換する音響センサ308とを備える。光音響セル306,光学窓307,音響センサ308により測定部が構成される。
また、この成分濃度測定装置は、音響センサ308から出力された電気信号を増幅する増幅器309と、参照信号を発生する関数発生器310と、増幅器309の出力信号と関数発生器310から出力された参照信号とを入力として、増幅器309の出力信号から所望の周波数の測定信号を検出するロックインアンプ311aと、ロックインアンプ311aが検出した測定信号を処理して成分濃度測定方法により被測定物313中の測定対象の成分の濃度を決定する情報処理装置312とを備える。
上述した構成は、前述した実施の形態1と同様であり、実施の形態2では、レーザ301−1,・・・,301−i,・・・より出力されるレーザ光の一部が分岐されて分岐光ファイバ303−1b,・・・,303−ib,・・・に導かれるようにしている。例えば、図示しないスプリッタなどの分岐手段を用い、レーザ301−1,・・・,301−i,・・・より出力されるレーザ光の、出力強度5%程度を、分岐光ファイバ303−1b,・・・,303−ib,・・・に分岐する。
各分岐光ファイバ303−1b,・・・,303−ib,・・・に分岐されたレーザ光は、光電変換手段としてのフォトダイオード322−1b,・・・,322−ib,・・・で光電変換される。このようにして光電変換された信号は、信号切り替え部321を経由し、ロックインアンプ311bに入力される。ロックインアンプ311bでは、光電変換された信号から、所望の周波数のフィードバック信号を検出する。信号切り替え部321では、レーザ駆動部302より出力される駆動信号の出力先のレーザに対応する分岐光ファイバに接続するフォトダイオードより出力された信号が選択され、ロックインアンプ311bに出力される。
実施の形態2では、情報処理装置312において、分岐光ファイバ303−1b,・・・,303−ib,・・・で分岐された光より得られるフィードバック信号によりレーザ301−1,・・・,301−i,・・・の出力を参照し、レーザ301−1,・・・,301−i,・・・の出力を補償する。実施の形態2では、情報処理装置312が、上述した補償の処理を実施する補償手段を含んでいる。このように、実施の形態2によれば、光源となるレーザの出力を補償した状態で測定が実施できる。
[実施の形態3]
上述では、シーケンシャルに測定を実施する場合について説明したが。n個の組み合わせで測定を行う場合、測定時間はn×(OPBSの測定時間)になる。ところで、例えばグルコースの連続モニタリングを想定した場合、5分内に繰り返し測定をしなければならない。OPBSの測定時間は数分であるので、繰り返しの測定ができないことになる。
上述では、シーケンシャルに測定を実施する場合について説明したが。n個の組み合わせで測定を行う場合、測定時間はn×(OPBSの測定時間)になる。ところで、例えばグルコースの連続モニタリングを想定した場合、5分内に繰り返し測定をしなければならない。OPBSの測定時間は数分であるので、繰り返しの測定ができないことになる。
これに対し、シーケンシャルな測定ではなく、多波長の測定を同時に実施することで、短時間内に複数の組み合わせの測定が実施できる。ロックインアンプを用いて位相同期ループ(Phase-Locked-Loop;PLL)で測定すると、周波数を決定後、他の周波数の雑音が混入しても影響がない。フィルター機能により特定の周波数特性を検出することにより、各光波長の組み合わせの測定に関し、異なる駆動周波数で同時に行うことが可能になる。
例えば、図4に示すように、ある光の波長での光音響セルの周波数特性を見ると、特定の周波数で3つの共鳴ピークが出ていることがわかる。これをf0、f1、f2とする。前述したの形態1,2では、1つの周波数を選んでから、OPBS(λ1、λ2)の測定を実施し、次にOPBS(λ3、λ4)の測定を実施するといった逐次的な測定をしていた。これに対し、3つのレーザ駆動部を用いて3つの駆動周波数で同時に測定することで、より短時間で測定が実施できるようになる。
以下、本発明の実施の形態3について図5を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態3における成分濃度測定装置の構成を示す構成図である。
