JP2017119646A - 性ホルモン分泌促進剤及び生殖細胞増殖促進剤 - Google Patents

性ホルモン分泌促進剤及び生殖細胞増殖促進剤 Download PDF

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Abstract

【課題】性ホルモンの分泌を促進させ、かつ症状の改善や予防を必要とする者等に低負担な性ホルモン分泌促進剤の提供。【解決手段】臍帯由来幹細胞を培養することによって得られた臍帯由来幹細胞培養上清を含み、性ホルモンの分泌を促進する性ホルモン分泌促進剤。【選択図】なし

Description

本発明は、性ホルモン分泌促進剤及び生殖細胞増殖促進剤に関する。
現在、認知症、脳梗塞、脱毛、歯周病、不妊、勃起不全(Erectile Dysfunction、以下、「ED」という)など、加齢に伴う症状(加齢性症状)の治療や予防に関心が集中してきている。加齢性症状等の改善や予防としては、体内でのテストステロンやエストロゲンなどの性ホルモン分泌の促進が有効であることが以前から知られており、例えば、これらの性ホルモンの投与を行う抗加齢療法、いわゆるアンチエイジング療法が行われている。
一方、従来の医療方法では治療困難な疾病に対する汎用的な代替技術として、幹細胞を利用した治療方法が注目されている。幹細胞を用いた治療方法では、多くの疾患を対象とすることができ、今までに、胚性幹細胞(ES細胞)、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)、及び体性幹細胞を初めとする種々の幹細胞が報告されている。
また、上田らは、歯髄由来の幹細胞の培養上清、すなわち幹細胞自体を使用するのではなく、幹細胞が産生する種々の生体因子、例えば、各種の成長因子を使用する方法を報告している(例えば特許文献1)。
また性ホルモンについては、骨髄由来の幹細胞の培養上清を用いた、動物(マウス)における卵母細胞の活性化(例えば非特許文献1)や卵母細胞からの卵巣ホルモン分泌の促進効果(例えば非特許文献2)が報告されている。さらに、男性ホルモンと制癌効果に一定の正の相関があることも報告されている(例えば非特許文献3)。
国際公開第2011/118795号
Ling他, Braz. J. Med. Biol. Res. Vol.41, 978-985, (2008) Feng他, Braz. J. Med. Biol. Res. Vol.42, 506-514, (2009) 丁他, Biotherapy. Vol.24(1), 47-51, (2010)
しかし、加齢性症状等の改善や予防において、テストステロンやエストロゲンなどの性ホルモン投与による方法は、症状の改善効果や予防効果の程度が低いものであったり、反復投与によって効果が低下したり、長期間の投与が必要であるなど、未だに決定的な治療法とは言い難いのが実情である。
また、加齢性症状等の改善や予防を必要とする者の数が多いために、その者だけでなく症状の改善や予防を行う者にも低負担な症状の改善又は予防方法であることが要求される。
上記のような加齢性症状等の問題に対し、ES細胞及び体性幹細胞を用いた体内での性ホルモン分泌促進や生殖細胞の増殖促進などによる症状の改善方法も考えられるが、これらを用いる方法は倫理性や安全性に問題を抱えており、さらに自己の細胞を用いる必要があるという点で、有効成分の供給性に課題を有する。
また、iPS細胞を用いる方法は、iPS細胞の悪性腫瘍(胚細胞癌)化のリスクを排除できないことやiPS細胞としての樹立に手間がかかるなど、症状の改善等に使用するために必要となる細胞の調製と、その管理に負担が大きいのが実情である。
このように幹細胞そのものを有効成分として症状の改善等に用いることには、避けがたいデメリットが存在する。
これに対し、特許文献1及び非特許文献1及び2に示されるように、幹細胞の培養上清を用いる方法は、症状の改善や予防を必要とする者等への負担が少なく、倫理上の問題や癌化などの問題も克服できる。
しかし、特許文献1は、性ホルモンの分泌促進や生殖細胞の増殖に関しては何ら検討されていない。
また、非特許文献1及び2では、幹細胞培養上清によって、性ホルモンの分泌が促されているものを示すものであるが、骨髄由来以外の幹細胞培養上清での効果についての検討はなされていない。
このように、性ホルモンの分泌を本質的に促進させ、かつ症状の改善や予防を必要とする者等に低負担な薬剤が望まれていた。
以上の状況に鑑み、本発明の課題は、性ホルモンの分泌を促進させ、かつ症状の改善や予防を必要とする者等に低負担な性ホルモン分泌促進剤、及び生殖細胞の増殖を促進させ、かつ症状の改善や予防を必要とする者等に低負担な生殖細胞増殖促進剤を提供することにある。
本発明は以下の態様を含む。
[1]臍帯由来幹細胞を培養することによって得られた臍帯由来幹細胞培養上清を含み、性ホルモンの分泌を促進する性ホルモン分泌促進剤。
[2]前記臍帯由来幹細胞が、ワルトンゼリー(Wharton's Jelly)由来である[1]に記載の性ホルモン分泌促進剤。
[3]癌、認知症、肝硬変、アルツハイマー病、パーキンソン病、関節リュウマチ、脳梗塞、心筋梗塞、アトピー性皮膚炎、花粉症、しわの増加、白髪、脱毛、老眼、近眼、ドライアイ、ドライマウス、歯周病、筋力低下、骨粗鬆症、糖尿病、更年期障害、不妊及び勃起不全から選ばれる少なくとも一つの症状の改善又は予防に用いられる[1]又は[2]に記載の性ホルモン分泌促進剤。
[4]前記症状が、癌、骨粗鬆症、認知症、アルツハイマー病、更年期障害、糖尿病及び心筋梗塞から選ばれる少なくとも一つである[3]に記載の性ホルモン分泌促進剤。
[5]前記性ホルモンが精巣ホルモンである[1]〜[4]のいずれか1つに記載の性ホルモン分泌促進剤。
[6]前記精巣ホルモンがテストステロン及びデヒドロエピアンドロステロンサルフェートから選ばれる少なくとも1つである[5]に記載の性ホルモン分泌促進剤。
[7]前記臍帯由来幹細胞培養上清を、注射剤、経口剤、点鼻剤、経肺投与剤、点眼剤又は塗布剤の形態で用いる[1]〜[6]のいずれか1つに記載の性ホルモン分泌促進剤。
[8]臍帯由来幹細胞を培養することによって得られた臍帯由来幹細胞培養上清を含み、生殖細胞の増殖を促進する生殖細胞増殖促進剤。
[9]前記臍帯由来幹細胞が、ワルトンゼリー(Wharton's Jelly)由来である[8]に記載の生殖細胞増殖促進剤。
[10]癌、認知症、肝硬変、アルツハイマー病、パーキンソン病、関節リュウマチ、脳梗塞、心筋梗塞、アトピー性皮膚炎、花粉症、しわの増加、白髪、脱毛、老眼、近眼、ドライアイ、ドライマウス、歯周病、筋力低下、骨粗鬆症、糖尿病、更年期障害、不妊及び勃起不全から選ばれる少なくとも一つの症状の改善又は予防に用いられる[8]又は[9]に記載の生殖細胞増殖促進剤。
[11]前記症状が、癌、骨粗鬆症、認知症、アルツハイマー病、更年期障害、糖尿病及び心筋梗塞から選ばれる少なくとも一つである[10]に記載の生殖細胞増殖促進剤。
[12]前記生殖細胞が精巣細胞である[8]〜[11]のいずれか1つに記載の生殖細胞増殖促進剤。
[13]前記臍帯由来幹細胞培養上清を、注射剤、経口剤、点鼻剤、経肺投与剤、点眼剤又は塗布剤の形態で用いる[8]〜[12]のいずれか1つに記載の生殖細胞増殖促進剤。
本発明によれば、性ホルモンの分泌を促進させ、かつ症状の改善や予防を必要とする者等に低負担な性ホルモン分泌促進剤、及び生殖細胞の増殖を促進させ、かつ症状の改善や予防を必要とする者等に低負担な生殖細胞増殖促進剤を提供することができる。
