JP2017145681A - 擁壁及びその構築方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】破壊的な地震や豪雨に対する擁壁の耐性を高める。
【解決手段】
左右に並ぶ各2つの擁壁用ブロック20どうしの間の側部空所S2に、次の要件を満たす補強材30Aを設置する。
[ア]補強材30Aは、左右長さが側部空所S2の左右長さの8割以上であるか、前後長さが側部空所S2の前後長さの8割以上である。
[イ]補強材30Aは、平面断面視、正面断面視又は側面断面視の少なくともいずれか一つの断面視で、砕石Rを環状に、その環の内側の断面積が0.01〜0.5m2になるように囲んで拘束しており、該環に直交する方向の補強材30Aの長さは100mm以上である。
[ウ]補強材30Aは、前記砕石Rを拘束した状態で、弾性的に撓み又は捩れることができる。
【選択図】図1
【解決手段】
左右に並ぶ各2つの擁壁用ブロック20どうしの間の側部空所S2に、次の要件を満たす補強材30Aを設置する。
[ア]補強材30Aは、左右長さが側部空所S2の左右長さの8割以上であるか、前後長さが側部空所S2の前後長さの8割以上である。
[イ]補強材30Aは、平面断面視、正面断面視又は側面断面視の少なくともいずれか一つの断面視で、砕石Rを環状に、その環の内側の断面積が0.01〜0.5m2になるように囲んで拘束しており、該環に直交する方向の補強材30Aの長さは100mm以上である。
[ウ]補強材30Aは、前記砕石Rを拘束した状態で、弾性的に撓み又は捩れることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、法面を補強する擁壁、及びその構築方法に関する。
擁壁の中には、図16に示す従来例1の擁壁1がある(特許文献1)。この擁壁1は、上下に開口した箱型の擁壁用ブロック92が、左右に複数並べられている。そして、各擁壁用ブロック92の内側にある中央空所S1や、各2つの擁壁用ブロック92どうしの間にある側部空所S2等に、砕石Rが充填されている。
この擁壁1によれば、砕石Rどうしのインタロッキング効果により高い強度が得られるが、それでもなお、万が一の破壊的な地震や大量の浸水によっては、擁壁に変状が生じてしまうおそれがある。
具体的には、破壊的な地震の際にも中央空所S1に充填されている砕石Rは動きにくいが、側部空所S2に充填されている砕石Rは、擁壁用ブロック92どうしの動きが異なる場合等には、砕石Rどうしの噛み合いの限度を超えることで動き易くになるおそれがある。そのため、擁壁用ブロック92が上下左右前後に大きく揺れて擁壁用ブロック92どうしが衝突するおそれがある。
また、従来例1では、中央空所S1や側部空所S2に単粒度の砕石Rを充填するため、排水性能は非常に高いが、それでもなお、例えば、擁壁90の背面からの突然の湧水や、擁壁90の上端にある道路面等からの流水により、擁壁90内に突然大量の水が侵入した場合、その水を直ちに排水できない場合には、擁壁90に変状を招くおそれがある。
そこで、万が一の破壊的な地震や大量の浸水によっても、擁壁を変状し難くするとともに、修復し易くすることを、本発明の目的とする
すなわち、例えば、生活道路等を維持する目的の擁壁が地震や豪雨などで被災し崩壊することで、道路の役割とする地域の生活が維持できなる最悪事態を想定した場合、擁壁の機能を喪失しても最小限の交通確保ができることが重要となる。また、擁壁の修復が経済的で且つ迅速にできる機能も求められる。つまり、フェイルセーフ的な構造が擁壁にも求められる時代になっている。よって、本発明は、フェイルセーフ的な構造を目的にしたもので、破壊的な災害(地震や豪雨等)に対して、擁壁の抵抗力を高めるとともに、修復性能も高めることで、より安全でリユース機能も充実した擁壁を実現することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の擁壁は次のように構成されている。すなわち、法面の前方に起立する表面板と、表面板の後方に離間して起立する控板と、表面板と控板との左右中間部どうしを連結した繋ぎ板とを含む擁壁用ブロックが左右に複数並べられている。そして、左右に並ぶ2つの擁壁用ブロックにおける2つの表面板と、2つの控板と、左側の擁壁用ブロックの繋ぎ板と、右側の擁壁用ブロックの繋ぎ板との間に、側部空所が形成されている、その側部空所を含む、表面板と法面との間の空所に砕石が充填されている。この擁壁において、側部空所に、次の[ア]、[イ]及び[ウ]を満たす補強材が設置されていることを特徴とする。
[ア]補強材は、左右長さが側部空所の左右長さの8割以上であるか、又は、前後長さが側部空所の前後長さの8割以上であるか、のいずれか一方又は両方である。
但し、擁壁用ブロックを湾曲させて並べた場合であっても、仮に擁壁用ブロックを左右に直線状に並べた状態での側部空所の寸法に対して、上記要件を満たせば、本要件の範囲内である。
[イ]補強材は、平面断面視、正面断面視又は側面断面視の少なくともいずれか一つの断面視で、砕石を環状に、その環の内側の断面積が0.01〜0.5m2になるように囲んで拘束しており、該環に直交する方向の補強材の長さは100mm以上である。
ここで、環の内側の断面積が0.01m2以上で、該環に直交する方向の長さが100mm以上なのは、それらに満たないと、充分な量の砕石をまとめて拘束できないからである。他方、環の内側の断面積が0.5m2以下なのは、それを超えると、環の内側の砕石を充分強く拘束できないからである。
[ウ]補強材は、前記砕石を拘束した状態で、弾性的に撓み又は捩れることができる。
但し、擁壁用ブロックを湾曲させて並べた場合であっても、仮に擁壁用ブロックを左右に直線状に並べた状態での側部空所の寸法に対して、上記要件を満たせば、本要件の範囲内である。
[イ]補強材は、平面断面視、正面断面視又は側面断面視の少なくともいずれか一つの断面視で、砕石を環状に、その環の内側の断面積が0.01〜0.5m2になるように囲んで拘束しており、該環に直交する方向の補強材の長さは100mm以上である。
