JP2017149592A - AlNウィスカーの製造方法、及び、AlNウィスカー - Google Patents

AlNウィスカーの製造方法、及び、AlNウィスカー Download PDF

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Abstract

【課題】高純度なAlNウィスカーを簡便な方法にて、短時間、省エネルギー、及び、低コストで製造することを可能としたAlNウィスカーの製造方法、及び、AlNウィスカーの提供。【解決手段】窒素雰囲気下にて、Alを含有した原料から、AlNウィスカーを、燃焼合成反応により生成させ、原料の合成体表層に、AlNウィスカーを層状7に生成させることが好ましく、原料に、NH4Clを含有し、NH4Clの分解ガスを排出させることが好ましいAlNウィスカーの製造方法。【選択図】図3

Description

本発明は、燃焼合成法を応用したAlNウィスカーの製造方法、及び、AlNウィスカーに関する。
従来のAlNウィスカーの製造方法として、特許文献1には、アルミナを窒素雰囲気下で1800℃〜2000℃において炭素を用いて還元することにより、AlNウィスカーを生成する製造法が開示されている。特許文献1での製造法は、黒鉛加熱デバイスを備えた横形炉の半連続式運転により遂行される。そして、アルミナ、炭素、及び成長活性剤としてのカルボニル鉄の混合物を装入した黒鉛容器を、上記炉に通じて周期的に供給する。また、特許文献2には、金属Al粉末等を5.0Torr以下の真空雰囲気中で540〜650℃まで昇温し、その温度を保持した状態でNガスの加圧雰囲気にて、直接窒化法によりAlNウィスカーを製造する方法が開示されている。更に、特許文献3では、Al−Ti−Siを主成分とする材料をアルミナボートに充填し、それを1500℃〜1800℃にて加熱溶融させ、窒素雰囲気下にて直接窒化法を用いて、材料の表面上にAlNウィスカーを生成させる方法が開示されている。
特開平9−118598号公報 特開平11−139814号公報 特開2014−73951号公報
しかしながら、特許文献1で開示されているAlNウィスカーの製造方法では、炭素及びカルボニル鉄を還元剤として原料に添加している。このため、生成されたAlNウィスカー内部に炭素や鉄などの不純物や未反応のアルミナが残留する問題があった。その結果、AlNウィスカーの熱伝導性や絶縁性が劣り、この未反応や不純物を除去する処理が必要となった。また、特許文献1では、還元反応を起こすために高いエネルギーが必要であり、具体的には、外部加熱にて1800℃〜2000℃と非常に高い温度にて処理する必要があった。このため、エネルギーコスト面での課題があった。
また、特許文献2、及び特許文献3に記載されたAlNウィスカーの製造方法においても、外部加熱によりAlNウィスカーを生成させている。このため、特許文献1と同様に、エネルギーコスト面で課題があった。また、特許文献2及び特許文献3に記載された、外部加熱による方式では、炉の昇降温に時間がかかり、且つAlNウィスカーの成長を行うための保持時間も必要となった。この結果、AlNウィスカーの製造に要するサイクル時間が長くなり、AlNウィスカーの生産性が低下した。
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、従来に比べて、高純度なAlNウィスカーを簡便な方法にて、短時間、省エネルギー、及び、低コストで製造することを可能としたAlNウィスカーの製造方法、及び、AlNウィスカーを提供することを目的とする。
本発明のAlNウィスカーの製造方法は、窒素雰囲気下にて、Alを含有した原料から、AlNウィスカーを、燃焼合成反応により生成することを特徴とする。
本発明では、前記原料の合成体表層に、前記AlNウィスカーを層状に生成させることが好ましい。
本発明では、前記原料に、NHClを含有し、NHClの分解ガスを排出させることが好ましい。
また本発明では、前記原料に、NHClを、0.5質量%以上5質量%以下、含有することが好ましい。
また本発明では、前記原料に、希釈材としてのAlNを、10質量%以上40質量%以下、含有することが好ましい。
また本発明では、前記原料に、Yを、0.5質量%以上5質量%以下、含有することが好ましい。
また本発明では、前記原料に、Alを、0.2質量%以上2質量%以下、含有することが好ましい。
また本発明のAlNウィスカーは、結晶成長の方向がランダムであることを特徴とする。
