JP2017103940A - ロータの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁石として良好な磁場特性を確保しつつ、スロットに対する磁石の体積比を大きくすることによって、ロータコア、延いてはモータを小型化できるロータの製造方法を提供する。【解決手段】軸線方向両側に開口するスロット13を備えるロータコア10と、スロット13に配置される磁石30と、を備えるロータ1の製造方法は、複数の磁粉31を含む磁石30の複数の素材をスロット13に配置した状態で複数の磁粉31の磁極を配向させると共に、複数の磁粉31の磁極を配向させた状態のまま磁石30の複数の素材RMを第一圧力P1で加圧して一次成形体を成形する第一工程Q1と、配向された複数の磁粉31を含む磁石30の複数の素材RMを第一圧力P1より大きな第二圧力P2で加圧して、第一工程Q1における一次成形体の密度より高い密度となる二次成形体を成形する第二工程Q2と、を備える。【選択図】図2
Description
本発明は、ロータの製造方法に関する。
従来、特許文献1に記載されるような、ロータの製造方法がある。特許文献1には、複数の電磁鋼板を積層して形成されるロータコアのスロット(磁石挿入孔)に、磁石を挿入すると共に、結着剤としての樹脂材を充填することで、ロータコアに磁石を保持させることが記載されている。
また、特許文献1に記載の磁石(例えば、ネオジム磁石)は、磁場をかけた金型の中で磁粉をプレスした後に、焼結されることにより製造される。ここで、磁場をかけた金型の中で磁粉をプレスすることで、磁粉の結晶方位が外部磁場の方向に揃い、配向方向の磁場特性が向上する。
特許文献1の製造方法では、磁石単体としての磁場特性は、非常に良好である。しかしながら、特許文献1の製造方法では、スロットに磁石を挿入しやすくするために、磁石の外形をスロットより小さくする必要がある。また、ロータコアのスロットに結着剤としての樹脂材を充填可能な程度に、スロットと磁石との間に隙間を形成する必要もある。これらの理由により、スロットに対する磁石の体積比、即ちロータコアに対する磁石の体積比が小さくなり、高効率の特性を得ることが困難となっている。
この現状に対し、磁石には、特許文献1で使用される磁石と同種の磁粉を用いて良好な磁場特性を確保しつつ、スロットに対する磁石の体積比を大きくすることで、モータの性能を向上させ、特許文献1におけるモータと同等の性能を有するモータにおいて、ロータコアを小型化することが求められている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、磁石として良好な磁場特性を確保しつつ、スロットに対する磁石の体積比を大きくすることによって、ロータコア、延いてはモータを小型化できるロータの製造方法を提供することを目的とする。
(1.ロータの製造方法)
本発明に係るロータの製造方法は、軸線方向両側に開口するスロットを備えるロータコアと、前記スロットに配置される磁石と、を備えるロータの製造方法であって、複数の磁粉を含む前記磁石の素材を前記スロットに配置した状態で前記複数の磁粉の磁極を配向させると共に、前記複数の磁粉の磁極を配向させた状態のまま前記磁石の素材を第一圧力で加圧して一次成形体を成形する第一工程と、前記配向された前記複数の磁粉を含む前記磁石の素材を前記第一圧力より大きな第二圧力で加圧して、前記第一工程における前記一次成形体の密度より高い密度となる二次成形体を成形する第二工程と、を備える。
本発明に係るロータの製造方法は、軸線方向両側に開口するスロットを備えるロータコアと、前記スロットに配置される磁石と、を備えるロータの製造方法であって、複数の磁粉を含む前記磁石の素材を前記スロットに配置した状態で前記複数の磁粉の磁極を配向させると共に、前記複数の磁粉の磁極を配向させた状態のまま前記磁石の素材を第一圧力で加圧して一次成形体を成形する第一工程と、前記配向された前記複数の磁粉を含む前記磁石の素材を前記第一圧力より大きな第二圧力で加圧して、前記第一工程における前記一次成形体の密度より高い密度となる二次成形体を成形する第二工程と、を備える。
このように、磁粉を配向させることが目的の一つである第一工程においては、スロット内に磁粉を充填する際、スロット内において、充填された複数の磁粉が各々自由回転可能な状態でいられるよう充填を行なう。このような状態で、磁粉を配向させるので、磁粉は良好に配向される。つまり、スロット内において、磁粉の磁場特性が良好となる。
また、第一工程では、磁粉の配向後において、磁粉を配向させた状態のまま磁石の素材(磁粉)を第一圧力で加圧して一次成形体を形成する。従って、第一工程後において、磁粉は、配向された状態から移動しにくい状態(向きを変えにくい状態)となる。そのため、例えば、第一工程の後に磁場が印加されていない場所に移動したり、磁場が弱い場所に移動したりしても、磁粉は、配向された状態を保持できる。
そして、第二工程において、磁石の素材(磁粉)を第二圧力によって加圧して二次成形体を形成する。つまり、第二工程において、スロット内における二次成形体の密度を、一次成形体の密度より高くする。
このように、本発明では、磁石の磁粉の配向から、配向された磁粉を加圧し完成状態とするまで、一貫してスロット内で行ないスロットを固定型として用いる。従って、スロット内では、特に第二工程における加圧時に、磁粉を含む素材がスロットの内周面に向かって拡がり二次成形体を形成して内周面に確実に当接する。これにより、最終的に磁石を形成する二次成形体とスロットの内周面との間には隙間が発生しないので、スロット内の容積に対する磁石の体積比が向上して磁石の性能が向上する。また、磁石の性能が向上するので、モータが従来と同等の性能を出せばよい場合、磁石の軸線方向長さを短縮できるため、ロータを小型化することができる。
また、第二工程における第二圧力による加圧によって、例えばスロット内の二次成形体内の磁粉の一部が破砕される。このため、破砕された磁粉によって、さらにスロット内の隙間が埋められ、スロット内の二次成形体の密度がさらに高くなり、磁石の性能が向上する。
(1.ロータの概要)
本実施形態のロータ1は、IPM(Interior Permanent Magnet)モータのロータに適用される。ロータ1は、図1に示すように、ロータコア10と、軸部材20と、磁石30とを備える。ロータコア10は、複数の電磁鋼板11を積層して形成される。複数の電磁鋼板11は、カシメによって結合される。軸部材20は、モータの出力軸であり、ロータコア10の中心孔12に圧入される。
本実施形態のロータ1は、IPM(Interior Permanent Magnet)モータのロータに適用される。ロータ1は、図1に示すように、ロータコア10と、軸部材20と、磁石30とを備える。ロータコア10は、複数の電磁鋼板11を積層して形成される。複数の電磁鋼板11は、カシメによって結合される。軸部材20は、モータの出力軸であり、ロータコア10の中心孔12に圧入される。
