以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1に示すエンジン100は、例えば直列3気筒であって、エンジン100の運転状態に応じて一対のカム(後述)を選択的に切り替えるカム切替機構1を備えている。また、エンジン100の各気筒には、吸排気バルブの開閉動作を停止させることで、気筒を休止させる気筒休止機構2がそれぞれ設けられている。そして、カム切替機構1、気筒休止機構2、並びにこれらの動作を制御するECU3(電子制御ユニット)の組は、本発明に係るカム切替装置の一例である。ECU3は、公知のCPU、ROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備える。ECU3は、カム軸移動制御手段の一例である。ECU3の機能要素は、いずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
カム切替機構1は、吸気側カム切替機構10と、排気側カム切替機構20を備えている。吸気側カム切替機構10は、吸気カム11が設けられた吸気側二重カム軸12と、吸気側二重カム軸12をスライド移動させる吸気側スライド溝13(図3参照)及び吸気側電磁ソレノイド14とを備えている。排気側カム切替機構20は、排気カム21が設けられた排気側二重カム軸22と、排気側二重カム軸22をスライド移動させる排気側スライド溝23及び排気側電磁ソレノイド24とを備えている。
これらの中で、吸気側スライド溝13及び吸気側電磁ソレノイド14の組、及び、排気側スライド溝23及び排気側電磁ソレノイド24の組は、ECU3と共に、本発明に係るカム軸移動手段の一例を構成する。また、吸気側二重カム軸12に設けられた吸気カム11は、カムプロフィールの異なる二種類のカム(標準吸気カム15,低速カム16)を備え、排気側二重カム軸22に設けられた排気カム21は、カムプロフィールの異なる二種類のカム(早開カム25,標準排気カム26)を備えている。そして、標準吸気カム15及び早開カム25は本発明に係る第1カムの一例であり、低速カム16及び標準排気カム26は本発明に係る第2カムの一例である。
なお、排気側カム切替機構20が備える各部、排気側二重カム軸22、排気側スライド溝23,及び、排気側電磁ソレノイド24については、切り替え対象である排気カム21が、早開カム25と標準排気カム26を備えている以外は、吸気側カム切替機構10の各部と同様に構成されている。このため、以下では、吸気側カム切替機構10について説明し、排気側カム切替機構20については説明を省略する。
図2に示すように、吸気側二重カム軸12は、エンジン100の図示しないクランク軸と連動して回転する内側カム軸31と、内側カム軸31の外周とスプライン嵌合し、内側カム軸31に対して軸方向にスライド移動可能な外側カム軸32とを備えている。
外側カム軸32には複数の吸気カム11が圧入され、外側カム軸32と一体的に回転可能な状態で取り付けられている。図1に示すように、本実施形態のエンジン100では、1つの気筒が2つの吸気バルブを備えているため、合計6個の吸気バルブ及び6個の吸気カム11が設けられている。図2に示すように、各吸気カム11は、標準吸気カム15と低速カム16を備えており、外側カム軸32を内側カム軸31の軸方向にスライド移動させることで、標準吸気カム15と低速カム16の何れかが選択される。同じ気筒に対応する2つの吸気カム11は、カムプロフィールが同じ位相となるように取り付けられている。そして、3気筒であることから3組の吸気カム11は、気筒毎に位相が120°ずれた状態で取り付けられている。
外側カム軸32の端部には2条の吸気側スライド溝13(第1スライド溝13A,第2
スライド溝13B)が設けられている。これらスライド溝13A,13Bの形状は、それぞれカム角が後述する所定の角度範囲内の時に、外側カム軸32がスライド移動を開始するように形成されている。これらのスライド溝13A,13Bには、外側カム軸32を内側カム軸31の軸方向にスライド移動させる際に、吸気側電磁ソレノイド14が備える切替ピン41A,41Bが嵌合される(図3(A),図4(A)参照)。
図3(A)に示すように、標準吸気カム15の選択時には、同図において左側に位置する第1切替ピン41Aが下方に移動し、第1切替ピン41Aの下端部が第1スライド溝13Aに嵌合する。これにより、図3(B)に示すように、外側カム軸32は図における右方向へスライド移動し、吸気カム11が備える標準吸気カム15がロッカーローラ51Aに当接する。
図4(A)に示すように、低速カム16の選択時には、同図において右側に位置する第2切替ピン41Bが下方に移動し、第2切替ピン41Bの下端部が第2スライド溝13Bに嵌合する。これにより、図4(B)に示すように、外側カム軸32は図における左方向へスライド移動し、吸気カム11が備える低速カム16がロッカーローラ51Aに当接する。
図3(A)、図4(A)に示すように、第1切替ピン41A及び第2切替ピン41Bの上下方向の移動は、吸気側電磁ソレノイド14によって制御される。具体的には、第1切替ピン41Aの上方に位置する第1電磁ソレノイド42Aと第2切替ピン41Bの上方に位置する第2電磁ソレノイド42Bへの通電によって制御される。
第1電磁ソレノイド42Aの中心には第1鉄心43Aが配置されており、第1電磁ソレノイド42Aへの通電時に第1鉄心43Aの下端がN極となる。そして、第1切替ピン41Aの上端部には、上面がN極となる第1永久磁石44Aが設けられている。同様に、第2電磁ソレノイド42Bの中心には第2鉄心43Bが配置されており、第2電磁ソレノイド42Bへの通電時に第2鉄心43Bの下端がS極となる。そして、第2切替ピン41Bの上端部には、上面がS極となる第2永久磁石44Bが設けられている。加えて、第1鉄心43Aと第2鉄心43Bの上端部同士は、板状の透磁性体で作製されたヨーク45によって連結されている。
図3(A)に示すように、第1電磁ソレノイド42Aを通電状態にし、第2電磁ソレノイド42Bを非通電状態にすると、第1鉄芯43Aの下端がN極になって第1永久磁石44Aと反発するため、第1切替ピン41Aが下方へ移動する。一方、第2電磁ソレノイド42Bは非通電状態とされるが、第1鉄芯43Aからの磁界によって第2鉄心43Bの下端がN極に磁化されて第2永久磁石44Bと引き合う。このため、第2切替ピン41Bが第2鉄心43Bの下端に吸着された状態になる。
図4(A)に示すように、第2電磁ソレノイド42Bを通電状態にし、第1電磁ソレノイド42Aを非通電状態にすると、第2鉄心43Bの下端がS極になって第2永久磁石44Bと反発するため、第2切替ピン41Bが下方へ移動する。一方、第1電磁ソレノイド42Aは非通電状態とされるが、第2鉄心43Bからの磁界によって第1鉄芯43Aの下端がS極に磁化されて第1永久磁石44Aと引き合うため、第1切替ピン41Aが第1鉄芯43Aの下端に吸着された状態になる。