本発明によれば、燃焼合成法を応用して、AlNウィスカーを製造することで、外部加熱を必要とせず、省エネルギーで且つ短時間でのAlNウィスカーの生成を可能とする。また原料に、炭素や鉄などを添加しないため、AlNウィスカーに、絶縁性及び熱伝導性を低下させる不純物混入の可能性が抑制される。したがって、高品質なAlNウィスカーを製造することが出来る。
本発明の実施の形態におけるAlNウィスカーの製造方法を示すフローチャートである。 坩堝内での原料配置を示す模式図である。 本発明の実施の形態における層状のAlNウィスカーと、AlNウィスカーを型抜きして形成されたAlNウィスカーシートを示す模式図である。 本実施例のAlNウィスカーのXRDの分析結果を示すスペクトル図である。 走査型電子顕微鏡により撮像した画像を示す写真である。
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
AlNウィスカーは、熱伝導率が高く、絶縁性に優れた特性を有しており、且つその高いアスペクト比から、樹脂封止材等に好適に使用される。
本発明の実施の形態における、AlNウィスカーの製造方法は、燃焼合成を応用したものである。燃焼合成法は、物質の化学反応時に生じる生成熱を利用し、化合物を生成する方法であり、外部加熱を必要としない省エネルギープロセスである。また高温高速反応と急冷作用を有しており、短時間での化合物の生成が可能である。本実施の形態では、固体(Al)−気体(窒素ガス)間での燃焼合成であるため、直接窒化法の一部に属する。
本実施の形態のAlNウィスカーの製造方法によれば、Alを主成分として含有する原料を燃焼させた際に、合成体内部から噴出するAlNガスを合成体の表層にて急冷することにより、AlNウィスカーを合成体表層に層状に成長させることを可能とする。
以下、燃焼合成反応のメカニズムについて説明する。まず、Alを主成分として含有する原料を、例えば、黒鉛から成る坩堝内に充填する。ここで、原料中のAl量を限定するものでないが、主成分として50質量%以上を占める。そして、原料の一部に着火用カーボンフォイルを接触させた状態で、坩堝を、燃焼合成炉内に設置する。炉内を、所定圧まで脱気し、その後、窒素置換を行い、窒素加圧雰囲気にする。
続いて、カーボンフォイルに対して、原料に着火されるまで通電を行い、原料中のAlと窒素ガスの燃焼合成反応を開始させる。燃焼合成反応の反応式は、2Al+N→AlNである。このとき、燃焼合成反応の燃焼波は、例えば、10mm/秒程度の速度で進行するため、例えば、数分程度(具体的には、3〜5分程度)と短時間で合成反応は終了する。
AlNウィスカーの生成は、燃焼合成反応と同時に行われる。燃焼時の原料内部温度は、例えば、1900〜2000℃程度まで達しており、Alは、原料内部にAlガス状態で存在する。
本実施の形態では、原料にNHClを助剤として添加することが好適である。これにより、燃焼時の熱によりNHClが、NHとHClの分解ガスとなり、合成体表層へと排出される。この分解ガスは、合成体内部のAlガスのキャリアーとなり、合成体表層からAlガスを放出させる。放出されたAlガスは、窒化反応を伴いながら急冷され、合成体表層にAlNウィスカーが形成されていく。本実施の形態では、原料に、成長活性剤として微量にYやAlを添加することが、AlNウィスカーの生成量を増大させるうえで好適である。
そして、本実施の形態では、最終形態として、合成体表層にAlNウィスカーを層状に形成することができる。このため、AlNウィスカーの回収効率を非常に高くすることが出来る。ここで「層状」とは、合成体表層のほぼ全域に厚みを有するシート形状であることを指す。
本実施の形態では、上記のように、燃焼合成法を用いてAlNウィスカーを生成することにより、Alからの直接窒化が可能である。そして、炭素や鉄などを還元剤として使用しないため、AlNウィスカー内部には、熱伝導性や絶縁性を低下させる不純物の混入の可能性が抑制され、高品質なAlNウィスカーを得ることが可能になる。また、外部加熱を必要とせず、短時間での合成が可能であり、生産効率が高く、省エネルギーにて生産でき、経済性にも優れている。
続いて、本実施の形態における、AlNウィスカーの製造工程について詳細に説明する。まず、図1のステップST1に示すように、原料の調製を行う。本実施の形態では、Alを主成分として含有する原料として、Al−AlN−NHCl−Y−Alを使用することが好ましい。すなわち、原料としては、これら成分以外の成分を実質的に含まないことが好適である。「実質的に」とは、不可避的に混入する他の成分・元素が含まれることを排除しないことを意味する。これら成分を、例えば、アルミナ質のボールミルにて乾式混合する。
