JP2017144635A - ガスバリアフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】延伸等の物理的ストレスに対する耐性の向上と透明性の確保を実現し、かつ、生産性に優れたガスバリアの製造方法およびガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】ガスバリアフィルムの製造方法は、酸素が導入された真空中で、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱法または高周波誘導加熱法によりアルミニウムを蒸発させると共に、有機シラン系モノマーを導入して、プラスチック基材の少なくとも片面に、アルミニウム蒸気と酸素を反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素、有機シラン系モノマーを反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素を反応させた層からなるガスバリア層を1つの成膜ロール上で形成し、有機シラン系モノマーを成膜ロールの中央直下に局所的に導入することを特徴する。
【選択図】図2

Description

本発明は、食品の包装材や医療医薬品およびインクジェットタンク部材の外装材、樹脂等の輸出用包材、太陽電池バックシートといった産業資材向け外装材に用いられるガスバリアフィルムおよびその製造方法に関するものである。
食品や医薬品類の包装、ハードディスクや半導体モジュールに用いられる包装材料においては、内容物を保護することが必要である。特に、食品包装においては蛋白質や油脂などの酸化や変質を抑制し、味や鮮度を保持することが必要である。また無菌状態での取り扱いが必要とされる医薬品類においては有効成分の変質を抑制し、効能を維持することが求められる。これらの内容物の品質を保護するために、酸素や水蒸気、その他内容物を変質させる気体を遮断するガスバリア性を備える包装体が求められている。
医療医薬品やインクジェットタンク部材の外装材や、樹脂等の輸出用包材には、それぞれ、高温多湿下における加速試験や、高温下での溶剤蒸散防止、船便による輸送(特に赤道直下)に適した、安定して高い酸素バリア性、水蒸気バリア性を発揮する包装体が求められている。
また、太陽電池保護シートは、太陽電池モジュールの起電部分であるパターニングされたシリコン薄膜の湿度による劣化を防止するために、太陽電池の裏側に配置されており、酸素や水蒸気といったガスを遮断し、同時に屋外などの過酷な状況下で使用されてもガスバリア性能が劣化しない耐久性能が求められる。
プラスチックフィルムからなる包装体としては、従来、高分子の中では比較的ガスバリア性能に優れるポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)などの樹脂フィルムや或いはこれらの樹脂をラミネートまたはコーティングしたプラスチックフィルムなどが好んで用いられてきた。しかしながら、これらのフィルムは、温度依存性が高く、高温または高湿度下においてガスバリア性能に劣化が見られ、また、食品包装用途においてはボイル処理や高温高圧力条件下でのレトルト処理を行うとガスバリア性能が著しく劣化する場合が多い。また、PVDC系の高分子樹脂組成物を用いたガスバリア性積層体は、湿度依存性は低いものの温度依存性がある上に、高いガスバリア性能(例えば、1cc/m・day・atm以下)を得ることができない。
また、PVDCやPANなどは廃棄・焼却の際に有害物質が発生する危険性が高いため、高防湿性を有し、かつ高度のガスバリア性能を要求される包装体については、アルミニウムなどの金属箔などにてガスバリア性能を担保せざるを得なかった。しかしながら、金属箔は不透明であるため、包装材料を透過して内容物を識別することが難しく、また、金属探知機による内容物検査や、電子レンジでの加熱処理が出来ない。
これらの問題を解決するべく、プラスチックフィルム上に、酸化珪素等からなる金属酸化膜を形成したガスバリアフィルムが、一般的に数多く、実用化されている。
これら、金属酸化膜を形成する際は、ドライコーティング法、中でも真空蒸着法を用いることで、生産性に優れた金属酸化膜を形成することができる。真空蒸着法以外のドライコーティング方式として、スパッタリング法や化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)が挙げられるが、スパッタリング法では、ガスバリア性能には優れるものの、生産速度が大幅に遅くなってしまう。化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)の場合においても、ガスバリア層形成として選択した場合、真空蒸着法と比較して生産速度が遅くなってしまうというデメリットが生じてしまう。