従って、第1電磁ソレノイド42Aへの通電と第2電磁ソレノイド42Bへの通電を選択的に行うことにより、第1切替ピン41Aと第2切替ピン41Bを選択的に第1スライド溝13Aと第2スライド溝13Bに嵌合させることができ、標準吸気カム15と低速カム16を選択的にロッカーローラ51Aに当接させることができる。
次に、気筒休止機構2について説明する。この気筒休止機構2は、吸排気バルブを閉弁状態にすることで気筒を休止させる機構であり、ECU3と共に本発明に係る気筒休止手段の一例を構成する。図5に示すように、気筒休止機構2は、ロッカーアーム51と、ブラケット52と、油圧タペット53と、ニードル54と、休止用電磁ソレノイド55とを備えている。
ロッカーアーム51は、吸気カム11(標準吸気カム15,低速カム16)や排気カム21(標準排気カム26,早開カム25)によって揺動されて吸気バルブV1や排気バルブV2を開弁方向に動作させる部材である。ロッカーアーム51の一端部は、ロッカーシャフト軸51Bを中心にして、ブラケット52に回動可能な状態で取り付けられている。ロッカーアーム51の他端部は、吸気バルブV1や排気バルブV2の上端に上方から当接されている。ロッカーアーム51における長手方向の途中には、吸気カム11或いは排気カム21と当接するロッカーローラ51Aが形成されている。
ブラケット52は、ロッカーアーム51にロッカーシャフト軸51Bでピン連結された部材であり、気筒の休止状態においてロッカーアーム51の揺動に応じて上下動される。ブラケット52の内部には、ニードル54が収納されると共にエンジンオイルで満たされるニードル収納空部52Aが形成されている。ブラケット52の下側部分は、油圧タペット53に対して進退される有底円筒状のピストン部52Bになっている。ピストン部52Bの底面中心部には、エンジンオイルの通路になると共にニードル54の先端部が挿入される油孔52Cが、板厚方向を貫通した状態で形成されている。また、ピストン部52Bの側面には、エンジンオイルで満たされた油路OLとニードル収納空部52Aとを連通する連通孔52Dが形成されている。
油圧タペット53は、ブラケット52のピストン部52Bが進退可能に挿入されると共に、ブラケット52(ピストン部52B)を下側から支える部材であり、円筒形のボディ53Aと、チェックボールスプリング(不図示)によって上方に付勢されるチェックボール53Bと、ピストン部52Bの下端面に下側から当接すると共に、チェックボール53B及びチェックボールスプリングを収納する有底筒状の収納部53Cと、収納部53Cを下側から支えるピストンスプリング53D等を備えている。
気筒の動作状態において油圧タペット53は、チェックボール53Bが上方に付勢され、チェックボール53Bによってピストン部52Bの油孔52Cが塞がれている。油孔52Cが塞がれた状態において、ピストン部52Bよりも下側を満たすエンジンオイルは流れることができない。このため、ブラケット52(ピストン部52B)は下方へ移動できず、高さ方向の位置が固定される。
一方、気筒の休止状態において油圧タペット53は、ニードル54によってチェックボール53Bが下方に移動されおり、ピストン部52Bの油孔52Cが開放されている。油孔52Cが開放された状態において、ピストン部52Bよりも下側を満たすエンジンオイルは油孔52Cを通じてニードル収納空部52A内に流れ込むことができる。そして、ニードル収納空部52A内のエンジンオイルは、ピストン部52Bの側面に形成された連通孔52Dから油路OLへ流れ込むことができる。このため、油孔52Cが開放されると、ブラケット52(ピストン部52B)は下方への移動が可能になる。すなわち、カム11,21による押圧力がピストンスプリング53Dの復元力よりも高ければ、ピストンスプリング53Dが収縮してブラケット52が下方に移動する。そして、カム11,21による押圧力がピストンスプリング53Dの復元力よりも低くなれば、ピストンスプリング53Dの復元力によってブラケット52は上方へ移動する。
ニードル54は、チェックボール53Bを下方に移動させるための棒状部材であり、ブラケット52のニードル収納空部52Aに軸方向へ移動可能な状態で収納されると共に、下端がチェックボール53Bに当接されている。ニードル54の上端部は、休止用電磁ソレノイド55の内部に収納されており、休止用電磁ソレノイド55が備えるプランジャ55Cによって上下方向に移動される。
休止用電磁ソレノイド55は、ガイド軸55Aと、休止用コイル55Bと、プランジャ55Cとを備えている。
ガイド軸55Aは、上端が塞がれた筒状部材であり、上端部の内側にはプランジャ55Cをニードル54の軸方向に移動可能な状態で収納するプランジャ収納空間55Dが形成され、収納空間55Dの下方にはニードル54が軸方向に移動可能な状態で収納されるニードル収納空部55Eが形成されている。さらに、ガイド軸55Aの下端部には、ブラケット52の上端部がニードル54の軸方向へスライド移動可能な状態で嵌合されるガイド空部55Fが形成されている。
休止用コイル55Bは、ガイド軸55Aの上端部に配置されており、通電によって磁界を発生させてプランジャ55Cを下方に付勢する。プランジャ55Cは、ニードル54の上端に上方から当接されており、休止用コイル55Bから発生された磁界によってニードル54を下方に押し下げる。そして、休止用コイル55Bへの通電が停止されると、磁界の発生が停止されるので、チェックボールスプリングの復元力によってチェックボール53Bが上方に移動され、これに伴ってニードル54とプランジャ55Cも上方に移動される。
以上のように構成された気筒休止機構2では、気筒の動作状態において休止用電磁ソレノイド55(休止用コイル55B)は非通電状態とされ、気筒の休止状態において休止用電磁ソレノイド55は通電状態とされる。
休止用電磁ソレノイド55の非通電状態では、チェックボール53Bが上方に移動されてピストン部52Bの油孔52Cが塞がれる。これにより、ブラケット52の高さ位置が固定される。そして、吸気カム11や排気カム21のカムプロフィールに沿ってロッカーローラ51Aが押圧されると、ロッカーアーム51の一端部はロッカーシャフト軸51Bを支点に回動し、他端部がバルブスプリングSPの復元力に抗して揺動し、吸気バルブV1や排気バルブV2を開閉動作させる。
休止用電磁ソレノイド55の通電状態では、チェックボール53Bが下方に移動されてピストン部52Bの油孔52Cが開放される。これにより、ブラケット52が上下方向(ニードル54の軸方向)へ移動可能な状態になる。そして、吸気カム11や排気カム21のカムプロフィールに沿ってロッカーローラ51Aが押圧されると、バルブスプリングSPの復元力が強力であることから、ロッカーアーム51の他端部は吸気バルブV1の上端や排気バルブV2の上端を支点に回動し、一端部はロッカーシャフト軸51Bを介してブラケット52と共に上下方向へ揺動する。このため、ロッカーアーム51が揺動しても吸気バルブV1や排気バルブV2は閉弁状態で維持される。
