JP2017137786A - 燃料噴射弁制御装置 - Google Patents

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弘智 氏家
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【課題】電磁弁である燃料噴射弁への駆動電圧印加から開弁開始までの遅れ時間を効果的に短縮して精度の良い燃料噴射量制御を行う。【解決手段】内燃機関の燃料噴射弁である電磁弁150への通電を制御して当該電磁弁の弁体の動きを制御する燃料噴射弁制御装置100であって、前記弁体の移動が開始されない範囲の値に設定された予備電流を前記電磁弁へ通電する駆動電流制御部108と、燃焼サイクルにおける燃料噴射開始タイミングの指定が入力されたことに応じて、前記燃料噴射弁に接続された燃料供給ライン内の燃圧を取得して、前記指定された燃料噴射開始タイミングと、前記取得した燃圧とに基づいて、前記予備電流の値を決定する予備電流決定部142と、前記電磁弁の弁体を閉弁位置から開弁位置へ移動させる前に、前記予備電流決定部が決定した予備電流を前記電磁弁に通電するように前記駆動電流制御部を制御する開弁制御部144と、を備える、【選択図】図1

Description

本発明は、例えば内燃機関の燃料噴射弁の開閉を制御する燃料噴射弁制御装置に関し、特に、燃料噴射量を精度良く制御することのできる燃料噴射弁制御装置に関する。
内燃機関の動作を制御するためには、当該内燃機関における燃料噴射量を精度よく制御することが必要となる。このような燃料噴射量の制御は、従来、燃料噴射弁である電磁弁への電圧印加時間を制御することにより行われている。この場合、電圧印加の開始後に電磁弁への通電電流が上昇して弁体が閉弁位置から開弁位置へ動き出すまでの遅れ時間により、実際の燃料噴射量は、電圧印加時間から単純計算される噴射量よりも少なくなる。
この遅れ時間は、電磁弁のインダクタンスや電気抵抗等から或る程度予測することができるため、予め遅れ時間を考慮して、目標燃料噴射量を実現するための電圧印加時間を設定することができる。
しかしながら、通電による発熱等により電磁弁の温度が変われば電磁弁ソレノイドの巻き線抵抗は変化し、さらに、電磁弁ソレノイドの磁気飽和現象等によりインダクタンスも変化し得る。このため、電磁弁ソレノイドの動作状態に依存して電圧印加開始後に通電電流が増加していく速度は変化し、その結果、上記遅れ時間も変動することとなり得る。
このような遅れ時間の変動を抑制する技術として、従来、弁体が当該弁体を閉弁位置に付勢するスプリングの力に打ち勝って移動開始可能となる電流値(移動開始電流)よりも若干少ない電流を、予備電流として予め電磁弁に通電しておき、その後、十分高い駆動電圧を電磁弁に印加することで、弁体を即座に閉弁位置から開弁位置へ移動させることが知られている(特許文献1)。これにより、電磁弁への駆動電圧の印加開始から弁体移動開始までの遅れ時間が短縮される。
しかしながら、移動開始電流の値は、弁体を閉弁位置に付勢するスプリングの力に依存するだけでなく、実際には、弁体に対して働く圧力(例えば、燃料噴射弁に接続される燃料供給ラインの内部圧力(燃圧)や、気筒の内部圧力)にも依存する。このため、予備電流の大きさを上記スプリングの力を参考として一定値に設定したのでは、燃料噴射弁が接続されている内燃機関の運転状態によっては、変動する移動開始電流と予備電流との差が変動して上記遅れ時間に変動が生じたり、予備電流が移動開始電流の値を上回って、駆動電圧の印加前に弁体が僅かに開いてしまう事態が生じ得る。
特開2004−278411号公報
上記背景より、電磁弁である燃料噴射弁への駆動電圧印加から開弁開始までの遅れ時間を効果的に短縮して精度の良い燃料噴射量制御を行うことのできる燃料噴射弁制御装置の実現が望まれている。