本実施形態においては、ロータコア10の中心孔12及び軸部材20とは、スプライン嵌合される。磁石30は、ロータコア10の複数のスロット13に配置される。各スロット13は、中心孔12とロータコア10の外周面との間に、軸線方向両側に開口するように貫通形成される。このように、本実施形態では、軸部材20を含んだ状態をロータ1として説明する。
(2.ロータ1の製造方法)
ロータ1の製造方法について、図2〜図15を参照して説明する。ロータ1の製造方法は、磁石30の素材を生成する素材生成工程(ステップS10)、ロータコア10を形成する形成工程(ステップS20)、ロータコア10に軸部材20を挿入する挿入工程(ステップS31)、続いてロータコア10内にて磁石30を形成する形成工程(ステップS41〜S48)を備える。
ロータ1の製造方法について、図2〜図15を参照して説明する。ロータ1の製造方法は、磁石30の素材を生成する素材生成工程(ステップS10)、ロータコア10を形成する形成工程(ステップS20)、ロータコア10に軸部材20を挿入する挿入工程(ステップS31)、続いてロータコア10内にて磁石30を形成する形成工程(ステップS41〜S48)を備える。
素材生成工程(ステップS10)について、図2のステップS11〜S15、図3A、図3B及び図4を参照して説明する。図2のステップS11に示すように、磁石30の素材の一つである磁粉31を準備する。
磁粉31は、磁性材料の粒子の集合体である粉末が用いられる。磁粉31の磁性材料は、限定されるものではないが、硬磁性体よりなることが好ましい。硬磁性体としては、例えば、フェライト磁石,Al−Ni−Co系磁石,希土類元素を含む希土類磁石,窒化鉄磁石等を挙げることができる。
硬磁性体の磁粉31としては、Fe−N系化合物,R−Fe−N系化合物(R:希土類元素)の一種以上よりなる化合物を用いることが好ましい。なお、Rで示される希土類元素としては、いわゆる希土類元素として知られている元素(Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Ac,Th,Pa,U,Np,Pu,Am,Cm,Bk,Cf,Es,Fm,Md,No,Lr)であればよく、Dy以外の希土類元素(R:Dyを除く希土類元素)であることがより好ましい。
これらのうち、特に軽希土類元素がさらに好ましく、その中でもSmが最も好適である。ここでいう軽希土類元素は、ランタノイドの中で、Gdよりも原子量が小さい元素、すなわちLa〜Euである。Fe−N系化合物は、窒化鉄磁石に含まれる。R−Fe−N系化合物は、希土類磁石に含まれる。
磁粉31は、Fe−N系化合物,R−Fe−N系化合物であれば具体的な組成は限定されない。磁粉31は、Sm2Fe17N3、又はFe16N2の粉末が最も好ましい。
磁粉31は、Fe−N系化合物,R−Fe−N系化合物であれば具体的な組成は限定されない。磁粉31は、Sm2Fe17N3、又はFe16N2の粉末が最も好ましい。
磁粉31は、その粒子径(平均粒径)が限定されるものではない。平均粒径が2〜5μm程度であることが好ましい。また、磁粉31には、粒子表面の全てに酸化膜が形成されていないものを用いる。
次に、図2のステップS12に示すように、潤滑剤32を準備する。潤滑剤32は、通常の条件下(大気雰囲気下、常温)で固体の物質(固体潤滑剤)を好適に用いることができる。本実施形態では、潤滑剤32には、粉末状の潤滑剤を用いる。
潤滑剤32には、金属石けん系の潤滑剤(固体潤滑剤粉末)を用いる。潤滑剤32として、例えば、ステアリン酸亜鉛などのステアリン酸系金属の粉末を用いる。潤滑剤32の粉末の平均粒径は、10μm程度である。ここで、潤滑剤32の平均粒径は、磁粉31の平均粒径より大きいことが好ましい。潤滑剤32の比重は、磁粉31の比重より小さい。そのため、潤滑剤32の初期状態の大きさをある程度大きくすることで、潤滑剤32の1粒あたりの質量を大きくすることができ、後述のステップS13の工程で混合する際に潤滑剤32が舞い散ることを抑制できる。
磁粉31と潤滑剤32の混合割合は、任意に設定できる。磁粉31と潤滑剤32の混合割合は、体積割合で、磁粉31:80〜90体積%、潤滑剤32:5〜15体積%とすることが好ましい。なお、潤滑剤は固体物質に限られない。例えば後述する結着剤としての熱硬化型シリコーン組成物を潤滑剤及び結着剤として併用することもできる。また、磁粉31と潤滑剤32以外に、添加剤を添加しても良い。添加剤としては、その後の加熱により消失する有機溶剤等の添加剤を挙げることができる。
次に、図2のステップS13に示すように、先の2つの工程で準備した磁粉31と潤滑剤32を混合して混合粉を得る。混合粉31,32を形成する方法は、図3Aに示したように、混合用容器36にて、磁粉31と潤滑剤32をすり潰しながら混合する。すり潰しながら混合することにより、図3Bに示したように、結合強度の低い潤滑剤32が細分化され、潤滑剤32の粒径が全体的に小さくなる。本工程の終了時には、粒子の大きさが異なる潤滑剤32が存在している。
更に、混合粉31,32は、磁粉31だけによる塊状の部分を少なくすること(磁粉31の二次粒子を解砕すること)ができ、潤滑剤32の大きさを小さくできる。つまり、磁粉31の各粒子に近接した位置に、細かくされた潤滑剤32を存在させることができる。
続いて、図2のステップS14に示すように、混合粉31,32を加熱して磁粉31の表面に吸着膜33を形成する。先の工程(ステップS13)で混合した磁粉31と潤滑剤32の混合粉31,32を、加熱温度T1で加熱して、磁粉31の表面に潤滑剤32の吸着膜33を形成する。このときの混合粉31,32の加熱温度T1は、磁粉31の分解温度T2未満であって、潤滑剤32の融点T3以上の温度である(T3≦T1<T2)。
混合粉31,32を、加熱温度T1で加熱すると、磁粉31が分解することなく、潤滑剤32が溶融する。溶融した潤滑剤32は、磁粉31の粒子の表面に沿って流動し、磁粉31の表面を被覆する。そして、磁粉31の表面に吸着膜33を形成(生成)する。
加熱温度T1での加熱時間は、混合粉31,32に付与される熱量によるため、限定されるものではない。つまり、加熱温度T1が高温になれば、混合粉31,32に与えられる時間あたりの熱量が増加するため、加熱時間を短くできる。また、加熱温度T1が比較的低い温度である場合には、加熱時間を長くすることが好ましい。
加熱温度T1と加熱時間について、混合粉31,32に付与される熱量が大きくなるほど、磁粉31の表面に凝集した吸着膜33を生成でき、後の二次成形工程(ステップS45)で被膜切れを生じなくなる。
続いて、図2のステップS15に示すように、吸着膜33が形成された磁粉31の表面に、例えば、シリコーン組成物よりなる未硬化の結着剤34を配する。この結着剤34は、室温でゲル状〜液体状であり、流動性を持つ。結着剤34を磁粉31と混合することで、結着剤34が磁粉31(の粒子)の表面に配される。この状態では、断面を模式図(図4)で示したように、隣接する磁粉31の粒子同士の間に結着剤34が介在する。ただし、この状態においては、結着剤34が全ての磁粉31同士を結着するように存在しているのではなく、一部の磁粉31同士の間に介在しているだけである。つまり、この時点における磁石の素材RMは、粉体状で存在しており、ボンド磁石の素材のように射出成形が可能な流動状態を示すものとは異なる。素材RMは、一つの磁粉31の外周面に吸着膜33及び結着剤34が付着した単体をいい、以降、集合体としての素材RMは、複数の素材RMと称する。
