JP2017115108A - セット - Google Patents

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Abstract

【課題】被着物体の接合面に対して非平行な角度で引っ張って剥がす場合においても、スムーズな引き剥がしが可能であり、被着体が変形または破損せず、伸長性粘着シートが千切れ難いセットを提供する。【解決手段】本発明により提供されるセットは、一の物体と他の物体とを接合する両面接着性の伸長性粘着シートと、該一の物体および該他の物体のうち一方の物体の被接着面端部に設けられる伸長補助フィルムと、を備える。前記伸長補助フィルムの厚さは230μm未満である。【選択図】図1

Description

本発明は、セットに関し、より具体的には、再剥離性接着セットに関する。
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、粘着シートの形態で、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン等の携帯型電子機器における部品の固定等に好ましく利用されている。また、被着体に貼り付けられた粘着シートは、被着体やその周辺部材の修理や交換、検査、リサイクル等の際に被着体から除去され得る。この種の再剥離可能な粘着シートに関する従来技術を開示する文献として、特許文献1〜6が挙げられる。なお、特許文献1は、皮膚に貼り付けられる医療用粘着シートに関するものである。
特表2005−500133号公報 特開2000−96006号公報 特開2000−96007号公報 特開2002−235046号公報 特開2002−235058号公報 特表2010−531917号公報
粘着シートを被着体から除去する場合、被着体の強度等にかかわらず、当該被着体が変形または破損することなく除去作業が完了することが望ましい。その一手段として、伸長性粘着シートを利用する方法が特許文献2〜6に開示されている。この方法では、伸長性粘着シートの端部を把持して引っ張ることで、粘着シートを伸長変形させて接着面積を減少させる。その結果、粘着シートは被着体から除去される。この粘着シートは伸長性を有するため、粘着シートを剥がすときの被着体への負荷は顕著に低減される。例えば、伸長性粘着シートを2つの物体の接合に利用した場合に、伸長性粘着シート除去時における当該粘着シートの引っ張り方向が上記物体の接合面とほぼ平行していると、伸長性粘着シートは2つの物体の間から引き抜かれるように除去され得る。このような引き抜き剥離は、伸長性粘着シートを引っ張る力がすべて当該粘着シートの引き抜きおよび伸長変形(引き伸ばし)に利用されるため理想的な除去といえる。
しかし、伸長性粘着シートの接着箇所や周辺空間が制限されている場合には、2つの物体の接合面に対して伸長性粘着シートを平行に引っ張ることができず、当該接合面に対して非平行な角度で伸長性粘着シートを引っ張って伸長性粘着シートを除去することになる。このとき、伸長性粘着シートは、被着体である一方の物体の端部に押し当てられつつ伸長し、引き剥がされる。このような場合、被着体の端部形状、材質等によっては、上記接合面に対する引っ張り角度に応じて、被着体端部に負荷がかかる。その結果、引き抜き性が低下し、被着体が変形または破損したり、あるいは伸長性粘着シートが千切れるおそれがあった。
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、被着物体の接合面に対して非平行な角度で引っ張って剥がす場合においても、スムーズな引き剥がしが可能であり、被着体が変形または破損せず、伸長性粘着シートが千切れ難いセットを提供することを目的とする。
本発明によると、一の物体と他の物体とを接合する両面接着性の伸長性粘着シートと、該一の物体および該他の物体のうち一方の物体の被接着面端部に設けられる伸長補助フィルムと、を備えるセットが提供される。前記伸長補助フィルムの厚さは230μm未満である。被着体となる物体の被接着面端部に、所定以下の厚さを有する伸長補助フィルムを設けることにより、伸長性粘着シートの除去時に、上記物体の接合面に対して非平行な角度で当該粘着シートを引っ張ったときに、上記被接着面端部において伸長性粘着シートは伸長補助フィルムに接触する。この伸長補助フィルムの存在によって、被着体の端部形状、材質等によらず、上記引っ張り力は伸長性粘着シートの伸長に効率よく利用される。伸長性粘着シートの伸長は、接着面積の減少を通して伸長性粘着シートの引き剥がしに寄与するため、上記の伸長を利用して伸長性粘着シートのスムーズな引き剥がしが実現される。同時に、伸長性粘着シートの伸長とは逆に上記引っ張りに対する被着体端部での負荷は小さくなる。この作用は、伸長補助フィルムが被着物体の端部と伸長性粘着シートとの間で緩衝材として機能することと相俟って、被着体の変形または破損を防止する。また、伸長性粘着シートも伸長補助フィルムの存在によって千切れ難い。
なお、本明細書における「セット」は、接着(典型的には接合)に用いた粘着シートの再剥離(除去または取外しともいう。)を目的とすることから、再剥離性接着セットともいう。また、本明細書において「再剥離性」とは、被着体である物体から除去可能であることを意味する。より具体的には、伸長性粘着シートによって一の物体と他の物体とが接合された状態から、当該粘着シートを引っ張ることにより一の物体と他の物体との接合状態を解除することや、上記引っ張りによって伸長性粘着シートが被着体から引き剥がされること(除去されること)が可能であることをいう。「再剥離が可能な」も基本的に同義であり、ここに開示される伸長性粘着シートは、再剥離が可能な伸長性粘着シートということができる。本明細書における「引き剥がし」とは、典型的には、引っ張りによる被着体からの引き剥がし(引張り除去ともいう。)や、引き抜き操作による引き剥がし(引き抜き除去ともいう。)のことを指す。また、本明細書における「接着」とは、典型的には、粘着作用を利用して一の物体と他の物体とを接合するための接着を指す。また、本明細書における「物体」は、一物品または一部材の2箇所であり得る。また、「一の物体」および「他の物体」は、それぞれ一つの物体であってもよく、あるいは一方または両方が2以上の物体であってもよい。
ここに開示される技術(セット、接合方法、接合解除方法等を包含する。以下同じ。)の好ましい一態様では、前記伸長補助フィルム背面の動摩擦係数は0.20以下である。このように構成することで、伸長性粘着シートの除去時に、物体の接合面に対して非平行の角度で伸長性粘着シートを引っ張ったときに、被着体の被接着面端部における負荷が低減する。その結果、被着体の変形または破損が好ましく防止される。また、伸長性粘着シートも、より千切れ難くなる。同時に、伸長性粘着シートを引っ張る力は、伸長性粘着シートの伸長に効果的に割り当てられるので、当該粘着シートの伸長を利用して伸長性粘着シートのスムーズな引き剥がしが好ましく実現される。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記伸長性粘着シートは、0.5〜5MPaのせん断接着力を示す。ここに開示される技術による効果は、所定の範囲内の接着力を有する伸長性粘着シートを用いる構成に対して好ましく発揮される。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記伸長性粘着シートは、前記一の物体と前記他の物体とを接合する接着部と、該接合される物体の間からはみ出す露出部と、を有する。上記のように構成することで、一の物体と他の物体とが伸長性粘着シートを間に挟んで接合された状態において、露出部を引くことで該伸長性粘着シートが伸長し、該一の物体と該他の物体との接合状態が解除される。換言すると、前記伸長性粘着シートの接着部は、前記一の物体と前記他の物体とを該接着部で接合した状態において前記露出部を引くことによって、伸長することが可能である、また、前記接着部は、その伸長によって、該一の物体と該他の物体との接合状態が解除されるように構成されている。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記伸長性粘着シートおよび前記伸長補助フィルムは、線状に延びる帯形状を有することが好ましい。また、前記伸長補助フィルムは、その長手方向が前記伸長性粘着シートの長手方向と交差するように配置されていることがより好ましい。そして、前記伸長補助フィルムの長さは、前記伸長性粘着シートの幅と同じか、それよりも長いことがさらに好ましい。このように構成することで、伸長性粘着シートの除去時に、伸長性粘着シートが、伸長補助フィルムから逸れて物体に接触する事象が好ましく防止される。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記伸長性粘着シートは、間隔をおいて配置された複数の粘着シート片からなる。このように構成することで、一の物体と他の二以上の物体とを接合することができる。また、一の物体と他の一の物体との接合においても、より少ない接着面積で良好な接合機能を発揮することができる。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、記伸長補助フィルムは、該伸長補助フィルムの背面を構成する樹脂基材と、該樹脂基材の片面に設けられた粘着剤層と、を備える。上記構成の伸長補助フィルムを、被着体となる物体の被接着面の端部に設けることで、伸長性粘着シートの除去時に、上記物体の接合面に対して非平行な角度で伸長性粘着シートを引っ張ったときに、よりスムーズな引き剥がしが実現される。また、被着体の変形または破損が好ましく防止され、伸長性粘着シートも、より千切れ難くなる。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記伸長補助フィルムにおいて、前記樹脂基材は、フッ素系樹脂フィルムまたは超高分子量ポリエチレンフィルムである。上記樹脂材料を伸長補助フィルムの基材に用いることで、伸長補助フィルム背面の動摩擦係数が低くなる。その結果、伸長性粘着シートの除去時に、接合面に対して非平行の角度で伸長性粘着シートを引っ張っても、被着物体の被接着面の端部での負荷は低く抑制され、よりスムーズな引き剥がしが実現される。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記伸長補助フィルムの厚さは150μm以下である。上記伸長補助フィルムは、厚さがさらに制限されているので、伸長性粘着シートによる接合を妨げず、また、伸長性粘着シートの除去時にはスムーズな引き剥がしを妨げない。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記伸長性粘着シートは、前記一の物体と前記他の物体とを接合した状態から、該一の物体と該他の物体との接合面に対して45°以上の角度で引っ張って除去することが可能である。より具体的には、前記伸長性粘着シートは、前記一の物体と前記他の物体とを接合した状態から、該一の物体と該他の物体との接合面に対して45°以上の角度で引っ張ることによって、該一の物体と該他の物体との接合状態を解除することが可能であり、且つ該一の物体と該他の物体との間から除去されるように構成されたものであり得る。伸長性粘着シートの除去時において上記角度で伸長性粘着シートを引っ張ると、伸長性粘着シートは被着物体の端部に押し付けられながら引き剥がされる。そのため、被着物体および伸長性粘着シートの双方がダメージを受け得る。上記構成によると、伸長補助フィルムが被着物体に設けられているので、被着物体および伸長性粘着シートのダメージが軽減される。また、伸長補助フィルムの厚さは所定以下に制限されているので、伸長性粘着シートのスムーズな引き剥がしを妨げない。
ここに開示されるセットは、携帯型電子機器に好ましく用いられる。ここに開示されるセットによると、被着物体の接合面に対して非平行な角度で引っ張って剥がす場合であっても、伸長性粘着シートのスムーズな引き剥がしが可能であり、また、被着体の変形、破損が防止され、伸長性粘着シートも千切れ難い。この特長を利用して、電子機器を構成する部材の修理や交換、製品検査等の際に除去される機会の多いバッテリー固定用途に特に好ましく使用される。ここに開示される技術によると、バッテリーを固定するために好ましく使用されるセットが提供される。したがって、本明細書によると、伸長性粘着シートによって部材(例えばバッテリー)が固定された携帯型電子機器が提供される。この携帯型電子機器において、上記部材の被接着面端部には伸長補助フィルムが固定されている。また、上記伸長補助フィルムは、少なくとも上記伸長性粘着シートの引き剥がしの際に該伸長性粘着シートと接触し得る。
また、本明細書によると、一の物体と他の物体とを接合する両面接着性の伸長性粘着シートと、該一の物体および該他の物体のうち一方の物体の被接着面端部に設けられる伸長補助フィルムと、を備えるセットが提供される。この伸長補助フィルムは、端部に向かうにつれて厚さが減少する部分を有する。被着体となる物体の被接着面端部に伸長補助フィルムを設けることにより、伸長性粘着シートの除去時に、上記物体の接合面に対して非平行な角度で当該粘着シートを引っ張ったときに、上記被接着面端部において伸長性粘着シートは伸長補助フィルムに接触しながら引き剥がされる。この伸長補助フィルムの存在によって、被着体の端部形状、材質等によらず、上記引っ張り力は伸長性粘着シートの伸長に効率よく利用される。伸長性粘着シートの伸長は、接着面積の減少を通して伸長性粘着シートの引き剥がしに寄与するため、上記の伸長を利用して伸長性粘着シートのスムーズな引き剥がしが実現される。また、伸長補助フィルムは、その厚さが減少している部分(厚さ減少部)を有するので、当該厚さ減少部を伸長性粘着シートに当接するように伸長補助フィルムを被接着面端部に配置することで、伸長補助フィルムの厚さを原因とする引き剥がし性の低下を抑制することができる。また、伸長性粘着シートの伸長とは逆に上記引っ張りに対する被着体端部での負荷は小さくなるので、伸長補助フィルムが被着物体の端部と伸長性粘着シートとの間で緩衝材として機能することと相俟って、被着体の変形または破損は防止される。伸長性粘着シートも伸長補助フィルムの存在によって千切れ難い。
また、本発明によると、一の物体と他の物体とを分離可能に接合する方法が提供される。この方法は、伸長性粘着シートと伸長補助フィルムとを用意する工程と;前記伸長補助フィルムを前記一の物体および前記他の物体のうち一方の物体の被接着面端部に取り付ける工程と;前記伸長性粘着シートの接着部を前記一の物体と前記他の物体とに貼り付ける工程と;を含む。また、前記伸長補助フィルムは、前記伸長性粘着シートの除去時に、前記物体の接合面に対して非平行な角度で該伸長性粘着シートを引っ張ったときに、前記被接着面端部において伸長性粘着シートに接触するように配置されている。この方法によって物体に貼り付けられた伸長性粘着シートは、被着物体の接合面に対して非平行な角度で引っ張って剥がす場合においても、スムーズな引き剥がしが可能であり、被着体が変形または破損せず、伸長性粘着シートが千切れ難い。したがって、上記方法によると、物体の接合およびその解除を好ましく実行することができる。好ましい一態様では、前記伸長補助フィルムの厚さは230μm未満である。他の好ましい一態様では、前記伸長補助フィルムは、端部に向かうにつれて厚さが減少する部分を有する。このように構成することで、よりスムーズな引き剥がしが可能となり、被着体の変形、破損、伸長性粘着シートの千切れがより好ましく防止される。
また、本発明によると、伸長性粘着シートによって接合された一の物体と他の物体との接合を解除する方法が提供される。前記伸長性粘着シートは、前記一の物体と前記他の物体とを接合している接着部と、該接合された物体の間からはみ出す露出部と、を有する。また、前記方法は、前記一の物体と前記他の物体とが前記伸長性粘着シートを間に挟んで接合された状態において前記露出部を引っ張る工程、を含む。この露出部の引っ張りにより伸長性粘着シートは伸長して、一の物体と他の物体との接合状態は解除される。ここで、前記一の物体および前記他の物体のうち一方の物体の被接着面端部には、伸長補助フィルムが予め取り付けられている。具体的には、伸長補助フィルムは、一の物体と他の物体との接合よりも前に一方の物体に取り付けられている。前記伸長補助フィルムは、前記伸長性粘着シートを前記物体の接合面に対して非平行な角度で引っ張ったときに、前記被接着面端部において前記伸長性粘着シートに接触するように配置されている。この方法によると、被着物体の接合面に対して非平行な角度で引っ張って剥がす場合においても、伸長補助フィルムが存在することによって、一の物体と他の物体との接合状態をスムーズに解除することができる。また、当該接合状態の解除において、被着体の変形や破損、伸長性粘着シートの千切れを防止することができる。好ましい一態様では、前記伸長補助フィルムの厚さは230μm未満である。他の好ましい一態様では、前記伸長補助フィルムは、端部に向かうにつれて厚さが減少する部分を有する。このように構成することで、よりスムーズな引き剥がしが可能となり、被着体の変形、破損、伸長性粘着シートの千切れがより好ましく防止される。
被着体(物体)に貼り付けられた状態における再剥離性接着セットの一構成例を模式的に示す側面図である。 図1の再剥離性接着セットを右方から見た模式的側面図である。 図1を部分的に拡大した図であって、伸長性粘着シートによって接合された一の物体と他の物体との接合状態の解除を説明するための側面図である。 図2に対応する図であって、再剥離性接着セットの変形例の模式的側面図である。 再剥離性接着セットの他の変形例の一部を拡大して示す模式的側面図である。 引張り除去の一態様を説明するための模式的側面図であって、(a)は引張り除去を開始する状態を示す図であり、(b)はタブを引っ張って除去を行っている状態を示す図であり、(c)は引張り除去が完了した状態を示す図である。 引張り除去の一態様を説明するための模式的上面図であって、(a)は引張り除去を開始する状態を示す図であり、(b)はタブを引っ張って除去を行っている状態を示す図であり、(c)は引張り除去が完了した状態を示す図である。 伸長性粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。 せん断接着力の測定方法を模式的に示す説明図である。 引張り剥離応力Bの測定方法を模式的に示す説明図である。 伸長補助フィルムの一構成例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。なお、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明のセットや伸長性粘着シート、伸長補助フィルムのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。
また、この明細書において「伸長性粘着シート」とは、個人(標準的な成人)が把持して引き伸ばすことが可能な程度の伸長性を有する粘着シートをいう。典型的には、被着体に貼り付けられた状態でせん断方向に引っ張ったときに、粘着シートの伸長によって被着体との接着面積が減少し、最終的に被着体から剥離することが可能な程度の伸長性を有する粘着シートであり得る。好ましくは、後述する破断時伸びを示す粘着シートであり得る。なお、本明細書において「伸長性粘着シート」は、単に「粘着シート」と略す場合がある。
また、この明細書において「帯形状」とは、線状に延びる形状であって幅(線状に延びる方向に直交する方向における長さ)を有する形状を意味する。上記帯形状は、上記線状に延びる方向において所定の長さを有し、かつ該長さよりも短い幅を有する形状であり、長方形状やストリップ形状を包含する概念である。したがって、帯形状は長尺状と言い換えることができる。一態様に係る帯形状は、直線状に延びる形状を有するが、曲線状に延びる形状を有するものであってもよく、直線状に延びる部分と曲線状に延びる部分とを有するものを包含し得る。上記帯形状の幅は一定でなくてもよい。
また、この明細書において「タブ」は、伸長性粘着シートを引っ張る際の起点(引っ張りの起点)となる「つまみ」を意味する語として用いられ、その他の要素(形状や材質等)については特に制限されない。通常、タブは指で把持できる程度の大きさを有し、かつ指で把持することが可能な形状(例えば平面矩形状)を有するが、機械や器具を利用してタブを引っ張る態様もあり得ることから、指で把持できる大きさを有する必要はなく、形状の制限もない。例えば、穿孔を有するタブは、該穿孔にフックを挿通して引っ張ることが可能であるので、微小なサイズを有し得る。典型的なタブは伸長性粘着シートから連続した平面状であり、引っ張りによっては伸長しないか、あるいは伸長するとしても伸長性粘着シートよりも低伸長性であることが好ましい。
<再剥離性接着セットの構成>
図1は、被着体(物体)に貼り付けられた状態における再剥離性接着セットの一構成例を模式的に示す側面図である。図2は、図1の再剥離性接着セットを右方から見た模式的側面図である。図3は、図1を部分的に拡大した図であって、伸長性粘着シートによって接合された一の物体と他の物体との接合状態の解除を説明するための側面図である。
