以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、自動変速機の一例としてのデュアルクラッチ式自動変速機(DCT)10(以下、自動変速機という場合もある。)を、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプの車両Mに適用したブロック図である。車両Mは、自動変速機10の他、原動機の一例であるガソリンの燃焼によって駆動されるエンジン11と、差動装置(ディファレンシャル)13と、左右駆動軸15a、15bと、駆動輪としての左右前輪16a、16bなどを備えている。
エンジン11の回転速度Neは、エンジン11の駆動軸12に近接して設けられたエンジン回転速度センサ90によって検出される。アクセルペダル91を踏み込んだときのアクセル操作量は、アクセル開度センサ92によってアクセル開度として検出される。エンジン11の作動を制御するECU(Engine Control Unit)14は、エンジン回転速度Neの情報、アクセル開度の情報、および自動変速機10を変速制御するTCU(Transmission Control Unit)23からの各種情報を取得し、これらの情報に基づいて、アクセル開度や燃料噴射量を制御することにより、エンジン回転速度NeやエンジントルクTeを制御する。
自動変速機10は、エンジン11と差動装置13の間の動力伝達経路上に配設され、第一および第二入力軸31a、31bの回転を複数段の変速比に変速して左右前輪16a、16bに伝達する変速装置17と、エンジン11の駆動軸12と変速装置17の各入力軸31a、31bとを係脱するクラッチ20を備えている。クラッチ20は、車両Mのエンジン11(原動機)の駆動軸12と自動変速機10(変速装置)の入力軸31a、31bとの間に介装されている。このクラッチ20は、エンジン11から出力される駆動軸12の駆動トルクを、第一入力軸31aに伝達する第一クラッチ20aと、第二入力軸31bに伝達する第二クラッチ20bとを有するデュアルクラッチにて構成されている。
第一入力軸31aおよび第二入力軸31bの回転速度Ni1、Ni2は、第一入力軸回転速度センサ93aおよび第二入力軸回転速度センサ93bによってそれぞれ検出される。左右の前輪16a、16bおよび左右の後輪(図示せず)の車輪速度は、車輪速センサ94a、94bによって検出され、これらの情報は、TCU23に送られる。車輪速センサ94a、94bによって検出された各車輪の回転速度に基づいて、車速(車両速度)が算出される。
また、ドライバがシフトレバー95を操作したときシフト位置の情報は、シフト位置センサ96によって検出される。ECU14とTCU23は、CAN(Controller Area Network)通信によって相互に情報を交換可能となっている。TCU23は、シフト位置センサ96によって検出されたシフト位置の情報、ECU14からの変速指令や取得した車両情報などに基づいて、複数の変速ギヤ段を切替えるとともに、第一クラッチ20aおよび第二クラッチ20bを係脱して、自動変速機10の変速制御を行う。
クラッチ20の第一および第二クラッチ20a,20bは、乾式摩擦クラッチからなっている。第一クラッチ20aは、モータを駆動源とする第一クラッチアクチュエータ25aによって係合制御されるようになっており、第二クラッチ20bは、モータを駆動源とする第二クラッチアクチュエータ25bによって係合制御されるようになっている。第一および第二クラッチアクチュエータ25a、25bは、第一および第二クラッチ20a,20bの切離(解放)および接続(係合)をそれぞれ制御する。第一および第二クラッチアクチュエータ25a、25bは、クラッチアクチュエータ25a、25bのストローク量をそれぞれ検出するストロークセンサ26a、26bを有している。第一および第二クラッチ20a,20bのクラッチトルクTcは、クラッチアクチュエータ25a、25bのストローク量(クラッチストローク)に応じて制御される。例えば、TCU23は、ストロークセンサ26a、26bの検出結果が、所望のクラッチトルクTcに相当するクラッチストロークとなるように、クラッチアクチュエータ25a、25bを制御する。