結着剤34のシリコーン組成物としては、シロキサン結合による主骨格を持つ組成物を用いることができる。より具体的には、シリコーン組成物としてシリコーン樹脂を用いる。シリコーン組成物は、磁粉31の表面に配されるときは未硬化(ゲル状〜液体状)で、その後の工程で硬化する。熱硬化型のシリコーン組成物は、硬化温度(硬化開始温度)T4が、磁粉31の分解温度T2未満である。
結着剤34の混合割合は、任意に設定できる。例えば、磁粉31(吸着膜33が形成された状態)の体積を100体積%としたときに、5〜15体積%とすることができ、8〜12体積%とすることがより好ましい。なお、結着剤34を硬化する方法は限定されない。例えば、加熱、紫外線の照射、水等の反応開始剤を接触させて硬化を開始する等の方法でも構わない。
次に、ロータコア10の形成工程(ステップS20)について、図2、及び図5A,図5B,図6〜図7を参照して説明する。ロータコア10は、上述したように、複数の電磁鋼板11を積層して形成される。
電磁鋼板11は、図5A、図5B及び図6に示す形状で形成される。なお、図5A、図5B及び図6は、図2のステップS21及びステップS22の実施後における電磁鋼板11の状態を示している。ステップS21において、電磁鋼板11は、外周面を円形に形成され、電磁鋼板11の中心には、中心孔11aが、スプライン状に形成される。また、電磁鋼板11には、中心孔11aと外周面との間に、周方向にスロット用の複数(本実施形態では4個)の凹所11cが、等角度間隔で貫通形成される。つまり、凹所11cは、電磁鋼板11の軸線方向に貫通し、且つ軸線方向周りを囲む貫通孔である。なお、本実施形態においては、各凹所11cは、径方向外方に開口するV字形状に形成されるが、例えばU字形状を含む他の形状でもよい。
次に、電磁鋼板11は、ステップS22において、図5A、図5B及び図6に示す第一カシメ部11d及び第二カシメ部11eが形成される(形成方法は後述する)。第一カシメ部11d及び第二カシメ部11eは、重なり合う電磁鋼板11同士を結合するための部位である。第一カシメ部11dは、図5Aにおいて、周方向で隣り合う凹所11cの間の任意の位置に設けられる。また、第一カシメ部11dは、図5Aにおいて、周方向に等角度毎に配置される。第一カシメ部11dは、図5B及び図6に示すように、一方面11f(図6の下面)に突出して形成される凸部111と、他方面11g(図6の上面)に凹状に形成される凹部112とを備える。凸部111と凹部112とは、表裏に対応する位置に設けられる。
第二カシメ部11eは、各凹所11cのV字形状の開口内の任意の位置に設けられる。また、第二カシメ部11eは、図5Aにおいて、周方向に等角度毎に配置される。第二カシメ部11eは、図5Bに示すように、第一カシメ部11dと同様に凸部111と凹部112とを備える。第一カシメ部11d及び第二カシメ部11eの凸部111の突出方向は、第一カシメ部11dの突出方向と一致する。
第一カシメ部11dは、電磁鋼板11を1枚ずつ重ねる際に、図7に示すカシメ部材42を第一方向に移動させ形成する。つまり、カシメ部材42の図略の第一カシメ突起を電磁鋼板11の上面に押し当てプレスして形成する。このとき同時に、カシメ部材42は、形成した第一カシメ部11dの凸部111を、重ね合わせる相手側の電磁鋼板11の凹部112に嵌合させる。
また、第二カシメ部11eは、第一カシメ部11dを形成するのと同時に、カシメ部材42の図略の第二カシメ突起を電磁鋼板11の上面に押し当てプレスして形成する。そして、カシメ部材42は、形成した第二カシメ部11eの凸部111を、重ね合わせる相手側の電磁鋼板11の凹部112に嵌合させる。第一カシメ突起及び第二カシメ突起は、カシメ部材42の支持部材40側の面に第一方向に突出している。このようにして、図7に示すように、各電磁鋼板11が積層されて、ロータコア10が形成される。このとき、重なり合う電磁鋼板11の凸部111と凹部112とが嵌合されることにより、重なり合う電磁鋼板11が結合される。
このようにして形成されたロータコア10は、各電磁鋼板11の中心孔11aを軸線方向に連続して形成された中心孔12を備え、さらに、各電磁鋼板11の凹所11cを軸線方向に連続して形成されたスロット13を備える。即ち、スロット13は貫通孔であり、ロータコア10の軸線方向両側に開口する。
次に、ロータコア10に軸部材20を挿入する挿入工程(ステップS31)について、図2及び図8を参照して説明する。挿入工程(ステップS31)では、ロータコア10の中心孔12に、軸部材20が挿入される(挿入工程)。ここで、軸部材20の外周面及びロータコア10の中心孔12は、スプライン状に形成されている。軸部材20がロータコア10の中心孔12に挿入されることで、軸部材20の外周面とロータコア10の中心孔12がスプライン嵌合される。
(3.磁石の形成工程)
次に、磁石30の形成工程(ステップS41〜S48)について、図2及び図9〜図15を参照して説明する。磁石30は、S11〜S15にて準備した磁石30の複数の素材RM(複数の磁粉31を含む)を用いて形成される。具体的には、磁石30は、既に形成したロータコア10自身、特に軸部材20が挿入されたロータコア10を成形型の一部として用い、スロット13にS11〜S15にて準備した磁石30の複数の素材RMを充填して磁石30を形成する。
次に、磁石30の形成工程(ステップS41〜S48)について、図2及び図9〜図15を参照して説明する。磁石30は、S11〜S15にて準備した磁石30の複数の素材RM(複数の磁粉31を含む)を用いて形成される。具体的には、磁石30は、既に形成したロータコア10自身、特に軸部材20が挿入されたロータコア10を成形型の一部として用い、スロット13にS11〜S15にて準備した磁石30の複数の素材RMを充填して磁石30を形成する。
磁石30の形成工程は、磁石30の複数の素材RMの充填工程(ステップS41)、配向金型60を配置する配向金型配置工程(ステップS42)、一次成形工程(ステップS43)、拘束金型51を配置する拘束金型配置工程(ステップS44)、二次成形工程(ステップS45)、加熱工程(ステップS46)、取り出し工程(ステップS47)、及び着磁工程(ステップS48)を備える。上記において、充填工程(ステップS41)、配向金型配置工程(ステップS42)、及び一次成形工程(ステップS43)は、本発明に係る第一工程Q1である。また、拘束金型配置工程(ステップS44)及び二次成形工程(ステップS45)は、本発明に係る第二工程Q2である。
(3−1.充填工程)
