以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本明細書では、電子契約締結サービスを提供する金融機関1と当該サービスを利用する顧客2との間における電子契約締結処理、すなわち、金融機関1の担当者による契約データの作成および提示、顧客2による契約内容の承認および電子署名、並びに金融機関1内での融資事務連携処理に至る各種処理について最初に説明する。換言すれば、顧客2に対する貸付についての稟議承認後の融資契約締結業務および事務プロセスについて最初に説明する。そのため、契約書を作成する前段階の業務、すなわち、顧客2から融資の申込を受け、金融機関1内で融資の可否を判断するための稟議がなされ、融資可との決裁が下りるまでの業務についての説明は省略することとする(後述する案件番号912は、稟議の起案時に採番され、それぞれの稟議を識別するために使用される)。その後、一旦作成され、電子署名がなされた契約書を破棄する事態が生じた際の処理について説明していくこととする。なお、本明細書では、金融機関1と顧客2の間での融資契約を例にして説明するが、本発明は融資契約に限定使用されることはなく、金融機関1と顧客2の間での各種契約手続にも適用可能であることは言うまでもない。
図1は、本発明に係る電子契約システム100を含むシステム全体の概要図である。金融機関1は銀行などの金融機関であり、顧客2は法人や個人事業主などである。金融機関1は、勘定系システムやインターネットバンキングシステム(不図示)などの周知のシステムを有しており、図1に示すように、本発明に係る電子契約システム100をさらに有している。電子契約システム100は、1または複数の金融機関端末110と相互に通信可能であり、電子契約締結サービスに関する各種アプリケーションを金融機関端末110に提供することができる。金融機関端末110は、営業店における法人顧客の担当者および本店の審査部の担当者など、金融機関1内の予め定められた者により使用される。電子契約システム100と金融機関端末110は、金融機関1内の専用線やLANなどの周知の有線/無線ネットワークを介して相互に通信可能である。
顧客2は、法人の代表者、法人内で予め定められた権限を付与された者、および個人事業主など予め定められた者が利用可能な端末である、1または複数の顧客端末120を有する。顧客端末120は、インターネット130などの周知のネットワークを介して電子契約システム100と相互に通信可能であり、電子契約システム100によって提供される電子契約締結サービスに関する各種アプリケーションを利用することができる。顧客端末120は、ICカードから各種情報を読み取り可能なリーダ121と接続可能であり、リーダ121によってICカードから読み出された各種情報を受信して利用することができる。なお、本明細書では、ICカードを一例として説明するが、各種情報を記憶可能な代替記憶媒体が利用されてもよい。また、本明細書では、顧客端末120と電子契約システム100の間のネットワークの一例としてインターネット130を説明するが、他の代替ネットワークを利用するようにしてもよい。
電子契約システム100は、周知のネットワーク150を介して認証局サーバ140と相互に通信可能である。法人の代表者、法人内で予め定められた権限を付与された者、および個人事業主などのための電子証明書および鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)の作成依頼が電子契約システム100から認証局サーバ140に送信されると、認証局サーバ140は、依頼を受けた者の電子証明書および鍵ペアを生成して電子契約システム100に送信することができる。本明細書では、電子証明書および鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)は、電子署名のプロセスにおいて使用される。電子証明書については、その時々において相対的に安全性が高いと言われている暗号アルゴリズム(例えば、ある時代では、SHA−256およびRSA2048)が利用されて、署名用の電子証明書が発行される。なお、鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)および電子証明書は、リーダ121により読み取り可能なICカードなどの記憶媒体に格納されて、顧客2の法人の代表者、法人内で予め定められた権限を付与された者、および個人事業主などに渡され、また、後述する暗証番号(PIN)は、金融機関1の担当者から顧客2の法人の代表者、法人内で予め定められた権限を付与された者、および個人事業主などに直接手交されるなどセキュリティに配慮した受け渡しがなされてもよい。なお、金融機関1において電子契約システム100を利用する者の電子証明書および鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)については、予め認証局サーバ140によって生成されているものとする。
図2は、本発明に係る電子契約システム100のシステム構成図である。図2に示すように、電子契約システム100は、一般的なコンピュータと同様に、バス210などによって相互に接続された制御部201、主記憶部202、補助記憶部203、インターフェース(IF)部204および出力部205を備えることができる。電子契約システム100はまた、ファイル/データベースとして、顧客マスタ206、利用者マスタ207および契約書DB208を備えることができる。
制御部201は、中央処理装置(CPU)とも呼ばれ、電子契約システム100内の各構成要素の制御やデータの演算を行い、また、補助記憶部203に格納されている各種プログラムを主記憶部202に読み出して実行することができる。主記憶部202は、メインメモリとも呼ばれ、受信した各種データ、コンピュータ実行可能な命令および当該命令による演算処理後のデータなどを記憶することができる。補助記憶部203は、ハードディスク(HDD)などに代表される記憶装置であり、データやプログラムを長期的に保存する際に使用される。
図2の実施形態では、制御部201、主記憶部202および補助記憶部203を同一のサーバコンピュータ内に設ける実施形態について説明したが、他の実施形態として、電子契約システム100は、制御部201、主記憶部202および補助記憶部203を複数個使用することにより、複数のサーバコンピュータによる並列分散処理を実現するように構成されることもできる。また、他の実施形態として、電子契約システム100用の複数のサーバを設置し、複数サーバが一つの補助記憶部203を共有する実施形態にすることも可能である。
IF部204は、他のシステムや装置との間でデータを送受信する際のインターフェースの役割を果たし、また、システムオペレータから各種コマンドや入力データ(各種マスタ、テーブルなど)を受け付けるインターフェースを提供することができる。出力部205は、処理されたデータを表示する表示画面や当該データを印刷するための印刷手段などを提供することができる。
顧客マスタ206は、顧客2の基礎情報を格納する顧客マスタファイルであり、CIF(Customer Information File)とも言われるマスタファイルである。顧客2が金融機関1との取引を新規に行う場合には、顧客マスタ206に顧客情報が登録される。