臍帯由来幹細胞培養上清、歯髄由来幹細胞培養上清、骨髄由来幹細胞培養上清及び脂肪由来幹細胞培養上清の、精巣細胞の増殖に与える影響を調査した結果を示す図である。 臍帯由来幹細胞培養上清、歯髄由来幹細胞培養上清、骨髄由来幹細胞培養上清及び脂肪由来幹細胞培養上清の、精巣細胞から分泌されるテストステロンの精巣細胞あたりの分泌量に与える影響を調査した結果を示す図である。 臍帯由来幹細胞培養上清、歯髄由来幹細胞培養上清、骨髄由来幹細胞培養上清及び脂肪由来幹細胞培養上清の、精巣細胞から分泌されるデヒドロエピアンドロステロンサルフェートの精巣細胞あたりの分泌量に与える影響を調査した結果を示す図である。
≪性ホルモン分泌促進剤≫
本開示の第1の態様に係る性ホルモン分泌促進剤は、臍帯由来幹細胞を培養することによって得られた臍帯由来幹細胞培養上清を有効成分として含み、性ホルモンの分泌を促進する。なお、以下、上記の第1の態様、後述する第2の態様に係る生殖細胞増殖促進剤を総称して「本開示の促進剤」、あるいは単に「促進剤」と称することがある。
性ホルモン分泌促進とは、動物などの固体、動物が有する組織及び動物由来の組織から分離された細胞の性ホルモンの分泌を促進することを意味する。動物としては、哺乳類が好ましい。
また、加齢性症状を有する状態から改善する効果、又は加齢性症状を予防する効果を、抗加齢効果と称することがある。
本開示の性ホルモンの分泌を促進する対象となる細胞は特に限定されないが、性ホルモンの分泌量の点から、生殖細胞であることが好ましい。また、生殖細胞としては、卵巣細胞及び精巣細胞が好ましく、さらに好ましくは精巣細胞である。
本開示の性ホルモン分泌促進剤は、臍帯由来幹細胞培養上清を含むことによって、体内の性ホルモンの分泌を促進する。性ホルモンとしては、アンドロゲン(精巣ホルモン)としてのテストステロン及びデヒドロエピアンドロステロンサルフェート、エストロゲンとしてのエストラジオール、エストリオール、エストロン等が挙げられ、これらの中でも精巣ホルモンの分泌を促進させやすく、精巣ホルモンの中でもテストステロン及びデヒドロエピアンドロステロンサルフェートから選ばれる少なくとも1つの分泌を促進させやすく、さらにこれらの中でもテストステロンの分泌を向上させやすい。
性ホルモンは、例えば、ヒトや動物中の血中あるいは尿中の性ホルモンを、公知の競合法により比色定量するキットを用いることにより測定することができる。
(臍帯由来幹細胞培養上清)
本開示における臍帯由来幹細胞培養上清は、臍帯から得られる幹細胞を培養して得られた培養上清を意味する。また、特に、「未処理の幹細胞培養上清」と表す場合は、幹細胞を培養して得られた培養上清そのもの、あるいは当該培養上清を変質したり体積変化させたりしないで保存したものをいい、臍帯由来幹細胞培養上清の原液と称する場合がある。ここで、処理とは、未処理の臍帯由来幹細胞培養上清を、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩等の処理を行うことをいう。
本明細書中、幹細胞は、哺乳類の間葉系細胞のことをさし、間葉系細胞は骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞等、間葉系に属する細胞への分化能を持つとされる細胞をいう。本明細書中、特定の由来名が記載されている幹細胞は、その組織から分離された幹細胞であることを示す。例えば「臍帯由来幹細胞」であれば、臍帯から分離された幹細胞であることを示す。
本明細書における「培養上清」とは、幹細胞が増殖し得る条件の下、幹細胞が増殖し得る培養液で幹細胞を培養して得られた培養液(培養後の培養液)から幹細胞を除去したものを意味するが、かかる培養上清から、例えば、残存培地成分(培養前の培養液の成分のうち、培養後の培養液中に残存している成分)、培養液の水分などの、本開示における性ホルモン分泌の促進又は生殖細胞等の増殖促進に寄与しない成分の少なくとも一部をさらに除去したもの(濃縮したもの)あるいは培養液の水分を凍結乾燥したものも、便宜上、本明細書における幹細胞の培養上清に含まれる。なお、簡便性の観点からは、培養後の培養液から幹細胞を除去したものをそのまま培養上清として用いることが好ましい。
また、「臍帯由来幹細胞培養上清」は臍帯由来幹細胞を培養して得られ、かつ細胞成分を含まない培養液と定義される。上記の促進剤は臍帯由来幹細胞培養上清を有効成分として含むものであるが、促進剤全体としては細胞(細胞の種類は問わない)が含まれていてもよいし、含まれなくてもよい。しかしながら、本開示の促進剤は、上記の幹細胞又は他の細胞を有効成分として含む促進剤、組成物、医薬組成物、治療剤、予防剤等とは明確に区別される。また、臍帯由来幹細胞培養上清は、例えば培養後に細胞成分を分離除去することによって、本開示の促進剤等に使用可能な培養上清を得ることができる。具体的には、各種処理(例えば、遠心処理、透析及び膜分離等)を適宜施すことで、細胞成分を含まない培養上清を調製することができる。
本開示における臍帯由来幹細胞培養上清が性ホルモン分泌を促進させる機構あるいは生殖細胞の増殖を促進させる機構は不明であるが、本発明者は、以下のように考えている。
臍帯由来幹細胞などの幹細胞は、特表2007−521008号公報に示されるように、培養液中に、サイトカインなどの多くの種類の因子を分泌していることが知られている。従って、第1の態様に示す生殖細胞等からの性ホルモン分泌の促進において、臍帯由来幹細胞上清中の多くの種類の因子が関与するものと推測できる。
一方、臍帯由来幹細胞培養上清は、歯髄、骨髄及び脂肪由来の幹細胞培養上清よりも、性ホルモンの分泌を促進させる。これは、幹細胞の由来の違いによって、生殖細胞等を活性化させるための因子の種類やその含有量が異なることによるものと考えられる。すなわち、臍帯由来幹細胞上清は、生殖細胞等からの性ホルモンの分泌を促すのに特に適切な種類の因子を適切な量で含んでいると言える。
また、国際公開第2004/092357号に示されるように、生殖細胞の増殖には、多くの因子が関与することが知られている。このため、第2の態様に示す生殖細胞の増殖においても、臍帯由来幹細胞培養上清は、生殖細胞の増殖を促すのに特に適切な種類の因子を適切な量で含んでいると言える。
性ホルモンにおいては、Vemeulenらの文献[Clin. Endocrinol. Metab. Vol.61,946(1996)]に示されるように、加齢に伴い、体内からの分泌量が減少することに加えて、性ホルモン結合蛋白(SHBG)の発現量が増加するので、加齢につれてますます体内組織に働く有効な性ホルモンが減少することが知られている。これに対し、臍帯由来幹細胞培養上清は、生殖細胞あたりの性ホルモンの分泌を促進させるだけでなく、生殖細胞自体の増殖も促進させるので、体内全体としての性ホルモンの存在量を顕著に向上させることができる。また、後述する実施例に示すように、臍帯由来幹細胞培養上清は、そのわずかな投与回数で、男性機能を復活させている。従って、臍帯由来幹細胞培養上清の投与によって、体内の生殖細胞が活性化された後は、体内で働く性ホルモン量が減少することなく、生殖細胞が性ホルモンを活発に分泌し続けるものと推測できる。このため、臍帯由来幹細胞培養上清の投与は、性ホルモンそのものの投与とは明らかに異なる量の性ホルモンを長時間体内に維持させるものと推測できる。