本発明の一の態様は、内燃機関の燃料噴射弁である電磁弁への通電を制御して当該電磁弁の弁体の動きを制御する燃料噴射弁制御装置である。当該燃料噴射弁制御装置は、前記弁体の移動が開始されない範囲の値に設定された予備電流を前記電磁弁へ通電する駆動電流制御部と、燃焼サイクルにおける燃料噴射開始タイミングの指定が入力されたことに応じて、前記燃料噴射弁に接続された燃料供給ライン内の燃圧を取得して、前記指定された燃料噴射開始タイミングと、前記取得した燃圧とに基づいて、前記予備電流の値を決定する予備電流決定部と、前記電磁弁の弁体を閉弁位置から開弁位置へ移動させる前に、前記予備電流決定部が決定した予備電流を前記電磁弁に通電するように前記駆動電流制御部を制御する開弁制御部と、を備える。
本発明の他の態様によると、前記弁体の移動が開始する移動開始電流と、前記燃料供給ライン内の燃圧と、燃料噴射タイミングと、の関係を示すテーブルを記憶する記憶部を備え、前記予備電流決定部は、前記記憶装置に記憶された前記テーブルを参照して、前記指定された燃料噴射開始タイミングと前記取得した燃圧とに応じた前記予備電流の値を決定する。
本発明の他の態様によると、前記電磁弁の通電電流の値を検出する電流検出部と、前記電磁弁に電圧を印加して燃料噴射開始タイミングと前記移動開始電流とを測定すると共に、当該移動開始電流が測定されたときの前記燃料供給ライン内の燃圧を取得して、当該測定した燃料噴射開始タイミング及び移動開始電流と、前記取得した燃圧と、に基づいて前記テーブルを作成し、当該作成したテーブルを前記記憶装置に記憶するテーブル作成部と、を備える。
本発明の他の態様によると、前記テーブル作成部による前記テーブルの作成は、前記内燃機関のイグニションスイッチがオンされたときに実行される。
本発明の他の態様によると、前記燃料噴射開始タイミングは、所定の基準クランク角と、前記基準クランク角に達した後の経過時間と、により表現される。
本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁制御装置の構成を示す図である。 図1に示す燃料噴射弁制御装置により作成される予備電流決定テーブルの構成の一例を示す図である。 図1に示す燃料噴射弁制御装置における、予備電流決定テーブル作成時の動作を説明するための図である。 図1に示す燃料噴射弁制御装置における、運用時の開弁制御動作を説明するための図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態の燃料噴射弁制御装置は、車両(以下、自車両という)に搭載され、例えば、自車両の動作を制御する電子制御装置(ECU、Electronic Control Unit)として構成され得る。なお、本実施形態では単独の装置として燃料噴射弁制御装置が構成されるものとしたが、これに限らず、他の装置の一部(例えば、内燃機関の動作を制御するECUの一部)として構成されるものとすることもできる。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁制御装置の構成を示す図である。本燃料噴射弁制御装置100は、昇圧回路102と、スイッチ回路104、106と、駆動電流制御部108と、電流検出部110と、通信インタフェース(通信INF)112と、記憶部114と、処理装置116と、を有する。
昇圧回路102は、外部から供給されるバッテリ電圧Vを昇圧して所定の昇圧電圧Vを出力する。スイッチ回路104及び106は、それぞれ、後述する処理装置116からの指示に従い、外部から供給されるバッテリ電圧V及び昇圧回路102から出力される昇圧電圧Vの、電磁弁150への通電をオンオフする。また、スイッチ回路104及び106の出力側(図示左側)には、逆電流防止のためのダイオード118及び120が、それぞれ配されている。
駆動電流制御部108は、外部から供給されるバッテリ電圧V及び又は昇圧回路102から供給される昇圧電圧Vにより動作し、後述する処理装置116から指示された(又は設定された)電流値となるように、電磁弁150に通電する駆動電流(具体的には、予備電流)を制御する。この駆動電流制御部108は、例えば、処理装置116から指示された大きさの一定電流を出力する定電流回路で構成されるものとすることができる。また、駆動電流制御部108の出力ラインには、逆電流防止のためのダイオード122が配されている。