ここに開示される再剥離性接着セットは、図1〜3に模式的に示される構造を有するものであり得る。図1に示す再剥離性接着セット1は、伸長性粘着シート10と伸長補助フィルム50と、を備える。伸長性粘着シート10は、両面接着性であり、一の物体80と他の物体90とを接合するために用いられる。また、伸長性粘着シート10は、再剥離が可能であり、接合目的を終えた後、被着体から除去することができる。この点については後述する。伸長補助フィルム50は、伸長性粘着シート10によって接合される一の物体80および他の物体90のうち一方の物体80の被接着面80Aの端部に取外し可能に固定されている。そこで、伸長補助フィルム50は伸長性粘着シート10と接触している。
伸長性粘着シート10は、上面からみたとき直線状に延びる帯形状を有しており、物体80,90の間に挟まれた状態で、物体80,90に接着している。この実施形態では、伸長性粘着シート10として、基材の両面に粘着剤層が設けられた基材付き両面粘着シートが用いられている。また、伸長性粘着シート10は接着部12と露出部14とを有する。接着部12は、物体80,90の間に挟まれており、この接着部12における各粘着面は、物体80,90にそれぞれ接着している。これによって、物体80,90は接合されている。露出部14は、伸長性粘着シート10の長手方向の一端に位置する。露出部14は、接合される一の物体80と他の物体90との間からはみ出している。換言すると、露出部14は、物体80,90の外部に露出している。なお、露出部14は物体80には接着していないが、物体80,90の接合時には露出部14の粘着面を物体80の外表面に接触させて仮固定することができる。また、露出部14の端部には、図示しないタブが設けられている。
伸長補助フィルム50は、片面接着性の粘着フィルムである。この実施形態の伸長補助フィルム50の背面50Bは樹脂基材によって構成されている。また、伸長補助フィルム50の厚さは230μm未満に制限されている。さらに、伸長補助フィルム50は、物体80の被接着面(ここでいう被接着面とは伸長性粘着シート10が貼り付けられる面という意味である。)80Aの端部に取外し可能に固定されている。具体的には、伸長補助フィルム50において、背面50Bとは反対側の表面は粘着面(具体的には粘着剤層表面)50Aとなっており、その粘着面50Aが、物体80の被接着面80Aの端部から該被接着面80Aと隣接する側面80Bの一部に亘るように折れ曲がって貼り付けられている。したがって、伸長補助フィルム50は、物体80の被接着面80Aと隣接側面80Bとの間の角部80Cの一部を覆っている。
また、伸長補助フィルム50の背面50Bは、一の物体80と他の物体90とを接合する伸長性粘着シート10の一方の粘着面と接触している。つまり、伸長補助フィルム50の一部は、一の物体80と他の物体90との間に位置している。しかし、伸長補助フィルム50の厚さは上記のように制限されているので、伸長性粘着シート10による一の物体80と他の物体90との接合への影響はないか、あっても少ない。また、上記粘着面と接触する伸長補助フィルム50の背面50Bの動摩擦係数は0.20以下である。伸長補助フィルム50のサイズは、伸長性粘着シート10が物体80の被接着面80Aの端部(典型的には角部80C)に直接接触しない大きさを有する。また、伸長性粘着シート10による接合を妨げないよう、伸長補助フィルム50の被接着面80Aにおける接着面積は、角部80Cから数mm以下(凡そ10mm未満、例えば5mm以下、さらには2〜3mm以下)の範囲に制限されていることが好ましい。この実施形態の伸長補助フィルム50は長方形状を有しており、その長手方向が伸長性粘着シート10の幅方向とほぼ平行している。また、図2に示すように、伸長補助フィルム50の長さ(伸長性粘着シート10の長手方向に交差(典型的にはほぼ直交)する方向の長さ。典型的には、伸長性粘着シートの幅方向にほぼ平行する長さ)は、伸長性粘着シート10の幅と同程度か、それよりも長く構成されていることが好ましい。この実施形態では、伸長補助フィルム50の長さは、伸長性粘着シート10の幅よりも長く構成されている。
次に、上記再剥離性接着セット1を用いて行った物体80,90の接合の解除について、図1,3を参照して説明する。図1に示されるように、両面接着性の伸長性粘着シート10は、その接着部12が物体80,90の間に配置されて、物体80,90を接合している。また、伸長性粘着シート10は、その端部が露出部14として物体80,90の外部にはみ出している。この実施形態では、物体80としてバッテリー(より具体的にはポリマーバッテリー)が用いられており、物体90として携帯型電子機器本体が用いられている。この状態から、物体80,90の接合状態を解除したい場合に、伸長性粘着シート10の露出部14(より具体的には、露出部14に設けられたタブ)を把持して、物体80,90間から引き抜くように引っ張る。このとき、伸長性粘着シート10の接着箇所や周辺空間が制限されている場合には、図3に示すように、伸長性粘着シート10を物体80,90の接合面に対して非平行な角度(例えば45°以上、典型的には70〜90°の角度)で引っ張ることになる。特に、物体80が携帯型電子機器用のバッテリーの場合、バッテリー周辺のスペースは概して狭いため、このような事態は発生しやすい。
上記のような引っ張り操作で伸長性粘着シート10を引き抜く場合、伸長性粘着シート10は、引っ張り方向(図3の矢印方向)側に位置する物体80の角部80Cに押し当てられる。ここで、伸長性粘着シート10と角部80Cとの間には伸長補助フィルム50が存在しているので、伸長性粘着シート10は、伸長補助フィルム50の背面50Bに当接しながら伸長し、引き剥がされる。このとき、伸長補助フィルム50は、物体80の端部(典型的には角部80C)を保護しつつ、上記角部80Cにおける伸長性粘着シート10に対する抵抗(摩擦抵抗)を低減する。そのため、伸長性粘着シート10を引っ張る力は、効率よく伸長性粘着シート10の伸長に利用される。そして、伸長性粘着シート10の伸長は、接着面積の減少を通して伸長性粘着シート10の引き剥がしに寄与するため、伸長性粘着シート10のスムーズな引き剥がしが実現される。また、伸長補助フィルム50の厚さは所定値以下に制限されているので、伸長補助フィルム50の厚さを原因とする引き剥がし性の低下は抑制される。上記引き剥がし操作において、伸長性粘着シート10の伸長に利用される力の増大とは逆に、上記引っ張りに対する角部80Cでの抵抗は小さくなり、この抵抗を原因とする物体80の変形または破損は防止される。また、伸長性粘着シート10も伸長補助フィルム50の存在によって千切れ難い。
次に、図4を参照して、上記実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、物体の端部に取り付けられた1枚の伸長補助フィルムに対して、1枚の伸長性粘着シートによって再剥離性接着セットが構成されていたが、変形例に係る再剥離性接着セット2は、1枚の伸長補助フィルムに対して2枚の伸長性粘着シートを備える。具体的には、図4に示すように、再剥離性接着セット2は、物体80,90の間に配置された複数(具体的には2つ)の伸長性粘着シート10(複数の伸長性粘着シートの各々を、伸長性粘着シートと区別する意味で「粘着シート片」という場合がある。)と、物体80の被接着面80Aの端部に取り付けられた1枚の伸長補助フィルム50と、を備える。複数の伸長性粘着シート10は、互いに間隔をおいて配置されている。この実施形態では、複数の伸長性粘着シート10は、直線状に延びる帯形状を有しており、互いに間隔をおいてほぼ平行に配置されている。また、複数の伸長性粘着シート10の各々は、物体80,90を接合している。具体的には、物体80,90の間に挟まれた状態で物体80,90に接着している。伸長補助フィルム50も、直線状に延びる帯形状を有しており、その長手方向が上記複数の伸長性粘着シート10の幅方向と交差(具体的にはほぼ直交)するように物体80の被接着面80Aの端部に取り付けられている。ここに開示される技術は、上記のような1枚の伸長補助フィルム50を、2枚以上の伸長性粘着シート10に適用する構成を包含する。
さらに、図5を参照して、上記実施形態の他の変形例について説明する。本変形例に係る伸長補助フィルム350は、厚さが変化している点が上記実施形態と異なる。伸長補助フィルム350は、端部に向かうにつれて厚さが減少する部分(便宜上「厚さ減少部」または「厚さ漸減部」ともいう。)352を有する。具体的には、伸長補助フィルム350は、図示されるように、物体80の被接着面80Aの端部と被接着面80Aの隣接側面80Bの一部に亘るように折り曲がって貼り付けられており、物体80の被接着面80Aと隣接側面80Bとの間の角部80Cの一部を覆っている。そして、上記被接着面80Aに貼り付けられる部分の一部(厚さ減少部)352は、角部80Cから離れるにつれて、その厚さが減少するように構成されている。具体的には、厚さ減少部352はスロープ状に厚さが減少している。この厚さが減少する方向は伸長性粘着シート10の引き抜き方向と逆の方向であるため、物体80,90の接合状態を解除する際に伸長性粘着シート10を引っ張ったときに、伸長性粘着シート10は、伸長補助フィルム350と、伸長補助フィルム350のスロープ状の部分と接触しながら引き抜かれることとなる。これにより、伸長補助フィルム350の厚さによって形成される段差に伸長性粘着シート10がひっかかって、伸長性粘着シート10の引き剥がし性が低下する事象を防止することができる。この変形例では、厚さ減少部352の存在により、伸長補助フィルム350の厚さは特に制限されない。
なお、上記実施形態では、再剥離性接着セットは、伸長性粘着シートと伸長補助フィルムとをそれぞれ一つずつ備えるものであったが、これに限定されず、上記変形例のように、一の伸長補助フィルムと複数の伸長性粘着シートとを備えるものであり得る。また、上記実施形態では、再剥離性接着セットは、一の物体と他の一の物体とを接合するものであったが、ここに開示される技術はこれに限定されない。例えば、一の物体と他の一の物体とは、一物品または一部材の2箇所であり得る。また、一の物体および他の物体は、それぞれ一つの物体であってもよく、あるいは一方または両方が2以上の物体であってもよい。
また、上記実施形態では、再剥離性接着セットを構成する粘着シートは帯形状を有する両面接着性の伸長性粘着シートであったが、ここに開示される伸長性粘着シートの形状は、これに限定されない。伸長性粘着シートは、例えば、正方形状であってもよく、一部に帯状部分を有するものであってもよい。伸長性粘着シートは、典型的には、上記実施形態のように直線状に延びる形状を有するが、これに限定されず、曲線状に延びる形状や、直線と曲線とを有する形状(例えばくの字状や、コの字状、弧状、波状、ジグザグ状等の形状)を有するものであってもよい。
また、上記実施形態では、伸長性粘着シートの露出部の表面は粘着性を有していたが、ここに開示される技術は、これに限定されるものではない。露出部の表面と接着部の表面とは、同じ材料(典型的には、同じ組成の粘着剤)からなるものであってもよく、異なる材料からなるものであってもよい。露出部の表面は非粘着性または低粘着性であってもよい。なお、露出部の表面が低粘着性であるとは、接着部の表面と比べて粘着力(典型的には対SUS180度剥離強度)が低いことをいうものとする。例えば、露出部の粘着面にパウダーをまぶしたり、当該粘着面を樹脂フィルム等の薄膜で覆う等することにより、露出部の表面を非粘着性または低粘着性にすることができる。また、伸長性粘着シートが基材付き粘着シートの場合には、粘着剤層を形成しないか、あるいは形成した粘着剤層を除去することにより、露出部の表面を非粘着性または低粘着性とすることができる。この場合、露出部は、粘着剤層が存在しない基材フィルムのみからなるものであり得る。
また、上記実施形態では、伸長補助フィルムは片面粘着フィルムであったが、ここに開示される技術はこれに限定されるものではない。例えば、伸長補助フィルムは、それ自体は非接着性または低粘着性の樹脂フィルムであり、公知ないし慣用の接着剤等の接着手段を用いて被着体に固定されるものであってもよい。また、上記実施形態では、伸長補助フィルムの背面全体の動摩擦係数が所定値以下であったが、伸長補助フィルムの背面の少なくとも一部(伸長性粘着シートと接触する部分を含む一部)の動摩擦係数が所定値以下であればよい。例えば、伸長補助フィルムは、その背面のうち伸長性粘着シートと接触する部分を含む一部のみが所定値以下の動摩擦係数を示すものであり得る。
また、上記実施形態では、一の物体および他の物体のうち上方に位置する物体の端部に伸長補助フィルムは取り付けられていたが、ここに開示される技術はこれに限定されず、伸長補助フィルムは、伸長性粘着シートが引っ張られる側に位置する物体に取り付けられていればよい。あるいは、伸長補助フィルムは一の物体および他の物体の両方に取り付けられてもよい。
また、上記実施形態では、タブが設けられていたが、タブはなくてもよい。タブを設ける場合、タブは、後述する範囲内で目的等に応じて適切な設計とすることができる。あるいは、伸長性粘着シートの表面を非粘着性または低粘着性とする処理を行うことにより、伸長性粘着シートそのものをタブとして利用することも可能である。また、上記実施形態では、タブは、帯形状を有する伸長性粘着シートの長手方向の一端に固定されていたが、これに限定されるものではない。タブは、伸長性粘着シートを引くことができる任意の箇所に設けることができる。例えば、タブは、帯形状を有する伸長性粘着シートの長手方向の両端に設けられていてもよい。
<伸長性粘着シートの引き抜き除去>
ここに開示される再剥離性接着セットを構成する伸長性粘着シートは、物体間から引き抜くようにして除去する性能(引き抜き除去性)に優れる。ここで引き抜き除去性とは、伸長性粘着シートを挟んで固定された一の物体および他の物体から、該粘着シートのタブを露出させておき、この露出タブを引っ張り、伸長性粘着シートを引き抜くことで物体の固定(典型的には接合)の解除を行うような除去のしやすさのことをいう。なお、一の物体と他の物体とは一部材の2箇所であり得る。特に、ここに開示される技術によると、被着物体の接合面に対して非平行な角度で引っ張って剥がす場合においても、スムーズな引き剥がしが可能である。また、引き抜き除去の際に、伸長性粘着シートが千切れたり、被着物体が変形、破損したりする事象が好ましく防止される。以下、図6,7を参照してより具体的に説明する。
図6は、引張り除去(典型的には引き抜き除去)の一態様を説明するための模式的側面図であって、(a)は伸長性粘着シートの引張り除去を開始する状態を示す図であり、(b)はタブを引っ張って除去を行っている状態を示す図であり、(c)は伸長性粘着シートの引張り除去が完了した状態を示す図である。図7は、引張り除去(典型的には引き抜き除去)の一態様を説明するための模式的上面図であって、(a)〜(c)はそれぞれ図7の(a)〜(c)に対応する図である。
図6の(a)、図7の(a)に示すように、伸長性粘着シート(両面粘着シート)110には、一の物体180と他の物体190とを接合する際に外部に露出するタブTが設けられている。この伸長性粘着シート110を用いて物体190に物体180を接合する。また、この接合に先立って、物体180の被接着面180Aの端部には、伸長補助フィルム150が取り付けられている。そして、修理、交換等を目的として物体180と物体190との接合状態を解除したい場合に、伸長性粘着シート110を物体180と物体190との間から引き抜く。具体的には、タブTを指でつまんで物体180,190間から引き抜くように伸長性粘着シート110を引っ張る。このとき、スムーズな引き剥がしを実現するには、伸長性粘着シート110の引っ張り方向が物体180,190の接合面とほぼ平行していることが好ましい。しかし、伸長性粘着シートの接着箇所や周辺空間が制限されている場合には、図6の(a)に示すように、物体180,190の接合面に対して非平行な角度(典型的には45度以上90度以下の角度)で伸長性粘着シート110を引っ張ることになる。
上記のようにして伸長性粘着シート110を引っ張ると、伸長性を有する粘着シート110は伸び始め、引張り方向に直交する方向が収縮し、物体180,190から剥がれ始める(図6の(b)、図7の(b)参照)。このとき、伸長性粘着シート110は、被着体である一方の物体180の被接着面180Aの端部に押し当たろうとするが、物体180の端部には伸長補助フィルム150が取り付けられているため、補助フィルム150の背面と接触しながら伸長し、引き剥がされていく。ここで、上記伸長補助フィルム150の厚さを所定以下に制限することにより、伸長性粘着シート110の引っ張りに対する抵抗が低減され、伸長性粘着シート110はスムーズに引き抜かれていく。そして、最終的に伸長性粘着シート110の全接着領域が剥がれて、伸長性粘着シート110の物体180,190間からの引き抜きは完了する(図6の(c)、図7の(c)参照)。物体190に接合されていた物体180の取外しも同時に完了する。なお、物体180の端部に取り付けられた伸長補助フィルム50は、必要に応じて別途手剥がし等により除去される。
<伸長性粘着シートの構成>
ここに開示される再剥離性接着セットを構成する伸長性粘着シートは、例えば、粘着剤層をフィルム状基材(支持体)の両面に有する形態の基材付き両面粘着シートである。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
ここに開示される伸長性粘着シートは、例えば、図8に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。図8に示す伸長性粘着シート210は、フィルム状基材220の各面(いずれも非剥離性)にそれぞれ粘着剤層231,232が設けられている。使用前の伸長性粘着シート210は、粘着剤層231,232の各表面(各粘着面)が剥離ライナー(図示せず)に保護された構成を有している。あるいは、ここに開示される伸長性粘着シートは、特に図示しないが、粘着剤層のみからなる基材レスの両面粘着シートであってもよい。
また、伸長性粘着シートは、引張り除去性の観点から、長尺状部分(帯状部分、長方形状部分であり得る。以下同じ。)を有することが好ましい。これにより、被着体に貼り付けられた伸長性粘着シートにおいて、長尺状に形成された部分の長手方向の一端を把持して引くことで、伸長性粘着シートを被着体から好ましく引張り除去することができる。上記長尺状部分の形状は、典型的には帯状である。引張り除去性の観点から、上記長尺状部分は、長手方向の一端に向かって先細りする形状を有していてもよい。より好ましい一態様では、伸長性粘着シートは、典型的には長尺状に形成されている。
<伸長性粘着シートのサイズ等>
ここに開示される伸長性粘着シートが使用時に長尺形状(帯形状や長方形状であり得る。以下同じ。)を有する場合、その幅は30mm以下(例えば20mm以下、典型的には15mm以下)程度に構成され得る。例えば、伸長性粘着シートを携帯型電子機器内において用いる場合、上記幅が好ましく採用され得る。伸長性粘着シートが所定以上の破断強度を有する場合、その幅を10mm以下(例えば5mm以下、さらには3mm以下)とすることも可能である。また、引張り除去の際に千切れる等の損傷を防止する観点から、伸長性粘着シートの幅は1mm以上(例えば3mm以上、典型的には5mm以上)であることが好ましく、10mm以上(例えば12mm以上)であることがより好ましい。
ここに開示される伸長性粘着シートが長尺形状を有する場合、その長さは、引張りによる除去作業性の観点から、1cm以上(例えば3cm以上、典型的には5cm以上)とすることが好ましい。また、除去作業性の観点から、伸長性粘着シートの長さは30cm以下(例えば15cm以下、典型的には5cm以下)とすることが好ましい。
伸長性粘着シートの幅Wに対する長さLの比(L/W)は1以上であることが好ましい。このような形状を有する伸長性粘着シートは、長方形状の被着体(例えばバッテリー等)に対して良好な接着機能を発揮し得る。また、伸長性粘着シートは、上記実施形態のように帯形状(典型的には長方形状)を有することがより好ましい。その場合、被着体の形状やサイズ、貼り付け箇所にもよるが、上記比(L/W)が凡そ2以上(典型的には3以上、例えば5以上)の伸長性粘着シートは、除去性および取扱い性に優れる傾向がある。上記比(L/W)の上限は特に限定されないが、強度や取扱い性等の観点から、上記比(L/W)は凡そ50以下(例えば30以下、典型的には20以下)であり得る。
ここに開示される伸長性粘着シート(粘着剤層と基材とを含むが、剥離ライナーは含まない。)の総厚さは特に限定されず、凡そ20μm以上(例えば40μm以上)とすることが適当であり、凡そ5mm以下(例えば1000μm以下)とすることが適当である。伸長性粘着シートの総厚さは、粘着特性等を考慮して50μm以上(例えば70μm以上)程度とすることが好ましく、300μm以下(例えば200μm以下)程度とすることが好ましい。伸長性粘着シートの総厚さを所定値以下とした場合には、製品の薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点で有利となり得る。他の好ましい一態様では、伸長性粘着シートの総厚さは80μm以上(例えば100μm以上、典型的には130μm以上)であってもよく、150μm超(例えば300μm超、典型的には500μm超)であってもよい。このような総厚さを有する伸長性粘着シートは、例えば壁面等に貼り付けられ、所定期間使用された後、貼り換えられる物体を固定する用途に好ましく利用され得る。
<伸長性粘着シートの特性>