ここで、環の内側の断面積が0.01m2以上で、該環に直交する方向の長さが100mm以上なのは、それらに満たないと、充分な量の砕石をまとめて拘束できないからである。他方、環の内側の断面積が0.5m2以下なのは、それを超えると、環の内側の砕石を充分強く拘束できないからである。
[ウ]補強材は、前記砕石を拘束した状態で、弾性的に撓み又は捩れることができる。
本発明によれば、砕石を囲んで拘束する補強材があるため、その内側(環内)の砕石どうしの噛み合わせ(せん断抵抗)は、破壊的な地震や大量の浸水等によっても低下し難くなる。そのため、該補強材及びその内側の砕石は、水平方向に延びる(前記8割以上延びる)一塊として粘り強さを発揮する。また、該補強材やその内側の砕石により、水平方向への荷重分散効果が高くなる。また、補強材は、弾性的に撓み又は捩れることができるため、無理な力が加わった際には、フレキシブルなばね効果や捩れ抑制効果も発揮する。
そのため、破壊的な地震により砕石や擁壁用ブロックが大きく揺すられた際や、大量の浸水により補強材の外側の砕石どうしの噛み合いが緩んだ際には、補強材及びその内側の砕石は、外側の砕石から様々な荷重を受けるが、一塊の抵抗体として、荷重を水平方向に分散しながら、また、ばね効果や捩れ抑制効果も発揮しながら、砕石や擁壁用ブロックの移動変状を効率的に防止又は抑制する。
そのため、破壊的な地震や浸水によっても、擁壁が変状し難くなる。そのため、修復もし易くなる。よって、破壊的な災害に対しての擁壁の抵抗力が向上するとともに、修復性能も高まる。そのため、より安全でリユース機能も充実した擁壁になる。
補強材の左右長さは、上記以外は特に限定されないが、左右の擁壁用ブロックが衝突するのを防止又は緩和することができる点で、補強材は、左端が左側の擁壁用ブロックの繋ぎ板に当接し、右端が右側の擁壁用ブロックの繋ぎ板に当接していることが好ましい。よって、補強材の左右長さは、側部空所の左右長さと実質的に同一であることが好ましい。
補強材の前後長さは、上記以外は特に限定されないが、左右2つの擁壁用ブロックが前後にずれるのを防止又は抑制することができる点で、補強材は、前端が左右2つの表面板に当接し、後端が左右2つの控板に当接していることが好ましい。よって、補強材の前後長さは、側部空所の前後長さと実質的に同一であることが好ましい。他方、このように補強材を設置すると、擁壁用ブロックを湾曲させて並べ難くなるので、擁壁用ブロックを湾曲させて並べる場合には、補強材の前後長さは、側部空所の前後長さよりも短いことが好ましい。
より具体的には、次のいずれかの態様であることが好ましい。
[1]補強材は、左右長さが側部空所の左右長さと実質的に同一であり、前後長さが側部空所の前後長さと実質的に同一である態様。
[2]補強材は、左右長さが側部空所の左右長さと実質的に同一であり、前後長さが側部空所の前後長さの2割以上8割未満である態様。
[3]補強材は、左右長さが側部空所の左右長さの2割以上8割未満であり、前後長さが側部空所の前後長さと実質的に同一である態様。
[1]補強材は、左右長さが側部空所の左右長さと実質的に同一であり、前後長さが側部空所の前後長さと実質的に同一である態様。
[2]補強材は、左右長さが側部空所の左右長さと実質的に同一であり、前後長さが側部空所の前後長さの2割以上8割未満である態様。
[3]補強材は、左右長さが側部空所の左右長さの2割以上8割未満であり、前後長さが側部空所の前後長さと実質的に同一である態様。
補強材による砕石の拘束は、特に限定されないが、次のいずれかの態様であることが好ましい。
[1]補強材は、砕石を上下左右前後の全方から囲んで拘束している態様。砕石を強固に拘束できるからである。
この態様には、補強材が直方体の箱形状をなしている例、補強材が両端が閉鎖された円筒形状をなしている例、補強材が両端が開放された円筒形状をなしている第1部材と該両端を閉鎖する部分を含む袋状の第2部材とからなる例等が含まれる。
[2]補強材は、砕石を左右前後の側方から囲んで拘束する複数の板部が平面視で格子状に組まれた格子構造をしており、少なくとも上方からは、砕石を囲んでいない態様。格子構造にすることで、上方から砕石を囲まなくても、砕石を充分強固に拘束できるからである。そして、上方から囲まないことで、砕石を充填し易くなるからである。
上記「格子状」は、特定の格子に限定されるものではなく、直交又は斜交(非直交)の四角格子状、三角格子状、ハニカム格子状等を例示できる。また、四角格子状は、各板部が、擁壁用ブロックの表面板、控板又は繋ぎ板に対して、平行であるものでもよいし、筋交いのように傾斜しているものでもよい。
この態様では、補強材に格子の複数の目が形成され、各目が平面断面視で砕石を環状に囲んで拘束する。各環の内側の断面積は、上記の範囲であるが、0.025〜0.2m2程度が好ましい。0.025m2未満では格子構造が細かくなりすぎ、0.2m2を超えると、砕石を上方から囲まない分、拘束力が弱くなるからである。環の数は、特に限定されないが、上記の各環の内側の断面積を好ましい範囲とするには、4〜20が好ましく、6〜14がより好ましい。
[1]補強材は、砕石を上下左右前後の全方から囲んで拘束している態様。砕石を強固に拘束できるからである。
この態様には、補強材が直方体の箱形状をなしている例、補強材が両端が閉鎖された円筒形状をなしている例、補強材が両端が開放された円筒形状をなしている第1部材と該両端を閉鎖する部分を含む袋状の第2部材とからなる例等が含まれる。
[2]補強材は、砕石を左右前後の側方から囲んで拘束する複数の板部が平面視で格子状に組まれた格子構造をしており、少なくとも上方からは、砕石を囲んでいない態様。格子構造にすることで、上方から砕石を囲まなくても、砕石を充分強固に拘束できるからである。そして、上方から囲まないことで、砕石を充填し易くなるからである。
上記「格子状」は、特定の格子に限定されるものではなく、直交又は斜交(非直交)の四角格子状、三角格子状、ハニカム格子状等を例示できる。また、四角格子状は、各板部が、擁壁用ブロックの表面板、控板又は繋ぎ板に対して、平行であるものでもよいし、筋交いのように傾斜しているものでもよい。