次に、図6に基づいて、吸気カム11と排気カム21のカムプロフィールについて説明する。
図6(A)に示すように、第1気筒#1の吸気カム11において、カム角θ1からカム角θ3までの角度範囲では、標準吸気カム15のカムプロフィール#1instdの方が低速カム16のカムプロフィール#1inLowよりもカムリフト量が大きくなっている。一方、カム角θ3からカム角θ5までの角度範囲では、低速カム16のカムプロフィール#1inLowの方が標準吸気カム15のカムプロフィール#1instdよりもカムリフト量が大きくなっている。
第2気筒#2の吸気カム11において、カム角θ4からカム角θ6までの角度範囲では、標準吸気カム15のカムプロフィール#2instdの方が低速カム16のカムプロフィール#2inLowよりもカムリフト量が大きくなっている。一方、カム角θ6からカム角θ8までの角度範囲では、低速カム16のカムプロフィール#2inLowの方が標準吸気カム15のカムプロフィール#2instdよりもカムリフト量が大きくなっている。
第3気筒#3の吸気カム11において、カム角θ7からカム角θ9までの角度範囲では、標準吸気カム15のカムプロフィール#3instdの方が低速カム16のカムプロフィール#3inLowよりもカムリフト量が大きくなっている。一方、カム角θ9からカム角θ10までの角度範囲では、低速カム16のカムプロフィール#3inLowの方が標準吸気カム15のカムプロフィール#3instdよりもカムリフト量が大きくなっている。
図6(A)から、本実施形態の吸気カム11では、どのカム角を選択したとしても何れかの気筒の吸気バルブV1がリフトしており、吸気カム11が備えるベース円の角度範囲が標準吸気カム15と低速カム16の切り替えに対して不足していることが判る。
図6(A)の例では、カム角θ1からカム角θ3までの角度範囲、カム角θ4からカム角θ6までの角度範囲、及び、カム角θ7からカム角θ9までの角度範囲が、本発明における第1角度範囲に相当する。また、カム角θ3からカム角θ5までの角度範囲、カム角θ6からカム角θ8までの角度範囲、及び、カム角θ9からカム角θ10までの角度範囲が本発明の第2角度範囲に相当する。本実施形態では、第1角度範囲において、他の気筒のカムリフト量が0でない範囲があるので、標準吸気カム15から低速カム16への切り替えを行う際には、第1角度範囲内であって、他の気筒のカムリフト量が0である範囲内、例えば、第1気筒#1であれば、カム角θ2からカム角θ3の範囲で外側カム軸32のスライド移動を開始している。また、第2角度範囲において、他の気筒のカムリフト量が0でない範囲があるので、低速カム16から標準吸気カム15への切り替えを行う際には、第2角度範囲内であって、他の気筒のカムリフト量が0である範囲内、例えば、第1気筒#1であれば、カム角θ3からカム角θ4の範囲で外側カム軸32のスライド移動を開始している。
図6(B)に示すように、第1気筒#1の排気カム21において、カム角θ11からカム角θ13までの角度範囲では、早開カム25のカムプロフィール#1exfstの方が標準排気カム26のカムプロフィール#1exstdよりもカムリフト量が大きくなっている。一方、カム角θ13からカム角θ15までの角度範囲では、標準排気カム26のカムプロフィール#1exstdの方が早開カム25のカムプロフィール#1exfstよりもカムリフト量が大きくなっている。
第2気筒#2の排気カム21において、カム角θ14からカム角θ16までの角度範囲では、早開カム25のカムプロフィール#2exfstの方が標準排気カム26のカムプロフィール#2exstdよりもカムリフト量が大きくなっている。一方、カム角θ16からカム角θ18までの角度範囲では、標準排気カム26のカムプロフィール#2exstdの方が早開カム25のカムプロフィール#2exfstよりもカムリフト量が大きくなっている。
第3気筒#3の排気カム21において、カム角θ17からカム角θ19までの角度範囲では、早開カム25のカムプロフィール#3exfstの方が標準排気カム26のカムプロフィール#3exstdよりもカムリフト量が大きくなっている。一方、カム角θ19からカム角θ20までの角度範囲では、標準排気カム26のカムプロフィール#3exstdの方が早開カム25のカムプロフィール#3exfstよりもカムリフト量が大きくなっている。
図6(B)から、本実施形態の排気カム21でも、どのカム角を選択したとしても何れかの気筒の排気バルブV2がリフトしており、排気カム21が備えるベース円の角度範囲が早開カム25と標準排気カム26の切り替えに対して不足していることが判る。
図6(B)の例では、カム角θ11からカム角θ13までの角度範囲、カム角θ14からカム角θ16までの角度範囲、及び、カム角θ17からカム角θ19までの角度範囲が、本発明における第1角度範囲に相当する。また、カム角θ13からカム角θ15までの角度範囲、カム角θ16からカム角θ18までの角度範囲、及び、カム角θ19からカム角θ20までの角度範囲が本発明の第2角度範囲に相当する。本実施形態では、第1角度範囲において、他の気筒のカムリフト量が0でない範囲があるので、早開カム25から標準排気カム26への切り替えを行う際には、第1角度範囲内であって、他の気筒のカムリフト量が0である範囲内、例えば、第1気筒#1であれば、カム角θ12からカム角θ13の範囲で外側カム軸のスライド移動を開始している。また、第2角度範囲において、他の気筒のカムリフト量が0でない範囲があるので、標準排気カム26から早開カム25への切り替えを行う際には、第2角度範囲内であって、他の気筒のカムリフト量が0である範囲内、例えば、第1気筒#1であれば、カム角θ13からカム角θ14の範囲で外側カム軸のスライド移動を開始している。
次に、ECU3によるカムの切替制御について説明する。
まず、図7を参照し、標準吸気カム15から低速カム16への切替制御について説明する。図7のタイミングチャートにおいて横軸は時間である。そして、同図の上段側から順に説明すると、切替Req(切替要求信号)は、標準吸気カム15から低速カム16への切替要求を示すタイミング信号である。切替要求は、所定の条件が満たされたことをECU3が検出した場合に、Hレベルの信号として出力される。IN−CAM1xは、3つの気筒に対する吸気制御を1サイクルとした際における、各サイクルの開始を示すタイミング信号である。IN−CAM3xは、1サイクル期間における各気筒への制御開始を示すタイミング信号である。
#1IN−休止は、第1気筒#1の吸気バルブV1についての気筒休止期間に亘ってHレベルになる制御信号であり、#1IN−リフト量は、第1気筒#1に設けられた一対の吸気バルブV1のリフト量を模式的に示す信号である。#2IN−休止は、第2気筒#2の吸気バルブV1の気筒休止期間に亘ってHレベルになる制御信号であり、#2IN−リフト量は、第2気筒#2に設けられた一対の吸気バルブV1のリフト量を模式的に示す信号である。#3IN−休止は、第3気筒#3の吸気バルブV1の気筒休止期間に亘ってHレベルになる制御信号であり、#3IN−リフト量は、第3気筒#3に設けられた一対の吸気バルブV1のリフト量を模式的に示す信号である。
