JP2017137465A - ポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の再利用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】廃家電に内蔵されていたポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物の有効な再利用方法の提供。【解決手段】原料のポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物が廃家電に含まれるポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物であって、該製造方法が、上記原料100質量部に対して、5〜15質量部のエラストマーと3〜7質量部の二酸化チタンとを加えて樹脂混合物とした後、この樹脂混合物を加熱溶融することにより、オフィスチェア製造用の再生熱可塑性樹脂組成物を得ることを含む方法。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の再利用方法に関する。本発明は特に、廃家電に含まれるポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物から得られたオフィスチェア部品製造用熱可塑性樹脂の再生方法および該樹脂組成物の成形体であるオフィスチェアに関する。に関する。
近年生産され、使用されている家庭用電化製品(以下、家電製品という)、自動車、事務用品、家具、日用品などの様々な商品あるいはその部品には、加熱溶融を介しての成形が容易な熱可塑性樹脂の成形体が大量に使用されている。なかでも、ポリプロピレン樹脂は、軽量かつ安価でありながら、実用的には充分満足できるレベルの耐久性、耐衝撃性、そして耐熱性を示すため、各種の成形体製造用の樹脂材料として使用されることが多い。従って、成形体材料としてのポリプロピレン樹脂の使用量は熱可塑性樹脂のなかでも圧倒的に多くなっている。
このような熱可塑性樹脂の使用量の急激な増加に伴い、その成形体製品廃棄物の再資源化の要求が高まっている。例えば、家電製品については、平成13年に家電リサイクル法が制定され、それ以来、合成樹脂製品廃棄物の再資源化が義務化されている。このため、冷蔵庫(電気冷蔵庫)、洗濯機、テレビジョンに代表される家電製品の廃棄物の再資源化の取り組みの機運が急速に高まり、家電製品の製造メーカーでは、廃棄された家電製品の効率的な再資源化のための研究や技術開発が進められている。 また、家電製品の製造メーカー以外にも、廃棄された家電製品の再資源化を業とする独立業者も現れ、同様に家電製品廃棄物の再利用(再資源化)のための技術開発を行いながら、実際に家電製品の再資源化のビジネスを行っている。
各種家電製品に用いられている熱可塑性樹脂成形体の代表例としては、冷蔵庫の内部に収容(内蔵)されている野菜ケースなどの各種容器がある。さらには、洗濯機(電気洗濯機)の内部に取り付けられているドラム、映像表示機器および各種の部品が取り付けられているテレビジョンの筐体などが挙げられる。
各種家電製品に内蔵あるいは取り付けられている熱可塑性樹脂の成形体の再利用のための代表的な方法には、(i)廃家電製品からの熱可塑性樹脂成形体の分離、(ii)分離された熱可塑性樹脂成形体の粉砕、(iii)得られた粉砕物からの異物と難溶融性塊状物の除去、(iv)異物と難溶融性塊状物を除去した粉砕物への副材料等の添加材及び/又は物性調整成分としての添加剤の添加、(v)添加材及び/又は添加剤が添加された粉砕物組成物の加熱溶融と粒状化(またはペレット化)による再生樹脂の調製が含まれる。ただし、廃家電製品をそのまま粉砕した後に、熱可塑性樹脂成形体を分離処理することもあり、また上記粉砕物組成物の加熱溶融物を粒状化(またはペレット化)することなく、再生樹脂成形体の成形原料として用いることもある。
