本発明の積層フィルムは、少なくとも、支持体と、樹脂により形成された樹脂層との積層体から構成された積層フィルムであって、前記樹脂層平面での一方向(例えば、樹脂層を形成する際の流れ方向であるMD:Machine Direction)におけるラマン分光法で測定される前記樹脂の結晶部のスペクトル強度を非晶部のスペクトル強度で除して得られるスペクトル強度比Aと、前記樹脂層の前記一方向に直交する同一平面上での他方向(例えば、TD:Transverse Direction)におけるラマン分光法で測定される前記樹脂の結晶部のスペクトル強度を非晶部のスペクトル強度で除して得られるスペクトル強度比Bとの和が、1.95以上2.66以下の範囲にあることを特徴とする。以下、本発明の積層フィルムについて詳述する。
なお、特許請求の範囲及び明細書において、数値範囲の表記として、符号「〜」を使用しているが、例えば、「値XがA1〜A2である」とする数値範囲の意味は、「A1≦X≦A2」を意味する。また、積層フィルムのMDについては、例えば、後述のバリア層22がアルミニウム箔により構成されている場合には、アルミニウム箔の圧延方向がMDとなり、MDに同一平面垂直方向がTDとなる。アルミニウム箔の圧延方向は、アルミニウム箔の圧延痕によって確認することができる。
積層フィルムの積層構造
本発明の積層フィルムは、例えば図1に示されるように、支持体2と、樹脂層1が積層されてなる。樹脂層1は、1層のみにより構成されていてもよいし、複数の層により構成されていてもよい。
また、支持体2を構成する層としては、例えば、基材層21、バリア層22などが挙げられる。支持体2は、1層のみにより構成されていてもよいし、複数の層により構成されていてもよい。また、支持体2が基材層21及びバリア層22を有する場合、本発明の積層フィルムは、図1に示されるように、基材層21、バリア層22、及び樹脂層1の順に積層されていることが好ましい。支持体2が基材層21及びバリア層22を有する場合、基材層21とバリア層22との接着性を高めることなどを目的として、これらの層の間に、必要に応じて接着層A(図示しない)を設けてもよい。また、支持体2と樹脂層1との接着性を高めることなどを目的として、これらの層の間(例えば、基材層21と樹脂層1との間、バリア層22と樹脂層1との間など)に、必要に応じて接着層B(図示しない)を設けてもよい。
積層フィルムの各層の構成
[樹脂層1]
積層フィルム10において、樹脂層1は、樹脂により形成されており、支持体2の上に積層されている。後述のように、本発明の積層フィルム10を包装材料などとして用いる場合、樹脂層1を熱融着性樹脂層とすることができる。熱融着性樹脂層は、包装材料によって内容物を密封する際に、包装材料の最内層を構成する層である。内容物を密閉する際に、熱融着性樹脂層1の表面同士を互いに接触させ、接触した部分を熱融着して内容物を密封することができる。
積層フィルム10においては、樹脂層1の一方向(例えば、樹脂層1を形成する際の流れ方向であるMD)におけるラマン分光法で測定される前記樹脂の結晶部と非晶部のスペクトル強度比A(結晶部/非晶部)と、樹脂層1の前記一方向に直交する他方向(例えば、MDとは同一平面の垂直方向であるTD)におけるラマン分光法で測定される前記樹脂の結晶部と非晶部のスペクトル強度比B(結晶部/非晶部)との和(A+B)が、1.95〜2.66の範囲にある。積層フィルム10においては、スペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bとの和が、このような範囲にあることにより、樹脂層1表面に存在する滑剤量の大幅な変化を抑制し、安定した成形性を発揮しつつ、金型への滑剤の塊の付着を効果的に抑制することができる。この機序の詳細としては、次のように考えることができる。すなわち、樹脂層1においては、樹脂の結晶部と非晶部とが存在するが、樹脂層1内部に滑剤が含まれる場合、滑剤は、樹脂の非晶部に存在する。従って、前記一方向及び他方向における樹脂の非晶部と結晶部との割合の合計が上記の一定範囲にあることにより、温度変化等に伴う樹脂層1内部から表面への滑剤のブリードアウト量と、樹脂層1の表面から内部への滑剤の移行量とを一定にすることが可能となる。その結果、樹脂層1表面に存在する滑剤量の大幅な変化が抑制され、積層フィルム10が安定した成形性を発揮し、かつ、金型への滑剤の塊の付着が効果的に抑制されているものと考えられる。
積層フィルム10の樹脂層1における、一方向(例えば、樹脂層1を形成する際の流れ方向であるMD)における上記スペクトル強度比Aと、当該一方向に直交する他方向(例えば、MDとは同一平面の垂直方向であるTD)におけるスペクトル強度比Bとは、それぞれ、顕微鏡レーザーラマン分光測定装置(例えば、ホリバ・ジョバンイボン(HORIBA JOBIN YVON)社製のLabRAM HR−800)を用いて、以下の測定条件及び解析条件で測定した値である。
MDにおける上記スペクトル強度Aの測定では、MDと入射レーザ偏光面が平行になるようにラマンスペクトルを測定し、TDにおける上記スペクトル強度Bの測定では、TDと入射レーザ偏光面が平行となるようにラマンスペクトルを測定する。
測定条件:励起用レーザ波長633nm、露光時間15秒、対物レンズ50倍、積算回数8回、共焦点ホール径φ0.1mm、グレーティング800L/mm
解析条件:
(1)ラマンシフト600〜700cm−1の散乱強度の平均値をベースライン値とする。
(2)ラマンシフト809±2cm−1の範囲における散乱強度の最大値から、上記ベースライン値を減じて、809cm−1におけるピーク強度を求める。
(3)ラマンシフト842±2cm−1の範囲における散乱強度の最大値から、上記ベースライン値を減じて、842cm−1におけるピーク強度を求める。