第1IN−SOLは、第1電磁ソレノイド42Aへの通電電流の大きさを示す信号である。第2IN−SOLは、第2電磁ソレノイド42Bへの通電電流の大きさを示す信号である。図7の例では、標準吸気カム15から低速カム16への切り替えを行うため、第2電磁ソレノイド42Bに対して通電が行われている。
EX−CAM1xは、3つの気筒に対する排気制御を1サイクルとした際における、各サイクルの開始を示すタイミング信号である。EX−CAM3xは、1サイクル期間における各気筒への制御開始を示すタイミング信号である。
#1EX−休止は、第1気筒#1の排気バルブV2についての気筒休止期間に亘ってHレベルになる制御信号であり、#1EX−リフト量は、第1気筒#1に設けられた一対の排気バルブV2のリフト量を模式的に示す信号である。#2EX−休止は、第2気筒#2の排気バルブV2の気筒休止期間に亘ってHレベルになる制御信号であり、#2EX−リフト量は、第2気筒#2に設けられた一対の排気バルブV2のリフト量を模式的に示す信号である。#3EX−休止は、第3気筒#3の排気バルブV2の気筒休止期間に亘ってHレベルになる制御信号であり、#3EX−リフト量は、第3気筒#3に設けられた一対の排気バルブV2のリフト量を模式的に示す信号である。
ECU3は切替要求信号を監視しており、切替要求信号の電圧レベルの変化に基づいて標準吸気カム15から低速カム16への切替要求が生じたことを認識する。図7の例においてECU3は、HレベルからLレベルへの立ち下がりタイミング(時刻t1)で切替要求があったことを認識する。
標準吸気カム15から低速カム16への切替要求を認識すると、ECU3は、各気筒#1〜#3を順に休止状態にさせる。このため、ECU3は、タイミング信号IN−CAM1xに基づいて次周期の制御開始タイミングであることを認識し(時刻t2)、直後のタイミング信号IN−CAM3xに基づいて第1気筒#1の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55(休止用コイル55B)を通電状態にする(時刻t3)。これにより、第1気筒#1については、ロッカーアーム51が揺動しても吸気バルブV1は閉弁状態で維持される。
次に、ECU3は、タイミング信号IN−CAM3xに基づいて第2気筒#2の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55を通電状態にする(時刻t4)。これにより、第2気筒#2についても、ロッカーアーム51が揺動しても吸気バルブV1は閉弁状態で維持される。同様に、ECU3は、タイミング信号IN−CAM3xに基づいて第3気筒#3の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55を通電状態にする(時刻t6)。これにより、第3気筒#3についても、ロッカーアーム51が揺動しても吸気バルブV1は閉弁状態で維持される。この時刻t6では、各気筒#1〜#3が休止状態とされる。
ECU3は、時刻t6において、第2電磁ソレノイド42Bへの通電を開始する。第2電磁ソレノイド42Bへの通電により、第2切替ピン41Bが下方へ移動して下端部が第2スライド溝13Bに嵌合する。これにより、第2スライド溝13Bに沿って外側カム軸32のスライド移動が開始され、すなわちカム角θ2からθ3までの角度範囲でスライド移動が開始され、吸気カム11とロッカーローラ51Aの相対位置が変化する。具体的には、それまでのロッカーローラ51Aと標準吸気カム15の当接状態から、ロッカーローラ51Aの一部が低速カム16上へ位置するように吸気カム11が移動される。
ここで、図6(A)で説明したように、カム角θ2からθ3までの角度範囲では、標準吸気カム15のカムリフト量の方が低速カム16のカムリフト量よりも大きい。すなわち、低速カム16は標準吸気カム15よりも低い位置(回転中心に近い位置)にある。このため、標準吸気カム15のカム面と低速カム16のカム面との段差は障害にならず、吸気カム11を円滑にスライド移動させることができる。そして、各気筒が備える吸気バルブV1の開閉動作が停止されているため、ロッカーローラ51Aが標準吸気カム15と低速カム16の段差を落下しても、ロッカーアーム51がブラケット52と共に上下方向へ移動してロッカーアーム51の揺動が吸収される。その結果、異音の発生を抑制しつつカムを切り替えることができる。
なお、図6(A)から判るように、第2気筒#2及び第3気筒#3の吸気カム11は、カム角θ2からθ3までの角度範囲においてカムリフト量が0である。すなわち、吸気カム11のベース円がロッカーローラ51Aに当接している。このため、第2気筒#2及び第3気筒#3の吸気カム11については、標準吸気カム15から低速カム16へ円滑に切り替えることができる。
図7に示すように、その後は、時刻t7で第1気筒#1の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされて吸気バルブV1が動作状態に切り替えられるが、この時点においてロッカーローラ51Aの少なくとも一部が低速カム16の上に位置している。これにより、第1気筒#1の吸気バルブV1は、低速カム16のカムプロフィールに従って円滑に開閉動作が開始される。
その後、時刻t8で第2気筒#2の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされ、時刻t9で第3気筒#3の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされ、各気筒#2,#3が備える吸気バルブV1が動作状態に切り替えられる。これらの気筒#2,#3についてもロッカーローラ51Aの少なくとも一部が低速カム16の上に位置しているため、吸気バルブV1は、低速カム16のカムプロフィールに従って円滑に開閉動作が開始される。
また、ECU3は、タイミング信号IN−CAM1xに基づいて次周期の吸気制御開始タイミングであることを認識した場合(時刻t2)には、タイミング信号EX−CAM1xに基づいて、次周期の排気制御開始タイミングを認識する。ここで、次周期の吸気制御と、次周期の排気制御とは、同一燃焼サイクルにおける吸気制御と排気制御である。ここで、燃焼サイクルとは、例えば、4ストロークエンジンであれば、吸入工程、圧縮工程、燃焼行程、排気工程との4工程を含むサイクルを意味している。また、同一燃焼サイクルにおける吸気制御と排気制御とは、1回の燃焼サイクルにおいて実行される吸気制御と排気制御とであることを意味している。