この態様では、補強材に格子の複数の目が形成され、各目が平面断面視で砕石を環状に囲んで拘束する。各環の内側の断面積は、上記の範囲であるが、0.025〜0.2m2程度が好ましい。0.025m2未満では格子構造が細かくなりすぎ、0.2m2を超えると、砕石を上方から囲まない分、拘束力が弱くなるからである。環の数は、特に限定されないが、上記の各環の内側の断面積を好ましい範囲とするには、4〜20が好ましく、6〜14がより好ましい。
本発明の擁壁の構築方法は、特に限定されないが、次の態様を例示する。すなわち、擁壁用ブロックを並べる。その並べた擁壁用ブロックの側部空所に砕石を途中まで充填する。その充填した砕石の上に、補強材及びその内側の砕石を設置する。その設置した補強材に、その外側に配するべき砕石を被せる。
側部空所は、左右両端部にまで砕石が充填されていてもよいが、次のように構成されていることが好ましい。すなわち、前記環は、側部空所の左右中間部にあり、前記環よりも左方及び右方には、補強材と擁壁用ブロックとにより平面視で環状に囲まれている区画があり、その区画にコンクリートが充填されていることが好ましい。このようにすれば、補強材は、左右両側のより広い範囲で砕石を介さずに直接的に左右の擁壁用ブロックに当接してそれらの動きを抑止できるため、擁壁用ブロックどうしの接触による損傷をより強固に防止できる。
この擁壁の構築方法は、特に限定されないが、次の態様を例示する。すなわち、擁壁用ブロックを並べる。その並べた擁壁用ブロックの側部空所に砕石を途中まで充填する。その充填した砕石の上に、補強材を設置する。その後、側部空所の左右両端部に前記コンクリートを打設すると共に、補強材の内側に砕石を充填する。その後、補強材に、その外側に配するべき砕石を被せる。
次に本発明の実施例を図面を参照に説明する。但し、実施例に記載の寸法は例示であり、適宜変更できる。また、本発明は実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
図1〜図3に示す実施例1の擁壁1は、法面Gに沿って階段状に積み上げられた複数の擁壁段Zからなる。各擁壁段Zは、図1等に示すように、複数の擁壁用ブロック20と、無数の砕石Rと、複数の補強材30Aとを含み構成されている。
[擁壁用ブロック20]
各擁壁用ブロック20は、表面板21と控板27と2つの繋ぎ板24とを含み、コンクリートでプレキャストされている。この擁壁用ブロック20の重さは、約1300kgである。この擁壁用ブロック20は、左右方向に直線状に並べられている。
各擁壁用ブロック20は、表面板21と控板27と2つの繋ぎ板24とを含み、コンクリートでプレキャストされている。この擁壁用ブロック20の重さは、約1300kgである。この擁壁用ブロック20は、左右方向に直線状に並べられている。
表面板21は、法面Gの前方に起立した長方形の板状部である。この表面板21は、左右長さが約2000mmで、上下長さが約1000mmで、前後厚さが約120mmである。この表面板21の表面には、例えば石垣模様、溝模様等の模様が設けられている。この表面板21の左右両側面の上下両端部には、凹部22が形成されている。左右に並ぶ各2つの擁壁用ブロック20の表面板21どうしは、左右に連なっている。そして、左右に隣接する表面板21の各2つの凹部22によって、スリットが形成されている。
控板27は、表面板21の後方に離間して起立した長方形の板状部である。この控板27は、左右長さが約1860mmで、上下長さが約500mmで、前後厚さが約120mmである。左右に並ぶ各2つの擁壁用ブロック20の控板27どうしは、左右に約140mm離間している。
左右の各繋ぎ板24は、表面板21と控板27との左右中間部どうしを連結した板状部である。各繋ぎ板24は、前後長さが約1000mmで、上下長さが約500mmで、左右厚さが約100mmである。但し、各繋ぎ板24の前部には、補強部25が上方に突出形成されており、該前部での上下長さは、該補強部25によって約900mmに増加されている。
[砕石R]
砕石Rは、30〜40mmの範囲内の大きさの砕石(いわゆる3号の単粒度砕石)であり、表面板21と法面Gとの間の空所Sに充填されている。前記空所Sは、中央空所S1と側部空所S2と後方空所S3とを含む。中央空所S1は、各擁壁用ブロック20の内側、すなわち、各1つの擁壁用ブロック20内の表面板21と控板27と左右2つの繋ぎ板24とで囲まれた部分に形成された空所である。また、側部空所S2は、左右に並ぶ各2つの擁壁用ブロック20どうしの間、すなわち、左右2つの表面板21と左右2つの控板27と左側の擁壁用ブロックの繋ぎ板24と右側の擁壁用ブロックの繋ぎ板24とで囲まれた部分に形成された空所である。この側部空所S2は、前後長さが約1000mmで、左右長さが約780mmである。また、後方空所S3は、控板27と法面Gとの間に形成された空所である。
砕石Rは、30〜40mmの範囲内の大きさの砕石(いわゆる3号の単粒度砕石)であり、表面板21と法面Gとの間の空所Sに充填されている。前記空所Sは、中央空所S1と側部空所S2と後方空所S3とを含む。中央空所S1は、各擁壁用ブロック20の内側、すなわち、各1つの擁壁用ブロック20内の表面板21と控板27と左右2つの繋ぎ板24とで囲まれた部分に形成された空所である。また、側部空所S2は、左右に並ぶ各2つの擁壁用ブロック20どうしの間、すなわち、左右2つの表面板21と左右2つの控板27と左側の擁壁用ブロックの繋ぎ板24と右側の擁壁用ブロックの繋ぎ板24とで囲まれた部分に形成された空所である。この側部空所S2は、前後長さが約1000mmで、左右長さが約780mmである。また、後方空所S3は、控板27と法面Gとの間に形成された空所である。
[補強材30A]
各補強材30Aは、水平方向(前後左右)に延びる板状範囲内の砕石Rを上下左右前後から囲む網状体である。この補強材30Aは、樹脂を原料に形成されている。この補強材30Aは、底面部31と前面部32と左面部33と右面部34と後面部35と天面部36とから構成される。天面部36は、左面部33の上端から左右内方(右方)に延びる左天面部36aと、右面部34の上端から左右内方(左方)に延びる右天面部36bとからなり、開閉可能に構成されている。そして、各補強材30Aの内側には、砕石Rが充填されている。そして、左天面部36aの右端と、右天面部36bの左端とが、金具M(Cリング等の鉄線)で結合(緊結)されている。