図7は、顧客マスタ206のデータ構造の一例を説明する図である。図7に示すように、顧客マスタ206は、店番号701、取引先番号702、銀行口座情報703、および属性情報704を含むことができるが、これらのデータ項目に限定されることはなく他の任意のデータ項目も含むことが可能である。例えば、顧客マスタ206は、届出印鑑の印影、所有する法人用クレジットカードの種類、暗証番号、過去の融資記録などの情報を含むように構成されてもよく、顧客が同一金融機関内の複数の営業店に口座を保有する場合に、それらの口座を結びつける共通番号(例えば、「名寄せ」処理などの際に利用可能な識別番号)を含むように構成されてもよい。このような共通番号は、顧客2を識別するための番号として使用されることが可能なため、他の金融機関の顧客マスタにも格納されることが可能である。かかる場合には、当該共通番号に基づいて、複数の金融機関が保有する顧客の情報を関連付けることも可能となる。また、顧客マスタ206は、顧客の口座情報の共通データ項目として、複数のアプリケーションで利用されることができる。
店番号701は、顧客2を管理するそれぞれの営業店を識別する番号であり、取引先番号702は、当該営業店における顧客識別番号である。店番号701および取引先番号702を合わせてCIF番号(取引先番号ともいう)と呼ぶこともできる。すなわち、図7では、店番号701および取引先番号702を異なるデータ項目で示したが、両者を合わせて1つのデータ項目でCIF番号を構成することもできる。また、他の実施形態として、取引先番号702のみを銀行内で利用可能な顧客識別番号として利用することも可能であり、かかる場合には、ある取引先番号702は、複数の営業店に存在することはなく、その銀行内で唯一無二の番号として使用される。
銀行口座情報703は、顧客2の銀行口座の情報であり、店番号、科目、口座番号、口座名義などの情報を含むことができる。属性情報704は、顧客2の会社名、カナ氏名、代表取締役、住所、連絡先などの情報を含むことができる。
図2に戻って説明すると、利用者マスタ207は、顧客2において電子契約システム100を、署名者または確認者として利用する者の情報を格納するマスタファイルである。署名者は、債務者および保証人(例えば、連帯保証人)を含む。確認者は、契約書の内容をチェックするために顧客2内で指名された者(例えば、部長、経理担当課長など)である。顧客2の新たな署名者および確認者が電子契約システム100を利用する場合には、利用者マスタ207に情報が追加され、一方、電子契約システム100の既存の利用者の情報に変更がある場合(例えば、人事異動などにより署名者や確認者ではなくなる場合)には、当該利用者の情報に不使用フラグが立てられたり、所属部門や役職などの情報がアップデートされたりする。なお、本発明の一実施形態では、顧客2内で指名された確認者の全員が契約書の内容を確認する必要はなく、それぞれの契約書に関して指定された人数の確認者が確認すればよい。例えば、ある法人内で4名の確認者が指定されている(つまり、利用者マスタ207に4名の確認者が登録されている)とき、ある契約書については2名の確認で構わない場合、その4名のうち任意の2名が確認をすればよい。
図8は、利用者マスタ207のデータ構造の一例を説明する図である。利用者マスタ207は、利用者ID801、パスワード(PW)802、役職および名称803、署名者フラグ804、確認者フラグ805、不使用フラグ806、契約タイプ807、店番号701、および取引先番号702を含むことができるが、これらのデータ項目に限定されることはなく他の任意のデータ項目も含むことが可能である。店番号701および取引先番号702は、顧客マスタ206内のデータ項目と同一であり、これらのデータ項目により、利用者がどの顧客2の利用者であるのかを識別することができる。
利用者ID801は、顧客2における電子契約システム100の利用者を識別するための識別子であり、PW802は、利用者ID801に対して関連付けられる認証用パスワードである。利用者ID801およびPW802は、電子契約システム100の認証処理にて使用されるが、金融機関1が有する他のシステム(例えば、法人向けインターネットバンキング)のIDおよびPWと同一にしてもよいし、あるいは異なるようにしてもよい。なお、金融機関1において電子契約システム100を利用する者のパスワードなどの情報は、金融機関1内で様々なアプリケーションを利用する際に利用されるマスタテーブルに格納されていてもよく、あるいは、利用者マスタ207に必要な人の情報が格納されていてもよく、特に限定されることはない。
役職および名称803は、顧客2における役職、例えば、代表取締役、部長、経理担当課長などを示し、かつ名称、例えば、会社名や個人名を示す。役職および名称803は、所属部門を示してもよい。署名者フラグ804は、その者が署名者として指定されているかどうかを示し、署名者として指定されている場合、債務者の署名者であるのか、あるいは保証人の署名者であるのかをさらに示す。確認者フラグ805は、その者が確認者として指定されているかどうかを示す。本発明に係る電子契約システム100では、契約事前確認機能が利用可能である。例えば、契約の内容をチェックする部署や担当者と、契約を締結する部署や担当者が異なるケースで先に確認者の確認を完了したい場合、確認フラグに所定の値が設定されている確認者が契約の内容を確認し、その後、署名者が契約の内容を承認して署名することができる機能が利用可能である。不使用フラグ806は、当該利用者ID801が使用されているかどうかを示し、上述のように、既存の利用者の情報に変更がある場合に利用されるフラグである。
契約タイプ807は、利用者ID801の契約種類を示し、例えば、法人としての立場と個人としての立場の両方を一つの利用者IDにまとめた「法個両用タイプ」、法人としての立場のみを表す「法人限定タイプ」、個人としての立場のみを示す「個人限定タイプ」、契約内容確認権限者による確認が完了しない限り債務者・保証人が電子署名できない場合に利用される「事前契約確認タイプ」などが存在する。
法個両用タイプの利用者ID801は、契約書の債務者欄に「債務者(法人)」として電子署名を行い、保証人欄に「保証人(個人)」として電子署名を行うことができる。これにより、一の利用者ID801で電子契約システム100にログインした後、まず、債務者として電子署名をすることができ、その後、ログアウトすることなく、保証人として電子署名することができるようになる。具体的に言えば、法個両用タイプの契約をしている利用者が電子契約システム100にログインすると、図11の債務者署名ボタン1104および保証人署名ボタン1105の両方のボタンがイネーブル(有効)になるので、それぞれの立場で順に電子署名を行うことができる。本発明では、後述するスタンプについても、予め用意されたスタンプを電子文書に付加するのではなく、債務者としてのスタンプ、および保証人としてのスタンプの両方が生成され、電子文書に付加されることが可能である。
法人限定タイプの利用者ID801は、契約書の債務者欄に「債務者(法人)」として電子署名を行い、保証人としての電子署名は行うことができない。個人限定タイプの利用者IDは、例えば、代表取締役の親族が個人として保証人になるケースなどで利用されうるものであり、契約書の保証人欄に「保証人(個人)」として電子署名を行うことができる。これらのタイプの利用者ID801でログインすると、図11の債務者署名ボタン1104および保証人署名ボタン1105のうちの対応するボタンがイネーブル(有効)になるので、その立場で電子署名を行うことができる。
事前契約確認タイプの利用者ID801は、確認者であるので電子署名を行うことはできないが、当該ID801を持つ契約内容確認権限者による確認が完了しない限り債務者・保証人は電子署名できないことを望む場合に利用される。事前契約確認タイプの利用者ID801は、例えば、顧客2内の経理部長など所定の権限を持つ者が有することが望ましい。