この成分濃度測定装置は、まず、各々異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ501−1,501−2,501−3,501−4,・・・,501−7と、これらレーザを駆動する3つのレーザ駆動部502−1,502−2,502−3と、レーザ駆動部502−1,502−2,502−3から出力された駆動信号を切り替えていずれかのレーザに出力する信号切り替え部521とを備える。実施の形態3では、7つのレーザを備え、3つの周波数f0、周波数f1、周波数f2を用いる場合を例にする。レーザ駆動部502−1は、周波数f0の駆動信号を出力し、レーザ駆動部502−2は、周波数f1の駆動信号を出力し、レーザ駆動部502−3は、周波数f2の駆動信号を出力する。
また、レーザ501−1,501−2,501−3,501−4,・・・,501−7から放射されたレーザ光を導く光ファイバ503−1,503−2,503−3,503−4,・・・、503−7と、レーザ501−1,501−2,501−3,501−4,・・・、501−7から放射されたレーザ光を合波する光カプラ504と、光カプラ504によって合波されたレーザ光を導く中継光ファイバ505とを備える。
また、測定部506を備える。測定部506は、被測定物を収容する光音響セル、中継光ファイバ505より出射したレーザ光を光音響セル内に導入するための光学窓、光音響セルに収容された被測定物から光音響効果によって発生する光音響信号を検出して音圧に比例した電気信号に変換する音響センサなどを備える。
また、この成分濃度測定装置は、測定部506から出力された電気信号を増幅する増幅器509と、参照信号を発生するf0関数発生器510−1,f1関数発生器510−2,f2関数発生器510−3とを備える。また、増幅器509の出力信号と、f0関数発生器510−1,f1関数発生器510−2,f2関数発生器510−3のいずれかから出力された参照信号とを入力として、増幅器509の出力信号から所望の周波数の測定信号を検出するロックインアンプ511−1,511−2,511−3を備える。また、ロックインアンプ511−1,511−2,511−3が検出した測定信号を処理して成分濃度測定方法により被測定物中の測定対象の成分の濃度を決定する情報処理装置512を備える。
実施の形態3における成分濃度測定装置では、周波数f0、周波数f1、周波数f2の各々について、信号切り替え部521で切り替えて異なる波長の組み合わせで測定を実施する。この結果、実施の形態3によれば、3つの測定を同時にできるため全測定時間を大幅に短縮することが可能となる。
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態4における成分濃度測定装置の構成を示す構成図である。この成分濃度測定装置は、まず、各々異なる波長のレーザ光を出射する7個のレーザ601−1,601−2,601−3,・・・,601−7と、これらレーザを駆動するレーザ駆動部602−1,602−2,602−3と、レーザ駆動部602−1,602−2,602−3から出力された駆動信号を切り替えていずれかのレーザに出力する信号切り替え部621とを備える。
次に、本発明の実施の形態4について図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態4における成分濃度測定装置の構成を示す構成図である。この成分濃度測定装置は、まず、各々異なる波長のレーザ光を出射する7個のレーザ601−1,601−2,601−3,・・・,601−7と、これらレーザを駆動するレーザ駆動部602−1,602−2,602−3と、レーザ駆動部602−1,602−2,602−3から出力された駆動信号を切り替えていずれかのレーザに出力する信号切り替え部621とを備える。
実施の形態4では、7つのレーザを備え、3つの周波数f0、周波数f1、周波数f2を用いる場合を例にする。レーザ駆動部602−1は、周波数f0の駆動信号を出力し、レーザ駆動部602−2は、周波数f1の駆動信号を出力し、レーザ駆動部602−3は、周波数f2の駆動信号を出力する。
また、レーザ601−1,・・・,601−7から放射されたレーザ光を導く7本の光ファイバと、レーザ601−1,・・・,601−7から放射されたレーザ光を合波する光カプラ604とを素なる。図6において、レーザ601−1,・・・,601−7と光カプラ604との間を接続する実線が、上記光ファイバである。また、光カプラ604によって合波されたレーザ光を導く中継光ファイバ605を備える。各レーザは、例えば、分布帰還型のレーザダイオードである。また、光カプラ604は、例えば、特定波長を反射し残りを透過するダイクロイックミラーなどから構成されている。