真空蒸着法を用いての金属酸化膜の形成には、成膜材料に金属材料を用い、空間中に酸素等の反応性ガスを導入し反応させることで、金属酸化膜を得る手段が挙げられる。この手段で金属酸化膜を得る場合、金属酸化膜の透明性は、金属材料が蒸発することでできる蒸着粒子が、空間中に導入された反応性ガスと衝突し、金属酸化物粒子となることで付与され、より多くの反応性ガスと衝突することで、透明性は高くなっていく。
また、成膜材料に酸化珪素等のセラミック材料を用いることで、金属酸化膜を得る手段も挙げられる。こちらの手段の場合でも、酸素等の反応性ガスを導入し反応させることで、更なる透明性の向上を図ることができる。
金属酸化膜は透明性に優れるが、その反面、延伸等の物理的ストレスに対する耐性は金属膜と比較して劣っており、例えば金属酸化膜を用いたガスバリアフィルムの延伸試験前後でのガスバリア性能を比較すると、延伸試験後に大きく劣化してしまう、といった問題点が存在している。
ここで、生産性、ガスバリア性に優れたガスバリア膜のひとつとして、蒸着法により成膜されたアルミ膜が挙げられる。しかしながら、アルミ膜を用いた場合、延伸等の物理的ストレスに対する耐性には優れているが、透明性に乏しい、食品包装材料用途に用いる場合金属探知機による検査を行うことができない、スチーム処理やレトルト処理等の熱水処理によりアルミ膜がベーマイト化しガスバリア性能の劣化が生じてしまう、といった問題点が存在している。
上述したアルミ膜が持つ問題を解決するべく、成膜材料にアルミ材料を用い、空間中に酸素等の反応性ガスを導入し反応させることで、アルミナからなるガスバリア膜を得る手段が挙げられる。この方法を用いれば、アルミ膜が持つ、透明性に乏しく、金属探知機による検査を行うことができないといった問題は解決することが可能となるが、スチーム処理やレトルト処理等の熱水処理により、アルミナ膜がベーマイト化してしまうことに起因してガスバリア性能の劣化が生じてしまう問題点は解決できない。また、延伸等の物理的ストレスに対する耐性は非常に乏しい。
アルミナ膜の場合、元素比O/Alが低くなるほど、膜中の金属成分が上昇しアルミ膜に近づいていくが、透明性が大きく低下してしまう上に、延伸等の物理的ストレスに対する耐性に関しては、ほとんど変化が無い。
そこで、アルミ膜やアルミナ膜が持つ問題を解決するべく、成膜材料に酸化珪素を用いて、酸化珪素膜からなるガスバリア膜を得る手段が挙げられる。耐久性に優れる酸化珪素膜を用いれば、アルミ膜やアルミナ膜がスチーム処理やレトルト処理等の熱水処理によりベーマイト化してしまうことに起因してガスバリア性能の劣化が生じてしまう問題点を解決することができる。また、延伸等の物理的ストレスに対する耐性においては、酸化珪素膜は、アルミナ膜と比べると優れているが、アルミ膜には大きく劣っている。
酸化珪素膜の場合、元素比O/Siが低くなるほど、ガスバリア性能が向上するが、透明性は低下してしまうという問題点がある。延伸等の物理的ストレスに対する耐性に関しては、向上するもののその効果は小さい。
酸化珪素膜の延伸等の物理的ストレスに対する耐性向上に関しては、プラズマCVDによりSiOC膜を成膜する手法(特許文献1および特許文献2)が提案されているが、プラズマCVDを用いた場合、成膜レートを向上させるには原材料の導入量を多くする必要があり、その場合、ガスバリア性能の低下や透過率の低下を招く可能性がある。また、傾斜膜を得るためには、成膜ゾーンが複数必要となるなど、装置構造が複雑となってしまう。
酸化珪素膜を用いた場合でも、延伸等の物理的ストレスに対する耐性向上は困難であり、その解決には更なる鋭意解決が求められている。
また、延伸等の物理的ストレスに対する耐性向上を目的に積層構成を取る手法が提案されているが、この手法では、ドライコーティングとウェットコーティングを繰り返す必要があり、生産性が低下してしまう。
特開2005−219427号公報 特開2009−190216号公報