本実施の形態において、原料に含まれる各成分の平均粒径を、限定するものではない。ただし、一例を示すと、Alは、平均粒径D50=1〜20μm程度であり、AlNは、平均粒径D50=0.5〜6μm程度であり、NHClは、平均粒径D50=0.5〜2mm程度であり、Yは、平均粒径D50=0.2〜5μm程度であり、Alは、平均粒径D50=0.5〜4μm程度である。粒度分布は、レーザ散乱法(レーザ回折式粒度分布測定装置 HORIBA LA−950を使用)で測定した。「D50」とは、累積個数が、全粒子数の50%となる粒径を示す。
また本実施の形態では、AlNを、希釈材として、原料中、10質量%以上40質量%以下の範囲内で添加することが好ましい。これにより、後述する実験結果に示すように、燃焼温度を高くでき、且つ、Alの未反応量を少なくできる。また、合成助剤としてのNHClを、原料中、0.5質量%以上5質量%以下の範囲内で添加することが好ましい。また、成長活性材としてのYを原料中、0.5質量%以上5質量%以下の範囲内で添加することが好ましい。また、成長活性材としてのAlを、原料中、0.2質量%以上2質量%以下の範囲内で添加することが好ましい。NHCl、Y、及び、Alの添加量を、上記範囲内で添加することで、後述する実験結果に示すように、AlNウィスカー生成量を適切に増大させることが出来る。
続いて、原料を、坩堝内に設置(充填)する(図1のステップST2)。原料の坩堝への設置方法について図2を用いて説明する。図1に示す符号1は黒鉛にて形成された坩堝(以下、黒鉛坩堝1と称する)である。ただし、本実施の形態では、黒鉛に限定するものでなく、黒鉛以外にも、BN、Al、AlN、Si等の材質にて形成されていてもよい。
図2に示すように、黒鉛坩堝1の底面にAlN敷粉2を敷き詰める。AlN敷粉2の粒径や層厚を限定するものではないが、例えば、平均粒径D50は、4〜20μm程度であり、層厚は5mm以上である。このように、AlN敷粉2を敷き詰める理由は、原料3の反応熱を遮断し、熱による黒鉛坩堝1からのカーボンの発生を防ぐためである。
続いて、AlN敷粉2の上に原料3を設置する。このとき、原料3の層厚を限定するものでないが、層厚を、5mm以上20mm以下の範囲内とすることが好ましく、5mm以上10mm以下とすることがより好ましい。層厚が5mmよりも薄い場合、合成体熱量が低く、発生するAlNガスが少ないため、生成されるAlNウィスカーの量が減少する。また、20mmよりも厚い場合は合成体熱量が多く、合成体表面温度が高くなりすぎて、AlNウィスカーの核の生成が阻害され、AlNウィスカーの生成される量が低下する。また図2に示すように、燃焼反応時の熱影響を防ぐため、原料3と黒鉛坩堝1との各側面間には、1mm以上の間隔を空けておくことが好ましい。
次に、原料3の設置(充填)が完了した黒鉛坩堝1を燃焼合成炉内に設置する。そして図2に示すように、原料3の表面に着火用のカーボンフォイル4を接触させた状態にする。そして、黒鉛坩堝1の上に、カーボンフェルト蓋5を設置する。このように、黒鉛坩堝1の上面を、カーボンフェルト蓋5で覆うことで、AlNガスが炉内雰囲気へ拡散するのを防ぎ、AlNウィスカーの生成量を増加させることが出来る。なお、本実施の形態では、蓋の材質をカーボンフェルトに限定するものでなく、例えば、若干の通気性を有しているAlファイバー組成物を蓋として用いることも出来る。
使用する燃焼合成炉は、設定した加圧雰囲気を一定に保つ機構を有し、且つ、真空置換を行える構成であることが好適である。また、燃焼合成炉には、炉内雰囲気を冷却するための冷却ジャケット及びチラーを有しており、炉内温度を25℃以下に保てる構成が望ましい。
炉内を、所定圧まで脱気し、その後、窒素置換を行い、窒素加圧雰囲気にする(図1のステップST3)。ここで、脱気圧を限定するものではないが、例えば、100Pa以下であり、好ましくは50Pa〜20Paであり、より好ましくは、5Pa以下である。また、窒素加圧雰囲気の加圧力を限定するものではないが、例えば、0.2MPa〜30MPaであり、好ましくは、0.7MPa以上である。
その後、冷却機構を用いて、炉内温度が例えば、25℃以下なるまで冷却を行う(図1のステップST4)。続いて、カーボンフォイル4に対して、原料に着火するまで通電(限定するものでないが、例えば、50〜200V)を行い、燃焼合成を開始させる(図1のステップST5)。上記したように、合成反応は、例えば、数分程度(具体的には、3〜5分程度)と短時間で終了する。
このように本実施の形態では、燃焼合成法の特徴の一つである、急速反応及び急冷作用を用いており、ガス圧と雰囲気温度が重要な因子となる。ガス圧は、上記した窒素加圧雰囲気での加圧力であり、高圧にすることにより燃焼温度を上昇させることができ、その結果、Alガスの発生量を増加させることが出来る。また雰囲気密度の上昇に伴い放熱性も向上し、且つ、雰囲気温度(上記した炉内の冷却温度)を低く抑えることで、急冷作用も促進し、AlNウィスカーの生成量を増加させることが出来る。