充填工程(ステップS41,第一工程Q1)では、S11〜S15にて準備した磁石30の複数の素材RMをロータコア10のスロット13に充填(配置)する。このため、充填工程(ステップS41)では、図9に示すように、ロータコア10の軸方向両側に、スペーサ52、53が配置される。スペーサ52、53は、電磁鋼板11とほぼ同様の形状で形成される。つまり、スペーサ52、53は、スロット13と同形状の凹所52a,53aを備える。凹所52a,53aはスペーサ52、53の両端部が開口する貫通孔である。また、スペーサ52、53の厚みは、電磁鋼板11に比べて厚く形成される。
充填工程(ステップS41,第一工程Q1)では、S11〜S15にて準備した磁石30の複数の素材RMをロータコア10のスロット13に充填(配置)する。このため、充填工程(ステップS41)では、図9に示すように、ロータコア10の軸方向両側に、スペーサ52、53が配置される。スペーサ52、53は、電磁鋼板11とほぼ同様の形状で形成される。つまり、スペーサ52、53は、スロット13と同形状の凹所52a,53aを備える。凹所52a,53aはスペーサ52、53の両端部が開口する貫通孔である。また、スペーサ52、53の厚みは、電磁鋼板11に比べて厚く形成される。
これにより、ロータコア10は、スロット13とスペーサ52、53に形成される各凹所52a,53aが連通し、軸線方向両側に開口する。スペーサ53の凹所53aには、ロータコア10の軸線と直交する断面の形状がスロット13のV字形状と同じになるよう形成された長尺の下側パンチ部材54が、軸方向に移動可能に挿入される(図9)。
充填工程(ステップS41)では、スペーサ52の凹所52aを介して、磁石30の複数の素材RMをスロット13の開口の上方から自重でスロット13内に落下させる。これにより、複数の素材RMを成り行きでスロット13内及びスペーサ52、53の各凹所52a,53aの一部に充填する(図10参照)。なお、充填する複数の素材RMの量は、後の一次、及び二次成形工程において、磁粉31を含む複数の素材R間の隙間(空間)が圧縮され詰められることにより減少する複数の素材RMの体積分を考慮して決定される。充填工程(ステップS41)においては、スロット13内の複数の素材RMは、自重でスロット13内に落下させただけであるので、圧縮されていない。このため、複数の磁粉31を含む複数の素材R間には多くの隙間があり、各素材RMが有する各磁粉31は、各々自由に回転できる状態となっている。
(3−2.配向金型配置工程)
次に、配向金型配置工程(ステップS42,第一工程Q1)では、複数の素材RMが、スロット13内に充填(配置)された状態で、各磁粉31の各磁極を配向させる。このため、上述した磁石30の複数の素材RM(磁粉を含む)がスロット13内に充填されたロータコア10及びスペーサ52、53(ロータコア10及びスペーサ53は図11には不図示)を、永久磁石PMが埋め込まれた配向金型60の中心孔60aに、中心孔60aの軸線とロータコア10の軸線とが同軸となるよう挿入する(図11参照)。これにより、複数の素材RMが有する各磁粉31の各磁極は、ロータコア10が配向金型60内に挿入された瞬間から永久磁石PMの磁場の影響を受けて配向が開始される。
次に、配向金型配置工程(ステップS42,第一工程Q1)では、複数の素材RMが、スロット13内に充填(配置)された状態で、各磁粉31の各磁極を配向させる。このため、上述した磁石30の複数の素材RM(磁粉を含む)がスロット13内に充填されたロータコア10及びスペーサ52、53(ロータコア10及びスペーサ53は図11には不図示)を、永久磁石PMが埋め込まれた配向金型60の中心孔60aに、中心孔60aの軸線とロータコア10の軸線とが同軸となるよう挿入する(図11参照)。これにより、複数の素材RMが有する各磁粉31の各磁極は、ロータコア10が配向金型60内に挿入された瞬間から永久磁石PMの磁場の影響を受けて配向が開始される。
図11に示す配向金型60は、スロット13に充填される複数の素材RMが有する各磁粉31に所定方向の磁場を印加し、磁粉31の各磁極を所望の状態に配向させるための型である。配向金型60は、概ね円筒形状で形成される。前述したように、円筒の中心には、ロータコア10が配置される(図13参照)。配向金型60の中心孔60aの内周面と、ロータコア10の外周面との間には、ロータコア10を配向金型60に挿入、及び配向金型60から抜き出すための若干の隙間G(エアギャップ)を有している。
また、図11に示すように、配向金型60は、非磁性体で、且つ磁場を通す性質を有する金属によって形成された金型部61の内部に、永久磁石PMと、ヨーク62とが配置され形成される。図11には、永久磁石PMの配置の一例が示されている。ただし、図11に示す形状に限らず、永久磁石PMの形状及び配置については、極磁を配向させる磁石30の形状、即ちスロット13の形状等に応じて異なる。また、図11に示す矢印(太線)は、永久磁石PMが生じさせる磁束の向きの一例を示している。なお、磁石を配向させる永久磁石PMについての技術は公知であるので、詳細な説明については省略する。
このように、ロータコア10の径方向外方側に永久磁石PMを備える配向金型60が配置されることにより、スロット13に充填され、各々が回転自在な複数の素材RMの磁粉31の磁極が、永久磁石PMの磁場によって、所望の方向に配向される。
ここで、配向について簡単に説明しておく。図11に示す永久磁石PMの配置によれば、スロット13に充填される複数の素材RMの各磁粉31(つまり磁石30)は、図12に示す矢印Ar4のように配向される。つまり、磁石30全体でみると、配向方向は徐々に変化している。しかし、部分的に拡大してみると、配向できなかった一部を除き、少なくとも隣り合う磁粉31同士の間においては、所定の同方向に配向されているといえる。なお、矢印Ar4はあくまで配向方向をイメージで表したものである。
また、矢印Ar4が示すように、磁石30の複数の素材RMにおける磁粉31の配向割合は、ロータコア10の径方向外方に位置するV字の端部Aの近傍で高く、ロータコア10の径方向内方に位置するV字の中央部Bの近傍で低くなっている。これは、配置された永久磁石PMと複数の素材RMの各部との間の距離に応じて生じる結果であり、永久磁石PMと近い端部A近傍では、配向割合が高く、永久磁石PMから遠い中央部B近傍では、配向割合が低い。
なお、図12においては、配向割合が高い状態を太い白抜き矢印Ar1、Ar2で示し、配向割合が低い状態を細い白抜き矢印Ar3で示している。また、ここでいう配向割合とは、磁石30の複数の素材RMの各部における複数の磁粉31のうち、所望の方向への配向ができた磁粉31の割合をいう。つまり、図12に示す矢印Ar4の方向が、多く一致している部分(A部近傍)では配向割合が高いといえ、矢印Ar4の方向が一致している部分が少ない部分(B部近傍)では配向割合が低いといえる。
(3−3.一次成形工程)