ECU3は、タイミング信号EX−CAM1xに基づいて次周期の排気制御開始タイミングであることを認識した場合(時刻t5)には、タイミング信号EX−CAM3xに基づいて、第1気筒#1の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55(休止用コイル55B)、第2気筒#2の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55、第3気筒#3の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55を順次通電状態にする。これにより、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3については、ロッカーアーム51が揺動しても排気バルブV2は閉弁状態で維持される。
その後、第1気筒#1の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55、第2気筒#2の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55、第3気筒#3の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55が順次非通電状態とされて排気バルブV2が動作状態に切り替えられる。
上記した標準吸気カム15から低速カム16への切替制御においては、吸気バルブV1の動作を停止した場合に、同一燃焼サイクルの排気バルブV2の動作を適切に停止することができる。すなわち、吸気バルブV1が動作せずに吸気が行われていない燃焼サイクルにおいて、排気バルブV2が動作しない。これにより、燃焼サイクルにおいて吸気がされていないのに、排気バルブV2が開いてしまって、排気下流側から燃焼室内に排気ガスが逆流してしまうことを防ぐことができる。このため、エンジンに対して回転抵抗が発生してしまうことを防止でき、燃費の悪化を防止できる。
次に、図8を参照し、低速カム16から標準吸気カム15への切替制御について説明する。図8のタイミングチャートにおいて横軸と縦軸の各項目の内、図7と同じであるものについては説明を省略する。
切替Req(切替要求信号)は、低速カム16から標準吸気カム15への切替要求を示すタイミング信号である。
ECU3は切替要求信号を監視しており、切替要求信号の電圧レベルの変化に基づいて低速カム16から標準吸気カム15への切替要求が生じたことを認識する。ECU3は、時刻t11で切替要求があったことを認識する。
低速カム16から標準吸気カム15への切替要求を認識すると、ECU3は、各気筒を順に休止状態にさせる。このため、ECU3は、タイミング信号IN−CAM1xに基づいて次周期の制御開始タイミングであることを認識し(時刻t12)、その後のタイミング信号IN−CAM3xに基づいて各気筒#1〜#3に対応する休止用電磁ソレノイド55を通電状態にする(時刻t13,t14,t16)。
ECU3は、時刻t16において、第1電磁ソレノイド42Aへの通電を開始する。第1電磁ソレノイド42Aへの通電により、第1切替ピン41Aが下方へ移動して下端部が第1スライド溝13Aに嵌合する。これにより、第1スライド溝13Aに沿って外側カム軸32のスライド移動が開始され、すなわちカム角θ3からθ4までの角度範囲でスライド移動が開始され、吸気カム11とロッカーローラ51Aの相対位置が変化する。それまでのロッカーローラ51Aと低速カム16の当接状態から、ロッカーローラ51Aの一部が標準吸気カム15上へ位置するように吸気カム11が移動される。
ここで、図6(A)で説明したように、カム角θ3からθ4までの角度範囲では、低速カム16のカムリフト量の方が、標準吸気カム15のカムリフト量の方がよりも大きい。すなわち、標準吸気カム15は低速カム16よりも低い位置(回転中心に近い位置)にある。このため、低速カム16のカム面と標準吸気カム15のカム面との段差は障害にならず、吸気カム11を円滑にスライド移動させることができる。そして、各気筒が備える吸気バルブV1の開閉動作が停止されているため、ロッカーローラ51Aが低速カム16と標準吸気カム15の段差を落下しても、ロッカーアーム51がブラケット52と共に上下方向へ移動してロッカーアーム51の揺動が吸収される。その結果、異音の発生を抑制しつつカムを切り替えることができる。
なお、図6(A)から判るように、第2気筒#2及び第3気筒#3の吸気カム11は、カム角θ3からθ4までの角度範囲においてカムリフト量が0である。すなわち、吸気カム11のベース円がロッカーローラ51Aに当接している。このため、第2気筒#2及び第3気筒#3の吸気カム11については、カム角θ4までにロッカーローラ51Aの少なくも一部が標準吸気カム15上へ位置していれば、標準吸気カム15へ円滑に切り替えることができる。
図8に示すように、その後は、時刻t17で第1気筒#1の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされて吸気バルブV1が動作状態に切り替えられるが、この時点においてロッカーローラ51Aの少なくとも一部が標準吸気カム15の上に位置している。これにより、第1気筒#1の吸気バルブV1は、標準吸気カム15のカムプロフィールに従って円滑に開閉動作が開始される。
その後、時刻t18で第2気筒#2の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされ、時刻t19で第3気筒#3の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされ、各気筒#2,#3が備える吸気バルブV1が動作状態に切り替えられる。これらの気筒#2,#3についてもロッカーローラ51Aの少なくとも一部が標準吸気カム15の上に位置しているため、吸気バルブV1は、標準吸気カム15のカムプロフィールに従って円滑に開閉動作が開始される。
また、ECU3は、タイミング信号IN−CAM1xに基づいて次周期の吸気制御開始タイミングであることを認識した場合(時刻t12)には、タイミング信号EX−CAM1xに基づいて、次周期の排気制御開始タイミングを認識する。ここで、次周期の吸気制御と、次周期の排気制御とは、同一燃焼サイクルにおける吸気制御と排気制御である。
ECU3は、タイミング信号EX−CAM1xに基づいて次周期の排気制御開始タイミングであることを認識した場合(時刻t15)には、タイミング信号EX−CAM3xに基づいて、第1気筒#1の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55、第2気筒#2の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55、第3気筒#3の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55を順次通電状態にする。これにより、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3については、ロッカーアーム51が揺動しても排気バルブV2は閉弁状態で維持される。
