JP2017132076A - 溶融積層型3dプリンタ用光沢性フィラメント - Google Patents

溶融積層型3dプリンタ用光沢性フィラメント Download PDF

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【課題】PLLA系の溶融積層型3Dプリンタ用フィラメントが、造形物にきれいな光沢が得られないという特有の問題点を解決し、特定径のフィラメントが造形時に折れにくく、しかも充分な光沢性のあるものとすることである。【解決手段】ポリ−L−乳酸(PLLA)に、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を質量比でPLLA/PBAT=9/1〜1/9の範囲に配合した樹脂組成物を直径1.75〜3.0mmの線状に成形したものからなる溶融積層型3Dプリンタ用フィラメントとする。溶融成形される造形物の素材となるフィラメントが、表面の相状態においてPLLA相をマトリックスとし、PBAT相の約0.5μm程度の島となって分散した海島構造を呈する線状長尺成形物になるので、ポリマー間の屈折率の違いが効果的に光の反射性を高め、造形物に質感と美しい光沢が得られる。【選択図】なし

Description

この発明は、立体を造形する溶融積層型3Dプリンタ用造形材の改良技術に関し、特にポリ乳酸(PLA)系重合体からなる溶融積層型3Dプリンタ用光沢性フィラメントに関するものである。
近年、3Dプリンタは、立体物を短時間で簡単に作製できる装置として、産業用や個人用を問わずに幅広い用途で用いられている。
3Dプリンタは、産業用としては多品種で小ロットの生産設備、自動車用部品や家電用部品を試作するための機器として利用され、また個人用では、低価格の3Dプリンタの普及によりフィギュア(模型、置物)などの作製に用いられているが、その造形方法としては、溶融積層型、粉末積層型などの区別の他、熱溶融方式、光造形方式、粉末固着方式など様々な方式のものがある。
また、溶融積層造形法(FDM)用の3Dプリンタは、1以上の成形材料の熱可塑性樹脂製のフィラメント(紐状成形素材)が、溶融した状態でノズルヘッドから吐出される機構を備えている。
このような3Dプリンタのノズルヘッドは、コンピュータ制御の駆動機構により、好ましくは基台(テーブル)とも連動して立体的に位置制御され、樹脂種毎に設定温度の異なるノズルの吐出口から、CADデータ等の設計情報に従って溶融した成形用樹脂が吐出されて所要部分に樹脂が積層し、立体物が造形される。
3Dプリンタに利用されている成形材料(マテリアルとも別称される。)は、造形法の種類別に多くの素材が開発され、ABSやポリ乳酸(PLA)、アクリル樹脂、ナイロンなどが用いられている。このような成形材料には、成形品の強度の向上が求められると共に、多くの試作品の製作により大量の廃棄物が生じるから、再利用性があって廃棄処理も容易な成形材料が求められている。
また溶融積層型3Dプリンタ用フィラメントには、比較的低温で溶融する特性が必要であり、成形体には歪が少なく、作業性にも優れた成形材であることが求められる。
ところで、溶融積層型3Dプリンタによる成形品の表面を滑らかに仕上げることは容易なことではなく、ABS樹脂による造形物の表面をトルエンやアセトンなどの有機溶剤で溶解させることによって、表面光沢を得ている。
また、ポリスチレン樹脂による造形品では、造形物表面をリモネンなどの有機溶剤で溶解させることにより、表面光沢を得ている。
さらにまた、ポリ乳酸樹脂による溶融積層型3Dプリンタによる造形品では、造形物表面をクロロホルムなどの有機溶剤で溶解させて、表面をなだらかにすることは可能であるが、表面光沢を得ることはできなかった。
3Dプリンタ以外の用途では、例えば射出成形や、シート押出、真空成形、プレス成形などにより得られる成形体に、衝撃強度と共に高温時の耐融着性や耐ブリードアウト性が備わるように、ポリ乳酸樹脂組成物中に、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、PBATと略記する。)38〜98重量%が配合されることがある(特許文献1の請求項1、請求項3、発明の詳細な説明の段落0009)。