自動変速機10は、図2に示すように、前進7速、後進1速のギヤトレーンを備えている。自動変速機10は、クラッチ20と、第一入力軸31aおよび第二入力軸31bと、第一副軸35および第二副軸36とを備えている。第一入力軸31aは棒状とされ、第二入力軸31bは筒状とされて、同軸的に回転可能に配置されている。第一入力軸31aの図中左側はクラッチ20の第一クラッチ20aに連結され、第二入力軸31bの図中左側はクラッチ20の第二クラッチ20bに連結されている。第一入力軸31aと第二入力軸31bは、独立してトルクが伝達され、異なる回転速度で回転可能となっている。第一副軸35は、入力軸31a、31bと並行して、図中下側に配置され、第二副軸36は、入力軸31a、31bと並行して、図中上側に配置されている。
第一入力軸31aには、複数の奇数変速段駆動ギヤである1速駆動ギヤ51、3速駆動ギヤ53、5速駆動ギヤ55および7速駆動ギヤ57が直接形成または別体で固定して設けられている。第二入力軸31bには、複数の偶数変速段駆動ギヤである2速駆動ギヤ52、4−6速駆動ギヤ54が直接形成または別体で固定して設けられている。
第一副軸35には、1速、3速、4速従動ギヤ61、63、64がそれぞれ遊転可能に設けられ、1速従動ギヤ61は1速駆動ギヤ51に、3速従動ギヤ63は3速駆動ギヤ53に、4速従動ギヤ64は4−6速駆動ギヤ54に、それぞれ噛合されている。
第二副軸36には、2速、5速、6速、7速従動ギヤ62、65、66、67がそれぞれ遊転可能に設けられ、2速従動ギヤ62は2速駆動ギヤ52に、5速従動ギヤ65は5速駆動ギヤ55に、6速従動ギヤ66は4−6速駆動ギヤ54に、7速従動ギヤ67は7速駆動ギヤ57に、それぞれ噛合されている。
また、第一副軸35には、後進ギヤ70が遊転可能に設けられ、後進ギヤ70は、2速従動ギヤ62の小径ギヤ62bに常時噛合されている。
第一副軸35および第二副軸36上には、シンクロメッシュ機能を有する第一、第二、第三、第四ギヤシフトクラッチ71〜74が設けられ、これらギヤシフトクラッチ71〜74は、シフトアクチュエータ80によって選択的に作動される。シフトアクチュエータ80は、モータを駆動源とし、各ギヤシフトクラッチ71〜74のスリーブ71fに係合したシフトフォークを軸方向にスライドさせる。
第一ギヤシフトクラッチ71は、第一副軸35上に設けられ、1速従動ギヤ61のシンクロギヤ部と3速従動ギヤ63のシンクロギヤ部との間に配設されている。第一ギヤシフトクラッチ71のスリーブ71fを軸方向にスライドすることにより、1速従動ギヤ61および3速従動ギヤ63の一方と第一副軸35とが相対回転不能に連結され、中間位置ではどちらの従動ギヤ61、63とも連結されないニュートラル状態となるように構成されている。
同様にして、第一副軸35上に設けられた第二ギヤシフトクラッチ72は、4速従動ギヤ64のシンクロギヤ部と後進ギヤ70のシンクロギヤ部との間に配設され、第二ギヤシフトクラッチ72のスリーブ71fを軸方向にスライドすることにより、4速従動ギヤ64および後進ギヤ70の一方と第一副軸35とが相対回転不能に連結される。第二副軸36上に設けられた第三ギヤシフトクラッチ73は、7速従動ギヤ67のシンクロギヤ部と5速従動ギヤ65のシンクロギヤ部との間に配設され、第三ギヤシフトクラッチ73のスリーブ71fを軸方向にスライドすることにより、7速従動ギヤ67および5速従動ギヤ65の一方と第二副軸36とが相対回転不能に連結される。さらに、第二副軸36上に設けられた第四ギヤシフトクラッチ74は、6速従動ギヤ66のシンクロギヤ部と2速従動ギヤ62のシンクロギヤ部との間に配設され、第四ギヤシフトクラッチ74のスリーブ71fを軸方向にスライドすることにより、6速従動ギヤ66および2速従動ギヤ62の一方と第二副軸36とが相対回転不能に連結される。
第一副軸35および第二副軸36には、それぞれ最終減速駆動ギヤ58および最終減速駆動ギヤ59が固定され、これら最終減速駆動ギヤ58、59は、差動装置13(図1参照)に連結された軸33上の減速従動ギヤ77に常時噛合されている。これにより、最終減速駆動ギヤ58および最終減速駆動ギヤ59を介して左右前輪16a、16bが駆動される。
