JP2017142035A - 冷解凍装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】対象物の冷凍、冷凍保存、解凍及び冷蔵保存を一台の装置内で可能とし、対象物の品質低下を防止するとともに、短時間でこの一連の温度制御を実現する。【解決手段】冷解凍する対象物を冷凍から冷蔵保存までの間、収納可能な冷解凍庫10と、 冷解凍庫10内に冷熱又は暖熱を供給する熱交換器21と、冷解凍庫10内及び対象物の温度を計測する複数の温度センサ12と、温度センサ12で計測される温度の値と計測時間とを関連付ける温度データを記憶する温度データ記憶部44と、熱交換器21が供給した冷熱又は暖熱の供給量と供給した時間とを関連付ける熱量データを記憶する熱量データ記憶部43と、冷凍から解凍までの一連の処理において熱交換器21を制御可能である熱交換器制御部41とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、冷凍、冷凍保存、解凍及び冷蔵保存に対応する冷解凍装置に関する。
魚や肉等の食品等は、品質の維持を目的として冷凍室で冷凍され、冷凍保存される。また、冷凍保存された食品は、その後、販売や加工の際に解凍され、必要に応じて冷蔵保存される。
食品を冷凍及び冷凍保存し、後に解凍及び冷蔵保存する際、品質を維持して冷解凍するための温度制御が重要である。また、適時に食品を提供できるように、解凍のスケジュールを設定する必要がある。
例えば、品質維持の一般的な方法として、食品を冷凍する際、食品の細胞内に発生する氷の結晶を小さくすることで、氷結晶の生成による細胞の破壊を少なくしてドリップの流出を抑え、食品の旨味を保持する方法がある。細胞の破壊を少なくするためには、冷凍においても解凍においても、最大氷結晶生成温度帯を、出来るだけ短時間に通過させる必要がある。この最大氷結晶生成温度帯は、氷結晶の生成が最も大きくなる温度帯であり、冷解凍の対象物によって異なるが、例えば、−2〜−10℃の範囲である。
そのため、現在では、時間をかけて対象物を冷凍する緩慢冷凍に代わり、緩慢冷凍よりも低温の環境下に対象物をおくことで、緩慢冷凍よりも短時間で冷凍をする急速冷凍の技術の開発が発展しており、急速冷凍によって品質の維持が図られている。例えば、緩慢冷凍の最大氷結晶生成温度帯の通過時間は、1〜数時間程度であるのに対し、急速冷凍における最大氷結晶生成温度帯の通過時間は、6〜30分程度であり、急速冷凍を利用することで緩慢冷凍を利用した場合と比較して氷結晶の生成による細胞破壊を軽減できることがわかる。
一方、冷凍技術の開発と比較して、解凍技術の開発は遅れており、緩慢解凍に代わる急速解凍の開発が急がれている。冷凍食品を急速解凍する時、流水解凍や自然解凍が一般的である。これに対し、品質を考慮する解凍方法として、冷蔵温度等の低温で解凍を行う方法があるが、解凍時間が長くなる。
また、冷凍された食品を解凍する時、冷凍装置から冷蔵装置やその他の設備への移し替えが必要になるのが一般的である。そうすると、冷凍から解凍までの一連の流れが連続して制御されることがなく、夫々独立した制御となる。また、冷凍装置から解凍する装置への移し替えにより、温度変化で食品の品質が劣化することになる。
冷凍から解凍までを可能とする汎用性の高いシステムも研究されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、各設備や各制御が独立しており、解凍の制御を、冷凍時に蓄積したデータを用いて制御することは考慮されていない。
特許第3071659号公報
上述したように、解凍技術の開発は進んでおらず、従来は冷凍後、冷凍した食品等の対象物をその品質を低下させずに短時間で解凍することが困難であった。また、冷凍から解凍までの一連の流れが、冷凍庫と解凍庫との別々の装置で独立して行われ、連続して制御されていない。したがって、複数の装置が必要になるとともに、解凍される対象物の品質が劣化し、また、冷凍庫から解凍庫への移し替え等の作業員の作業負担も大きかった。
したがって、本発明は、対象物の冷凍、冷凍保存、解凍及び冷蔵保存を、氷の凝固・冷凍から解凍・融解という可逆性を利用して、一台の冷解凍装置内で可能とするとともに、対象物の品質の低下を防止し、かつ、冷凍時に解凍時の時間設定を可能とし、同時に従来よりも短時間でこの一連の温度制御を実現する冷解凍装置を提供することを目的とする。
本発明に係る冷解凍装置は、冷解凍する対象物を冷凍から冷蔵保存までの間、収納可能な冷解凍庫と、前記冷解凍庫内に冷熱又は暖熱を供給する熱交換器と、前記冷解凍庫内及び前記対象物の温度を計測する複数の温度センサと、前記温度センサで計測される温度の値と計測時間とを関連付ける温度データを記憶する温度データ記憶部と、前記熱交換器が供給した冷熱又は暖熱の供給量と供給した時間とを関連付ける熱量データを記憶する熱量データ記憶部と、冷凍から解凍までの一連の処理において前記熱交換器を制御可能である熱交換器制御部とを備える。
本発明によれば、対象物の冷凍、冷凍保存、解凍及び冷蔵保存を一台の装置内で可能とするとともに、対象物の品質の低下を防止し、かつ、従来よりも短時間でこの一連の温度制御を実現することができる。
第1実施形態に係る冷解凍装置の構成を説明する概略図である。 図1の冷解凍装置の冷解凍庫と熱交換室の空間とその間に設けられる隔壁を説明する概略図である。 ヒートポンプの一例を説明する構成図である。 図1の冷解凍装置の隔壁におけるファンコイルの位置を説明する概略図である。 図1の冷解凍装置の冷解凍庫への棚の配置を説明する図である。 図5の棚とこの棚への温度センサの設置位置及び対象物の配置位置を説明する図である。 対象物の一例である段ボール箱を説明する概略図である。 棚板上の温度センサの設置位置と棚板への段ボール箱の配置位置を説明する概略図である。 図1の冷解凍装置で利用されるディストリビュータを説明する概略図である。 図1の冷解凍装置で対象物を冷解凍する場合の温度変化を表すグラフである。 対象物を緩慢冷凍により冷凍する場合の対象物の最大氷結晶生成帯における温度変化を表すグラフである。 対象物を冷凍する場合の最大氷結晶生成帯を通過後の対象物の温度変化を表すグラフである。 対象物を解凍する場合の供給熱量制御法の処理を説明するフローチャートである。 供給熱量制御法の単位解凍時間の決定方法、供給熱量の決定方法を説明する図である。 対象物を急速解凍する場合の対象物の温度変化及び冷解凍庫内の雰囲気温度の温度変化を表すグラフである。 温度勾配制御法の処理を説明するフローチャートである。 個別温度制御法の処理を説明するフローチャートである。 解凍のみ制御する場合の温度変化及び暖熱の供給量を表すグラフである。 第2実施形態に係る冷解凍装置の構成を説明する概略図である。 図19の冷解凍装置で対象物を冷解凍する場合の温度変化を表すグラフである。 対象物を急速冷凍により冷凍する場合の対象物の最大氷結晶生成帯における温度変化を表すグラフである。 変形例に係る冷解凍装置の構成を説明する概略図である。 冷解凍庫に電極(上下に接地電極、真ん中に放電電極)を設置した時の模式図である。 過冷却の温度特性を表すグラフである。
以下に、本発明の実施形態に係る冷解凍装置について説明する。実施形態に係る冷解凍装置は、冷凍機能、冷凍保存機能、解凍機能、冷蔵保存機能及び温度制御機能を有し、対象物の冷凍、冷凍保存、解凍及び冷蔵保存を、氷の凝固・冷凍から解凍・融解という可逆性を利用して、1台の冷解凍装置内で行うことのできる装置である。冷解凍の対象物は、水分を含むものであり、代表的なものは、魚、肉、青果等の食品であるが、その他、生花、種子、人や家畜の人工受精胚、移植用摘出臓器、血液分化細胞、バイオリアクタ用微生物等であってもよい。対象物は、例えば、段ボールや塩化ビニール等の収納容器(紙袋等も含む)に収納され、容器を含むものとしてもよい。
