JP2017136860A - 工作物を収容可能なメッシュ構造体 - Google Patents

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JP2017136860A
JP2017136860A JP2017075341A JP2017075341A JP2017136860A JP 2017136860 A JP2017136860 A JP 2017136860A JP 2017075341 A JP2017075341 A JP 2017075341A JP 2017075341 A JP2017075341 A JP 2017075341A JP 2017136860 A JP2017136860 A JP 2017136860A
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mesh structure
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邦彦 澁澤
Kunihiko Shibusawa
邦彦 澁澤
千夏 帖佐
Chinatsu Chosa
千夏 帖佐
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Taiyo Yuden Cheical Tech Co Ltd
Taiyo Yuden Cheical Technology Co Ltd
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Taiyo Yuden Cheical Tech Co Ltd
Taiyo Yuden Cheical Technology Co Ltd
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Abstract

【課題】 液透過性が改善されたメッシュ構造体を提供する。【解決手段】 本発明の一実施形態に係るメッシュ構造体は、工作物を収容する収容空間を画するメッシュ基体と、前記メッシュ基体の表面に形成され、当該メッシュ基体よりも高い撥水性を有するコーティング薄膜と、を備える。【選択図】 図3

Description

本発明は、工作物を収容可能なメッシュ構造体に関し、特に電子部品等の小型の工作物
を収容可能なメッシュ構造体に関する。これらのメッシュ構造体は、例えば、工作物を洗
浄する洗浄装置や工作物にめっき処理を行うめっき装置において用いられる。
電子部品等の小型の工作物を洗浄する洗浄装置として、バレル洗浄装置が知られている
。例えば、特開平7−205018号公報(特許文献1)や特開2003−53279号
公報(特許文献2)には、工作物を収容するメッシュ状のバスケットを備えたバレル洗浄
装置が開示されている。一般のバレル洗浄装置においては、工作物が収容されたバスケッ
トを洗浄液に浸漬し、洗浄液の中で当該バスケットを回転させることにより、洗浄液中で
工作物を攪拌して当該工作物に付着した汚れを洗浄する。
特開平7−205018号公報 特開2003−53279号公報
収容される工作物が小型の場合には、その工作物の寸法に応じてバスケットを構成する
メッシュの開口部を小さくする必要がある。しかしながら、メッシュの開口部を小さくす
ると、バスケットを洗浄液へ浸漬したときに表面張力の作用でメッシュの開口部に洗浄液
の膜が形成され、その結果、メッシュを介したバスケット内部と外部洗浄槽や空気などの
気体(雰囲気)との間で洗浄液がスムーズに出入りできなくなる。このため、バスケット
内部に洗浄液を取り込むまでの時間が長くなり、洗浄作業の効率が悪化してしまう。これ
に加えて、メッシュの開口部が小さくなると、バスケットを洗浄槽から引き上げる際にメ
ッシュの開口部に洗浄液が残存しやすくなり、液抜けが悪くバスケットを引き上げるため
の引き上げ機構にかかる荷重が増加してしまう。また、メッシュに残存した洗浄液や処理
液は、放置後に乾燥固化してメッシュの目開きの閉塞を起こしたり、別工程の処理環境に
対する汚染源となるおそれがある。
工作物を収容可能なメッシュ状のバスケットは、めっき装置においても用いられる。め
っき装置においては、電子部品等の工作物を収容したバスケットをめっき液に浸漬し、当
該電子部品に対してめっき処理を行う。この種のめっき装置においても、上述した洗浄装
置と同様に、メッシュの開口部を小さくすることによる様々な不具合が生じ得る。
そこで、本発明の様々な実施形態によって、液透過性が改善されたメッシュ構造体を提
供する。このメッシュ構造体は、例えば、電子部品等の工作物を洗浄する洗浄装置や、電
子部品等の工作物にめっき処理を行うめっき処理装置に適した形状に構成される。
本発明の一実施形態に係るメッシュ構造体は、工作物を収容する収容空間を画するメッ
シュ基体と、前記メッシュ基体の表面に形成され、当該メッシュ基体よりも高い撥水性を
有するコーティング薄膜と、を備える。工作物を収容する収容空間を画するメッシュ基体
の表面に当該メッシュ基体の撥水性よりも高い撥水性を有するコーティング薄膜を設ける
ことにより、工作物を収容する収容空間内部と外部との間で洗浄液やめっき液等の液体が
透過しやすくなる。他の実施形態に係るメッシュ構造体は、工作物を収容する収容空間を
画するメッシュ基体を備え、当該メッシュ基体の表面の少なくとも一部が当該表面の他の
部分よりも高い撥水性を有するように構成される。かかる実施形態によれば,メッシュ基
体の表面の一部が高い撥水性を有することにより,工作物を収容する収容空間内部と外部
との間で洗浄液やめっき液等の液体が透過しやすくなる。
本発明の他の実施形態に係るメッシュ構造体は、メッシュ基体の表面に、ドライプロセ
スにより形成されるプライマー薄膜を備える。この場合、撥水性のコーティング薄膜は、
当該プライマー薄膜の表面に形成される。プライマー薄膜として液体状のプライマーを用
いると、メッシュ基体の開口部(メッシュ基体を構成する糸部材の間の隙間)に液体状の
プライマーが濡れ広がり、その開口部が閉塞されるおそれがある。そこで、本発明の一実
