本発明の態様に係るパターン描画装置およびパターン描画方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1の実施の形態]
図1は、実施の形態の基板(被露光体)Pに露光処理を施す露光装置EXを含むデバイス製造システム10の概略構成を示す図である。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、図1に示す矢印のように、X軸、Y軸、およびZ軸を設定し、Z軸の負方向は、重力方向とする。
デバイス製造システム10は、電子デバイスを製造する製造ラインが構築された製造システムである。電子デバイスとしては、例えば、フレキシブル・ディスプレイ、フィルム状のタッチパネル、液晶表示パネル用のフィルム状のカラーフィルター、フレキシブル配線、フレキシブル・センサー等が挙げられる。本実施の形態では、電子デバイスとしてフレキシブル・ディスプレイを前提として説明する。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等がある。デバイス製造システム10は、フレキシブルなシート状の基板(シート基板)Pをロール状に巻いた図示しない供給ロールから基板Pが送出され、送出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板Pを図示しない回収ロールで巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の構造を有する。そのため、各種処理後の基板Pは、複数の電子デバイス(デバイス形成領域)が基板Pの長尺方向に連なった状態、すなわち多面取りとなっている。前記供給ロールから送られた基板Pは、順次、プロセス装置PR1、露光装置(パターン描画装置)EX、およびプロセス装置PR2で各種処理が施され、前記回収ロールで巻き取られる。この基板Pは、基板Pの移動方向が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。
なお、X方向は、水平面内において、プロセス装置PR1から露光装置EXを経てプロセス装置PR2に向かう方向(搬送方向)である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向である。Z方向は、X方向とY方向とに直交する重力に沿った方向である。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、露光装置EXの搬送路を通る際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板Pの母材として、厚みが25μm〜200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。
基板Pは、プロセス装置PR1、露光装置EX、およびプロセス装置PR2で施される各処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質の基板Pを選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
ところで、基板Pの可撓性(flexibility)とは、基板Pに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板Pを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板Pの材質、大きさ、厚さ、基板P上に成膜される層構造、温度、湿度等の環境等に応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラム等の搬送方向転換用の部材に基板Pを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板Pを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲と言える。
プロセス装置PR1は、露光装置EXで露光処理される基板Pに対して前工程の処理を行う。プロセス装置PR1は、前記供給ロールから送られてきた基板Pを所定の速度で搬送しつつ、基板Pに対して前工程の処理を行い、前工程の処理を行った基板Pを露光装置EXへ向けて所定の速度で送る。この前工程の処理により、露光装置EXへ送られる基板Pは、その表面に感光性機能層(光感応層)が形成された基板(感光基板)Pとなっている。
この感光性機能層は、溶液として基板P上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジストであるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤、或いは紫外線硬化樹脂等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)や半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、パターン層を形成することができる。感光性機能層として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にする場合、露光装置EXへ送られる基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものであってもよい。
本実施の形態においては、パターン描画装置としての露光装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置である。露光装置EXは、プロセス装置PR1から供給された基板Pを所定の速度で搬送しつつ、基板Pに対して、ディスプレイ用の回路または配線等の所定のパターンを描画する。後で詳細に説明するが、露光装置EXは、基板Pを+X方向(副走査方向)に搬送しながら、露光用のレーザ光(露光ビーム)LBのスポット光SPを基板P上で所定の主走査方向(Y方向)に1次元の方向に走査(主走査)しつつ、スポット光SPの強度をパターンデータ(描画データ、描画情報)に応じて高速に変調(on/off)することによって、基板Pの表面(感光面)に所定のパターンを描画露光している。つまり、基板Pの+X方向への搬送(副走査)と、スポット光SPの主走査方向への主走査とで、スポット光SPが基板P上で相対的に2次元走査されて、基板Pに所定のパターンが描画露光される。
プロセス装置PR2は、露光装置EXで露光処理された基板Pに対しての後工程の処理(例えばメッキ処理や現像・エッチング処理等)を行う。プロセス装置PR2は、露光装置EXから送られてきた基板Pを所定の速度で搬送しつつ、基板Pに対して後工程の処理を行い、後工程の処理を行った基板Pを前記回収ロールに向けて所定の速度で送る。この後工程の処理により、基板P上に電子デバイスのパターン層が形成される。