電流検出部110は、例えば、電磁弁150とグランドとの間に設けられた抵抗器であり、電磁弁150に流れる電流に応じた電圧を電流検出値として後述する処理装置116へ出力する。
通信INF112は、例えばCAN(Controller Area Network)規格に準拠したバス通信を行って、電磁弁150が設けられた内燃機関を備える自車両の動作を制御する他のECU(不図示)との間でのデータ授受を行う送受信機であるものとすることができる。
記憶部114は、揮発性及び又は不揮発性のメモリ(例えば、半導体メモリ)や、ハードディスク等で構成される記憶装置であるものとすることができる。記憶部114には、後述するテーブル作成ユニット132が作成する予備電流決定テーブルが記憶される。
処理装置116は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、プログラムが書き込まれたROM(Read Only Memory)、データの一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)等を有するコンピュータであり、開弁電流検知ユニット130と、テーブル作成ユニット132と、通電制御ユニット134と、を有する。また、通電制御ユニット134は、開弁タイミング決定ユニット140と、予備電流決定ユニット142と、開弁制御ユニット144と、を有する。
処理装置116が備える上記各ユニットは、コンピュータである処理装置116がプログラムを実行することにより実現され、当該コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて又はこれに加えて、上記各ユニットの全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
処理装置116は、開弁電流検知ユニット130とテーブル作成ユニット132とにより、電磁弁150に電圧を印加して、当該電磁弁150の弁体が移動を開始する電流(移動開始電流)と、当該弁体が移動を開始した開弁開始タイミングと、を測定すると共に、上記移動開始電流を測定したときの、電磁弁150に接続された燃料供給ライン内の燃圧を燃圧センサ154から取得する。そして、上記測定した移動開始電流及び開弁開始タイミングと、上記取得した燃圧と、を関連付けた予備電流決定テーブルを作成して、記憶部114に記憶する。ここで、開弁開始タイミングは、燃焼サイクルにおける開弁開始タイミングであり、内燃機関の気筒内部の圧力(以下、気筒内圧)の状態を表している。従って、予備電流決定テーブルは、燃圧と、気筒内圧と、に応じた移動開始電流を与えるものとなる。
また、処理装置116は、通電制御ユニット134により、内燃機関の運用時(すなわち、上記予備電流決定テーブルの作成が行われている期間以外の期間)における当該内燃機関の動作を制御する。その際、通電制御ユニット134は、記憶部114に記憶されている予備電流決定テーブルを用いて予備電流の目標値を決定し、当該目標値の予備電流を開弁前の電磁弁150に通電して、内燃機関の動作を制御する。
上記の構成を有する燃料噴射弁制御装置100は、燃圧と、気筒内圧と、に応じた移動開始電流を示す予備電流決定テーブルを作成して記憶し、当該記憶した予備電流決定テーブルを用いて予備電流の目標値を決定して、当該目標値の予備電流を開弁前の電磁弁150に通電して、内燃機関の動作を制御する。このため、燃料噴射弁制御装置100では、内燃機関の状態に応じた適切な大きさの予備電流を用いて、開弁前に弁体に働く力を移動開始直前の状態に設定することができるので、その後に開弁動作用の駆動電圧を印加すれば即座に弁体を開弁位置へ移動させて燃料噴射を開始することができる。その結果、燃料噴射弁制御装置100では、電磁弁150への駆動電圧印加から開弁開始までの遅れ時間を効果的に短縮して、精度の良い燃料噴射量制御を行うことができる。