また、同様に3Dプリンタ以外の射出成形などで得られる成形品では、耐衝撃性と共に結晶化速度の速い特性を備えるために、ポリ乳酸系樹脂組成物100質量%中に、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)などのポリエステルを20〜70質量%配合することが知られている(特許文献2の請求項1、請求項5、発明の詳細な説明の段落0012、段落0013)。
特開2014−5435号公報 特開2008−239645号公報
しかし、溶融積層型3Dプリンタによるポリ乳酸樹脂の造形物では、前述のように造形物表面をクロロホルムなどの有機溶剤で溶解して、表面をなだらかに処理しても表面光沢は得られず、造形物の価値が高まるように光沢を確実かつ充分にもたせることはできなかった。
また、PLLAを3Dプリンタ用のフィラメントは、直径が1.75mmまたは3.0mmという特定の細い径であって長尺のものであるので、3Dプリンタ内の送り機構を通過するときに、または造形時に曲げられるときに折れやすいという問題点もある。
ここで、PLA樹脂に軟質の樹脂をブレンドして、例えば射出成形などを可能にすることは予想されるが、3Dプリンタの造形動作時に必要な柔軟性または可撓性をフィラメントに備えさせ、しかもフィラメントによって得られる造形物の表面に、質感に優れたきれいな光沢を備えさせることは未解決の課題であった。
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決し、溶融積層型の3Dプリンタによる造形物の外観が良好な質感と共に表面に美しい光沢があるものとし、しかもPLLA系のフィラメントが、造形時に折れ難くて製造後の造形物も丈夫で割れ難くすることである。
上記の課題を解決するために、この発明においては、ポリ−L−乳酸(PLLA)に、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、PBATで示す。)を、質量比がPLLA/PBAT=9/1〜1/9の範囲であるように配合した樹脂組成物からなる線状長尺成形物である溶融積層型3Dプリンタ用光沢性フィラメントとしたのである。
上記したように構成されるこの発明の溶融積層型3Dプリンタ用フィラメントは、配合比がPLLA/PBAT=9/1〜1/9という所定範囲の質量比でポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を配合したことにより、溶融成形される造形物の素材となるフィラメントが、溶融状態から常温に急冷されて細径の長尺状に成形されるとき、表面の相状態においてPLLA相をマトリックスとし、PBAT相の約0.5μm程度の島となって分散した海島構造を呈する線状長尺成形物になるので、ポリマー間の屈折率の違いが効果的に光の反射性を高め、造形物に質感と美しい光沢が得られる。
また、このフィラメントが溶融積層型3Dプリンタに使用された際に、3Dプリンタの機構内で曲げ変形されても折れにくくなるという効果も得られる。
上記した作用効果がいずれも確実に得られるように、前記質量比が、PLLA/PBAT=8/2〜6/4の範囲である溶融積層型3Dプリンタ用フィラメントを採用することが好ましい。
同様に、PBAT相が、主に粒径0.5μmの球状ドメインからなるPBAT相であることが好ましい。
また、上記線状長尺成形物は、直径1.75〜3.0mmの線状長尺成形物であることが、上記作用効果が確実に奏されるために好ましい。
この発明は、ポリ−L−乳酸(PLLA)に、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を特定の質量比の範囲で配合した樹脂組成物を所定径の線状に成形したので、PLLA系のフィラメントが、溶融積層型3Dプリンタに用いられた際に、良好な質感と共に表面に美しい光沢のある造形物になるという利点があり、かつフィラメントは3Dプリンタ内で折れ難くて製造された造形物も丈夫で割れ難いものになるという利点もある。