その後、第1気筒#1の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55、第2気筒#2の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55、第3気筒#3の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55が順次非通電状態とされて排気バルブV2が動作状態に切り替えられる。
上記した低速カム16から標準吸気カム15への切替制御においては、吸気バルブV1の動作を停止した場合に、同一燃焼サイクルの排気バルブV2の動作を適切に停止することができる。すなわち、吸気バルブV1が動作せずに吸気が行われていない燃焼サイクルにおいて、排気バルブV2が動作しない。これにより、燃焼サイクルにおいて吸気がされていないのに、排気バルブV2が開いてしまって、排気下流側から排気ガスが燃焼室内に逆流してしまうことを防ぐことができる。このため、エンジンに対して回転抵抗が発生してしまうことを防止でき、燃費の悪化を防止できる。
次に、図9を参照し、早開カム25から標準排気カム26への切替制御について説明する。図9のタイミングチャートにおいて横軸は時間である。図9のタイミングチャートにおいて、縦軸の図7と同じ項目については、説明を省略する。
切替Req(切替要求信号)は、早開カム25から標準排気カム26への切替要求を示すタイミング信号である。第1EX−SOLは、排気側電磁ソレノイド24の第1電磁ソレノイド42Aへの通電電流の大きさを示す信号である。第2EX−SOLは、排気側電磁ソレノイド24の第2電磁ソレノイド42Bへの通電電流の大きさを示す信号である。図9の例では、早開カム25から標準排気カム26への切り替えを行うため、排気側電磁ソレノイド24の第2電磁ソレノイド42Bに対して通電が行われている。
ECU3は切替要求信号を監視しており、切替要求信号の電圧レベルの変化に基づいて早開カム25から標準排気カム26への切替要求が生じたことを認識する。図9の例においてECU3は、HレベルからLレベルへの立ち下がりタイミング(時刻t21)で切替要求があったことを認識する。
早開カム25から標準排気カム26への切替要求を認識すると、ECU3は、各気筒#1〜#3の吸気バルブV1を順に休止状態にさせる。このため、ECU3は、タイミング信号IN−CAM1xに基づいて次周期の吸気制御開始タイミングであることを認識し(時刻t22)、タイミング信号IN−CAM3xに基づいて、第1気筒#1の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55、第2気筒#2の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55、第3気筒#3の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55を順次通電状態にする。これにより、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3については、ロッカーアーム51が揺動しても吸気バルブV1は閉弁状態で維持される。
その後、第1気筒#1の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55、第2気筒#2の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55、第3気筒#3の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55が順次非通電状態とされて吸気バルブV1が動作状態に切り替えられる。
また、ECU3は、タイミング信号IN−CAM1xに基づいて次周期の吸気制御開始タイミングであることを認識した場合(時刻t22)には、タイミング信号EX−CAM1xに基づいて、次周期の排気制御開始タイミングを認識する。ここで、次周期の吸気制御と、次周期の排気制御とは、同一燃焼サイクルにおける吸気制御と排気制御である。
ECU3は、タイミング信号EX−CAM1xに基づいて次周期の排気制御開始タイミングであることを認識した場合(時刻t23)には、直後のタイミング信号EX−CAM3xに基づいて第1気筒#1の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55を通電状態にする(時刻t24)。これにより、第1気筒#1については、ロッカーアーム51が揺動しても排気バルブV2は閉弁状態で維持される。
次に、ECU3は、タイミング信号EX−CAM3xに基づいて第2気筒#2の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55を通電状態にする(時刻t25)。これにより、第2気筒#2についても、ロッカーアーム51が揺動しても排気バルブV2は閉弁状態で維持される。同様に、ECU3は、タイミング信号EX−CAM3xに基づいて第3気筒#3の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55を通電状態にする(時刻t26)。これにより、第3気筒#3についても、ロッカーアーム51が揺動しても排気バルブV2は閉弁状態で維持される。この時刻t26では、各気筒#1〜#3の排気バルブV2が休止状態とされる。
ECU3は、時刻t26において、排気側電磁ソレノイド24の第2電磁ソレノイド42Bへの通電を開始する。第2電磁ソレノイド42Bへの通電により、第2切替ピン41Bが下方へ移動して下端部が排気側スライド溝23の第2スライド溝に嵌合する。これにより、第2スライド溝に沿って排気側二重カム軸22の外側カム軸のスライド移動が開始され、すなわちカム角θ12からθ13までの角度範囲でスライド移動が開始され、排気カム21とロッカーローラ51Aの相対位置が変化する。具体的には、それまでのロッカーローラ51Aと早開カム25の当接状態から、ロッカーローラ51Aの一部が標準排気カム26上へ位置するように排気カム21が移動される。
ここで、図6(B)で説明したように、カム角θ12からθ13までの角度範囲では、早開カム25のカムリフト量の方が標準排気カム26のカムリフト量よりも大きい。すなわち、標準排気カム26は早開カム25よりも低い位置(回転中心に近い位置)にある。このため、早開カム25のカム面と標準排気カム26のカム面との段差は障害にならず、排気カム21を円滑にスライド移動させることができる。そして、各気筒が備える排気バルブV2の開閉動作が停止されているため、ロッカーローラ51Aが早開カム25と標準排気カム26の段差を落下しても、ロッカーアーム51がブラケット52と共に上下方向へ移動してロッカーアーム51の揺動が吸収される。その結果、異音の発生を抑制しつつカムを切り替えることができる。
