JP2017122057A - 抗老化剤 - Google Patents
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Abstract
Description
以上のようなことから、生体内のプロテアソーム活性を促進し、種々の疾病を予防および改善する組成物が開発されている。本出願人は、ダイズサポニンBグループがプロテアソームを活性化して、糖化したタンパク質を除去する作用を見いだして特許出願した(特許文献1)。
D−ピニトールはイノシトールの一種で、マメ科の植物に存在する天然の物質である。
また、ピニトールは植物性インスリン様物質とも呼ばれ、インスリン抵抗性を高め、血糖低下作用を有し、糖尿病(特許文献2、3)や糖尿病性網膜症の改善、肝機能の向上に効果がある(特許文献4)ことが知られている。また特許文献5にはピニトールを有効成分とする骨代謝性疾患の予防・治療剤が、特許文献6、7にはピニトールを含む抗肥満用ダイエット食品が記載されている。ピニトールを多く含有する植物としては、大豆、ルイボス、クローバー、アイスプラントなどが知られている。
そして特許文献8には大豆から高濃度でピニトールを得るための方法が記載されている。また特許文献9に食用のアイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum)にピニトールを蓄積させる方法が記載されている。
(1)D−ピニトールを有効成分とする抗老化剤。
(2)D−ピニトールを有効成分とする皮膚細胞の抗老化剤。
(3)外用剤である(2)の抗老化剤。
(4)D−ピニトールを有効成分とするインターロイキン-1 レセプター・アンタゴニスト(Interleukin-1 Receptor Antagonist:IL−1RA)合成促進剤。
(5)D−ピニトールを有効成分とするエラスチン合成促進剤。
(6)D−ピニトールを有効成分とするコラーゲン合成促進剤。
(7)D−ピニトールを有効成分とする終末糖化産物受容体−1(Advanced glycation end product receptor 1:AGE−R1)の合成促進剤。
(8)D−ピニトールを有効成分とする終末糖化産物受容体(Receptor for Advanced glycation end product:RAGE)の合成抑制剤。
D−ピニトールは、皮膚細胞に作用しIL−1RA合成、エラスチン合成、コラーゲン合成を促進し、皮膚の弾力性や柔軟性を改善する。また老化タンパク質の分解や排出に関わる糖化タンパク質結合レセプター1の合成を促進するため、老化タンパク質が細胞内に蓄積されずに排出が促進され、その結果細胞の老化の進行を抑制するため、抗老化作用を示す。
D−ピニトールは、下記の一般式1であらわされる構造の水溶性糖アルコールであり、イノシトール作用を有していることが知られている。
本発明に用いるD−ピニトールは、大豆やアイスプラント、マツ、エゾウコギ、イナゴマメ(ローカストビーンガム)、ブーゲンビリアの葉などから抽出することができる。イナゴマメの莢から抽出したシロップが市販されている。本発明の剤に用いる場合は、精製物であってもよく、さらに前記植物抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又は粗精製物であっても使用可能である。好ましくはピニトール濃度10%以上に濃縮したものであれば良い。90%以上に精製したものが特に好ましい。
ピニトールの精製は、糖アルコールの精製に採用される公知の生成方法が使用できる。例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。
なお、得られた抽出液はそのままでも本発明の抗老化剤及び皮膚細胞や線維芽細胞のIL−1RA合成促進剤・エラスチン合成促進剤・コラーゲン合成促進剤・AGE−R1合成促進剤・RAGE合成抑制剤の有効成分として使用することができる。濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
精製D−ピニトールは生化学試薬としても販売されており、これを入手して使用してもよい。
〔試験例1〕D−ピニトールの皮膚細胞増殖試験
(1)試薬
試験に用いた試薬は以下の通りである。
D−ピニトール(Sigma Aldrich)
MTT(和光純薬工業)
2−プロパノール(関東化学)
新生児由来ヒト表皮角化細胞(Normal Human Epidermal Keratinocyte、以下NHEKという)
培地(継代培養及び評価時):Epilife(登録商標)60μMカルシウム含有(Thermo Fischer Scientific)
継代4代目に相当するNHEK細胞懸濁液を2.0×105cells/wellの密度で平板96ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。24時間後、培養液を除去し、0.0125、0.05mg/ml D−pinitol入り培地に交換し、37℃、5%CO2に設定したインキュベーターで培養した。24時間後、Epilifeで調製したMTT(0.3mg/ml)溶液を100μlずつ入れ、3時間後に、MTT溶液を除去し、PBS(−)で洗浄し、2−プロパノールを100μlずつ入れ、プレートミキサーにて5分振盪させ、プレートリーダー(SPECTRA MAX190、モレキュラーデバイス)にて570nmの吸光度で測定した。