本発明は、従来の方式では不十分であった、延伸等の物理的ストレスに対する耐性の向上と透明性の確保を実現し、かつ、生産性に優れたガスバリアフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、酸素が導入された真空中で、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱法または高周波誘導加熱法によりアルミニウムを蒸発させると共に、有機シラン系モノマーを導入して、プラスチック基材の少なくとも片面に、アルミニウム蒸気と酸素を反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素、有機シラン系モノマーを反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素を反応させた層からなるガスバリア層を1つの成膜ロール上で形成し、有機シラン系モノマーを成膜ロールの中央直下に局所的に導入することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法である。
また、ガスバリア層をICPプラズマ法、ヘリコン波プラズマ法、マイクロ波プラズマ法、ホロカソード放電法の何れかにより成膜してもよい。
また、本発明は、プラスチック基材の少なくとも片面に、アルミニウム原子、酸素原子、水素原子、炭素原子を含む層1、アルミニウム原子、酸素原子、水素原子、炭素原子を含む層2、アルミニウム原子、酸素原子、水素原子、炭素原子を含む層3がこの順で形成されており、層2に含まれる水素原子及び炭素原子の量が、層1または層3に含まれる水素原子及び炭素原子の量よりも多いことを特徴とする、ガスバリアフィルムである。
本発明に依れば、延伸等の物理的ストレスに対する耐性の向上と透明性の確保とを実現し、かつ、生産性に優れたガスバリアフィルムおよびその製造方法を提供することが可能となる。
本発明におけるガスバリアフィルムを説明する断面図 本発明におけるガスバリアフィルムの製造装置を示す模式図 実施例及び比較例におけるガスバリアフィルムの延伸率と水蒸気バリア性能の関係を示したグラフ 実施例及び比較例におけるガスバリアフィルムの膜組成を示したグラフ
図1は、本発明におけるガスバリアフィルムを説明する断面図である。図1に示すガスバリアフィルムは、プラスチックフィルム10上に、ガスバリア層11が成膜された構成となっている。
ガスバリアフィルムの構成としては、上記に制限されるものではなく、更なるガスバリア性能や密着性の向上を目的に、プラスチックフィルム10とガスバリア層11との間に樹脂材料をベースにしたアンカーコート層の挿入や、プラスチックフィルム10への、(1)プラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理などの物理的処理、(2)酸やアルカリによる薬液処理などの化学的処理などの表面処理を行ってもよい。
また、ガスバリア層11の上に、保護層等を設けても問題ない。保護層としては、金属アルコキシドを用いる塗布膜を設けることが望ましい。具体的には一般式R M(OR(ただしR、Rは炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子、m、nは自然数)で表されるものであり、金属原子としてはSi、Ti、Al、Zr等を挙げることができる。また、その上にナイロンフィルムやポリプロピレンフィルム等をラミネートしても問題ない。
金属MがSiであるR Si(ORとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。
金属MがZrであるR Zr(ORとしては、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラプトキシジルコニウム等を挙げることができる。
金属MがTiであるR Ti(ORとしては、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラブトキシチタニウム等を挙げることができる。
金属MがAlであるR Al(ORとしては、テトラメトキシアルミニウム、テトラエトキシアルミニウム、テトライソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシアルミニウム等を挙げることができる。
上記金属アルコキシドは、1種類のみ用いても2種以上混合して用いても差し支えないし、上記金属アルコキシドの加水分解物を用いても差し支えない。また、上記金属アルコキシドまたは上記金属アルコキシドの加水分解物に、アクリル酸やポリビニルアルコール、ウレタン化合物、ポリエステル化合物を混合してもよいが、膨潤性の材料と混合することが望ましい。