次に、一次成形工程(ステップS43,第一工程Q1)では、スロット13内の複数の素材RMを、磁極を配向させた状態のまま、第一圧力P1で加圧し、一次成形体B1を成形する(図13参照)。具体的には、ロータコア10の軸線と直交する断面の形状がスロット13のV字形状と同じになるよう形成された長尺の上側パンチ部材55が、スペーサ52の凹所52aに挿入され、上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54が、それぞれ上下方向から磁石30の複数の素材RMを第一圧力P1で加圧する。
次に、一次成形工程(ステップS43,第一工程Q1)では、スロット13内の複数の素材RMを、磁極を配向させた状態のまま、第一圧力P1で加圧し、一次成形体B1を成形する(図13参照)。具体的には、ロータコア10の軸線と直交する断面の形状がスロット13のV字形状と同じになるよう形成された長尺の上側パンチ部材55が、スペーサ52の凹所52aに挿入され、上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54が、それぞれ上下方向から磁石30の複数の素材RMを第一圧力P1で加圧する。
このとき、第一圧力P1は、上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54によって、複数の素材RMを加圧した際、外周が拘束されていないロータコア10の外周面が径方向外方に向かって変形を生じない大きさの加圧力である。また、第一圧力P1は、ロータコア10を、配向金型60から抜きだし、複数の磁粉31に磁場が印加されない状態でも、複数の素材RMの各磁粉31の配向状態を保持可能とする大きさの加圧力である。
具体的には、第一圧力P1は、例えば、200MPa以下であることが好ましい。また、この加圧力を別の指標で表すと、加圧によって、例えば、複数の素材RMが、45%〜75%の範囲内の密度比に圧縮されることが好ましい。また、より好ましくは、複数の素材RMが、45%〜55%の範囲内の密度比に圧縮されることが好ましい。
なお、上記において、密度比とは、磁粉31自体の本来の密度である真密度に対する、磁粉31以外の要素(空間、結着材、潤滑剤等)を含んだ状態の成形体(複数の素材RMを圧縮して形成するもの)の密度である成形体密度の比(成形体密度/真密度)をいうものとする。その後、一次成形工程(ステップS43)において、スロット13内で、複数の素材RMが所定量だけ圧縮され一次成形体B1が形成されたロータコア10は、配向金型60から抜き出される。このとき、上述したようにロータコア10の外周面(外周)は変形しておらず、且つ配向金型60の内周面との間には隙間があるので、ロータコア10は、容易に抜き出せる。
また、一次成形工程(ステップS43)において、スロット13内の複数の素材RMは、第一圧力P1で加圧され圧縮されたので、複数の素材RMが有する複数の磁粉31は、その場で自由に回転できない状態となっている。このため、磁粉31の磁極の配向状態は固定され、ロータコア10を配向金型60から抜きだし、且つ磁場の印加がない状態に晒しても、スロット13内の磁粉31の磁極の配向状態は維持される。
なお、一次成形工程(ステップS43)では、磁石30の複数の素材RMに対して上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54による加圧を、第一圧力P1により1回だけ行なう態様でよい。しかし、この態様に限らず、上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54による加圧を第一圧力P1によって複数回繰り返して一次成形体B1を形成してもよい。
(3−4.拘束金型配置工程)
次に、拘束金型配置工程(ステップS44,第二工程Q2)では、図14に示すように、配向金型60から抜き出された、ロータコア10の外周側に、図略のヒータを内蔵した円筒形状の拘束金型51(拘束部材に相当)が配置される。拘束金型51は、筒状部材を周方向に複数に分割した円弧状部材で形成される。
次に、拘束金型配置工程(ステップS44,第二工程Q2)では、図14に示すように、配向金型60から抜き出された、ロータコア10の外周側に、図略のヒータを内蔵した円筒形状の拘束金型51(拘束部材に相当)が配置される。拘束金型51は、筒状部材を周方向に複数に分割した円弧状部材で形成される。
拘束金型51は、非磁性の超硬合金によって形成される。拘束金型51は、円筒の内周面がロータコア10の外周面に当接することでロータコア10の径方向外方への変形の規制ができるように円筒の肉厚が設定される。また、拘束金型51は、超硬と同等のヤング率E(縦弾性係数)を備える他の金属でもよい。このように、ロータコア10は、拘束金型51によって、径方向外方への変形が規制される。また、ロータコア10の各両端面には、第一工程Q1と同様に、スペーサ52、53が配置される。このとき、スペーサ52、53は、図略のヒータを内蔵していることが好ましい。
なお、本実施形態においては、拘束金型51の外周の径方向外方には、スロット13内の素材RMに対し、配向金型60によって配向されたものと同様の配向が可能なように、永久磁石と、ヨークとを配置し、磁場を印加させた状態とする(図示しない)。従って、下記で説明する二次成形工程(ステップS45)において、スロット13内の複数の素材RMが第二圧力P2で加圧され、複数の素材RMの各磁粉31が破砕した場合においても、破砕した磁粉31の磁極を再度配向し直すことができる。
これにより、磁石30の性能を向上させることができる。ただし、この態様には限らず、拘束金型51の外周側には、永久磁石PMと、ヨークとを配置しなくてもよい。この場合、拘束金型51は、非磁性材料ではなく磁性材料でもよい。
(3−5.二次成形工程)
次に、二次成形工程(ステップS45,第二工程Q2)では、図14に示すように、一次成形工程(ステップS43)と同様、上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54の一部が、スペーサ52,53の凹所52a,53aに挿入される。そして、上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54によって、上下方向から第一圧力P1よりも大きな第二圧力P2で磁石30の複数の素材RMが加圧されて、第一工程Q1における一次成形体B1の成形体密度(密度)より高い成形体密度(密度)となる二次成形体B2を成形する(図14参照)。この第二圧力P2による加圧によって、磁石30の複数の素材RM(二次成形体B2)は、スロット13の内周面全面に押付けられ、確実に接触する。
次に、二次成形工程(ステップS45,第二工程Q2)では、図14に示すように、一次成形工程(ステップS43)と同様、上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54の一部が、スペーサ52,53の凹所52a,53aに挿入される。そして、上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54によって、上下方向から第一圧力P1よりも大きな第二圧力P2で磁石30の複数の素材RMが加圧されて、第一工程Q1における一次成形体B1の成形体密度(密度)より高い成形体密度(密度)となる二次成形体B2を成形する(図14参照)。この第二圧力P2による加圧によって、磁石30の複数の素材RM(二次成形体B2)は、スロット13の内周面全面に押付けられ、確実に接触する。