以下、各ユニットの具体的な動作について説明する。
開弁電流検知ユニット130は、後述するテーブル作成ユニット132からトリガ信号を受信したことに応じて動作し、スイッチ回路104及び106を制御して電磁弁150へ電圧を印加し、内燃機関の回転を保ちつつ電流検出部110により電磁弁150に流れる電流の時間変化を計測する。そして、開弁電流検知ユニット130は、電圧印加開始から電磁弁150の弁体が動き始めるまでの移動遅れ時間と、当該弁体が動き始める電流(すなわち、移動開始電流)の値を測定して、当該測定した移動遅れ時間と移動開始電流の値とをテーブル作成ユニット132に送る。なお、弁体が動き始めるタイミングと当該弁体が動き始める電流の値の測定方法については、例えば特開2014−31790号公報に開示された手法を用いることができる。
テーブル作成ユニット132は、例えば通信INF112を介してスロットル制御を行うECU(不図示)と通信し、スロットル開度を変化させて内燃機関(不図示)の運転状態を変化させつつ、燃圧センサ154により内燃機関への燃料供給ライン(不図示)の内部の燃圧を測定すると共に、開弁電流検知ユニット130に指示して種々の運転状態における移動遅れ時間と移動開始電流の値とを取得する。その際、テーブル作成ユニット132は、内燃機関に設けられたクランク角センサ152により現在のクランク角を取得し、当該取得したクランク角が予め定めた値(基準クランク角)となったとき、又は予め定めた基準クランク角になったあと所定の時間(トリガ余裕時間)を経過したときに、開弁電流検知ユニット130にトリガ信号を送って、移動遅れ時間と移動開始電流の値と測定させ、当該測定した移動遅れ時間と移動開始電流の値とを取得する。
そして、テーブル作成ユニット132は、基準クランク角と、開弁電流検知ユニット130から取得した移動遅れ時間にトリガ余裕時間を加えたオフセット時間と、燃圧センサ154から取得した燃圧と、開弁電流検知ユニット130から取得した移動開始電流の値と、を関連つけたテーブルを作成して、予備電流決定テーブルとして記憶部114に記憶する。
図2は、テーブル作成ユニット132が作成する予備電流決定テーブルの構成を示す図である。なお、図2に示すθ1、θ2、θ3や、Δt1、Δt2、・・・、P1、P2、・・・、及びI11、I12、・・・等々のシンボルは、実際の予備電流決定テーブルでは具体的な数値であるが、ここでは、予備電流決定テーブルの構成を説明すべく、各値の位置が特定しやすいように、シンボルとして記載している。
予備電流決定テーブルは、例えば移動開始電流を測定したときの基準クランク角毎(図示の例では、基準クランク角=θ1、θ2、θ3、・・・)の表として与えられる。各表の構成は同様であり、例えば基準クランク角=θ1の表では、オフセット時間(Δt1〜Δt9)と燃圧(P1〜P9)とで定まる2次元配列の形式で、各オフセット時間及び各燃圧において実測された移動開始電流の値(I11〜I99)が示されている。ここで、オフセット時間は、上述したように、移動遅れ時間にトリガ余裕時間を加えた時間であり、クランク角が基準クランク角に達してから移動開始電流が実測されるまでの経過時間である。
内燃機関の気筒内の圧力状態は、基本的にはクランク角に従って変化するので、例えば内燃機関の回転速度を一定とすれば、当該オフセット時間は、基準クランク角と相まって、気筒内の種々の圧力状態を間接的に表すパラメータとして用いることができる。したがって、予備電流決定テーブルは、電磁弁150内に設けられた弁体を付勢するスプリングの力と、燃圧と、気筒内圧と、で定まる移動開始電流を示したものとなる。