また、上述のように、臍帯由来幹細胞培養上清の投与によって、生殖細胞自体を増殖させることができるので、本開示の促進剤の効果は、“準根治的”又は“根治的”と言える。
臍帯由来幹細胞培養上清の調製においては、これを含む促進剤を適用する者自身の幹細胞を用いなければならないという制限はない。加えて、ヒト以外の哺乳類(ウシ、ウマ、ブタ、サル及び羊など)から得られた臍帯由来の幹細胞の培養上清(非ヒト由来の臍帯由来幹細胞培養上清)は、ヒト及びヒト以外の前記哺乳類に対して十分な性ホルモンを分泌させる効果及び十分な生殖細胞を増殖させる効果を有する。さらに、ヒトの臍帯由来の幹細胞の培養上清(ヒト由来の臍帯由来幹細胞培養上清)は、ヒト以外の前記哺乳類に対して十分な性ホルモンを分泌させる効果及び十分な生殖細胞を増殖させる効果を有する。従って、例えば、家畜やペットの加齢に伴う症状等に対しても、前記非ヒト由来の臍帯由来幹細胞培養上清及びヒト由来の臍帯由来幹細胞培養上清のいずれも用いることができるという利点を有する。また、例えば、ブランド肉牛やサラブレッド馬のような、所望の動物の雄のテストステロン等を上昇させて生殖能力を高めることできるので、結果的に動物関連産業の発展に大きく貢献することができる。
臍帯由来幹細胞培養上清の調製に用いられる幹細胞は、哺乳類の臍帯由来幹細胞である。前記哺乳類としては、ヒト細胞との遺伝的類似性が高いこと、及び感染の危険性が低いことから、ヒト、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、及びサルからなる群から選ばれるものであることが好ましい。
また、臍帯由来幹細胞培養上清の調製に用いる臍帯由来幹細胞は、何ら外部からの遺伝子操作等をされていない単なる幹細胞であるので、腫瘍細胞とは異なり、それらから分泌されるファクターも幹細胞と同様に安全性が担保されている。
また、例えば、各症状に対する本開示の促進剤の使用においては、これらを点鼻などにより投与することで、症状の改善や予防を必要とする者の苦痛等を考慮することなく効率的に、体内の性ホルモンの分泌及び生殖細胞の増殖を促進させて、結果的に症状を改善又は予防できるという利点も有する。
本開示の促進剤は、多くの種類のサイトカイン類を含む混合物であるが、これらに含まれる臍帯由来幹細胞培養上清中のサイトカイン類を含む混合物は、臍帯由来幹細胞培養上清の一部として又は臍帯由来幹細胞培養上清全体から単離されたサイトカイン類の混合物として使用され得る。臍帯由来幹細胞培養上清から単離されたサイトカイン類の混合物中、サイトカイン類の一部を1又は複数の公知の対応するサイトカイン類で置き換えてもよい。
[臍帯由来幹細胞培養上清の調製]
<臍帯由来幹細胞の調製>
「臍帯由来幹細胞」とは、胎児と胎盤とを結ぶ臍帯中に存在する細胞であり、臍帯中に含まれ、造血幹細胞を豊富に含有する臍帯血も含む。また、管状組織である臍帯は、2本の動脈及び1本の静脈を内包するが、これらの血管の周囲にはワルトンゼリー(Wharton’s jelly、以下、WJと称す)と呼ばれる組織が存在する。本開示における臍帯由来幹細胞としては、特に限定されないが、生殖細胞等の性ホルモンの分泌能の観点から、WJ由来の幹細胞が好ましい。
臍帯由来幹細胞は、例えば、特開2012−31127号公報を参考にして、以下のように、(1)臍帯の採取、(2)酵素処理、(3)細胞培養及び(4)細胞の回収を、この順で行うことによって調製することができる。
(1)臍帯の採取
経膣分娩および帝王切開にて娩出された臍帯を回収する。臍帯血を除去した後、無菌処
理を行う。無菌処理にはポピドンヨードなどを用いることができる。臍帯をメスで切開し
開き、臍帯静脈・臍帯動脈を周囲のワルトンゼリーとともに分離する。
(2)酵素処理
分離・回収した組織をコラゲナーゼ等で処理した後、臍帯動静脈を取り除く。続いて5分間の遠心操作(5000回転/分)により臍帯由来間葉系幹細胞(UCMSC)として回収する。
(3)細胞培養
上記臍帯由来幹細胞を4ccの5体積%〜15体積%のウシ血清(calf serum、以下、「CS」ということがある。)を含有した50ユニット/ml〜150ユニット/mlの抗生物質を含有するダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium、以下、「DMEM」という。)あるいは間葉系幹細胞用培地に懸濁し、付着性細胞培養用ディッシュ、例えば12ウェル〜96ウェルディッシュに播種する。5体積%の二酸化炭素(以下、COと称する)雰囲気下、37℃に調整したインキュベーターで培養する。サブコンフルエント(培養容器の表面の約70面積%を細胞が占める状態)又はコンフルエントに達したときに細胞を0.05体積%トリプシン・EDTAにて5分間、37℃で処理する。ディッシュから剥離したUCMSC(臍帯由来間葉系幹細胞)を直径10cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種し拡大培養を行う。継代培養を繰り返し行ってもよい。例えば継代培養を1〜15回行い、必要な細胞数(例えば約1×10個/ml)まで増殖させる。以上の培養の後、細胞を回収して保存することにしてもよい(保存条件は例えば−198℃)。このように保存し、将来の骨・軟骨・神経などの疾患(特に難治性疾患)の治療に適用すれば、安全で且つ低侵襲な自己細胞による再生医療が提供できる。尚、様々なドナーから回収した細胞を臍帯由来間葉系幹細胞(UCMSC)バンクの形態で保存することにしてもよい。
(4)細胞の回収
次に、細胞を回収する。トリプシン処理等で培養容器から細胞を剥離した後、遠心処理
を施すことによって細胞を回収することができる。このようにして得られた細胞を、臍帯由来(ワルトンゼリー由来)幹細胞として次の臍帯由来(ワルトンゼリー由来)幹細胞培養上清(WJ−CM)の調製に用いることができる。なお、由来を特定しない幹細胞培養上清をCMと称することがある。
尚、基本培地としてはDMEMの他、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(ギブコ社製等)、ハムF12培地(HamF12)(シグマ社製、ギブコ社製等)、RPMI1640培地等を用いることができる。二種以上の基本培地を併用することにしてもよい。混合培地の一例として、IMDMとHamF12を等量混合した培地(例えば商品名:IMDM/HamF12(ギブコ社製)として市販される)を挙げることができる。また、培地に添加可能な成分の例として、血清(ウシ胎仔血清(fetal bovine serum又はfetal calf serum、以下、「FBS」又は「FCS」という。)、ヒト血清、羊血清等)、血清代替物(Knockout serum replacement(KSR)など)、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin、以下、「BSA」ということがある。)、ペニシリン、ストレプトマイシンその他の抗生物質、各種ビタミン、各種ミネラルを挙げることができる。
上記の基本培地は、後述する細胞選別用の培養、及び選別後の細胞の培養に使用することもできる。
<臍帯由来幹細胞培養上清の調製>
臍帯由来幹細胞培養上清を得るには、まず、上記のように、哺乳類の組織から臍帯由来幹細胞を得る。なお、哺乳類としては、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、及びサルからなる群から選ばれるものであることが好ましい。