なお、このとき、上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54による成形体の加圧、減圧は、複数回(例えば、20回以上)繰り返し行なうことが好ましい。そうすることで、二次成形体B2の密度比(二次成形体密度/真密度)が次第に高まり磁石としての性能の向上が期待できる。また、このとき、磁石30の複数の素材RMを加圧する第二圧力P2は、1.2GPa−1.4GPaの範囲内であることが好ましい。これにより、磁石30の二次成形体B2(複数の素材RM)は、スロット13内の内周面全面と良好に接触するので、スロット13内の容積に対する磁石30の体積比は大きくなり、磁石30の(磁力の)特性(磁場特性)は良好となる。また、このときの二次成形体B2の密度比は、80%−90%の範囲内であることが好ましい。
なお、上記実施形態の二次成形工程(ステップS45)では、磁石30の複数の素材RMに対して、上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54による加圧、減圧を複数回繰り返すことにより磁石30の二次成形体B2を成形した。しかし、この態様には限らず、他の実施形態として、二次成形工程(ステップS45)では、磁石30の複数の素材RMに対して上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54による加圧を1回のみ行なうものでもよい。これによっても、相応の効果は得られる。
また、上記のように、スロット13内にて磁石30の複数の素材RMが上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54によって加圧される際には、第二圧力P2による加圧力が、ロータコア10のスロット13、延いてはロータコア10の外周を膨張させる方向に作用する。具体的には、スロット13のV字形の端部A,Aとロータコア10の外周面との間の肉厚が薄く強度が低いため、この部分が伸長し、端部A,A間に位置するロータコア10の外周面が変形する虞がある。
しかし、ロータコア10は、ヤング率Eが大きく、十分な肉厚を有する超硬合金製の拘束金型51によって外周側が拘束されている。このため、磁石30の複数の素材RMが、第二圧力P2でスロット13内にて加圧され圧縮される際にも、ロータコア10の外周面の変形は、良好に規制される。このように、第二工程Q2では、非磁性材料で超硬合金製の拘束金型51(拘束部材)によりロータコア10の外周を拘束し、且つ、磁石30の複数の素材RMに磁場を印加した状態で、磁石30の複数の素材RMを第二圧力P2で加圧し磁石30の二次成形体B2を形成している。
(3−6.加熱工程)
次に、加熱工程(ステップS46、図2参照)では、磁石30の二次成形体B2を加熱する。具体的には、図14に示すように、二次成形工程(ステップS45)によって、磁石30の複数の素材が圧縮され二次成形体B2が成形された状態、すなわち、軸部材20が挿入されたロータコア10に、拘束金型51、スペーサ52,53及びパンチ部材54,55が配置された状態で、加熱温度T6になるまで、拘束金型51,スペーサ52,53が有するヒータで磁石30の二次成形体B2を加熱する。
次に、加熱工程(ステップS46、図2参照)では、磁石30の二次成形体B2を加熱する。具体的には、図14に示すように、二次成形工程(ステップS45)によって、磁石30の複数の素材が圧縮され二次成形体B2が成形された状態、すなわち、軸部材20が挿入されたロータコア10に、拘束金型51、スペーサ52,53及びパンチ部材54,55が配置された状態で、加熱温度T6になるまで、拘束金型51,スペーサ52,53が有するヒータで磁石30の二次成形体B2を加熱する。
磁石30の二次成形体B2に対する加熱温度T6は、結着剤34としての熱硬化型のシリコーン組成物の硬化温度T4(硬化開始温度)以上であり、且つ、磁粉31の分解温度T2未満である。また、この加熱温度T6は、潤滑剤32の融点T3未満の温度であることが好ましい。結着剤34の硬化後は、拘束金型51,スペーサ52,53のヒータをオフにし、ロータコア10及び磁石30の成形体を自然冷却する。
加熱後の磁石30においては、図15の模式図で示すように、硬化した結着剤34によって複数の磁粉31の粒子同士が結着する。さらに、図示しないが、硬化した結着剤34は、複数の磁粉31の一部とロータコア10のスロット13の内周面全周とを結着する。従って、実質的に、形成された磁石30は、ロータコア10のスロット13の内周面全周との間に隙間なく配置されることになる。
(3−7.取り出し工程、着磁工程)
続いて、取り出し工程(ステップS47、図2参照)によって、拘束金型51,スペーサ52,53及びパンチ部材54,55が取り除かれると、図1に示すロータ1が出来上がる。そして最後に、着磁工程(ステップS48、図2参照)によって公知の磁石30の着磁が行なわれる。
続いて、取り出し工程(ステップS47、図2参照)によって、拘束金型51,スペーサ52,53及びパンチ部材54,55が取り除かれると、図1に示すロータ1が出来上がる。そして最後に、着磁工程(ステップS48、図2参照)によって公知の磁石30の着磁が行なわれる。
(4.実施形態による効果)
上記実施形態によれば、軸線方向両側に開口するスロット13を備えるロータコア10と、スロット13に配置される磁石30と、を備えるロータ1の製造方法は、複数の磁粉31を含む磁石30の複数の素材RMをスロット13に配置した状態で複数の磁粉31の磁極を配向させると共に、複数の磁粉31の磁極を配向させた状態のまま磁石30の複数の素材を第一圧力P1で加圧して一次成形体B1を成形する第一工程Q1と、配向された複数の磁粉31を含む磁石30の複数の素材RMを第一圧力P1より大きな第二圧力P2で加圧して、第一工程Q1における一次成形体B1の密度より高い密度となる二次成形体B2を成形する第二工程Q2と、を備える。
上記実施形態によれば、軸線方向両側に開口するスロット13を備えるロータコア10と、スロット13に配置される磁石30と、を備えるロータ1の製造方法は、複数の磁粉31を含む磁石30の複数の素材RMをスロット13に配置した状態で複数の磁粉31の磁極を配向させると共に、複数の磁粉31の磁極を配向させた状態のまま磁石30の複数の素材を第一圧力P1で加圧して一次成形体B1を成形する第一工程Q1と、配向された複数の磁粉31を含む磁石30の複数の素材RMを第一圧力P1より大きな第二圧力P2で加圧して、第一工程Q1における一次成形体B1の密度より高い密度となる二次成形体B2を成形する第二工程Q2と、を備える。