図3は、予備電流決定テーブルの作成時におけるテーブル作成ユニット132と開弁電流検知ユニット130の動作を説明するための図である。図3(a)、(b)、(c)は、それぞれ、電磁弁150への印加電圧の時間変化(ライン300で示されている)、電磁弁150に流れる電流(通電電流)の時間変化(ライン302で示されている)、電磁弁150の弁体のリフト量(すなわち、閉弁位置から開弁位置への移動量)の時間変化(ライン306で示されている)、を示す図であり、各図において横軸は時間を示している。
時刻tm1に現在のクランク角が所定の基準クランク角に達すると、テーブル作成ユニット132は、当該時刻tm1から所定のトリガ余裕時間Δtm1が経過した時刻tm2に、開弁電流検知ユニット130へトリガ信号を送る。これにより、開弁電流検知ユニット130は、時刻tm2にスイッチ回路106をオンにして昇圧電圧VUを電磁弁150に印加する(図3(a))。これにより、電磁弁150の通電電流は時刻tm2から徐々に増加し(図3(b))、時刻tm3において電磁弁150の弁体が閉弁位置から開弁位置へ向かって移動を開始する(図3(c))。これにより、電磁弁150のインダクタンスが変化することにより通電電流の増加傾きが変化し、時刻tm3において通電電流増加ライン302に屈曲点304が生ずる。
開弁電流検知ユニット130は、当該屈曲点304を検知すると(すなわち、通電電流の増加レートの変化を検知すると)、当該屈曲点304が発生した時刻tm3と電圧印加開始時刻tm2との差Δtm2を移動遅れ時間として測定すると共に、当該時刻tm3における(すなわち、屈曲点304における)電流値Imを移動開始電流として測定する。そして、当該測定した移動遅れ時間Δtm2と移動開始電流Imとを、テーブル作成ユニット132へ送る。
テーブル作成ユニット132は、トリガ余裕時間時間Δtm1と、開弁電流検知ユニット130から受信した移動遅れ時間Δtm2と、を加算した値(Δtm1+Δtm2)をオフセット時間として算出し、当該算出したオフセット時間と、燃圧センサ154から取得される現在の燃圧と、上記基準クランク角と、に基づき、図2に示す予備電流決定テーブル内の対応する位置を特定して、当該特定した位置に、開弁電流検知ユニット130から受信した移動開始電流Imを書き込む。
時刻tm3の後、電磁弁150の弁体は、時刻tm4に開弁位置に達する(図3(c))。続いて、開弁電流検知ユニット130は、電磁弁150の弁体が開弁位置に達するのに十分な時間が経過した時刻tm5に、スイッチ回路106をオフにすると同時にスイッチ回路104をオンにして、電磁弁150にバッテリ電圧VBを印加する(図3(a))。これにより、電磁弁150の通電電流は、開弁状態を維持するのに十分な電流値まで下降し(図3(b))、弁体は開弁位置に維持される(図3(c))。
そして、内燃機関の回転を維持するのに必要な所定量の燃料噴射が完了する時刻tm6に、開弁電流検知ユニット130は、スイッチ回路104をオフにして電圧印加を停止する(図3(a))。これにより、電磁弁150の通電電流はゼロまで下降し(図3(b))、弁体は、時刻tm6から所定時間が経過した時刻tm7に閉弁状態に戻る(図3(c))。なお、時刻tm5〜tm6までの期間においては、開弁電流検知ユニット130は、公知技術に従い、スイッチ回路104をオンオフして電磁弁150をパルス駆動することにより、通電電流の実効値を下げた状態で開弁状態を維持するものとすることができる。
テーブル作成ユニット132は、種々の基準クランク角(例えば、図2に示すθ1、θ2、θ3...)について、トリガ余裕時間を変化させつつ、且つ、他のECUを介してスロットル開度を変化させながら、上記の動作を繰り返し行って、図2に示すような予備電流決定テーブルを作成する。
ここで、図2に示す予備電流決定テーブルでは、燃圧及びオフセット時間が離散的な複数の所定値として定められているが、図3に示す動作においては、移動開始電流を測定したときに取得又は算出される実際の燃圧及びオフセット時間は、それら所定値とは異なる値となり得る。したがって、測定した燃圧及び経過時間が所定値のいずれにも一致しない場合には、複数回の測定における燃圧、オフセット時間、移動開始電流に基づき、所定値の燃圧及びオフセット時間における移動開始電流を、内挿及び又は外挿により算出して、予備電流決定テーブルを作成するものとしてもよい。