図2に戻って説明すると、契約書DB208は、契約書に含まれるデータおよび電子文書としての契約書を格納するデータベースである。本発明の他の実施形態では、電子文書を電子契約システム100内の他の場所に保管しておき、契約書DB208は、当該電子文書の格納場所を示す情報を記憶するようにしてもよい。
図9は、契約書DB208のデータ構造の一例を説明する図である。契約書DB208は、電子契約管理番号901、店番号・取引先番号902、顧客名903、債務者・保証人904、契約条件905、署名者906、確認者907、電子文書908、破棄フラグ909、破棄署名者910、ステータス911および案件番号912を含むことができるが、これらのデータ項目に限定されることはなく他の任意のデータ項目も含むことが可能である。
電子契約管理番号901は、契約書(例えば、金銭消費貸借約定書)を識別する識別子であり、電子契約書作成時に電子契約システム100によって採番される番号である。店番号・取引先番号902は、いわゆる、CIF番号とも呼ばれるものであり、顧客を識別する識別子である。顧客名903は、当該顧客の顧客名称を示す。債務者・保証人904は、契約における、1または複数の債務者、および1または複数の保証人を示す。契約書の種類によっては、保証人は連帯保証人であってよいし、保証人が存在しない場合もある。契約条件905は、借入金額、資金の使途、最終返済期限、借入利率、弁済方法・利息支払方法などの融資条件を示すが、本明細書で示した項目以外にも契約書の種類・内容に応じて含まれうる他の項目も示すことができる。署名者906は、当該契約を締結する1または複数の債務者および保証人であって、契約書に対して電子署名を行う者を含むことができる。署名者906において設定される債務者および保証人は、利用者マスタ207に登録されている者の中から指定されることが可能である。電子文書908に対する電子署名が行われた場合には、署名者906の該当する債務者・保証人に署名済みの識別子が付加される。なお、本発明の一実施形態では、署名者906は、金融機関1が電子署名を行ったことを示すように構成されてもよい。かかる場合には、署名者906は、顧客2の1または複数の債務者および保証人、並びに金融機関1の電子署名を行った者を含むように構成されうる。
確認者907は、署名者が契約書の内容を承認・署名する前に契約内容を確認する人数を含むことができ、人数が設定されている場合には契約書の確認を行った1または複数の者を示すこともできる。確認者907に人数の情報が格納されている場合、当該契約書は確認者による確認作業が必要な契約書であることが示される。また、確認者907が1または複数の確認者を示す場合、顧客2の中で利用者マスタ207に確認者として登録されている者(例えば、確認者フラグ805に所定の値が設定されている者)のうち、その者が当該契約書の確認作業を行ったことが示される。確認者907は、例えば、契約の内容をチェックする部署・担当者と、契約を締結する部署・担当者が違うケースにおいて、確認者による契約内容の確認作業が完了しない限り、署名者の署名が行えないようにする(契約事前確認機能)際に使用するデータ項目である。確認者907は、金融機関1によって当該契約書の確認者の人数が指定されない場合には、Null値となる。電子文書908に対する確認が行われた場合に、確認者907の該当する確認者に、確認作業が完了したことを示す確認済みの識別子が付加される。
電子文書908は、電子契約システム100によって生成される契約書の電子文書(例えば、PDFファイル)を示す。本発明の他の実施形態では、電子文書908には、電子文書の保管場所の情報が格納されており、実際の電子文書は、電子契約システム100内の記憶媒体内の任意の場所に存在していてよい。
破棄フラグ909は、契約書の内容が変更になり、契約書自体を破棄することになった場合に所定の値をセットするためのフラグである。破棄署名者910は、契約書を破棄したことに対する電子署名を行う者を示す。破棄の電子署名は、金融機関1および顧客2の双方が行いうるため、破棄署名者910は、破棄した者のデータを金融機関1および顧客2の双方に関して有するように構成されてもよい。ステータス911は、契約書のデータに対する現在の状態を示し、例えば、担当者が作成中であることを示す「起案中」、担当者の作成が完了し、上役の承認待ちであることを示す「提示待ち」、顧客の署名が済んでいないことを示す「署名待ち」、顧客の署名が行われ、実行処理に渡す前段階であることを示す「事務管理連携待ち」、顧客2に対する貸付が実行されたことを示す「貸付実行済み」などのステータスがある。案件番号912は、稟議の起案時に採番され、それぞれの稟議を識別するために使用される番号である。電子契約管理番号901および案件番号912により、どの稟議に基づく貸付のための契約書なのかを把握できるようになり、その反対に、ある契約書の元になった稟議を突き止めることもできるようになる。
次に、顧客2から依頼を受けて金融機関1が新たな利用者を利用者マスタ207に追加する処理を、図3を参照しながら説明する。
図3は、認証局(CA:certification authority)サーバ140による電子証明書および鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)作成についての処理フローを説明する図である。
S301にて、電子契約システム100は、顧客2からの利用者ID作成申込を受けて利用者ID801を生成し、利用者マスタ207に利用者ID801、PW802、役職および名称803を格納し、署名者フラグ804または確認者フラグ805、契約タイプ807や店番号701・取引先番号702も格納する。なお、利用者ID作成申込は、顧客2の署名者または確認者の本人確認資料とともに金融機関1の法人顧客担当に対して手交で行われても良いし、あるいは顧客端末120から電子契約システム100に対して予め定められたフローに従った申込が行われ、金融機関1の担当者がその作成申込を確認するようにしてもよい。
S302にて、電子契約システム100は、利用者ID作成申込を受けた当該利用者の電子証明書および鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)の作成依頼を認証局サーバ140に送信する。電子証明書(certificate)には、名前や所属などの個人情報、およびその人の公開鍵が記載されており、認証局サーバ140による電子署名が行われている。すなわち、電子証明書は、その公開鍵がその署名者のものであることを示すものである。鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)は、本発明に係る電子契約システム100によって実行される電子契約に利用される、公開鍵と秘密鍵のペアである。
電子署名の仕組みについて説明する。電子署名は、印鑑の捺印やサインに相当する機能をコンピュータの世界で実現するための技術である。本発明に係る電子契約システム100はまず、任意の種類のハッシュ関数を用いて電子文書908に基づいてハッシュ値を作成することができる。電子契約システム100は、署名者の秘密鍵を用いてハッシュ値をさらに暗号化して暗号化データを生成することができる。その後、電子契約システム100は、署名者の電子証明書および公開鍵を電子文書908にセットすることにより、電子署名を行う。公開鍵は、対応する秘密鍵を持つ利用者が署名を行ったことを検証するために使用することができる鍵であり、電子署名されたデータが公開鍵で復号できれば、その公開鍵のペアである秘密鍵を持つ利用者が署名を行ったことになる。なお、署名者の電子証明書および鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)は、ICカードなどに格納されていて、リーダ121によって読み出されて、電子契約システム100において利用されうる。