すなわち、各種家電製品に内蔵あるいは取り付けられている熱可塑性樹脂の成形体の再利用に際して、その熱可塑性樹脂をそのままで再生樹脂成形体の成形材料とすることは殆どない。その理由は、それらの熱可塑性樹脂の成形体は、未使用の熱可塑性樹脂(バージン樹脂という)に比べて、成形時に加えられる熱処理や経年使用に起因する物性劣化などの劣化が発生している点があげられる。
従って、廃家電製品から得た熱可塑性樹脂成形体を原料として、新たな成形体の製造のための再生樹脂を得るためには、添加成分を入れることを行っているケースが多い。 通常、追加の熱可塑性樹脂、機械物性調整のためのゴム成分、タルクなどの充填材を代表とする添加材、成形体の着色や混在異物の不可視化などを目的とする顔料、滑剤などの成形性向上のための添加剤がある。そして酸化防止剤、光安定剤、顔料分散剤、分子量調整剤などの少量添加成分などの添加材及び/または添加剤の一種もしくは二種以上が選択されて添加される。
廃家電製品から得た熱可塑性樹脂成形体を原料として得た再生熱可塑性樹脂を新たな成形体の製造のための成形材料として再利用する場合の代表的な態様は下記の二つに大別される。(1)原料とした廃家電製品の熱可塑性成形体と同種の熱可塑性樹脂成形体の成形材料として使用する。(2)原料とした廃家電製品の熱可塑性成形体とは異なる種類の熱可塑性樹脂成形体の成形材料として使用する。
上記(1)の再利用態様の例としては、特許文献1の[0006]に、廃棄された洗濯機の水槽を,同じく洗濯機の水槽の成形に再利用すること、そして廃棄されたエアコン(エアコンディショナー)のキャビネットを、同じくエアコンのキャビネットの製造に再利用することの記載がある。
上記(2)の再利用態様の例としては、特許文献1の[0005]に、廃家電製品から得た再生樹脂を、元の部品よりもかなり低品位の部品や製品、例えば、パレットやコンテナの製造に利用することの記載がある。
また、特許文献2〜4には、上記(2)の再利用態様として、廃棄された自動車バンパーを再生処理して自動車内装部品として用いる樹脂成形体の製造原料として利用することの記載がある。
上記の廃家電製品の熱可塑性樹脂成形体の再利用としては、再生樹脂から得られる熱可塑性樹脂成形体の付加価値が高くなる点および分別の手間による経済的観点から(1)の態様の再利用が望ましい。しかし、冷蔵庫の野菜ケース、掃除機やエアコンなどの異種の家電廃材を混合したものを使用する再生利用は、同種の家電製品廃材を分別する操作を要としない経済的メリットがある。しかしながら、同種の廃材のみを利用することに比べて物性のばらつきが大きく、再生処理する際の材料設計に支障をきたす場合が多い。
本発明の発明者は、異種家電製品の混合物に内蔵もしくは取り付けられているポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の再利用に関する検討を行った。
上記の状況を考慮しながら、本発明の発明者は、異種廃家電製品の混合物に内蔵もしくは取り付けられているポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の再利用に関する更なる検討を行った。そして、その検討の結果、異種家電製品に内蔵もしくは取り付けられている一般
のポリプロピレン樹脂成形体はポリプロピレン樹脂に5〜15質量%程度のゴム成分が加えられた組成物の成形体であり、タルクを殆ど含むことはないが、そのポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物100質量部に対して、5〜15質量部のエラストマーと3〜7質量部の二酸化チタンを加えて樹脂混合物とした後、この樹脂混合物を加熱溶融することにより、オフィスチェアの製造に適した再生熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出した。
すなわち、該廃家電の混合物に内蔵もしくは取り付けられるポリプロピレン樹脂成形体は、各家庭や事務所などでの多種類の各種材料の繰り返し使用において加えられる衝撃に対抗する充分な強度を必要とするため、ポリプロピレン樹脂に5〜15質量%のゴム材料を加えて調製したポリプロピレン樹脂組成物を成形材料として成形し、これにより高い耐衝撃強度を示す樹脂成形体とされている。このため、その樹脂成形体の廃棄物であっても、その耐衝撃強度は高いレベルにある。