TCU23は、図3に示すように、エンジン回転速度取得部23a、アクセル開度取得部23b、エンジントルク算出部23c、実回転加速度算出部23d、目標クラッチトルク算出部23e、想定回転加速度算出部23f、車両加速度変動検出部23g、変速制御部23h、目標クラッチトルク変更部23i、およびクラッチトルク変更部23jを備えている。
エンジン回転速度取得部23aは、エンジン回転速度センサ90からエンジン回転速度を取得する。アクセル開度取得部23bは、アクセル開度センサ92からアクセル開度を取得する。
エンジントルク算出部23cは、エンジン回転速度取得部23aによって取得されたエンジン回転速度、アクセル開度取得部23bによって取得されたアクセル開度などからエンジントルクTeを算出する。例えば、次のようにエンジントルクTeは算出される。エンジントルク算出部23cは、エアフロメータ、吸気圧センサ、及び吸気温センサ(いずれも不図示)からの検出結果に基づいて、エンジン11に供給されている単位時間当たりの酸素量を演算する。エンジントルク算出部23cは、エンジン回転速度センサ90によって検出されたエンジン回転速度、アクセル開度センサ92によって検出されたアクセル開度(スロットルのスロットル開度(エンジン11がガソリンエンジンの場合))、及び油温センサによって検出されたエンジンオイルの油温に基づいて、エンジン11において発生するフリクショントルクを演算する。エンジントルク算出部23cは、エンジン回転速度センサ90によって検出されたエンジン回転速度、上記演算した単位時間当たりの酸素量、燃料供給装置が供給している単位時間当たりの燃料供給量、及び上記演算したエンジン11において発生するフリクショントルクに基づいて、エンジントルクTeを演算する。
実回転加速度算出部23dは、エンジン回転速度取得部23aによって取得されたエンジン回転速度からエンジン11の実際の回転加速度である実回転加速度を算出する。具体的には、実回転加速度算出部23dは、エンジン回転速度を微分したり、エンジン回転速度の時間変化率を算出したりして、実回転加速度を算出する。
目標クラッチトルク算出部23eは、アクセル開度センサ92によって検出されたアクセル開度と、アクセル開度とクラッチトルクとの相関を示したマップまたは関係式とから、アクセル開度に相当する目標クラッチトルクを算出する。
想定回転加速度算出部23fは、エンジントルク算出部23cによって算出されたエンジントルクTeと、目標クラッチトルク算出部23eによって算出された目標クラッチトルクTc*とからエンジン11の想定回転加速度を算出する。具体的には、想定回転加速度算出部23fは、下記数1から想定回転加速度を算出する。
(数1)
想定回転加速度=(Te−Tc*)/I
ここで、Iは、エンジンなど回転体のイナーシャ(慣性モーメント)である。
なお、上記数1は、下記数2を参照して算出される。
(数2)
Tc*=Te−I×Ae
ここで、Iは、エンジンなど回転体のイナーシャ(慣性モーメント)であり、Aeは、エンジン11の目標回転加速度である。
車両加速度変動検出部23gは、変速制御中における車両Mの加速度である車両加速度の変動を検出する。具体的には、車両加速度変動検出部23gは、エンジントルクTeとクラッチトルク(目標クラッチトルクTc*)とによって算出されるエンジン11の想定回転加速度と、エンジン11の実際の回転加速度(実回転加速度)とを比較することにより、車両加速度の変動を検出する。
例えば、実際のクラッチトルクが想定したクラッチトルク(目標クラッチトルクTc*)より大きい場合(例えばクラッチ20が熱膨張した場合)、実際のエンジントルクは、想定したエンジントルクより両クラッチトルク(実際のクラッチトルクおよび想定したクラッチトルク)の差分だけ小さくなる。すなわち、エンジン11の実回転加速度が、想定回転加速度に対して小さくなる。このとき、実際の車両加速度は、想定した車両加速度に対して減少(変動)する。
また、実際のクラッチトルクが想定したクラッチトルクより小さい場合(例えばクラッチ20が磨耗した場合)、実際のエンジントルクは、想定したエンジントルクより両クラッチトルクの差分だけ大きくなる。すなわち、エンジン11の実回転加速度が、想定回転加速度に対して大きくなる。このとき、実際の車両加速度は、想定した車両加速度に対して増大(変動)する。