ここに開示される伸長性粘着シートは、0.5MPa以上のせん断接着力を示すことが好ましい。これにより、伸長性粘着シートは被着体に良好に接着する。上記接着力を示す伸長性粘着シートは、接着界面をずらそうとする力(すなわち、せん断力)に対して強い応力を示すので、当該せん断力に曝される使用態様において信頼性の高い接着手段となり得る。上記せん断接着力は、0.8MPa以上(例えば1.0MPa以上、典型的には1.2MPa以上)であることがより好ましい。上記せん断接着力の上限は特に限定されないが、せん断接着力が高すぎると、引張り除去性や糊残り防止性が低下する傾向があることから、5MPa以下(例えば3MPa以下、典型的には1.5MPa以下)とすることが好ましい。
せん断接着力の測定は、次に述べる方法で行うことができる。伸長性粘着シート(両面粘着シート)を20mm×20mmのサイズにカットして測定サンプルを作製する。23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの各粘着面を2枚のステンレス鋼板の表面にそれぞれ重ねて2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を用いて、引張速度300mm/分、剥離角度0度の条件で、せん断接着力[MPa]を測定する。具体的には図9に示すように、測定サンプル800の一方の粘着面800Aをステンレス鋼板801に貼り合わせ、測定サンプル800の他方の粘着面800Bをステンレス鋼板802に貼り合わせて圧着する。これを上述の速度で図9中の矢印方向(すなわち、せん断方向)に引っ張り、20mm×20mm当たりの剥離強度を測定する。得られた値からせん断接着力[MPa]を求める。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(製品名「TG−1kN」、ミネベア社製)を使用することができる。
ここに開示される伸長性粘着シートは、PC(ポリカーボネート)に対する初期粘着力Aが3N/20mm以上であることが好ましい。これにより、PC等の各種材料から形成された被着体に対して充分な接着機能を好ましく発揮することができる。また、上記初期粘着力Aを有する伸長性粘着シートを、例えば携帯型電子機器に使用した場合には、携帯型電子機器が落下したときにも被着部材の固定配置を保持し得る。上記初期粘着力Aは、5N/20mm以上(例えば6N/20mm以上、典型的には6.5N/20mm以上)であることがより好ましい。上記初期粘着力Aの上限は特に限定されないが、引張り除去性や糊残り防止性を考慮して、15N/20mm未満(例えば12N/20mm未満、典型的には10N/20mm未満)とすることが好ましい。
初期粘着力Aの測定は、次の方法で行うことができる。幅20mm、長さ100mmのサイズにカットした伸長性粘着シートを用意する。23℃、50%RHの環境下にて、上記粘着シート(両面粘着シート)の粘着面を露出させ、該粘着面をPC板の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を用いて、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度[N/20mm幅]を測定する。なお、両面粘着シートの他方の粘着面には厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせた後、測定対象粘着面をPC板に圧着して測定を行えばよい。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(製品名「TG−1kN」、ミネベア社製)を使用することができる。
ここに開示される伸長性粘着シートは、PCに対する引張り剥離応力Bが22N/20mm以下であることが好ましい。これにより、引張り剥離方向に伸長性粘着シートを引っ張って被着体から除去する場合に、伸長性粘着シートを被着体からよりスムーズに除去することができる。上記引張り剥離応力Bは、より好ましくは20N/20mm以下(例えば19N/20mm以下、典型的には18N/20mm以下)である。引張り剥離応力Bの下限は特に限定されないが、初期粘着力Aとの関係性から、凡そ5N/20mm以上(例えば8N/20mm以上、典型的には10N/20mm以上)とすることが適当である。
引張り剥離応力Bの測定は、次の方法で行うことができる。伸長性粘着シートを幅20mm、長さ120mmのサイズにカットして測定サンプルを用意する。23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプル(両面粘着シート)の各粘着面を2枚のPC板(30mm×100mm×2mm厚)の表面にそれぞれ重ねて2kgのローラを1往復させて圧着する。測定サンプルの長手方向の一端から70mm分(すなわち20mm×70mm)を各PC板に圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を用いて、2枚のPC板をそれぞれ固定し、引張速度300mm/分、剥離角度0度の条件で、剥離強度[N/20mm幅]を測定する。具体的には、図10に示すように、伸長性粘着シート測定サンプル800の各粘着面800A、800Bを2枚のPC板811,812にそれぞれ貼り合わせて圧着する。これを上述の速度で図10中の矢印方向(すなわち、引張り剥離方向)に引っ張り、剥離強度[N/20mm幅]を測定する。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(製品名「TG−1kN」、ミネベア社製)を使用することができる。
好ましい一態様では、初期粘着力A[N/20mm]に対する引張り剥離応力B[N/20mm]の比(B/A)が3.0以下である。これにより、使用時における充分な接着機能と、除去時における優れた引張り除去性とを好ましく両立することができる。上記比(B/A)は、好ましくは2.8以下(例えば2.6以下、典型的には2.4以下)である。上記比(B/A)は理想的には低ければ低いほどよいが、実用上、その下限値は例えば1.2以上(典型的には1.5以上)程度であってもよい。
好ましい一態様では、伸長性粘着シートは、10MPa以上の破断強度を示す。これにより、例えば所定以上の粘着力を示す構成において、伸長性粘着シートの除去時に千切れ等の損傷が生じ難い構成となり得る。また、加工性にも優れる傾向がある。上記破断強度は、より好ましくは20MPa以上であり、さらに好ましくは30MPa以上(例えば45MPa以上、典型的には60MPa以上)である。伸長性粘着シートの弾性や伸長性等の観点から、上記破断強度は100MPa以下(例えば80MPa以下、典型的には70MPa以下)程度とすることが好ましい。
上記破断強度は、JIS K 7311:1995に記載の「引張強さ」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で上記破断強度を測定することができる。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「Autograph AG−10G型引張試験機」を使用することができる。試験に際しては、粘着面にパウダーをまぶして、粘着剤のべたつきによる影響を除去しておくことが好ましい。なお、上記試験における引張方向は、特に限定されないが、伸長性粘着シートが長尺状の場合には、その長手方向と一致させることが好ましい。上記破断強度は例えば基材材料の選択によって調整することができる。
好ましい一態様では、伸長性粘着シートの破断強度[MPa]は、せん断接着力[MPa]の5倍以上(例えば10倍以上、典型的には30倍以上)である。これにより、伸長性粘着シートを引張り除去する際に千切れ等の損傷がより確実に防止され得る。
ここに開示される伸長性粘着シートは、300%以上の破断時伸びを示すことが好ましい。これにより、引張りと伸長性粘着シートの変形とが相互に作用して、優れた引張り除去性(特にせん断除去性)が実現される。上記破断時伸びは、より好ましくは500%以上(例えば700%以上、典型的には800%以上)である。上記破断時伸びの上限は特に限定されないが、除去作業性等の観点から、例えば1000%以下(典型的には900%以下)程度であり得る。
上記破断時伸びは、JIS K 7311:1995に記載の「伸び」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で上記破断時伸びを測定することができる。引張試験機その他については、基本的に上述の破断強度の場合と同様である。なお、上記試験における引張方向は、特に限定されないが、伸長性粘着シートが長尺状の場合には、その長手方向と一致させることが好ましい。上記破断時伸びは例えば基材材料の選択によって調整することができる。
ここに開示される伸長性粘着シートは、10MPa未満の100%モジュラスを示すことが好ましい。伸長性粘着シートの100%モジュラスを所定値未満とすることにより、伸長性粘着シートを引っ張って伸長変形させることで被着体から除去する場合において、引っ張り始めの抵抗が小さくなり引張り除去性に優れる傾向がある。上記100%モジュラスは、より好ましくは5MPa未満である。上記100%モジュラスの下限は特に限定されないが、伸長性粘着シートの貼り付け作業性の観点から、通常は0.5MPa以上(例えば1MPa以上)とすることが適当である。
100%モジュラスは、JIS K 7311:1995に記載の「引張応力」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で引っ張り、上記標線距離が100%伸びたときの応力[MPa]を100%モジュラスとする。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「Autograph AG−10G型引張試験機」を使用することができる。上記粘着シートの100%モジュラスは例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
好ましい一態様では、伸長性粘着シートは、50%を超える引張り回復率を示すことが適当である。上記引張り回復率は70%以上であることがより好ましい。上記引張り回復率は、さらに好ましくは80%以上(例えば90%以上、典型的には93%〜100%)である。これにより、伸長性粘着シート除去時における千切れ等の損傷がより高度に防止され得る。この点について説明する。例えば、伸長性粘着シートをせん断方向に引っ張って除去する場合、接着面積等に応じて、通常はある程度の時間を要する。そのため、除去作業を途中で中断することもあり得る。そのような場合に、伸長性粘着シートの引張り回復率が所定値以下であると、作業中断前の引張りにより機械的特性(強度、弾性等)が低下した状態から除去作業が再開されることとなり得る。そのとき、伸長性粘着シートは除去作業再開時の引張りに耐えられず、千切れる等の損傷が生じやすい。上記引張り回復率を示す伸長性粘着シートは、上記のように一度中断が入るような態様で除去される場合においても、引張り後の回復によって機械的特性の低下が抑制されているので、損傷がより高度に防止されたものとなり得る。
引張り回復率の測定は、下記の方法で行われる。
[引張り回復率の測定]
伸長性粘着シートにつき、該粘着シートの特定区間距離Lを100%引き伸ばす引張試験を行う。該粘着シートを100%引き伸ばした後、解放して5分経過後における上記特定区間の長さをLとしたときに、式:引張り回復率(%)=L/L×100;より引張り回復率を求める。
より具体的には、JIS K 7311:1995に準拠して、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で100%引き伸ばす。換言すると、標線間隔が20mm延伸するまで引っ張る。そして、引張りから解放して5分経過後における長さL(標線間隔:mm)を計測し、式:引張り回復率(%)=L/L×100;より引張り回復率を求める。この方法において、Lは初期の標線間隔20mmである。引張試験機その他については、基本的に上述の破断時伸びの場合と同様である。なお、上記試験における引張方向は、特に限定されないが、伸長性粘着シートまたはその長尺部の長手方向と一致させることが好ましい。上記引張り回復率は例えば基材材料の選択によって調整することができる。
<粘着剤層>
(ベースポリマー)
ここに開示される粘着剤層(基材付き両面粘着シートの場合は、第一粘着剤層および第二粘着剤層を包含する。以下同じ。)は、粘着剤の分野において公知のアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の各種ゴム状ポリマーの1種または2種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。詳しくは後述するが、ここに開示される粘着剤層は、好ましくは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤層、ゴム系ポリマーをベースポリマーとして含むゴム系粘着剤層、ウレタン系ポリマーをベースポリマーとして含むウレタン系粘着剤層である。あるいは、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーとゴム系ポリマーとを併用した粘着剤層であってもよい。
(アクリル系ポリマー)
好ましい一態様では、上記粘着剤層は、粘着特性(典型的には粘着力)や分子設計、経時安定性等の観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤層である。なお、この明細書において粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるポリマー成分の主成分(典型的には、50重量%を超えて含まれる成分)をいう。
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料における全モノマー成分の50重量%超を占める成分をいう。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1−14(例えばC2−10、典型的にはC4−8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、Rが水素原子でRがC4−8の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレートがより好ましい。
がC1−20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート(BA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。粘着特性や糊残り防止等の観点から、BAがより好ましい。
全モノマー成分中における主モノマーの配合割合は70重量%以上(例えば85重量%以上、典型的には90重量%以上)であることが好ましい。主モノマーの配合割合の上限は特に限定されないが、99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが好ましい。また、モノマー成分としてC4−8アルキルアクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちC4−8アルキルアクリレートの割合は、70重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上(典型的には99〜100重量%)であることがさらに好ましい。ここに開示される技術は、全モノマー成分の50重量%以上(例えば60重量%以上)がBAである態様で好ましく実施され得る。好ましい一態様において、上記全モノマー成分は、BAより少ない割合で2EHAをさらに含み得る。
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとして、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。例えば、凝集力向上の観点から、上記副モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーおよび/または水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが好ましい。上記カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)等が例示される。上記水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や不飽和アルコール類等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)がより好ましい。
上記副モノマーの量は、所望の凝集力が実現されるように適宜選択すればよく、特に限定されない。通常は、接着力と凝集力とをバランス良く両立させる観点から、副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは1重量%以上である。また、副モノマーの量は、全モノマー成分中の30重量%以下が適当であり、好ましくは10重量%以下(例えば5重量%以下)である。アクリル系ポリマーにカルボキシ基含有モノマーが共重合されている場合、接着力と凝集力との両立の観点から、カルボキシ基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.1重量%以上(例えば0.2重量%以上、典型的には0.5重量%以上)であることが好ましく、凡そ10重量%以下(例えば8重量%以下、典型的には5重量%以下)であることが好ましい。アクリル系ポリマーに水酸基含有モノマーが共重合されている場合、接着力と凝集力との両立の観点から、水酸基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.001重量%以上(例えば0.01重量%以上、典型的には0.02重量%以上)であることが好ましく、凡そ10重量%以下(例えば5重量%以下、典型的には2重量%以下)であることが好ましい。
ここに開示されるアクリル系ポリマーには、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他のモノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移温度の調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。上記その他モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、ビニルエステル類が好適例として挙げられる。ビニルエステル類としては、具体的には、酢酸ビニル(VAc)、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が例示される。なかでも、VAcが好ましい。上記その他モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ30重量%以下(典型的には0.01〜30重量%、例えば0.1〜10重量%)とすることが好ましい。
上記アクリル系ポリマーの共重合組成は、耐衝撃性等の観点から、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)が−15℃以下(典型的には−70℃以上−15℃以下)となるように設計されていることが適当であり、好ましくは−25℃以下(例えば−60℃以上−25℃以下)、より好ましくは−40℃以下(例えば−60℃以上−40℃以下)である。
アクリル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用
いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
ブチルアクリレート −55℃
酢酸ビニル 32℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート −40℃
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。上記Polymer Handbookにも記載されていない場合には、特開2007−51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく用いることができる。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃以上(典型的には40℃以上)程度とすることができ、例えば170℃以下(典型的には140℃以下)程度とすることができる。あるいは、UV等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。)や、β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合等の活性エネルギー線照射重合を採用してもよい。
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類)や、酢酸エチル等の酢酸エステル類、脂肪族または脂環式炭化水素類等が好ましく用いられる。