また、測定部606を備える。測定部606は、被測定物を収容する光音響セル、中継光ファイバ605より出射したレーザ光を光音響セル内に導入するための光学窓、光音響セルに収容された被測定物から光音響効果によって発生する光音響信号を検出して音圧に比例した電気信号に変換する音響センサなどを備える。
また、この成分濃度測定装置は、測定部606から出力された電気信号を増幅する増幅器609と、参照信号を発生するf0関数発生器610−1,f1関数発生器610−2,f2関数発生器610−3とを備える。また、増幅器609の出力信号と、f0関数発生器610−1,f1関数発生器610−2,f2関数発生器610−3のいずれかから出力された参照信号とを入力として、増幅器609の出力信号から所望の周波数の測定信号を検出するロックインアンプ611−1,611−2,611−3を備える。また、ロックインアンプ611−1,611−2,611−3が検出した測定信号を処理して成分濃度測定方法により被測定物中の測定対象の成分の濃度を決定する情報処理装置612を備える。
上述した構成は、前述した実施の形態3と同様であり、実施の形態4では、レーザ601−1,601−2,601−3,・・・,601−7より出力されるレーザ光の一部が分岐されて分岐光ファイバに導かれるようにしている。例えば、図示しないスプリッタなどの分岐手段を用い、レーザ601−1,・・・,601−7より出力されるレーザ光の、出力強度5%程度を、分岐光ファイバ各分岐光ファイバに分岐されたレーザ光は、光電変換手段としてのフォトダイオード622−1b,・・・,622−7bで光電変換される。図6において、レーザ601−1,・・・,601−7より分岐されてフォトダイオード622−1b,・・・,622−7bに接続する点線が、上記分岐光ファイバである。
上述したように、フォトダイオード622−1b,・・・,622−7bで光電変換された信号は、信号切り替え部621を経由し、ロックインアンプ611−4,611−5,611−6に入力される。ロックインアンプ611−4,611−5,611−6では、光電変換された信号から、所望の周波数のフィードバック信号を検出する。信号切り替え部621では、レーザ駆動部602−1,602−2,602−3より出力される駆動信号の出力先のレーザに対応する分岐光ファイバに接続するフォトダイオードより出力された信号が選択され、ロックインアンプ611−4,611−5,611−6に出力される。
実施の形態4では、情報処理装置612において、分岐光ファイバで分岐された光により得られるフィードバック信号によりレーザ601−1,・・・,601−7の出力を参照し、レーザ601−1,・・・,601−7の出力を補償する。このように、実施の形態4によれば、光源となるレーザの出力を補償した状態で測定が実施できる。実施の形態4では、情報処理装置612が、上述した補償の処理を実施する補償手段を含んでいる。
以上に説明したように、本発明によれば、切り替え手段により、レーザ駆動部から出力された駆動信号を切り替えていずれかのレーザに出力するようにしたので、装置の大型化を抑制してより容易に測定が実施できるようになる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、上述では、実施例ではグルコースの濃度測定を例に説明したが、これに限るものではなく、例えば、血液中に存在する他の成分の濃度測定など液体中の成分濃度の測定に利用可能である。
101−1,101−2,101−3,101−4,・・・,101−n…レーザ、102…レーザ駆動部、103−1,103−2,103−3,103−4,・・・,103−n,104…光カプラ、105…光ファイバ、106…光音響セル、107…光学窓、108…音響センサ、109…増幅器、110…関数発生器、111…ロックインアンプ、112…情報処理装置、113…被測定物、121…信号切り替え部、201…関数発生器制御部、202…振幅測定部、203…位相測定部、204…位相オフセット調整部、205…情報記録部、206…周波数シフト校正部、207…周波数変化率導出部、208…周波数測定部、209…光パワー制御部、210…光パワー測定部、211…光パワー変化量導出部、212…濃度導出部、213…記憶部。
Claims (4)
- 第1の波長における水の吸収係数をα1、第2の波長における水の吸収係数をα2、第1の波長における対象物質の吸収係数をαs1、第2の波長における対象物質の吸収係数をαs2とし、対象物質の濃度変化係数Qsとし、Qs=[{Min(α1,α2)}/{Max(α1,α2)}]×(δαs2/α2−δαs1/α1)の式により、第1の波長および第2の波長を各々変化させて求めることで得られる第1の波長および第2の波長の各々の変化に対する濃度変化係数Qsの変化の中で、前記対象物質の各成分について各成分自身の依存性がゼロであり、かつ2波長の水の吸収係数αの比率係数β=α1/α2が1になる第1の波長および第2の波長からなる少なくともM個(Mは2以上の整数)の組の光を選択する波長選択ステップと、