施形態においては、液体状のプライマーではなく、CVD法等のドライプロセスによりプ
ライマー薄膜がメッシュ基体上に形成される。このように、メッシュ基体上に、プライマ
ー薄膜を介してコーティング薄膜を形成することにより、メッシュ基体の開口部を閉塞す
ることなく、コーティング薄膜の定着性を向上させることができる。コーティング薄膜は
、例えば、フッ素含有シランカップリング剤から成るコーティングである。
一態様におけるプライマー薄膜は、Si,Ti、Al、Zr及びこれらの酸化物から成
る群より選択される少なくとも1つの物質を含む。ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ア
ルミニウム(Al)、酸化アルミニウム(AlOx(xは、任意の数である。)),又
はジルコニウム(Zr)を含むプライマー組成物層は、フッ素を含有するシランカップリ
ング剤と強固に結合する(特願2012−29090を参照)。このプライマー薄膜にお
いては,ケイ素(Si)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、酸化アルミニウム(
AlOx),もしくはジルコニウム(Zr)、又はこれらの酸化物に由来する水酸基が
,フッ素含有シランカップリング剤の官能基と,脱水縮合反応による共有結合、水素結合
,及び/又はこれら以外の結合を形成するため,プライマー薄膜とフッ素含有シランカッ
プリング剤とが強固に結合すると考えられる。このプライマー薄膜は、基体上に直接形成
されてもよく、中間層を介して間接的に形成されてもよい。
本発明の他の態様においては、プライマー薄膜は、O、N、及びSiから成る群から選
択される少なくとも1つの物質を含む非晶質炭素膜であってもよい。O、N、又はSiの
いずれか1つを含む非晶質炭素膜は、脱水縮合反応等の共有結合又は水素結合等により、
シランカップリング剤と強固に結合するので、かかるシランカップリング剤を定着性良く
保持することができる(特願2010-123558号参照)。コーティング薄膜として、例えばフ
ッ素含有シランカップリング剤を用いることにより、かかるコーティング薄膜をメッシュ
基体上に、非晶質炭素膜を介して強固に定着させることができる。
このように、本発明の様々な実施形態によって、本発明の様々な実施形態によって、液
透過性が改善されたメッシュ構造体が提供される。本発明の他の効果については、本明細
書全体を参照にすることにより明らかとなる。
本発明の一実施形態に係るメッシュ構造体を備えるバレル洗浄装置の正面図 本発明の一実施形態に係るメッシュ構造体の断面図 本発明の一実施形態に係るメッシュ構造体の糸部材の断面図 本発明の他の実施形態に係るメッシュ構造体の糸部材の断面図
本発明の様々な実施形態について添付図面を参照して説明する。これらの図面において
、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の参照符号を付し、その同一又は類似の構成
要素についての詳細な説明は適宜省略する。また、これらの図面は、本発明の実施形態を
模式的に示すものであり、その寸法は必ずしも正確に図示されていない点に留意されたい
図1は、本発明の一実施形態に係るメッシュ構造体を備えるバレル洗浄装置の正面図で
ある。図示の実施形態におけるバレル洗浄装置は、電子部品等の工作物を収容するバスケ
ット10と、当該バスケット10をその両端で支持する支持アーム12と、を備える。バ
スケット10は、本発明に係るメッシュ構造体の一例である。支持アーム12は、バスケ
ット10を、昇降可能に、また、その中心軸の回りで回転可能に支持することができる。
図2は、図1に示したバスケット10の断面図である。図示の実施形態においては、バ
スケット10は円筒形状に構成されている。そして、このバスケット10内部の収容空間
には、複数の工作物20が収容されている。この工作物20は、例えば、コンデンサ、イ
ンダクタ、コネクタ、フィルタ、ファイバ等の様々な電子部品である。工作物20は、様
々な形状、例えば、繊維状の形状(カーボンナノチューブ等)、微粒子の形状、パウダー
などの粉体形状、又はプローブ状の形状(エミッタ、コネクタ等)をとり得る。さらには
精密ネジ、バネ、ギア、探針、ボールベアリングなどの微小機械部品、注射針、カテーテ
ルなどの医療用品、薬品、貴金属、レアメタル、セラミクスなどの微粒子、コロイダルシ
リカやガラスビーズなどの各種担体、植物被子など様々な微小形状物であってもかまわな
い。バスケット10を降下させて洗浄液24に浸漬させると、バスケット10を構成する
メッシュ部材の開口部から洗浄液24がバスケット10内の収容空間に流入する。バスケ
ット10内が洗浄液24で満たされた状態でバスケット10を回転させることにより、工
作物20は洗浄液24中で攪拌され、工作物20に付着した汚れ(又はめっき液などの処
理液や反応液)が洗浄される。
バスケット10は、例えば、形状を定めるための枠体に、後述のメッシュ部材(例えば
メッシュ状の板)を張り付けて構成される。バスケット10は、例えば、一組のリング状
の枠(不図示)を棒状の枠(不図示)で連結し、これらの枠の間に円板状及び長方形のメ
ッシュ板を張り付けることによって円筒状に構成される。バスケット10の形状はその用
途に応じて任意に定められ、円筒形状の他にも直方体形状、立方体形状、多角柱形状、梅
型と呼ばれる多面体形状、円錐形状、三角錐形状、四角錐形状、球状、ドーナツ形状など
の様々な形状に構成され得る。また、バスケット10は、メッシュ、多孔性シート、孔が
形成されたフィルムなどからなる袋状の部材であってもよい。この場合、バスケット10
は、不定形であってもよい。
バスケット10を構成するメッシュ部材は、様々な材質や線径の糸を編み込んで作成さ
れる。当該メッシュ部材を構成する糸の表面粗さ、断面形状、及び折り方は、その用途等
に応じて適宜変更され得る。図3は、バスケット10のメッシュ部材を構成する糸部材の
断面図である。図示のとおり、本発明の一実施形態に於いてメッシュ部材を構成する糸部