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.005〜1重量部(典型的には0.01〜1重量部)程度の範囲から選択することができる。
ここに開示されるベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば10×10以上500×10以下の範囲であり得る。凝集力と接着力とを高レベルでバランスさせる観点から、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)のMwは、好ましくは10×10以上、より好ましくは20×10以上(例えば20×10以上)、さらに好ましくは35×10以上(例えば35×10以上)であり、好ましくは150×10以下、より好ましくは110×10以下(例えば75×10以下)、さらに好ましくは90×10以下(例えば65×10以下)である。ここでMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC−8320GPC」(カラム:TSKgelGMH−H(S)、東ソー社製)を使用すればよい。
(ゴム系ポリマー)
他の好ましい一態様では、上記粘着剤層はゴム系粘着剤により構成されている。さらに好ましい一態様に係るゴム系粘着剤は、ベースポリマーとして、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含有する。上記モノビニル置換芳香族化合物とは、ビニル基を有する官能基が芳香環に1つ結合した化合物を指す。上記芳香環の代表例として、ベンゼン環(ビニル基を有しない官能基(例えばアルキル基)で置換されたベンゼン環であり得る。)が挙げられる。上記モノビニル置換芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられる。上記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。このようなブロック共重合体は、1種を単独で、または2種以上を併用してベースポリマーに用いることができる。
上記ブロック共重合体におけるAセグメント(ハードセグメント)は、上記モノビニル置換芳香族化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70重量%以上(より好ましくは90重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。)であることが好ましい。上記ブロック共重合体におけるBセグメント(ソフトセグメント)は、上記共役ジエン化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70重量%以上(より好ましくは90重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。)であることが好ましい。かかるブロック共重合体によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
上記ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体および放射状体においては、ポリマー鎖の末端にAセグメント(例えばスチレンブロック)が配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたAセグメントは、集まってドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。ここに開示される技術におけるブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)や耐反撥性の観点から、例えば、ジブロック体比率が30重量%以上(より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、典型的には65重量%以上、例えば70重量%以上)のものを好ましく用いることができる。また、継続的に加わる応力に対する耐性の観点から、ジブロック体比率が90重量%以下(より好ましくは85重量%以下、例えば80重量%以下)のものを好ましく用いることができる。例えば、ジブロック体比率が60〜85重量%のブロック共重合体の使用が好ましい。
(スチレン系ブロック共重合体)
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記ベースポリマーがスチレン系ブロック共重合体である。例えば、上記ベースポリマーがスチレンイソプレンブロック共重合体およびスチレンブタジエンブロック共重合体の少なくとも一方を含む態様で好ましく実施され得る。粘着剤に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレンイソプレンブロック共重合体の割合が70重量%以上であるか、スチレンブタジエンブロック共重合体の割合が70重量%以上であるか、あるいはスチレンイソプレンブロック共重合体とスチレンブタジエンブロック共重合体との合計割合が70重量%以上であることが好ましい。好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95〜100重量%)がスチレンイソプレンブロック共重合体である。他の好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95〜100重量%)がスチレンブタジエンブロック共重合体である。このような組成によると、耐反撥性に優れ、かつ他の粘着特性とのバランスの良い粘着シートが好適に実現され得る。
上記スチレン系ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体および放射状体においては、ポリマー鎖の末端にスチレンブロックが配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたスチレンブロックは、集まってスチレンドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。ここに開示される技術において用いられるスチレン系ブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)や耐反撥性の観点から、例えば、ジブロック体比率が30重量%以上(より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、典型的には65重量%以上)のものを好ましく用いることができる。ジブロック体比率が70重量%以上(例えば75重量%以上)のスチレン系ブロック共重合体であってもよい。また、保持力等の観点から、ジブロック体比率が90重量%以下(より好ましくは85重量%以下、例えば80重量%以下)のスチレン系ブロック共重合体を好ましく用いることができる。例えば、ジブロック体比率が60〜85重量%のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。
上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、例えば、5〜40重量%であり得る。耐反撥性や保持力の観点から、通常は、スチレン含有量が10重量%以上(より好ましくは10重量%よりも大、例えば12重量%以上)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。また、被着体に対する粘着力の観点から、スチレン含有量が35重量%以下(典型的には30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、例えば20重量%未満)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。例えば、スチレン含有量が12重量%以上20重量%未満のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。
(ウレタン系ポリマー)
さらに他の好ましい一態様では、上記粘着剤層はウレタン系粘着剤により構成されている。ここでウレタン系粘着剤(層)とは、ウレタン系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤(層)のことをいう。上記ウレタン系粘着剤は、典型的には、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン系ポリマーをベースポリマーとして含むウレタン系樹脂からなるものである。ウレタン系ポリマーとしては、特に限定されず、粘着剤として機能し得る各種ウレタン系ポリマー(エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等)のなかから適切なものを採用し得る。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
(フィラー粒子)
ここに開示される粘着剤層は、フィラー粒子を含むことが好ましい。これによって、初期粘着力Aの維持および引張り剥離応力Bの低減の両立が好ましく実現され得る。この点について説明する。粘着剤層に含まれたフィラー粒子は、粘着面に露出した状態または該粘着剤層内に内包された状態で存在し得る。粘着面に露出したフィラー粒子は、粘着面における粘着剤面積を減少させ、接着界面のせん断方向へのスリップ性を向上させる。これにより、引張り剥離応力Bは低減するが、この粘着面における粘着剤面積の減少は、初期粘着力Aの低下ももたらす。一方、粘着剤層内部に存在するフィラー粒子は、初期粘着力Aを低下させることなく、引張り剥離応力Bの低減に大きく寄与すると考えられる。その主たる理由としては、特に限定して解釈されるものではないが、粘着シートの変形にともなう粘着剤層の状態変化が考えられる。具体的には、引張り剥離は、粘着剤を接着面に平行する方向(引張り剥離方向。せん断方向ともいう。)に引き剥がす態様であるため、引張り剥離の際に粘着シートは当該方向に変形する。伸長性の粘着シートは上記の引っ張りに対して伸長し、それにともない粘着剤層も変形する。例えば、粘着剤層を支持するフィルム状基材が引張りに対して伸長性を有する場合、該基材の伸長にともなって粘着剤層も大きく変形する。この粘着剤層の変形によって、該粘着剤層に含まれるフィラー粒子の粘着面への露出量が増大し、接着界面におけるせん断方向へのスリップ性が向上すると考えられる。また、粘着剤層内において粘着剤(粘着成分)は引張り剥離により変形するのに対し、フィラー粒子は粘着剤層内において粘着剤と異なる挙動を示すことも考慮される。この引張り剥離に対する粘着剤とフィラー粒子の挙動の違いが引張剥離応力の低減に寄与していることも考えられる。そして、上述の粘着剤層表面状態の変化や、粘着剤層構成成分の挙動は、剥離態様の違いから例えば90度剥離や180度剥離では顕在化せず、あるいは無視し得る程度であると考えられる。しかし、典型的には引張り剥離時には応力変化に大きく影響していると考えられる。その結果、粘着剤層に含まれたフィラー粒子は、初期粘着力Aの維持および引張り剥離応力Bの低減の両立に大きく寄与するものと考えられる。このフィラー粒子含有の効果は、伸長性を有する粘着シートにおいて特に顕著に発現する。また、基材を有する伸長性粘着シートでは、典型的には基材の機械的性質が粘着力(典型的には180度剥離強度)に大きく寄与し得るため、粘着剤組成(例えば、粘着付与剤や架橋剤等の添加成分等)の粘着力への寄与は相対的に小さいと考えられる。このような粘着シートにおいて、その粘着剤層にフィラー粒子を含有させることにより、初期粘着力Aを維持しつつ引張り剥離応力Bだけを選択的に低減する作用が好ましく実現される。
使用されるフィラー粒子の種類は、特に制限されない。例えば、粒子状や繊維状のフィラーを用いることができる。フィラー粒子(典型的には粒子状フィラー)の構成材料は、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属;酸化アルミニウム、酸化ケイ素(二酸化ケイ素)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、珪酸、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化バリウム、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ドウソナイト、硼砂、ホウ酸亜鉛等の金属水酸化物および水和金属化合物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素、炭化カルシウム等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ガリウム等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等のチタン酸塩;カーボンブラック、カーボンチューブ(カーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンド等の炭素系物質;ガラス;等の無機材料;ポリスチレン、アクリル樹脂(例えばポリメチルメタクリレート)、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(例えばナイロン等)、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン等のポリマー;等であり得る。あるいは、火山シラス、クレイ、砂等の天然原料粒子を用いてもよい。繊維状フィラーとしては、各種合成繊維材料や天然繊維材料を使用することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、引張り剥離応力低減の観点から、粒子状フィラーが好ましく、そのなかでも、無機材料(例えば水酸化アルミニウム)から構成された粒子状フィラーの使用が好ましい。
粘着剤層がフィラー粒子を含む場合、粘着剤層に含まれるフィラー粒子の50重量%以上は、該粘着剤層の厚さよりも小さい粒子径を有することが好ましい。これにより、粘着面は良好な表面状態が維持される傾向が大きくなり、所期の粘着特性(例えば初期粘着力A)を好ましく発揮することができる。また、粘着剤層表面の外観も良好に維持される傾向が高まる。好ましい一態様では、上記粘着剤層に含まれるフィラー粒子の60重量%以上(例えば70重量%以上、典型的には80重量%以上)が、上記粘着剤層の厚さよりも小さい粒子径を有する。上記粘着剤層に含まれるフィラー粒子の実質的に全量(典型的には99〜100重量%)が、上記粘着剤層の厚さよりも小さい粒子径を有していることがより好ましい。他の好ましい一態様では、粘着面の表面状態をより良好にする観点から、上記粘着剤層に含まれるフィラー粒子の40重量%以上(例えば50重量%以上、典型的には55重量%以上)が、上記粘着剤層の厚さTの2/3(すなわち2/3T。より好ましくは1/2、すなわち1/2T)よりも小さい粒子径を有する。なお、フィラー粒子のX重量%以上がYより小さい粒子径を有するとは、篩分け法に基づく測定により得られた粒度分布において粒径Y(μm)までの累積粒度(重量基準)がX(重量%)未満であることをいう。所定の粒子径を有するフィラー粒子の割合(重量%)は、上記粒度分布に基づいて求めることができる。
好ましい一態様において、粘着剤層に含まれるフィラー粒子は、粒子径が30μm未満の粒子が50重量%以上(例えば70重量%以上、典型的には90重量%以上)を占める。このようなフィラー粒子を含む粘着剤層は、フィラー粒子の含有量を比較的多くしても粘着面の平滑性が損なわれにくく、粘着力の維持および外観性の点で有利である。粘着剤層に含まれるフィラー粒子は、粒子径が20μm未満(例えば15μm未満、典型的には10μm未満)の粒子が50重量%以上(例えば70重量%以上、典型的には80重量%以上)を占めることがより好ましい。
また、好ましい一態様では、粘着剤層に含まれるフィラー粒子のうち、1μm未満の粒子径を有する粒子の割合は50重量%以下である。引張り剥離応力低減の観点から、フィラー粒子の粒子径はある程度の大きさを有することが望ましい。また、微小粒子の量が制限されていることは、例えば粘着剤組成物の調製において過度の粘度上昇が起こらないなど生産性の点で好ましい。上記粘着剤層に含まれるフィラー粒子のうち、1μm未満(例えば2μm未満、典型的には5μm未満)の粒子径を有する粒子の割合が30重量%以下(例えば10重量%以下、典型的には5重量%以下)であることがより好ましい。
粘着剤層に含まれるフィラー粒子全体の平均粒径は、通常は0.5μm以上とすることが適当であり、好ましくは0.8μm以上(例えば3μm以上、典型的には5μm以上)である。平均粒径が大きくなると、引張り剥離応力低減効果が向上する傾向があり、フィラー粒子の少量添加で引張り剥離応力Bを効率よく低減することができる。平均粒径を所定以上にすることは、組成物の粘度や分散性を良好に保持する点でも好ましい。上記平均粒径の上限は、通常は50μm以下とすることが適当であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。平均粒径が小さくなると、粘着性能の低下が抑制される傾向がある。粘着面外観の点でも平均粒径は小さいことが望ましい。なお、この明細書中において、フィラー粒子の平均粒径とは、篩分け法に基づく測定により得られた粒度分布において重量基準の累積粒度が50%となる粒径(50%メジアン径)をいう。
フィラー粒子の形状は特に限定されず、例えば、バルク状、針形状、板形状(例えば六角板状)、層状等であり得る。バルク形状の概念には、例えば、球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。フィラー粒子の形状は、バルク形状が好ましく、そのなかでも球形状がより好ましい。
フィラー粒子の平均アスペクト比は特に限定されず、引張り剥離応力低減の観点から、凡そ100未満が適当であり、好ましくは50未満、より好ましくは10未満(例えば5未満、典型的には2未満)であり得る。ここで、フィラー粒子の平均アスペクト比は、該フィラー粒子における長径/短径により表される各粒子のアスペクト比の平均値として求められる。長径とは典型的には測定対象粒子の最大差渡し長さをいい、短径とは典型的には測定対象粒子の最小差渡し長さをいうものとする。平均アスペクト比は、透過型電子顕微鏡観察を通じて把握することができる。
粘着剤層がフィラー粒子を含む場合、粘着剤層におけるフィラー粒子の含有量Cは、30体積%以下とすることが適当である。フィラー粒子の粒子径と含有量とを適切に調整することにより、初期粘着力Aの低下を抑制しつつ引張り剥離応力Bを好ましく低減することができる。粘着剤層におけるフィラー粒子の含有量Cは、好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは20体積%以下(例えば16体積%以下、典型的には14体積%以下)である。また、引張り剥離応力低減の観点から、上記含有量Cは、0.3体積%以上とすることが適当であり、好ましくは2体積%以上であり、より好ましくは3体積%以上(例えば5体積%以上、典型的には10体積%以上)である。ここに開示される技術は、フィラー粒子の少量添加で所望の効果を発現し得ることから、粘着剤層(粘着剤組成物)は、フィラー粒子の分散性を向上する成分(分散剤)を実質的に含まなくてもよく、あるいは上記分散剤を含んでもよい。フィラー粒子の含有量C[体積%]は、粘着剤層におけるフィラー粒子以外の成分(典型的には粘着成分)の重量割合および密度と、フィラー粒子の重量割合および密度に基づいて求められる。例えば、水酸化アルミニウムの密度として2.42g/cmを採用して、粘着剤層におけるフィラー粒子の含有量C[体積%]を求めることができる。
また、粘着剤層がフィラー粒子を含む場合、粘着剤層におけるフィラー粒子(例えば無機材料粒子、典型的には金属酸化物や金属水酸化物)の含有量は、重量基準では、ベースポリマー100重量部に対し、100重量部未満とすることが適当である。フィラー粒子の粒子径と含有量とを適切に調整することにより、初期粘着力Aの低下を抑制しつつ引張り剥離応力Bを好ましく低減することができる。粘着剤層におけるフィラー粒子の含有量は、ベースポリマー100重量部に対し、好ましくは80重量部以下であり、より好ましくは60重量部以下(例えば45重量部以下、典型的には35重量部以下)である。また、引張り剥離応力低減の観点から、上記含有量は、0.5重量部以上とすることが適当であり、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは8重量部以上(例えば12重量部以上、典型的には25重量部以上)である。
(アクリル系オリゴマー)
ここに開示される粘着剤組成物は、アクリル系オリゴマーを含んでもよい。アクリル系オリゴマーを採用することによって、耐衝撃性と耐反撥性とをバランスよく改善することができる。また、粘着剤組成物を活性エネルギー線照射(例えばUV照射)により硬化させる態様の場合には、アクリル系オリゴマーは、例えばロジン系やテルペン系等の粘着付与樹脂に比べて硬化阻害(例えば、未反応モノマーの重合阻害)を起こしにくいという利点を有する。なお、アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分としてアクリル系モノマーを含む重合体であり、上記アクリル系ポリマーよりもMwの小さい重合体として定義される。
アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占めるアクリル系モノマーの割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、さらには90重量%以上)である。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、実質的にアクリル系モノマーのみからなるモノマー組成を有する。
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分としては、上記アクリル系ポリマーに利用され得るモノマーとして例示した鎖状アルキル(メタ)アクリレート、官能基含有モノマー、その他モノマーを用いることができる。また、上記構成モノマーは脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含んでもよい。アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分としては、上記で例示した各種モノマーの1種または2種以上を用いることができる。
上記鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、上記式(1)においてRがC1−12(例えばC1−8)であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく使用される。その好適例としては、メチルメタクリレート(MMA)、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート(BA)、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。なかでもMMAがより好ましい。
上記官能基含有モノマーの好適例としては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環(典型的には窒素原子含有複素環)を有するモノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;HEA等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。
上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、脂環式炭化水素基の炭素原子数が4〜20の範囲内にある脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの1種または2種以上を使用することができる。上記炭素原子数は、好ましくは5以上(例えば6以上、典型的には8以上)であり、また好ましくは16以下(例えば12以下、典型的には10以下)である。上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの好適例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)がより好ましい。
上記アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの割合(すなわち共重合割合)は、粘着性や凝集性の観点から、凡そ30重量%以上(例えば50重量%以上、典型的には55重量%以上)とすることが好ましく、凡そ90重量%以下(例えば80重量%以下、典型的には70重量%以下)とすることが好ましい。
好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分として鎖状アルキル(メタ)アクリレートおよび/または脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含む。この態様において、上記アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める上記鎖状アルキル基含有および脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合は、凡そ80重量%以上(例えば90〜100重量%、典型的には95〜100重量%)とすることが好ましい。上記アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分は、実質的に鎖状アルキル(メタ)アクリレートおよび/または脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートからなることがより好ましい。
アクリル系オリゴマーが、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとを含むモノマー混合物の共重合物である場合、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとの比率は、特に限定されない。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分における鎖状アルキル(メタ)アクリレートの重量割合(W)と脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの重量割合(W)との重量比率(W:W)は、1:9〜9:1であり、好ましくは2:8〜7:3(例えば3:7〜6:4、典型的には3:7〜5:5)である。
特に限定するものではないが、アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分の組成(すなわち重合組成)は、該アクリル系オリゴマーのTgが10℃以上300℃以下となるように設定され得る。ここで、アクリル系オリゴマーのTgとは、該アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分の組成に基づいて、上記アクリル系ポリマーの構成モノマー組成に基づくTgと同様にして求められる値をいう。アクリル系オリゴマーのTgは、初期接着性の観点から、180℃以下(例えば160℃以下)であることが好ましい。また上記Tgは、粘着剤の凝集性の観点から、60℃以上(例えば100℃以上、典型的には120℃以上)であることが好ましい。
アクリル系オリゴマーのMwは、特に限定されないが、典型的には0.1×10〜3×10程度である。粘着特性(例えば粘着力や耐反撥性)を向上する観点から、アクリル系オリゴマーのMwは、1.5×10以下が好ましく、1×10以下がより好ましく、0.8×10以下(例えば0.6×10以下)がさらに好ましい。また粘着剤の凝集性等の観点から、上記Mwは、0.2×10以上(例えば0.3×10以上)が好ましい。アクリル系オリゴマーの分子量は、重合に際して必要に応じて連鎖移動剤を用いるなどして調節することができる。
アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えば、AIBN等のアゾ系重合開始剤)の種類や使用量についても概ね上述のとおりであるので、ここでは説明は繰り返さない。
ここに開示される粘着剤組成物におけるアクリル系オリゴマーの含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して例えば0.5重量部以上とすることが適当である。アクリル系オリゴマーの効果をよりよく発揮させる観点からは、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、1重量部以上(例えば1.5重量部以上、典型的には2重量部以上)とすることが好ましい。また、粘着剤組成物の硬化性やアクリル系ポリマーとの相溶性等の観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、50重量部未満(例えば10重量部未満)とすることが適当であり、8重量部未満(例えば7重量部未満、典型的には5重量部以下)とすることが好ましい。このような少量添加でも、アクリル系オリゴマー使用による耐衝撃性および耐反撥性の改善は実現され得る。
(粘着付与剤)
ここに開示される粘着剤層は、粘着付与剤を含む組成であり得る。粘着付与剤としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ロジン系粘着付与樹脂の具体例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等。以下同じ。);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを採用する場合、ロジン系粘着付与樹脂を用いることが好ましい。接着力等の粘着特性向上の観点から、上記ロジン系粘着付与樹脂のなかから、1種を単独で選択するか、あるいは種類、特性(例えば軟化点)等の異なる2種または3種以上を併用することがより好ましい。
テルペン系粘着付与樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂;これらのテルペン樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂の例としては、テルペン変性フェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを採用する場合、テルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)を用いることが好ましい。特に、接着力等の粘着特性向上の観点から、上記テルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)のなかから、種類、特性(例えば軟化点)等の異なる1種または2種以上を併用することが好ましい。
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
ここに開示される技術では、上記粘着付与樹脂として、軟化点(軟化温度)が凡そ70℃以上(好ましくは凡そ100℃以上、より好ましくは凡そ110℃以上)であるものを好ましく使用し得る。上述した下限値以上の軟化点をもつ粘着付与樹脂を含む粘着剤によると、より接着力に優れた粘着シートが実現され得る。上記で例示した粘着付与樹脂のうち、上記軟化点を有するテルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を好ましく用いることができる。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ200℃以下(典型的には凡そ180℃以下)とすることができる。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902およびJIS K 2207のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
粘着付与剤の使用量は特に制限されず、目的とする粘着性能(接着力等)に応じて適宜設定することができる。例えば、固形分基準で、アクリル系ポリマー100重量部に対して、粘着付与剤を凡そ10重量部以上(より好ましくは20重量部以上、さらに好ましくは30重量部以上)の割合で使用することが好ましく、凡そ100重量部以下(より好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下)の割合で使用することが好ましい。ここに開示される技術は、粘着付与剤を実質的に含まない粘着剤層を備える態様で実施してもよい。
粘着剤層をゴム系粘着剤で構成する場合には、上記ゴム系粘着剤は、粘着付与樹脂として、軟化点120℃以上の高軟化点樹脂を含有することが好ましい。かかる態様の粘着シートは、耐反撥性や保持力等の観点から好ましい。好ましい一態様において、上記高軟化点樹脂は、軟化点が125℃以上(より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、例えば140℃以上)の粘着付与樹脂を含み得る。また、被着体に対する粘着力等の観点から、上記高軟化点樹脂の軟化点は、通常、200℃以下が適当であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下(例えば160℃以下)である。
上記高軟化点樹脂としては、テルペンフェノール樹脂、重合ロジン、重合ロジンのエステル化物等を好ましく採用することができる。これらの高軟化点樹脂は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。好ましい一態様として、上記高軟化点樹脂が1種または2種以上のテルペンフェノール樹脂を含む態様が挙げられる。例えば、軟化点が120℃以上200℃以下(典型的には120℃以上180℃以下、例えば125℃以上170℃以下)のテルペンフェノール樹脂を好ましく採用することができる。
上記テルペンフェノール樹脂としては、軟化点が120℃以上であって、水酸基価(OH価)が40mgKOH/g以上(典型的には40〜200mgKOH/g、例えば40〜160mgKOH/g)のものを好ましく採用し得る。かかる水酸基価を有するテルペンフェノール樹脂によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。この明細書における水酸基価の値としては、JIS K 0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値を採用することができる。具体的な測定方法としては、特開2014−55235号公報に記載される方法が採用される。
ここに開示される技術は、例えば、上記ゴム系粘着剤が、水酸基価40mgKOH/g以上80mgKOH/g未満の高軟化点樹脂(H1)と、水酸基価80mgKOH/g以上(典型的には80〜160mgKOH/g、例えば80〜140mgKOH/g)の高軟化点樹脂(H2)とを組み合わせて含む態様で好ましく実施され得る。この場合において、上記高軟化点樹脂(H1)と高軟化点樹脂(H2)との使用量の関係は、例えば、重量比(H1:H2)が1:5〜5:1の範囲となるように設定することができ、通常は1:3〜3:1(例えば1:2〜2:1)の範囲となるように設定することが適当である。好ましい一態様として、高軟化点樹脂(H1)および高軟化点樹脂(H2)がいずれもテルペンフェノール樹脂である態様が挙げられる。
耐反撥性や保持力等の観点から、高軟化点樹脂の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば20重量部以上とすることができ、30重量部以上(例えば35重量部以上)とすることが好ましい。また、粘着力や低温特性等の観点から、ベースポリマー100重量部に対する高軟化点樹脂の含有量は、通常、100重量部以下とすることが適当であり、好ましくは80重量部以下、より好ましくは70重量部以下である。高軟化点樹脂の含有量が60重量部以下(例えば50重量部以下)であってもよい。
ここに開示される技術は、上記ゴム系粘着剤が、上記高軟化点樹脂に代えて、あるいは上記高軟化点樹脂に加えて、軟化点が120℃未満の低軟化点樹脂を含有する態様で実施され得る。好ましい一態様として、上記ゴム系粘着剤が、軟化点120℃以上の高軟化点樹脂と軟化点120℃未満の低軟化点樹脂とを含む態様が挙げられる。
上記低軟化点樹脂としては、軟化点が例えば40℃以上(典型的には60℃以上)のものを用いることができる。耐反撥性や保持力等の観点から、通常は、軟化点が80℃以上(より好ましくは100℃以上)120℃未満のものを好ましく採用することができる。軟化点が110℃以上120℃未満の低軟化点樹脂を用いてもよい。
ここに開示される技術は、上記ゴム系粘着剤が、石油樹脂およびテルペン樹脂(典型的には未変性テルペン樹脂)の少なくとも一方を上記低軟化点樹脂として含む態様で好ましく実施され得る。例えば、低軟化点樹脂の主成分(すなわち、低軟化点樹脂のうちの50重量%超を占める成分)が、石油樹脂である組成、テルペン樹脂である組成、石油樹脂とテルペン樹脂との組み合わせである組成、等を好ましく採用し得る。粘着力および相溶性の観点から、低軟化点樹脂の主成分がテルペン樹脂(例えば、β−ピネン重合体)である態様が好ましい。低軟化点樹脂の実質的に全部(例えば95重量%以上)がテルペン樹脂であってもよい。
好ましい一態様では、上記低軟化点樹脂は、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂(低水酸基価粘着付与樹脂)であり得る。低水酸基価粘着付与樹脂としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち水酸基価が上記範囲にあるものを、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。例えば、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満のテルペンフェノール樹脂、石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂)、テルペン樹脂(例えば、β−ピネン重合体)、ロジン系樹脂(例えば、重合ロジン)、ロジン誘導体樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を用いることができる。
被着体に対する粘着力の観点から、低軟化点樹脂の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば10重量部以上とすることができ、通常は15重量部以上(例えば20重量部以上)とすることが適当である。また、耐反撥性等の観点から、通常は、低軟化点樹脂の含有量を120重量部以下とすることが適当であり、好ましくは90重量部以下、より好ましくは70重量部以下(例えば60重量部以下)である。低軟化点樹脂の含有量を50重量部以下(例えば40重量部以下)としてもよい。
上記粘着付与樹脂が低軟化点樹脂と高軟化点樹脂とを含む場合、それらの使用量の関係は、低軟化点樹脂:高軟化点樹脂の重量比が1:5〜3:1(より好ましくは1:5〜2:1)となるように設定することが好ましい。ここに開示される技術は、上記ゴム系粘着剤が、粘着付与樹脂として低軟化点樹脂よりも高軟化点樹脂を多く含む態様(例えば、低軟化点樹脂:高軟化点樹脂の重量比が1:1.2〜1:5)で好ましく実施され得る。かかる態様によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
ここに開示される技術では、ベースポリマー(典型的にはゴム系ポリマー)100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、通常、20重量部以上とすることが適当であり、好ましくは30重量部以上、より好ましくは40重量部以上(例えば50重量部以上)である。また、低温特性(例えば、低温条件下における粘着力や耐衝撃性)等の観点から、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、通常、200重量部以下とすることが適当であり、好ましくは150重量部以下である。ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量が100重量部以下(例えば80重量部以下)であってもよい。
(架橋剤)
ここに開示される粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤から適宜選択して用いることができる。そのような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、凝集力向上の観点から、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤の使用が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
架橋剤の使用量は特に制限されず、例えば、ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)100重量部に対して凡そ10重量部以下(例えば凡そ0.005〜10重量部、好ましくは凡そ0.01〜5重量部)の範囲から選択することができる。ここに開示される技術は、架橋剤の使用量を低減することなく、所望の引張り剥離応力Bを実現し得ることから、架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.1重量部以上(例えば0.8重量部以上、典型的には1.2重量部以上)であってもよい。また、凝集力を制限して引張り剥離応力Bを低減する観点からは、架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ5重量部以下(例えば3重量部以下、典型的には2重量部以下)としてもよい。
(その他の成分)
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、着色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、分散剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。また、例えば粘着剤組成物(典型的にはアクリル系粘着剤組成物)に対してシリコーン系オリゴマー等の粘着力調整剤を添加してもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