一方、オフィスチェアは、一般に高い衝撃強度と高い曲げ弾性率が必要とされる。例えば、衝撃強度(シャルピー衝撃強度)は、10.0kJ/m2以上であり、曲げ弾性率は1000MPa以上の値が必要とされる場合が多い。
本発明を利用することにより、該廃家電の混合物に内蔵もしくは取り付けられているポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物に、エラストマーおよび二酸化チタンを、高いレベルの耐衝撃強度および曲げ弾性率を付与することを可能とする量にて添加することにより、オフィスチェアの成形材料として実用上において充分な物性を示す再生熱可塑性樹脂を得ることが可能となった。
従って、本発明は、ポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物を原料としてポリプロピレン樹脂成形体製造用の再生熱可塑性樹脂組成物を製造する方法において、原料のポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物が異種廃家電の混合物に内蔵もしくは取り付けられていたポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物であって、該製造方法が、上記原料100質量部に対して、5〜15質量部のエラストマーと3〜7質量部の二酸化チタンとを加えて樹脂混合物とした後、この樹脂混合物を加熱溶融することにより、オフィスチェア製造用の再生熱可塑性樹脂を得ることを含む方法にある。 なお、原料のポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物には、該廃家電の混合物に内蔵もしくは取り付けられていたポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物以外の粉砕物が少量(例えば、30質量%以下)含まれていてもよい。
本発明の再生熱可塑性樹脂組成物を得る方法における好ましい態様を以下に記載する。(1)廃家電の混合物に内蔵されていたポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物が異種廃家電由来のもの(具体的には、冷蔵庫の野菜ケース、掃除機やエアコンなど)である。(2)得られる再生熱可塑性樹脂組成物から加熱溶融を経て得られる成形体が1500MPa以上の曲げ弾性率を示す成形体となる。(3)得られる再生熱可塑性樹脂から加熱溶融を経て得られる成形体が5.0kJ/m2以上のシャルピー衝撃強度を示す成形体となる。
本発明は、上記の本発明の方法により得られたオフィスチェア製造用の再生熱可塑性樹脂組成物にもある。
本発明はまた、上記の本発明の方法により得られた再生熱可塑性樹脂組成物の加熱溶融と成形により得られたオフィスチェア部材にもある。
本発明の再生熱可塑性樹脂の製造方法を利用することにより、従来では経済性の高い再利用方法が見出されていなかった異種廃家電の混合物に内蔵もしくは取り付けられているとされていたポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物から、オフィスチェアの製造の付加価値の高い成形体材料としての有効利用が可能となる。
本発明のポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の再利用方法の対象となる廃棄物は、前述のように、廃棄された異種廃家電の混合物に内蔵もしくは取り付けられていたポリプロピレン樹脂成形体である。異種廃家電の混合物に内蔵もしくは取り付けられていたポリプロピレン樹脂成形体としては、冷蔵庫の野菜ケース、洗濯機のドラム、電気掃除機本体の底部およびエアコンデ
ィショナー室外機のファンガード或いはエアコンディショナー室内機もしくは室外機のキャビネットなどである。ただし、これらは一例であり、上記記載の家電製品に限定されるものではない。