ラミネーションを行なう場合、接着剤としてウレタン系の接着剤を用いることが好ましく、またラミネートする方法として、ドライラミネーション法、ノンソルベントラミネーション法、押出しラミネーション法、ニーラムラミネーション法などによりラミネーションすることが好ましい。
プラスチックフィルム10は特に制限を受けるものではなく公知のものを使用することが出来る。例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド系(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエーテルスルホン、アクリル、セルロース系(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等)などが挙げられるが特に限定されない。外観の観点や、中身が確認できると言った利点から、透明フィルムを用いることが好ましい。また、厚さに関しても特に制限を受けるものではなく、ガスバリアフィルムを形成する場合の加工性を考慮すると、12〜100μmの範囲が好ましい。
ガスバリア層11の組成としては、プラスチックフィルム10の少なくとも片面に、アルミニウム蒸気と酸素を反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素、有機シラン系モノマーを反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素を反応させた層がこの順で積層されている層が挙げられる。
蒸着材料としては、アルミニウムを使用する。
有機シラン系モノマーとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン等を用いることができるが、シリコンSiと炭素Cと水素Hが含有されているものであれば特に限定されない。安全性、ハンドリング性等を考慮すると、ヘキサメチルジシロキサンを用いることが好ましい。
上述した順で積層することで、プラスチック基材との密着性や、ガスバリア層11の上に、保護層等を設ける際の加工適正に問題が生じない。例えば、プラスチック基材の少なくとも片面に、アルミニウム蒸気と酸素、有機シラン系モノマーを反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素を反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素、有機シラン系モノマーを反応させた層をこの順で積層した場合、プラスチック基材との密着性に問題が生じる可能性があるだけでなく、ガスバリア層上に、保護層等を設ける際の加工適正に課題が生じたり、全体のガスバリア性能が低下したりしてしまう問題があるので、好ましくない。
ガスバリア層11の膜厚は、生産性とガスバリア性を考慮すると、5〜30nmが好ましい。5nm未満の場合、安定したガスバリア性能を得ることが困難であり、また30nmを超える場合、生産速度が遅くなり、コストが高くなってしまう恐れがある。
ガスバリア層11の透過率は、包装材料に用いた際の視認性や、外観向上を考慮すると、80%以上が好ましく、特に95%以上であることが望ましい。透過率が80%未満の場合、透明性を確保できず、外観を損ねてしまう。
ガスバリア層11を成膜する際、従来の真空蒸着による成膜方式では、透過率を向上させるために、酸素や有機シラン系モノマー等の反応性ガスを従来よりも多く導入した場合、反応ガス導入により発生する成膜圧力の上昇に伴い、平均自由行程が短くなり衝突回数が多くなることで、蒸着粒子の持つ運動エネルギーが多く失われてしまうため、従来得られていたガスバリア性能が大幅に劣化してしまうことがあった。この対策としては、蒸発粒子に新たに運動エネルギーを付与することで、失われる運動エネルギーを補い補足することが有効であり、中でもプラズマを用いた手法が考えられる。高い成膜速度により成膜する場合は、蒸着粒子の数が非常に多いため、高いプラズマ密度を発現できる方式でない場合、蒸着粒子に比してプラズマ化している粒子数が少なく、膜質を向上させる変化を発現させることが困難である。このため、高いプラズマ密度を発現させる手段として、ICPプラズマ法、ヘリコン波プラズマ法、マイクロ波プラズマ法、ホロカソード放電法の何れかを用いることが最適である。また、上記手段を用いた場合、膜質を向上させることも可能なため、従来よりも優れたガスバリア性能を得ることができる。さらに、膜厚変動に対するガスバリア性能の変動を小さく抑えるため、生産速度向上に伴う膜厚減少に起因するガスバリア性能の劣化に関しても、その影響を小さくすることができる。また高密度のプラズマを用いることで、膜密度向上が可能なため、膜中に含まれるダングリングボンド等の数が減ることで、膜中への水素の含有を抑えることが可能となる。