各補強材30Aは、水平方向(前後左右)に延びる板状範囲内の砕石Rを上下左右前後から囲む網状体である。この補強材30Aは、樹脂を原料に形成されている。この補強材30Aは、底面部31と前面部32と左面部33と右面部34と後面部35と天面部36とから構成される。天面部36は、左面部33の上端から左右内方(右方)に延びる左天面部36aと、右面部34の上端から左右内方(左方)に延びる右天面部36bとからなり、開閉可能に構成されている。そして、各補強材30Aの内側には、砕石Rが充填されている。そして、左天面部36aの右端と、右天面部36bの左端とが、金具M(Cリング等の鉄線)で結合(緊結)されている。
この補強材30Aは、擁壁用ブロック20と隙間なく接するように設置されている。具体的には、補強材30Aの寸法は、左右長さが側部空所S2の左右長さ(約780mm)と実質的に同一であり、前後長さが側部空所S2の前後長さ(約1000mm)と実質的に同一である。そのため、前面部32が左右2つの表面板21に当接し、後面部35が左右2つの控板27に当接し、左面部33が左側の擁壁用ブロックの繋ぎ板24に当接し、右面部34が右側の擁壁用ブロックの繋ぎ板24に当接している。
この補強材30Aの上下長さは、控板27の上下長さの約半分(約250mm)である。この補強材30Aは、下端(底面部31)の高さが、控板27の上下中央の高さ(控板27の下端の250mm上方)に揃えられている。そして、上端(天面部36)の高さが、控板27の上端の高さに揃えられている。この補強材30A及びその内側の砕石Rは、外側の砕石Rに上下から挟まれている。
この補強材30Aは、正面断面視で砕石Rを環状に、その環の内側の断面積が約0.195m2(0.78m×0.25m)になるように囲んで拘束している。そして、該環に直交する方向の補強材30Aの長さ(すなわち前後長さ)は、上記の通り約1000mmである。
この補強材30Aの網目の大きさは、図3(c)に示すように、砕石Rが突出可能な大きさ、よって、該網目を通して砕石Rが噛み合い得る大きさ、かつ、充填した砕石Rが網目から抜け出さない大きさになっている。詳しくは、該網目の大きさは、砕石Rの平均的な大きさ(約35mm)の約40%にあたる、約14mmとなっている。
[擁壁の構築方法]
以上に示した擁壁1は、次のように構築する。まず、一番下の擁壁段Zを構築する。次に、その擁壁段Zの上に次の擁壁段Zを法面Gに沿って後退させて構築する。以下同様にそれを繰り返すことで複数の擁壁段Z,Z・・を法面Gに沿って階段状に積み上げる。このとき、各擁壁段Zは、次のようにして構築する。
以上に示した擁壁1は、次のように構築する。まず、一番下の擁壁段Zを構築する。次に、その擁壁段Zの上に次の擁壁段Zを法面Gに沿って後退させて構築する。以下同様にそれを繰り返すことで複数の擁壁段Z,Z・・を法面Gに沿って階段状に積み上げる。このとき、各擁壁段Zは、次のようにして構築する。
まず、砕石Rの上に、擁壁用ブロック20を左右に連ねて並べる。なお、ここでいう砕石Rは、構築する擁壁段Zが一番下の段の場合は、法面Gの手前に予め溝を設けて敷いておく砕石Rであり、それ以外の擁壁段Zの場合は、一つ下の擁壁段Zの砕石Rである。
次に、各空所S1,S2,S3に砕石Rを、控板27の高さの半分程度まで充填する。具体的には、砕石Rを約25cm充填して締め固めた後、さらに砕石Rを控板27の下端よりも250mm程度上まで充填して締め固めを行う。次に、側部空所S2の砕石Rの上に、補強材30Aをその天面部36を開いた状態で載置する。このとき、補強材30Aの上端は、控板27の上端に揃える。
次に、各空所S1,S2,S3に砕石Rを、控板27の上端の高さ(500mm)まで充填する。このとき、側部空所S2においては、補強材30の内側に、砕石Rを層状に詰めながら、中央空所S1と同様に締め固めを充分に行うことで、該内側に砕石Rを充填する。それにより、擁壁用ブロック20の内壁と補強材30Aの外面とに強い摩擦を発生させて、左右の擁壁用ブロック20と補強材30とに、フレキシブルな剛体性と一体性とを生じさせる。
次に、補強材30の天面部36を閉じて金具Mで結合(緊結)する。それにより、補強材30とその内側の砕石Rとが一体化する。次に、空所Sにさらに砕石Rを、表面板21の上端の高さ(1000mm)まで充填する。
本実施例1によれば、次の[a]〜[d]の効果を得ることができる。
[a]砕石Rを囲んで拘束する補強材30Aがあるため、その内側の砕石Rどうしの噛み合わせ(せん断抵抗)は、破壊的な地震や大量の浸水等によっても低下し難くなる。そのため、補強材30A及びその内側の砕石Rは、水平方向に延びる一塊として粘り強さを発揮する。また、該補強材30Aやその内側の砕石Rにより、水平方向への荷重分散効果が高くなる。また、補強材30Aは、樹脂であるため、引っ張り強度が高く、また、弾性的に撓み又は捩れることができる。そのため、無理な力が加わった際には、フレキシブルなばね効果や捩れ抑制効果を発揮する。
[a]砕石Rを囲んで拘束する補強材30Aがあるため、その内側の砕石Rどうしの噛み合わせ(せん断抵抗)は、破壊的な地震や大量の浸水等によっても低下し難くなる。そのため、補強材30A及びその内側の砕石Rは、水平方向に延びる一塊として粘り強さを発揮する。また、該補強材30Aやその内側の砕石Rにより、水平方向への荷重分散効果が高くなる。また、補強材30Aは、樹脂であるため、引っ張り強度が高く、また、弾性的に撓み又は捩れることができる。そのため、無理な力が加わった際には、フレキシブルなばね効果や捩れ抑制効果を発揮する。
そのため、破壊的な地震加速度を受けて擁壁用ブロック20が上下左右前後に大きく不規則に揺すられた際や、大量の浸水により補強材30Aの外側の砕石Rどうしの噛み合いが緩んだ際には、補強材30A及びその内側の砕石Rは、外側の砕石Rから様々な荷重を受けるが、一塊の抵抗体として、荷重を水平方向に分散しながら、また、ばね効果や捩れ抑制効果も発揮しながら、砕石Rや擁壁用ブロック20の移動変状を効率的に防止又は抑制する。そのため、破壊的な地震や浸水によっても、擁壁が変状し難くなる。