ィショナー室外機のファンガード或いはエアコンディショナー室内機もしくは室外機のキャビネットなどである。ただし、これらは一例であり、上記記載の家電製品に限定されるものではない。
ポリプロピレン樹脂製の冷蔵庫の野菜ケースの場合、ポリプロピレン樹脂に5〜15質量%程度のゴム成分が加えられた組成物で、タルクを殆ど含むことのない(例えば、1質量%以下)樹脂組成物の成形体を挙げることができる。
ポリプロピレン樹脂製の洗濯機の台枠の場合、ポリプロピレン樹脂に0〜10質量%程度のゴム成分が加えられた組成物で、0〜5質量%のタルクを含む樹脂組成物の成形体を挙げることができる。
ポリプロピレン樹脂製の電気掃除機本体の底部の場合、ポリプロピレン樹脂に0〜15質量%程度のゴム成分が加えられた組成物で、0〜20質量%のタルクを含む樹脂組成物の成形体を挙げることができる。
ポリプロピレン樹脂製のエアコンディショナー室外機のファンガード或いはエアコンディショナー室内機もしくは室外機のキャビネットの場合、ポリプロピレン樹脂に0〜10質量%程度のゴム成分が加えられた組成物で、0〜20質量%のタルクを含む樹脂組成物の成形体を挙げることができる。
廃棄された家電混合物に内蔵もしくは取り付けられていたポリプロピレン樹脂成形体の粉砕物の原料成分は、たとえば冷蔵庫の場合、先に廃棄冷蔵庫から取り外されたポリプロピレン樹脂成形体を粉砕処理して得た粉砕物であってもよく、あるいは廃棄冷蔵庫をそのまま、あるいはモータなどの主要電気部品を取り外した状態で破砕処理して得た破砕物か
ら分離回収したポリプロピレン樹脂成形体の破砕物あるいはその粉砕物であってもよい。
ただし、いずれの方法で得た粉砕物であっても、以下に述べる粉砕物の予備処理を行うことが望ましい。ただし、本発明の再生熱可塑性樹脂の製造方法において、この予備処理の実施は必須ではない。
粉砕物の予備処理は、粉砕物を順に、塊状物を分離除去する工程、粉末状のポリプロピレン樹脂を分離除去する工程、そして比重差を利用してポリプロピレン樹脂以外の固形成分を分離除去する工程を含む。
上記の粉砕物の予備処理は、特に品質低下が発生しているポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の粉砕物から、良好な品質の再生樹脂(再生熱可塑性樹脂成形体製造材料)を得るために有効な三つの工程を特定の順序にて行うことに特徴がある。添付図面の図1に、この予備処理方法にて実施する各工程、そして予備処理を施したポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の粉砕物から、溶融混練押出工程とペレット化工程を経て再生樹脂を得る方法の工程のフロー図を示す。
以下に、廃棄された異種家電混合物に内蔵もしくは取り付けられていたポリプロピレン樹脂成形体の粉砕物の予備処理方法にて実施する各工程の説明、そして各工程が特定の順序とする必要性に関する詳しい説明を記載する。
<第1工程:粉砕物から塊状物を分離除去する工程> 第1工程は、ポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の粉砕物から、ポリプロピレン樹脂の塊状物を分離除去する工程である。ここで「ポリプロピレン樹脂の塊状物」とは、実質的にポリプロピレンのみからなる塊状物及びポリプロピレン樹脂と金属材料破片などの異種材料とで形成されている塊状物を意味する。また、分離除去の対象となる「塊状物」とは、球体換算サイズとして、直径が15mm〜50mmの範囲に入るものを意味する。ただし、分離除去される塊状物にこの範囲のサイズ以外の粉砕物もしくは粉砕物の塊が含まれていてもよい。
従って、粉砕物から再生樹脂を得るための予備処理方法では、粉砕物から塊状物を分離除去する工程を最初に行うことが望ましい。ただし、人手による異物の除去操作や、磁石を利用した金属材料の除去操作を、この「粉砕物から塊状物を分離除去する工程」より先に行なうことも好ましい。