(粘着剤組成物)
ここに開示される粘着剤層は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。ここに開示される技術は、粘着力等の粘着特性を好適に実現する観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える態様で好ましく実施される。
(粘着剤層の形成方法)
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法を採用することができる。あるいは、フィルム状基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層をフィルム状基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。なお、ここに開示される粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、このような形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の、従来公知のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。また、粘着剤組成物の乾燥は、架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40℃以上(好ましくは60℃以上)とすることができ、例えば150℃以下(好ましくは130℃以下)とすることができる。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材や粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
(粘着剤層の厚さ)
ここに開示される粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。通常は、粘着剤層の厚さは、粘着性能等の観点から3μm以上が適当であり、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは8μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上である。また上記厚さは、乾燥効率等の生産性等の観点から200μm以下が適当であり、好ましくは150μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは80μm以下である。フィルム状基材の両面に粘着剤層を備える両面粘着シートの場合、各粘着剤層の厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
<フィルム状基材>
ここに開示されるフィルム状基材は、10MPa以上の破断強度を示すことが好ましい。上記破断強度を示すフィルム状基材を使用することで、粘着シートはより千切れにくくなり、優れた引張り除去性を発揮し得る。上記破断強度を示すフィルム状基材によると、加工性も向上する傾向がある。上記破断強度は、より好ましくは30MPa以上(例えば45MPa以上、典型的には60MPa以上)である。またフィルム状基材の弾性や伸長性等の観点から、上記破断強度は100MPa以下(例えば90MPa以下、典型的には80MPa以下)程度とすることが好ましい。上記破断強度は、粘着シートの場合と同様の方法により測定される。上記基材の破断強度は例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
ここに開示されるフィルム状基材は、300%以上の破断時伸びを示すことが好ましい。上記破断時伸びを示す基材は、粘着シート除去時の引張りに対して伸長する。この伸長により粘着シートは変形して被着体から剥がれる。このように、引張りと基材の変形とが相互に作用して、粘着シートの引張り除去性(特にせん断除去性)はより向上する。上記破断時伸びは、より好ましくは500%以上(例えば700%以上、典型的には800%以上)である。上記破断時伸びの上限は特に限定されないが、除去作業性等の観点から、例えば1000%以下(典型的には900%以下)程度であり得る。上記破断時伸びは、粘着シートの場合と同様の方法により測定される。
ここに開示されるフィルム状基材は、50%を超える引張り回復率を示すことが適当であり、上記引張り回復率は70%以上であることが好ましい。上記引張り回復率は、より好ましくは80%以上(例えば90%以上、典型的には93%〜100%)である。これにより、粘着シート除去時における千切れ等の損傷がより高度に防止され得る。上記引張り回復率の測定は、粘着シートの引張り回復率の測定方法と同様の方法により測定される。上記基材の引張り回復率は例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
ここに開示されるフィルム状基材は、10MPa未満の5%モジュラスを示すことが好ましい。フィルム状基材の5%モジュラスを所定値未満とすることにより、粘着シートを引っ張って伸長変形させることで被着体から除去する場合において、引っ張り始めの抵抗が小さくなり引張り除去性に優れる傾向がある。上記5%モジュラスは、より好ましくは5MPa未満(例えば3MPa未満、典型的には2MPa未満)である。上記5%モジュラスの下限は特に限定されないが、粘着シートの貼り付け作業性の観点から、通常は0.5MPa以上(例えば1MPa以上)とすることが適当である。5%モジュラスは、JIS K 7311:1995に記載の「引張応力」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で引っ張り、上記標線距離が5%伸びたときの応力[MPa]を5%モジュラスとする。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「Autograph AG−10G型引張試験機」を使用することができる。上記基材の5%モジュラスは例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
ここに開示されるフィルム状基材は、10MPa未満の100%モジュラスを示すことが好ましい。フィルム状基材の100%モジュラスを所定値未満とすることにより、粘着シートを引っ張って伸長変形させることで被着体から除去する場合において、引っ張り始めの抵抗が小さくなり引張り除去性に優れる傾向がある。上記100%モジュラスは、より好ましくは5MPa未満である。上記100%モジュラスの下限は特に限定されないが、粘着シートの貼り付け作業性の観点から、通常は0.5MPa以上(例えば1MPa以上)とすることが適当である。上記100%モジュラスは、粘着シートの場合と同様の方法により測定される。
ここに開示されるフィルム状基材は、20MPa未満の150%モジュラスを示すことが好ましい。フィルム状基材の150%モジュラスを所定値未満とすることにより、粘着シートを引っ張って伸長変形させることで被着体から除去する場合において、引張り除去作業時の抵抗が小さくなる傾向がある。上記150%モジュラスは、より好ましくは15MPa未満(例えば12MPa未満、典型的には8MPa未満)である。上記150%モジュラスの下限は特に限定されないが、粘着シートの貼り付け作業性の観点から、通常は1MPa以上(例えば5MPa以上)とすることが適当である。150%モジュラスは、JIS K 7311:1995に記載の「引張応力」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で引っ張り、上記標線距離が150%伸びたときの応力[MPa]を150%モジュラスとする。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「Autograph AG−10G型引張試験機」を使用することができる。上記基材の150%モジュラスは例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
粘着剤層を支持(裏打ち)するフィルム状基材(支持基材)としては、各種のフィルム状基材を使用することができる。上記基材として、例えば、織布フィルム、不織布フィルム、樹脂フィルムを使用することができる。なかでも、樹脂フィルムが好ましい。上記樹脂フィルムは、非発泡の樹脂フィルム、ゴム状フィルム、発泡体フィルム等であり得る。なかでも、非発泡の樹脂フィルム、ゴム状フィルムが好ましく、非発泡の樹脂フィルムがより好ましい。非発泡の樹脂フィルムは、機械的強度の点で弱点となり得る気泡(ボイド)が実質的に存在せず、発泡体と比べて引張強度等の機械的強度に優れる傾向がある。非発泡の樹脂フィルムはまた、加工性や寸法安定性、厚み精度、経済性(コスト)等の点にも優れる。
なお、この明細書における「樹脂フィルム」は、実質的に非多孔質のフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念(すなわち、不織布や織布を除く概念)である。また、非発泡の樹脂フィルムとは、発泡体とするための意図的な処理を行っていない樹脂フィルムのことを指す。非発泡の樹脂フィルムは、具体的には、発泡倍率が1.1倍未満(例えば1.05倍未満、典型的には1.01倍未満)の樹脂フィルムであり得る。非発泡の樹脂フィルムには、例えば、軟質ポリオレフィン、軟質ポリウレタン、軟質ポリエステル、軟質ポリ塩化ビニル等と称される軟質樹脂フィルムが包含される。
ここに開示される樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例としては、エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等のポリウレタン;ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;等が挙げられる。上記ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートがより好ましい。上記樹脂材料は、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレンエチレンブチレン共重合体、スチレンエチレンプロピレン共重合体、スチレンブタジエンスチレン共重合体、スチレンイソプレンスチレン共重合体等のスチレン系共重合体(典型的にはスチレン系エラストマー)であってもよく、アクリルゴムと称されるアクリル系共重合体であってもよく、軟質ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂(PVC)であってもよい。上記樹脂材料は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、上記樹脂材料には、一般にゴムや熱可塑性エラストマーと称されるものが包含される。
好ましい一態様では、フィルム状基材はポリウレタン系樹脂フィルムである。ここでポリウレタン系樹脂フィルムとは、樹脂成分の主成分(最も配合割合の高い成分、典型的には50重量%を超えて含まれる成分。以下同じ。)としてポリウレタンを含む樹脂フィルムのことをいう。ポリウレタン系樹脂フィルムは、典型的には降伏点を実質的に示さない材料から構成されており、所定の破断強度や伸び、さらに必要であれば引張り回復率を示す粘着シートを実現しやすいフィルム材料である。ポリウレタン系樹脂フィルムはまた、例えば可塑剤等の添加成分を添加しなくても良好な物性を実現し得るため、上記添加成分のブリードアウトを防止する点でも、ここに開示される技術において好ましい基材となり得る。
ポリウレタン系樹脂フィルムに含まれる樹脂成分に占めるポリウレタンの割合は、好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には90重量%以上100重量%以下)である。ここに開示されるポリウレタン系樹脂フィルムは、ポリウレタンとその他の樹脂とのポリマーブレンドからなるフィルムであってもよい。上記他の樹脂は、例えばアクリル系樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート等の1種または2種以上であり得る。あるいは、ここに開示される技術は、ポリウレタン以外の樹脂成分を実質的に含まない基材を用いる態様でも実施することができる。
上記ポリウレタンは、ポリオール(例えばジオール)とポリイソシアネート(例えばジイソシアネート)とを所定の割合で重付加反応させることにより合成される高分子化合物である。なお、ポリウレタンのNCO/OH比は、所望の機械的特性(例えば破断強度、破断時伸び、引張り回復率)となるよう当業者の技術常識に基づき、適宜設定すればよい。
上記ポリウレタンの合成に用いられ得るポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオール;上記ジオールとジカルボン酸(例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸)との重縮合物であるポリエステルポリオール;ポリアルキレンカーボネートジオール等のカーボネートジオール;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ポリウレタンの合成に用いられ得るポリイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートや、これらのジイソシアネートの多量体(例えば2量体、3量体)等が挙げられる。上記ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
上記ポリウレタンには、ポリオールおよびポリイソシアネートに加えて、他の共重合成分が導入されていてもよい。他の共重合成分として、モノカルボン酸やジカルボン酸、三官能以上のポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、それらの誘導体等の1種または2種以上を使用することができる。これら他の共重合成分の割合は、ポリウレタン中の30重量%未満(例えば10重量%未満、典型的には5重量%未満)程度とすることが適当である。ここに開示される技術は、他の共重合成分を含まないポリウレタンを主成分とするポリウレタン系樹脂フィルム基材を備える態様でも好ましく実施され得る。
他の好ましい一態様では、フィルム状基材は、ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーを含む樹脂フィルムである。ここに開示されるウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体を用いることができる。ここでウレタン(メタ)アクリレートとは、一分子中にウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を有する化合物のことをいい、かかる化合物を特に制限なく用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは好ましくは2つ以上のウレタン結合と2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する。ウレタン(メタ)アクリレートの有する(メタ)アクリロイル基の数は、2〜5が好ましく、2〜3がより好ましい。例えば、(メタ)アクリロイル基を2つ有するウレタン(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタンアクリレートであることが好ましい。ここで「ウレタンアクリレート」とは、ウレタン(メタ)アクリレートに含まれる(メタ)アクリロイル基のうちアクリロイル基の個数割合が50%を超えるものをいう。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販されている各種ウレタン(メタ)アクリレートを用いることができる。例えば、日本合成化学工業社製の商品名「UV−3300B」、荒川化学工業社製の商品名「ビームセット505A−6」等を好ましく用いることができる。
他の好ましい一態様では、フィルム状基材はPVC系樹脂フィルムである。上記PVC系樹脂フィルムは、PVC系樹脂を含むPVC系樹脂組成物(成形材料)をフィルム状に成形することにより作製される。ここでPVC系樹脂組成物とは、樹脂成分(ポリマー成分)のうちの主成分(すなわち50重量%以上)がPVC系樹脂(典型的にはPVC)である樹脂組成物をいう。該PVC系樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量のうち凡そ80重量%以上(より好ましくは凡そ90重量%以上)がPVC系樹脂であることが好ましい。樹脂成分の実質的に全量がPVCであってもよい。かかるPVC系樹脂組成物によると、粘着シートの基材として好適な物性を示すPVC系樹脂フィルムが形成され得る。
フィルム状基材(例えば樹脂フィルム基材)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、着色剤(顔料、染料)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、安定剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。例えば、フィルム状基材として軟質のPVC系樹脂フィルムを使用する場合、可塑剤の配合量はPVC系樹脂100重量部当たり凡そ20重量部以上(より好ましくは凡そ30重量部以上)とすることが適当であり、凡そ100重量部以下(より好ましくは凡そ70重量部以下)とすることが適当である。各種添加剤の配合割合は、通常は30重量%未満(例えば20重量%未満、典型的には10重量%未満)程度である。
フィルム状基材の表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、フィルム状基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。なお、フィルム状基材がポリウレタン系樹脂フィルムの場合には、その表面エネルギーの高さにより、上述のような表面処理が施されていなくても良好な投錨性を得ることができる。
フィルム状基材は、単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合、少なくとも一つの層(好ましくは全ての層)は上記樹脂(より好ましくはポリウレタン)の連続構造を有する層であることが好ましい。フィルム状基材の製造方法は従来公知の方法を適宜採用すればよく特に限定されない。フィルム状基材として樹脂フィルム基材を採用する場合には、例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的なフィルム成形方法を適宜採用して作製した樹脂フィルム基材を使用することができる。
フィルム状基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。通常は、10μm以上とすることが適当であり、30μm以上(例えば40μm以上、典型的には70μm以上)程度とすることが好ましい。上記厚さを有するフィルム状基材は千切れ難く引張り除去性に優れたものとなり得る。フィルム状基材の厚さは3mm以下(例えば2mm以下、典型的には1.5mm以下)とすることが適当である。また、フィルム状基材の厚さは300μm以下とすることが好ましく、200μm以下(例えば150μm以下、典型的には120μm以下)とすることがより好ましい。例えば、非発泡の樹脂フィルム基材に対して上記厚さが好ましく採用される。ここに開示される技術によると、上記所定以下の厚さを有する基材を用いる構成においても、良好な引張り除去性を実現することができる。また、フィルム状基材の厚さを薄くすることは、粘着シートの薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点で有利である。
<剥離ライナー>
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
<タブ>
ここに開示される伸長性粘着シートに設けられ得るタブについては、その機能を発揮するかぎり形状や材質等の制限はない。タブは、基本的には平面形状を有しており、上方から見たときの形状としては、三角形状や円形状、楕円形状、半円形状、半楕円形状、帯状等、タブとしての機能を発揮する範囲内で種々の形状が採用され得る。好ましい一態様に係るタブは、四角形状の樹脂フィルムである。タブの材質についても、伸長性粘着シート除去時の引っ張りに耐える剛性を有するものであればよく、例えば、上述のフィルム状基材の材料として例示した材料(例えば、PETフィルム等の樹脂フィルム、不織布、織布等)のなかから適切なものが選択され得る。
また、タブは10MPa以上の破断強度を示すことが好ましい。これにより、伸長性粘着シートの引き剥がし時にタブが千切れる等の損傷が防止される。また、加工性にも優れる傾向がある。上記破断強度は、より好ましくは20MPa以上であり、さらに好ましくは30MPa以上(例えば45MPa以上、典型的には60MPa以上)である。上記破断強度は上述の方法で測定される。