次に、上記の方法で得られた臍帯由来幹細胞を、基本培地、例えば、血清として10体積%のFBSなどの動物血清を加えた培地(DMEM等)を用いて、5体積%CO雰囲気下、37℃の条件下に、24時間〜48時間培養する。その後、200g〜500gで3分間〜7分間遠心処理を行うか、あるいは臍帯由来幹細胞を通過させない分離膜を利用して臍帯由来幹細胞培養上清を得ることができる。
臍帯由来幹細胞培養上清に用いる臍帯由来幹細胞の継代数の制限は特にないが、標的組織の改善又は予防能力、及び標的となる組織の種類の幅広さという観点から、1〜15が好ましく、さらに3〜9がより好ましい。
培養上清の回収には、例えば、コマゴメピペット等を使用することもできる。回収した臍帯由来幹細胞培養上清は、そのまま本開示の促進剤の有効成分として使用してもよく、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結乾燥、希釈その他の処理の後に、本開示の促進剤の有効成分として使用してもよい。
上記の臍帯由来幹細胞培養上清の調製の場合に、血清や培地等は、適宜その有無、種類及び添加濃度を設定すればよい。なお、血清を含まないことで、本開示の促進剤の安全性が高められる場合がある。このため、血清を含まない促進剤を得るために、例えば、血清を含まない培地(無血清培地)で臍帯由来幹細胞を培養することによって、血清を含まない臍帯由来幹細胞培養上清を調製することができる。1回又は複数回の継代培養を行うことにし、最後又は最後から数回の継代培養を無血清培地で培養することによっても、血清を含まない臍帯由来幹細胞培養上清を得ることができる。一方、回収した臍帯由来幹細胞培養上清から、透析やカラムによる溶媒置換などを利用して血清を除去することによっても、血清を含まない臍帯由来幹細胞培養上清を得ることができる。
血清を含まない「臍帯由来幹細胞培養上清」を調製するためには、全過程を通して或いは最後又は最後から数回の継代培養についは無血清培地を使用するとよい。なお、血清を含まない場合の基本培地は、上記したものと同様である。
臍帯由来幹細胞培養上清を得るための培養時間は、適宜調整される。培養温度は例えば36℃〜38℃、例えば37℃、であり、CO濃度(雰囲気)は4体積%〜6体積%、例えば5体積%、である。また、培養は、例えば非接着性条件下での三次元培養、例えば浮遊培養(例えば、分散培養、凝集浮遊培養など)により行ってもよい。
また、上記で得られた臍帯由来幹細胞培養上清は、種々の成長因子を含み、高度な精製をしなくとも、種々の作用を示す。すなわち、各種の症状の改善又は予防に使用できる性ホルモン分泌促進剤を、簡易な工程で製造できるため、高度精製に伴う各種成長因子の生理活性の低下を回避することができる。
なお、本開示の性ホルモン分泌促進剤に用いる「臍帯由来幹細胞培養上清」は、臍帯由来幹細胞を培養して得られる分泌された種々の生体因子を含有する培養上清をいい、臍帯由来幹細胞その他の細胞を含まない溶液をいう。本開示の性ホルモン分泌促進剤はこの特徴によって、臍帯由来幹細胞自体は当然のこと、臍帯由来幹細胞を含む各種組成物等と明確に区別される。この態様の典型例は、臍帯由来幹細胞を含まず、臍帯由来幹細胞の培養上清のみで構成された性ホルモン分泌促進剤である。従って、例えば培養後に細胞成分を分離除去することによって、本開示の性ホルモン分泌促進剤に使用可能な培養上清を得ることができる。また、上記の臍帯由来幹細胞培養上清は、臍帯由来幹細胞の培養後に得られた培養上清を、適宜、各種処理(例えば、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩、保存等)した後に、上記性ホルモン分泌促進剤に用いることにしてもよい。
上記の臍帯由来幹細胞培養上清は、水溶液やその他の溶剤で希釈した後に性ホルモン分泌促進剤として使用することもできる。この場合に、水溶液としては、水及び緩衝液を用いることができる。また、その他の溶剤としては、本開示の性ホルモン分泌促進剤の効果が得られる範囲で有機溶剤などを用いることができる。
また、水及び緩衝液に用いる水としては、イオン交換水、精製水及び超純水等を用いることができる。これらの水は、汎用な製造装置で調製することもできるし、購入することもできる。
未処理の臍帯由来幹細胞培養上清を水溶液等に希釈して性ホルモン分泌促進剤として使用する場合には、臍帯由来幹細胞を培養した時の培養条件、対象となる症状等の種類及び症状等の程度を考慮して適宜上清を希釈することが好ましいが、前記未処理の臍帯由来幹
細胞培養上清の性ホルモン分泌促進剤中に対する濃度(%)(100×未処理の臍帯由来幹細胞培養上清の体積/性ホルモン分泌促進剤の体積)としては、10%〜1500%の濃度で用いることが好ましい。なお、1500%とは、前記上清が15倍に濃縮されることを意味する。10%以上であると、前記臍帯由来幹細胞培養上清の性ホルモン分泌の促進、すなわち症状の改善効果をより高め、1500%以下であることで、前記臍帯由来幹細胞培養上清中の因子の沈着をより防ぐことができ、経済的である。
<臍帯由来幹細胞培養上清の濃縮方法>
本開示の性ホルモン分泌促進剤には、濃縮した臍帯由来幹細胞培養上清を含ませることが可能である。臍帯由来幹細胞培養上清の濃縮方法としては、通常行われている方法を適用することができる。濃縮方法の例としては、例えば、以下の二つの方法を挙げることができる。
1. スピンカラム濃縮法
臍帯由来幹細胞培養上清をAmicon Ultra Centrifugal Filter Units−10K(ミリポア社製)を用いて濃縮する(最大75倍濃縮)。具体的な操作手順は次の通りである。
(i) 培養上清(最大15ml)をAmicon Ultra Centrifugal Filter Units−10Kへ投入し、4000gで約60分間遠心し、200μlまで濃縮する。
(ii) 上記チューブへ培養上清と同量の滅菌したリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline、以下、「PBS」という)を投入し、再度4000gで約60分間遠心し、ベース溶液をPBSへ置換する。
(iii) 得られた溶液200μlをマイクロテストチューブへ回収し、濃縮した臍帯由来幹細胞培養上清とする。
2. エタノール沈殿濃縮法
臍帯由来幹細胞培養上清をエタノール沈殿法を用いて濃縮する(最大10倍濃縮)。具体的な操作手順は次の通りである。
(i) 培養上清5mlに対し100体積%エタノール45mlを加え、混和し、−20℃で60分間放置する。
(ii) 4℃、15000gで15分間遠心する。
(iii) 上澄みを除去し、90%エタノール10mlを加え、よく攪拌する。
(iv) 4℃、15000gで5分間遠心する。
(v) 上澄みを除去し、得られたペレットを滅菌水500μlに溶解し、マイクロテストチューブへ回収し、濃縮した臍帯由来幹細胞培養上清とする。
〔添加成分〕
適用される被検体の状態に応じて、期待される症状の改善又は予防効果が維持されることを条件として、性ホルモン分泌促進剤に、上記以外の他の成分を追加的に使用することができる。性ホルモン分泌促進剤において追加的に使用され得る成分の一例は以下の通りである。
(i)生体吸収性材料
有機系生体吸収性材料としてヒアルロン酸、コラーゲン、フィブリノーゲン(例えばボルヒール(登録商標))等を使用することができる。
(ii)ゲル化材料