また、燃焼サイクルにおける開弁開始タイミングを、基準クランク角とオフセット時間とで表現する場合、同じオフセット時間であっても内燃機関の回転速度が異なれば異なるタイミングを表すものとなる。したがって、一のオフセット時間が一の特定のタイミングを表すように、実測で得たオフセット時間を、当該オフセット時間が測定された時の回転速度(例えば、内燃機関に設けられたエンジン回転センサ(不図示)から取得される)に基づいて、特定の回転速度(例えば、3000rpm)におけるオフセット時間に換算し、当該換算した値を予備電流決定テーブルに用いるオフセット時間とすることが望ましい。
なお、テーブル作成ユニット132が行う上記予備電流決定テーブルの作成は、例えば内燃機関のイグニションスイッチがオンされたとき、又は所定時間以上のアイドリング運転が行われたときに、実行されるものとすることができる。
図1に戻り、通電制御ユニット134は、開弁タイミング決定ユニット140と、予備電流決定ユニット142と、開弁制御ユニット144と、を用いて、内燃機関の実運用時(テーブル作成ユニット132が予備電流決定テーブルを作成していない期間)における、電磁弁150への通電を制御する。
開弁タイミング決定ユニット140は、通信INF112を介して、例えばスロットル制御を行うECU(不図示)から現在のスロットル開度を取得し、当該取得した現在のスロットル開度に基づいて、目標燃料噴射量と、燃料噴射の開始タイミング(すなわち、開弁開始タイミング)と、を決定し、当該決定した目標燃料噴射量と開弁開始タイミングとを、予備電流決定ユニット142と開弁制御ユニット144とに通知する。ここで、開弁タイミング決定ユニット140が予備電流決定ユニット142と開弁制御ユニット144とに通知する開弁開始タイミングは、基準クランク角とオフセット時間とで表されるものとする。
予備電流決定ユニット142は、開弁タイミング決定ユニット140から開弁開始タイミングが通知されたことに応じて、記憶部114に記憶されている図2に示すような予備電流決定テーブルを参照し、当該通知された開弁開始タイミングと、燃圧センサ154から取得される現在の燃圧と、に対応する移動開始電流の値を特定する。そして、予備電流決定ユニット142は、当該特定した移動開始電流の値に所定の係数(例えば、0.8)を乗じた値を予備電流の目標値として決定して、当該決定した予備電流の目標値を開弁制御ユニット144へ通知する。
開弁制御ユニット144は、クランク角センサ152から取得される現在のクランク角と、開弁タイミング決定ユニット140から通知された目標燃料消費量及び開弁開始タイミングと、予備電流決定ユニット142から通知された予備電流の目標値と、に基づき、駆動電流制御部108及びスイッチ回路104、106を制御して、電磁弁150の動作を制御する。
すなわち、開弁制御ユニット144は、開弁タイミング決定ユニット140から通知された開弁開始タイミングより所定の時間だけ前に、予備電流決定ユニット142から通知された予備電流の目標値を駆動電流制御部108に設定して、当該目標値に等しい値の予備電流を電磁弁150に予備通電する。
また、開弁制御ユニット144は、開弁タイミング決定ユニット140から通知された目標燃料消費量に基づき、電磁弁150の目標開弁時間を算出する。
その後、開弁制御ユニット144は、クランク角センサ152から取得される現在のクランク角に基づき、開弁タイミング決定ユニット140から通知された開弁開始タイミングが到来したか否かを判断し、到来したときは、駆動電流制御部108の出力電流値をゼロに設定して電流制御を終了すると同時に、スイッチ回路106をオンにして電磁弁150に昇圧電圧VUを印加して、電磁弁150の弁体を素早く開弁位置へ移動させて燃料噴射を開始する。