(4)上記(2)及び(3)のピーク強度を用いて、スペクトル強度比A,Bを算出する。
なお、例えば、後述のように、樹脂層1を形成する樹脂としてポリプロピレンを用いた場合には、ラマン分光法によるスペクトル測定において、図3の模式図に示されるように、樹脂の結晶部のピークはラマンシフト809cm−1付近に観測され、非晶部のピークはラマンシフト842cm−1付近に観測される。このように、樹脂の結晶部と非晶部とは、通常、異なる位置にスペクトルのピークが観察されるため、前記一方向(例えば、MD)及びこれに直交する他方向(例えば、TD)における結晶部と非晶部とのピーク強度を測定し、得られた値から、スペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bを算出することができる。
一方向(例えば、樹脂層1を形成する際の流れ方向であるMD)における上記スペクトル強度比Aと、これに直交する他方向(例えば、MDとは同一平面の垂直方向であるTD)における上記スペクトル強度比Bの和としては、上記の範囲にあればよいが、樹脂層1表面に存在する滑剤量の大幅な変化を抑制し、冷間成形においても、安定した成形性を発揮させ、かつ、金型への滑剤の塊の付着を抑制する観点からは、好ましくは1.95〜2.60程度、より好ましくは1.95〜2.51程度、さらに好ましくは1.95〜2.41程度、さらに好ましくは1.95〜2.35程度、さらに好ましくは1.95〜2.10程度、さらに好ましくは1.99〜2.09程度、特に好ましくは2.00〜2.07程度の範囲が挙げられる。また、同様の観点から、上記スペクトル強度比Aとしては、好ましくは0.90〜1.17程度、より好ましくは0.90〜1.15程度、さらに好ましくは0.92〜1.07程度、特に好ましくは0.99〜1.05程度の範囲が挙げられ、上記スペクトル強度比Bとしては、好ましくは0.90〜1.66程度、より好ましくは0.90〜1.51程度、さらに好ましくは1.00〜1.43程度、さらに好ましくは1.00〜1.25程度、特に好ましくは1.00〜1.10程度の範囲が挙げられる。
積層フィルム10においては、一方向(例えば、樹脂層1を形成する際の流れ方向であるMD)における結晶部と非晶部のスペクトル強度比Aと、前記一方向に直交する他方向(例えば、MDとは同一平面の垂直方向であるTD)における結晶部と非晶部のスペクトル強度比Bとの差の絶対値|B−A|が、0.00〜0.70の範囲にあることが好ましい。上記スペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bとの差の絶対値|B−A|が、このような範囲にあることにより、積層フィルム10のカール量hを小さくすることができる。なお、上記スペクトル強度は、通常、樹脂層の同一平面上におけるMD、TD(後述)での直交した位置での差の絶対値|B−A|が最も大きく表れるものであるが、その位置関係に限られるものではない。
本発明において、積層フィルム10のカール量hとは、積層フィルムの湾曲の程度を示す指標である。カール量hの測定には、図2の模式図に示されるように、一方向の長さ90mm、当該一方向に直交する他方向の長さ150mmの積層フィルム10を用意する。次に、当該積層フィルム10の中心Pにおいて、積層フィルム10のそれぞれの対角を結ぶ2つの線上に、積層フィルムの厚み方向に貫通するようにして、前記支持体側から、前記中心が中央となる長さ100mmの2本の切れ込み(積層フィルムを貫通している)を入れる。次に、積層フィルムの水平面30とは垂直方向において、カールにより立ち上がった4つの面の頂点(中心P)と水平面30との距離を測定し、その最も大きな数値を最大距離hとし、これをカール量hとする。カール量hは、ミツトヨ社製のハイトゲージなどを用いて測定できる。
積層フィルムは、通常、帯状の積層体として製造され、適当な大きさに切断することにより、後述のような種々の用途に使用される。切断された後の積層フィルム10において、上記のカール量hが大きい場合、成形を行う際に金型の位置決めが困難となる。本発明の積層フィルム10において、スペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bとの差の絶対値|B−A|が上記の範囲内にあり、カール量hが例えば後述のような範囲にある場合には、成形を行う際に金型の位置決めを容易に行うことができ、積層フィルムの成形工程を効率的に行うことが可能となる。
積層フィルム10において、一方向における結晶部と非晶部のスペクトル強度比Aと、当該一方向に直交する他方向における結晶部と非晶部のスペクトル強度比Bとの差の絶対値|B−A|が、上記の範囲にあることによって、積層フィルム10のカール量hを小さくすることができる機序としては、次のように考えることができる。すなわち、樹脂層1においては、樹脂の結晶部と非晶部とが存在するが、スペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bとの差の絶対値|B−A|が上記のように小さい(例えば、MDにおける結晶部と非晶部との割合と、TDにおける結晶部と非晶部との割合との差が小さい)ため、一方向と前記一方向に直交する他方向における結晶部の割合の相違に基づく積層フィルムの形状の歪みが抑制されており、結果として、積層フィルム10のカール量hを小さくすることができるものと考えられる。