各群におけるO.D.値(570nm)を細胞生存量とみなし、その細胞生存量に基づいて、下記式により細胞生存率を求めた。
細胞生存率(%)=(A/コントロール)×100(AはD−ピニトールを添加したウェルのO.D.値。コントロールは、D−ピニトール無添加ウェルのO.D.値。)
各濃度の6ウェルの平均細胞数と標準偏差を図1に示す。
D−ピニトール0.0125mg/ml、0.05mg/ml添加で、無添加のコントロールと比べ約20%の細胞増殖率を示した(図1)。
D−ピニトールには細胞増殖効果があることが認められた。
(1)試薬
D−ピニトール(Sigma Aldrich)
Human IL−1RA ELISA kit(R&D systems)
Tissue Protein Extraction Reagent(Thermo Fischer Scientific)
試験1に同じ
継代4代目に相当するNHEK細胞懸濁液を1.2×105cells/wellの密度で6ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO2に設定のインキュベーターで培養した。培養2日後、培養液を除去し、D−ピニトール0.025mg/ml、0.1mg/mlとなるように調製した培養液を2ml/well添加し、37℃、5%CO2に設定のインキュベーターで培養した。24時間後、細胞培養上清を回収し―80℃で凍結保存した。なお、培養上清中LDHを検出キットにより測定し、細胞傷害性の指標とした。
6ウェルプレートをPBS(−)にて洗浄し、Tissue Protein Extraction Reagent 200μlを入れ、4℃、30分間振盪しタンパク質を抽出した。抽出したタンパク質をELISA kitを用いてIL−1RA産生量を測定し、コントロールに対するIL−1RA合成促進を評価した。ELISA測定法は、ELISA kitに添付の説明書に従って行った。
各濃度n=3で測定した平均値を図2に示す。
IL−1RAは、ケラチノサイトの増殖を濃度依存性で促進する作用を有している。したがって、皮膚細胞におけるIL−1RAの増加は、皮膚細胞の再生を活性化しているものであることが試験1、試験2の結果から明らかとなった。すなわちIL−1RAは、皮膚の老化に対して抵抗的に作用して、新たな細胞亢進に働くものである。このことは、以下に示す試験結果から、皮膚細胞の老化に対して抵抗的に作用する各種タンパク質の合成が促進することにより確認できる。
(1)試薬
D−ピニトール(Sigma Aldrich)
Trizol(Thermo Fischer Scientific)
PrimeScript(商品名)RT reagent Kit(タカラバイオ)
SYBR(登録商標)Premix Ex TaqII(タカラバイオ)
正常ヒト皮膚線維芽細胞(Normal Human Dermal Fibroblasts、以下NHDFという)
培養(継代培養及び評価時):DMEM,high glucose(Thermo Fischer Scientific)、Fetal Bovine serum (Thermo Fischer Scientific)
継代7代目に相当するNHDF細胞懸濁液を7000cells/wellの密度で6ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO2に調整したインキュベーターで培養した。培養4日後、培養液を除去し、レチノイン酸0.001%、D−ピニトール0.2%となるように調製した培養液を2ml/well添加し、37℃、5%CO2のインキュベーター中で培養した。0、1、2、4、8、24時間後、Trizolで全RNAを抽出した。RNA抽出は、TRlsol Reagentに添付の説明書に従って行った。なおレチノイン酸は皮膚細胞の老化を抑制し、タイプ1型コラーゲン、エラスチン、AGE−R1、RAGEを増加させることが判明し、動物試験で抗老化作用が確認されている化合物である。本試験の陽性対照として用いた。
抽出したRNAをPrimeScript RT reagent Kit (タカラバイオ)によりcDNA合成し、SYBR Premix Ex Taq II (Takara)を用いてタイプ1型コラーゲン、エラスチン、AGE−R1のリアルタイムPCRを行い、各タンパク質の合成促進を評価した。
各群、各濃度n=3で測定した平均値±標準偏差 を図3、4、5に示す。
D−ピニトールの添加2時間後に、タイプ1型コラーゲン(図3)、エラスチン(図4)、AGE−R1(図5)遺伝子発現が認められたことから、D−ピニトールによってこれらのタンパク質の合成が促進されることが確認できた。
(1)試薬
D−ピニトール(Sigma Aldrich)
ヒトRAGE測定ELISAキット(Ray Biotech)
T−PER Tissue Protein Extraction Reagent(Thermo Fischer Scientific)
正常ヒト皮膚線維芽細胞(Normal Human Dermal Fibroblasts、以下NHDFという)
培養(継代培養及び評価時):DMEM,high glucose(Thermo Fischer Scientific)、Fetal Bovine serum(Thermo Fischer Scientific)