(a)〜(k)はPLLAとPBAT(1)をそれぞれ図中に示す所定質量比で配合した樹脂組成物製フィラメント切断面の走査型電子顕微鏡写真 (a)〜(k)はPLLAとPBAT(1)をそれぞれ図中に示す所定質量比で配合した樹脂組成物製フィラメント表面の走査型電子顕微鏡写真 (a)〜(k)はPLLAとPBAT(2)をそれぞれ図中に示す所定質量比で配合した樹脂組成物製フィラメント切断面の走査型電子顕微鏡写真 (a)〜(k)はPLLAとPBAT(2)をそれぞれ図中に示す所定質量比で配合した樹脂組成物製フィラメント表面の走査型電子顕微鏡写真 PLLAとPBAT(1)を所定質量比(10/0〜5/5)で配合した樹脂組成物製フィラメント表面の反射率と波長の関係を示す図表 PLLAとPBAT(1)を所定質量比(4/6〜1/9)で配合した樹脂組成物製フィラメント表面の反射率と波長の関係を示す図表 PLLAとPBAT(2)を所定質量比(10/0〜5/5)で配合した樹脂組成物製フィラメント表面の反射率と波長の関係を示す図表 PLLAとPBAT(2)を所定質量比(4/6〜1/9)で配合した樹脂組成物製フィラメント表面の反射率と波長の関係を示す図表 PLLAまたはPLLAとPBAT(1)からなる樹脂組成物の溶融積層型3Dプリンタによる造形物を並べて光沢性を比較する図面代用写真
この発明の実施形態である溶融積層型3Dプリンタ用光沢性フィラメントは、ポリ−L−乳酸(PLLA)に、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を、質量比がPLLA/PBAT=9/1〜1/9の範囲、より好ましくは8/2〜6/4であるように配合した樹脂組成物からなる線状長尺成形物である。
PLLAは、周知の方法で製造でき、または市販のPLLA(浙江海正生物材料股▲分▼有限公司製)などを用いることもできる。
PLLAの周知の製法としては、乳酸の環状二量体であるラクチドの開環重合法(特開平7−118259号公報等)、乳酸の直接重縮合法(特開平9−31180号公報)、溶融重合法や固相重合法など(特開2001−139672号公報等)が挙げられる。
この発明に用いるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)は、1,4-ブタンジオール、アジピン酸、テレフタル酸を共重合成分とする周知なポリエステル樹脂またはこれを主要構成成分とするポリエステル樹脂であり、市販のPBATとして、韓国サムソンファインケミカル社製のEnpol PBG7070-OAや下記化1に示されるポリブチレンアジペート−ブチレンテレフタレート共重合体を主要構成成分とするBASF社製のエコフレックス(登録商標Ecoflex)などを用いることができる。
これらの配合割合(質量比)を、PLLA/PBAT=9/1〜1/9の範囲とする理由は、PLLA/PBATの値が9/1より大きくて、PLLAに対するPBAT量が少ない場合には、後述する試験結果からも明らかなように、樹脂組成物の表面の反射率が低下し、所期した光沢が得られ難くなり、また硬くて脆い性質になるからである。また、PLLAに対するPBAT値が1/9より小さい場合には、PLLAをマトリックス(海)とするPBATの球状粒子(島)またはPBATをマトリックス(海)とするPLLAの球状粒子(島)が大きくなり過ぎて、ポリマー間の屈折率の違いによる反射性が低下し、所期した光沢が得られ難くなるからである。
このような作用効果がより確実に発揮されるように、PLLA/PBATの質量比は9/1〜6/4であることが好ましく、さらに数値範囲を狭めて同質量比が、8/2〜7/3、8/2〜6/4または8/2〜5/5の範囲とすることにより、より好ましいフィラメント強度と造形物の光沢という作用効果が奏される。
以下の実施例および比較例に使用した樹脂を具体的に列記すれば、以下の通りである。
(1)ポリ-L-乳酸(PLLA) (浙江海正生物材料股▲分▼有限公司製:REVODE190)
(2)ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT(1)) (サムソンファインケミカルズ社製:Enpol PBG7070-OA)