S303にて、電子契約システム100は、認証局サーバ140によって生成された当該利用者の電子証明書および鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)を受信し、電子契約システム100内に格納することができる。受信した電子証明書および鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)は、ICカードなどの記憶媒体に格納されて、金融機関1から顧客2の署名者本人に送付されうる。また、秘密鍵を利用する際の暗証番号(PIN)については、金融機関1の法人顧客担当者から顧客2の署名者本人に対して直接手交されてよい。なお、暗証番号(PIN)は、電子署名を行う際に必要となるものであり、顧客2の署名者本人により変更可能である。
図4は、金融機関1の法人顧客の担当者による契約書の作成、顧客2の署名者(および必要な場合には、確認者)による契約内容確認および電子署名、並びに金融機関1内での融資事務連携処理についての処理フローを説明する図である。なお、本発明に係る電子契約システム100では、契約書は、金融機関1の法人顧客の担当者によってのみ作成され、それ以外の者(例えば、顧客2)によって作成されることはない。
S401にて、金融機関1の法人顧客の担当者は、金融機関端末110を介して電子契約システム100にアクセスする。当該アクセスに応答して、電子契約システム100は、金融機関端末110に図5に例示するような契約情報リスト500を提供することができる。
図5に例示される契約情報リスト500は、契約書の一覧を表示することができる。契約書は、契約を締結する前段階のもの、および契約締結後のものを含むことができ、検索条件に従って表示される契約書の一覧は変動しうる。契約情報リスト500は、金融機関1の法人顧客の担当者の所属部門・店により表示される契約情報が制御されうる。
S401にて、金融機関1の法人顧客の担当者は、金融機関端末110を介して図5に示される作成ボタンを押下する。作成ボタンが押下されると、電子契約システム100は、図6に例示されるような契約情報600の画面を金融機関端末110に提供することができる。契約情報600は、稟議の際に採番された案件番号、契約書の識別番号である電子契約管理番号、担当する営業店、顧客2の口座情報、顧客名称などの基本情報601、債務者および保証人情報602、契約条件603、並びに署名者選択欄604、および確認者数指定欄605を備えることができる。契約情報600に含まれるデータ項目は、顧客マスタ206、利用者マスタ207および契約書DB208に格納されている情報に基づいて設定可能であり、また、契約書の種類・内容に応じて変動しうるものであり、署名者および確認者の数も利用者マスタ207に格納されている当該顧客の利用者の範囲内で任意に設定することができる。例えば、署名者選択欄604では、債務者または保証人として電子署名する者を利用者マスタ207に登録されている者の中から選択可能である。このため、金融機関1は、顧客2の中で債務者、保証人となってもらいたい者を署名者選択欄604で指定することができる。また、確認者数指定欄605では、金融機関1側で確認者の数を指定することができる。利用者マスタ207に顧客2の確認者として登録されている者が指定された数よりも多くいたとしても、その契約書についてはその数の確認者だけが内容を確認すればよい。例えば、顧客2に確認者が4名いたとして、確認者数指定欄605で2名指定されている場合には、4名のうちの任意の2名が確認を行えばよい。さらに、本発明の一実施形態では、署名者に対する説明資料を添付することも可能である(例えば、図10、11に示した「特定保証についてのご説明(個人向け)」という名前のファイル)。確認者は、署名者が署名する前に契約書の内容を確認する者を設定しておきたい場合に使用されうる。契約情報600の各データ項目が入力または選択され、登録・作成ボタンが押下されると、電子契約システム100は、当該入力または選択された契約データに基づいて電子文書908を作成し、契約書DB208に各データが登録される。
S402にて、金融機関1の法人顧客の担当者の上役が契約情報リスト500の画面上で任意の契約データを選択して表示ボタンを押下し、契約情報600の画面上で契約データおよび電子文書(例えば、契約書のPDFファイル)の内容を確認し、承認ボタン(不図示)を押下するとステータス911が「署名待ち」に変更されて、当該契約データおよび電子文書が顧客2に開示されることになる。より詳細に言えば、上役が金融機関端末110を使用して電子契約システム100にアクセスし、電子契約システム100は、契約情報リスト500を金融機関端末110に提供する。契約情報リスト500のステータス欄は、契約書のデータに対する現在の状態を示すことができ、例えば、上述したように「起案中」、「提示待ち」、「署名待ち」、「事務管理連携待ち」および「貸付実行済み」などのステータスが存在する。上役は、金融機関端末110を使用して契約情報リスト500に表示されている、ステータスが「提示待ち」である契約書のデータを選択して表示ボタンを押下し、契約情報600を参照して契約書の内容を確認した上で、承認ボタン(不図示)を押下することができる。承認ボタンが押下されると、当該契約書のデータのステータスが「署名待ち」に変更され、顧客2の署名者や確認者は、顧客端末120を使用して電子契約システム100にアクセスした際に当該契約書のデータおよび電子文書を参照することができるようになる。すなわち、この「署名待ち」のステータスは、顧客2の署名者(例えば、債務者、保証人など)による署名待ちの状態であることを示す。
参照される電子文書の一例を、図13を参照しながら説明する。図13は、電子文書に対して電子署名が行われたことを示す4つの種類のスタンプ、すなわち、新規契約の際の金融機関1による電子署名の場合のスタンプ1301、新規契約の際の顧客2による電子署名の場合のスタンプ1302、既存契約書の破棄の際の金融機関1による電子署名の場合のスタンプ1303、および既存契約書の破棄の際の顧客2による電子署名の場合のスタンプ1304を示している。
本明細書では、スタンプとは、署名者および電子契約文書の種別を識別する情報であると定義する。署名者は、債務者や保証人などの、電子署名を行う者を示す。電子契約文書の種別は、電子契約手続きの状況(例えば、新規または破棄)を示す。本明細書では、4つの種類のスタンプを例示しているが、一例にすぎない。電子署名が行われたことを示すスタンプは、債務者および保証人のそれぞれに応じて異なる標記であり、契約書の債務者および保証人として指定された者の数に応じて変動しうる。スタンプ1301は、S402にて承認ボタンが押下され、当該契約書のデータのステータスが「署名待ち」に変更されたとき、電子文書に対して電子署名が行われたことを明示するスタンプである。スタンプ1301は、電子契約管理番号901(図13の例で言えば「#000000004975」)を含むことができる。電子署名の詳細については、図3を参照しながら上述した通りである。スタンプ1301があることにより、金融機関1以外の者(例えば、顧客2)は、当該契約書が金融機関1によって作成されたものであることを明示的に識別することができる。