このように、エンジン11の想定回転加速度と、エンジン11の実回転加速度とを比較することにより、車両加速度の変動を検出することが可能となる。
変速制御部23hは、自動変速機10(変速装置17)に対して変速要求があった際、クラッチアクチュエータ25a,25bの作動によってエンジン11から入力軸31a,31bに伝達されるクラッチトルクが目標クラッチトルクTc*になるように制御を行うとともに、エンジン11のエンジン回転速度と入力軸31a,31bの入力軸回転速度とを同期させる制御を行なうことにより、自動変速機10を所望の変速段に変速する変速制御を行う。
なお、変速制御部23hは、エンジントルクTeによりエンジン11と入力軸31a,31bとの回転速度同期を行っている。具体的には、変速制御部23hは、所望の変速段(変速後の変速段)において、目標回転加速度にてエンジン回転速度を目標エンジン回転速度に近づける。このとき、変速制御部23hは、エンジントルクTeすなわち目標回転加速度Aeをフィードバック制御する。
変速制御部23hは、目標クラッチトルク変更部23iとクラッチトルク変更部23jとを備えている。
目標クラッチトルク変更部23iは、車両加速度変動検出部23gによって車両加速度の変動を検出した場合、先に決定されている目標クラッチトルクTc*を変更する。この先に決定されている目標クラッチトルクTc*は、車両加速度の変動がない場合を想定して設定される目標クラッチトルクである。この目標クラッチトルクTc*は、目標クラッチトルク算出部23eによって算出された目標クラッチトルクである。
目標クラッチトルク変更部23iによって変更された目標クラッチトルクは、変更後目標クラッチトルクTc*aである。
目標クラッチトルク変更部23iは、車両加速度の変動量に応じて目標クラッチトルクTc*を変更するようにしてもよい。換言すると、変更後目標クラッチトルクTc*aは、車両加速度の変動量に応じて設定されている。車両加速度の変動量は、想定回転加速度と実回転加速度との差分の大きさ(絶対値)である。車両加速度の変動量が大きいほど、変更後目標クラッチトルクTc*aは、変更前の目標クラッチトルクTc*との差分が大きくなるように設定される。
クラッチトルク変更部23jは、目標クラッチトルク変更部23iによって変更された変更後目標クラッチトルクTc*aとなるようにクラッチアクチュエータ25a,25bを制御する。このとき、クラッチトルク変更部23jは、記憶しているクラッチトルク−クラッチストロークマップを使用して、変更後目標クラッチトルクTc*aに相当するクラッチストロークとなるようにクラッチアクチュエータ25a,25bを制御する。クラッチトルク−クラッチストロークマップは、クラッチトルクとクラッチストロークとの相関関係を示すマップである。
さらに、上述した自動変速機に係る作動について図4に示すフローチャートに沿って説明する。TCU23は、そのフローチャートに沿ったプログラムを実行する。
TCU23は、ステップS102において、シフト変更の要求があったか否かを判定する。具体的には、TCU23は、シフト位置センサ96からのシフト位置に変更(ダウンシフト、アップシフト)があった場合、シフト変更の要求があると判定する。
TCU23は、ステップS104において、上述したエンジン回転速度取得部23aと同様に、エンジン回転速度センサ90からエンジン回転速度を取得する。TCU23は、ステップS106において、上述したアクセル開度取得部23bと同様に、アクセル開度センサ92からアクセル開度を取得する。
TCU23は、ステップS108において、上述したエンジントルク算出部23cと同様にエンジントルクTeを算出する。TCU23は、ステップS110において、上述した目標クラッチトルク算出部23eと同様に、目標クラッチトルクTc*を算出する。
TCU23は、ステップS112において、クラッチトルクが目標クラッチトルクTc*となるようにクラッチ20(解放側クラッチおよび係合側クラッチ)を制御する。解放側クラッチおよび係合側クラッチは、それぞれ目標クラッチトルクTc*が設定される。
TCU23は、ステップS114において、エンジントルクにてエンジン11(駆動軸)の回転速度と入力軸31a,31bの回転速度とを同期させる。