(3)ポリブチレンアジペート−ブチレンテレフタレート共重合体(PBAT(2)) (BASF社製:Ecoflex)
上記の樹脂を用いて質量比がPLLA/PBAT=10/0、9/1、8/2、7/3、6/4、5/5、4/6、3/7、2/8、1/9、0/10に配合した樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を溶融混練して所定径のフィラメントを作製して試験片とし、各物性、相状態、特性などを測定および評価した。以下にその詳細を説明する。
<実施例1〜9、比較例1、2のフィラメントの作製>
シリンダー1、シリンダー2およびダイスを200℃に設定した二軸混練装置(東洋製機社製)を用いて、PLLAとPBAT(1)を所定の割合(PLLA/PBAT(1)重量比 = 10/0, 9/1, 8/2, 7/3, 6/4, 5/5, 4/6, 3/7, 2/8, 1/9, 0/10)で混合してから溶融混練し、紡糸口金から吐出させて24℃の水で急冷して引き取ることにより約直径 1.75 mmの実施例1〜9(前記質量比が、それぞれ9/1, 8/2, 7/3, 6/4, 5/5, 4/6, 3/7, 2/8, 1/9のもの)および比較例1、2(前記質量比が、それぞれ10/0, 0/10のもの)のフィラメントを得た。得られたフィラメンを40℃で減圧乾燥した。
<実施例10〜18、比較例3、4のフィラメントの作製>
シリンダー1、シリンダー2およびダイスを200℃に設定した二軸混練装置(東洋製機社製)を用いて、PLLAとPBAT(2)を所定の割合(PLLA/PBAT(2)の質量比 = 10/0, 9/1, 8/2, 7/3, 6/4, 5/5, 4/6, 3/7, 2/8, 1/9, 0/10)で混合してから溶融混練し、紡糸口金から吐出させて24℃の水で急冷しながら引き取ることにより、直径1.75mmの実施例10〜18(前記質量比が、それぞれ9/1, 8/2, 7/3, 6/4, 5/5, 4/6, 3/7, 2/8, 1/9のもの)および比較例3、4(前記質量比が、それぞれ10/0, 0/10のもの)のフィラメントを得た。得られたフィラメントを40度で減圧乾燥した。
これら実施例および比較例のフィラメントの試料、または各ポリマーの溶融混練後の試料に対し、以下に示すように、示差走査熱量(DSC)測定試験、SEM観察、反射率測定、引張試験、造形試験をそれぞれ行ない、それらの結果を評価した。
[DSC測定による熱的特性の評価試験]
実施例および比較例のポリマーの溶融混練後の試料2mgをアルミニウムパンに入れ、20ml/分の流速で窒素ガスを流して示差走査熱量測定計(Bruker axs社製DSC3100SA)で熱的特性の各値を測定した。測定は、室温から200℃まで10℃/分の速さで昇温した。このDSC測定の結果を表1、表2中に示した。なお、表中のTgはガラス転移点、Tcは結晶化点、Tmは融点、ΔHmは融解エンタルピーを示している。
表1の結果からも明らかなように、約175℃および約120℃付近にPLLAおよびPBAT(1)に由来する融解ピークが観測された。PLLAに対してPBAT(1)の含有量を増加させると、PLLA/PBAT(1)の重量比が9/1, 8/2, 7/3の場合にはPLLAのみの融点(Tm)が観測された。PLLAにPBAT(1)の含有量をさらに増加させると、PBAT(1)のTmも観測され、PLLAとPBAT(1)の結晶が混在していることが示唆された。PLLAとPBAT(1)のTmが一定の値さらに、PLLAに対してPBAT(1)の含有量を増加させるにつれて、PLLAに由来する融解エンタルピー(ΔHm)は減少し、PBAT(1)に由来するΔHmが増加する傾向が見られた。PLLAとPBAT(2)を所定の割合(PLLA/PBA(2)重量比 = 10/0, 9/1, 8/2, 7/3, 6/4, 5/5, 4/6, 3/7, 2/8, 1/9, 0/10)で溶融混練した後の各ポリマーのDSC測定の結果を表2に示した。PLLAとPBAT(2)の溶融混練後のフィラメントの熱的特性はPLLAとPBAT(1)の混合物とほぼ同様の熱的特性結果が得られた。