図2は、本発明におけるガスバリア層蒸着フィルムの製造装置を示す模式図である。真空チャンバー20内において、プラスチックフィルム21は、巻き出しローラー22にセットされる。巻き出しローラー22から巻き出されたプラスチックフィルム21は、成膜ロール23を通過し、巻取りローラー24に巻き取られる。この際、成膜ロール23上において、ガスバリア層11をプラスチックフィルム21上に形成する。
成膜室には、ガスバリア層11を成膜するための材料25(アルミニウム等の無機材料)をセットする。また、成膜室には、蒸着手段として、直進電子ビーム銃26が設置されている。また、反応性ガスを導入する手段として、反応性ガス1(酸素)導入パイプ27ならびに反応性ガス2(有機シラン系モノマー)導入パイプ28が設置されている。電子ビームにより加熱された材料25は蒸気(蒸着粒子29)となりプラスチックフィルム21に蒸着される。
図2において、蒸着材料25を加熱する手段として、直進電子ビーム銃26を用いる電子ビーム蒸着法を示したが、蒸着手段としては、材料25に対し、抵抗加熱法または高周波誘導加熱法などを用いて加熱し、材料を蒸発させてもよい。電子ビーム蒸着法は、直進電子ビーム銃を用いても、偏向電子ビーム銃を用いてもよいし、高い成膜速度を発現させるためには大電力の投入が可能なピアース式平面陰極形電子銃などを用いてもよいが、これに限られるものではない。また抵抗加熱法は、材料を詰めた坩堝を直接抵抗加熱する方式であってもよいし、抵抗加熱部に金属のワイヤーをフィードするタイプの抵抗加熱方式であっても問題ない。いずれの方式も高い成膜速度を発現できる装置の構成になっていることが必要である。
反応性ガス2(有機シラン系モノマー)導入パイプ28を設置する際、パイプの位置を成膜ロール23の中央直下に置くことが重要であり、パイプを設置する際には、有機シラン系モノマーが局所的に存在するように、囲いを置くことがさらに重要である。
ガスバリア層蒸着フィルムの製造装置は、この形に制限されるわけではなく、必要に応じて、プラズマ処理装置や反応ガスの導入装置を設置しても問題はない。ロールの配置に関しても、特に制限されるものではない。
[実施例1]
図2の製造装置を用いて、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製P60)の片面にアルミニウム蒸気と酸素を反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素、有機シラン系モノマーを反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素を反応させた層をこの順で積層してガスバリア層を形成した。その際、蒸着用の材料としてアルミニウムを用い、有機シラン系モノマーとしてヘキサメチルジシロキサンを用いた。基材同等の透過率を得るために、酸素を導入した。また、100Aに電流制御されたホロカソード放電による高密度プラズマを併用した。
[比較例1]
図2の製造装置を用いて、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製P60)の片面にアルミニウム蒸気と酸素を反応させた層のみで構成されたガスバリア層を形成した。その際、蒸着用の材料としてアルミニウムを用いた。基材同等の透過率を得るために、酸素を導入した。また、100Aに電流制御されたホロカソード放電による高密度プラズマを併用した。
[比較例2]
図2の製造装置を用いて、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製P60)の片面にアルミニウム蒸気と酸素、有機シラン系モノマーを反応させた層のみで構成されたガスバリア層を形成した。その際、蒸着用の材料としてアルミニウムを用い、有機シラン系モノマーとしてヘキサメチルジシロキサンを用いた。基材同等の透過率を得るために、酸素を導入した。また、100Aに電流制御されたホロカソード放電による高密度プラズマを併用した。
(評価1)
水蒸気透過率(WVTR)を水蒸気透過度測定装置(モダンコントロール社製 MOCON PERMATRAN 3/21)により、40℃、90%RH雰囲気にて測定した。また、実施例1および比較例1、2に係るガスバリアフィルムを、20cm長に切り出し、両端を保持し11.8Nの張力をかけた後、100μm/secの速度で延伸させ、延伸率1%、2%、3%、4%および5%におけるWVTRの測定を行った。その結果を図3に示す。