[b]補強材30Aは、左端は左側の擁壁用ブロックの繋ぎ板24に当接し、右端は右側の擁壁用ブロックの繋ぎ板24に当接しているため、地震や浸水により左右方向に大きな荷重を受けた際には、左右の擁壁用ブロック20どうしの衝突及びそれによる破損を防止又は緩和する。よって、この点でも、擁壁が変状し難くなる。
[c]補強材30Aは、前端が2つの表面板21に当接し、後端が2つの控板27に当接しているため、地震の振動や背面からの土圧荷重や浸水により、前後方向に大きな荷重を受けた際には、左右の擁壁用ブロック20が前後に離間変状するのを防止又は緩和する。よって、左右の擁壁用ブロック20の一体性を高めることができる。よって、この点でも、擁壁が変状し難くなる。
[d]補強材30Aは、後方からの荷重を直接受けない側部空所S2内に設置されているため、側部空所S2よりも上方又は下方で砕石Rが控板27よりも後方の砕石Rと噛み合うのを阻害しない。そのため、補強材30Aは、該噛み合いによりフレキシブル剛体として一体化する機能を妨げない。
図4,図5に示す実施例2の擁壁2は、実施例1と比較して次の点で相違し、その他の点で同様である。すなわち、実施例2の擁壁2は、擁壁用ブロック20を湾曲させて並べる湾曲部の擁壁である。その湾曲部は、図4(a)に示すように、左右に進むに従い後方に曲がっていく内曲部であってもよいし、図4(b)に示すように、左右に進むに従い前方に曲がっていく外曲部であってもよい。但し、擁壁用ブロック20を反転して設置する場合は補強材30A,30Bを使用しない。
補強材30Bは、左右に延びる直方体の棒状範囲内の砕石Rを上下左右前後から囲む。この補強材30Bの左右長さ及び上下長さは、実施例1の補強材30Aと同じく、それぞれ約780mm及び約250mmであり、前後長さが約400mmである。この補強材30Bは、前面部32、左面部33及び右面部34は、実施例1と同様、それぞれ、左右2つの表面板21、左側の擁壁用ブロックの繋ぎ板24、右側の擁壁用ブロックの繋ぎ板24に当接しているが、後面部35は、実施例1と異なり、控板27から前方に離間している。
この補強材30Bは、側面断面視で砕石Rを環状に、その環の内側の断面積が約0.1m2(0.4m×0.25m)になるように囲んで拘束している。そして、該環に直交する方向の補強材30Bの長さ(すなわち左右長さ)は、上記の通り約780mmである。
本実施例2によれば、上記の[a],[b],[d]の効果に加えて、次の[e]の効果を得ることができる。
[e]補強材30Bの前後長さ(400mm)が、側部空所S2の前後長さ(1000mm)よりも短いため、側部空所S2が歪んだ形状になる湾曲部においても、問題なく設置できる。
[e]補強材30Bの前後長さ(400mm)が、側部空所S2の前後長さ(1000mm)よりも短いため、側部空所S2が歪んだ形状になる湾曲部においても、問題なく設置できる。
図6に示す実施例3の擁壁3は、実施例2と比較して、次の点で相違し、その他の点で同様である。すなわち、本実施例3の補強材30Cは、左右に延びる円柱形の棒状範囲内の砕石Rを上下左右前後から囲む。この補強材30Cは、筒部38と2つの蓋部39とを含み構成されている。筒部38は、その長さ方向を左右方向にして設置される円筒形の網状体(樹脂)である。また、蓋部39は、筒部38の両端部を塞ぐ円形の網状体(樹脂)である。そして、筒部38の内側には、砕石Rが充填され、左右の蓋部39は筒部38の端部に金具で固定されている。それにより、この補強材30C及びその内側の砕石Rは、剛性を持つ棒袋状パイプとなっている。すなわち、本来、樹脂性の網状体である補強材30Cは軟らかいパイプであるが、その内側に砕石Rを詰めながら締め固めることで補強材30C及びその内側の砕石Rはフレキシブルで強い剛性を発揮する硬い棒状となる。
この補強材30Cは、表面板21の背面から200mm程度の間隔をとって設置する。それにより、表面板21と補強材30Cとの間に詰める砕石Rの締め固め転圧が充分行えるようにする。この補強材30Cは、直径が約300mmであり、左右長さが側部空所S2の左右長さ(約780mm)と実質的に同一である。よって、左右の蓋部39は、左右の擁壁用ブロックの繋ぎ板24に当接している。
この補強材30Cは、側面断面視で砕石Rを環状に、その環の内側の断面積が約0.07m2(0.15m×0.15m×π)になるように囲んで拘束している。そして、該環に直交する方向の補強材30Cの長さ(すなわち左右長さ)は、上記の通り約780mmである。
本実施例3によれば、実施例2と同様に、上記の[a],[b],[d],[e]の効果が得られると伴に、[b]の効果がより高められる。すなわち、断面形状を円形にすることで、同面積の矩形等にする場合に比べて強い剛性が得られる。そのため、破壊的な地震加速度によって擁壁用ブロック20が強く揺すられた際、擁壁用ブロック20どうしの衝撃防止効果が非常に高くなる。
図7に示す実施例4の擁壁4は、実施例3と比較して、次の点で相違し、その他の点で同様である。すなわち、本実施例4の補強材30Cは、網目を備えないパイプ(無数の孔を備える有孔管又は孔を備えない無孔管)状の筒部48(樹脂製)と、網目を備えない2つのキャップ49(樹脂製)とからなる。この補強材30Cは、実施例3の補強材30Cと同じタイプ(外形及び寸法)であるため、同じ符号番号「30C」を付している。この補強材30Cは次の手順で設置する。
まず、図7(a)に示すように、直径が300mmで長さが5m(定尺)のパイブ材Pを用意する。次に、そのパイプ材Pを、図7(b)に示すように、必要な長さ(780mm弱)に切り、筒部48を形成する。この筒部48の片側に、図7(c)に示すように、キャップ49を回転させながら取り付ける。次に、図7(d)に示すように、キャップ49を取り付けた側を下側にして、筒部48を立ている。次に図7(e)に示すように、その筒部48の内側に砕石Rを投入する。そして、その砕石Rを棒Xでつき固める。次に、図7(f)に示すように、砕石Rが筒部48に詰まったら、上端にもキャップ49を取り付ける。これにより、補強材30Cへの砕石Rの充填が完成する。その補強材30Cを、図7(g)に示すように、側部空所S2に設置する。