代表的な冷凍方法として、最大氷結晶生成帯の通過時間が長い「緩慢冷凍」と、最大氷結晶生成帯の通過時間が短い「急速冷凍」とがある。具体的には、「緩慢冷凍」は、主には−20〜−30℃以上の環境下で加工品等の価格の低い対象物を冷凍する方法であり、最大氷結晶生成帯の通過時間は1〜数時間程度である。これに対し、「急速冷凍」は、−30℃以下の環境下で価格の高い鮮度の維持を目的とした対象物を冷凍する方法であり、最大氷結晶生成帯の通過時間は6〜30分程度である。
以下の説明において、第1実施形態に係る冷解凍装置は、「緩慢冷凍」により冷凍し、解凍する装置である。これに対し、第2実施形態に係る冷解凍装置では、「急速冷凍」により冷凍し、解凍する装置である。
[第1実施形態]
〈冷解凍装置1A、熱交換室20、冷解凍庫10〉
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係る冷解凍装置1Aの概略構成例を示している。冷解凍装置1Aは、冷解凍する対象物2を設置する冷解凍庫10と、冷凍、冷凍保存、解凍、冷蔵保存のための熱供給を行う熱交換器であるヒートポンプ21を設置する熱交換室20と、冷解凍庫10と熱交換室20との間に設けられる隔壁30と、冷解凍に関する温度の制御を実行する冷解凍制御装置40とを備える。
《ヒートポンプ21》
ヒートポンプ21は、冷凍機能、冷凍保存機能、解凍機能及び冷蔵保存機能を有する熱交換器であり、例えば、暖熱及び冷熱を供給することのできるブライン式ヒートポンプである。このヒートポンプ21が供給する冷熱は、−30℃以上の冷熱である。
このヒートポンプ21は、冷解凍制御装置40と接続され、冷解凍制御装置40によって冷熱又は暖熱の供給が制御される。具体的には、ヒートポンプ21は、冷凍時、冷解凍庫10が冷凍に適した温度になるように冷解凍庫10に冷熱を供給し、解凍時、冷解凍庫10が解凍に適した温度になるように冷解凍庫10に暖熱を供給する。また、ヒートポンプ21は、冷凍保存時及び冷蔵保存時、冷解凍庫10が保存に適した温度になるように冷解凍庫10に冷熱を供給する。
また、ヒートポンプ21は、熱量センサ(図示せず)を有し、この熱量センサにより、供給する熱量を計測する。熱量センサにより計測された供給熱量は、後述するヒートポンプ制御部41により、熱量データとして熱量データ記憶部43に記憶される。
図3は、ヒートポンプ21の一例を説明する構成図である。ヒートポンプ21は、圧縮機及び膨張弁を有し、外気からの入熱を利用して冷媒を圧縮、凝縮、膨張させ、冷解凍制御装置40の制御に応じて冷熱又は暖熱を生成する。図3に示す一例のヒートポンプ21は、四方弁を利用することで、冷熱の供給と暖熱の供給を切り替えることができる。なお、排熱とは、冷解凍装置1外の工場の温排水、工場の排気ガス等の排熱である。また、井水等の熱を利用してもよい。
なお、ここでは熱交換器の一例としてヒートポンプ21を用いて説明するが、ヒートポンプに限らず、冷熱及び暖熱を供給することのできる熱交換器であればよい。
《冷解凍庫10》
隔壁30の冷解凍庫10側には、図1に示すように、熱供給用のファンコイル11が設置され、ヒートポンプ21からの冷熱又は暖熱がファンコイル11を介して冷解凍庫10に供給される。これにより、冷解凍庫10内は、冷凍、解凍又は保存に適した温度に調整される。例えば、ファンコイル11は、図2及び図4(B)に示すように、隔壁30の31の位置に設けられる。なお、図4(C)は、第2実施形態に係る冷解凍装置のファンコイルの設置位置を示す図であり後の説明で利用する。
また、冷解凍庫10には、冷解凍庫10内の温度及び対象物2の温度を計測する温度センサ12が複数配置される。具体的には、温度センサ12の一例は、図6を用いて後述するが、気体温度計や赤外線サーモグラフィ等であるが、ディジタル計測できるものが好ましい。冷解凍庫10内の温度制御は、この温度センサ12の計測値に応じて、冷解凍制御装置40によって実行される。
なお、冷解凍庫10の大きさは限定されず、目的に応じて様々な大きさに設定可能である。また、図1乃至図3に示す例では、冷解凍庫10と熱交換室20は隔壁30を間にして隣接して形成されるが、熱供給用の配管あるいはダクトで連結した状態で分離した状態で形成されても良い。
(棚61、段ボール箱22)
冷解凍庫10内に対象物2を配置する際、図5に示すように、冷解凍庫10の架台60上に棚61を設置し、この棚61に複数の対象物2を整列して載置可能としてもよい。例えば、棚61は、柱62と梁63によって、対象物2を載置可能な複数の棚板64を支持する構成である。棚板64は、対象物2と空間との熱伝達を容易にするために孔65が設けられることが望ましい。また、棚板64に対象物2を配置する場合、図6に示すように、整列載置された夫々の対象物2の間には、空間が設けられることが好ましい。これらの空間は、冷凍、冷凍保存及び冷蔵保存時には冷熱の流通路となり、解凍時には暖熱の流通路となる。
冷解凍装置1Aが工場や市場等で利用される場合、図6及び図7に示すように、冷解凍の対象物とその対象物が収納される段ボール箱22等の容器を対象物2としてもよい。この場合、対象物2が収納される段ボール箱22を、各棚板64に配置する。
例えば、図7に示すように、真ん中に貼り合わせ部23を有する段ボール箱22に対象物を入れると、段ボール箱22内で上面側には空間ができたとしても、段ボール箱22の底面側には対象物2が存在して重量がかかる。したがって、冷解凍時には、段ボール箱22の底面側に冷気が集まる。そのため、可能な限りムラが無く冷凍あるいは解凍させるために、図6に示すように棚板64の上面、底面及び側面に空間ができるように段ボール箱22を載置し、図8に示すように棚板64には、可能な限り、その面積の合計が大きくなるように孔65を設け、冷凍時には可能な限り段ボール箱22が冷気に触れるようにし、また、解凍時には冷気の集まる段ボール箱22の下側からも暖気による熱伝達を促進させることが望ましい。
なお、この棚61は対象物2の重量に耐えうる材料であればよい。
(温度センサ)
冷解凍においては、冷解凍庫10中における温度ムラが、対象物2の品質の低下につながる。さらに、複数の対象物2を冷解凍する場合、各対象物2の温度を均一にしたうえで温度制御をすることが望ましい。したがって、冷解凍庫10内での温度ムラを防止するため、冷解凍庫10内の複数の場所で温度を計測し、各場所で温度を計測する必要がある。
例えば、図6に示すように、柱62、梁63、棚板64等に温度センサ12として赤外線サーモグラフィ66や温度計67を設置し、段ボール箱22の温度を計測する。赤外線サーモグラフィ66及び温度計67で計測した温度は、温度制御部42により、温度データとして、温度データ記憶部44に記憶される。
段ボール箱22では中央の貼合せ部23から空間温度が侵入し易く、箱内のこの貼り合わせ部23の温度は他の部分と比較して冷凍時には低くなりやすく、解凍時には高くなりやすい。したがって、段ボール箱22を対象物2として棚61に配置する場合であって、段ボール箱22の下側に温度計67を設置する場合、中央の貼合せ部23を避け、段ボール箱22の位置24に相当する棚板64の位置に設置する。すなわち棚板64において、段ボール箱22の下側の貼合せ部23に対して対称の貼り合せ部23から離れた位置24の数カ所に、段ボール箱22と接する位置に温度計67を貼り付け、段ボール箱22の下側の棚板64側の温度を計測する。
図示を用いた説明は省略するが、温度データ記憶部44に記憶される温度データは、温度分布を表す表示画面とし、ディスプレイに表示可能としてもよい。これにより、冷解凍庫10内に熱流の調整に使用するファンガイド、流量調整ガイド、ディストリビュータシステム等を設置し、冷解凍庫10内の各位置に供給する熱量の増減を調整し、冷解凍庫10内及び対象物2の表面温度の高い部分と低い部分の温度差の最小化を図るようにすることができる。
(ディストリビュータ13)