このように、磁粉を配向させることが目的の一つである第一工程Q1においては、スロット13内に磁粉を充填する際、スロット13内において、充填された複数の素材の複数の磁粉31が各々自由回転可能な状態でいられるよう充填を行なう。このような状態で、磁粉31を配向させるので、磁粉31は良好に配向される。つまり、スロット13内において、磁粉31の磁場特性が良好となる。
また、第一工程Q1では、磁粉31の配向後において、磁粉31を配向させた状態のまま磁石30の複数の素材RM(磁粉31を含む)を第一圧力P1で加圧して一次成形体B1を成形する。従って、第一工程Q1後において、磁粉31は、配向された状態から移動しにくい状態(向きを変えにくい状態)となる。そのため、例えば、第一工程Q1の後に磁場が印加されていない場所に移動したり、磁場が弱い場所に移動したりしても、磁粉31は、配向された状態を保持できる。
そして、第二工程Q2において、磁石30の複数の素材RMを第二圧力P2によって加圧し二次成形体B2を形成する。つまり、第二工程Q2において、スロット13内における複数の素材RM(二次成形体B2)の密度を一次成形体B1の密度より高くすることができる。
このように、本実施形態では、磁石30の磁粉31の配向から、配向された磁粉31を加圧し完成状態とするまで、一貫してスロット13内で行ないスロット13を固定型として用いる。従って、スロット13内では、特に第二工程Q2における加圧時に、複数の素材RMの各磁粉31がスロット13の内周面に向かって拡がり、内周面に確実に当接する。これにより、磁石30(磁粉31)とスロット13の内周面との間には隙間が発生しないので、スロット13内の容積に対する磁石30の体積比が向上して磁石30の性能が向上する。また、磁石30の性能が向上するので、従来と同等の性能を出せばよい場合、磁石30の軸線方向長さを短縮できるため、ロータ1、延いてはモータを小型化することができる。
また、第二工程Q2における第二圧力P2による加圧によって、例えばスロット13内の二次成形体B2内の磁粉31の一部が破砕される。このため、破砕された磁粉31によって、さらにスロット13内の隙間が埋められ、スロット13内の二次成形体B2の密度がさらに高くなり、磁石30の性能が向上する。
また、上記実施形態のロータ1の製造方法において、第一工程Q1における第一圧力P1は、ロータコア10の外周が拘束されていない状態で、ロータコア10の外周面が径方向外方に向かって変形を生じない圧力であり、第二工程Q2は、ロータコア10の外周が拘束された状態で、第二圧力P2で加圧する。
通常、分割が困難とされる磁石を有する配向用の金型内では、金型からのロータコア10の抜き出しのため、ロータコア10の外周面との間に所定の隙間Gを設ける必要がある。つまり、ロータコア10の外周面は、配向用の金型によっては拘束できない。よって、金型内において、ロータコア10の外周面を変形させるような、例えば、スロット13内の磁石の磁粉31を大きな加圧力で加圧することは困難である。しかしながら、本実施形態では、ロータコア10の外周面が変形しない第一圧力P1を求め、その第一圧力P1によって加圧力の管理を行なうこととした。これにより、配向を行なう金型内においてスロット13内の磁石30の複数の素材RMの磁粉31を配向させた後、ロータコア10を配向用の金型内から抜き出すことができ、第二工程Q2にロータコア10を容易に供給することができる。
また、上記実施形態のロータの製造方法によれば、第一圧力P1は、一次成形体B1に磁場を印加していない状態で、複数の磁粉31が配向状態を保持する圧力でもある。
これにより、ロータコア10を、配向用の金型内から磁粉31の配向が保持された状態で抜き出しができ、第二工程Q2に、配向状態が保持されたロータコア10を容易に供給することができる。
これにより、ロータコア10を、配向用の金型内から磁粉31の配向が保持された状態で抜き出しができ、第二工程Q2に、配向状態が保持されたロータコア10を容易に供給することができる。
また、上記実施形態のロータの製造方法によれば、第二工程Q2は、非磁性材料の拘束部材によりロータコア10の外周を拘束した状態で、且つ、磁場を印加させた状態で、第二圧力P2で加圧する。
これにより、第二工程Q2における第二圧力P2による加圧によって、例えばスロット13内の複数の素材RMが有する各磁粉31の一部が破砕され、破砕された磁粉31の配向が保持されなくなったとしても、破砕された磁粉31は、印加される磁場によって再び配向される。従って、磁場が印加されない場合と比較して、磁石30の特性が確実に向上する。
これにより、第二工程Q2における第二圧力P2による加圧によって、例えばスロット13内の複数の素材RMが有する各磁粉31の一部が破砕され、破砕された磁粉31の配向が保持されなくなったとしても、破砕された磁粉31は、印加される磁場によって再び配向される。従って、磁場が印加されない場合と比較して、磁石30の特性が確実に向上する。
また、上記実施形態によれば、複数の磁粉31は、Fe−N系化合物,R−Fe−N系化合物(R:希土類元素)の一種以上よりなる硬磁性体の磁粉であり、ロータ1の製造方法は、第二工程Q2の後において、スロット13内に配置した複数の磁粉31を含む二次成形体B2を複数の磁粉31の分解温度T2未満の温度で加熱して、複数の磁粉31を結着させる加熱工程(ステップS46)を備える。このように、ロータコア10が、第一、第二工程Q1,Q2のみならず、加熱工程(ステップS46)における固定型としても用いられるので、効率的である。
また、上記実施形態によれば、磁石30の複数の素材RMは、複数の磁粉31及び結着剤34を含み、加熱工程(ステップS46)は、結着剤34を加熱により硬化させて、硬化した結着剤34により複数の磁粉31同士を結着させると共に、複数の磁粉31とスロットの内周面全周とを結着させる。つまり、磁石30自身を構成する結着剤34が、磁粉31とスロット13とを結着させる。このため、磁石30とスロット13とを結着するための専用の結着剤が不要となる。
なお、一般には、磁粉31同士を結着する場合、焼結により行なえば、高い結着力が得られることが知られている。しかし、本実施形態では焼結による結着力より弱い結着力しか得られない結着剤34によって、磁粉31同士の結着を行なってもよい理由について説明しておく。
本実施形態では、上述したように上記化合物(例えば、Sm)からなる磁粉31を磁石30の素材として適用することとした。上記化合物の場合、磁粉31の分解温度T2は焼結温度より低温である。そのため、上記化合物からなる磁粉31の場合には、焼結できない。よって、磁粉31が上記化合物である場合には、磁粉31同士の結着は結着剤34によって行なうこととなり、結果として結着力が弱くなる。しかし、本発明では、磁石30がロータコア10のスロット13から取り出されることがない。このため、磁粉31同士が必要以上に強固な結着力により結着している必要はなく、スロット13内において磁粉31同士が保持される程度の結着力で足りる。従って、上記化合物からなる磁粉31を用いる場合には、本実施形態による製造方法は有効である。