ゲル化材料は、生体親和性が高いものを用いることが好ましく、ヒアルロン酸、コラーゲン又はフィブリン糊等を用いることができる。ヒアルロン酸、コラーゲンとしては種々のものを選択して用いることができるが、性ホルモン促進剤の適用目的(適用組織)に適したものを採用することが好ましい。用いるコラーゲンは可溶性(酸可溶性コラーゲン、アルカリ可溶性コラーゲン、酵素可溶性コラーゲン等)であることが好ましい。
(iii)その他
ヒト等に用いることが許される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることもできる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D−マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。抗生物質、pH調整剤、成長因子(例えば、上皮細胞成長因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF))等を含有させてもよい。
性ホルモン分泌促進剤の最終的な形態は特に限定されない。形態の例は液体状(液状、ゲル状など)及び固体状(粉状、細粒、顆粒状など)である。
前記性ホルモン分泌促進剤の投与量としては、症状の改善又は予防上有効な量であればよい。前記性ホルモン分泌促進剤は、臍帯由来幹細胞培養上清を有効成分とするため、症状の改善又は予防に用いる際には前記性ホルモン分泌促進剤の含有量を適宜調整すればよく、後述するように、有効成分を濃縮して用いてもよい。
(症状)
本開示の促進剤は、症状の改善又は予防に用いてもよい。本開示の促進剤が症状の改善又は予防に効果を有する理由は不明であるが、以下のように考えることができる。
すなわち、本開示の促進剤中の臍帯由来幹細胞は、上述のように性ホルモンの分泌や生殖細胞の増殖の促進に適するような因子を有しているので、本開示の促進剤を投与することよって、加齢等によって衰えた、あるいは変性した組織を元の正常な状態へと再生するように、生殖細胞等が性ホルモンの分泌を促進する。さらに、本開示の促進剤は、該組織中の性ホルモンに対する応答性が低下するのを抑制し、その抗加齢効果を、該組織の再生が完了するまで持続させると推論し得る。
従って、本開示の臍帯由来幹細胞培養上清は、従来までのホルモン注射のような対処療法とは異なる本質的な「若返り療法」と言える。
また、本開示の臍帯由来幹細胞培養上清の投与により、上記のような持続的な効果が得られると推論しうることから、該上清を正常な組織に投与する場合には、症状に対し予防効果も持ちうると考えられる。
このため、本開示の促進剤を、例えば、遺伝子診断や画像診断によって、特定の症状等の発症確率が高いと診断された者等に優先的に使用することにより、本開示の促進剤は、より効果的な予防剤となり得る。
また、臍帯由来幹細胞培養上清は、性ホルモンの分泌を促進させることにより、皮膚繊維芽細胞、血管内皮細胞、唾液腺細胞、涙腺細胞、筋芽細胞及び骨髄由来幹細胞の少なくともいずれか一つの増殖を促進させる。このため、本開示における臍帯由来幹細胞培養上清を含む促進剤は、様々な症状の改善又は予防に効果を有する。
性ホルモンの分泌を促進することにより、久保らの文献[アンチエイジング医療の実際−健康準用ドッグを中心として,医学のあゆみ,Vol.214(2),135-143,(2005)]に記載されるように、各症状を改善又は予防できる。また、加齢性症状に対しても、Rothらの文献[Biomarkers of caloric restriction may predict longevity in humans,Vol.297(5582),811,(2002)]に記載されるように、各加齢性症状を改善又は予防できる。このため、本開示の促進剤は、これらの各症状の改善又は予防を必要とする者に適用できる。
前記症状の具体例としては、癌、認知症、肝硬変、アルツハイマー病、パーキンソン病、関節リュウマチ、脳梗塞、心筋梗塞、アトピー性皮膚炎、花粉症、しわの増加、白髪、脱毛、老眼、近眼、ドライアイ、ドライマウス、歯周病、筋力低下、骨粗鬆症、糖尿病、更年期障害、不妊及び勃起不全等が挙げられる。ここで、「脳梗塞」は、大脳への又はそれを介した血流の閉塞によって引き起こされる大脳の虚血状態を意味する。本開示の性ホルモン分泌促進剤は、上記のうちの単発の症状に用いられてもよいし、上記のうちの複数が併発する症状に用いられてもよい。
上記の症状の中でも、癌、骨粗鬆症、認知症、アルツハイマー病、更年期障害、糖尿病及び心筋梗塞から選ばれる少なくとも1つの症状の改善又は予防に用いられることが好ましい。
≪生殖細胞増殖促進剤≫
本開示の第2の態様に係る生殖細胞増殖促進剤は、上記の臍帯由来幹細胞培養上清を有効成分として含み、生殖細胞の増殖を促進する。
生殖細胞増殖促進とは、動物の固体中の生殖細胞、動物が有する組織中の生殖細胞、及び動物由来の組織から分離された生殖細胞の増殖を意味する。動物としては、哺乳類が好ましい。
生殖細胞としては、精巣細胞、卵巣細胞、精子細胞、卵母細胞が挙げられる。これらの中でも、性ホルモンの分泌量から、精巣細胞及び卵巣細胞がより好ましく、さらに精巣細胞であることが特に好ましい。このような細胞であることで、性ホルモンの分泌量が大きく上昇するので、症状の改善又は予防効果の向上が期待できる。特に本開示の生殖細胞増殖促進剤は、精巣細胞自体を増殖させることができるので、症状に対する準根治的又は根治的な改善が期待できる。
また、本開示の生殖細胞増殖促進剤は、生殖細胞の増殖によって性ホルモン分泌が促進されてよい。性ホルモンとしては、症状の改善又は予防効果の観点からは、卵巣ホルモン及び精巣ホルモンであることが好ましく、精巣ホルモンとしては、テストステロンであることが好ましい。
本開示の生殖細胞増殖促進剤は、上記の性ホルモン分泌促進剤と同様に調製することができ、前記性ホルモン分泌促進剤と同様に症状の改善又は予防に用いてもよい。さらに、加齢性症状の具体例としては、前記性ホルモン分泌促進剤と同様である。
本開示の性ホルモン分泌促進剤及び生殖細胞増殖促進剤について、有効成分である臍帯由来幹細胞培養上清を注射剤、経口剤、点鼻剤、経肺投与剤、点眼剤又は塗布剤の形態で用いる促進剤とすることができる。このように、上記の促進剤を投与する場所や方法を限定して用いることで、より症状の改善又は予防効果を高めることができる。これらの中でも、症状の改善又は予防を必要とする者への負担軽減と、症状の改善又は予防効果という観点から、点鼻剤、経肺投与剤、点眼剤又は塗布剤の形態で用いる促進剤とすることが好ましく、さらに点鼻剤又は点眼剤とすることがより好ましい。これらの形態には、上記の臍帯由来幹細胞培養上清をそのまま含ませて調製してもよいし、適宜処理(濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩及び保存)を行って調製してもよい。さらに、促進剤として必要な添加剤を含ませて調製してもよい。添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、コーティング剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤、健康食品素材、栄養補助食品素材、ビタミン、香料、甘味剤、防腐剤、保存剤、抗酸化剤などが挙げられる。
≪症状の改善又は予防方法≫
本開示にかかる発明の他の態様としては、症状の改善又は予防を必要とする者への症状の改善又は予防方法が挙げられる。これらの方法は、上記の促進剤を、体内へ投与することを含む。これにより、効率よく症状を改善又は予防することができる。