冷解凍装置1Aにおいて、複数の対象物2を冷解凍する場合、対象物2の品質の低下を防止するため、また、冷解凍の時間を短縮するため、図9に示すように冷解凍庫10内にディストリビュータ13を設置してもよい。ディストリビュータ13を利用することで、対象物2の周囲の空間の冷熱又は暖熱の流動を促進し、同時に対象物2に暖熱又は冷熱が直接当たり悪影響を与えることのないように、緩やかで均一な流れを形成する。これにより、対象物2の品質の低下の防止及び冷解凍時間の短縮を図ることができる。
具体的には、図9に示すように、冷気あるいは暖気を平均的に流せるディストリビュータ13と、複数のノズル132、配管133及び流出口134等を冷解凍庫10内に備える。ノズル132、配管133は、例えば、柱62、梁63又は棚板64に均一になるような間隔で配置する。また、ディストリビュータ13を介してヒートポンプ21から供給される冷熱又は暖熱は、配管133に設けられる流出口134から、対象物2の周囲の空間に流出される。
冷凍あるいは解凍の過程で、対象物2の表面に温度ムラが生じた時は、複数の流出口134のうち、ムラが生じた当該箇所に近い流出口134に供給する暖気の供給量を増減させることで冷気あるいは暖気の流れを制御し、冷凍あるいは解凍のムラを抑えることを可能とする。
このディストリビュータ13を利用する冷熱と暖熱の送風の方式は、冷凍時の特に最大氷結晶生成温度帯において、複数の対象物2に温度ムラが発生しないように通過させる方式として適している。
なお、図示を省略するが、冷解凍庫10内にファンやガイド弁を設置し、これらを利用して対象物2の温度ムラがある当該箇所への冷気あるいは暖気の熱量の供給を増減させるようにしてもよい。
また、必要に応じて、熱交換室20から冷解凍庫10に送出された空気量に相当する冷気を含んだ空気量を、冷解凍庫10の外部に取出し、冷解凍庫10内の圧力を調整できることを可能とする。この冷気は、例えば氷蓄熱槽135等に蓄え、氷蓄熱槽135の冷気を含んだ空気をヒートポンプ21の凝縮器に使用し、または空調や他の冷蔵装置等に供給してもよい。
〈冷解凍制御装置40〉
図1に示すように、冷解凍制御装置40は、ヒートポンプ制御部41及び温度制御部42を備え、冷解凍及び保存(冷凍、冷凍保存、解凍、冷蔵保存)の一連の温度制御を実行する。また、冷解凍制御装置40は、ヒートポンプ21が冷解凍庫10に供給した熱量データを記憶する熱量データ記憶部43と、温度センサ12で計測された温度データを記憶する温度データ記憶部44を備える。
図10に、冷解凍の際の対象物2の温度特性を示す。冷解凍の際の温度領域は、図10に示すように、冷凍制御を実行する『冷凍領域』、冷凍保存の制御を実行する『冷凍保存領域』、解凍制御を実行する『解凍領域』及び冷蔵保存の制御を実行する『冷蔵保存領域』の4領域に分けられる。
対象物2は、冷凍の開始後、表面が氷結温度tcに達すると、含有する水分の凍結がはじまる。この凍結が始まると、対象物2は、氷結温度tcから最大氷結晶生成帯下限温度tsまでの間において、それまでの温度の低下速度よりゆっくりと温度が低下する。この氷結温度tcから最大氷結晶生成帯下限温度tsまでの温度範囲が、最大氷結晶生成帯であり、この最大氷結晶生成帯において、氷の生成が最大になる。最大氷結晶生成帯を通過すると、主には氷の比熱により温度は下降し、対象物2の温度は冷凍保存温度まで急速に下がり、冷凍保存される。
各温度は、対象物2の種類に応じて異なるが、本実施形態では、氷結温度(目標設定温度)tcは−2℃、最大氷結晶生成帯下限温度tsは−10℃とする。ここで、氷結温度とは、対象物2の凍結が開始する温度であり、目標設定温度とは、対象物2を冷蔵保存する際の目標の温度であり、ここでは氷結温度と目標設定温度とをともに−2℃とする。
また、温度制御の説明において後述する第1予備設定温度tp(図10では省略)は−5℃、第2予備設定温度tppは−3℃とする。なお、予備設定温度は、対象物2の温度と比較して温度制御の基準とする設定温度であり、第1予備設定温度tp及び第2予備設定温度tppの2点が必須でなく、いずれか1点の設定でも良い。
ヒートポンプ制御部41は、冷凍の際(冷凍領域の期間)、冷解凍庫10内に対象物2を冷凍するための冷熱を供給するようヒートポンプ21を制御する。また、ヒートポンプ制御部41は、冷凍保存及び冷蔵保存の際(冷凍保存領域の期間及び冷蔵保存領域の期間)、冷解凍庫10内に対象物2を冷凍保存又は冷蔵保存するための冷熱を供給するようヒートポンプ21を制御する。さらに、ヒートポンプ制御部41は、解凍の際(解凍領域の期間)、必要に応じて、冷解凍庫10内に対象物2を急速解凍するための暖熱を供給するようヒートポンプ21を制御する。
また、ヒートポンプ制御部41は、ヒートポンプ21が冷解凍庫10に供給する熱量の値と時間との関係を表す熱量データを熱量データ記憶部43に記憶する。
温度制御部42は、温度センサ12で計測される温度の値と時間との関係を表す温度データを温度データ記憶部44に記憶する。
《冷凍領域(冷凍開始から最大氷結晶生成帯の通過まで)》
図11を用いて、冷凍(緩慢冷凍)の際の最大氷結晶生成帯における温度特性と、最大氷結晶生成帯における制御について説明する。図11は、図10の温度特性のA−1の部分の詳細説明図である。
この冷凍制御において、ヒートポンプ制御部41は、冷熱を供給するようヒートポンプ21を制御する。例えば、ヒートポンプ制御部41は、冷凍開始当初、所定量の冷熱を供給するようヒートポンプ21を制御し、その後、温度制御部42から取得する対象物2や冷解凍庫10内の温度に応じ、冷熱の供給量を調整することができる。
ヒートポンプ21が冷熱を供給することで、対象物2の冷凍が開始されると、対象物2の表面が0℃以下になった時点で、表面の水分が凍り始める。図11に示すように、時間の経過とともに対象物2の温度が下がり、対象物2は、氷結温度tcに達した時点で、表面から凍結が進む。その後、冷熱が対象物2の内部に熱伝達することで対象物2の内側が凍る。
ここで氷結温度tcに達した後、対象物2の温度が下がるスピードは、対象物2内部の水分の凝固のため、緩やかになる。そして最大氷結晶生成帯(tc〜tsの間)のほぼ中間(温度tm)で、温度時間特性は、その方向を変え、温度は下降に向かう。
対象物2内の水分の多く(5割程度)が凍結すると、対象物2の温度の下降は更に大きくなり、主には氷の比熱により急速に温度を下げていく。
具体的には、図11に示すように、対象物2の温度特性において、所定の時間間隔h1の2点を結んだ線と水平線の角度α(α1〜α8)を求める。対象物2は、その温度がK1となった付近から、水分の凍結が本格化する。角度αは、温度がK1の付近からK2の付近までは、α1>α2>α3>α4と徐々に小さくなる。また、温度がK2となった後には、角度αは、α4<α5<α6<α7<α8と徐々に大きくなる。このように、対象物2の温度変化から、対象物2内の状態の変化を把握することが可能であり、この変化と合わせてヒートポンプ制御部41は、ヒートポンプ21を制御することができる。
例えば、ヒートポンプ制御部41が、温度制御部42から対象物2の温度と冷解凍庫10の雰囲気温度とを取得し、その差が大きくなるように、具体的には、所定の冷凍温度で冷熱の供給量を大きくするヒートポンプ21を制御することで、最大氷結晶生成帯を早く通過させることができる。これにより、冷凍速度を速め対象物2の冷凍による品質の低下を防止することができる。
なお、予期した温度特性を歩んでいないときは冷解凍装置のメンテナンス等を考慮することが望ましい。
また、定めた時間間隔h1が短く、温度変化の特徴が明確に得られない場合、必要に応じて、例えば時間間隔h1の2倍とか3倍に相当する隔点を結んだ線と水平線の角度を計測し、その特徴を把握しても良い。
さらに、所定の時間間隔h1の2点を結んだ線と水平線との角度αを求めるタイミングは、時間間隔h1毎である必要はなく、それより短い時間間隔毎に求めることで、温度制御の精度を向上させることができる。
《冷凍領域(最大氷結晶生成帯通過後)と冷凍保存領域》
図12を用いて、最大氷結晶生成帯通過後の冷凍時及び冷凍保存における温度特性と、この期間における制御について説明する。図12は、図10の温度特性のBの部分の詳細説明図である。図12において、温度tyは、冷凍保存の際に期待する冷凍保存温度である。