(M−1)個の成分の濃度Ca,Cb,Cc,・・・と温度TとからなるM個の未知パラメータを有する被測定物に対して、選択されたいずれかの組のいずれかの波長の1つの光を照射して周波数シフト(FS)法により測定結果を得る第1の測定ステップと、
選択されたM個の組の各々の波長の2つの光を照射して光パワーバランスシフト(OPBS)法により測定結果を得る第2の測定ステップと、
前記第1の測定ステップの測定結果と前記第2の測定ステップの測定結果とから前記被測定物中の測定対象の成分の濃度を決定する濃度導出ステップとを備え、
前記濃度導出ステップは、
前記第1の測定ステップの測定結果をFS(λ1)、前記第2の測定ステップの測定結果をOPBS(λ1,λ2),OPBS(λ1,λ3),OPBS(λ1,λ4),・・・,OPBS(λn−1,λn)としたとき(λ1,λ2,λ3,λ4,・・・,λn−1,λnは、選択されたM個の組の各々の光の波長)、
前記第1の測定ステップの測定結果を表現する式
FS(λ1)=KaCa+KbCb+KcCc+・・・+KtTと、
前記第2の測定ステップの測定結果を表現する式
OPBS(λ1,λ2)=Qaλ1,λ2Ca+Qbλ1,λ2Cb+Qcλ1,λ2Cc+・・・+Qtλ1,λ2T、
OPBS(λ1,λ3)=Qaλ1,λ3Ca+Qbλ1,λ3Cb+Qcλ1,λ3Cc+・・・+Qtλ1,λ3T、
OPBS(λ1,λ4)=Qaλ1,λ4Ca+Qbλ1,λ4Cb+Qcλ1,λ4Cc+・・・+Qtλ1,λ4T、
・・・OPBS(λn−1,λn)=Qaλn-1,λnCa+Qbλn-1,λnCb+Qcλn-1,λnCc+・・・+Qtλn-1,λnT
とからなる連立方程式(Ka,Kb,Kc,・・・,Kt,Qaλi,λj,Qbλi,λj,Qcλi,λj,・・・,Qtλi,λj(i,j=1〜nで、i≠j)は所定の係数)を解くことにより、前記被測定物中の成分の濃度Ca,Cb,Cc,・・・を決定する成分濃度測定方法を実施するための成分濃度測定装置であって、
各々異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザと、
前記レーザを駆動するレーザ駆動部と、
前記レーザ駆動部から出力された駆動信号を切替えていずれかの前記レーザに出力する信号切り替え手段と、
前記レーザから放射されたレーザ光を導く光ファイバと、
レーザから放射されたレーザ光を合波する光カプラと、
前記光カプラによって合波されたレーザ光を導く中継光ファイバと、
前記被測定物を収容する光音響セルと、
中継光ファイバより出射したレーザ光を光音響セル内に導入するための光学窓と、
前記光音響セルに収容された被測定物から光音響効果によって発生する光音響信号を検出して音圧に比例した電気信号に変換する光音響信号検出手段と、
光音響信号検出手段から出力された電気信号を増幅する増幅器と、
参照信号を発生する関数発生器と、
増幅器の出力信号と関数発生器から出力された参照信号とを入力として、増幅器の出力信号から所望の周波数の測定信号を検出するロックインアンプと、
ロックインアンプが検出した測定信号を処理して前記成分濃度測定方法により前記被測定物中の測定対象の前記成分の濃度を決定する情報処理部と
を備えることを特徴とする成分濃度測定装置。 - 請求項1記載の成分濃度測定装置において、
前記成分濃度測定方法の前記第1の測定ステップは、
前記被測定物に対して光を照射する第1の光照射ステップと、
前記第1の光照射ステップによって前記被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第1の光音響信号検出ステップと、
前記第1の光音響信号検出ステップで得られた電気信号のうち振幅が最大となる基準周波数の信号を測定信号として、この測定信号の位相を測定する第1の位相測定ステップと、
任意の時間経過後に前記被測定物に対して光を照射する第2の光照射ステップと、
前記第2の光照射ステップによって前記被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第2の光音響信号検出ステップと、
前記第2の光音響信号検出ステップで得られた電気信号のうち前記基準周波数の信号を測定信号として、前記測定信号の位相を測定する第2の位相測定ステップと、