本開示の促進剤の投与方法及び投与経路としては、特に制限されない。前記促進剤を、例えば、アトピー性皮膚炎、花粉症、脱毛、ドライアイ、歯周病及び筋力低下の改善又は予防に用いる場合には、非経口投与であることが好ましく、非経口投与としては、局所投与が好ましい。局所投与の例としては、目的組織への注入、塗布又は噴霧などを挙げることができる。前記促進剤の投与方法の例としては、点眼投与、経肺投与、及び鼻腔内投与等を挙げることができる。これらの投与方法の中でも、症状の改善効果又は予防効果及び低侵襲性の観点から、鼻腔内投与及び経肺投与が好ましい。
また、前記促進剤を、脳梗塞、パーキンソン病、認知症及び更年期障害の改善又は予防に用いる場合には、非経口投与であることが好ましく、非経口投与としては、全身性投与であっても局所投与であってもよい。投与方法としては、静脈内投与、動脈内投与、門脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経肺投与、点眼投与、及び鼻腔内投与等を挙げることができる。中でも、鼻腔内投与及び経肺投与は、低侵襲性であり、好ましい。また、投与方法としては、上記の複数の投与方法を併用して行ってもよい。
投与スケジュールとしては、例えば、1日間〜40日間に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、対象(レシピエント)の性別、年齢、体重、病態などを考慮することができる。
また、上記の症状の改善又は予防に用いる場合には、前記促進剤の投与期間は、例えば静脈内投与と鼻腔内投与の併用の場合に7日間〜28日間であり、前記促進剤の投与量としては、未処理の臍帯由来幹細胞培養上清の10倍濃縮液を、ヒト一人の60kg換算で12mlを7日間で1回静脈内投与し、併用薬として、前記未処理の臍帯由来幹細胞培養上清の原液をヒト一人の60kg換算で10mlを7日間で1回鼻腔内投与することで症状の改善又は予防を必要とする者等を低負担で効果的に症状を改善又は予防することができる。
前記促進剤が投与される対象は、典型的には、症状を持つヒト又は症状を予防しようとするヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ等)への適用も想定される。
≪促進剤の製造方法≫
本開示においては、(1)臍帯から臍帯由来幹細胞を採取する工程と、(2)前記工程により得られた臍帯由来幹細胞を培養する工程と、(3)前記工程により得られた培養上清を回収する工程と、を含む促進剤の製造方法が提供される。
上記の工程に、回収された培養上清中の分泌成分を抽出する工程、をさらに含ませてもよい。この工程を含むことにより、促進剤の取り扱いや保存、運搬がより容易になる。また、前記製造方法は、前記分泌成分を必要な媒体に溶解させる工程をさらに含んでいてもよい。この工程を含むことにより、症状の改善又は要望を必要とする部分への分泌成分の到達力の向上を狙った促進剤の製造方法を提供することができる。
また、前記製造方法は、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、乾燥、希釈及び脱塩からなる群より選択される少なくとも1つの処理を行う工程を、上記のどの工程の前後にさらに含んでいてもよい。
また、前記製造方法は、前記回収された培養上清に、追加の成分を添加する工程をさらに含んでいてもよい。そのような追加の成分の添加により、促進剤全体の物性を変化させ、その特性を向上することが可能である。各々の工程ならびに追加の成分等については、本開示に係る促進剤の説明において記載した事項がそのまま当てはまる。前記回収された培養上清に遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩及び保存の中から選択される一つ以上の処理を施す工程と、前記回収された培養上清に、追加の成分を添加する工程の両方を含む場合には、両工程はどちらを先に行ってもよく、また可能な場合には同時並行して行ってもよい。
上記工程(3)においての培養上清は、例えば、スポイトやピペットなどで培養液を吸引して回収することができる。回収した培養上清はそのまま或いは一以上の処理を経た後に本開示に係る促進剤の有効成分として使用される。尚、臍帯由来幹細胞の培養上清は、複雑高度な精製をしなくとも、所期の作用を示す。このため、本開示に係る促進剤は簡便な工程で製造できる。複雑な精製工程を要しないことは、精製に伴う活性の低下を回避できる点においても有利である。ここでの処理として、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩、保存(例えば、4℃、−80℃)を例示することができる。
<臍帯由来幹細胞培養上清の凍結乾燥物の製造方法>
また本開示においては、本開示の促進剤に用いる臍帯由来幹細胞培養上清の凍結乾燥物を製造する方法を提供することもできる。これにより、良好な保存安定性が得られる。臍帯由来幹細胞培養上清の凍結乾燥方法としては、この目的のための通常行われている方法を適用することができる。臍帯由来幹細胞培養上清の凍結乾燥物の製造方法の例としては、例えば、以下の方法を挙げることができる。
(i) 上記方法で得られた臍帯由来幹細胞培養上清又はそれを濃縮したものを−200℃〜−20℃で2時間から半日凍結する。
(ii) 凍結後、サンプルチューブの蓋を開放し、凍結乾燥機へセットする。
(iii) 1〜2日間凍結乾燥を行う。
(iv) 凍結乾燥して得られたものを臍帯由来幹細胞培養上清の凍結乾燥物とする(−200℃〜−20℃で保存可能)。
以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。
≪材料及び方法≫
<臍帯由来幹細胞培養上清(WJ−CM)の調製>
正常発育したヒト新生児の臍帯より、既述の特開2012−31127号公報による方法に従い、ワルトンジェリーを採取し、3ミリ角の小片に分割し、24穴チャンバー内にて、37℃、5体積%CO雰囲気下で、静置培養することでWJ由来の幹細胞を得た。培養液は、10体積%牛胎児血清(PAA Laboratories GmbH,Parsching,Austria)、及びギブコ社(Grand Island,NY)製のペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100mμg/mL)、アムフォテリシンB(0.25μg/mL))入りのDMEM(シグマアルドリッチ社製、St,Louis,MO)を用いた。
次に、上記にて得られたWJ(1×10個)を、10mlの上記培養液中で24時間、37℃、5体積%CO雰囲気下で培養する。つぎに上清液を除去しリン酸緩衝液で2回洗浄し、さらに無血清培地で2回洗浄した。この後、WJを無血清培地(上記培地中、10%牛胎児血清を含まないもの)10ml中で48時間培養した。得られた培養液の上清液を1500rpmで5分間遠心することで回収し、回収した上清液を、再度3000rpmで5分間遠心した後、さらに同じ操作を行って不純物を沈殿させたのち、上澄みを採取することで、臍帯(ワルトンゼリー)由来幹細胞培養上清(WJ−CM)がえられた。
また、10倍濃度のWJ−CMは、上記で得られたWJ−CMを、限外濾過フィルター(アミコンウルトラ15、ミリポア社製)を用いて、10倍濃度に濃縮することで調製した。