冷凍過程で、冷凍温度特性の方向が本来の温度特性(実線)からdの方向(破線)にずれて、期待した冷凍保存温度tyに達しないと予測した場合、ヒートポンプ制御部41は、冷熱の供給量を増加するようヒートポンプ21を制御する。具体的には、ヒートポンプ制御部41は、図12に示す一例のように、点K3を基準として、点K3と前の点K3’で求めた角度β1に対し、点K3と後の点K3”で求めた角度β2が大きく減少した時、期待した冷凍保存温度tyに達しないと予測する。
なお、対象物2が目標とする冷凍保存温度tyに近づく時、対象物2の温度変化は緩やかになり、冷凍保存温度tyに達した時、冷凍制御は終了し、冷凍保存制御に移行する。冷凍保存の際、ヒートポンプ制御部41は、冷解凍庫10に冷熱の供給量を減少させ、対象物は、目標とする冷凍保存温度tyで保存される。冷凍保存時に供給される冷熱は、冷凍保存温度tyよりも高めの温度で供給されるため、対象物2の温度は、冷凍保存温度tyを高めに外れる場合が生じる。その場合には冷熱を供給して対象物2の温度を冷凍保存温度tyに戻し、対象物2がこの冷凍保存温度tyで保存されるようにする。すなわち、図12に示すように、温度特性の方向が本来の温度特性(実線)からeの方向(破線)に上昇した場合、ヒートポンプ制御部41は、所定の冷凍保存温度に戻すために所定の温度で冷熱の供給量を増加するようヒートポンプ21を制御する。具体的には、ヒートポンプ制御部41は、水平線に対し得られた角度β3が所定角度以上である時、本来の温度特性を外れたと予測する。
また、所定の温度特性を歩んでいることを確認し、把握できるようにする。なお、これらの制御の際に、予期した温度特性を大きく外れているときはメンテナンスを考慮することが望ましい。
《解凍領域》
解凍領域において、ヒートポンプ制御部41は、冷凍領域で収集されたデータに基づいて解凍制御を実行する。解凍制御の方法としては、『供給熱量制御法』、『温度勾配制御法』、『雰囲気温度制御法』及び『個別温度制御法』がある。また、ヒートポンプ制御部41は、これら複数の方法を組み合わせて解凍制御を行う。
(供給熱量制御法)
図13及び図14を用いて、解凍の際の制御方法である供給熱量制御法について説明する。供給熱量制御法は、冷凍に使用した熱量の値を、解凍時の熱量供給の制御に利用する方法であり、図10の解凍領域における制御である。図13は、供給熱量制御法の処理を説明するフローチャートである。また、図14は、解凍時間、冷凍時の供給熱量と温度特性、解凍時の温度特性を説明する図である。
図13に示すように、解凍時、ヒートポンプ制御部41は、設定された解凍時間Lを、所定の値Nで分割して単位解凍時間Hi(=L/N)を求める(S01)。解凍制御において、ヒートポンプ制御部41は、ここで求めた解凍時間Hi毎に冷解凍庫10に供給する熱量を演算し、演算した熱量の暖熱を供給するようヒートポンプ21を制御する。ここでは、図14に示すように、解凍時間Lを、時間間隔Hrの第1解凍時間H1〜第N解凍時間HNに分割したものとして説明する。そして、第1解凍時間H1に最初の熱量を供給し、次の第2解凍時間H2に、新たに求めた熱量の供給を行う。そして後の解凍時間(H3〜HN)で新たな熱量の算出と供給を繰り返す。
まず、ヒートポンプ制御部41は、第1解凍時間H1の処理であるため、i=1とする(S02)。
ヒートポンプ制御部41は、熱量データ記憶部43に記憶される熱量データから対象物2の冷凍の際に供給した総熱量Wfcを抽出し、この総熱量Wfcを値Nで分割し、第1解凍時間H1に冷解凍庫10に供給する熱量Wt1(=Wfc/N)を求める(S03)。
第1解凍時間H1において、ヒートポンプ制御部41は、熱量Wt1の暖熱を供給するよう、ヒートポンプ21を制御する(S04)。なお、ヒートポンプ制御部41は、この第1解凍時間H1の間、熱量Wt1の暖熱を、あらかじめ設定した温度で平均的に供給するよう、ヒートポンプ21を制御する。
続いて、次の解凍時間の処理を実行するため、iをインクリメント(i=i+1)する(S05)。例えば、i=2のとき、第2解凍時間H2の処理が実行される。この時、冷凍時T1に至るまでに供給された熱量Wf1をH2の時間にWf1/(N−1)を所定の温度で平均的に供給する。また例えば、i=3のとき、第3解凍時間H3の処理が実行される。
第i解凍時間Hiにおいて、ヒートポンプ制御部41は、温度制御部42から現在の対象物2の温度Tiを取得し、冷凍時において、冷凍開始時から対象物2がTiになるまでに要した総熱量Wfiを熱量データ記憶部43の熱量データから抽出し、この総熱量Wfiを値(N−i)で分割し、第i解凍時間Hiに冷解凍庫10に供給する熱量Wti(=Wfi/(N−i))を求める(S06)。
また、第i解凍時間Hiにおいて、ヒートポンプ制御部41は、熱量Wtiの暖熱を供給するよう、ヒートポンプ21を制御する(S07)。このときも、ヒートポンプ制御部41は、第i解凍時間Hiの間、熱量Wtiの暖熱を所定の温度で平均的に供給するよう、ヒートポンプ21を制御する。
第i解凍時間Hiが終了するタイミングで、ヒートポンプ制御部41は、温度制御部42から現在の対象物2の温度Tを取得し、温度Tを第1予備設定温度tpと比較する(S08)。第1予備設定温度tpは、例えば−5℃あるいは−4℃に設定する。Tiが第1予備設定温度tpに到達した時点で、温度制御部42からヒートポンプ制御部41に、第2予備設定温度tppで供給熱量制御処理に移行できるように表示で示す。
i≧tpでない場合(ステップS08でNO)、ヒートポンプ制御部41は、ステップS05〜S08の処理を繰り返す。このとき、ヒートポンプ制御部41は、ステップS06の処理で、ステップS08で取得した温度を、現在の対象物2の温度Tiとして利用することができる。
一方、Ti≧tpである場合(ステップS08でYES)、ヒートポンプ制御部41は、熱量Wtiを、これ以降供給する熱量Wtとして設定する(S09)。また、ヒートポンプ制御部41は、iをインクリメントする(S10)。さらに、ヒートポンプ制御部41は、暖熱Wtの暖熱を供給するよう、ヒートポンプ21を制御する(S11)。
その後、ヒートポンプ制御部41は、時間間隔Hr毎に、温度制御部42から現在の対象物2の温度Tiを取得し、温度Tiを第2予備設定温度tppと比較する(S12)。
Ti≧tppでない場合(ステップS12でNO)、ヒートポンプ制御部41は、ステップS09〜S10の処理を繰り返す。第2予備設定温度tppは、例えば−3℃に設定する。
一方、Ti≧tppである場合(ステップS12でYES)、温度制御部42からヒートポンプ制御部41に、暖熱の供給を停止し、目標設定温度tc(例えば−2℃)に収斂させるように、解凍制御の処理である供給熱量制御処理を終了する(S13)。
その後、ヒートポンプ制御部41は、冷蔵保存制御の処理を実行する。
このように、ヒートポンプ制御部41は、解凍時間Lが設定されると、冷凍で供給した熱量の値を解凍に使用することで、解凍をこの設定された解凍時間L内に終わるように適切に制御することができる。
(温度勾配制御法)
図15及び図16を用いて、解凍の際の制御方法である温度勾配制御法について説明する。温度勾配制御法は、解凍時における温度-時間特性(温度変化)に基づき供給熱量制御法よりも緻密に解凍制御を行うため、図13を用いて上述した供給熱量制御法と組み合わせて実行する方法であり、解凍の際の対象物2の温度変化に応じて熱供給を制御する方法である。具体的には、供給熱量制御法において図13のフローチャートに示すステップS01〜S08を実行する時、同時に解凍時の温度-時間特性(温度変化)の温度変化の勾配の計測を行う。なお、S08において、第1予備設定温度tpが−5℃であると2点間を結ぶ線の角度が45°になる温度と重なる可能性がある。したがって、第1予備設定温度tpは45°になる温度よりも高い温度に設定する。