積層フィルム10のカール量hをより一層小さくする観点からは、スペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bとの差の絶対値|B−A|としては、より好ましくは0.00〜0.66程度、さらに好ましくは0.00〜0.51程度、さらに好ましくは0.00〜0.43程度、さらに好ましくは0.00〜0.33程度、さらに好ましくは0.00〜0.27程度、さらに好ましくは0.00〜0.15程度、さらに好ましくは0.00〜0.10程度、さらに好ましくは0.00〜0.08程度、特に好ましくは0.00〜0.05程度の範囲が挙げられる。
積層フィルム10のカール量hとしては、好ましくは約30mm以下、より好ましくは約29mm以下、さらに好ましくは約28mm以下、さらに好ましくは約27mm以下、さらに好ましくは25mm以下、さらに好ましくは約20mm以下、さらに好ましくは約10mm以下、さらに好ましくは約5mm以下が挙げられる。なお、カール量hの好ましい下限は、0mmである。
樹脂層1を構成する樹脂としては、特に制限されないが、樹脂層1は、熱可塑性樹脂により形成されていることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンなどが挙げられる。
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などの結晶性または非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、ポリエチレン及びポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体である。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。また、環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネンなどの環状アルケン;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエンなどの環状ジエンなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、環状アルケンが好ましく、ノルボルネンがさらに好ましい。
カルボン酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンをカルボン酸で変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物をブロック重合またはグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンは、上記の環状ポリオレフィンと同様とすることができる。また、変性に使用されるカルボン酸としては、上記の酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に用いられるものと同様とすることができる。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、上記のスペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bとの和を上記の範囲に設定することにより、樹脂層1表面に存在する滑剤量の大幅な変化を抑制し、冷間成形においても、安定した成形性を発揮させ、かつ、金型への滑剤の塊の付着を抑制する観点からは、好ましくはポリオレフィン、環状ポリオレフィン、及びこれらのブレンドポリマー;さらに好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとノルボルネンの共重合体、及びこれらの中の2種類以上のブレンドポリマーが挙げられる。
上記のスペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bとの和及び差を上記の数値範囲に設定する方法としては、例えば、樹脂層1を構成する樹脂として、上記で例示した樹脂を使用し、さらに、樹脂層1の形成時に冷却するチルロールの温度を、例えば、10以上、50℃未満に設定する方法が挙げられる。当該温度が10℃未満の場合は、チルロール表面と樹脂層との剥離性が悪化し、剥離する際、破れ等が発生する。一方、50℃以上とすると、結晶部の割合が大きくなり、積層フィルムの成形時における滑剤の析出量が多くなりすぎ、安定した成形性が発揮されにくくなる。上記のスペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bとの和及び差を上記の数値範囲に設定するためのチルロールの温度としては、好ましくは10〜50℃程度、より好ましくは15〜48℃程度、さらに好ましくは15〜33℃程度、さらに好ましくは15〜31℃程度、さらに好ましくは15〜28℃程度、特に好ましくは25〜28℃程度が挙げられる。
樹脂層1は、1種類の樹脂成分のみから形成されていてもよく、2種類以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーから形成されていてもよい。さらに、樹脂層1は、上記のとおり、1層のみで形成されていてもよく、同一または異なる樹脂成分によって2層以上により形成されていてもよい。
積層フィルム10が成形に供される際、樹脂層1の表面には滑剤が存在している。これにより、樹脂層1表面の滑り性が向上し、積層フィルムの成形性が高められている。なお、滑剤は、樹脂層1を形成するポリオレフィン樹脂などの樹脂中を移動しやすいため、樹脂層1に滑剤を配合した場合や、樹脂層1の表面に滑剤をコーティングした直後など、樹脂層1のいずれか一方のみにしか滑剤が含まれない場合にも、時間の経過と共に、滑剤が移動して、樹脂層1の表面と内部の両方に滑剤が存在する。すなわち、積層フィルム10においては、予め樹脂層1中に滑剤が含まれていてもよいし、積層フィルム10の製造後、成形前に樹脂層1の表面に滑剤をコーティングしてもよい。