材は、基体14と、基体14の表面に形成されたプライマー薄膜16と、プライマー薄膜
16の表面に形成され、基体14よりも高い撥水性を有するコーティング薄膜18とがこ
の順に積層されて構成される。バスケット10を構成するために、メッシュ部材に代えて
、多孔性のシート状部材やスリット状、丸型、楕円形、四角形、星形、テーパー形状、そ
の他様々な不定形の孔を有するシート状部材を用いることができる。かかる多孔性又はス
リット等の孔を有するシート状部材は、電鋳法、レーザ加工、エッチング加工、又はドリ
ルもしくはプレス等の機械加工により形成され得る。
基体14は、例えば、チタニウム、銅、もしくはタングステン等の合金、ステンレス鋼
や鉄鋼等の合金、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、もしくはビ
ニル等の化学繊維、レーヨン等の混紡繊維、炭素繊維やガラス繊維等の無機材料、または
羊毛、絹、綿、もしくはセルロース等の天然素材繊維から成る。一実施形態においては,
基体14の表面の少なくとも一部を撥水性材料から形成することができる。基体14の表
面の撥水性材料から形成される部分は,当該表面の他の部分よりも高い撥水性を有する。
この撥水性材料としは,例えば,市販の各種シリコーン樹脂,又は,市販の各種フッ素樹
脂材料(トヨフロン(商標)やテフロン(商標)等)を用いることができる。このように
,基体14の表面の少なくとも一部を撥水性材料から形成する場合には,必ずしもコーテ
ィング薄膜18を設ける必要がない。
プライマー薄膜16は、基体14の表面にドライプロセスにより形成された薄膜であり
、ケイ素(Si)、酸化ケイ素(SiO)、チタン(Ti)、酸化チタン(TiO
、アルミニウム、酸化アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、又は酸化ジ
ルコニウム(ZrO)のうち少なくとも1つの物質を含む。プライマー薄膜16をドラ
イプロセスによって形成することにより、基体14を構成するメッシュ糸の特定の面にの
みプライマー薄膜16を形成することができる。液体プライマーを用いると、特定の面に
のみプライマー薄膜を形成しようと試みても、所望の面以外の面にも液体プライマーが回
り込んでしまう。基体14の特定の面へのプライマー薄膜16の形成については、図4を
参照して後述する。
プライマー薄膜16は、基体14の表面に、例えば、2極スパッタリング法、3極スパ
ッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、対抗ターゲット式スパッタリング法など
の様々なプラズマスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、ECRスパッタリ
ング法などの様々なイオンビームスパッタリング法、直流(DC)プラズマCVD法、低
周波プラズマCVD法、高周波(RF)プラズマCVD法、パルス波プラズマCVD法、
マイクロ波プラズマCVD法、大気圧プラズマ法(例えば誘電体バリア放電方式)、準大
気圧プラズマ法などの様々なプラズマCVD法、直流印加式(DC)イオンプレーティン
グ法、ホロカソード放電法(HCD法)、高周波励起法(RF法)などのプラズマを利用
する様々なイオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法(IBD法)、イオンビームア
シスト蒸着法(IBAD法)、イオン蒸着薄膜形成法(IVD法)などのイオンビームを
利用する様々なイオンプレーティング法、又はこれらの組み合わせなどの様々な公知のド
ライプロセスにより形成される。
本発明の一態様においては、基体14が設置された成膜装置に所定のガス圧・流量のス
パッタガス(例えば、アルゴンガスなどの不活性ガス)を導入し、当該成膜装置内におい
てSiターゲット、Tiターゲット、Alターゲット、Alターゲット,又はZr
ターゲットなどをスパッタリングすることで、基体14の表面に、Si,Ti、Al、A
、又はZrのいずれかから成るプライマー薄膜16を形成することができる。ま
た、このスパッタガスに酸素(O)、窒素(N)又はそれらの混合ガスを混合することで
、反応性スパッタリング法により、ケイ素、チタン、アルミニウム、酸化アルミニウム,
又はジルコニウムとO又はNとの生成物(例えば、SiO、SiN、TiO、Ti
2、ZrOなど)から成るプライマー薄膜16を形成してもよい。
本発明の他の態様においては、ガスを原料とする化学蒸着法(プラズマCVD法)を用
いる場合は、ワークを配置して真空減圧したプラズマCVD装置に、シラン(SiH
やテトラエトキシシラン(TEOS)などのSiプライマー薄膜用主原料ガス、又は、チ
タンクロライド(TiCl)、チタンアイオダイド(TiI)、チタンイソプロポキ
シドTi(i−OCなどのTiプライマー薄膜用主原料ガスを使用することに
より、Si又はTiを含むプライマー薄膜16を形成することができる。また、一実施形
態においては、トリメチルアルミニウム(Al(CH)))、アルミニウムクロライ
ド(AlCl)などの主原料ガスに、必要に応じて酸素ガス又は窒素ガスを混合するこ
とにより、アルミニウム及び酸素又は窒素を含むプライマー薄膜16を形成することがで
きる。
また、本発明のさらに他の態様においては、基体14上に形成されたケイ素、チタン、
アルミニウム、酸化アルミニウム,又はジルコニウムのうち少なくとも1つを含む薄膜に
、酸素プラズマ又は窒素プラズマを照射することにより、これらの薄膜に酸素又は窒素の
双方又は一方を含有させたプライマー薄膜16を形成することもできる。一実施形態にお
いては、上記のようにプライマー薄膜16に酸素又は窒素の双方又は一方を含有させるこ
とにより、プライマー薄膜16に極性が付与されるので、コーティング薄膜18がフッ素
含有シランカップリング剤から成る場合に、当該コーティング薄膜18の定着性をより高
めることができる。
本発明のさらに他の態様におけるプライマー薄膜16は、非晶質炭素膜から成る。非晶
質炭素膜は、たとえば、アセチレン等の炭化水素ガスを原料ガスとして用い、プラズマCV