図2に、上記の予備処理方法に含まれる第1工程である「塊状物を分離除去する工程」の実施に用いることのできる振動篩の構造の例を示す模式図を示す。図2に示した振動篩は、重比重物と軽比重物とを選別するための乾式選別機として既に市販されている装置であるが、本発明では、この振動篩を塊状物の分離除去装置として使用することができる。
図2に示した振動篩10では,両側面に吸気用の開口を形成した箱形の筐体11の内部にモータ12に接続された送風機13が設置され、筐体の両側面から取り入れた空気を送風機13により上方に送るようにされている。筐体11の上方には、ばねを内包する帆布14により枠体15が支持されている。枠体15には、空気流を整流するための整流格子16と通風多孔膜17を介して選別デッキ(スクリーン)18が傾斜状態で設置されている。
回収された異種家電混合物に内蔵もしくは取り付けられているポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の粉砕により得られた粉砕物は、人手による予備選別や磁石を利用した金属材料除去処理を任意に行った後、振動状態とされている振動篩10の選別デッキ18の上面に注ぎ込まれる。振動状態の選別デッキ18の上面に注ぎ込まれた粉砕物は、傾斜配置されている選別デッキから付与される振動により振動し、塊状物(あるいは大きな破片、粗大粒子)は、選別デッキ18で高い位置にある側(図2では、左側)に徐々に移動し、選別デッキ18の最も高い位置に隣接して備えられている塊状物出口19から排出される。一方、標準的な大きさの粒子や粉末状粒子は低い位置にある側(図2では、右側)に徐々に移動し、選別デッキ18の最も低い位置に隣接して備えられている原料粉砕物出口20から回収される。
<第2工程:粉末状のポリプロピレン樹脂を分離除去する工程> 上記の第1工程を経た原料粉砕物は、所望により磁石を用いた金属材料除去処理を行った後に、粉末状のポリプロピレン樹脂粉末を分離除去する工程(第2工程)に供される。この第2工程は、風力の作用を利用して、相対的に直径が大きい粒子と微粒子状の粉末とを分離するための工程である。ポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の粉砕物から再生樹脂を得るための処理方法において、このポリプロピレン樹脂粉末を分離除去する工程の実施が好ましいとする理由は次の通りである。
上記のように予備処理を行った原料粉砕物(ポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の粉砕物)は通常、次いで再生ポリプロピレン樹脂成形体製造用の材料(再生樹脂)として使用するために、溶融混練押出工程とペレット化工程に供せられる。前者の溶融混練押出工程では、原料粉砕物は、加熱された混練機に投入され、加熱下で溶融混練が行われる。この原料粉砕物の混練機への投入は混練機に設置されているホッパーを介して行われるが、混練機に設置されているホッパーも、混練機の加熱により高温に加熱されることになる。本発明者の調査によると、原料粉砕物を高温となっているホッパーに投入すると、ホッパーの下部の細くなっている管部で熱可塑性樹脂粉末が溶融を始め、このため管部を閉塞させるというトラブルを発生させやすいことが判明した。このようなホッパーの下部の管部の閉塞が発生すると、混練操作を一旦中断しなければならないこともあり、効率的な再生ポリプロピレン樹脂成形体製造材料の製造には大きな障害となる。
上記の風力の作用を利用して相対的に直径が大きい粒子と微粒子状の粉末とを分離するための第2工程は、添付図面の図3に示したような構成の風力選別装置を利用して行うことが有利である。図3において、風力選別装置30は、原料粉砕物供給口31、粒子状粉砕物回収口32、そして粉末回収口33を備えた箱状の筐体34から構成されている。風力選別装置30の略中央部には、筐体内部で回転空気流を作り出すシロッコファン35が設置されている。
第1工程の処理により塊状物が分離除去された原料粉砕物は、シロッコファン35を作動させることにより回転空気流が作り出された風力選別装置30の原料粉砕物供給口31から投入される。投入された原料粉砕物は、回転空気流と接触し、原料粉砕物に含まれていたポリプロピレン樹脂粉末及びその他の軽量粉末は、回転空気流と共に上方に移動し、その後落下して粉末回収口33に到達する。