なお、図6(B)から判るように、第2気筒#2及び第3気筒#3の排気カム21は、カム角θ12からθ13までの角度範囲においてカムリフト量が0である。すなわち、排気カム21のベース円がロッカーローラ51Aに当接している。このため、第2気筒#2及び第3気筒#3の排気カム21については、早開カム25から標準排気カム26へ円滑に切り替えることができる。
図9に示すように、その後は、時刻t27で第1気筒#1の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされて排気バルブV2が動作状態に切り替えられるが、この時点においてロッカーローラ51Aの少なくとも一部が標準排気カム26の上に位置している。これにより、第1気筒#1の排気バルブV2は、標準排気カム26のカムプロフィールに従って円滑に開閉動作が開始される。
その後、時刻t28で第2気筒#2の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされ、時刻t29で第3気筒#3の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされ、各気筒#2,#3が備える排気バルブV2が動作状態に切り替えられる。これらの気筒#2,#3についてもロッカーローラ51Aの少なくとも一部が標準排気カム26の上に位置しているため、排気バルブV2は、標準排気カム26のカムプロフィールに従って円滑に開閉動作が開始される。
上記した早開カム25から標準排気カム26への切替制御においては、排気バルブV2の動作を停止させる場合において、それよりも前に実行される、同一燃焼サイクルの吸気バルブV1の動作を適切に停止することができる。すなわち、排気バルブV1を停止する燃焼サイクルにおいて、吸気バルブV1が動作して吸気がされてしまうことを適切に防止することができる。これにより、吸気した空気が燃焼室に残ったままでピストンを動かすことがないので、エンジンの回転抵抗の増加を防止でき、燃費の悪化を防止できる。また、吸気された空気が燃焼室から排気されずに、次の燃焼サイクルの吸気工程が実行されることがないので、次の燃焼サイクルの吸気工程において、吸気しようとする空気と、燃焼室内から吸気側に逃げようとする空気とが衝突することがなく、異音の発生等を適切に防止することができる。
次に、図10を参照し、標準排気カム26から早開カム25への切替制御について説明する。図10のタイミングチャートにおいて横軸と縦軸の各項目の内で、図9と同じものについては説明を省略する。
切替Req(切替要求信号)は、標準吸気カム15から低速カム16への切替要求を示すタイミング信号である。
ECU3は切替要求信号を監視しており、切替要求信号の電圧レベルの変化に基づいて標準排気カム26から早開カム25への切替要求が生じたことを認識する。図10の例においてECU3は、HレベルからLレベルへの立ち下がりタイミング(時刻t31)で切替要求があったことを認識する。
標準排気カム26から早開カム25への切替要求を認識すると、ECU3は、各気筒#1〜#3を順に休止状態にさせる。このため、ECU3は、タイミング信号IN−CAM1xに基づいて次周期の吸気制御開始タイミングであることを認識し(時刻t32)、タイミング信号IN−CAM3xに基づいて、第1気筒#1の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55、第2気筒#2の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55、第3気筒#3の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55を順次通電状態にする。これにより、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3については、ロッカーアーム51が揺動しても吸気バルブV1は閉弁状態で維持される。
その後、第1気筒#1の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55、第2気筒#2の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55、第3気筒#3の吸気バルブV1に対応する休止用電磁ソレノイド55が順次非通電状態とされて吸気バルブV1が動作状態に切り替えられる。
また、ECU3は、タイミング信号IN−CAM1xに基づいて次周期の吸気制御開始タイミングであることを認識した場合(時刻t32)には、タイミング信号EX−CAM1xに基づいて、次周期の排気制御開始タイミングを認識する。ここで、次周期の吸気制御と、次周期の排気制御とは、同一燃焼サイクルにおける吸気制御と排気制御である。
ECU3は、タイミング信号EX−CAM1xに基づいて次周期の排気制御開始タイミングであることを認識した場合(時刻t33)には、各気筒を順に休止状態にさせる。このため、ECU3は、その後のタイミング信号EX−CAM3xに基づいて各気筒#1〜#3の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55を通電状態にする(時刻t34〜t36)。
ECU3は、時刻t36において、第1電磁ソレノイド42Aへの通電を開始する。第1電磁ソレノイド42Aへの通電により、第1切替ピン41Aが下方へ移動して下端部が排気側スライド溝23の第1スライド溝に嵌合する。これにより、第1スライド溝に沿って排気側二重カム軸22の外側カム軸のスライド移動が開始され、すなわちカム角θ13からθ14までの角度範囲でスライド移動が開始され、排気カム21とロッカーローラ51Aの相対位置が変化する。それまでのロッカーローラ51Aと標準排気カム26の当接状態から、ロッカーローラ51Aの一部が早開カム25上へ位置するように排気カム21が移動される。
ここで、図6(B)で説明したように、カム角θ13からθ14までの角度範囲では、標準排気カム26のカムリフト量の方が、早開カム25のカムリフト量の方がよりも大きい。すなわち、早開カム25は標準排気カム26よりも低い位置(回転中心に近い位置)にある。このため、標準排気カム26のカム面と早開カム25のカム面との段差は障害にならず、排気カム21を円滑にスライド移動させることができる。そして、各気筒が備える排気バルブV2の開閉動作が停止されているため、ロッカーローラ51Aが標準排気カム26と早開カム25の段差を落下しても、ロッカーアーム51がブラケット52と共に上下方向へ移動してロッカーアーム51の揺動が吸収される。その結果、異音の発生を抑制しつつカムを切り替えることができる。