本実施例4によっても、実施例3と同様に、上記の[a],[b],[d],[e]の効果が得られる。
図8に示す実施例5の擁壁5は、実施例3と比較して、次の点で相違し、その他の点で同様である。すなわち、本実施例5の補強材30Dは、直径が約500mmである。そして、下端は控板27の下端の高さに揃えられ、上端は控板27の上端の高さに揃えられている。この補強材30Dは、側面断面視で砕石Rを環状に、その環の内側の断面積が約0.196m2(0.25m×0.25m×π)になるように囲んで拘束している。本実施例5によっても、実施例3と同様に、上記の[a],[b],[d],[e]の効果が得られる。
図9に示す実施例6の擁壁6は、実施例5と比較して、次の点で相違し、その他の点で同様である。すなわち、本実施例6の補強材30Dは、筒部38とその内側に配された袋41とからなり、蓋部39は備えていない。筒部38は、実施例5のものと同様、樹脂製の網状体であるが、その目合いは実施例5のものよりも大きくなっている。また、袋41は、不織布を素材とした袋である。この補強材30Dは、実施例5の補強材30Dと同じタイプ(外形及び寸法)であるため、同じ符号番号「30D」を付している。本実施例6の補強材30Dは次の手順で設置する。
まず、図9(a)に示すように、筒部38を立てて置く。次に、その筒部38の内側に、図9(b)に示すように、袋41を、投入口41aを上にして設置する。次に、図9(c)に示すように、投入口41aから袋41の内側に砕石Rを投入する。次に、図9(d)に示すように、投入口41aを紐42で閉じる。これにより、補強材30Dへの砕石Rの充填が完成する。その補強材30Dを、図9(e)に示すように、側部空所S2に設置する。
本実施例6によっても、実施例5と同様に、上記の[a],[b],[d],[e]の効果が得られる。
図10に示す実施例7の擁壁7は、実施例3と比較して、次の点で相違しその他の点で同様である。すなわち、本実施例7の補強材30Eは、前後に延びる円柱形の棒状範囲内の砕石Rを上下左右前後から囲む。この補強材30Eは、実施例3と同様、筒部38と2つの蓋部39とを含み構成されているが、実施例3とは違い、長さ方向を擁壁用ブロック20の前後方向にして設置される。この補強材30Eは、直径は実施例3の補強材30Cと同じ約300mmであるが、前後長さは、実施例3と異なり、約1000mm、すなわち、側部空所S2の前後長さと実質的に同一である。そして、この補強材30Eは、一端が左右2つの表面板21に当接し、他端が左右2つの控板27に当接している。
この補強材30Eは、正面断面視で砕石Rを環状に、その環の内側の断面積が約0.07m2(0.15m×0.15m×π)になるように囲んで拘束している。そして、該環に直交する方向の補強材30Eの長さ(すなわち前後長さ)は、上記の通り約1000mmである。本実施例7によれば、上記の[a],[c],[d]の効果を得ることができる。
図11に示す実施例8の擁壁8は、実施例1と比較して、次の点で相違しその他の点で同様である。補強材30Fは、前後方向に延びる4枚の第一板部51と、左右方向に延びる5枚の第二板部52とを格子状に組んだ形の格子形状をしている。この補強材30Fは樹脂製である。そして、格子形状の各升目に、砕石Rが詰められている。この補強材30Fは、上方及び下方からは砕石Rを囲んでいない。
この補強材30Fは、左右長さが側部空所S2の左右長さ(約780mm)と実質的に同一であり、前後長さが側部空所S2の前後長さ(約1000mm)と実質的に同一である。詳しくは、各第一板部51は、前後長さが約1000mmで、上下幅が約200mmで、左右厚さが約10mmである。各第二板部52は、左右長さが約780mmで、上下幅が約200mmで、前後厚さが約10mmである。左端の第一板部51からの各第二板部52の左方への突出長、及び右端の第一板部51からの各第二板部52の右方への突出長は、いずれも約95mmである。左右の端の第一板部51とその一つ内側の第一板部51との左右間隔は、約140mmである。内側の2つの第一板部51どうしの左右間隔は、約270mmである。前端の第二板部52からの各第一板部51の前方への突出長、及び後端の第二板部52からの各第一板部51の後方への突出長は、いずれも約95mmである。前後に隣り合う各2つの第二板部52どうしの前後間隔は、いずれも約190mmである。なお、第一板部51の左右厚さ、第二板部52の前後厚さは、それぞれ10〜30mmの範囲で変更してもよい。
この補強材30Fの左右中央の各升目では、平面断面視で補強材30Fが砕石Rを環状に、その環の内側の断面積が約0.051m2(0.27m×0.19m)になるように囲んで拘束している。また、その一つ左方及び右方の各升目では、平面断面視で補強材30Fが砕石Rを環状に、その環の内側の断面積が約0.027m2(0.14m×0.19m)になるように囲んで拘束している。そして、該環に直交する方向の補強材30Fの長さ(すなわち上下幅)は、上記の通り約200mmである。
本実施例8によれば、実施例1と同様に、上記[a]〜[d]の効果を得ることができる。但し、次の点で、実施例1と相違している。
すなわち、樹脂を格子状に組んだ補強材30Fの各升目に砕石Rを充填し、かつ、擁壁用ブロック20間に詰めて一体としているため、補強材30Fは実施例1の補強材30Aに比べても、より強固である。よって、破壊的な地震時の水平力増加による擁壁用ブロック20の変状に対して、補強材30Fが塑性変形するのが、より強固に防止又は抑制される。すなわち、補強材30Fは、地震時の推力を受けた際に限界値を越えると、弾性変形から塑性変形に転じることで水平力が低下し、擁壁用ブロック20の水平方向の変化量が増加するおそれがあるが、それがより強固に防止又は抑制される。そして、擁壁用ブロック20どうしの衝突や移動変状に対する力に対して、補強材30Fが直接抵抗体として擁壁用ブロック20に接して力を分散緩和する。そのため、擁壁用ブロック20に大きなズレや変状が生じにくい。
また、格子状の補強材30Fは、実施例1の補強材30A等に比べて、強いばね構造(格子形状の各升目の内側に砕石Rを詰めることで捩れに強くなる)により、振動時の擁壁用ブロック20の個々の動きに対して抑止と緩和効果を発揮する。そのため、この点でも、擁壁用ブロック20に掛かる偏荷重や振動に対して、擁壁用ブロック20どうしの大きなズレや変形を生じさせない抑止性を持つ。