<歯髄由来幹細胞培養上清(SH−CM)の調製>
ヒト歯髄由来幹細胞(SH)は、国際公開第2013/47082号に記載の方法に従って、乳歯由来幹細胞を選抜及び採取することで歯髄由来幹細胞(SH)を調製した。次に、培養して得られたSHについて、上記文献に記載の方法に従い、継代培養を3回繰り返し行い、その次の培養以後は、上記のWJ−CMによる調製方法と同様の方法に依って、歯髄由来幹細胞培養上清(SH−CM)を得た。
<骨髄由来幹細胞培養上清(BM−CM)の調製>
ヒト骨髄由来幹細胞(BM)(骨髄間葉系幹細胞、Bone Marrow Mesenchymal stem cells)はロンザ社から購入し、メーカーの取扱説明書に従って培養した。次に、培養して得られたBMについて、上記取扱説明書と同様の方法に従い、継代培養を3回繰り返し行い、その次の培養以後は、上記のWJ−CMによる調製方法と同様の方法に依って、骨髄由来幹細胞培養上清(BM−CM)を得た。
<脂肪由来幹細胞培養上清(AD−CM)の調製>
ヒト脂肪由来幹細胞(AD)は、国際公開第2011/070974号の段落0036に記載の方法に従って、調製した。次に、培養して得られたADについて、上記と同様の方法に従い、継代培養を3回繰り返し行い、その次の培養以後は、上記のWJ−CMによる調製方法と同様の方法に依って、脂肪由来幹細胞培養上清(AD−CM)を得た。
<精巣細胞の調製>
減数分裂のはじまっていない0.5日〜5.5日の新生児マウス(ICR、日本エスエルシー社製)の精巣を公知の採取方法による方法に従って、回収し、白膜除去後に0.25体積%のトリプシンで処理し、精巣細胞浮遊液を得た。得られた精巣細胞浮遊液を40μm孔のフィルターでろ過し、不純物を除去することで、精巣細胞を得た。
<卵巣細胞の調製>
4週齢のクーミングマウスの卵巣を、公知の採取方法による方法に従って摘出した。得られた卵巣の結合組織を除去して500ミクロンの厚さに薄切して薄片を調製した。これらを適時下記の活性評価に用いた。
≪評価≫
[実施例1]
<精巣細胞の増殖能>
上記にて得られた精巣細胞を、2.0×10個/mlとなるように、12穴の培養皿中の培養液(間葉系幹細胞成長培地(MSCGM、ロンザ社製))1mlに播種し、24時間培養した。24時間後、上記にて調製したWJ−CM、SH−CM、BM−CM及びAD−CMの原液1mlを加え、37℃、5体積%CO雰囲気下で、さらに144時間培養した。また、培養液と上記の幹細胞培養上清は、ともに、24時間(1日)後と、72時間(3日)後に交換した。また、培養後の細胞数は、1日後及び3日後にそれぞれ、顕微鏡下にて計測した。結果を図1に示す。なお、1日後及び3日後の細胞数は、1穴(ウェル)あたりの細胞数で縦軸に示す。また、同実験においては、同じ条件での実験を少なくとも3回は行ってから、得られた細胞数の誤差を計測し、その結果についてのP値(有意確率)をスチューデントのt検定によって算出した。
図1に示すように、精巣細胞は時間の経過とともに増殖を続けた。精巣細胞の増殖能においては、各幹細胞培養上清中、いずれの時間においてもWJ−CMを添加した群(WJ−CM群)が最も高く、以下、BM−CMを添加した群(BM−CM群)、AD−CMを添加した群(AD−CM群)、SH−CMを添加した群(SH−CM群)の順であった。また、P値において、144時間後のWJ−CM群の細胞数の結果と、他の3種の幹細胞培養上清による群の結果との間に、強い有意差が見られた。
以上より、臍帯由来幹細胞培養上清(WJ−CM)は他の由来の幹細胞培養上清に比べて明らかに精巣細胞を増殖させることが示された。
<テストステロン分泌促進における効果>
上記の12穴の培養皿中の精巣細胞(2.0×10個/ml)を、上記同様に間葉系幹細胞成長培地に播種し、24時間培養した。24時間後、上記にて調製したWJ−CM、SH−CM、BM−CM及びAD−CMの原液0.1mlを加え、37℃、5体積%CO雰囲気下で24時間培養し、一般的な蛍光酵素免疫測定法(FEIA)にて、テストステロン(TS)値を計測した。なおコントロール(対象実験)としてのTS値は、上記の幹細胞培養上清に代えて0.1mlのPBSを加えて上記と同様の条件で培養後、上記同様にTS値を測定することで得た。
使用試薬および機器はSTEテスト「TOSOH」II、AIA2000(東ソー株式会社製、東京都港区)である。なお、同実験においては、同じ条件での実験を少なくとも3回は行ってから、得られた値の誤差を計測し、その結果についてのP値(有意確率)をスチューデントのt検定によって算出した。
図2に示すように、上記にて調製したWJ−CM、SH−CM、BM−CM及びAD−CMの原液の添加後24時間後におけるテストステロン(TS)値においては、各幹細胞培養上清中、WJ−CMを添加した群(WJ−CM群)が最も高く、以下、SH−CM群、BM−CM群、AD−CM群の順であった。なお、いずれのCM群も、幹細胞培養上清を加えていない群(コントロール)よりも、TSの分泌量は高かった。
また、P値において、WJ−CM群とBM−CM群及びAD−CM群との間で明らかに有意差が見られた。
以上のように、臍帯由来幹細胞培養上清は、生殖細胞である精巣細胞に対し、より多くの量のテストステロンの分泌を促し、さらに生殖細胞をより増殖させることが示された。
<デヒドロエピアンドロステロンサルフェート分泌促進における効果>
上記の精巣細胞と同様に、12穴の培養皿中の精巣細胞(2.0×10個/mL)を、上記同様に間葉系幹細胞成長培地に播種し、24時間培養した。24時間後、上記にて調製したWJ−CM、SH−CM、BM−CM及びAD−CMの原液0.1mlを加え、37℃、5体積%CO雰囲気下で24時間培養し、CLEIA法(SRL社製)にて、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA−S)値を計測した。
なお、同実験においては、同じ条件での実験を3回行ってから、得られたそれぞれの値の誤差を計測し、それらの結果についてのP値(有意確率)をスチューデントのt検定によって算出した。
結果を図3に示す。なお、図3中、各CM添加前及び添加後におけるDHEA−Sの値は、3回の実験における平均値を表す。
図3に示すように、各CMを添加し24時間培養した後におけるDHEA−Sの値は、WJ−CMを添加した群(WJ−CM群)が最も高く、以下、SH−CM群、BM−CM群、AD−CM群の順であった。
また、P値において、WJ−CM群と、SH−CM群、BM−CM群及びAD−CM群との間で明らかに有意差が見られた。
以上のように、臍帯由来幹細胞培養上清は、生殖細胞である精巣細胞に対し、より多くの量のデヒドロエピアンドロステロンサルフェートの分泌を促すことが示された。
<エストロゲン分泌促進における効果>
上記にて調製した卵巣細胞の薄片を、6穴培養皿中の底部に設置したアガロースゲル片の上に5切片ずつ静置し、上記にて調製したWJ−CM、SH−CM、BM−CM及びAD−CMの原液1ml、及び抗生物質(Antibiotic−Antimycotic、ギブコ社製)10μl/mlを含有した培養液(DMEM 、シグマアルドリッチ社製)2mlで、卵巣細胞の薄片が漬かるように満たし、37℃、5体積%CO雰囲気下で、24時間培養した。培養後の培養液中のエストロゲンの1種であるエストラジオール(ES)について、放射免疫法(Radioimmunoassay、Union medical and pharmaceutical technology、Tianjin社(中国))で計測した。