ここで、開弁タイミング決定ユニット140から通知された開弁開始タイミングに用いられているオフセット時間が、特定のエンジン回転数におけるオフセット時間に換算された値であるときは、開弁制御ユニット144は、例えば、エンジン回転センサ(不図示)から現在のエンジン回転数を取得して、上記換算されたオフセット時間から、現在のエンジン回転数におけるオフセット時間を算出し、当該算出したオフセット時間を用いて、開弁開始タイミングの到来を判断するものとすることができる。
続いて、開弁制御ユニット144は、スイッチ回路106をオンにしてから電磁弁150の弁体が開弁位置へ移動するのに十分な時間の経過後に、スイッチ回路106をオフにすると同時にスイッチ回路104をオンにして、電磁弁150にバッテリ電圧VBを印加することで開弁状態を維持する。
そして、開弁制御ユニット144は、スイッチ回路106をオンにした時刻から、上記算出した目標開弁時間が経過したときに、スイッチ回路104をオフにして、燃料噴射を終了する。
図4は、通電制御ユニット134により実行される、運用時における開弁制御動作を説明するための図である。図4(a)、(b)、(c)は、それぞれ、電磁弁150へ印加される電圧(印加電圧)の時間変化(ライン400で示されている)、電磁弁150に流れる電流(通電電流)の時間変化(ライン402で示されている)、電磁弁150の弁体のリフト量(すなわち、閉弁位置から開弁位置への移動量)の時間変化(ライン404で示されている)、を示す図であり、各図において横軸は時間を示している。
ここで、通電制御ユニット134は、既に、開弁タイミング決定ユニット140により燃料噴射開始タイミングと燃料噴射量と、を決定して予備電流決定ユニット142及び開弁制御ユニット144に通知しており、且つ、予備電流決定ユニット142は、当該通知された燃料噴射開始タイミングと、燃圧センサ154から取得される現在の燃圧とに基づいて、記憶部114が記憶する予備電流決定テーブルを参照し、対応する移動開始電流Isに所定の係数(例えば0.8)を乗じて予備電流目標値Ipを決定して開弁制御ユニット144に通知しているものとする。
まず、通電制御ユニット134の開弁制御ユニット144は、上記通知された燃料噴射開始タイミングが到来する前の時刻to1に、予備電流決定ユニット142から通知された予備電流目標値Ipを駆動電流制御部108に設定して、電磁弁150に大きさIpの予備電流を通電する(図4(b))。このとき、当該予備電流に応じた電圧が電磁弁150に印加されることとなる(図4(a))。これにより、電磁弁150の弁体に働く力は移動開始寸前の状態となり、開弁開始の準備が整う。
開弁制御ユニット144は、クランク角センサ152から取得した現在のクランク角に基づいて、上記通知された燃料噴射開始タイミングが到来したか否かを判断し、当該燃料噴射開始タイミングが到来した時刻to2に、スイッチ回路106をオンにして、開弁開始のための駆動電圧である昇圧電圧VUを電磁弁150に印加する(図4(a))。これにより、電磁弁150への通電電流は上昇し(図4(b))、弁体は、通電電流が移動開始電流Isに達した時刻to3に開弁位置への移動を開始する(図4(b)(c))。ここで、通電されていた予備電流Ipは移動開始電流Isに近い値(例えばIsの80%)であるので、駆動電圧(ここでは、昇圧電圧VU)の印加時刻to2から開弁が開始する時刻to3までの遅れ時間は適切に短縮され、即座に開弁が開始されて燃料噴射が行われることとなる。
続いて、開弁制御ユニット144は、電磁弁150の弁体が開弁位置に達するのに十分な時間が経過した時刻to4に、スイッチ回路106をオフにすると同時にスイッチ回路104をオンにして、電磁弁150にバッテリ電圧VBを印加する(図4(a))。これにより、電磁弁150の通電電流は、開弁状態を維持するのに十分な電流値まで下降し(図4(b))、弁体は開弁位置に維持される(図4(c))。