(評価2)
膜組成を、高分解能RBS(High Resolution Rutherford Backscattering Spectrometry;HR−RBS)及び高分解能ERDA(High Resolution Elastic Recoil Detection Analysis;HR−ERDA)により測定した。その結果を図4に示す。図4(a)は、実施例1にガスバリアフィルムの係る膜組成、図4(b)は、比較例1に係るガスバリアフィルムの膜組成、図4(c)は、比較例2に係るガスバリアフィルムの膜組成を示す。尚、図4(a)〜(c)において、ガスバリア層に相当する厚み範囲は、図4(a)の横軸における60〜270Å程度の範囲、図4(b)の横軸における50〜150Å程度の範囲、図4(c)の横軸における30〜180Å程度の範囲である。図4(a)〜(c)の横軸における上記範囲以外は、基材の一部もしくは測定用に設けた前処理層の厚み範囲であって、ガスバリア層以外の組成を示すものである。
(評価結果1)
実施例1では、延伸前の水蒸気バリア性能、延伸後の水蒸気バリア性能の両方において水蒸気バリア性が維持され、物理的ストレスの対する耐性があることを確認できた。比較例1は、延伸前の水蒸気バリア性能こそ実施例1と同等だが、延伸後の水蒸気バリア性能は大きく低下し、実施例1と比べて物理的ストレスに対する耐性が低かった。比較例2は、延伸による劣化こそ少ないが、延伸前の水蒸気バリア性能が実施例1と比べて低かった。
(評価結果2)
図4(a)の横軸における60〜270Åの範囲のドットに示されるように、実施例1では、傾斜状に膜組成が変化し、ガスバリア層の厚み方向の中間部分は、他の部分よりも水素原子及び炭素原子の量が多い。このことから、上記中間部分、つまりアルミニウム蒸気と酸素、有機シラン系モノマーを反応させた層に含まれる水素原子及び炭素原子の量が、上記他の部分、つまりアルミニウム蒸気と酸素を反応させた層に含まれる水素原子及び炭素原子の量よりも多いことが確認された。一方、比較例1、2では、そのような変化は確認できなかった。
本発明おけるガスバリアフィルムは、液体パック、食品や飲料品の包装材、医療医薬品およびインクジェットタンク部材の外装材、樹脂等の輸出用包材、太陽電池バックシートといった産業資材向け外装材に好適に用いられる。
10…プラスチックフィルム
11…ガスバリア層
20…真空チャンバー
21…プラスチックフィルム
22…巻き出しローラー
23…成膜ロール
24…巻取りローラー
25…材料
26…直進電子ビーム銃
27…反応ガス1導入パイプ
28…反応ガス2導入パイプ
29…蒸着粒子

Claims (3)

  1. 酸素が導入された真空中で、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱法または高周波誘導加熱法によりアルミニウムを蒸発させると共に、有機シラン系モノマーを導入して、プラスチック基材の少なくとも片面に、アルミニウム蒸気と酸素を反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素、有機シラン系モノマーを反応させた層、アルミニウム蒸気と酸素を反応させた層からなるガスバリア層を1つの成膜ロール上で形成し、
    前記有機シラン系モノマーを前記成膜ロールの中央直下に局所的に導入することを特徴とする、ガスバリアフィルムの製造方法。
  2. 前記ガスバリア層をICPプラズマ法、ヘリコン波プラズマ法、マイクロ波プラズマ法、ホロカソード放電法の何れかにより成膜することを特徴とする、請求項1に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  3. プラスチック基材の少なくとも片面に、アルミニウム原子、酸素原子、水素原子、炭素原子を含む層1、アルミニウム原子、酸素原子、水素原子、炭素原子を含む層2、アルミニウム原子、酸素原子、水素原子、炭素原子を含む層3がこの順で形成されており、前記層2に含まれる水素原子及び炭素原子の量が、前記層1または前記層3に含まれる水素原子及び炭素原子の量よりも多いことを特徴とする、ガスバリアフィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109775416A (zh) * 2017-11-14 2019-05-21 财团法人工业技术研究院 基板传输单元与镀膜设备

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