樹脂層1の表面に滑剤を存在させる方法としては、樹脂層1の表面に滑剤をコーティングしたり、樹脂層1を形成するポリオレフィンなどに滑剤を配合する方法が挙げられる。なお、上述の通り、樹脂層1を形成するポリオレフィンなどに滑剤を配合する場合にも、樹脂層1の表面に滑剤をブリードアウトさせることにより、樹脂層1の表面に滑剤を存在させることができる。一方、樹脂層1の表面に滑剤をコーティングする場合にも、表面から内部に滑剤の一部が移動することにより、樹脂層1の内部に滑剤を存在させることができる。なお、樹脂層1の表面に滑剤をブリードアウトさせる方法としては、積層フィルムを30〜50℃程度のやや高温下で、数時間〜3日間程度熟成させて、促進的にブリードアウトさせるのが一般的である。以上のような、樹脂層1の内部と表面における滑剤の移動は、特に、後述のアミド系滑剤において生じやすい現象である。
滑剤の種類としては、特に制限されないが、上記のスペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bとの和(A+B)を上記の範囲に設定することにより、樹脂層1表面に存在する滑剤量の大幅な変化を抑制し、冷間成形においても、安定した成形性を発揮させ、かつ、金型への滑剤の塊の付着を抑制する観点からは、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。
アミド系滑剤としては、アミド基を有するものであれば特に制限されないが、好ましくは脂肪酸アミド及び芳香族ビスアミドが挙げられる。アミド系滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
脂肪酸アミドとしては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。
樹脂層1にアミド系滑剤が含まれる場合、樹脂層1の表面と内部に存在する滑剤の含有量としては、質量基準で、好ましくは700ppm以上、より好ましくは700〜3000ppm程度、さらに好ましくは700〜2500ppm程度、特に好ましくは1200〜2000ppm程度が挙げられる。なお、これらの値は、樹脂層1の表面及び内部に存在する滑剤が、全て樹脂層1中に存在するとした場合における含有量を意味する。
樹脂層1の厚みとしては、特に制限されないが、冷間成形においても、安定した成形性を発揮させる観点からは、例えば5〜500μm程度、好ましくは5〜200μm程度が挙げられる。なお、樹脂層1の厚みは、積層フィルムの厚み方向の断面から測定することができる。
[支持体2]
支持体2を構成する層としては、例えば、基材層21、バリア層22などが挙げられる。支持体2は、1層のみにより構成されていてもよいし、複数の層により構成されていてもよい。支持体2が基材層21及びバリア層22を有する場合、積層フィルム10の層構成が、基材層21、バリア層22、及び樹脂層1の順となるように積層することが好ましい。支持体2が基材層21及びバリア層22を有する場合、基材層21とバリア層22との接着性を高めることなどを目的として、これらの層の間に、必要に応じて接着層Aを設けてもよい。また、支持体2と樹脂層1との接着性を高めることなどを目的として、これらの層の間(例えば、基材層21と樹脂層1との間、バリア層22と樹脂層1との間など)に、必要に応じて接着層Bを設けてもよい。以下、これらの層について詳述する。
(基材層21)
積層フィルム10において、支持体2として含まれ得る基材層21は、必要に応じて設けられ、積層フィルム10の基材となる層である。基材層21を形成する素材については、特に制限されない。基材層21を形成する素材の具体例としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、アクリル、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等の樹脂が挙げられる。
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層21の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層21の形成素材として好適に使用される。
基材層21は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層21として好適に使用される。
これらの中でも、基材層21を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ナイロンが挙げられる。
基材層21は、積層フィルム10の耐ピンホール性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルムを積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層21を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出しラミネート法、サンドイッチラミネート法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。また、接着剤を介して接着させる場合、使用する接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、UVやEBなどの電子線硬化型等のいずれであってもよい。接着剤の成分としてポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコーン系樹脂が挙げられる。
基材層21の厚みは、特に制限されないが、例えば、5〜50μm程度、好ましくは10〜30μm程度とすることができる。