燃焼終了後は、炉内を大気圧に戻し、黒鉛坩堝1を燃焼合成炉から取り出す。図3Aで示すように、生成されたAlNウィスカーは、原料3を燃焼してなる合成体6の表層に層状(AlNウィスカー層7)に存在しており、AlNウィスカー層7を、合成体表層から剥離させることにより、容易に回収する事が出来る(図1のステップST6)。
このように本実施の形態では、燃焼合成法を応用して、層状のAlNウィスカーを得ることができる。
AlNウィスカーは、結晶方向が一定方向でなくランダムに絡み合って繊維状の層となっている。層厚を限定するものでないが、例えば、0.2〜1mm程度である。
そして、AlNウィスカー層7を型抜き、又は、裁断を行うことで、図3Bのような任意形状のAlNウィスカーシート8を得ることが出来る(図1のステップST7)。AlNウィスカーシート8は、熱伝導部材(例えば、樹脂含浸による高熱伝導複合体)や、耐熱部材(例えば、耐熱フィルター)、触媒部材(例えば、触媒担体材)などに有用である。
以上詳述したように、本実施の形態は、自己生成熱により合成反応を進行させる燃焼合成法を応用したAlNウィスカーの製造方法である。本実施の形態によれば、外部加熱を必要とせず省エネルギーで且つ短時間でのAlNウィスカー生成を可能する。また、特殊な材料を必要とすることなくAlNウィスカーを生成でき、高い生産効率、及び低コストでの製造が可能である。また、原料中に、炭素や鉄などを添加しないため、生成されたAlNウィスカー中に、絶縁性及び熱伝導性を下げる不純物の混入の可能性が低く、高品質なAlNウィスカーの製造が可能である。
以下、本発明の効果を明確にするために実施した実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
以下では、Al原料に含有する、希釈材(AlN)の添加量、NHClの添加量、Yの添加量、及び、Alの添加量の適正な範囲を実験により求めた。
実験では、原料量がトータルで80gとなるように調製した。なお混合は、乳鉢にて行った。ただし、ボールミルで行ってもよい。実験で使用したAl粉末は、高純度化学研究所製の平均粒径が3μmのものであり、AlN粉末は、トクヤマ製のHグレード(平均粒径1μm)であり、NHClは、純正化学製の粒径が約1mmのものであり、Yは、日本イットリウム製のD50≦3μmであり、Alは、高純度化学製のα−Al(平均粒径が1μm)であった。
上記原料を、図1に示す状態にて、黒鉛坩堝に設置し、燃焼合成炉のガス圧を0.95MPaとして燃焼合成を行った。
(希釈率の実験)
まず実験では、希釈率を測定すべく、AlとAlNとの混合割合を変えて希釈率の異なる複数の原料を調製し、各原料を用いて、Alの未反応量及び燃焼温度を測定した。その実験結果が以下の表1に示されている。
「希釈率」欄の数値は、原料中に占めるAlNの質量%を示している。未反応量は、X線解析による定量分析に測定した。
表1に示すように、希釈率の上昇に伴い、Alの未反応量は減少するとともに、燃焼温度が低下することがわかった。
効率的な燃焼合成反応を得るべく、AlNの好ましい添加量の範囲を、燃焼温度が高く且つAlの未反応量が少ない、10質量%以上40質量%以下に設定した。
(NHClの添加量の実験)
続いて、AlNを30質量%に固定し、NHClの添加量が異なるAl−AlN−NHClからなる複数の原料を調製し、各原料を用いて、AlNウィスカーの生成量、及び、燃焼温度を測定した。その実験結果が以下の表2に示されている。
表2に示すように、NHClの添加量を4質量%まで増やすと、AlNウィスカーの生成量は増大し、且つ、燃焼温度は低下することがわかった。また、NHClの添加量を6質量%とした場合は、自己伝播せず、適切にAlNウィスカーを得ることはできなかった。
表2に基づいて、NHClの添加量の好ましい範囲を0.5質量%以上5質量%とした。また、より好ましい範囲を、1質量%以上5質量%以下とした。
(Yの添加量の実験)
続いて、AlNを30質量%、NHClを4質量%に固定し、Yの添加量が異なるAl−AlN−NHCl−Yからなる複数の原料を調製し、各原料を用いて、AlNウィスカーの生成量を測定した。その実験結果が以下の表3に示されている。
表3に示すように、Yの添加量を1質量%から4質量%まで増やすと、AlNウィスカーの生成量を増大させることができるとわかった。Yの添加量を5質量%とすると、1質量%のときに比べて、Yの生成量は多くなるものの、2質量%〜4質量%の場合に比べて、AlNウィスカーの生成量は減ることがわかった。