D法により形成される。この非晶質炭素膜は、O、N、又はSiのうちの少なくとも1つ
の元素を含んでもよい。Siを含有する非晶質炭素膜は、たとえば、炭化水素ガスと、テ
トラメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメトキシジオ
メチルシラン、及びテトラメチルシクロテトラシロキサンなどのケイ素を含有するSi原料
ガスとの混合ガスを用いて、プラズマCVD法により形成される。例えば、Oを含有する非
晶質炭素膜は、アセチレンなどの炭化水素ガスをプラズマ化して非晶質炭素膜を形成した
後、酸素ガスをプラズマ照射するプラズマCVD法により形成される。Nを含有する非晶質
炭素膜は、炭化水素ガスをプラズマ化して非晶質炭素膜を形成した後、窒素ガスをプラズ
マ照射するプラズマCVD法により形成される。
非晶質炭素膜は延伸性が高く、樹脂やステンレス鋼製メッシュなどから成る基体14に
対する密着性が高い。したがって、プライマー薄膜16は、基体14の変形に追従して対
して変形することができる。また、非晶質炭素膜は、軟質金属と凝着しにくいため、工作
物20が軟質金属から成る場合であっても、工作物20がメッシュ部材に凝着することを
防止できる。
上述のようにして基体14上に形成されたプライマー薄膜16の表面の少なくとも一部
分には、撥水性のコーティング薄膜18が形成される。コーティング薄膜18は、例えば
フッ素を含有するフッ素含有カップリング剤から成る。フッ素含有カップリング剤の一例
は、フッ素含有シランカップリング剤である。このようなフッ素含有シランカップリング
剤として、例えば、フロロサーフ社のFG-5010Z130-0.2が知られている。このコーティン
グ薄膜18は、メッシュ部材の開口部を透過する液体(洗浄液やめっき液)の透過性に実
質的な影響を与えないほど薄く形成される。シランカップリング剤は、プライマー薄膜1
6に含まれるケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、又はこれらの元素の酸化物
に由来する水酸基と化学結合(例えば、脱水縮合反応による結合又は水素結合など)によ
り結合する。これにより、プライマー薄膜16の表面に強固な結合架橋層を伴う連続性の
ある面状のフッ素樹脂膜が形成され、メッシュ部材の基材14表面に優れた撥水性を付与
することができる。
コーティング薄膜18は、バスケット10の一部にのみ形成されてもよい。図4は、バ
スケット10のメッシュ部材を構成する糸部材の断面図である。図4に示す実施形態にお
いては、糸部材のうちの収容空間外側(図2に矢印Bで示すように外側に露出する側)に
のみコーティング薄膜18が形成されており、収容空間内側(図2に矢印Aで示すように
収容空間に臨む側)にはコーティング薄膜18が形成されず、プライマー薄膜16が露出
している。プライマー薄膜16は、コーティング薄膜18と同様に、収容空間外側にのみ
形成されてもよい。この場合、収容空間内側においては、基材14が露出する。
バスケット10の収容空間内側の表面は、洗浄時に工作物20と頻繁に接触するので、
この工作物との摩擦により当該収容空間内側の表面に形成したプライマー薄膜16やコー
ティング薄膜18が脱落し易い。一方、バスケット10の収容空間外側の表面は、工作物
20と直接接触しないので、プライマー薄膜16やコーティング薄膜18が脱落しにくい
。そこで、プライマー薄膜16及びコーティング薄膜18を、基材14の収容空間外側に
形成することにより、基材14に効率よく撥水性を付与して基材14の液透過性を向上さ
せることができる。また、基材14は、工作物20を効率良く攪拌するために適した摩擦
係数を有する材料から成る。したがって、プライマー薄膜16及びコーティング薄膜18
を基材14の収容空間外側のみに形成することにより、基材14の摩擦係数を変化させる
ことなく(従って攪拌性能を劣化させることなく)、基材14に撥水性を付与して基材1
4の液透過性を向上させることができる。
また、親水性のメッシュを通過する液体には細かな気泡が発生しにくいので、細かな気
泡が工作物20に付着することによる浮き上がりやバスケットへの付着を抑制することが
できる。よって、バスケット10の一部の面(バスケット10が六角柱形状の場合には、
当該鹵獲中継状の8つの面のうちの1つの面)を図3に示すようにプライマー薄膜16及
びコーティング薄膜18が形成された撥水性のメッシュ部材とし、他の面(例えば、六角
柱形状の他の7面)をプライマー薄膜16のみが形成された親水性のメッシュ部材とする
ことにより、洗浄液24は当該撥水性のメッシュ部材をスムーズに透過するとともに、親
水性メッシュによって細かな気泡の発生を抑制することもできる。また、バスケット10
の1つの面の一部分のみを撥水性のメッシュ部材から構成し、当該面の他の部分を親水性
のメッシュ部材から構成してもよい。
バスケット10のメッシュ部材を構成する糸部材の一部にのみコーティング薄膜18を
形成することにより、洗浄液等の液体は、当該コーティング薄膜18の撥水性によりバス
ケット10内外へスムーズに流入・排出されるとともに、コーティング薄膜18が形成さ
れていない部分の親水性によって細かな気泡の発生を抑制することができる。また、コー
ティング薄膜18がバスケット10の一部にのみ形成される他の例として、バスケット1
0が円筒形状に構成される場合には、その側面にのみコーティング薄膜18を形成しても
よい。これにより、コーティング薄膜18が形成されないバスケット10の上面及び底面
の表面には親水性のプライマー薄膜16が露出している。親水性のメッシュを通過する液
体には細かな気泡が発生しにくいので、バスケット10の一部にコーティング薄膜18を
形成することにより、洗浄液等の液体は、当該コーティング薄膜18が形成された撥水性
の部分からスムーズに流入・排出されるとともに、コーティング薄膜18が形成されてい
ない親水性の部分によって細かな気泡の発生を抑制することができる。
コーティング薄膜18は、様々な方法でプライマー薄膜16の表面に設けられる。コー