そして、開弁タイミング決定ユニット140から通知された目標燃料噴射量の噴射が完了する時刻to5に、開弁制御ユニット144は、スイッチ回路104をオフにして電圧印加を停止する(図4(a))。これにより、電磁弁150の通電電流はゼロまで下降し(図4(b))、弁体は、時刻to5から所定時間が経過した時刻to6に閉弁状態に戻る(図4(c))。なお、時刻to4〜to5の期間においては、開弁制御ユニット144は、公知技術に従い、スイッチ回路104をオンオフして電磁弁150をパルス駆動することにより、通電電流の実効値を下げた状態で開弁状態を維持するものとすることができる。
以上説明したように、本実施形態の燃料噴射弁制御装置100は、例えばイグニションスイッチをオンしたときに、燃圧と、気筒内圧と、に応じた移動開始電流を示す予備電流決定テーブルを作成して記憶し、運用時には、当該記憶した予備電流決定テーブルを用いて予備電流の大きさを決定し、当該決定した大きさの予備電流を開弁前に電磁弁150に通電するので、電磁弁150への駆動電圧印加から開弁開始までの遅れ時間を効果的に短縮して、精度の良い燃料噴射量制御を行うことができる。
100・・・燃料噴射弁制御装置、102・・・昇圧回路、104、106・・・スイッチ回路、108・・・駆動電流制御部、110・・・電流検出部、112・・・通信インタフェース、114・・・記憶部、116・・・処理装置、118、120、122・・・ダイオード、130・・・開弁電流検知ユニット、132・・・テーブル作成ユニット、134・・・通電制御ユニット、140・・・開弁タイミング決定ユニット、142・・・予備電流決定ユニット、144・・・開弁制御ユニット、150・・・電磁弁、152・・・クランク角センサ、154・・・燃圧センサ。

Claims (5)

  1. 内燃機関の燃料噴射弁である電磁弁への通電を制御して当該電磁弁の弁体の動きを制御する燃料噴射弁制御装置であって、
    前記弁体の移動が開始されない範囲の値に設定された予備電流を前記電磁弁へ通電する駆動電流制御部と、
    燃焼サイクルにおける燃料噴射開始タイミングの指定が入力されたことに応じて、前記燃料噴射弁に接続された燃料供給ライン内の燃圧を取得して、前記指定された燃料噴射開始タイミングと、前記取得した燃圧とに基づいて、前記予備電流の値を決定する予備電流決定部と、
    前記電磁弁の弁体を閉弁位置から開弁位置へ移動させる前に、前記予備電流決定部が決定した予備電流を前記電磁弁に通電するように前記駆動電流制御部を制御する開弁制御部と、
    を備える、
    燃料噴射弁制御装置。
  2. 前記弁体の移動が開始する移動開始電流と、前記燃料供給ライン内の燃圧と、燃料噴射タイミングと、の関係を示すテーブルを記憶する記憶部を備え、
    前記予備電流決定部は、前記記憶装置に記憶された前記テーブルを参照して、前記指定された燃料噴射開始タイミングと前記取得した燃圧とに応じた前記予備電流の値を決定する、
    請求項1に記載の燃料噴射弁制御装置。
  3. 前記電磁弁の通電電流の値を検出する電流検出部と、
    前記電磁弁に電圧を印加して燃料噴射開始タイミングと前記移動開始電流とを測定すると共に、当該移動開始電流が測定されたときの前記燃料供給ライン内の燃圧を取得して、当該測定した燃料噴射開始タイミング及び移動開始電流と、前記取得した燃圧と、に基づいて前記テーブルを作成し、当該作成したテーブルを前記記憶装置に記憶するテーブル作成部と、
    を備える、
    請求項2に記載の燃料噴射弁制御装置。
  4. 前記テーブル作成部による前記テーブルの作成は、前記内燃機関のイグニションスイッチがオンされたときに実行される、
    請求項3に記載の燃料噴射弁制御装置。
  5. 前記燃料噴射開始タイミングは、所定の基準クランク角と、前記基準クランク角に達した後の経過時間と、により表現される、
    請求項1ないし4のいずれか一項に記載の燃料噴射弁制御装置。
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