(5.その他)
なお、上記実施形態では、ロータ1は、ロータコア10と、軸部材20と、磁石30とを備えるものとして説明した。しかし、この態様には限らず、別の実施形態として軸部材20を有さない構成をロータの構成としてもよい。また、ロータコア10と、軸部材20とを一体で形成するものとし、ロータコア、及び軸部材の一体部材と、磁石30とをロータの構成としてもよい。
また、上記実施形態では、ロータコア10を電磁鋼板11の積層体によって形成したが、ロータコア10は、電磁鋼板11以外で形成してもよい。
なお、上記実施形態では、ロータ1は、ロータコア10と、軸部材20と、磁石30とを備えるものとして説明した。しかし、この態様には限らず、別の実施形態として軸部材20を有さない構成をロータの構成としてもよい。また、ロータコア10と、軸部材20とを一体で形成するものとし、ロータコア、及び軸部材の一体部材と、磁石30とをロータの構成としてもよい。
また、上記実施形態では、ロータコア10を電磁鋼板11の積層体によって形成したが、ロータコア10は、電磁鋼板11以外で形成してもよい。
また、上記実施形態では、第一工程Q1の充填工程(ステップS41)では、磁石30の複数の素材RMを自重で落下させてスロット13内に充填すると説明した。しかし、この態様に限らず、複数の素材RMを自重で落下させた後、第一圧力P1未満の加圧力で、配向前の複数の素材RMを若干加圧してもよい。これにより、配向割合は低下する。しかし、複数の素材RMがスロット13内に隙間なく充填されることによる磁石30の特性向上については相応の効果が期待できる。
また、上記実施形態では、第二工程Q2において、磁場を印加する態様としたが、印加しなくてもよい。これによっても、磁石30の特性向上については十分、効果が期待できる。
また、上記実施形態では、第二工程Q2において、磁場を印加する態様としたが、印加しなくてもよい。これによっても、磁石30の特性向上については十分、効果が期待できる。
また、上記実施形態では、第一工程Q1において、複数の素材RMの複数の磁粉31を配向させるための磁石を永久磁石PMであるとした。しかし、この態様には限らず、磁石は、電磁石でもよい。この場合、電磁石により磁場を印加させるタイミングとしては、永久磁石PMが配置された場合と同様である。つまり、スロット13内に複数の素材RMが充填されたロータコア10が、配向金型60に配置される際には、電磁石を起動させて磁場を複数の素材RMに印加し、この磁場の印加状態を、ロータコア10が配向金型60から抜き出されるまで継続させればよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
また、上記実施形態では、第一工程Q1において、スロット13内の複数の素材RMを第一圧力P1で加圧する際には、ロータコア10の外周が拘束されていない状態で行なうものとした。しかし、この態様には限らず、可能であれば、第一工程Q1において、ロータコア10の外周を所定の拘束部材によって拘束してもよい。つまり、配向金型60とロータコア10の外周の間に所定の拘束部材を配置してもよい。ただし、配向金型60の内周面と、当該内周面と対向する拘束部材の外周面との間には、ロータコア10を配向金型60から抜き出すために若干の隙間が必要である。
また、上記実施形態では、第一工程Q1の一次成形工程及び第二工程Q2の二次成形工程にて、複数の素材RMを加圧する際、スペーサ52,53の凹部52a,53aに上側パンチ部材55及び下側パンチ部材54をそれぞれ挿入して加圧した。しかし、この態様には限らない。スペーサ52,53のいずれか一方に対してパンチ部材が挿入される凹部を塞ぎ、他方のスペーサのみにパンチ部材を挿入して複数の素材RMを加圧してもよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
1・・・ロータ、 10・・・ロータコア、 12・・・中心孔、 13・・・スロット、 20・・・軸部材、 30・・・磁石、 31・・・磁粉、 34・・・結着剤、 51・・・拘束金型、 52,53・・・スペーサ、 52a,53a・・・凹所、 54・・・下側パンチ部材、 55・・・上側パンチ部材、 60・・・配向金型、 60a・・・中心孔、 A・・・端部、 B・・・中央部、 P1・・・第一圧力、 P2・・・第二圧力、 Q1・・・第一工程、 Q2・・・第二工程、 T2・・・分解温度、 T4・・・硬化温度、 T6・・・加熱温度。
Claims (6)
- 軸線方向両側に開口するスロットを備えるロータコアと、前記スロットに配置される磁石と、を備えるロータの製造方法であって、
複数の磁粉を含む前記磁石の複数の素材を前記スロットに配置した状態で前記複数の磁粉の磁極を配向させると共に、前記複数の磁粉の磁極を配向させた状態のまま前記磁石の前記複数の素材を第一圧力で加圧して一次成形体を成形する第一工程と、
前記配向された前記複数の磁粉を含む前記磁石の前記複数の素材を前記第一圧力より大きな第二圧力で加圧して、前記第一工程における前記一次成形体の密度より高い密度となる二次成形体を成形する第二工程と、
を備える、ロータの製造方法。 - 前記第一圧力は、前記ロータコアの外周が拘束されていない状態で、前記ロータコアの外周面が径方向外方に変形を生じない圧力であり、
前記第二工程は、前記ロータコアの外周が拘束された状態で、前記第二圧力で加圧する、請求項1に記載のロータの製造方法。 - 前記第一圧力は、前記一次成形体に磁場を印加していない状態で、前記複数の磁粉が配向状態を保持する圧力である、請求項1又は2に記載のロータの製造方法。
- 前記第二工程は、非磁性材料の拘束部材により前記ロータコアの外周を拘束した状態で、且つ、磁場を印加させた状態で、前記第二圧力で加圧する、請求項1−3の何れか1項に記載のロータの製造方法。
- 前記複数の磁粉は、Fe−N系化合物,R−Fe−N系化合物(R:希土類元素)の一種以上よりなる硬磁性体の磁粉であり、
前記ロータの製造方法は、前記第二工程の後において、前記スロット内に配置した前記複数の磁粉を含む前記二次成形体を前記複数の磁粉の分解温度未満の温度で加熱して、前記複数の磁粉を結着させる加熱工程を備える、請求項1−4の何れか1項に記載のロータの製造方法。 - 前記磁石の前記複数の素材は、前記複数の磁粉及び結着剤を含み、
前記加熱工程は、前記結着剤を加熱により硬化させて、硬化した前記結着剤により前記複数の磁粉同士を結着させると共に、前記複数の磁粉と前記スロットの内周面全周とを結着させる、請求項5に記載のロータの製造方法。
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2015
- 2015-12-03 JP JP2015236335A patent/JP2017103940A/ja active Pending
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