図15は、図10の温度特性のCの部分の詳細説明図であり、急速解凍の場合の対象物2の温度変化(解凍温度特性)と、冷解凍庫10内の温度変化(冷解凍庫内雰囲気温度特性)を表す。また、図16は、温度勾配制御法の処理を説明するフローチャートである。
温度勾配制御法を利用する場合、ヒートポンプ制御部41は、供給熱量制御法において、後述する所定の時間間隔h3の計測点の2点間を結ぶ線の傾きγが45度に達すると供給熱量制御法を終了し、温度勾配制御処理を開始する。温度勾配制御を開始する。ヒートポンプ制御部41は、温度制御部42から対象物2の温度を取得する(S21)。ここで取得する温度は、図15に示すような温度特性を示す。
また、ヒートポンプ制御部41は、取得する温度から、所定の時間間隔h3の計測点の2点間を結ぶ線の傾きγを求める(S22)。この時間間隔h3とは、例えば、10秒程度から5分等の時間間隔である。
傾きγを求めると、ヒートポンプ制御部41は、求めた傾きγが45°以下であるか否かを判定する(S23)。
求めた傾きγが45°以下でない場合(S23でNO)、ヒートポンプ制御部41は、供給熱量を維持して暖熱を供給するようヒートポンプ21を制御し、ステップS21〜S23の処理を繰り返す(S24)。すなわち、ヒートポンプ制御部41は、図13のフローチャートのステップS06で求めた熱量(Wti(S07))の暖熱を供給するよう制御する。
一方、求めた傾きγが45°以下である場合(S23でYES)、ヒートポンプ制御部41は、その傾きに応じて供給熱量Wtiを補正し、補正した熱量Wγ(=Wti×(γ/45°))の暖熱を供給するようヒートポンプ21を制御する(S25)。なお、傾きγが45°の点は、対象物2の氷の変化が比熱上昇から氷の融解が優勢になる温度であり、最大氷結晶生成帯にある。
また、ヒートポンプ制御部41は、温度制御部42から補正した熱量Wγで暖熱を供給後の対象物2の温度を取得する(S26)。
ヒートポンプ制御部41は、取得した温度を目標設定温度tcと比較する(S27)。
取得した温度が目標設定温度tc以上でない場合(S27でNO)、ヒートポンプ制御部41は、ステップS25に戻り、ステップS25〜S27の処理を繰り返す。
一方、取得した温度が目標設定温度tc以上である場合(S27でYES)、ヒートポンプ制御部41は、暖熱の供給を停止し、温度勾配法の制御を終了する(S28)。
このように、ヒートポンプ制御部41は、対象物2の温度の勾配に応じて解凍に使用する熱量を決定することで、解凍における対象物2の過度の温度上昇を防ぎ、品質の劣化を軽減することができる。
(雰囲気温度制御法)
図15を用いて、雰囲気温度制御法について説明する。雰囲気温度制御法は、上述した供給熱量制御法又は温度勾配制御法と組み合わせて実行する方法であり、解凍の際の冷解凍庫10の雰囲気温度に応じて熱供給を制御する方法である。
具体的には、雰囲気温度制御法を供給熱量制御法と組み合わせる場合、ヒートポンプ制御部41は、雰囲気制御法と供給熱量制御法とを並列して実行し、雰囲気温度制御法で冷解凍庫10の雰囲気の温度上昇が、0℃以上で、その温度変化が一旦緩やかになった後に再度温度上昇を検出したタイミング、または、供給熱量制御法で冷解凍庫10内の温度が第2予備設定温度tppあるいは目標設定温度tcより大きくなったと判断されたタイミング(図13のS11)のいずれか先に発生したタイミングで、暖熱の供給を停止する。
また、雰囲気温度制御法を温度勾配制御法と組み合わせるとき、ヒートポンプ制御部41は、雰囲気制御法と温度勾配制御法とを並列して実行し、雰囲気温度制御法で冷解凍庫10の雰囲気の温度上昇が、0℃以上で、その温度変化が一旦緩やかになった後に、再度温度上昇を検出するタイミング、または、温度勾配制御法で対象物2の温度が第2予備設定温度tppあるいは目標設定温度tcより大きくなったと判断されるタイミング(図16のS27)のいずれか先に発生したタイミングで、暖熱の供給を停止する。
雰囲気温度制御法を実行するとき、ヒートポンプ制御部41は、温度制御部42から冷解凍庫10内の雰囲気温度を取得する。また、ヒートポンプ制御部41は、取得した冷解凍庫10内の雰囲気温度の温度特性から、所定の時間間隔h3(例えば、1分、3分、5分等)の計測点を結ぶ線の傾きδ(δ1,δ2,δ3,δ4・・・)を計測する。
その線の傾きδが、供給する暖熱と対象物2から放出される冷熱がバランスに近づき角度δが減少した後に、再び増加した時、ヒートポンプ制御部41は、暖熱の供給を停止する。図15に示す一例のように、δ1>δ2>δ3と徐々に減少した後、δ3<δ4と傾きδが増加する。したがって、傾きδの増加を検出することで、雰囲気温度が0℃以上で一旦緩やかになった後、再び温度の上昇するタイミングを検出できる。また、ヒートポンプ制御部41は、暖熱の供給停止後、設定した目標設定温度tcに収斂するように冷熱の供給に切替えて冷蔵処理を実行する。
このように、ヒートポンプ制御部41は、雰囲気温度が0℃以上で一旦緩やかになった後、再度の上昇に応じて解凍に利用する暖熱の供給を停止することで、温度上昇による対象物2の品質の劣化を軽減することができる。例えば、本制御法は、解凍に供給される暖熱熱量が大きい時、対象物2内の氷の融解熱と冷解凍庫10内の雰囲気が有する熱量がバランスせず、冷解凍庫10内の雰囲気温度が上昇する場合に有効である。
(個別温度制御法)
図15及び図17を用いて、個別温度制御法について説明する。個別温度制御法は、上述した供給熱量制御法や温度勾配制御法と組み合わせて実行する方法であり、複数の対象物2を同時に解凍する場合、各対象物2の解凍ムラを防止し、解凍が均一に進むように温度を制御する方法である。図17は、個別温度制御法の処理を説明するフローチャートである。
具体的には、例えば温度勾配制御法と組み合わせる場合、図16のフローチャートのステップS26とS27の間において、いずれかの対象物2の温度が、例えば第2予備設定温度tppに到達したか否かを判定し、いずれかの対象物2の温度が第2予備設定温度tppに到達していた場合、個別温度制御法を実行する。ここで、第2予備設定温度tppは、目標設定温度tcの近くであり、かつ、目標設定温度tcよりも低い値である。
図17のフローチャートに示すように、ヒートポンプ制御部41は、複数の対象物2の温度を取得する(S31)。また、ヒートポンプ制御部41は、図15に示すように、各対象物2の温度の所定の時間間隔h3の2点を結ぶ直線と水平線の傾きγを求める(S32)。なお、図15においては、1つの温度センサによる計測値の温度特性のみ示すが、個別温度制御法を実行する場合、複数の温度センサによる計測値から傾きを求めるため、この温度特性も複数存在することになる。
ヒートポンプ制御部41は、各対象物2について求めた複数の傾きγを第1所定値と比較し、第1所定値よりも傾きγの大きい対象物2には暖熱の供給を減少させる(S33,S34)。
また、ヒートポンプ制御部41は、各対象物2について求めた複数の傾きγを第2所定値と比較し、第2所定値よりも傾きγの大きい対象物には暖熱の供給を増加させる(S35,S36)。
その後、ヒートポンプ制御部41は、複数の対象物2の温度を取得する(S37)。また、ヒートポンプ制御部41は、複数の対象物2の温度差が所定範囲内であるか否かを判定する(S38)。
所定範囲内であれば(S38でYES)、ヒートポンプ制御部41は、個別温度制御処理を終了する。また、所定範囲内でないとき(S38でNO)、ステップS31に戻り、ステップS31〜S38の処理を繰り返す。
このように、ヒートポンプ制御部41は、複数の対象物2を同時に解凍する場合、各対象物2の温度変化が均一になるように熱供給することで、複数の対象物2での温度上昇の均一化を図り、解凍ムラを防止することができる。ここで、図9を用いて上述したディストリビュータ13を利用して、温度の均一化を図ることができる。
なお、個別温度制御は、第2予備設定温度tppよりも低い温度、例えば第1予備設定温度tpであっても、設定温度を定めて、複数の対象物2の温度の均一化を図ることが出来る。
(補正係数)