タブの外表面のうち少なくとも一方の表面(表(おもて)面および裏(うら)面の少なくとも一方(好ましくは両方))は、典型的には非粘着性であり、少なくとも低粘着性であることが好ましい。具体的には、タブの外表面は1N/20mm未満の剥離強度(対ステンレス鋼板180度剥離強度)を示すものであり得る。上記剥離強度は上述の方法で測定される。なお、本明細書において、1N/20mm未満の剥離強度を有する表面(典型的にはタブの外表面)は「非粘着性」というものとする。また、タブの外表面が低粘着性であるとは、伸長性粘着シートの表面(粘着面)と比べて、タブの外表面の粘着力(典型的には対SUS180度剥離強度)が低いことをいう。タブは、典型的には、その外表面の両面が非粘着性であるが、その一方が非粘着性であり他方が低粘着性であってもよい。
タブの厚さは、特に限定されないが、伸長性粘着シートを引っ張る際に千切れない程度の強度を持たせるため、所定以上の厚さを有することが好ましい。タブの厚さは、通常は、10μm以上とすることが適当であり、30μm以上(例えば40μm以上、典型的には70μm以上)程度とすることが好ましい。また、タブの厚さは3mm以下(例えば2mm以下、典型的には1.5mm以下)とすることが適当であり、タブ50の厚さは300μm以下とすることが好ましく、200μm以下(例えば150μm以下、典型的には120μm以下)とすることがより好ましい。
<伸長補助フィルム>
(伸長補助フィルムの構造)
ここに伸長補助フィルムは、例えば図11に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。図11に示す伸長補助フィルム250は、伸長補助フィルム250の背面250Bを構成するフィルム状の樹脂基材260と、樹脂基材260の一方の面(片面)に設けられた粘着剤層270と、を備える。伸長補助フィルム250は、その粘着剤層270側の表面(被着体への貼付面。以下、粘着面ともいう。)250Aを被着体の端部(典型的には角部)に貼り付けて使用される。また、伸長補助フィルム250の背面250Bは、一の物体と他の物体とを接合する伸長性粘着シートの一方の粘着面と接触する。使用前(すなわち被着体への貼付前)の伸長補助フィルム250は、典型的には粘着面250Aが、少なくとも粘着剤層270側が剥離面となっている剥離ライナー(図示せず)によって保護された形態であり得る。あるいは、樹脂基材260の他面(伸長補助フィルム250の粘着剤層270が設けられる面とは反対側の面。伸長補助フィルム250の背面250B)が剥離面となっており、伸長補助フィルム250がロール状に巻回されることにより該他面に粘着剤層270が当接してその表面(粘着面)が保護された形態であってもよい。
(伸長補助フィルムの特性)
ここに開示される伸長補助フィルムは、その背面の動摩擦係数が0.20以下であることが好ましい。これによって、伸長補助フィルム背面の動摩擦係数を低く設定することにより、伸長性粘着シートの除去(典型的には引き抜き除去)時に、伸長性粘着シートの引っ張りに対する抵抗が低減され、伸長性粘着シートをスムーズに引き抜くことができる。その結果、被着体の変形または破損が好ましく防止される。また伸長性粘着シートも、より千切れ難くなる。上記動摩擦係数は、より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.12以下(例えば0.11以下、さらには0.10以下)である。
動摩擦係数としては、伸長補助フィルム背面の10mmφの鋼球に対する動摩擦係数を、ASTM D1894に準じて測定した値が採用される。動摩擦係数は、具体的には、往復摩擦試験機(「MODEL AFT−15B」、オリエンテック社製)を用い、相手材として10mmφの鋼球、荷重200gf、滑り速度100mm/分の条件で伸長補助フィルム背面の動摩擦係数を測定することにより得ることができる。後述の実施例における動摩擦係数も同様の方法で測定される。
他の好ましい一態様では、ここに開示される伸長補助フィルムの背面の一部の動摩擦係数が0.20以下である。上記背面の一部は、伸長性粘着シートの除去時において、当該伸長性粘着シートと接触する部分を少なくとも含む。典型的には、上記背面の一部は、例えば図1,3において、物体80の角部80Cに取り付けられた伸長補助フィルム50の折れ曲り部(角部80Cに対応して折れ曲がった凸部)であり得る。このように、伸長補助フィルムの背面の一部のみを動摩擦係数0.20以下に設定することによっても、上記背面全体の動摩擦係数を所定値以下に設定する場合と同等の効果が得られる。上記背面の一部の動摩擦係数は、より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.12以下(例えば0.11以下、さらには0.10以下)である。伸長補助フィルムの背面の一部のみ動摩擦係数を所定値以下に設定する場合、当該一部に対して動摩擦係数が0.20以下となる処理を行うことが好ましい。そのような処理は、フッ素系ポリマーやシリコーン系等の処理剤の塗布等の各種表面処理であり得る。
また、伸長補助フィルムの背面における算術平均表面粗さ(Ra)は凡そ1μm以下であることが好ましく、0.75μm以下(例えば凡そ0.5μm以下、典型的には凡そ0.3μm以下)であることがより好ましく、また0.05μm以上(例えば0.1μm以上)であることが好ましい。このように平滑性の高い背面を有する伸長補助フィルムを用いることにより、伸長性粘着シートによる接合において伸長補助フィルム配置箇所の接着性低下を抑制することができる。例えば、動摩擦係数が0.20以下であり、かつRaが0.5μm以下の背面を有する伸長補助フィルムによると、物体の接合時には伸長性粘着シートによる接着の障害とならず、伸長性粘着シートの引き剥がし時には、よりスムーズな引き剥がしが可能となり、被着体の変形、破損、伸長性粘着シートの千切れがより好ましく防止される。また高平滑性の伸長補助フィルムを使用することで、伸長性粘着シートの除去時に、応力の偏りが少なくなり、局部的な応力に起因する不具合(引き剥がし性の低下や、被着体または伸長性粘着シートの破損等)の発生を回避し得る。あるいは、他の好ましい一態様では、伸長補助フィルム背面におけるRaは、0.4μmよりも大きい。これにより、伸長性粘着シートの引き剥がし性が向上する傾向がある。同様の観点から、上記Raは、より好ましくは0.5μmよりも大きく、さらに好ましくは0.75μmよりも大きく、特に好ましくは0.9μm以上(例えば1.2μm以上)である。
ここに開示される伸長補助フィルムは、ステンレス鋼板(SUS板)に対する180度剥離強度(対SUS粘着力)が3N/20mm以上であることが好ましい。これにより、伸長補助フィルムは、被着体によく接着し、伸長性粘着シートの除去時に被着体から剥がれ難い。上記対SUS粘着力は、5N/20mm以上(例えば6N/20mm以上、典型的には6.5N/20mm以上)であることがより好ましい。上記対SUS粘着力の上限は特に限定されないが、被着体からの除去性の観点から、15N/20mm未満(例えば12N/20mm未満、典型的には10N/20mm未満)とすることが好ましい。
上記対SUS粘着力の測定は、次の方法で行うことができる。幅20mm、長さ100mmのサイズにカットした伸長補助フィルムを用意する。23℃、50%RHの環境下にて、上記伸長補助フィルムの粘着面を露出させ、該粘着面をSUS板の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を用いて、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度[N/20mm幅]を測定する。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(製品名「TG−1kN」、ミネベア社製)を使用することができる。
(樹脂基材)
伸長補助フィルムを構成し得る樹脂基材としては、伸長性粘着シートの除去時に当該粘着シートの伸長を補助し得る各種のフィルム状樹脂基材を使用することができる。上記基材として、例えば、非発泡の樹脂フィルムが好ましい。非発泡の樹脂フィルムは、引張強度等の機械的強度に優れる傾向がある。非発泡の樹脂フィルムはまた、加工性や寸法安定性、厚み精度、経済性(コスト)等の点にも優れる。
ここに開示される樹脂基材の好適例としては、オレフィン系樹脂フィルムが挙げられる。オレフィン系樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のポリオレフィンが挙げられる。PEとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)等が挙げられる。なかでも、伸長補助フィルム背面の動摩擦係数を所定値以下とする観点から、超高分子量ポリエチレンがより好ましい。上記樹脂材料は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。オレフィン系樹脂フィルムにおけるオレフィン系樹脂の含有量は、通常は凡そ50重量%以上であり、80重量%以上(典型的には90重量%以上、例えば95〜100重量%。以下同じ。)とすることが適当である。特に好ましい一態様に係る樹脂基材は、超高分子量ポリエチレンを主成分(樹脂フィルム中に最も多く含まれる成分。通常は50重量%以上(好ましくは80重量%以上、典型的には90重量%以上、例えば95〜100重量%)含まれる成分)とする超高分子量ポリエチレンフィルムである。なお、上記超高分子量ポリエチレンとは、重量平均分子量が50×10以上(典型的には100×10以上、例えば100×10〜700×10)のポリエチレンのことをいう。
ここに開示される樹脂基材の他の好適例としては、フッ素系樹脂フィルムが挙げられる。フッ素系樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等が挙げられる。なかでも、伸長補助フィルム背面の動摩擦係数を所定値以下とする観点から、PTFE、PFAががより好ましい。上記樹脂材料は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。フッ素系樹脂フィルムにおけるフッ素系樹脂の含有量は、通常は凡そ50重量%以上であり、80重量%以上(典型的には90重量%以上、例えば95〜100重量%)とすることが適当である。特に好ましい一態様に係る樹脂基材は、PTFEおよび/またはPFAを主成分とするフッ素系樹脂フィルムである。
また、上記樹脂基材を多層構造とする場合には、伸長補助フィルムの背面を構成する層を上記オレフィン系樹脂フィルム(オレフィン系樹脂層)やフッ素系樹脂フィルム(フッ素系樹脂層)とすることが好ましい。その場合、樹脂基材において上記背面を構成する層以外の層は、各種の樹脂材料から構成される樹脂層であり得る。かかる層を構成する樹脂材料の例としては、上記オレフィン系樹脂やフッ素系樹脂のほか、PET、PBT等のポリエステル;ポリ塩化ビニル;ポリイミド;ポリフェニレンサルファイド;エチレン酢酸ビニル共重合体;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリアミド;等が挙げられる。上記樹脂材料は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
樹脂基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、着色剤(顔料、染料)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、安定剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤の配合割合は、通常は30重量%未満(例えば20重量%未満、典型的には10重量%未満)程度である。
樹脂基材は、単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上の多層構造であってもよい。樹脂基材(典型的にはフィルム状樹脂基材)の製造方法は従来公知の方法を適宜採用すればよく特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的なフィルム成形方法を適宜採用して作製した樹脂基材を使用することができる。
樹脂基材の表面(粘着剤層側表面)には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、樹脂基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。
樹脂基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。通常は、1μm以上とすることが適当であり、5μm以上(例えば7μm以上、典型的には10μm以上)程度とすることが好ましい。上記厚さを有する樹脂基材は、被着体の端部を保護するのに十分な強度を有するものとなりやすい。好ましい一態様では、樹脂基材の厚さは20μm以上である。樹脂基材の厚さを所定以上にすることにより、伸長補助フィルムの厚さも増大する傾向があり、例えば被着体の角部(例えば、ほぼ直角や鋭角を有する角部)に伸長補助フィルムを貼り付けたときに厚さに応じたRが伸長補助フィルム外表面に形成され、よりスムーズな引き剥がしが可能となる。また、被着体の変形、破損、伸長性粘着シートの千切れがより好ましく防止される傾向がある。このような観点から、上記厚さは、好ましくは30μm以上(例えば50μm以上)である。また、樹脂基材の厚さは1000μm以下(例えば500μm以下)とすることが適当である。樹脂基材の厚さは300μm以下とすることが好ましく、200μm以下(例えば150μm以下、典型的には120μm以下)とすることがより好ましい。基材厚が所定値以下に制限されている伸長補助フィルムは、伸長性粘着シートによる接合を妨げず、かつ伸長性粘着シートの除去時のスムーズな引き剥がしを妨げない。また、樹脂基材の厚さを制限することにより、被着体の角部に貼り付ける場合のように折り曲げて貼り付ける場合においても、樹脂基材の種類によらず、良好な曲面接着性が得られやすい。
(粘着剤層)
伸長補助フィルムを構成し得る粘着剤層(粘着剤)としては、粘着剤の分野において公知のアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の各種粘着剤を使用することができる。ここに開示される伸長補助フィルムの粘着剤層は、好ましくは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤層、シリコーン系ポリマーをベースポリマーとして含むシリコーン系粘着剤層である。
上記粘着剤層は、必要に応じて、粘着付与剤、レベリング剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、分散剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。また、粘着剤層の形成方法についても、上記粘着シートの粘着剤層の形成方法と同様の方法を採用し得るので、詳細な説明は省略する。
伸長補助フィルムを構成し得る粘着剤層の厚さは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。通常は、粘着剤層の厚さは、粘着性能等の観点から1μm以上が適当であり、好ましくは2μm以上であり、より好ましくは3μm以上であり、さらに好ましくは5μm以上である。また上記厚さは、乾燥効率等の生産性等の観点から200μm以下が適当であり、好ましくは150μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは80μm以下である。
(伸長補助フィルムの厚さ)
ここに開示される伸長補助フィルムの総厚さは特に限定されず、凡そ1μm以上(例えば2μm以上)とすることが適当であり、凡そ1000μm以下とすることが適当である。また、伸長性粘着シートによる接合を妨げず、伸長性粘着シートの除去時にはスムーズな引き剥がしを妨げないため、伸長補助フィルムの総厚さは、300μm以下程度とすることが好ましい。好ましい一態様では、伸長補助フィルムの総厚さは、230μm未満である。これによって、優れた引き剥がし性が実現される。上記総厚さは、より好ましくは200μm以下であり、さらに好ましくは160μm以下であり、特に好ましくは150μm以下(例えば140μm以下)である。同様の観点から、伸長補助フィルムは、伸長性粘着シートよりも薄厚であることが好ましい。このように構成することで、伸長性粘着シートを引き抜くときに、伸長性粘着シートが伸長補助フィルムの端部に引っ掛かり難くなり優れた引き剥がし性が実現される。また、伸長補助フィルムの厚さを制限することにより、被着体の角部に貼り付ける場合のように折り曲げて貼り付ける場合においても、樹脂基材の種類によらず、良好な曲面接着性が得られやすい。なお、伸長補助フィルムに厚さ減少部を設ける場合には、伸長補助フィルムの総厚さは特に限定されない。また、伸長補助フィルムの総厚さは、強度等の観点から、5μm以上(例えば10μm以上)程度とすることが好ましい。好ましい一態様では、伸長補助フィルムの総厚さは30μm以上である。伸長補助フィルムの総厚さを所定以上にすることにより、被着体の角部(例えば、ほぼ直角や鋭角を有する角部)に伸長補助フィルムを貼り付けたときに厚さに応じたRが伸長補助フィルム外表面に形成され、よりスムーズな引き剥がしが可能となる。また、被着体の変形、破損、伸長性粘着シートの千切れがより好ましく防止される傾向がある。このような観点から、上記総厚さは、好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上、特に好ましくは120μm以上である。
上記構成を有する伸長補助フィルムは、当業者の技術常識に基づき、適切な性能、サイズを有するものを作製してもよく、あるいは市販のものを入手することも可能である。
<用途>
ここに開示される再剥離性接着セットは、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;ガラス、セラミックス等の無機材料;ナイロン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)等の樹脂材料;天然ゴム、ブチルゴム等のゴム材料;およびこれらの複合素材等からなる表面を有する被着体に貼り付けられて用いられ得る。これら材料からなる被着体表面は、一般に動摩擦係数が0.20より大きい。後述する被着体としてのポリマーバッテリーは、例えばPET製ケースの表面に印刷が施されたものであり、より大きい動摩擦係数を示し得る。上記のような動摩擦係数が比較的大きい(例えば0.20超、さらには0.25以上の)表面を有する被着体に対して、ここに開示される再剥離性接着セットは好ましく使用される。
ここに開示される再剥離性接着セットは、被着体からの引き剥がし(典型的には引っ張りによる引き剥がし)をスムーズに行うことができる。また、被着体の変形、破損が防止され、伸長性粘着シートも千切れ難い。この特長を生かして、貼り付け後に再剥離され得る各種用途の接着手段として好ましく利用される。例えば、電子機器用途の表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定用、ディスプレイ(例えばテレビのディスプレイ)のデコレーションパネル固定用、パソコンのバッテリーパック固定用、デジタルビデオカメラのレンズ防水等の用途に、ここに開示される再剥離性接着セットを採用することができる。なかでも、使用時には所定以上の接着力が求められる一方、構成部材の修理や交換、検査、リサイクル等の際にスムーズな除去が求められる携帯型電子機器用の再剥離性接着セットとして好ましく利用することができる。例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等の携帯型電子機器において、表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定、キーモジュール部材固定、リムシート固定、デコレーションパネル固定、バッテリー固定、その他各種部材(回路基板、各種パネル用部材、ボタン、照明機器部材、内部カメラ部材、放熱材、グラファイトシート)の固定、ロゴ(意匠文字)や各種デザイン等の表示物(各種標章を含む。)の固定等の用途に好ましく採用され得る。ここに開示される再剥離性接着セットにおいて、所定以上の粘着力を示す伸長性粘着シートは、上記携帯型電子機器に用いられた場合に、当該携帯型電子機器が落下したときの衝撃に対しても被着部材の固定配置を保持し得る。このことは、バッテリー固定用途において特に有利である。固定対象であるバッテリーは経時使用により膨張し得るため、その周辺にはギャップが設けられており、落下衝撃等による固定不良(粘着シートの剥がれ)は、顕著な不具合となりやすい傾向があるためである。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