なお、この第2工程では、主として、相対的に粒子径の小さなポリプロピレン樹脂粉末が分離除去されるが、併せて、混在している場合があるパルプ類、微粒子状のゴム成分、微粒子状の熱硬化性樹脂成分なども分離除去される。
また、この第2工程であるポリプロピレン粉末を分離除去する工程は、図3に示したような回転空気流を利用する装置を用いる代わりに、図2に示した振動篩による塊状物の分離操作の際に下部の送風機から吹き上げられる空気流により選別デッキから吹き上げられ
るポリプロピレン樹脂粉末を、集塵機を利用して回収除去する方法を利用して実施することも可能である。
<第3工程:比重差を利用してポリプロピレン樹脂以外の固形成分を分離除去する工程> ポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の粉砕物から再生樹脂を得るための処理方法において、比重差を利用することによりポリプロピレン樹脂以外の固形成分を除去する操作自体は一般的に利用されている操作である。
比重差を利用してポリプロピレン樹脂以外の固形成分を分離除去する工程で最も一般的な比重差分離装置は、媒体として水を用いる比重差分離装置である。すなわち、比重差分離装置は、比重差による選別のための媒体として水を収容している容器、そして処理対象の粉砕物を投入する投入口と回収目的のポリプロピレン樹脂粒子を取り出すための回収口を含む基本構成からなる。そして、処理対象の粉砕物を投入口から投入し、回収口側に移動させることにより、通常は、軽量(比重が1.0未満)のポリプロピレン樹脂粒子が浮上した状態で移動し、一方、比重が1.0以上の粒子(例、残留していた金属粒子、セラミック粒子、ゴム成分)は、水中に沈降する。なお、比重が1.0以上の合成樹脂粒子が混在していれば、それも同様に沈降する。従って、この第3工程において、回収対象のポリプロピレン樹脂と、回収対象外の混在樹脂成分(比重の大きな熱可塑性樹脂成分および熱硬化性樹脂成分)の分離除去を行うこともできる。また、所望により、分散媒体として水より比重が大きい液体を使用することによって、比重が1.0以上の熱可塑性樹脂粒子を金属成分などから分離回収することも可能である。
以上に説明した各工程により、ポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の粉砕物から再生樹脂を得るための処理(予備処理)は完了する。
上記のようにポリプロピレン樹脂成形体廃棄物の粉砕物の予備処理により得られたポリプロピレン樹脂粒子から再生樹脂を得るためには通常、そのポリプロピレン樹脂粒子を混練機に投入し、加熱溶融状態で混練と押出を行い、次いでペレット化する。このようなポリプロピレン樹脂材料の溶融混練押出操作とペレット化操作は、未使用(バージン)のポリプロピレン樹脂材料を原料としてポリプロピレン樹脂ペレットを得るための操作として公知である。
ポリプロピレン樹脂粒子あるいはポリプロピレン樹脂ペレットには、樹脂成形体として利用するに際して、本発明に従って、原料となるポリプロピレン樹脂粒子あるいはポリプロピレン樹脂ペレット100質量部に対して、5.0〜15.0質量部のエラストマーと3.0〜7.0質量部の二酸化チタンとが加えられて樹脂混合物とされる。タルクの添加量と二酸化チタンの添加量は、最終的に製造される樹脂成形体に要求される衝撃強度、曲げ弾性率、比重、MFRなどの諸物性を考慮して決められる。また、この樹脂混合物には必要に応じて、その他の添加材や添加剤を加えることもできる。
本発明で所望の耐衝撃性ならびに曲げ弾性率を得るためには、エラストマーを混入することが好ましい。エラストマーとしては、原料のポリプロピレンとの相溶性の
観点からポリオレフィン系のエラストマーが好ましい。具体的にはエチレン-ブテンゴム、エチレン-プロビレンゴム、エチレン-オクテンゴムなどがあげられる。これらのエラストマーを単独で使用しても良く、あるいは組み合わせて使用しても良い。