ここで、スタンプの生成処理について説明する。本発明におけるスタンプは、電子契約システム100内に予め用意されたスタンプ(印影)ではなく、電子契約システム100のログインユーザの属性および電子契約書の契約手続きの状況(例えば、新規、破棄など)に基づいて動的に生成される。このため、上述したように、本発明におけるスタンプは、顧客2内で債務者として指定された者、保証人として指定された者によって異なるように電子契約システム100によって動的に生成され、また、債務者という立場は同じでも、法人としての立場と個人としての立場でスタンプの標記が異なるように電子契約システム100によって動的に生成されうる。
より詳細に言えば、電子契約システム100は、ログインユーザの所属が金融機関1である場合には、電子契約管理番号901に格納されている当該契約書の電子契約管理番号を含む、金融機関1用のスタンプ1301を生成することができる。例えば、スタンプ1301には、「#000000004975」という電子契約管理番号が表示されているが、これはスタンプ1301が電子契約システム100によって動的に生成されたものであることを示している。スタンプの形(例えば、丸型、角丸四角形型、楕円型など)自体は、金融機関1用のフォーマットとして予め用意されているものの中から任意のものが選択されてよく、また、金銭消費貸借約定書、特殊当座借越、手形貸付などの契約書の種類に応じて任意のものが選択されてよい。
また、電子契約システム100は、ログインユーザの所属が顧客2である場合には、利用者マスタ207に格納されている役職および名称803と署名者フラグ804とを読み出し、読み出した役職および名称803と署名者フラグ804とに基づいて、当該契約書用の顧客2のスタンプを生成することができる。役職および名称803は、顧客2における役職、例えば、代表取締役、部長、経理担当課長などを示し、かつ名称、例えば、会社名や個人名を示すデータ項目である。署名者フラグ804は、その者が署名者として指定されているかどうかを示し、署名者として指定されている場合、債務者の署名者であるのか、あるいは保証人の署名者であるのかをさらに示すフラグである。電子契約システム100は、役職および名称803と署名者フラグ804とに基づいて、スタンプ1302などの顧客2用のスタンプを動的に生成することができる。スタンプの形(例えば、丸型、角丸四角形型、楕円型など)自体は、顧客2用のフォーマットとして予め用意されているものの中から任意のものが選択されてよい。
スタンプ1302は、顧客2において債務者・保証人が契約内容を確認した後、電子文書に対して電子署名が行われたことを明示するスタンプである。スタンプ1302は、電子署名を行った者を識別する情報(図13の例で言えば「Wakakusa Taro」という名前)を含むことができる。スタンプ1302があることにより、顧客2以外の者(例えば、金融機関1)は、当該契約書が顧客2によって署名されたものであることを明示的に識別することができる。スタンプ1303は、既存の契約書を破棄しなければならない事態が生じた際、まず、金融機関1側で電子文書に対して破棄のための電子署名が行われたことを示すスタンプである。スタンプ1303は、破棄することを決めた稟議などの案件番号を含むように生成されてもよく、他の情報を含むように生成されてもよい。スタンプ1303があることにより、金融機関1以外の者(例えば、顧客2)は、当該契約書が金融機関1によって破棄されたことを明示的に識別することができる。スタンプ1304は、金融機関1が破棄した電子文書に対して顧客2により破棄のための電子署名が行われたことを示すスタンプである。スタンプ1304は、破棄の電子署名を行った者を識別する情報(図13の例で言えば「Wakakusa Taro」という名前)を含むことができる。スタンプ1304があることにより、顧客2以外の者(例えば、金融機関1)は、当該契約書が顧客2によって破棄されたことを明示的に識別することができる。
図4に戻って説明を続けると、S403にて、顧客2の署名者は、顧客端末120を使用して電子契約システム100にアクセスする。当該アクセスに応答して、電子契約システム100は、顧客2が署名しなければならない契約データの一覧を表示することができる。表示される契約データは、上述したステータスが「署名待ち」のデータである。表示される契約データの任意の一つが選択されると、電子契約システム100は、図10に例示するような契約書詳細1000を顧客端末120に提供することができる。
図10は、契約書の概要事項、契約書の電子文書、および金融機関1から顧客2に対する連絡事項などを含む契約書詳細1000を示す図である。契約書詳細1000は、債務者欄1001、保証人欄1002および確認者欄1003を含むことができる。契約書の概要事項は、主たる契約者(債務者・保証人904の債務者のうちの主たる債務者がセットされる)、契約金額(契約条件905のうちの契約金額がセットされる)、契約日(契約条件905のうちの契約日がセットされる)、電子契約管理番号901、契約書PDF(電子文書908の電子文書)、連絡事項・お知らせ事項(契約条件905のうちの連絡事項・お知らせ事項がセットされる)を備えることができる。また、図13を参照しながら説明したように、電子文書908には、当該契約書が金融機関1によって作成されたものであることを明示的に示すためのスタンプ1301が表示されている。
債務者欄1001は、図6の署名者選択604において選択された1または複数の債務者を表示することができる。図10の例では、債務者として3名(株式会社若草商事、若草太郎、若草次郎)が指定されている。債務者欄1001は、署名者906の該当する債務者に署名済みの識別子が付加されているかどうかに基づいて、既に署名を行った者と未だ署名を行っていない者を識別可能なように表示することができる(例えば、色やフォントを変える、表示領域を分ける、など)。債務者欄1001は、全体として電子署名が済んでいるのか、あるいは未だ済んでいないのかを表示することもできる。
保証人欄1002は、図6の署名者選択604において選択された1または複数の保証人を表示することができる。保証人は、契約書の種類によっては連帯保証人であってもよい。図10の例では、連帯保証人として2名(若草太郎、若草次郎)が指定されている。保証人欄1002は、署名者906の該当する保証人に署名済みの識別子が付加されているかどうかに基づいて、既に署名を行った者と未だ署名を行っていない者を識別可能なように表示することができる(例えば、色やフォントを変える、表示領域を分ける、など)。保証人欄1002は、全体として電子署名が済んでいるのか、あるいは未だ済んでいないのかを表示することもできる。
確認者欄1003は、図6の確認者数指定欄605において1または複数の確認者の数が指定された場合に表示されることが可能である。例えば、確認者数指定欄605にて「2名」と指定された場合、確認者欄1003は、当該法人の中で確認者として利用者マスタ207に登録されている者を「確認可能者」として表示し、実際に確認した者を確認者の欄に表示することができる。あるいは、実際に確認した者のみを確認者欄1003に表示するようにしてもよい。本発明に係る電子契約システム100は、確認者が契約書の内容を確認して確認ボタンを押下した場合にのみ、債務者や保証人が署名者として電子署名を行うことができるように構成されることができる。上述したように、確認者907には実際に確認を行った者の情報が格納されているので、電子契約システム100は、当該情報に基づいて、確認を行った者と行っていない者を識別可能なように表示することができる(例えば、色やフォントを変える、表示領域を分ける、など)。確認を行っていない者は利用者マスタ207に格納されている情報から取得することができる。