ティング薄膜18は、例えば、不織布等の布、スポンジ、スポンジ状ローラ、刷毛、及び
/又はこれら以外の様々な塗布用具を用いてプライマー薄膜16の表面に塗布される。ま
た、コーティング薄膜18は、フッ素含有カップリング剤を霧状にして噴霧することによ
って形成することもできる。これら以外にも、ディッピング法、抵抗加熱法、蒸着法、及
び/又はこれら以外の様々な方法によって形成され得る。図4に示す構造は、プライマー
薄膜16が形成された基体14の一方の面(例えば、組み立て時に収容空間外側に露出す
る面)にのみコーティング薄膜18を塗布することにより得られる。
また、プライマー薄膜16は、メッシュ部材を構成する糸部材の収容空間外側(又は収
容空間内側)にのみ形成されてもよい。これにより、撥水性を付与するコーティング薄膜
18は一般に基材14から剥離しやすいため、プライマー薄膜16を糸部材の一部分(収
容空間外側又は内側)にのみ形成することにより、プライマー薄膜16が形成されていな
い部分にコーティング薄膜18が意図せずに形成された場合には、当該コーティン薄膜1
8は容易に除去され得る。
プライマー薄膜16及び/又はコーティング薄膜18は、メッシュ部材を構成する糸部
材の周方向の一部分に形成され得る。図4は、糸部材の周方向の一部(収容区間外側)の
みにプライマー薄膜16及びコーティング薄膜18が形成された糸部材の一例を示すもの
である。図4に例示した態様以外にも、プライマー薄膜16及び/又はコーティング薄膜
18は、糸部材の周方向の任意の一部に形成され得る。
また、上述した反応性スパッタリング法や酸素プラズマ又は窒素プラズマの照射により
、プライマー薄膜16に酸素又は窒素を含有させてプライマー薄膜に電気的極性を付与す
ることができる。この電気的極性によりプライマー薄膜とフッ素含有シランカップリング
剤との間に極性による結合が生じ、この結合によってもフッ素含有カップリング剤をプラ
イマー薄膜に強固に定着させることができる。
上述のようにして形成されるプライマー薄膜16及びコーティング薄膜18は、非常に
薄く(例えば数十nm程度)形成されるので、微細な構造を有するメッシュへの応用に適
している。つまり、本発明の実施形態に係るプライマー薄膜16及びコーティング薄膜2
0がメッシュの開口部に付着しても、液体の透過性には実質的に影響を与えない。
本発明の実施形態においては,プライマー薄膜16中のケイ素、チタン、アルミニウム
、酸化アルミニウム,又はジルコニウムのうち少なくとも1つに由来する水酸基と脱水縮
合反応により結合可能な任意のフッ素含有カップリング剤又はフッ素コート剤を用いるこ
とができる。例えば、一実施形態におけるフッ素含有カップリング剤は、プライマー薄膜
16と−O−M結合(ここで、Mは、Ti、Al、又はZr)可能な元素Mを含むカップ
リング剤であっても良い。
コーティング薄膜18は、カップリング剤を主成分とする第1層と、撥水性材料を主成
分とする第2層と、から成る2層構造であってもよい。コーティング薄膜18に於ける第
1層として用いることができるカップリング剤には、シランカップリング剤、チタネート
系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、及びジルコニア系カップリング剤が
含まれる。シランカップリング剤は、例示するまでもなく広く普及している。市販されて
いる様々なシランカップリング剤を薄膜20の第1層として用いることができる。本発明
に適用可能なシランカップリング剤の一例は、デシルトリメトキシシラン(商品名「KB
M−3103」信越化学工業(株))である。本発明に適用可能なチタネート系カップリ
ング剤には、例えばテトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロ
ポキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートが含まれる。一態様においては
、商品名「プレンアクト38S」(味の素ファインテクノ株式会社)を、コーティング薄
膜18として用いることができる。
コーティング薄膜18における第1層として用いることができるアルミネート系カップ
リング剤には、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニ
ウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトア
セテート、アルミニウムイソプロピレート等が含まれる。一態様においては、商品名「プ
レンアクトAL−M」(アルキルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、味の素フ
ァインテクノ(株)製)を、コーティング薄膜18として用いることができる。
コーティング薄膜18における第1層として用いることができるジルコニア系カップリ
ング剤には、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリメタクリルジルコネイト、テトラ(
2,2ジアリロキシメチル)ブチル、ジ(ジトリデシル)ホスフェイトジルコネイト、及
びシクロ[ジネオペンチル(ジアリル)]ピロホスフェイトジネオペンチル(ジアリル)
ジルコネートが含まれる。一態様においては、商品名「ケンリアクトNZ01」(ケンリ
ッチ社)を、コーティング薄膜18として用いることができる。
フッ素含有カップリング剤は、その分子構造内にフッ素の置換基を有するカップリング
剤を意味し、一般に撥水性、撥油性を有する。コーティング薄膜18として使用可能なフ
ッ素含有カップリング剤には、以下のものが含まれる。
(i) CF3(CF27CH2CH2Si(OCH33
(ii) CF3(CF27CH2CH2SiCH3Cl2
(iii)CF3(CF27CH2CH2SiCH3(OCH32
(iv)(CH33SiOSO2 CF3
(v) CF3CON(CH3)SiCH3
(vi) CF3CH2 CH2 Si(OCH33
(vii) CF3CH2 SiCl3
(Viii) CF3CF25CH2CH2SiCl3