表3により、Yの添加量の好ましい範囲を、0.5質量%以上5質量%以下とした。またより好ましい範囲を、1質量%以上5質量%以下とした。更に好ましい範囲を、2質量%以上4質量%以下とした。
(Alの添加量の実験)
続いて、AlNを30質量%、NHClを4質量%、Yを2質量%に固定し、Alの添加量が異なるAl−AlN−NHCl−Y−Alからなる複数の原料を調製し、各原料を用いて、AlNウィスカーの生成量を測定した。その実験結果が以下の表4に示されている。
表4に示すように、Alの添加量を0.5質量%〜2質量%の範囲とすることで、300mg以上のAlNウィスカーを得ることができるとわかった。Alの添加量を2.5質量%とすると、自己伝播せず、適切にAlNウィスカーを得ることはできなかった。
表4により、Alの添加量の好ましい範囲を、0.2質量%以上2質量%以下とした。またより好ましい範囲を、0.5質量%以上1.5質量%以下とした。
(XRD分析結果)
続いて、本実施例により得られたAlNウィスカーを、XRD(X−Ray Diffraction)分析した。ここで分析対象のAlNウィスカーは、原料を、Al−AlN(30質量%)−NHCl(4質量%)−Y(2質量%)−Al(1質量%)とし、燃焼合成炉のガス圧を0.95MPaとして得られたものである。XRD分析結果を図4に示す。
XRD分析により調べた結果、生成物の殆どがAlN組成であり、不純物(炭化物、Y、Al)は検出されなかった。また僅かに未反応Alを含んでいたが、800〜1000℃の窒素雰囲気下で1時間程度の熱処理を行うことにより、未反応AlはAlNとなり、未反応Alを残さず全てAlNの生成に用いることが出来る。
(走査電子顕微鏡画像)
図5は、走査型電子顕微鏡により撮像した画像を示す写真である。図5に示すように、本実施例(図4の実験で使用したものと同じ)で生成されたAlNウィスカーは、結晶の方向性のある従来技術で生成されたAlNウィスカーとは異なる特徴を有することがわかった。すなわち、図5に示すように、AlNウィスカーの結晶成長の方向はランダムであった。そして、AlNウィスカーを層状に生成することができた。
本発明にて生成されるAlNウィスカーは、結晶成長の方向がランダムな繊維状であり、樹脂封止材に使用される高熱伝導フィラー等には有用である。また。AlNウィスカーは層状にて生成できるため、型抜きや裁断により任意形状のAlNウィスカーシートを得ることができる。AlNウィスカーシートを、樹脂含浸による高熱伝導複合体や、耐熱フィルター、触媒担体材等に好ましく適用できる。
1 黒鉛坩堝
2 AlN敷粉
3 原料
4 カーボンフォイル
5 カーボンフェルト蓋
6 合成体
7 AlNウィスカー層
8 AlNウィスカーシート

Claims (8)

  1. 窒素雰囲気下にて、Alを含有した原料から、AlNウィスカーを、燃焼合成反応により生成することを特徴とするAlNウィスカーの製造方法。
  2. 前記原料の合成体表層に、前記AlNウィスカーを層状に生成させることを特徴とする請求項1に記載のAlNウィスカーの製造方法。
  3. 前記原料に、NHClを含有し、NHClの分解ガスを排出させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のAlNウィスカーの製造方法。
  4. 前記原料に、NHClを、0.5質量%以上5質量%以下、含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のAlNウィスカーの製造方法。
  5. 前記原料に、希釈材としてのAlNを、10質量%以上40質量%以下、含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のAlNウィスカーの製造方法。
  6. 前記原料に、Yを、0.5質量%以上5質量%以下、含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のAlNウィスカーの製造方法。
  7. 前記原料に、Alを、0.2質量%以上2質量%以下、含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のAlNウィスカーの製造方法。
  8. 結晶成長の方向がランダムであることを特徴とするAlNウィスカー。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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