[走査型電子顕微鏡(SEM)測定]
実施例1〜18、比較例1〜4のフィラメント資料をイオンコーター(Eiko Engineering社製 IB-2)を用いて金メッキ蒸着し、走査型電子顕微鏡(SEMKEYENCE Corp.社製:VE-7800)を用いて、倍率は5000倍として10kVの条件で実施例および比較例のフィラメントの切断面と表面とをそれぞれ観察した。図1にPLLAとPBAT(1)を所定質量比で配合したフィラメント切断面のSEM画像を示し、図2にPLLAとPBAT(1)を所定質量比で配合したフィラメント表面のSEM画像を示し、図3にPLLAとPBAT(2)を所定質量比で配合したフィラメント切断面のSEM画像を示し、図4にPLLAとPBAT(2)を所定質量比で配合したフィラメント表面のSEM画像を示した。
図1のSEM画像では、PLLAとPBAT(1)の重量比が9/1, 8/2, 7/3, 6/4では、PLLA相がマトリックスとなり、約0.5μmの球状のPBAT(1)ドメインが分散した海島構造が観測された。これはPLLAがマトリックスとなるとき、PLLAとは相溶性が悪く、相分離していることを示している。PLLAとPBAT(1)の重量比が4/6, 3/7, 2/8, 1/9では、PBAT(1)相がマトリックスとなるが、約0.25μm以下の球状のPLLAドメインが分散した海島構造が観測された。PBAT(1)の重量比が高い場合には、PLLA相の球状ドメインが小さく、PBAT(1)相にPLLAドメインが取り込まれていることがわかった。
図2のSEM画像でも同様に、PLLA重量比が高いとき、ミクロ相分離による島状のPBAT(1)相が表面上に分散していることが確認された。
図3および図4のSEM画像では、PLLAとPBAT(2)のフィラメントでも前記したPLLAとPBAT(1)の混合物とほぼ同様のSEM画像が得られ、PLLAとPBAT(2)がミクロ相分離したSEM画像が観測され、ほぼ同様の傾向が認められた。
[反射率の測定]
比較例1、実施例1〜9、比較例3、実施例10〜18のフィラメント資料に対し、ハロゲン光源装置(KBEX-102:Nissei)と検出器を備え付けた反射分光膜厚計(FE-3000:大塚電子製)を用い、試料をガラスプレート上に乗せ、300-800μmの波長領域におけるフィラメント表面の反射率(%)の測定を行ない、実施例1〜5と比較例1の結果を図5に示し、実施例6〜9の結果を図6に示し、実施例10〜14と比較例3の結果を図7のグラフに示し、実施例15〜18の結果を図8のグラフに示した。
図5の結果から、PLLAの反射率は300-800nmの波長範囲において、約2%以下であるのに対して、PLLAにPBAT(1)を9/1, 8/2, 7/3, 6/4,5/5の質量比で添加すると反射率は明らかに増加し、その傾向はPLLA/PBAT=8/2〜6/4の範囲でより顕著に認められた。また、約480nmの波長領域に極大値が観測され、その値は約6%以上となった。
これらの良好な反射率は、SEM画像の結果(図1、2)より、PLLAのマトリックス中にPBAT(1)が約0.5μm程度の島となって相分離して分散することで、ポリマー間の屈折率の違いにより光の反射性が高まったためであると考えられた。
また、図6の結果からも明らかなように、PLLAに対して、PBAT(1)の質量比を5/5, 4/6, 3/7, 2/8, 1/9の割合で混合した場合、上記した図5の結果に比べると、約480nmの波長領域に極大値は6%以下となって若干の低下は認められるものの、所期した程度に反射率の向上する傾向が認められた。
次に、図7の結果を見ると、実施例10〜14と比較例3のフィラメント資料でもPLLAの反射率は300-800nmの波長範囲で約2%以下であるのに対し、PLLAにPBAT(2)を9/1, 8/2, 7/3, 6/4, 5/5の質量比で添加すると反射率は明らかに増加し、その傾向はPLLA/PBAT=8/2〜6/4の範囲でより顕著に認められた。