TCU23は、ステップS116において、上述した想定回転加速度算出部23fと同様に、エンジン11の想定回転加速度を算出する。TCU23は、ステップS118において、上述した実回転加速度算出部23dと同様に、実回転加速度を算出する。
TCU23は、ステップS120−124において、車両加速度の変動を検出した場合、目標クラッチトルクTc*を変更して車両加速度の変動を抑制するようにクラッチトルクを変更する。TCU23は、ステップS120において、上述した車両加速度変動検出部23gと同様に、変速制御中における車両Mの加速度である車両加速度の変動を検出する。TCU23は、想定回転加速度と実回転加速度とがほぼ等しい場合、車両加速度の変動はないと判定する(すなわち、車両加速度の変動を検出しない)。一方、TCU23は、想定回転加速度と実回転加速度とが大きく異なる場合、車両加速度の変動があると判定する(すなわち、車両加速度の変動を検出する)。
TCU23は、車両加速度の変動を検出しない場合(ステップS120にて「YES」と判定)、プログラムをステップS122に進め、先に設定した今回の目標クラッチトルクTc*をそのまま維持する。一方、TCU23は、車両加速度の変動を検出した場合(ステップS120にて「NO」と判定)、プログラムをステップS124に進め、先に設定した今回の目標クラッチトルクTc*から所定量ΔTcだけ減算して今回の変更後目標クラッチトルクTc*aを算出する。なお、TCU23は、クラッチトルクが変更後目標クラッチトルクTc*aとなるようにクラッチ20(解放側クラッチおよび係合側クラッチ)を制御する。
さらに、上述した自動変速機に係る作動について図5に示すタイムチャートを参照して説明する。図5には、ダウンシフトにおける作動が示されている。図5には、車両加速度、エンジン回転速度、解放側クラッチトルク、係合側クラッチトルクが示されている。
時刻t1において、シフト変更要求(ダウンシフト要求)があったとする。完全係合状態にあった解放側クラッチの目標クラッチトルクTc*は、時刻t1から徐々に減少され、時刻t2にTc*1となり、時刻t3までTc*1が維持される。また、時刻t1からエンジントルクTeを制御(増大制御)して、ダウンシフトに備えてエンジン回転速度を増大させる。このとき、想定された回転加速度(想定回転加速度:一点鎖線で示す)にてエンジン回転速度は増大される。
時刻t3において、例えばクラッチ20の熱膨張によって、車両加速度が想定した車両加速度(想定車両加速度)より変動を開始したとする。なお、クラッチ20が熱膨張してクラッチトルクが増大することで、車両加速度は減少するが、図5においてはその絶対値を示している。この車両加速度の変動にともなって、エンジン11の実回転加速度が想定回転加速度から乖離する。想定車両加速度は、(目標クラッチトルク×ギアレシオ−走行抵抗)/車両慣性で算出することができる。
時刻t4において、実回転加速度が想定回転加速度から所定乖離量だけ乖離した場合(ステップS120にて「NO」と判定する)、TCU23は、車両加速度が所定変動量だけ変動したと判定する。そして、目標クラッチトルクTc*は、所定量ΔTcずつ徐々に減少され、変更後目標クラッチトルクTc*aに変更される。
時刻t5において、変更後目標クラッチトルクTc*aは最終的にTc*a1に変更される。これにより、クラッチ20のクラッチトルクが減少され、車両加速度は減少され、そもそもの想定車両加速度に抑制維持される。また、エンジン11の実回転加速度も想定回転加速度と一致する。
その後、時刻t6にて、解放側クラッチと係合側クラッチとの掴み替えが開始され、時刻t7にて、解放側クラッチと係合側クラッチとの掴み替えが終了される。掴み替えの終了により車両加速度が増大する。
比較例として、本発明に係る目標クラッチトルクの変更を実施しない場合を説明する。この場合、時刻t4において、解放側クラッチの目標クラッチトルクが減少されないため、車両加速度は想定車両加速度に対して増大し(破線で示す)、その結果、エンジン11の実回転速度が減少する(破線で示す)。