よって、このように、擁壁用ブロック20を固定する作用は、実施例1〜7に比べても、高くなっている。よって、補強材30Fは、経済的な部分では実施例1〜7に劣るが、振動による衝撃防止や擁壁用ブロック20の変状防止に対しては、勝るとも劣らない効果がある。
図12に示す実施例9の擁壁9は、実施例1と比較して、次の点で相違しその他の点で同様である。補強材30Gは、前後方向に延びる3枚の第一板部51と、左右方向に延びる6枚の第二板部52とを格子状のに組んだ形の格子形状をしている。そして、前端の第二板部52と、左端の第一板部51と、後端の第二板部52と、右端の第一板部51とで、四角形のフレームを構成している。このフレームが、擁壁用ブロック20に当接している。そして、この補強材30Gの底部には、前後方向に延びる複数本の桟53が設けられている。よって、この補強材30Gは、上方からは砕石Rを囲んでいないが、下方からは砕石Rを囲んでいる。
この補強材30Gの各部の寸法は次の通りである。各第一板部51及び各第二板部52の寸法は実施例8と同様である。左右に隣り合う各2つの第一板部51どうしの左右間隔は、いずれも約375mmである。前後に隣り合う各2つの第二板部52どうしの前後間隔は、いずれも約188mmである。この補強材30Gの各升目では、平面断面視で補強材30Gが砕石Rを環状に、その環の内側の断面積が約0.07m2(0.375m×0.188m)になるように囲んで拘束している。本実施例9でも実施例8と同様に、上記の[a]〜[d]の効果が得られる。
図13に示す実施例10の擁壁10は、実施例9と比較して、次の点で相違しその他の点で同様である。補強材30Hは、底部に複数本の桟53を備えていない。よって、この補強材30Hは、上方及び下方からは砕石Rを囲んでいない。本実施例10でも実施例9と同様に、上記の[a]〜[d]の効果が得られる。
なお、実施例8〜10は、補強材30F〜Hの格子形状を、第一板部51が前後方向に対して斜めに延び、第二板部52が左右方向に対して斜めに延びる、斜め模様の筋交い形状に変更して実施してもよい。
図14に示す実施例11の擁壁11は、実施例8と比較して、次の点で相違しその他の点で同様である。実施例8では、補強材30Fの最も左側の第一板部51と左側の擁壁用ブロック20とにより平面視で環状に囲まれている左端区画、及び補強材30Fの最も右側の第一板部51と右側の擁壁用ブロック20とにより平面視で環状に囲まれている右端区画にも、砕石Rが充填されているが、本実施例では、該左端区画d1及び右端区画d2には、砕石Rが充填されることなく、代わりにコンクリートCが充填されている。なお、左端区画d1は、5枚の第二板部52の左端部により6つの空間に分割されており、右端区画d2は、5枚の第二板部52の右端部により6つの空間に分割されている。
このコンクリートCを打設する作業は、側部空所S2に控板27の高さの半分(250mm)程度にまで充填された砕石Rの上に補強材30Fを載置した後に、左端区画d1及び右端区画d2にコンクリートCを打設することで行う。その後に、各空所S1,S2,S3に砕石Rを、表面板21の上端の高さ(1000mm)まで充填する。
本実施例11によれば、実施例8と同様の効果が得られるのに加え、次の課題を解決できる。すなわち、実施例8の擁壁8は、上記の通り非常に強固なものではあるが、それでもなお、破壊的な地震加速度を受けた際には、側部空所S2内における左右の擁壁用ブロック20に接する左端区画や右端区画内の砕石Rが万が一移動する可能性があり、それにより、第二板部52の左右の端部が擁壁用ブロック20に強く接して破損することや、さらに左右の擁壁用ブロック20どうしが強く接して損傷することも考えられる。その点、本実施例11では、左端区画d1及び右端区画d2にコンクリートCを充填して補強材30Fと擁壁用ブロック20との隙間をなくすことで、第二板部52の左右の端部の破損を防止できる。さらに、補強材30Fは、その左右両端部全体にあるコンクリートCで砕石Rを介さずに直接的に左右の擁壁用ブロック20に当接してそれらの動きを抑止するため、擁壁用ブロック20どうしの接触による損傷をより強固に防止できる。また、該直接的に当接することで、格子状の補強材30Fのばね効果がより高まり、衝撃緩和や揺れの抑止効果もより高まる。
[変更例]
本発明は、上記実施例1〜11のうちの2つ以上を組み合わせて実施することもでき、例えば、所定の擁壁段には、実施例1〜11のうちのいずれか1つ実施例を採用し、それ以外の擁壁段には、別のいずれか1つの実施例を採用してもよい。より具体的には、例えば、図15(a)に示すように、1つおきの各擁壁段には実施例3(補強材30C)を採用し、それ以外の擁壁段には実施例5(補強材30D)を採用してもよい。また、図15(b)に示すように、いくつかの擁壁段には実施例3(補強材30C)を採用し、それ以外の段には実施例7(補強材30E)を採用してもよい。そして、このように複数のタイプの補強材を組み合わせて使用することで、擁壁全体をバランスよく補強することができ、大きな地震加速度や浸水等に対して擁壁全体が非常に高い変状抑止効果を発揮する。
本発明は、上記実施例1〜11のうちの2つ以上を組み合わせて実施することもでき、例えば、所定の擁壁段には、実施例1〜11のうちのいずれか1つ実施例を採用し、それ以外の擁壁段には、別のいずれか1つの実施例を採用してもよい。より具体的には、例えば、図15(a)に示すように、1つおきの各擁壁段には実施例3(補強材30C)を採用し、それ以外の擁壁段には実施例5(補強材30D)を採用してもよい。また、図15(b)に示すように、いくつかの擁壁段には実施例3(補強材30C)を採用し、それ以外の段には実施例7(補強材30E)を採用してもよい。そして、このように複数のタイプの補強材を組み合わせて使用することで、擁壁全体をバランスよく補強することができ、大きな地震加速度や浸水等に対して擁壁全体が非常に高い変状抑止効果を発揮する。
また、同じ擁壁段の中でも、実施例1〜11のうちの2つ以上を組み合わせて実施することができ、そうすることでも上記と同様の効果が得られる。