また、引張り除去性に優れる再剥離性接着セットは、携帯型電子機器においてバッテリー(一次電池および二次電池を包含する。例えばポリマーバッテリー)を固定する目的で用いられる再剥離性接着セットとして好適である。バッテリーは通常、携帯型電子機器の構成部材(バッテリーを含む。)の修理や交換、検査等の際に、取外しを要する箇所に配置されていることが多い。そのため、当該バッテリー固定用の粘着シートは、除去を要する頻度が高い。しかし、バッテリーの取外しを、取外し具の使用や手剥がし、加熱等の物理的手段で行うことは、バッテリーを損傷するおそれがあり、安全性の面で好ましくない場合がある。光硬化による剥離力低減も粘着シートの貼り付け部位の関係上、バッテリー越しの照射となるため有効ではない。ここに開示される再剥離性接着セットは、バッテリーを良好に固定する機能を発揮しつつ、使用期間を終えたバッテリーを取り外す際には、上述の引張り除去(典型的には引き抜き除去)方法を利用して、その取外しを簡易に行うことができる。上記再剥離性接着セットは、特にポリマーバッテリーを固定する目的で用いられる再剥離性接着セットとして好ましい。ポリマーバッテリーは他種のバッテリー(典型的には金属ケースを備えるバッテリー)と比べて変形しやすい傾向があるため、従来の引き剥がし方法ではバッテリーが変形してしまい、機能が損なわれてしまう場合があった。ここに開示される再剥離性接着セットによると、上述の引張り除去(典型的には引き抜き除去)方法を利用して、ポリマーバッテリーの変形を抑制しつつ、伸長性粘着シートを良好に除去することができる。
また、携帯型電池機器のバッテリー固定に用いられる伸長性粘着シートは、バッテリー周辺に存在する他の部品や、バッテリーの配置等により、除去の際に、せん断方向に平行して引くことができない場合が多い。そのような場合、伸長性粘着シートは、接着面に対して非平行の角度(例えば45度以上90度以下の角度、典型的には70度以上90度未満の角度)で引っ張って除去することとなり、除去の際に、被着体(バッテリー)や障害物との接触等により損傷するおそれがあった。ここに開示される再剥離性接着セットによると、そのような除去態様においても、伸長性粘着シートを損傷することなく好ましく除去することができる。
さらに、上記引張り除去性(典型的には引き抜き除去性)に優れる再剥離性接着セットは、壁面や柱、家具、家電製品、ガラス面等に貼り付けられ、所定期間使用された後、貼り換えられる物品または部品(被着体、被固定物、被貼り付け物等)を固定する目的で用いられる再剥離性接着セットとしても好適である。この用途においても、物品等の固定中は、再剥離性接着セットを構成する伸長性粘着シートは良好な固定機能を発揮しつつ、物品等の取外しの際には、伸長性粘着シートに設けたタブ等を掴んで該粘着シート全体を引き抜くことにより、該粘着シートの除去(例えば図6の(c)中の矢印方向への除去)を効率よく行うことができる。
以下、本発明に関する試験について説明するが、本発明をかかる試験に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<伸長性粘着シートの作製>
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、BA100部と、VAc5部と、AA3部と、HEA0.1部と、重合開始剤としてAIBN0.2部と、重合溶媒としてのトルエンとを仕込み、60℃で6時間溶液重合してアクリル系ポリマーのトルエン溶液を得た。このアクリル系ポリマーのMwは55×104であった。
上記トルエン溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対し、粘着付与樹脂としての重合ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製、製品名「ペンセルD−125」、軟化点125℃)40部と、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、製品名「コロネートL」)2部と、フィラー粒子としての水酸化アルミニウム粒子(昭和電工社製、商品名「ハイジライトH−32」)30部とを添加、混合して、アクリル系粘着剤組成物を調製した。使用したフィラー粒子は、平均粒径が8μm、25μm未満の粒子径の割合が85%以上、1μm未満の粒子径を有する粒子の割合が3%である。
市販の剥離ライナー(商品名「SLB−80W3D」、住化加工紙社製)を2枚用意した。それらの剥離ライナーのそれぞれ一方の面(剥離面)に上記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥させた。このようにして、上記2枚の剥離ライナーの剥離面上に粘着剤層(第一粘着剤層および第二粘着剤層)をそれぞれ形成した。
フィルム状基材として、厚さ100μmの非発泡エーテル系ポリウレタン樹脂フィルム(日本マタイ社製、商品名「エスマーURS ET−N」、破断強度73〜74MPa、破断時伸び506〜507%、5%モジュラス1.6MPa、150%モジュラス6.4〜6.5MPa)を用意した。このフィルム状基材の両面に、上記2枚の剥離ライナー上に形成された粘着剤層をそれぞれ貼り合わせた。上記剥離ライナーは、そのまま粘着剤層上に残し、該粘着剤層の表面(粘着面)の保護に使用した。得られた構造体を80℃のラミネータ(0.3MPa、速度0.5m/分)に1回通過させた後、50℃のオーブン中で1日間エージングした。得られた両面粘着シートを、適当な幅を有する帯形状にカットし、同形状および同サイズを有する伸長性粘着シートを複数作製した。
[引き抜き性評価試験]
樹脂基材種および厚さの異なる8種類の伸長補助フィルムを用意した。上記伸長補助フィルムは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂フィルム基材の片面にシリコーン系粘着剤を塗布して形成したもの、あるいは超高分子量ポリエチレン(UHPE)樹脂フィルム基材の片面にアクリル系粘着剤を塗布して形成したものである。上記伸長補助フィルムを、図3に示すように物体80の角部80C(ほぼ直角)を覆うように固定した後、図3に示すように、物体80と物体90とを、上記で得た帯状の伸長性粘着シート10で接着面積が一定となるように接合した。そして、上記接合において、伸長性粘着シート10の一部(一定面積の一部)を物体80と物体90との間からはみ出すように露出させた。上記露出部分を把持し、図3に示すように引き抜き角度約90度(図中の矢印方向)で引き抜き操作(手剥離)を行い、その引き抜き性を下記の3基準で評価した。
◎:伸長性粘着シートをスムーズに引き抜くことができた。
○:伸長性粘着シートをスムーズに引き抜くことができたが、◎と比べて引き抜き力を要した。
×:伸長性粘着シートをスムーズに引き抜くことができなかった。
伸長補助フィルムの厚さと引き抜き性評価試験の結果を表1に示す。表1には、伸長補助フィルムの樹脂基材種と厚さも示した。
Figure 2017115108
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、実施形態が複数ある場合には、異なる実施形態に記載された構成を適宜組み合わせることができる。したがって、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) 一の物体と他の物体とを接合する両面接着性の伸長性粘着シートと、該一の物体および該他の物体のうち一方の物体の被接着面端部に設けられる伸長補助フィルムと、を備え、前記伸長補助フィルムの厚さは230μm未満である、セット。
(2) 一の物体と他の物体とを接合する両面接着性の伸長性粘着シートと、該一の物体および該他の物体のうち一方の物体の被接着面端部に設けられる伸長補助フィルムと、を備え、前記伸長補助フィルムは、端部に向かうにつれて厚さが減少する部分を有する、セット。
(3) 前記伸長補助フィルム背面の動摩擦係数は0.20以下である、上記(1)または(2)に記載のセット。
(4) 前記伸長性粘着シートは、0.5〜5MPaのせん断接着力を示す、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセット。
(5) 前記伸長性粘着シートは、前記一の物体と前記他の物体とを接合する接着部と、該接合される物体の間からはみ出す露出部と、を備える、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のセット。
(6) 前記伸長性粘着シートの接着部は、
前記一の物体と前記他の物体とを該接着部で接合した状態において前記露出部を引くことによって、伸長することが可能であり、かつ
その伸長によって、該一の物体と該他の物体との接合状態が解除されるように構成されている、上記(5)に記載のセット。
(7) 前記伸長性粘着シートおよび前記伸長補助フィルムは、線状に延びる帯形状を有しており、
前記伸長補助フィルムは、その長手方向が前記伸長性粘着シートの長手方向と交差するように配置されており、
前記伸長補助フィルムの長さは、前記伸長性粘着シートの幅と同じか、それよりも長い、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のセット。
(8) 前記伸長性粘着シートは、間隔をおいて配置された複数の粘着シート片からなる、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセット。
(9) 前記伸長補助フィルムは、該伸長補助フィルムの背面を構成する樹脂基材と、該樹脂基材の片面に設けられた粘着剤層と、を備える、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のセット。
(10) 前記伸長補助フィルムにおいて、前記樹脂基材は、フッ素系樹脂フィルムまたは超高分子量ポリエチレンフィルムである、上記(9)に記載のセット。
(11) 前記伸長補助フィルムの厚さは150μm以下である、上記(1)〜(10)のいずれかに記載のセット。
(12) 前記伸長性粘着シートは、前記一の物体と前記他の物体とを接合した状態から、該一の物体と該他の物体との接合面に対して45°以上の角度で引っ張ることによって、該一の物体と該他の物体との接合状態を解除することが可能であり、且つ該一の物体と該他の物体との間から除去されるように構成されている、上記(1)〜(11)のいずれかに記載のセット。
(13) 携帯型電子機器のバッテリーを固定するために使用される、上記(1)〜(12)のいずれかに記載のセット。
(14) 前記伸長性粘着シートの端部には、タブが設けられている、上記(1)〜(13)のいずれかに記載のセット。
(15) 前記伸長性粘着シートは粘着剤層を備え、
前記粘着剤層は、該粘着剤層に含まれるポリマー成分の50重量%を超える割合でアクリル系ポリマーを含み、
前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、式(1):
CH=C(R)COOR (1)
(上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基である。);で表されるアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上の割合で含む、上記(1)〜(14)のいずれかに記載のセット。
(16) 前記アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレートおよびエイコシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である、上記(15)に記載のセット。
(17) 前記アクリル系ポリマーは、前記モノマー成分として官能基含有モノマーをさらに含み、
前記官能基含有モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である、上記(15)または(16)に記載のセット。
(18) 前記粘着剤層は、軟化点が100℃以上である粘着付与樹脂を含み、
前記粘着付与樹脂は、ロジン系粘着付与樹脂およびテルペン系粘着付与樹脂の少なくとも1種を含む、上記(15)〜(17)のいずれかに記載のセット。
(19) 前記粘着剤層は、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して10〜60重量部の粘着付与剤を含む、上記(15)〜(18)のいずれかに記載のセット。
(20) 前記粘着剤層は、アクリル系オリゴマーを含む、上記(15)〜(19)のいずれかに記載のセット。
(21) 前記粘着剤層はフィラー粒子を含み、
前記フィラー粒子は、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、珪酸、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化バリウム、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ドウソナイト、硼砂、ホウ酸亜鉛、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素、炭化カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ガリウム、炭酸カルシウム、チタン酸バリウムおよびチタン酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、上記(15)〜(20)のいずれかに記載のセット。
(22) 前記粘着剤層を支持するフィルム状基材をさらに備え、該フィルム状基材は、発泡倍率が1.1倍未満の樹脂フィルム基材である、上記(15)〜(21)のいずれかに記載のセット。
(23) 前記フィルム状基材は、ポリウレタン、ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー、ポリオレフィン、ポリエステルおよびポリ塩化ビニルからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料を含む、上記(22)に記載のセット。
(24) 前記フィルム状基材は、ポリウレタンを70重量%以上の割合で含み、
前記ポリウレタンは、エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタンまたはカーボネート系ポリウレタンである、上記(22)または(23)に記載のセット。
(25) 一の物体と他の物体とを分離可能に接合する方法であって、
伸長性粘着シートと伸長補助フィルムとを用意する工程と;
前記伸長補助フィルムを前記一の物体および前記他の物体のうち一方の物体の被接着面端部に取り付ける工程と;
前記伸長性粘着シートの接着部を前記一の物体と前記他の物体とに貼り付ける工程と;
を含み、
前記伸長補助フィルムは、前記伸長性粘着シートの除去時に、前記物体の接合面に対して非平行な角度で該伸長性粘着シートを引っ張ったときに、前記被接着面端部において伸長性粘着シートに接触するように配置されている、接合方法。
(26) 前記伸長補助フィルムの厚さは230μm未満である、上記(25)に記載の方法。
(27) 前記伸長補助フィルムは、端部に向かうにつれて厚さが減少する部分を有する、上記(25)または(26)に記載の方法。
(28) 伸長性粘着シートによって接合された一の物体と他の物体との接合を解除する方法であって、
前記伸長性粘着シートは、前記一の物体と前記他の物体とを接合している接着部と、該接合された物体の間からはみ出す露出部と、を有しており、
前記方法は、前記一の物体と前記他の物体とが前記伸長性粘着シートを間に挟んで接合された状態において前記露出部を引っ張る工程、を含み、
前記一の物体および前記他の物体のうち一方の物体の被接着面端部には、伸長補助フィルムが予め取り付けられており、
前記伸長補助フィルムは、前記伸長性粘着シートを前記物体の接合面に対して非平行な角度で引っ張ったときに、前記被接着面端部において前記伸長性粘着シートに接触するように配置されている、接合解除方法。
(29) 前記伸長補助フィルムの厚さは230μm未満である、上記(28)に記載の方法。
(30) 前記伸長補助フィルムは、端部に向かうにつれて厚さが減少する部分を有する、上記(28)または(29)に記載の方法。
1,2,3 セット(再剥離性接着セット)
10,110,210 伸長性粘着シート
12 接着部
14 露出部
50,150,250,350 伸長補助フィルム
50A,250A,350A (伸長補助フィルムの)粘着面
50B,250B,350B (伸長補助フィルムの)背面
80,180 一の物体
80A,180A 被接着面
80B 隣接側面
80C 角部
90,190 他の物体
220 フィルム状基材
231,232 粘着剤層
260 樹脂基材
270 粘着剤層
352 厚さ減少部

Claims (14)

  1. 一の物体と他の物体とを接合する両面接着性の伸長性粘着シートと、該一の物体および該他の物体のうち一方の物体の被接着面端部に設けられる伸長補助フィルムと、を備え、
    前記伸長補助フィルムの厚さは230μm未満である、セット。
  2. 前記伸長補助フィルム背面の動摩擦係数は0.20以下である、請求項1に記載のセット。
  3. 前記伸長性粘着シートは、0.5〜5MPaのせん断接着力を示す、請求項1または2に記載のセット。
  4. 前記伸長性粘着シートは、前記一の物体と前記他の物体とを接合する接着部と、該接合される物体の間からはみ出す露出部と、を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセット。
  5. 前記伸長性粘着シートの接着部は、
    前記一の物体と前記他の物体とを該接着部で接合した状態において前記露出部を引くことによって、伸長することが可能であり、かつ
    その伸長によって、該一の物体と該他の物体との接合状態が解除されるように構成されている、請求項4に記載のセット。
  6. 前記伸長性粘着シートおよび前記伸長補助フィルムは、線状に延びる帯形状を有しており、
    前記伸長補助フィルムは、その長手方向が前記伸長性粘着シートの長手方向と交差するように配置されており、
    前記伸長補助フィルムの長さは、前記伸長性粘着シートの幅と同じか、それよりも長い、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセット。
  7. 前記伸長性粘着シートは、間隔をおいて配置された複数の粘着シート片からなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセット。
  8. 前記伸長補助フィルムは、該伸長補助フィルムの背面を構成する樹脂基材と、該樹脂基材の片面に設けられた粘着剤層と、を備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセット。
  9. 前記伸長補助フィルムにおいて、前記樹脂基材は、フッ素系樹脂フィルムまたは超高分子量ポリエチレンフィルムである、請求項8に記載のセット。
  10. 前記伸長補助フィルムの厚さは150μm以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のセット。
  11. 前記伸長性粘着シートは、前記一の物体と前記他の物体とを接合した状態から、該一の物体と該他の物体との接合面に対して45°以上の角度で引っ張ることによって、該一の物体と該他の物体との接合状態を解除することが可能であり、且つ該一の物体と該他の物体との間から除去されるように構成されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のセット。
  12. 携帯型電子機器のバッテリーを固定するために使用される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のセット。
  13. 一の物体と他の物体とを分離可能に接合する方法であって、
    伸長性粘着シートと伸長補助フィルムとを用意する工程と;
    前記伸長補助フィルムを前記一の物体および前記他の物体のうち一方の物体の被接着面端部に取り付ける工程と;
    前記伸長性粘着シートの接着部を前記一の物体と前記他の物体とに貼り付ける工程と;
    を含み、
    前記伸長補助フィルムは、前記伸長性粘着シートの除去時に、前記物体の接合面に対して非平行な角度で該伸長性粘着シートを引っ張ったときに、前記被接着面端部において伸長性粘着シートに接触するように配置されており、
    前記伸長補助フィルムの厚さは230μm未満である、接合方法。
  14. 伸長性粘着シートによって接合された一の物体と他の物体との接合を解除する方法であって、
    前記伸長性粘着シートは、前記一の物体と前記他の物体とを接合している接着部と、該接合された物体の間からはみ出す露出部と、を有しており、
    前記方法は、前記一の物体と前記他の物体とが前記伸長性粘着シートを間に挟んで接合された状態において前記露出部を引っ張る工程、を含み、
    前記一の物体および前記他の物体のうち一方の物体の被接着面端部には、伸長補助フィルムが予め取り付けられており、
    前記伸長補助フィルムは、前記伸長性粘着シートを前記物体の接合面に対して非平行な角度で引っ張ったときに、前記被接着面端部において前記伸長性粘着シートに接触するように配置されており、
    前記伸長補助フィルムの厚さは230μm未満である、接合解除方法。
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