契約内容の確認後、顧客2の署名者は、顧客端末120を使用して図10に示された契約手続ボタン1004を押下することができる。また、戻るボタン1005は、S403にて説明した、契約データの一覧を表示する画面に戻る際に使用されるボタンである。契約手続ボタン1004が押下されると、電子契約システム100は、図11に示したような契約手続開始1100の画面を顧客端末120に提供することができる。
契約手続開始1100は、債務者欄1101、保証人欄1102、確認者欄1103、債務者署名ボタン1104、保証人署名ボタン1105、確認ボタン1106、および戻るボタン1107を備える。図10で説明したのと同様に、契約手続開始1100は、契約書の概要事項、契約書の電子文書、および金融機関1から顧客2に対する連絡事項なども備えることができる。
債務者欄1101は、債務者の署名が済んでいるかどうかを示すことができる。保証人欄1102は、保証人(連帯保証人を含む)の署名が済んでいるかどうかを示すことができる。確認者欄1103は、確認者による契約書の確認が済んでいるかどうかを示すことができる。債務者署名ボタン1104は、ログインユーザが利用者マスタ207において債務者の署名者として指定されている場合にイネーブルになるボタンであり、債務者署名ボタン1104が押下されると図12に示される契約手続1200の画面が表示される。保証人署名ボタン1105は、ログインユーザが利用者マスタ207において保証人の署名者として指定されている場合にイネーブルになるボタンであり、保証人署名ボタン1105が押下されると図12に示される契約手続1200の画面が表示される。確認ボタン1106は、ログインユーザが利用者マスタ207において確認者として指定されている者である場合にイネーブルになる(あるいは表示される)ボタンであり、確認者が契約内容を承認する場合に押下される。すなわち、確認者は、契約手続開始1100において電子文書としての契約書(PDF)を参照し、内容について問題ないと判断した場合には、確認ボタン1106を押下する。戻るボタン1107は、S403にて説明した、契約データの一覧を表示する画面に戻る際に使用されるボタンである。
図12は、契約手続1200の画面の一例である。契約手続1200は、チェックボックス1201、署名ボタン1202および戻るボタン1203を備えることができる。チェックボックス1201は、署名にあたり債務者および保証人が契約書の内容を理解し、確認したかどうかを債務者および保証人が明示するために使用される。署名ボタン1202は、債務者および保証人が電子文書に対して電子署名を行うために使用される。署名ボタン1202は、ログインユーザが利用者マスタ207に債務者として指定されているか、あるいは保証人として指定されているかに応じて表示内容を変更することができる。戻るボタン1203は、契約手続開始1100の画面に戻るために使用される。
図10で説明したのと同様に、契約手続1200は、契約書の概要事項、契約書の電子文書、および金融機関1から顧客2に対する連絡事項なども備えることができる。なお、図12は、債務者署名ボタン1104が押下された場合を示しているので、署名ボタン1202には「債務者(法人)として署名」と表記されているが、保証人署名ボタン1105が押下された場合には、上述したように署名ボタン1202には「保証人として署名」と表記されることになる。すなわち、本発明に係る電子契約システム100では、利用者マスタ207に格納されているログインユーザの情報にしたがって画面制御が行われる。
署名者が契約書の内容を確認した後、チェックボックス1201にチェックがつけられ、署名ボタン1202が押下されると、図3を参照しながら説明した「電子署名の仕組み」により電子署名の処理が行われる。電子署名を行う際には、暗証番号(PIN)の入力が必要である。電子文書に対して電子署名が行われると、図13を参照しながら上述したように、電子文書に対して債務者による電子署名が行われたことを示すスタンプ1302が電子契約システム100によって電子文書上に表示されるようになる。なお、債務者が複数いる場合には、表示されるスタンプ1302は、それぞれの債務者に対応したものとなり、例えば、債務者 若草太郎には若草太郎用に生成されたスタンプ1302があり、債務者 若草次郎には若草次郎用に生成されたスタンプ1302がある(例えば、債務者の名前を含むスタンプ)。電子文書に対して指定された債務者および保証人の全てによる電子署名が行われた場合(かかる場合、全ての債務者および保証人のスタンプ1302が電子文書上に表示される)、顧客2による契約書の確認および署名が完了したことになり、ステータス911が「事務管理連携待ち」に変更されることになる。
再び、図4に戻ると、S404にて、金融機関1の法人顧客の担当者は「事務管理連携待ち」ステータスの契約データについて内容を確認し、融資実行実務(例えば、起票、検印、記帳、印字照合など)を担う事務処理部門にデータを渡してもよいと判断したら、図5に示した契約情報リスト500から該当する契約データを選択し、実行依頼ボタンを押下する。実行依頼ボタンが押下されると、電子契約システム100は、事務処理部門の担当者が当該契約データを扱えることができるようにステータス911を「事務管理連携待ち」から「事務管理連携済み」に更新することができる。また、貸金実行後には、ステータス911は「貸付実行済み」に更新される。このように、ステータス911は、契約書作成時から貸付実行後までのそれぞれの段階を示すことができる。ステータス911を参照することにより、例えば、署名済の電子契約書を元に貸金を実行した後、当該貸金が完済や譲渡若しくは解約となった場合、電子契約管理番号をキーに勘定(期中管理)を司るシステムから完済や譲渡の情報を連携し、そのステータスを顧客が電子契約の画面から確認することが可能となる。
次に、図14を参照しながら顧客2に確認者が存在する場合の処理フローを説明する。S1401にて、電子契約システム100は、顧客端末120に契約手続開始1100の画面を提供する。電子契約システム100は、電子契約管理番号901をキーにして契約書DB208に問い合わせを行い、確認者907に確認者の人数の情報が格納されているかどうかを判定する。確認者の人数の情報が格納されている場合にはS1402に処理が進み、一方、確認者の人数の情報が格納されていない場合にはS1404に処理が進む。
S1402にて、電子契約システム100は、確認者907に確認を行った者の情報が上記した人数分格納されているかどうかを判定する。確認を行った者の情報が上記した人数分格納されている場合にはS1404に処理が進み、一方、そうでない場合にはS1403に処理が進む。
S1403にて、電子契約システム100は、確認ボタン1106を表示し、イネーブル(有効)にし、一方、債務者署名ボタン1104および保証人署名ボタン1105をディセーブル(無効)にする。債務者署名ボタン1104および保証人署名ボタン1105は、ディセーブルであったとしても契約手続開始1100の画面上で表示されていてもよい。確認者による確認が終了したら、確認ボタン1106が押下され、確認者907に確認を行った者の情報が付加される(例えば、「若草経理」という確認者の氏名が付加される)。