前記第2の位相測定ステップで測定する位相が前記第1の位相測定ステップで測定した位相と等しくなる測定信号の周波数を探索する周波数探索ステップと、
前記周波数探索ステップで探索した周波数と前記基準周波数との変化量を、前記第1の測定ステップの測定結果として求める周波数変化導出ステップとを含む
ことを特徴とする成分濃度測定装置。 - 請求項1または2記載の成分濃度測定装置において、
前記成分濃度測定方法の前記第2の測定ステップは、
前記被測定物に対して強度変調光を照射する第3の光照射ステップと、
この第3の光照射ステップによって前記被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第3の光音響信号検出ステップと、
この第3の光音響信号検出ステップで得られた電気信号の振幅が最大となる変調周波数を第1の周波数として測定する第1の周波数測定ステップと、
前記振幅が最大のときの電気信号の位相を参照位相として測定する第3の位相測定ステップと、
互いに異なる波長の2波の光を前記第1の周波数で且つ異なる位相の信号によりそれぞれ強度変調して前記被測定物に照射し、2つの強度変調光のうち少なくとも一方の強度変調光の光パワーを漸次変化させる第4の光照射ステップと、
この第4の光照射ステップによって前記被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第4の光音響信号検出ステップと、
この第4の光音響信号検出ステップで得られた電気信号の位相が0となる第1の変曲点を探索する第4の位相測定ステップと、
前記第1の変曲点における2つの強度変調光の光パワーの差を測定する第1の光パワー測定ステップと、
任意の時間経過後に前記被測定物に対して強度変調光を照射する第5の光照射ステップと、
この第5の光照射ステップによって前記被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第5の光音響信号検出ステップと、
この第5の光音響信号検出ステップで得られた電気信号の位相が前記参照位相となる変調周波数を第2の周波数として探索する第2の周波数測定ステップと、
互いに異なる波長の2波の光を前記第2の周波数で且つ異なる位相の信号によりそれぞれ強度変調して前記被測定物に照射し、2つの強度変調光のうち少なくとも一方の強度変調光の光パワーを漸次変化させる第6の光照射ステップと、
この第6の光照射ステップによって前記被測定物から発生する光音響信号を検出して電気信号を出力する第6の光音響信号検出ステップと、
この第6の光音響信号検出ステップで得られた電気信号の位相が0となる第2の変曲点を探索する第5の位相測定ステップと、
前記第2の変曲点における2つの強度変調光の光パワーの差を測定する第2の光パワー測定ステップと、
この第2の光パワー測定ステップで測定した光パワーの差と前記第1の光パワー測定ステップで測定した光パワーの差との変化量を、前記第2の測定ステップの測定結果として求める光パワー変化導出ステップとを含み、
選択された組毎に、前記第3の光照射ステップと前記第3の光音響信号検出ステップと前記第1の周波数測定ステップと前記第3の位相測定ステップと前記第4の光照射ステップと前記第4の光音響信号検出ステップと前記第4の位相測定ステップと前記第1の光パワー測定ステップと前記第5の光照射ステップと前記第5の光音響信号検出ステップと前記第2の周波数測定ステップと前記第6の光照射ステップと前記第6の光音響信号検出ステップと前記第5の位相測定ステップと前記第2の光パワー測定ステップと前記光パワー変化導出ステップとを実施し、前記2つの光照射手段の組み合わせ毎に前記第2の測定ステップの測定結果を得ることを特徴とする成分濃度測定装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の成分濃度測定装置において、
複数の前記レーザより放射された一部のレーザ光を分岐して導く分岐光ファイバと、
前記分岐光ファイバより出射したレーザ光を光電変換する光電変換手段と、
前記光電変換手段の出力信号と関数発生器から出力された参照信号とを入力として、前記光電変換手段の出力信号から所望の周波数のフィードバック信号を検出するフィードバック用ロックインアンプと、
前記フィードバック用ロックインアンプが検出したフィードバック信号を処理して複数の前記レーザの出力を補償する補償手段と
を備えることを特徴とする成分濃度測定装置。
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