対象物2を収納容器に収納する場合、その材質である段ボールや樹脂は、圧力への緩衝材であるとともに、熱への緩衝材である。そのため、雰囲気の熱変化に対し、収納容器内の対象物2への伝熱に時間遅れが生じる。したがって、伝熱の時間遅れを考慮する補正係数を設定し、その補正係数を用いて温度制御することが好ましい。
なお、時間遅れは、収納容器の材質の他、大きさや形状によって異なるとともに、対象物2の種類、大きさ及び形状等によっても大きく変わる。したがって、複数の対象物2について、様々な収納容器に対応した冷解凍のデータを集積し、それらから条件ごとに求めた補正係数を設定する。
また、温度制御に、収納容器ごとに時間遅れの記録を蓄積・集積し、次の冷解凍時に生かすことが出来る集積データ適用制御を導入することが望ましい。
(解凍のみの制御)
なお、冷解凍装置1Aは、冷凍から解凍後の冷蔵保存までを冷凍から解凍までを一連の流れとして一つの冷解凍装置で制御可能とするものであるが、仮に、冷凍時の熱量データや温度データを有していない場合であっても、対応することができる。この場合、対象物2が保有する冷熱量を計算し、その熱量を基本データとして解凍を進める。この制御について、図18を用いて説明する。図18は、解凍のみの制御を実施する場合の対象物2の温度特性とヒートポンプ21による暖熱の供給量を表す図である。
具体的には、ヒートポンプ制御部41は、対象物2が保有する冷熱量Wを、対象物2が保有する氷の量と温度とから算出する。
対象物2の温度が0℃であるとき、対象物2が保有する冷熱エネルギーW0は、計算上、概算、下記式(1)で表される。
0=(M・X/100)・[C・(|T|−|t|)+(〈Y/100〉・C・|t|)+(〈Z/100〉・I)] …(1)
M:対象物重量(kg)
X:対象物水分含量(%)
t:対象物氷結温度(℃)
T:対象物が凍結された温度(℃)
C:氷の比熱(kJ/kg)
I:氷の融解熱(kJ/kg)
Y:対象物の氷のうち0℃になった氷の割合(%)
Z:対象物の氷のうち0℃までに融解した氷の割合(%)(Y+Z=100)
なお、M,X,C,Y,Z,Iの値は、対象物の種類毎に求める。これら値は、制御の過程で得られた蓄積データを用いて求めることが可能であり、蓄積データの更新に応じ、適宜、より精度の高い値に更新することができる。
したがって、対象物2の氷結温度をtcとし、tcで対象物2の氷のうち融解した量の割合Zc%とすれば、tcまでに解凍に要する熱量Wは、式(2)に示すように求められる。
W=(M・X/100)・[C・(|T|−|tc|)+(〈Zc/100〉・I)] …(2)
ヒートポンプ制御部41は、この熱量Wを解凍時間Lで除して、その時間当たりの熱量(W/L)を冷解凍庫10に供給するようヒートポンプ21を制御する。また、その後、ヒートポンプ制御部41は、対象物2の温度を取得し、所定の時間間隔h4の2点間を結ぶ線と水平線との角度εを測定する。その角度εが45度になる点P1が、対象物2の中に含まれる氷の相が、比熱の温度変化が優位な状態から融解が主となる点であり、この点P1に達するまでW/Lの熱量を供給する。
その後、ヒートポンプ制御部41は、上述した温度勾配制御法を適用して暖熱を供給する。すなわち、P1の時点の供給熱量(W/L)に対し、測定した温度の2点間を結ぶ線と水平線との角度εを利用して補正した熱量Wε(=(W/L)・(ε/45))で、供給する暖熱の熱量を減少させる。
そして、対象物2の温度が第2予備設定温度tppに到達した時点P2で熱量の供給を停止して解凍制御を終了し、冷蔵保存制御を開始する。
(冷解凍制御の原理)
このように、冷解凍を一つの冷解凍装置1Aで行う場合、水分が凝固し氷に凍結、そして氷から解凍のプロセスを経て融解すると言う可逆性、すなわち冷凍と解凍の可逆性を利用し、対象物2の氷と水の熱伝導率の相違による対象物2内の冷凍と解凍の位置的反転性と、それらの特性を相乗した対象物2の冷解凍の温度時間特性を利用して、冷解凍を進めることができる。なお、0℃水の熱伝導率は0.569W/mK、0℃の氷の熱伝導率は2.2W/mKである。
冷凍時、対象物2の表面は冷凍冷熱で冷却され、対象物2の表面と芯部の間に温度差が生じる。急速冷凍では対象物2の内部の水分の熱伝導率は低いため、急速冷凍の時は大きな温度差を設け、強制的に芯部に冷熱を届け冷凍が進む。
また、解凍時、暖熱を与え対象物2の表面と芯部との間に温度差を設け、氷の熱伝導率の高さを利用し、冷凍時間が短い時は、表面の氷よりも柔らかな芯部の氷の温度を上げ、融解を速める。芯部の氷が融解すると水分の熱伝導率は下がるため、芯部に届く熱量は減少し芯部の過度の温度上昇を防ぎ、同時に対象物の芯部の周りの氷の部分の温度の上昇と融解に熱が多く使われる。水の凝固熱と氷の融解熱は同じであり、氷の比熱は冷凍と解凍で温度が同じであれば比熱の値は同じである。そして、冷凍と解凍の可逆性を利用し、冷凍時に使用した熱量を解凍時に暖熱量として加え解凍を促進する。一方、水と氷の間には熱伝導率に大きな相違がある。対象物の冷凍が進むとともに対象物の芯部への熱伝導は容易になり冷凍に必要な冷熱量は減少する。解凍時、適度な暖熱を与える時、対象物の表面のみならず芯部でも温度が上昇し融解に向かう。そして対象物2で温度上昇に向かう体積が増えると同時に、対象物2の温度上昇と融解に必要な熱量が増える。その特性が、対象物2の温度特性に表れるので、解凍のために供給する暖熱熱量を、対象物の温度特性を利用して供給し解凍を進展させる。
なお、冷凍を行う時間が長いと対象物2の中心部も対象物2の表面と同じ程度に硬い氷に凍結する。この時、多量の高温の暖熱を供給しても、対象物2の表面だけが融解して水分が増え、芯部への熱伝導が悪くなり、表面だけが解凍され芯部が残った氷で硬いまま残る。そのため急速解凍時、暖熱の供給は、適切な制御に従って行う必要がある。
冷凍も解凍も雰囲気温度と解凍対象物の熱量の相関で進む。冷解凍庫10の熱容量(大きさ)を一定として、冷凍と解凍とで同じ装置を使用することで、冷凍時に使用した熱量で、対象物2の表面だけを過度に融解することなく、基本的には可逆性を利用して解凍を可能にする。一方、冷凍と解凍とで別の装置を利用した場合、装置の有する熱容量が変わり可逆性は成立しなくなる。
また、後述する電極設置の場合は、電極から供給される電気エネルギーが、冷解凍装置で解凍のために雰囲気から供給される暖熱エネルギーに比較して極めて小さく、上述の可逆性の適用に、大きな影響を与えない。
〈冷解凍装置1Aの効果〉
このように、第1実施形態に係る冷解凍装置1Aでは、冷解凍庫10の温度を適切に制御することができる。具体的には、冷凍で供給した熱量の値に応じて、解凍の熱供給を制御することで、急速解凍を実現することができる。また、対象物2の温度変化に応じて、解凍の熱供給を制御することで、対象物2の品質劣化を軽減することができる。さらに、複数の対象物2を解凍する場合、各対象物2の温度に応じて、解凍の熱供給を制御することで、各対象物2の解凍時間のばらつきを防止して対象物2の品質劣化を軽減するとともに、急速解凍を実現することができる。
[第2実施形態]
図19は、本発明の第2実施形態に係る冷解凍装置1Bの概略構成例を示している。冷解凍装置1Bは、図1を用いて上述した冷解凍装置1Aと比較して、冷凍・解凍・保存用のヒートポンプ21に代えて、熱交換室20において、熱交換器として冷凍・冷凍保存用の機能部21a及び解凍・冷蔵保存用のヒートポンプ21bを備え、冷解凍制御装置40において、冷凍・冷凍保存機能制御部41aを及びヒートポンプ制御部41bを備える。第1実施形態に係る冷解凍装置1Aのヒートポンプ21は、冷熱と暖熱を供給することができるが、供給することのできる冷熱は−30℃以上の冷熱であった。これに対し、第2実施形態に係る冷解凍装置1Bでは、機能部21aによって−30℃以下の冷熱を供給することができる。