なお、図6(B)から判るように、第2気筒#2及び第3気筒#3の排気カム21は、カム角θ13からθ14までの角度範囲においてカムリフト量が0である。すなわち、排気カム21のベース円がロッカーローラ51Aに当接している。このため、第2気筒#2及び第3気筒#3の排気カム21については、カム角θ14までにロッカーローラ51Aの少なくも一部が早開カム25上へ位置していれば、早開カム25へ円滑に切り替えることができる。
図10に示すように、その後は、時刻t37で第1気筒#1の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされて排気バルブV2が動作状態に切り替えられるが、この時点においてロッカーローラ51Aの少なくとも一部が早開カム25の上に位置している。これにより、第1気筒#1の排気バルブV2は、早開カム25のカムプロフィールに従って円滑に開閉動作が開始される。
その後、時刻t38で第2気筒#2の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされ、時刻t39で第3気筒#3の排気バルブV2に対応する休止用電磁ソレノイド55が非通電状態とされ、各気筒#2,#3が備える排気バルブV2が動作状態に切り替えられる。これらの気筒#2,#3についてもロッカーローラ51Aの少なくとも一部が早開カム25の上に位置しているため、排気バルブV2は、早開カム25のカムプロフィールに従って円滑に開閉動作が開始される。
上記した標準排気カム26から早開カム25への切替制御においては、排気バルブV2の動作を停止させる場合において、それよりも前に実行される、同一燃焼サイクルの吸気バルブV1の動作を適切に停止することができる。すなわち、排気バルブV1を停止する燃焼サイクルにおいて、吸気バルブV1が動作して吸気がされてしまうことを適切に防止することができる。これにより、吸気した空気が燃焼室に残ったままでピストンを動かすことがないので、エンジンの回転抵抗の増加を防止でき、燃費の悪化を防止できる。また、吸気された空気が燃焼室から排気されずに、次の燃焼サイクルの吸気工程が実行されることがないので、次の燃焼サイクルの吸気工程において、吸気しようとする空気と、燃焼室内から吸気側に逃げようとする空気とが衝突することがなく、異音の発生等を適切に防止することができる。
以上説明したように、本実施形態のエンジン100では、エンジン100の運転状態に応じて吸気カム11や排気カム21が備える一対のカムを選択的に切り替えるカム切替機構1を備えている。また、エンジン100の各気筒には、吸排気バルブV1,V2の開閉動作を停止させることで、気筒を休止させる気筒休止機構2が設けられている。
吸気カム11が備える標準吸気カム15や排気カム21が備える早開カム25(第1カム)、及び、吸気カム11が備える低速カム16や排気カム21が備える標準排気カム26(第2カム)は、標準吸気カム15及び早開カム25のバルブリフト量が低速カム16及び標準排気カム26のバルブリフト量よりも大きい第1カム角度範囲と、低速カム16及び標準排気カム26のバルブリフト量が標準吸気カム15及び早開カム25のバルブリフト量よりも大きい第2カム角度範囲が形成されるように、それぞれのカムプロフィールが定められている。
標準吸気カム15や早開カム25から低速カム16や標準排気カム26へ切り替える際は、気筒休止機構2とECU3の組(気筒休止手段)によって吸排気バルブV1,V2の開閉動作を停止させると共に、カム切替機構1とECU3の組(カム切替手段)による外側カム軸32のスライド移動を一の気筒に対応する第1カム及び第2カムについての第1カム角度範囲内であって、他の気筒に対応する第1カム及び第2カムのバルブリフト量がゼロである範囲内で開始させ、低速カム16や標準排気カム26から標準吸気カム15や早開カム25へ切り替える際は、気筒休止機構2とECU3の組によって吸排気バルブV1,V2の開閉動作を停止させると共に、カム切替機構1とECU3の組による外側カム軸32のスライド移動を一の気筒に対応する第1カム及び第2カムについての第2カム角度範囲内であって、他の気筒に対応する第1カム及び第2カムのバルブリフト量がゼロである範囲内で開始させている。
これにより、標準吸気カム15と低速カム16の段差や早開カム25と標準排気カム26の段差に影響を受けることなく吸気カム11や排気カム21をスライド移動させることができる。その結果、吸気カム11や排気カム21において、ベース円の角度範囲がカムの切り替えに対して不足していてもカムの切り替えを行うことができる。
また、上記実施形態では、吸気カム11を切り替える際に、吸気バルブV1だけでなく、同一燃焼サイクル内の排気バルブV2の動作を停止させるようにしたので、燃焼サイクルにおいて吸気がされていないのに、排気バルブV2が開いてしまって、排気下流側から排気ガスが燃焼室内に逆流してしまうことを防ぐことができる。このため、エンジンに対して回転抵抗が発生してしまうことを防止でき、燃費の悪化を防止できる。
また、上記実施形態では、排気カム21を切り替える際に、同一燃焼サイクルに関わる吸気バルブV1と排気バルブV2との動作を停止させるようにしたので、吸気した空気が排気されずに燃焼室に残ったままでピストンを動かすことがないので、エンジンの回転抵抗の増加を防止でき、燃費の悪化を防止できる。また、吸気された空気が燃焼室から排気されずに、次の燃焼サイクルの吸気工程が実行されることがないので、次の燃焼サイクルの吸気工程において、吸気しようとする空気と、燃焼室内から吸気側に逃げようとする空気とが衝突することがなく、異音の発生等を適切に防止することができる。
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
例えば、上記実施形態では、一の気筒に対応する第1カム及び第2カムの第1カム角度範囲内(第2カム角度範囲内)において、他の気筒に対応する第1カム及び第2カムのバルブリフト量がゼロでないカム角度が存在するようなカムプロファイルとなっていたために、第1カム角度範囲(第2カム角度範囲)よりも狭い範囲内において外側カム軸のスライド移動を開始するようにしていたが、一の気筒に対応する第1カム及び第2カムの第1カム角度範囲内(第2カム角度範囲内)において、他の気筒に対応する第1カム及び第2カムのバルブリフト量が常にゼロである場合には、第1カム角度範囲内(第2カム角度範囲内)のいずれかにおいて、外側カム軸のスライド移動を開始するようにすることができる。
また、エンジン100は複数気筒を有していれば3気筒に限定されない。カムプロフィールの関係でベース円の角度範囲がカムの切り替えに対して不足している構成であれば、本発明を適用できる。また、気筒休止機構2は、実施形態の例に限定されるものではなく、各気筒を休止できるものであれば、本発明を適用できる。
また、上記実施形態では、内側カム軸31の外周に軸方向に移動可能な外側カム軸32を備えた二重カム軸としていたが、本発明はこれに限られず、第1カム及び第2カムが一体回転可能に設けられ、且つ軸方向に移動可能なカム軸であれば、任意の構造でよい。