その結果、WJ−CMを添加した培養液中のESの値は、他のCMを添加した培養液に比べて有意に高値を示した。また、WJ−CMを添加した培養液中のESの値は、CMを添加していない培養液に比べて、3倍の値を示した。
以上のように、臍帯由来幹細胞培養上清は、生殖細胞である卵巣細胞に対しより多くの量のエストロゲンの分泌を促すことが示された。
[実施例2]
<男性更年期障害に対する効果>
1、被検体及び症状
症例1)56歳男性、下記のAMSスコアは35、EDスコアは5であった。
症例2)61歳男性、下記のAMSスコアは40、EDスコアは5であった。
2、治療
上記にて調製した10倍に濃縮したWJ−CMの10mlを静脈内投与(1回目投与)し、その1週間後にも同量を静脈内投与(2回目投与)した。
3、評価方法(AMSスコアによる評価方法)
加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き(日本泌尿器科学会、日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン」検討ワーキング委員会/編、2007年)に従って、AMSスコアについて、調査した。AMSスコアにおいては、上記の1回目投与の直前と、2回目投与後の2週間後に、以下の17項目の質問(質問1)に、5段階評価、すなわち、非常に重い(5点)、重い(4点)、中程度(3点)、軽い(2点)、ない(1点)で回答し、全項目の評価で得られた合計の点数を評価した。なお、質問1中、16番目の早朝勃起(朝立ち)の回数の減少についてのスコアを、EDスコアと称する。
<質問1>
1. 総合的に調子が思わしくない
2. 関節や筋肉の痛みがある
3. ひどい発汗がある
4. 睡眠の悩みがある
5. よく眠くなる、しばしば疲れを感じる
6. イライラする
7. 神経質になった
8. 不安感がある
9. 体の疲労や行動力の減退を感じる
10. 筋力の低下がある
11. 憂うつな気分だ
12. 「絶頂期は過ぎた」と感じる
13. 「力尽きた、どん底にいる」と感じる
14. ひげの伸びが遅くなった
15. 性的能力の低下がある
16. 早朝勃起(朝立ち)の回数の減少した
17. 性欲の低下がある
4、結果
WJ−CM投与後の2週間後には、症例1)の男性のAMSスコアは、治療前の35から20まで改善し、さらにEDスコアも治療前の5から1まで改善した。さらに、症例2)の男性のAMSスコアは、治療前の40から25まで改善し、さらにEDスコアも治療前の5から2まで改善した。
以上の結果から、WJ−CM、すなわち臍帯由来幹細胞培養上清の投与により、男性における加齢性症状が改善することが示された。また、WJ−CMの投与後の2週間が経過しても症状が改善していることから、当該上清を含む促進剤の投与が、対処療法的な改善方法とは異なることが示唆された。また、わずか2回の投与で症状が本質的に改善されていることから、当該上清を含む促進剤は、症状の改善を必要とする者や投与する者にとって低負担であることが示された。
[実施例3]
<男性更年期障害に対する効果>
1、被検体及び症状
症例1)55歳男性、上記のAMSスコアは42、EDスコアは5であった。
2、治療
上記にて調製した10倍に濃縮したWJ−CMの10mlを静脈内投与(1回目投与)し、その1週間後にも同量を静脈内投与(2回目投与)した。また、前記静脈内投与(1回目投与)とともに、WJ−CMの原液1mlを、経鼻的に1日1回で2週間毎日投与した。
3、評価方法
実施例2と同様に、治療の前後におけるAMSスコア及びEDスコアを測定した。また、治療の前後における前記男性の血中のDHEA−S値を上記のCLEIA法によって測定し、さらに、治療の前後における精液の量も測定した。
4.結果
WJ−CM投与後の2週間後には、症例1)の男性のAMSスコアは、治療前の42から20まで改善し、さらにEDスコアも治療前の5から1まで改善した。
また、治療前における血中のDHEA−S値は5.38μg/mlであったのに対し、治療後は11.20μg/mlへと上昇した。さらに、男性の治療前の精液の量は2.5mlであったのに対し、治療後は5.5mlであった。
〔総合評価〕
実施例1〜3の結果と評価から、本開示の臍帯由来幹細胞培養上清は、生殖細胞に対して、性ホルモンの分泌と生殖細胞の増殖を促進させ、体内の性ホルモンの存在量を向上させることで、加齢性症状を本質的に改善することが示唆された。

Claims (13)

  1. 臍帯由来幹細胞を培養することによって得られた臍帯由来幹細胞培養上清を含み、性ホルモンの分泌を促進する性ホルモン分泌促進剤。
  2. 前記臍帯由来幹細胞が、ワルトンゼリー(Wharton's Jelly)由来である請求項1に記載の性ホルモン分泌促進剤。
  3. 癌、認知症、肝硬変、アルツハイマー病、パーキンソン病、関節リュウマチ、脳梗塞、心筋梗塞、アトピー性皮膚炎、花粉症、しわの増加、白髪、脱毛、老眼、近眼、ドライアイ、ドライマウス、歯周病、筋力低下、骨粗鬆症、糖尿病、更年期障害、不妊及び勃起不全から選ばれる少なくとも一つの症状の改善又は予防に用いられる請求項1又は請求項2に記載の性ホルモン分泌促進剤。
  4. 前記症状が、癌、骨粗鬆症、認知症、アルツハイマー病、更年期障害、糖尿病及び心筋梗塞から選ばれる少なくとも一つである請求項3に記載の性ホルモン分泌促進剤。
  5. 前記性ホルモンが精巣ホルモンである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の性ホルモン分泌促進剤。
  6. 前記精巣ホルモンがテストステロン及びデヒドロエピアンドロステロンサルフェートから選ばれる少なくとも1つである請求項5に記載の性ホルモン分泌促進剤。
  7. 前記臍帯由来幹細胞培養上清を、注射剤、経口剤、点鼻剤、経肺投与剤、点眼剤又は塗布剤の形態で用いる請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の性ホルモン分泌促進剤。
  8. 臍帯由来幹細胞を培養することによって得られた臍帯由来幹細胞培養上清を含み、生殖細胞の増殖を促進する生殖細胞増殖促進剤。
  9. 前記臍帯由来幹細胞が、ワルトンゼリー(Wharton's Jelly)由来である請求項8に記載の生殖細胞増殖促進剤。
  10. 癌、認知症、肝硬変、アルツハイマー病、パーキンソン病、関節リュウマチ、脳梗塞、心筋梗塞、アトピー性皮膚炎、花粉症、しわの増加、白髪、脱毛、老眼、近眼、ドライアイ、ドライマウス、歯周病、筋力低下、骨粗鬆症、糖尿病、更年期障害、不妊及び勃起不全から選ばれる少なくとも一つの症状の改善又は予防に用いられる請求項8又は請求項9に記載の生殖細胞増殖促進剤。
  11. 前記症状が、癌、骨粗鬆症、認知症、アルツハイマー病、更年期障害、糖尿病及び心筋梗塞から選ばれる少なくとも一つである請求項10に記載の生殖細胞増殖促進剤。
  12. 前記生殖細胞が精巣細胞である請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の生殖細胞増殖促進剤。
  13. 前記臍帯由来幹細胞培養上清を、注射剤、経口剤、点鼻剤、経肺投与剤、点眼剤又は塗布剤の形態で用いる請求項8〜請求項12のいずれか1項に記載の生殖細胞増殖促進剤。
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