(バリア層22)
積層フィルム10において、支持体2として含まれ得るバリア層22は、必要に応じて設けられる層である。例えば積層フィルム10を包装材料などとして用いる場合には、強度向上の他、積層フィルム10によって密封された内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する。バリア層22を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。バリア層22は、例えば、金属箔や金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム合金箔により形成することがさらに好ましい。積層フィルムの製造時に、バリア層22にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、バリア層は、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H−O、JIS H4160:1994 A8079H−O、JIS H4000:2014 A8021P−O、JIS H4000:2014 A8079P−O)など軟質アルミニウム合金箔により形成することがより好ましい。
バリア層22の厚みは、特に制限されないが、例えば、10〜200μm程度、好ましくは20〜100μm程度とすることができる。
バリア層22は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム化合物を用いたクロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。
一般式(1)〜(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500〜100万程度であることが好ましく、1000〜2万程度であることがより好ましい。
また、バリア層22に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、バリア層22の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
化成処理は、1種類の化成処理のみを行ってもよいし、2種類以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。さらに、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。化成処理の中でも、クロメート処理や、クロム化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせた化成処理などが好ましい。クロム化合物の中でも、クロム酸化合物が好ましい。
化成処理においてバリア層22の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、上記のクロメート処理を行う場合であれば、バリア層22の表面1m2当たり、クロム化合物がクロム換算で0.5〜50mg程度、好ましくは1.0〜40mg程度、リン化合物がリン換算で0.5〜50mg程度、好ましくは1.0〜40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が1.0mg〜200mg程度、好ましくは5.0〜150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、バリア層の表面に塗布した後に、バリア層の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層に化成処理を施す前に、予めバリア層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、バリア層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。
(接着層A)
積層フィルム10において、支持体2に含まれ得る接着層Aは、基材層21とバリア層22との接着強度を高めることを目的として、必要に応じて設けられる層である。
接着層Aは、基材層21とバリア層22とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層Aの形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着層Aの形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着層Aの形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂;ふっ化エチレンプロピレン共重合体等が挙げられる。これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の組み合わせ態様については、特に制限されないが、例えば、その接着剤成分として、ポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、展延性、高湿度条件下における耐久性や応変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層21とバリア層22との間のラミネート強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