(ix) CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33
(x)CF3(CF27CH2CH2SiCl3
これらのフッ素含有カップリング剤はあくまで一例であり、本発明に適用可能なフッ素
含有カップリング剤はこれらの例に限定されるものではない。フッ素含有カップリング剤
としては、例えば、フロロサーフ社から販売されているFG−5010Z130−0.2(
フッ素樹脂0.02〜0.2%、フッ素系溶剤99.8%〜99.98%)を用いることができる。
また、コーティング薄膜18は、カップリング剤を主成分とする第1層と、撥水性材料
を主成分とする第2層と、から成る2層構造であってもよい。この第1層は、例えば、プ
ライマー薄膜16と水素結合及び/又は縮合反応による−O−M結合(ここで、Mは、S
i、Ti、Al、及びZrから成る群より選択されるいずれかの元素。)を形成可能なカ
ップリング剤から成る薄膜である。かかるカップリング剤には、例えば、シランカップリ
ング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、及びジルコネー
ト系カップリング剤が含まれる。これらのカップリング剤は、他の種類のカップリング剤
と混合して用いることもできる。第2層は、例えば、メチルトリクロロシラン、オクチル
トリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のアルキルクロロシラン類、ジメチルジメ
トキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルメトキシシラン類、ヘキサメチ
ルジシラザンおよびシリル化剤、及びシリコーン等の撥水性材料から成る薄膜である。ま
た、上述したフッ素含有シランカップリング剤から成る薄膜を第2層として用いることも
できる。第2層として利用可能な撥水性材料は、本明細書で明示されたものに限定されな
い。
以下に示す方法によって、本発明の一実施形態に係るメッシュ構造体に備えられるプラ
イマー薄膜が親水性を有すること、及び、コーティング薄膜が撥水性を有することを確認
した。
まず、ステンレス鋼(SUS304)から成る基材を、各試料の基材として準備した。
具体的には、各辺が30mm×30mm、厚さが1mmの矩形形状のSUS304を準備
した。この基材は、表面粗さがRa:0,035μmに調整されており、非常に平滑な表
面を有する。
(1)試料1−1、試料1−2の作成
まず、高圧DCパルスプラズマCVD装置に上記ステンレス鋼(SUS304)基材及
び市販のSiターゲットを設置し、当該CVD装置においてスパッタリングを行い、Si
の薄膜(プライマー薄膜)をSUS304基材の表面に堆積させた。次に、Si薄膜が形
成された基材を別の高圧DCパルスプラズマCVD装置に設置し、窒素ガスを当該CVD
装置に導入した。当該CVD装置において、基材表面に窒素プラズマを照射して、Si薄
膜に窒素を含有させ、試料1−1を得た。このようにして得られた試料1−1に、市販の
フッ素系シランカップリング剤の溶液をディップ塗布し、室温にて乾燥させて、試料1−
2を得た。
(2)試料2−1、試料2−2の作成
まず、スパッタリング装置に上記ステンレス鋼(SUS304)基材及び市販のTiタ
ーゲットを設置し、当該スパッタリング装置においてスパッタリングを行い、Tiの薄膜
(プライマー薄膜)をSUS304基材の表面に堆積させた。次に、Ti薄膜が形成され
た基材を別の高圧DCパルスプラズマCVD装置に設置し、窒素ガスを当該CVD装置に
導入した。当該CVD装置において、基材表面に窒素プラズマを照射して、Ti薄膜に窒
素を含有させ、試料2−1を得た。このようにして得られた試料2−1に、市販のフッ素
系シランカップリング剤の溶液をディップ塗布し、室温にて乾燥させて、試料2−2を得
た。
(3)試料3−1、試料3−2の作成
まず、スパッタリング装置に上記ステンレス鋼(SUS304)基材及び市販のAl
ターゲットを設置し、当該スパッタリング装置においてスパッタリングを行い、Al
の薄膜(プライマー薄膜)をSUS304基材の表面に堆積させた。次に、Al
薄膜が形成された基材を別の高圧DCパルスプラズマCVD装置に設置し、窒素ガス
を当該CVD装置に導入した。当該CVD装置において、基材表面に窒素プラズマを照射
して、Al薄膜にさらに窒素を含有させ、試料3−1を得た。このようにして得ら
れた試料3−1に、市販のフッ素系シランカップリング剤の溶液をディップ塗布し、室温
にて乾燥させて、試料3−2を得た。
(4)試料4−1、試料4−2の作成
まず、高圧DCパルスプラズマCVD装置に上記ステンレス鋼(SUS304)基材を
設置し、当該CVD装置を真空減圧した。真空減圧された当該CVD装置にトリメチルシ
ランを導入し、SUS304基材の表面に、Siを含む非晶質炭素膜を形成した。次に、
トリメチルシランを排気した後、酸素ガスを導入し、基材表面に酸素プラズマを照射して
、Siを含む非晶質炭素膜にさらに酸素を含有させた。このようにして得られた試料4−
1に、市販のフッ素含有シランカップリング剤の溶液をディップ塗布し、室温にて乾燥さ
せて、試料4−2を得た。
(5)試料5−1、試料5−2の作成
まず、スパッタリング装置に上記ステンレス鋼(SUS304)基材及び市販のAlタ
ーゲットを設置し、当該スパッタリング装置においてスパッタリングを行い、Alの薄膜
(プライマー薄膜)をSUS304基材の表面に堆積させた。次に、Al薄膜が形成され
た基材を別の高圧DCパルスプラズマCVD装置に設置し、窒素ガスを当該CVD装置に
導入した。当該CVD装置において、基材表面に窒素プラズマを照射して、Al薄膜にさ
らに窒素を含有させ、試料5−1を得た。このようにして得られた試料5−1のに、市販
のフッ素系シランカップリング剤の溶液をディップ塗布し、室温にて乾燥させて、試料5
−2を得た。
このようにして準備された試料1−1〜5−2の各々について、水(純水)との接触角を
試料上の異なる10点で測定した。接触角の測定は、市販の接触角計(協和界面科学株式