上述した説明から明らかなように、本実施形態に係る自動変速機10は、車両Mのエンジン(原動機)11の駆動軸12と変速装置17の入力軸31a,31bとの間に介装されたクラッチ20と、クラッチ20の切離および接続を制御するクラッチアクチュエータ25a,25bと、変速装置17に対して変速要求があった際、クラッチアクチュエータ25a,25bの作動によってエンジン11から入力軸31a,31bに伝達されるクラッチトルクが目標クラッチトルクTc*になるように制御を行うとともに、エンジン11のエンジン回転速度と入力軸31a,31bの入力軸回転速度とを同期させる制御を行なうことにより、変速装置17を所望の変速段に変速する変速制御を行う変速制御部23hと、変速制御中における車両Mの加速度である車両加速度の変動を検出する車両加速度変動検出部23gと、車両加速度変動検出部23gによって車両加速度の変動を検出した場合、目標クラッチトルクTc*を変更する目標クラッチトルク変更部23iと、を備え、変速制御部23hは、目標クラッチトルク変更部23iによって変更された変更後目標クラッチトルクTc*aとなるようにクラッチアクチュエータ25a,25bを制御するクラッチトルク変更部23jを備えている。
これによれば、自動変速機10の変速制御中において、車両加速度の変動を検出した場合、クラッチトルクを所定のクラッチトルクに制御(変更)することが可能となる。よって、自動変速機10の変速制御中において、車両加速度が想定する所定の車両加速度(想定車両加速度)に対して変動することを抑制することができる。その結果、車両加速度の安定化を図りひいては運転者のフィーリングを向上させる自動変速機10を提供することができる。
また、車両加速度変動検出部23gは、エンジン11のトルクであるエンジントルクとクラッチトルクとによって算出されるエンジン11の想定回転加速度と、エンジン11の実際の回転加速度とを比較することにより、車両加速度の変動を検出する。
これによれば、自動変速機10の変速制御中において、車両加速度の変動を的確に検出することが可能となる。
また、目標クラッチトルク変更部23iは、車両加速度の変動量に応じて目標クラッチトルクTc*を変更する。
これによれば、車両加速度の変動をより適切かつ早期に抑制することが可能となる。
なお、上述した実施形態において、車両加速度変動検出部23gは、車両Mの速度から算出した車両加速度の絶対値が所定値より大きい場合、車両加速度の変動を検出するようにしてもよい。TCU23は、上述したステップS116,118の処理を行わず、ステップS202において、車両Mの速度(車速)から車両加速度を算出する。TCU23は、上述したステップS120の処理に代えて、図6に示すステップS204の処理を行うようにすればよい。ステップS204において、TCU23は、ステップS202にて算出された車両加速度の絶対値が所定値より小さい場合、車両加速度の変動はないと判定する(すなわち、車両加速度の変動を検出しない)。一方、TCU23は、車両加速度の絶対値が所定値より大きい場合、車両加速度の変動があると判定する(すなわち、車両加速度の変動を検出する)。
これによれば、自動変速機10の変速制御中において、車両加速度の変動を的確に検出することが可能となる。
また、上述した実施形態においては、本発明をダウンシフトの作動に適用した場合について説明したが、本発明はアップシフトの作動に適用することは可能である。アップシフトの場合は、エンジン回転速度が大から小へ変更する際に、実回転加速度が想定回転加速度から所定乖離量より大きく乖離した場合、車両加速度が所定変動量だけ変動したと判定可能となる。
また、本発明は、デュアルクラッチ式自動変速機に適用することに限定されるものではなく、例えば、特開2008−75814号公報に記載されているように、既存のマニュアルトランスミッションにアクチュエータを取付け、運転者の意思、若しくは車両状態によって、変速操作(クラッチの断接、ギヤシフト、およびセレクト)を自動的に行なう自動変速機(AMT(オートメイテッドマニュアルトランスミッション))に適用することも可能である。
また、上述した実施形態においては、FFタイプの車両Mに好適な自動変速機10を例にして説明したが、FR(フロントエンジンリヤドライブ)タイプの車両Mにも適用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。