また、接着層Aは異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着層Aを異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層21とバリア層22とのラミネート強度を向上させるという観点から、基材層21側に配される接着剤成分を基材層21との接着性に優れる樹脂を選択し、バリア層22側に配される接着剤成分をバリア層22との接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着層Aを異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、バリア層22側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
接着層Aの厚さについては、例えば、2〜50μm程度、好ましくは3〜25μm程度が挙げられる。
(接着層B)
積層フィルム10においては、支持体2と樹脂層1とを強固に接着させることなどを目的として、支持体2(例えば、基材層21、バリア層22など)と樹脂層1との間に接着層Bをさらに設けてもよい。
接着層Bは、支持体2として含まれ得る基材層21、バリア層22などと樹脂層1とを接着可能な接着剤成分によって形成される。接着層Bの形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。また、接着層Bの形成に使用される接着剤成分の接着機構についても、特に限定されず、例えば、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などが挙げられる。
接着層Bの形成に使用できる接着剤成分の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのゴム;シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの接着剤成分は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
接着層Bの厚みは、特に制限されないが、例えば、1〜40μm程度とすることが好ましく、2〜30μm程度とすることがより好ましい。
なお、積層フィルム10を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性などを向上または安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理が施されていてもよい。
積層フィルムの製造方法
本発明の積層フィルム10は、支持体2と樹脂層1とを積層させることにより製造することができ、具体的には、例えば、以下の製造方法を例示することができる。
例えば、支持体2が基材層21、バリア層22を有する場合であれば、以下の積層工程によって積層フィルム10が得られる。まず、基材層21とバリア層22とを積層する。この積層は、例えば、接着層Aを形成する上記の接着剤成分などを用いたドライラミネート法などにより行うことができる。また、基材層21とバリア層22とを積層する方法としては、基材層21を形成する樹脂をバリア層22の表面に押出し形成する方法や、基材層21の一方側の表面に金属を蒸着してバリア層22を形成する方法なども挙げられる。次に、バリア層22の上に樹脂層1を積層する。樹脂層1は、例えば、熱可塑性樹脂の溶融押出しや、ドライラミネート法により形成することができる。バリア層22と樹脂層1との接着強度を高めることを目的として、必要に応じて、バリア層22の上に接着層Bを形成する接着剤成分を塗布し、乾燥させた後、その上から樹脂層1を形成してもよい。樹脂層1が、複数の層により形成されている場合、共押出法などの公知の方法により複数の層により形成された樹脂層1を積層することができる。
得られた積層フィルム10における各層の接着性を高めるために、エージング処理などを行ってもよい。エージング処理は、例えば、積層フィルム10を30〜100℃程度の温度下に1〜200時間加熱することにより行うことができる。さらに、得られた積層フィルムにおける各層の接着性をさらに高めるために、得られた積層フィルム10を樹脂層1の融解ピーク温度以上の温度で加熱してもよい。このときの温度は、樹脂層1の融解ピーク温度+5℃以上、融解ピーク温度+100℃以下であることが好ましく、融解ピーク温度+10℃以上、融解ピーク温度+80℃以下であることがより好ましい。なお、本発明において、樹脂層1の融解ピーク温度とは、樹脂層1を構成する樹脂成分の示差走査熱量測定における吸熱ピーク温度をいう。エージング処理での加熱及び樹脂層1の融解ピーク温度以上での加熱は、それぞれ、例えば、熱ロール接触式、熱風式、近または遠赤外線式などの方式により行うことができる。
なお、積層フィルムを構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性などを向上または安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理が施されていてもよい。
積層フィルムの用途
本発明の積層フィルム10は、上述の通り、通常、帯状の積層フィルムとして製造され、適当な大きさに切断することにより、種々の用途に使用される。また、本発明の積層フィルム10は、特に、成形深さが0.5mm以上、好ましくは4.0〜7.0mm程度の冷間成形に供される積層フィルムとして好適に使用することができる。積層フィルム10の具体的な用途としては、特に制限されないが、例えば、包装材料などが挙げられる。例えば、積層フィルム10を包装材料として用いる場合、当該包装材料は、薬品、化粧品、食品、電解液などの様々な内容物の包装に利用することができる。すなわち、本発明の包装材料は、薬品用包装材料、化粧品用包装材料、食品用包装材料、電池用包装材料などとして好適に使用される。また、包装材料は、内容物の形状に合わせて変形され、内容物を収容する包装体とすることもできる。