継代4代目に相当するNHDF細胞懸濁液を1.0×105cells/wellの密度で6ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO2の条件に設定のインキュベーターで培養した。培養3日後、培養液を除去し、1ng/ml TNF−αと共にD−pinitolを0、0.05、0.2%となるように調製した培養液を2ml/well添加し、37℃、5%CO2に設定のインキュベーターで培養した。
24時間後、6ウェルプレートをPBS(−)にて洗浄し、T−PER Tissue Protein Extraction Reagentを200μl入れ、4℃、30分間振盪しタンパク質を抽出した。抽出したタンパク質をELISA kitを用いて、定法に従いRAGE発現量を測定し、コントロールに対するRAGE発現抑制を評価した。
各群、各濃度n=3で測定した平均値±標準偏差を図6に示す。図6に示すように、D−ピニトール 0.05、0.2%での添加でRAGEの合成が抑制された。AGEと反応して炎症を誘発するRAGEの合成をピニトールが抑制することが明らかとなった。
試験1〜4の結果から、D−ピニトールは老化に係るマクロファージなどのファゴサイトーシスによってAGEの分解を促進するレセプターであるAGE−R1を増加させることから、糖化タンパク質の蓄積を抑制して抗老化作用を示すことが予想される。また皮膚細胞の弾力性や柔軟性を改善するタイプ1型コラーゲン及びエラスチン合成を促進することから皮膚細胞の老化を抑制するものと考えられた。また表皮角化細胞を増殖させる作用とIL−1RA合成を促進する作用を有していることから、タイプ1型コラーゲン及びエラスチン合成促進とあいまって、皮膚の弾力性を回復させることが予想された。さらにRAGEを抑制することから、老化にともなって増加するAGEとRAGEの反応によって誘発される炎症反応が抑制されるため、炎症反応に由来する酸化が抑制され、老化が抑制されることが期待される。
エラスチンとコラーゲンの併用によって、キメの体積率、キメ個数、シワ体積率、シワ個数、肌質改善効果が認められ、その効果はコラーゲン単独の場合よりも効果があること(論文「エラスチン・コラーゲン併用摂取による肌質改善効果の検証」雑誌「新薬と臨床J.New Rem.& Clin.Vol.60No.3,2011、」第217〜228頁 参照)が知られている。
また、これまでの研究の結果(榎本有希子外7名著 論文「角層中IL−1RAと皮膚老化の関連性」、2015.10発行、加齢皮膚医学セミナー 第10巻 第61〜65頁参照)、IL−1RA量は皮膚の弾力性と正の相関が認められ、皮膚の弾力性は真皮のコラーゲンやエラスチンなどの細胞外マトリクスの減少や皮膚基底膜が損なわれて低下しており、IL−1RAは表皮で細胞増殖や呼吸、エネルギー産生などの細胞活性・細胞恒常性維持へ関与すると推測している。
本発明の試験結果及びこれまでの知見を総合すると、本発明に係るD−ピニトールが、エラスチン合成促進、コラーゲン合成促進、IL−1RA合成促進、AGE−R1の合成促進の各作用を昂進することは、総合して優れた皮膚賦活性を示し、抗老化、皮膚細胞の抗老化に有用であることを裏付けるものである。外用剤として皮膚に投与することで皮膚の老化を抑制するため、スキンケア剤として有用である。
下記組成の外用剤を常法により製造した。
(処方例1:化粧水) (質量%)
1.D−ピニトール 0.2
2.グリセリン 5
3.1,3ブチレングリコール 5
4.ジグリセリン 3
5.ペンチレングリコール 2
6.カルボキシメチルデキストランNa 0.1
7.PH調整剤 適量
9.精製水 残余
(処方例2:乳液) (質量%)
1.グリセリン 8
2.1.3−ブチレングリコール 5
3.1,2−ペンタンジオール 1
4.D−ピニトール 0.1
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.キサンタンガム 0.08
8.スクワラン 3
9.ジメチコン 1
10.ポリソルベート60 0.8
11.ステアリン酸ソルビタン 0.3
12.精製水 残余
Claims (8)
- D−ピニトールを有効成分とする抗老化剤。
- D−ピニトールを有効成分とする皮膚細胞の抗老化剤。
- 外用剤である請求項2の抗老化剤。
- D−ピニトールを有効成分とするインターロイキン-1 レセプター・アンタゴニスト(Interleukin-1 Receptor Antagonist:IL−1RA)合成促進剤。
- D−ピニトールを有効成分とするエラスチン合成促進剤。
- D−ピニトールを有効成分とするコラーゲン合成促進剤。
- D−ピニトールを有効成分とする終末糖化産物受容体−1(Advanced glycation end product receptor 1:AGE−R1)の合成促進剤。
- D−ピニトールを有効成分とする終末糖化産物受容体(Receptor for Advanced glycation end product:RAGE)の合成抑制剤。
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JP7144878B1 (ja) | 2021-04-19 | 2022-09-30 | 一丸ファルコス株式会社 | エラスチン産生促進のための剤 |
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