1 擁壁(実施例1)
2 擁壁(実施例2)
3 擁壁(実施例3)
4 擁壁(実施例4)
5 擁壁(実施例5)
6 擁壁(実施例6)
7 擁壁(実施例7)
8 擁壁(実施例8)
9 擁壁(実施例9)
10 擁壁(実施例10)
11 擁壁(実施例11)
20 擁壁用ブロック
21 表面板
24 繋ぎ板
27 控板
30A 補強材(実施例1)
30B 補強材(実施例2)
30C 補強材(実施例3,4)
30D 補強材(実施例5,6)
30E 補強材(実施例7)
30F 補強材(実施例8,11)
30G 補強材(実施例9)
30H 補強材(実施例10)
R 砕石
G 法面
S 空所
S2 側部空所
d1 左端区画
d2 右端区画
C コンクリート
2 擁壁(実施例2)
3 擁壁(実施例3)
4 擁壁(実施例4)
5 擁壁(実施例5)
6 擁壁(実施例6)
7 擁壁(実施例7)
8 擁壁(実施例8)
9 擁壁(実施例9)
10 擁壁(実施例10)
11 擁壁(実施例11)
20 擁壁用ブロック
21 表面板
24 繋ぎ板
27 控板
30A 補強材(実施例1)
30B 補強材(実施例2)
30C 補強材(実施例3,4)
30D 補強材(実施例5,6)
30E 補強材(実施例7)
30F 補強材(実施例8,11)
30G 補強材(実施例9)
30H 補強材(実施例10)
R 砕石
G 法面
S 空所
S2 側部空所
d1 左端区画
d2 右端区画
C コンクリート
Claims (9)
- 法面(G)の前方に起立する表面板(21)と、表面板の後方に離間して起立する控板(27)と、表面板(21)と控板(27)との左右中間部どうしを連結した繋ぎ板(24)とを含む擁壁用ブロック(20)が左右に複数並べられ、
左右に並ぶ2つの擁壁用ブロック(20)における2つの表面板(21)と、2つの控板(27)と、左側の擁壁用ブロックの繋ぎ板(24)と、右側の擁壁用ブロックの繋ぎ板(24)との間に、側部空所(S2)が形成され、
側部空所(S2)を含む、表面板(21)と法面(G)との間の空所(S)に砕石(R)が充填された擁壁において、
側部空所(S2)に、次の[ア]、[イ]及び[ウ]を満たす補強材(30A〜30H)が設置されていることを特徴とする擁壁。
[ア]補強材(30A〜30H)は、左右長さが側部空所(S2)の左右長さの8割以上であるか、又は、前後長さが側部空所(S2)の前後長さの8割以上であるか、のいずれか一方又は両方である。
[イ]補強材(30A〜30H)は、平面断面視、正面断面視又は側面断面視の少なくともいずれか一つの断面視で、砕石(R)を環状に、その環の内側の断面積が0.01〜0.5m2になるように囲んで拘束しており、該環に直交する方向の補強材(30A〜30H)の長さは100mm以上である。
[ウ]補強材(30A〜30H)は、前記砕石(R)を拘束した状態で、弾性的に撓み又は捩れることができる。 - 補強材(30A,30F〜30H)は、左右長さが側部空所(S2)の左右長さと実質的に同一であり、前後長さが側部空所(S2)の前後長さと実質的に同一である請求項1記載の擁壁。
- 補強材(30B〜30D)は、左右長さが側部空所(S2)の左右長さと実質的に同一であり、前後長さが側部空所(S2)の前後長さの2割以上8割未満である請求項1記載の擁壁。
- 補強材(30E)は、左右長さが側部空所(S2)の左右長さの2割以上8割未満であり、前後長さが側部空所(S2)の前後長さと実質的に同一である請求項1記載の擁壁。
- 補強材(30A〜30E)は、砕石(R)を上下左右前後の全方から囲んで拘束している請求項1〜4のいずれか一項に記載の擁壁。
- 補強材(30F〜30H)は、砕石(R)を左右前後の側方から囲んで拘束する複数の板部(51,52)が平面視で格子状に組まれた格子構造をしており、少なくとも上方からは、砕石(R)を囲んでいない請求項1〜4のいずれか一項に記載の擁壁。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の擁壁の構築方法であって、
擁壁用ブロック(20)を並べ、
その並べた擁壁用ブロック(20)の側部空所(S2)に砕石(R)を途中まで充填し、
その充填した砕石(R)の上に、補強材(30A〜30H)及びその内側の砕石(R)を設置し、
その設置した補強材(30A〜30H)に、その外側に配するべき砕石(R)を被せる
擁壁の構築方法。 - 前記環は、側部空所(S2)の左右中間部にあり、前記環よりも左方及び右方には、補強材(30F)と擁壁用ブロック(20)とにより平面視で環状に囲まれている区画(d1,d2)があり、その区画(d1,d2)にコンクリート(C)が充填されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の擁壁。
- 請求項8記載の擁壁の構築方法であって、
擁壁用ブロック(20)を並べ、
その並べた擁壁用ブロック(20)の側部空所(S2)に砕石(R)を途中まで充填し、
その充填した砕石(R)の上に、補強材(30H)を設置し、
その後、側部空所(S2)の左右両端部に前記コンクリート(C)を打設すると共に、補強材(30F)の内側に砕石(R)を充填し、
その後、補強材(30H)に、その外側に配するべき砕石(R)を被せる
擁壁の構築方法。
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JP2016210691A Pending JP2017145681A (ja) | 2016-02-18 | 2016-10-27 | 擁壁及びその構築方法 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2017145681A (ja) |
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2016
- 2016-10-27 JP JP2016210691A patent/JP2017145681A/ja active Pending
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