観点からポリオレフィン系のエラストマーが好ましい。具体的にはエチレン-ブテンゴム、エチレン-プロビレンゴム、エチレン-オクテンゴムなどがあげられる。これらのエラストマーを単独で使用しても良く、あるいは組み合わせて使用しても良い。
使用する量としては、原料となるポリプロピレン樹脂粒子あるいはポリプロピレン樹脂ペレット100質量部に対して、5.0〜15.0質量部が良く、6.0〜13.0がより好ましく、7.0〜12.0が特に好ましい。
[実施例1] 廃棄処分された異種家電混合物(ポリプロピレン樹脂成形体)の粉砕物(大部分の粉砕物の粒径は約10〜15mmの範囲にあるが、粒径が10mm未満の粉砕物及び粒径が15mm以上で50mm以下の粉砕物もそれぞれ少量ずつ混在していた)を入手した。 この異種家電混合物の粉砕物は、主にポリプロピレン樹脂からなる粉砕物であって、検出可能な量のタルクやゴムは含まれていなかった。また、この粉砕物そして粉砕物から作製したテストピースの測定により得られた物性値は下記の通りであった。 MFR:30g/10分 比重:0.91 曲げ弾性率:1500MPa シャルピー衝撃強度:6.0kJ/m2
上記の粉砕物について、予備処理を施した。すなわち、粉砕物500kgを、図2に示した振動篩の選別デッキ上に投入し、振動篩の下部に設置された送風機から空気流を上方に送りながら、振動篩を作動させた。この振動篩による粉砕物の選別処理により、ポリプロピレン樹脂を主成分とする塊状物の大部分が分離除去され粉砕物480kgが得られた。次いで、塊状物の大部分が分離除去された粉砕物を図3に示した風力選別装置に投入し、主としてポリプロピレン樹脂粉末からなる微粒子を分離除去した。その結果として回収された粉砕物は478kgであった。
上記の風力選別装置から取り出された粉砕物は、次に水を分散媒体とし、比重差を利用する分離装置に投入し、公知の方法に従って、金属成分などの比重が1.0以上の混入物を沈降させた。次いで、分離装置から回収した後、乾燥することにより、粒径が揃った粒状の再生ポリプロピレン樹脂470kgが得られた。
得られた粒状の再生ポリプロピレン樹脂90.0質量部に、エチレン‐プロピレン共重合ゴム10.0質量部、二酸化チタン5.0質量部、酸化防止剤や光安定剤などの少量添加成分0.75質量部、そして有彩色顔料0.30質量部を添加して、樹脂成形体製造用のポリプロピレン樹脂組成物を得た。
得られたポリプロピレン樹脂組成物を混練機に投入して250℃にて加熱溶融して混練した後、混練機より押出、次いでペレット化装置を用いてポリプロピレン樹脂ペレット460kgを得た。この粒状のプロピレン樹脂の混練機における溶融混練操作はトラブルが発生すること無く極めて円滑に実施できた。
次いで、上記のポリプロピレン樹脂ペレットを射出成形機に投入して射出成形することにより成形体(テストピース)を製造したところ、優れた外観と品質を持つポリプロピレン樹脂成形体が得られた。
上記のポリプロピレン樹脂ペレットそして該ペレットから作製したテストピースの測定により得られた物性値は下記の通りであり、曲げ弾性率は若干低下したが、シャルピー衝撃強度は顕著に向上した。その結果、得られた樹脂ペレットは、オフィスチェア用製造に充分な物性を持つ再生樹脂であることが確認された。 MFR:25g/10分 比重:0.94 曲げ弾性率:1100MPa シャルピー衝撃強度:12.0kJ/m2[実施例2] 同じ原料
上記の粉砕物について、実施例1で行った予備処理と同様な予備処理を施して、粒径が揃った粒状の再生ポリプロピレン樹脂を得た。
得られた粒状の再生ポリプロピレン樹脂90.0質量部に、エチレン‐プロピレン共重合ゴム5.0質量部、二酸化チタン5.0質量部、酸化防止剤や光安定剤などの少量添加成分0.75質量部、そして有彩色顔料0.30質量部を添加して、樹脂成形体製造用のポリプロピレン樹脂組成物を得た。
得られたポリプロピレン樹脂組成物を混練機に投入して250℃にて加熱溶融して混練した後、混練機より押出、次いでペレット化装置を用いてポリプロピレン樹脂ペレット460kgを得た。この粒状のプロピレン樹脂の混練機における溶融混練操作はトラブルが発生すること無く極めて円滑に実施できた。