以下に、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
<実施例1〜16及び比較例1〜3>
[積層フィルムの製造]
後述の構成を備える基材層21の上に、両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚さ40μm)からなるバリア層22をドライラミネート法により積層させた。具体的には、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、バリア層22上に接着層A(厚さ4μm)を形成した。次いで、バリア層22上の接着層Aと基材層21を加圧加熱貼合した後、エージング処理を実施することにより、基材層21/接着層A/バリア層22が順に積層された支持体を得た。なお、バリア層22として使用したアルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、焼付けすることにより行った。
実施例及び比較例で使用した基材層21の構成は、以下の通りである。
実施例1,2:PETフィルム(12μm)/接着剤層(3μm)/ナイロンフィルム(15μm)の積層体(ナイロンがバリア層側)
実施例3:PET(5μm)/ナイロン(20μm)の2層共押出フィルム(ナイロンがバリア層側)
実施例4:PET(5μm)/熱可塑性ポリエステルエラストマー(1μm)/ナイロン(20μm)の3層共押出フィルム(ナイロンがバリア層側)
実施例5,6:PETフィルム(12μm)単層
実施例7から16及び比較例1から3:ナイロンフィルム(25μm)単層
なお、「PET」は、「ポリエチレンテレフタレート」を意味する。
次いで、実施例1から11及び比較例1から3では、支持体のバリア層22側に樹脂層1を形成する樹脂A(カルボン酸変性ポリプロピレン、融解ピーク温度160℃)と樹脂B(脂肪酸アミド系滑剤を含むポリプロピレン、融解ピーク温度140℃)を溶融状態(250℃)で共押し出しすることにより、バリア層22上に樹脂層1(厚さ25μm/25μm、樹脂Bが最内層側)を積層させた。斯して、基材層21/接着層A/バリア層22/樹脂層1が順に積層された実施例1から実施例11及び比較例1、比較例2、比較例3の各積層フィルムを得た。なお、樹脂層1を積層した後に積層体を冷却するチルロールの温度は、それぞれ、表1及び表2に記載の温度とした。
また、実施例12、13では、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)をバリア層22側に塗布し、接着層B(厚さ4μm)を形成した。次いで、未延伸ポリプロピレンフィルム(3層押し出し品、脂肪酸アミド系滑剤を含むプロピレン−エチレンランダムコポリマー(樹脂B、4μm)/プロピレン−エチレンブロックコポリマー(22μm)/プロピレン−エチレンランダムコポリマー(4μm)、樹脂Bが最内層側)を貼り合わせ、樹脂層1を形成した。斯して、基材層21/接着層A/バリア層22/接着層B/樹脂層1が順に積層された実施例12及び実施例13の各積層フィルムを得た。
また、実施例14では、主剤としての酸変性ポリプロピレンと、硬化剤としてのメチレンジイソシアネートからなる樹脂をバリア層22側に塗布し、樹脂層B(厚さ1μm)を形成した。実施例15では、主剤としての酸変性ポリプロピレンと、硬化剤としてのメチレンジイソシアネートからなる樹脂をバリア層22側に塗布し、樹脂層B(厚さ3μm)を形成した。実施例16では、主剤としての酸変性ポリプロピレンと、硬化剤としてのエポキシ樹脂(重量平均分子量500)からなる樹脂をバリア層22側に塗布し、樹脂層B(厚さ1μm)を形成した。次いで、実施例14〜16では、それぞれ、未延伸ポリプロピレンフィルム(3層押し出し品、脂肪酸アミド系滑剤を含むプロピレン−エチレンランダムコポリマー(樹脂B、4μm)/プロピレン−エチレンブロックコポリマー(22μm)/プロピレン−エチレンランダムコポリマー(4μm)、樹脂Bが最内層側)を貼り合わせ、樹脂層1を形成した。斯して、基材層21/接着層A/バリア層22/接着層B/樹脂層1が順に積層された実施例14、15、16の各積層フィルムを得た。実施例及び比較例において、樹脂Bに含まれる脂肪酸アミド系滑剤の量は、表1、2に記載の通りである。
<ラマン分光法によるスペクトル強度A,Bの測定>
上記で得られた積層フィルムの樹脂層について、一方向(MD)における上記スペクトル強度比Aと、当該一方向に直交する他方向(TD)におけるスペクトル強度比Bを、それぞれ、ラマン分光法を用いて、以下の測定機器、測定条件、及び解析条件により測定した。結果を表1及び表2に示す。
測定機器:ホリバ・ジョバンイボン(HORIBA JOBIN YVON)製のLabRAM HR−800
MDにおける上記スペクトル強度Aの測定では、MDと入射レーザ偏光面が平行になるようにラマンスペクトルを測定し、TDにおける上記スペクトル強度Bの測定では、TDと入射レーザ偏光面が平行となるようにラマンスペクトルを測定した。
測定条件:励起用レーザ波長633nm、露光時間15秒、対物レンズ50倍、積算回数8回、共焦点ホール径φ0.1mm、グレーティング800L/mm
解析条件:
(1)ラマンシフト600〜700cm−1の散乱強度の平均値をベースライン値とする。
(2)ラマンシフト809±2cm−1の範囲における散乱強度の最大値から、上記ベースライン値を減じて、809cm−1におけるピーク強度を求める。
(3)ラマンシフト842±2cm−1の範囲における散乱強度の最大値から、上記ベースライン値を減じて、842cm−1におけるピーク強度を求める。