S1404にて、電子契約システム100は、確認者907に、指定された人数分の確認者の情報が格納されているという判定に応答して、債務者署名ボタン1104および保証人署名ボタン1105をイネーブルにする。かかる場合、不要な追加の確認者による確認作業を防止するために、確認者ボタン1106は非表示になってもよいし、あるいはディセーブルになってもよい。S1405にて、上述したように、債務者および保証人によって電子文書に対して電子署名が行われる。
次に、図15を参照しながら、電子署名がなされた契約書を破棄する際の処理フローについて説明する。契約書を破棄する場合とは、例えば、契約書締結後に急遽、代表取締役が変更になった場合、契約書締結後の急激な経済情勢の変化があった場合、などを始めとして、従来も発生していたものである。
S1501にて、電子契約を破棄するための稟議がなされた後、金融機関1内の法人顧客の担当者は、電子契約システム100に金融機関端末110を介してアクセスする。電子契約システム100は、顧客2との間で締結されている1または複数の契約の一覧(すなわち、図5に示した契約情報リスト500)を金融機関端末110に提供することができる。金融機関1内の法人顧客の担当者は、契約情報リスト500から破棄の対象となった契約データを選択し、契約破棄ボタンを押下する。契約破棄ボタンが押下されると、電子契約システム100は、破棄フラグ909に破棄を示す値をセットし、破棄署名者910に金融機関1をセットする。その後、電子契約システム100は、電子文書908に対して破棄の電子署名を行うことができる。金融機関1による破棄の電子署名が行われたことは、図13のスタンプ1303によって示される。本発明の一実施形態では、破棄フラグ909に値をセットするとともに、電子文書908に対して破棄の電子署名を行ってスタンプ1303を付加することを説明したが、他の実施形態として、金融機関1では破棄フラグ909に値をセットするだけで、電子署名を行わない(すなわち、スタンプも付加しない)ようにすることも可能である。
S1502にて、電子契約システム100は、ステータス911を「破棄待ち」に変更することができる。ステータス「破棄待ち」の契約データが顧客2に提示されることになるので、顧客2の債務者は、顧客端末120を介して電子契約システム100にアクセスし、破棄対象の契約データの一覧を確認する。
S1503にて、顧客2の債務者は、顧客端末120を介して、破棄対象の契約データの一覧から破棄署名をすべき契約データを選択し、破棄署名ボタンを押下することができる。破棄署名ボタンが押下されたことに応答して、電子契約システム100は、破棄署名者910に顧客2の債務者をセットし、図13に例示したようなスタンプ1304を電子文書908上に付けることができる。なお、債務者が複数存在する場合に、それぞれの債務者が破棄署名を行った場合には、それぞれの債務者に対応したスタンプ1304が表示されることになる。例えば、スタンプ1304は、破棄の電子署名を行った債務者「Wakakusa Taro」を示している。
図16は、本発明に係る電子契約システム100の機能ブロックを説明する図である。電子契約システム100は、認証局通信部1601、契約データ処理部1602、電子署名部1603、確認処理部1604、画面制御処理部1605、スタンプ処理部1606、実行処理依頼部1607、破棄処理部1608、顧客マスタ206、利用者マスタ207および契約書DB208を備える。
認証局通信部1601は、顧客2からの利用者ID作成申込を受けて利用者ID801を生成し、利用者マスタ207に利用者ID801、PW802、役職および名称803を格納し、署名者フラグ804または確認者フラグ805、契約タイプ807、店番号701、取引先番号702も格納することができる。認証局通信部1601は、利用者ID作成申込を受けた当該利用者の電子証明書および鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)の作成依頼を認証局サーバ140に送信することができる。電子証明書には、名前や所属などの個人情報、およびその人の公開鍵が記載されており、認証局サーバ140による電子署名が行われている。鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)は、本発明に係る電子契約システム100によって実行される電子契約に利用される、公開鍵と秘密鍵のペアである。認証局通信部1601は、認証局サーバ140によって生成された当該利用者の電子証明書および鍵ペア(公開鍵−秘密鍵)を受信し、電子契約システム100内に格納することができる。
契約データ処理部1602は、金融機関端末110から入力された契約データ(例えば、契約情報600の画面上で入力されたデータ)を契約書DB208に格納することができ、契約データに基づいて電子文書908を生成して契約書DB208に格納することができ、ステータス911を更新することにより、契約データの開示範囲(例えば、金融機関1の法人顧客の担当者の部門(フロント部門ともいう)のみ、顧客2と金融機関1の両方、金融機関1のフロント部門および事務処理部門の両方、など)を制御することができる。このような制御を行うことにより、金融機関1側は、契約データおよび電子文書908が生成された段階で、顧客2に対して契約データおよび電子文書908を提示することができるようになる。
電子署名部1603は、任意の種類のハッシュ関数を用いて電子署名を行う対象の電子文書908に基づいてハッシュ値を生成し、署名者の秘密鍵を用いてハッシュ値をさらに暗号化して暗号化データを生成することができる。電子署名部1603は、署名者の電子証明書および公開鍵を電子文書908にセットすることにより、電子署名を行うことができる。公開鍵は、対応する秘密鍵を持つ利用者が署名を行ったことを検証するために使用することができる鍵であり、電子署名されたデータが公開鍵で復号できれば、その公開鍵のペアである秘密鍵を持つ利用者が署名を行ったことになる。
電子署名部1603は、契約書DB208の破棄フラグ909を読み出し、破棄フラグ909が所定の値を示す契約データに関連付けられた電子文書908に対して破棄の電子署名を行うことができる。破棄の電子署名も、上記したのと同様に実行されうる。
確認処理部1604は、顧客2が利用する画面、例えば、契約書詳細1000および契約手続開始1100などにおいて当該契約書に対して確認者が存在する場合の画面表示を制御することができる。確認処理部1604は、契約書の電子契約管理番号901をキーにして契約書DB208に問い合わせを行い、確認者907に確認者の人数の情報が格納されているかどうかを判定し、さらに、確認者907に確認を行った者の情報が格納されているかどうかを判定することができる。これにより、確認処理部1604は、契約データの確認者907に確認者の人数の情報が格納されている場合に、図11に例示されている債務者署名ボタン1104および保証人署名ボタン1105をディセーブルにすることができる。このディセーブルにする機能は、指定された人数の確認者が契約書の内容を確認した場合にのみ、債務者や保証人が署名者として電子署名を行うことができるようにするためである。確認処理部1604は、確認者907に、指定された人数分の確認者の情報が格納されているという判定に応答して、債務者署名ボタン1104および保証人署名ボタン1105をイネーブルにすることができる。確認処理部1604は、確認者欄1003において、確認者907に確認を行った者の情報が格納されているかどうかに基づいて、1または複数の確認者が確認を行ったかどうか識別可能なように表示することができる(例えば、色やフォントを変える、表示領域を分ける、など)。また、図10に例示されている確認者欄1003、並びに図11に例示されている確認者欄1103および確認ボタン1106は、契約データの確認者907に確認者がセットされているかどうかに基づいて表示されるかどうかが制御されうる。さらに、確認処理部1604は、確認者による確認が完了したことを示す信号を顧客端末120から受信したことに応答して、確認者907に確認を行った者の情報を格納することができる。