したがって、冷解凍装置1Bは、冷凍及び冷凍保存の際には、冷凍・冷凍保存機能制御部41aによって制御され、冷凍・冷凍保存用の機能部21aがファンコイル11aを介して冷解凍庫10に冷熱を供給する。また、冷解凍装置1Bは、解凍及び冷蔵保存の際には、ヒートポンプ制御部41bによって制御され、解凍・冷蔵保存用のヒートポンプ21bがファンコイル11bを介して冷解凍庫10に暖熱及び冷熱を供給する。また、ファンコイル11a,11bは、図4(C)に示すように、隔壁30の31a,31bの位置に配置される。
図20に、冷解凍の際の対象物2の温度特性を示す。また、図21に、冷凍(急速冷凍)の際の最大氷結晶生成帯における温度特性(図20のA−2の部分)を示す。
冷凍・冷凍保存機能制御部41aは、冷熱を供給するよう機能部21aを制御する。例えば、冷凍・冷凍保存機能制御部41aは、冷凍開始当初、所定量の冷熱を供給するよう機能部21aを制御し、その後、温度制御部42から取得する対象物2や冷解凍庫10内の温度に応じ、冷熱の供給量を調整することができる。
機能部21aが−30℃以下の冷熱を供給することで、対象物2の冷凍が開始されると、図21に示すように、対象物2が氷結温度tcに達した後、対象物2の温度が下がるスピードは、対象物2内部の水分が凝固するために凝固熱の発生により、緩やかになる。そして最大氷結晶生成帯(tc〜tsの間)のほぼ中間(温度tn)で、温度時間特性は、その方向を変え、温度は急速に下降に向かう。
図11に示すように、対象物2の温度特性において、緩慢冷凍と同様に、所定の時間間隔h5の2点を結んだ線と水平線の角度θ(θ1〜θ6)を求める。角度θは、θ1>θ2>θ3と徐々に小さくなる。また、θ4<θ5<θ6と徐々に大きくなる。このように、対象物2の温度変化から、対象物2の状態の変化を把握することが可能であり、この変化と合わせて冷凍・冷凍保存機能制御部41aは、機能部21aを制御することができる。
例えば、冷凍・冷凍保存機能制御部41aが、温度制御部42から対象物2の温度と冷解凍庫10の雰囲気温度とを取得し、その差が大きくなるように、具体的には、冷熱の供給量を大きくする冷凍・冷凍保存用機能部21aを冷凍・冷凍保存機能制御部41aにより制御することで、最大氷結晶生成帯を早く通過させることができる。これにより、対象物2の冷凍による品質の低下を防止することができる。
冷解凍装置1Bでは、冷凍時、冷解凍庫10内に−30℃以下の冷熱を供給することができるため、図20及び図21に示すように、急速冷凍が可能である。したがって、図10を用いて上述した緩慢冷凍の場合と比較して、冷凍時間を短縮することができ、最大氷結晶生成帯の通過時間も短縮することができる。すなわち、緩慢冷凍の場合よりも、冷凍による対象物の品質の劣化を軽減できる。
冷解凍装置1Bにおける制御は、冷凍時及び冷凍保存時には冷凍・冷凍保存機能制御部41aが冷熱供給の処理を制御し、解凍及び冷蔵保存時にはヒートポンプ制御部41bが暖熱供給又は冷蔵用冷熱供給の処理を制御し、冷凍時に供給する冷熱の温度が異なる他は、冷解凍装置1Aにおける制御と同一である。すなわち、冷解凍装置1Bにおいても、冷解凍装置1Aと同様、冷凍時に温度データ及び熱量データを記憶し、この温度データ及び熱量データを利用して、上述した供給熱量制御法で解凍の制御を実行する。また、冷解凍装置1Bにおいても、温度勾配制御法、雰囲気温度制御法、個別温度制御法等を組み合わせて解凍の制御を実行することができる。
このように、第2実施形態に係る冷解凍装置1Bでは、冷解凍庫10の温度を適切に制御することができる。具体的には、冷凍で供給した熱量の値に応じて、解凍の熱供給を制御することで、急速解凍を実現することができる。また、対象物2の温度変化に応じて、解凍の熱供給を制御することで、対象物2の品質劣化を軽減することができる。さらに、複数の対象物2を解凍する場合、各対象物2の温度に応じて、解凍の熱供給を制御することで、各対象物2の解凍時間のばらつきを防止して対象物2の品質劣化を軽減するとともに、急速解凍を実現することができる。
[変形例]
(電極の追加)
図22は、本発明の変形例に係る冷解凍装置1Cの概略構成例を示している。冷解凍装置1Cは、図19を用いて上述した冷解凍装置1Bと比較して、冷解凍庫10内に接地電極14a及び放電電極14bを備え、また、この電極14(14a,14b)を制御する電極制御部45を備える点で異なる。
接地電極14a及び放電電極14bは図23に示す一例のように、対象物2を配置する棚61の棚板64を接地電極14a及び放電電極14bとしてもよい。なお、電極14a,14bの形状は限定されない。
電極制御部45は、例えば、冷凍の開始から最大氷結晶生成帯を通過するまでの間、及び、解凍の開始から冷蔵までの間、電極14aに電圧を印加し、放電させることができる。放電により、例えば、以下の効果が得られる。
(1)対象物2の表面からの伝熱により冷凍を進める時、対象物2の内部は通電により、その内部の温度をほぼ一様に周囲よりも高めに維持し、対象物の表面と芯部の間に温度差を発生させることで、過冷却状況が冷解凍庫10内に設置された多数の対象物2の中で、部分的にも発生することを抑え、一様な冷凍により一様な品質の維持を可能にする。
(2)冷凍時、冷解凍庫10内で、機能部21aによる熱供給で冷凍温度を下げ、放電により対象物2の表面と芯部の温度差を確保する。そして冷解凍庫10内の雰囲気温度と対象物2の芯の温度差を確保した状態で、電極14への電圧の印加を停止し、急速冷凍効果を発生させることができる。
(3)対象物2と放電電極14bの間に空間に存在する空気は絶縁物であり、電極14に電圧をかけると大きな電流は流れず微少電流が流れる。そのため、対象物2内の通電で発生するジュール熱量は、機能部21aから供給される熱量に比較し極めて小さい。そのため対象物2と周囲との間に放電が発生しない程度に、冷解凍庫の雰囲気中にミストを供給し、電極間を流れる電流を大きくして対象物2の芯部の温度上昇、そして融解をより一層早めることを可能にする。なお、対象物2の状況に応じて、芯部が凍らないように電極間に電圧の印加を可能にする。
なお、図22に示す冷解凍装置1Cは、機能部21a及びヒートポンプ21bを有する冷解凍装置1Bに電極14及び電極制御部45を備えるが、図1に示すヒートポンプ21のみを有する冷解凍装置1Aに電極14及び電極制御部45を備える構成であってもよい。また、冷解凍の際のその他の制御については、第1実施形態で説明した制御と同一である。
(過冷却)
冷凍時に、対象物2を過冷却状態とすることで、細胞内の氷結晶を小さく、微細化させることができる。その結果、細胞膜が破れず、ドリップの発生も無く、対象物2の品質の維持を可能にする。過冷却冷凍制御では、個別温度制御を利用して、冷解凍庫10内温度を均一に緩慢に温度の降下を行い、過冷却を発生させ、また、過冷却が発生し過冷却が破れた後は急速な温度降下によって過冷却を解消させる。したがって、精密な温度計測によって過冷却の発生を検出し、過冷却が解消したタイミングを決定する必要がある。例えば、冷解凍庫10内の温度を均一に調整するため、図9に示すディストリビュータを利用することができる。
図24に、過冷却の温度特性を示す。図24(A)において、点K1が、過冷却が解除された点であり、過冷却の解除後、水分の凝固により温度が急上昇するが、点K2の後、再び冷凍が進む過程で下落する。
図24(B)は、図24(A)の過冷却解消時の温度特性の拡大図である。過冷却冷凍制御では、図24(B)に示すような時間間隔h8(例えば、数秒)で計測された温度を結ぶ線と水平線との傾きを利用して温度勾配制御法を利用するとともに、過冷却が解除された時には一瞬で温度が上昇するので、温度勾配制御法に加え、温度変化の速度を見る温度変化スピード計測法の一方あるいは両方を併用することが可能である。
温度勾配制御法では、図25(B)に示すように、h8の時間間隔で計測し、計測した2点と水平線の角度q(q1〜q6)を求めるとする。このとき、q2は、0°となった一例である。また、次に、急速に温度が上昇する場合のq3は、q1とは逆の角度に反転する。すなわち、q1は、水平線に対して+方向で角度が形成されたのに対し、q3は、水平線に対して−方向で角度が形成された。冷凍に向かうと角度は、求められる角度q4は減少するが、まだ−方向である。その後、再び角度は+方向に反転したq5、q6が得られ(q5<q6)、急速冷凍とともに角度は増加する。すなわち、角度の+方向と−方向の反転が2回発生するため、これを感知し、過冷却の発生を知ることが出来る。