会社 ポータブル接触角計 PCA-1)を使用して、室温( 2 5 ± 5 ℃ ) 、5 0 ±
1 0 % R H の条件下にて行った。シランカップリング剤が塗布されていない試料1
−1、2−1、3−1、4−1、5−1については、各々の接触角の平均値は27°〜6
0°程度であった。一方、シランカップリング剤が塗布されている試料1−2、2−2、
3−2、4−2、5−2については、接触角の平均値は105°〜114°程度であった
。これにより、Si、Ti、Al、Al、又は非晶質炭素膜から成り、窒素、また
は酸素をプラズマ照射されたプライマー薄膜は親水性を有すること、及び、プライマー薄
膜上に形成されたフッ素含有シランカップリングは撥水性を有することが確認できた。
次に、本発明の実施形態に係るメッシュ構造体の透過性について以下に示す方法によっ
て確認した。直径200mmの円に内接する6角形の上面及び底面を有し高さが約270
mmの六角柱の骨格をアクリル製の棒状の部材を用いて作成した。つまり、当該六角柱の
各辺に相当する位置に、アクリル製の棒状の部材を配置して、当該六角柱形状を維持する
ように当該棒状部材を互いに固定した。
次に、線径0.125mm、目開き0.238mm、メッシュカウント70本/1インチのポリエステ
ル製メッシュ基材を準備した。このメッシュ基材の両面に、試料4−2と同様の方法で、
非晶質炭素膜及びフッ素含有シランカップリング剤薄膜を形成した。このようにして非晶
質炭素膜及びフッ素含有シランカップリング剤薄膜が形成されたメッシュ部材を、アクリ
ル製の棒状部材で構成された骨格における当該六角柱の面に相当する部分に張り付けた(
上面、底面、及び6つの側面に張り付けた)。これにより、メッシュ部材で画された六角
柱形状の収容空間を有するバスケットが得られた。このようにして得られた収容空間内側
及び外側の両面にフッ素含有シランカップリング剤薄膜が形成されたメッシュ部材から成
るバスケットを実施例1とする。
次に、実施例1と同じポリエステル製メッシュ基材の片面に、試料4−1と同様の方法
で非晶質炭素膜を形成した。次に、このメッシュ基材の試料4−1と同様の方法で形成し
た非晶質炭素膜側の片面側にのみフッ素含有シランカップリング剤薄膜を形成した。
このようにして片面に非晶質炭素膜が形成されるとともに同じ片面にのみフッ素含有シラ
ンカップリング剤を塗布したメッシュ部材を、実施例1と同じアクリル製の棒状部材で構
成された骨格における当該六角柱の面に相当する部分に、フッ素含有シランカップリング
剤を塗布した面が収容空間の外側を向くように張り付けた。このようにして得られた収容
空間外側に非晶質炭素膜が形成されるとともに収容空間外側にフッ素含有シランカップリ
ング剤薄膜が形成されたメッシュ部材から成るバスケットを実施例2とする。
(撥水性メッシュ及び親水性メッシュを組み合わせて成るバスケットの液透過性の検証)
次に、実施例1と同様の方法で準備したメッシュ部材(両面撥水処理のメッシュ)を、
実施例1と同じアクリル製の棒状部材で構成された骨格における当該六角柱の計8面のう
ち1面のみに相当する部分に、張り付けた。残りの当該六角柱の計7面に相当する部分の
メッシュには、内外両面に試料4−1と同様の方法で非晶質炭素膜のみを形成したメッシ
ュ(両面が親水性のメッシュ)を張り付けた。このようにして得られた収容空間の一部(
1面両面)が撥水性のメッシュで、他の部分(7面両面)が親水性のメッシュが形成され
たメッシュ部材から成るバスケットを実施例3とする。
次に、実施例1と同じポリエステル製メッシュ基材を、実施例1と同じアクリル製の棒
状部材で構成された骨格における当該六角柱の面に相当する部分に張り付けた。このよう
にして得られたポリエステル樹脂が露出したメッシュ部材から成るバスケットを比較例1
とする。
(撥水性メッシュから成るバスケットの液透過性の検証)
次に、実施例1ないし実施例3、及び比較例1の各バスケットの収容空間に、スチール
ショットで形成した直径約0.2mm〜0.4mmの鉄球を900cc分投入し、この鉄
球が収容された各バスケットを、純水で満たされた水槽に水没させた。続いて、公知の引
き上げ機構を用いて各バスケットを55cm/secの速度で引き上げ、その引き上げ時の荷重
の経時変化を測定した。その結果、比較例1のバスケットを水面から完全に引き上げた時
点(バスケット全体が水面から露出した時点)では、当該引き上げ機構にかかる荷重は約
23kgであったが、約4秒後に約18kgまで低下した。5kgの荷重低下は、バスケ
ットの中に閉じ込められてバスケットとともに引き上げられた水の重さと考えることがで
きる。したがって、この測定結果から、比較例1のバスケットから水が完全に流出するま
でに4秒間要したことが分かる。
実施例1ないし実施例3のバスケットについても、比較例1と同様にして、水槽から引
き上げたときの引き上げ機構にかかる荷重の経時変化を測定した。その結果、実施例1及
び実施例2、実施霊3のいずれについても、引き上げ機構にかかる荷重は、バスケット全
体が水面から露出した時点において約23kgであったが、約1秒後に約18kgまで低
下した。これにより、バスケットを構成するメッシュ部材の表面の少なくとも収容空間外
側の面に撥水性薄膜を形成することにより、又は、バスケットを構成するメッシュの周方
向の一部に撥水性薄膜を形成することにより、当該バスケットの液透過性が改善すること
が確認できた。実施例3の排水性が高いのは、バスケットの一部に形成された撥水性のメ
ッシュ部分には水膜が形成されにくく、該部分からバスケット内部に空気が容易に進入し
たことにより、バスケット全体の排水性が向上したためと考えられる。
また、実施例3の鉄球が収容されたバスケットを、水槽に再度水没させて、その時の気
泡の発生状況を確認した。その結果、バスケットの親水性のメッシュ部分にはほとんど細
かな気泡が発生しなかった。一方、撥水性のメッシュ部分には多数の細かな気泡が確認で
きた。この検証により、バスケットのメッシュの一部のみを撥水性としてバスケットの排
水性を確保しながら、細かな気泡の発生は他の親水性メッシュ部分で抑制できることが確
認できた。