画面制御処理部1605は、選択された契約データを契約書DB208から読み出して、図10に示した契約書詳細1000、図11に示した契約手続開始1100および契約手続1200の画面表示を制御することができる。画面制御処理部1605は、ログインユーザの属性(例えば、債務者、保証人、確認者)を判定し、判定された属性情報に基づいて画面上の表示項目を制御することができる。例えば、ログインユーザが顧客2の債務者であった場合には、債務者署名ボタン1104がイネーブルになるように、また、署名ボタン1202に「債務者(法人)として署名」との表記がされるように、画面制御処理部1605によって制御されうる。例えば、ログインユーザが顧客2の保証人であった場合には、保証人署名ボタン1105がイネーブルになるように、また、署名ボタン1202に「保証人として署名」との表記がされるように、画面制御処理部1605によって制御されうる。
画面制御処理部1605は、署名者906に指定されている債務者・保証人の情報に基づいて債務者欄1001および保証人欄1002の表示を制御することができる。例えば、署名者906に複数の債務者が指定されていれば、画面制御処理部1605は、指定された複数の債務者を債務者欄1001に表示し、さらに、署名者906の該当する債務者に署名済みの識別子が付加されているかどうかに基づいて、既に署名を行った債務者と未だ署名を行っていない債務者を識別可能なように表示することができる(例えば、色やフォントを変える、表示領域を分ける、など)。画面制御処理部1605は、署名者906の該当する債務者の全てに署名済みの識別子が付加されているかどうかに基づいて、債務者欄1001および保証人欄1002にて、全体として電子署名が済んでいるのか、あるいは未だ済んでいないのかを表示することもできる。
スタンプ処理部1606は、金融機関1による電子署名のスタンプ1301、1303、および顧客2による電子署名のスタンプ1302、1304を生成し、生成したスタンプを電子文書908に付して契約書DB208を更新することができる。より詳細に言えば、スタンプ処理部1606は、ログインユーザの所属が金融機関1である場合には、電子契約管理番号901に格納されている当該契約書の電子契約管理番号を含む、金融機関1用のスタンプ1301を生成することができる。例えば、図13のスタンプ1301には、「#000000004975」という電子契約管理番号が表示されているが、これはスタンプ1301が電子契約システム100によって動的に生成されたものであることを示している。スタンプの形(例えば、丸型、角丸四角形型、楕円型など)自体は、金融機関1用のフォーマットとして予め用意されているものの中から任意のものが選択されてよく、また、金銭消費貸借約定書、特殊当座借越、手形貸付などの契約書の種類に応じて任意のものが選択されてよい。
また、スタンプ処理部1606は、ログインユーザの所属が顧客2である場合には、利用者マスタ207に格納されている役職および名称803と署名者フラグ804とを読み出し、読み出した役職および名称803と署名者フラグ804とに基づいて、当該契約書用の顧客2のスタンプを生成することができる。役職および名称803は、顧客2における役職、例えば、代表取締役、部長、経理担当課長などを示し、かつ名称、例えば、会社名や個人名を示すデータ項目である。署名者フラグ804は、その者が署名者として指定されているかどうかを示し、署名者として指定されている場合、債務者の署名者であるのか、あるいは保証人の署名者であるのかをさらに示すフラグである。スタンプ処理部1606は、役職および名称803と署名者フラグ804とに基づいて、スタンプ1302などの顧客2用のスタンプを動的に生成することができる。スタンプの形(例えば、丸型、角丸四角形型、楕円型など)自体は、顧客2用のフォーマットとして予め用意されているものの中から任意のものが選択されてよい。このように、スタンプ処理部1606は、利用者マスタ207に問い合わせを行って、ログインユーザが署名者であるのかどうか、署名者であるのなら債務者であるのか、あるいは保証人であるのかを判定し、顧客2用のスタンプ1302、1304を生成することができる。生成されたスタンプ1301〜1304は、スタンプ処理部1606によって電子文書908に付されて契約書DB208に格納されることが可能である。
スタンプ処理部1606は、契約書DB208から破棄フラグ909および破棄署名者910を読み出し、破棄フラグ909が所定の値(例えば、破棄を示す値「1」)を示す契約データに関連付けられた電子文書908を抽出することができる。スタンプ処理部1606は、抽出した電子文書908に対して破棄の電子署名が行われたことを示すスタンプ1303、1304を生成して、当該電子文書908に付加することができる。スタンプ1303は、破棄署名者910が金融機関1であることを示す場合に付加され、スタンプ1304は、破棄署名者910が顧客2の債務者であることを示す場合に付加される。
実行処理依頼部1607は、選択された契約データに対する融資実行依頼を金融機関端末110から受信したことに応答して、事務処理部門の担当者が当該契約データを扱えることができるようにステータス911を「事務管理連携待ち」から「事務管理連携済み」に更新することができる。融資実行依頼は、図5の実行依頼ボタンが押下されたという条件でなされることが可能である。事務処理部門は、融資実行実務(例えば、起票、検印、記帳、印字照合など)を担うことができる。
破棄処理部1608は、電子署名がなされた契約書を破棄する処理を行うことができる。より詳細に言えば、破棄処理部1608は、金融機関端末110との通信に応答して、顧客2との間で締結されている1または複数の契約を金融機関端末110に提供することができる。破棄処理部1608は、破棄の対象となった契約データが金融機関1によって選択されて契約破棄ボタンが押下されたことを示す信号を受信したことに応答して、破棄フラグ909に所定の値(例えば、破棄を示す値「1」)をセットし、破棄署名者910に金融機関1をセットすることができる。破棄処理部1608は、当該契約データのステータス911を「破棄待ち」に変更することにより、当該契約データを顧客2に提示することができる。
破棄処理部1608は、顧客端末120との通信に応答して、金融機関1によって破棄の電子署名が既に行われている、1または複数の契約データを顧客端末120に提供することができる。破棄処理部1608は、そのうちの任意の契約データが顧客2によって選択されて契約破棄ボタンが押下されたことを示す信号を受信したことに応答して、破棄署名者910に顧客2の債務者をセットすることができる。なお、債務者が複数存在する場合には、破棄処理部1608は、破棄署名者910に顧客2のそれぞれの債務者を示す情報をセットすることができる。
以上、例示的な実施形態を参照しながら本発明の原理を説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく、構成および細部において訂正する様々な実施形態を実現可能であることを当業者は理解するだろう。すなわち、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様を採用することが可能である。