また、図8の結果からも明らかなように、PLLAに対して、PBAT(1)の質量比を5/5, 4/6, 3/7, 2/8, 1/9の割合で混合した実施例15〜18では、上記図7の結果に比べると、部分的に低下は認められるが、全体として所期した程度に反射率の向上が認められた。
これらの結果から、PLLAにPBAT(2)を添加した場合においても、PLLAにPBAT(1)を添加した場合と同様に、反射率はPLLA単体のフィラメントに比べて向上することが確認できた。
[引張試験]
実施例1〜18、比較例1〜4のフィラメント資料について、引張試験機(ORIENTEC社製 STA-1150)を用いて各試験片の長さを20mm、引張速度は30mm/分とし、室温下で測定し、測定値から応力−ひずみ曲線を求め、破断強度、初期弾性率、破断点伸度を算出し、これらの結果を表3と表4に示した。
表3の結果からも明らかなように、PLLAは弾性率が3000MPaを越え、伸度が2.5%とPLLA特有の硬くて脆い特性を示すが、PBAT(1)の添加量を増加するにしたがって弾性率が減少し、伸度が増加する傾向が見られた。PLLAにPBAT(1)を10wt%添加した場合には、伸度が190%を越え、PBAT(1)が柔軟性成分として働き、弾性率を低減できたことから、従来のPLLAに対して柔軟性(可撓性)の付与されたPLLAフィラメントが得られたことが分かる。
また、表4の結果からは、PLLAにPBAT(2)を添加した場合においても上記同様に、PBAT(2)を添加することで柔軟で高い伸びを有するPLLAフィラメントが得られることがわかった。
[3Dプリンターによる造形試験]
PLLAおよびPLLA/PBAT(1)混合物のフィラメント(実施例3)を用い、溶融積層型3Dプリンタ(Maker Bot社製:Replicator 2X)により、積層ピッチを0.2mmに設定し、190oCの条件で造形試作を行なった。
その結果、実施例3のフィラメントで造形したもの(図9参照)は、PLLA単体のフィラメントと遜色のない造形物であって、丈夫で割れ難いものが成形でき、しかも光沢性があり質感の良い造形物に仕上がることが判明した。
溶融積層型3Dプリンタ用フィラメントは、その製造原料であるポリ乳酸(PLA)が、澱粉や糖を利用して合成されるバイオベースポリマーであり、カーボンニュートラルの性質を有するため、その使用によって大気中の二酸化炭素量を増やすことなく環境負荷を低減できると共に、その生分解性によって環境調和性の高い廃棄処理が可能な成形材料であり、自動車用部品や家電用部品の他、各種の工業製品や各種産業用製品の製造に用いることができ、また試験用部品の製造や趣味や家庭用の3Dプリンタにも使用可能である。
またPLAは、使用後には回収してモノマーに分解して再生可能であるため、リサイクル性にも優れており、また生体適合性および生体吸収性を有するので、DDS等の医療材料としても利用可能なものである。

Claims (5)

  1. ポリ−L−乳酸に、ポリブチレンアジペートテレフタレートを、以下の質量比の範囲内であるように配合した樹脂組成物からなり、線状長尺成形物である溶融積層型3Dプリンタ用光沢性フィラメント。
    PLLA/PBAT=9/1〜1/9
    (上記質量比の範囲を示すPLLAはポリ−L−乳酸を示し、PBATはポリブチレンアジペートテレフタレートを示す。)
  2. 上記質量比の範囲が、PLLA/PBAT=8/2〜6/4の範囲である請求項1に記載の溶融積層型3Dプリンタ用光沢性フィラメント。
  3. 上記線状長尺成形物は、少なくとも表面の相状態がPLLA相をマトリックスとし、PBAT相の分散した海島構造を呈する線状長尺成形物である請求項1または2に記載の溶融積層型3Dプリンタ用光沢性フィラメント。
  4. 上記PBAT相が、主に粒径0.5μmの球状ドメインからなるPBAT相である請求項3に記載の溶融積層型3Dプリンタ用光沢性フィラメント。
  5. 上記線状長尺成形物が、直径1.75〜3.0mmの線状長尺成形物である請求項1〜4のいずれかに記載の溶融積層型3Dプリンタ用光沢性フィラメント。
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