温度変化スピード計測法では、温度が−方向に向かい、次に+方向、再び−方向に向かうが。その方向の変化と、温度変化のスピードを計測して、過冷却を感知し、温度変化の大きさを検出することができる。すなわち、過冷却が解除される点K1では、温度は−方向から+方向に大きく変化するが、時間当たりの温度変化は増加する。再び冷却に向か点K2において、温度は減少する。その時の温度変化の値は、過冷却が解除された時点に比較すると小さくなる。
過冷却冷凍制御において、過冷却の発生及び解除を検出するため、温度勾配制御法と温度変化スピード計測法の一方あるいは併用して使用する。また、過冷却の解除後、第1実施形態で上述したように、解凍制御を実行する。
(その他変形例)
冷解凍装置に、熱交換器で暖気を供給する時、供給する暖気の他にミストを同時にまたは間欠的に冷解凍装置に供給する。暖気が有する熱量とミストが液化する時の凝縮潜熱を併せて利用し、より高速な急速解凍を可能とする。さらに、ミストを加えることにより、対象物2の表面温度が解凍温度(氷結温度)以上になる時、対象物2の表面に付着し、凝縮し、一度凍結したミストが液化し、その液化したミストがさらに蒸発し、その融解熱そして蒸発熱で対象物2の過度の温度上昇を抑える効果を有する。
また、冷解凍装置は、一般的な冷蔵庫及び冷凍庫に組み込むことができる。
さらに、一般的な電子レンジに組み込み、熱交換器で暖気を供給することで対象物2の表面から熱伝導で順次内部に向けて氷を融解し、その後、電子レンジで調理を可能としてもよい。この時、対象物2の氷がすべて融解していなくとも、暖気や電子レンジのエネルギーによる対象物2内の熱伝導で、対象物2に残された氷の融解を可能とする。暖気に加えミストを加え、対象物2の表面からの急速解凍を進め、電子レンジで解凍を可能とする一体型の冷解凍装置。
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。
1A,1B,1C…冷解凍装置
2…対象物
10…冷解凍庫
11,11a,11b…ファンコイル
12…温度センサ
20…熱交換室
21,21b…ヒートポンプ(熱交換器)
21a…冷凍・冷凍保存用機能部(熱交換器)
22…段ボール箱
23…貼り合わせ部
30…隔壁
40…冷解凍制御装置
41,41b…ヒートポンプ制御部(熱交換器制御部)
41a…冷凍・冷凍保存機能制御部(熱交換器制御部)
42…温度制御部
43…熱量データ記憶部
44…温度データ記憶部
60…架台
61…棚
62…柱
63…梁
64…棚板
65…孔
66…赤外線サーモグラフィ(温度センサ)
67…温度計(温度センサ)

Claims (7)

  1. 冷解凍する対象物を、冷凍から解凍を経て冷蔵保存までの間、収納可能な冷解凍庫と、
    前記冷解凍庫内に冷熱又は暖熱を供給する熱交換器と、
    冷凍から解凍を経て冷蔵保存までの一連の処理において前記熱交換器を制御可能である熱交換器制御部と、
    を備えることを特徴とする冷解凍装置。
  2. 前記熱交換器制御部は、
    対象物の冷凍時に冷解凍庫に供給した冷熱の熱量に相当する熱量を、対象物の解凍に必要な暖熱の熱量として求め、解凍時、求めた熱量の暖熱を供給するよう熱交換器を制御する
    ことを特徴とする請求項1記載の冷解凍装置。
  3. 冷解凍する対象物を収納する冷解凍庫と、
    前記冷解凍庫内に冷熱又は暖熱を供給する熱交換器と、
    前記冷解凍庫内及び前記対象物の温度を計測する複数の温度センサと、
    前記温度センサで計測される温度の値と計測時間とを関連付ける温度データを記憶する温度データ記憶部と、
    前記熱交換器が供給した冷熱又は暖熱の供給量と供給した時間とを関連付ける熱量データを記憶する熱量データ記憶部と、
    前記熱交換器を制御する熱交換器制御部とを備え、
    前記熱交換器制御部は、
    前記対象物の冷凍時、冷凍保存時及び冷蔵保存時、所定供給量の冷熱を供給するよう前記熱交換器を制御し、
    前記対象物の解凍時、設定された解凍の目標時間Lを所定値Nで分割して単位解凍時間Hrを求め、前記熱量データから、前記対象物の冷凍に要した冷熱の総熱量Wfcを前記所定値Nで分割して供給する暖熱の熱量Wfc/Nを求め、当初の単位解凍時間Hrの間、あらかじめ設定した温度で均一に、当該熱量Wfc/Nの暖熱を供給するよう前記熱交換器を制御し、
    単位解凍時間Hrの経過後、冷凍時において現在の対象物の温度Tに達するまでに供給した冷熱の総熱量Wfを前記温度データから抽出し、この総熱量Wfを残りの単位解凍時間Hrの数(N−i)で分割して、新たに供給する暖熱の熱量(Wf/(N−i))を求め、当該熱量(Wf/(N−i))の暖熱を、単位解凍時間Hrの間、あらかじめ設定した温度で均一に、供給するように前記熱交換器を制御する処理を新たに取得する対象物の温度Tが解凍の目標温度である所定の温度tppより大きくなるまで、iの値をインクリメントにより更新して繰り返す、
    ことを特徴とする冷解凍装置。
  4. 前記熱交換器制御部は、
    解凍における暖熱の供給時、所定の時間間隔h3で計測された前記対象物の温度の2点を結ぶ線と平行線との傾きγが45°以下でないとき、現在の供給量Wtiの暖熱を供給するよう前記熱交換器を制御し、
    傾きγが45°以下となったとき、現在の供給量Wtiをその傾きγで補正した供給量Wγの暖熱を供給するように前記熱交換器を制御する処理を、前記対象物の温度が所定の目標設定温度に達するまで繰り返す
    ことを特徴とする請求項3記載の冷解凍装置。
  5. 前記熱交換器制御部は、
    解凍における暖熱の供給時、所定の時間間隔h3で計測された前記対象物の温度の2点を結ぶ線と平行線との傾きδの変化が減少から増加に変化したタイミングで、暖熱の供給を停止するように前記熱交換器を制御する
    ことを特徴とする請求項3又は4に記載の冷解凍装置。
  6. 前記熱交換器制御部は、
    複数の対象物の解凍のために暖熱を供給時、各対象物について所定の時間間隔h3で計測された2点を結ぶ線と平行線との傾きγを求め、その傾きγが第1所定値よりも大きい対象物があるとき、当該対象物に供給する暖熱の熱量を減少させるよう前記熱交換器を制御し、その傾きγが第2所定値よりも小さい対象物があるとき、当該対象物に供給する暖熱の熱量を増加させるよう熱交換器を制御する処理を、前記複数の対象物の温度差が所定範囲内になるまで繰り返す
    ことを特徴とする請求項4に記載の冷解凍装置。
  7. 前記熱交換器制御部は、
    あらかじめ冷凍された対象物の解凍のみを行う場合、前記対象物が保有する冷熱の熱量Wを計算し、この熱量Wを、設定された解凍の目標時間Lで分割した熱量W/Lの暖熱を供給し、所定の時間間隔h4で計測された前記対象物の温度の2点間を結ぶ線と水平線との角度εを求め、前記角度εが45°になるまで前記熱量W/Lで暖熱を供給するよう前記熱交換器を制御し、
    前記角度εが45°に達した時、前記熱交換器制御部は、現在供給する熱量W/Lに対し、前記角度εを使用した補正式Wε=(W/L)・(ε/45)により、新たに供給する暖熱の熱量Wεを求め、前記対象物の温度が所定の温度tppに到達するまで熱量Wεの暖熱を供給するよう前記熱交換器を制御する
    ことを特徴とする請求項4に記載の冷解凍装置。

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JP7350317B2 (ja) 2020-01-28 2023-09-26 株式会社フリーザーシステム 連続式凍結装置および連続式凍結方法

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