次いで、上記のポリプロピレン樹脂ペレットを射出成形機に投入して射出成形することにより成形体(テストピース)を製造したところ、優れた外観と品質を持つポリプロピレン樹脂成形体が得られた。
上記のポリプロピレン樹脂ペレットそして該ペレットから作製したテストピースの測定により得られた物性値は下記の通りであり、曲げ弾性率は若干低下したが、シャルピー衝撃強度は顕著に向上した。その結果、得られた樹脂ペレットは、オフィスチェア用製造に充分な物性を持つ再生樹脂であることが確認された。 MFR:28g/10分 比重:0.94 曲げ弾性率:1200MPa シャルピー衝撃強度:10.0kJ/m2 [比較例1]同じ原料
上記の粉砕物について、実施例1で行った予備処理と同様な予備処理を施して、粒径が揃った粒状の再生ポリプロピレン樹脂を得た。
得られた粒状の再生ポリプロピレン樹脂100.0質量部に、二酸化チタン4.9質量部、酸化防止剤や光安定剤などの少量添加成分0.75質量部、そして有彩色顔料0.30質量部を添加して、樹脂成形体製造用のポリプロピレン樹脂組成物を得た。
得られたポリプロピレン樹脂組成物を混練機に投入して250℃にて加熱溶融して混練した後、混練機より押出、次いでペレット化装置を用いてポリプロピレン樹脂ペレット460kgを得た。この粒状のプロピレン樹脂の混練機における溶融混練操作はトラブルが発生すること無く極めて円滑に実施できた。
次いで、上記のポリプロピレン樹脂ペレットを射出成形機に投入して射出成形することにより成形体(テストピース)を製造したところ、優れた外観と品質を持つポリプロピレン樹脂成形体が得られた。
上記のポリプロピレン樹脂ペレットそして該ペレットから作製したテストピースの測定により得られた各種物性値は下記の通りであり、曲げ弾性率はわずかに低下し、シャルピー衝撃強度の向上は見られなかった。その結果、得られた樹脂ペレットは、オフィスチェア製造に充分な物性を持たせることができないことが確認された。 MFR:30g/10分 比重:0.95 曲げ弾性率:1300MPa シャルピー衝撃強度:6.0kJ/m2
10 振動篩 12 モータ 13 送風機 14 帆布(ばね内包) 15 枠体 16 整流格子 17 通風多孔膜 18 選別デッキ 19 塊状物出口 20 原料粉砕物出口 30 風力選別装置 31 原料粉砕物供給口 35 シロッコファン
Claims (5)
- ポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物を原料としてポリプロピレン樹脂成形体製造用の再生樹脂を製造する方法において、原料のポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物が廃家電に含まれるポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物であって、該製造方法が、上記原料100質量部に対して、5〜15質量部のエラストマーと3〜7質量部の二酸化チタンとを加えて樹脂混合物とした後、この樹脂混合物を加熱溶融することにより、オフィスチェア製造用の再生熱可塑性樹脂組成物を得ることを含む方法。
- 廃家電に含まれるポリプロピレン樹脂成形体の廃棄物の粉砕物が電気冷蔵庫の野菜ケースと洗濯機の台枠を含む混合物である請求項1に記載の方法。
- 得られる再生熱可塑性樹組成物から加熱溶融を経て得られる成形体が10.0kJ/m2以上のシャルピー衝撃強度を示す成形体となる請求項1乃至2のうちのいずれかの項に記載の方法。
- 請求項1乃至3の内のいずれかの項に記載の方法により得られたオフィスチェア製造用の再生熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項4に記載の再生熱可塑性樹脂組成物の加熱溶融と成形により得られたオフィスチェア部材。
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2016
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