(4)上記(2)及び(3)のピーク強度比を用いて、スペクトル強度比A,Bを算出する。前述の通り、樹脂層1を形成する樹脂としてポリプロピレンを用いた場合には、ラマン分光法によるスペクトル測定において、樹脂の結晶部のピークは809cm−1付近に観測され、非晶部のピークは842cm−1付近に観測される。このように、樹脂の結晶部と非晶部とは、通常、異なる位置にスペクトルのピークが観察されるため、一方向(MD)及びこれに直交する他方向(TD)における結晶部と非晶部とのピーク強度を測定し、得られた値から、スペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bを算出することができる。
<カール量hの測定>
上記で得られた積層フィルムを用い、一方向(MD)の長さ90mm、当該一方向に直交する他方向(TD)の長さ150mmの積層フィルムの中心において、積層フィルムのそれぞれの対角を結ぶ2つの線上に、積層フィルムの厚み方向に貫通するようにして、前記支持体側から、当該中心が中央となる長さ100mmの2本の切れ込み(積層フィルムを貫通する切れ込み)を入れ、これを前記支持体が下側になるようにして水平面に置いて20℃で8時間静置した。次に、図2に示すように、水平面とは垂直方向において、カールにより立ち上がった4つの面の頂点(中心P)と水平面30との距離をハイトゲージ(ミツトヨ社製)を用いて測定し、その最も大きな数値を最大距離hとした。結果を表1及び表2に示す。
<滑剤析出評価1>
上記で得られた積層フィルムを20℃で1週間保管した後、裁断し、120mm×80mmの短冊片を作製して試験サンプルとした。次に、30mm×50mmの矩形状の雄型とこの雄型とのクリアランスが0.5mmの雌型からなるストレート金型を用い、雄型側に樹脂層1側が位置するように雌型上に上記試験サンプルを載置し、成形深さ4.0mmとなるようにして、それぞれ、5000個(5000ショット)の試験サンプルを0.1MPaの押え圧(面圧)で押えて、冷間成形(引き込み1段成形)した。この時の試験サンプルの滑剤析出について、以下の基準に従って、評価した。結果を表1に示す。
A:成形5000回で金型に滑剤の付着無し
B:成形5000回で金型への滑剤の付着を確認したが、成形状態には影響なし
C:成形5000回で金型への滑剤の付着により成形サンプルに圧痕が発生
表1に示されるように、樹脂層における一方向(MD)における上記スペクトル強度比Aと、当該一方向に直交する他方向(TD)におけるスペクトル強度比Bとの和(A+B)が、2.06〜2.66の範囲である実施例1〜8、12〜16の積層フィルムにおいては、滑剤析出評価の結果が良好であった。さらに、スペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bとの差の絶対値|B−A|が0.01〜0.66と小さい実施例1〜8、12〜16の積層フィルムにおいては、カール量hを30mm以下程度に抑えることができた。これに対して、樹脂層における前記一方向(MD)における上記スペクトル強度比Aと、当該一方向に直交する他方向(TD)におけるスペクトル強度比Bとの和(A+B)が、2.77または2.75である比較例1,2の積層フィルムにおいては、滑剤析出評価の結果が劣っていた。
<滑剤析出評価2>
上記で得られた実施例1、2、6、7、9〜16、比較例1〜3の積層フィルムを表2に記載の各保管温度(5℃、20℃、40℃)で1週間保管した後、裁断し、120mm×80mmの短冊片を作製して試験サンプルとした。次に、30mm×50mmの矩形状の雄型とこの雄型とのクリアランスが0.5mmの雌型からなるストレート金型を用い、雄型側に樹脂層1側が位置するように雌型上に上記試験サンプルを載置し、成形深さ4.0mmとなるようにして、それぞれ、5000個(5000ショット)の試験サンプルを0.1MPaの押え圧(面圧)で押えて、連続して冷間成形(引き込み1段成形)した。この時の試験サンプルの滑剤析出について、以下の基準に従って、評価した。結果を表2に示す。なお、カール量については、各温度で保管した任意の試験サンプルについて、上記の<カール量hの測定>と同様にして測定した値である。
A:成形5000回で金型に滑剤の付着無し
B:成形5000回で金型への滑剤の付着を確認したが、成形状態には影響なし
C:成形5000回で金型への滑剤の付着により成形サンプルに圧痕が発生
<4.0mm成形性評価>
成形深さ4.0mmとなるようにして、上記の滑剤析出評価2と同様にして、それぞれ、5000個の試験サンプルについて、冷間成形を行い、ピンホールの発生の有無を確認した。成形性は、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
A:ピンホール発生なし
B:ピンホール発生率10%以下
C:ピンホール発生率11%以上
表2に示されるように、樹脂層における一方向(MD)における上記スペクトル強度比Aと、当該一方向に直交する他方向(TD)におけるスペクトル強度比Bとの和(A+B)が、1.99〜2.66の範囲である実施例1、2、6、7、9〜16の積層フィルムにおいては、滑剤析出評価の結果が良好であり、成形性にも優れていた。さらに、スペクトル強度比Aとスペクトル強度比Bとの差の絶対値|B−A|が0.05〜0.66と小さい実施例1、2、6、7、9〜16の積層フィルムにおいては、カールを抑制できた。これに対して、樹脂層における前記一方向(MD)における上記スペクトル強度比Aと、当該一方向に直交する他方向(TD)におけるスペクトル強度比Bとの和(A+B)が、2.77、2.75、または2.73である比較例1〜3の積層フィルムにおいては、滑剤析出評価の結果が劣っていた。