(撥水性メッシュのめっき液透過性の検証)
次に、実施例1、実施例2、及び比較例1の各バスケットの収容空間に、スチールショ
ットで形成した直径約0.2mm〜0.4mmの鉄球を900cc分投入し、この鉄球が
収容された各バスケットを、公知の硫酸Snめっき液(表面張力:35dyne/cm、pH:4.0〜
4.5)で満たされためっき液槽に浸漬させた。続いて、公知の引き上げ機構を用いて各バ
スケットを55cm/secの速度で引き上げ、その引き上げ時の荷重の経時変化を測定した。そ
の結果、比較例1のバスケットをめっき液面から完全に引き上げた時点(バスケット全体
がめっき液面から露出した時点)では、当該引き上げ機構にかかる荷重は約22kgであ
ったが、約5秒後に約18kgまで低下した。4kgの荷重低下は、バスケットの中に閉
じ込められてバスケットとともに引き上げられためっき液の重さと考えることができる。
したがって、この測定結果から、比較例1のバスケットからめっき液が完全に流出するま
でに5秒間要したことが分かる。
実施例1及び実施例2のバスケットについても、比較例1と同様にして、めっき液槽か
ら引き上げたときの引き上げ機構にかかる荷重の経時変化を測定した。その結果、実施例
1及び実施例2のいずれについても、引き上げ機構にかかる荷重は、バスケット全体が液
面から露出した時点において約22kgであったが、約1秒後に約17kgまで低下した
。これにより、バスケットを構成するメッシュ部材の表面の少なくとも収容空間外側の面
に撥水性薄膜を形成することにより、当該バスケットのめっき液透過性が改善することが
確認できた。
上記の実施例によって、バスケットを構成するメッシュ構造体の表面に撥水性を有する
コーティング薄膜を形成した場合に、当該バスケットのめっき液透過性が改善することを
示した。かかる改善は、メッシュ構造体の表面に撥水性が付与されたことによるものであ
るから、メッシュ構造体の表面(の少なくとも一部)を撥水性材料から形成した場合にも
、コーティング薄膜が形成された実施例と同様に、当該メッシュ構造体を用いて作製され
るバスケットのめっき液透過性が改善すると考えられる。
10:バスケット
14:基体
16:プライマー薄膜
18:コーティング薄膜

Claims (15)

  1. 物を収容する収容空間を画するメッシュ基体と、
    前記メッシュ基体の表面の少なくとも一部に形成され、前記メッシュ基体よりも高い親水性を有する親水性表面を備えるプライマー薄膜と、
    を備えるメッシュ構造体。
  2. 前記親水性表面の水との接触角が60ー未満である請求項1に記載の構造体。
  3. 前記プライマー薄膜は酸素プラズマ及び/または窒素プラズマが照射されて成る請求項2に記載の構造体。
  4. 前記プライマー薄膜が、酸素原子及び/又は窒素原子を含む、請求項3に記載のメッシュ構造体。
  5. 前記プライマー薄膜が、O、N、及びSi、Ti、Al、及びZrから成る群から選択される少なくとも1つの原子を含む非晶質炭素膜である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のメッシュ構造体。
  6. 前記プライマー薄膜が、前記収容空間の前記物が存在する収容空間内側の反対側に存在する収容空間外側の表面に形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のメッシュ構造体。
  7. 前記プライマー薄膜はドライプロセスにより形成され、前記ドライプロセスは、スパッタリング法、プラズマCVD法、CVD法、真空蒸着法、MBE法、クラスターイオンビーム法、及び高周波イオンプレーティング法から成る群より選択されるいずれか1つのプロセスである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のメッシュ構造体。
  8. 前記物が、電子部品、機械部品、薬品、植物被子、繊維、微粒子、粉体、又は、プローブである請求項1〜7のいずれか1項に記載のメッシュ構造体。
  9. 前記プライマー薄膜の表面の一部にさらに撥水性又は撥水撥油性のコーティング薄膜が形成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のメッシュ構造体。
  10. 前記メッシュ基体が円筒形状に構成されており、
    前記コーティング薄膜は、前記円筒形状のメッシュ基体の上面、底面、又は側面のうちの少なくとも一つの面に形成されている、
    請求項9に記載のメッシュ構造体。
  11. 前記コーティング薄膜が、前記プライマー薄膜の表面に形成され、前記プライマー薄膜と水素結合及び/又は縮合反応による−O−M結合(ここで、Mは、Si、Ti、Al、及びZrから成る群より選択されるいずれかの元素。)を形成可能なフッ素含有カップリング剤を主成分とする、請求項10に記載のメッシュ構造体。
  12. 前記コーティング薄膜が、フッ素含有シランカップリング剤を主成分とする、請求項11に記載のメッシュ構造体。
  13. 前記コーティング薄膜が、
    前記プライマー薄膜と水素結合及び/又は縮合反応による−O−M結合(ここで、Mは、Si、Ti、Al、及びZrから成る群より選択されるいずれかの元素。)を形成可能なカップリング剤を主成分とし、前記プライマー薄膜の表面に形成された第1層と、
    撥水材料を主成分とし、前記第1層の表面に形成された第2層と、
    を備える、
    請求項11項に記載のメッシュ構造体。
  14. 前記カップリング剤が、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、及びジルコネート系カップリング剤から成る群より選択されるいずれか1つのカップリング剤から成る請求項11に記載のメッシュ構造体。
  15. 物を収容する収容空間を画するメッシュ基体と、
    前記メッシュ基体の表面の少なくとも一部が親水性を有する親水性表面を備えるメッシュ構造体。
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