次に、露光装置EXについて詳しく説明する。露光装置EXは、温調チャンバーECV内に格納されている。この温調チャンバーECVは、内部を所定の温度に保つことで、内部において搬送される基板Pの温度による形状変化を抑制する。温調チャンバーECVは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場の設置面Eに配置される。防振ユニットSU1、SU2は、設置面Eからの振動を低減する。この設置面Eは、設置土台上の面であってもよく、床であってもよい。露光装置EXは、基板搬送機構12と、光源装置(パルス光源装置)14と、光導入光学系16、露光ヘッド18と、制御部20、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)、エンコーダヘッドEN(EN1〜EN3)とを備えている。
基板搬送機構12は、プロセス装置PR1から搬送される基板Pを、プロセス装置PR2に向けて所定の速度で搬送する。基板搬送機構12は、基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1、テンション調整ローラRT1、回転ドラム(円筒ドラム)22、テンション調整ローラRT2、駆動ローラR2、および、駆動ローラR3を有している。プロセス装置PR1から搬送されてきた基板Pは、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1〜R3、回転ドラム22、および、テンション調整ローラRT1、RT2に掛け渡されて、プロセス装置PR2に向かって搬送される。
エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置PR1から搬送される基板Pの幅方向(Y方向であって基板Pの短尺方向)における位置を調整する。つまり、エッジポジションコントローラEPCは、基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を調整する。駆動ローラR1は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pを回転ドラム22へ向けて搬送する。エッジポジションコントローラEPCは、基板Pの長尺方向が回転ドラム22の回転軸AXに対して直交するように、基板Pの幅方向における位置を調整する。
回転ドラム22は、基板P上で所定のパターンが露光される部分をその円周面で支持する。回転ドラム22は、Y方向に延びる回転軸AXを中心に回転することで、基板Pを回転ドラム22の外周面(円周面)に倣って+X方向に搬送する。これにより、回転ドラム(副走査機構、移動機構)22は、基板Pを露光ヘッド18(描画ユニットU)に対して主走査方向(Y方向)と交差した副走査方向(搬送方向、+X方向)に相対移動させることができる。制御部20は、ドラム駆動源(例えば、モータや減速機構等)Mを制御することで、回転ドラム22を回転させる。なお、便宜的に、回転軸AXを含み、YZ平面と平行な平面を中心面Cと呼ぶ。また、本実施の形態では、露光ヘッド18(描画ユニットU)は、原則としてX方向に移動することはないので、基板Pの相対移動量は、単に基板Pの移動量(搬送距離)として計測可能である。したがって、相対移動量を基板Pの移動量として以下説明する。
駆動ローラR2、R3は、基板Pの搬送方向(+X方向)に沿って所定の間隔を空けて配置されおり、露光後の基板Pに所定の弛み(あそび)を与えている。駆動ローラR2、R3は、駆動ローラR1と同様に、基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pをプロセス装置PR2へ向けて搬送する。駆動ローラR2、R3は、回転ドラム22に対して搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、この駆動ローラR2は、駆動ローラR3に対して、搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。テンション調整ローラRT1、RT2は、回転ドラム22に巻き付けられて支持されている基板Pに、所定のテンションを与えている。なお、制御部20は、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機等)を制御することで、駆動ローラR1〜R3を回転させる。
光源装置14は、光源(パルス光源)14aを有し、パルス状のレーザ光(パルス光)LBを射出するものである。このレーザ光LBは、370nm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であり、レーザ光LBの発振周波数をFeとする。光源装置14が射出したレーザ光LBは、光導入光学系16に導かれて露光ヘッド18に入射する。光源装置14を、赤外波長域のパルス状の種光をファイバーアンプで増幅した後、波長変換素子(高調波生成結晶等)で波長400nm以下の紫外域のパルス光に変換するファイバーアンプレーザ光源とする場合、クロックパルス信号に応答して赤外波長域のパルス状の種光を発生する半導体レーザ光源(レーザダイオード等)が光源14aに相当する。
露光ヘッド18は、レーザ光LBがそれぞれ入射する複数の描画ユニットU(U1〜U5)を備えている。光源装置14からのレーザ光LBは、反射ミラーやビームスプリッタ等を有する光導入光学系16に導かれて露光ヘッド18の複数の描画ユニットU(U1〜U5)に入射する。露光ヘッド18は、回転ドラム22の円周面で支持されている基板Pの一部分に、複数の描画ユニットU1〜U5によって、所定のパターンを描画する。露光ヘッド18は、構成が同一の複数の描画ユニットU1〜U5を有することで、いわゆるマルチビーム型の露光ヘッドとなっている。描画ユニットU1、U3、U5は、中心面Cに対して基板Pの順搬送方向の上流側(−X方向側)に配置され、描画ユニットU2、U4は、中心面Cに対して基板Pの順搬送方向の下流側(+X方向側)に配置されている。
描画ユニット(主走査機構)Uは、入射したレーザ光LBを基板P上で収斂させてスポット光SPにし、且つ、そのスポット光SPを所定の走査ラインに沿って走査させる。各描画ユニットUの走査ライン(走査線)L1〜L5は、図2に示すように、奇数番の走査ラインL1、L3、L5と偶数番の走査ラインL2、L4とはX方向に離れているが、Y方向(基板Pの幅方向、主走査方向)に関しては互いに分離することなく、繋ぎ合わされるように設定されている。図2では、描画ユニットU1の走査ラインLをL1、描画ユニットU2の走査ラインLをL2で表している。同様に、描画ユニットU3、U4、U5の走査ラインLをL3、L4、L5で表している。このように、描画ユニットU1〜U5全部で露光領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各描画ユニットUは走査領域を分担している。なお、例えば、1つの描画ユニットUによるY方向の走査幅(走査ラインLの長さ)を20〜50mm程度とすると、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の3個と、偶数番の描画ユニットU2、U4の2個との計5個の描画ユニットUをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を100〜250mm程度に広げている。この走査ラインL1〜L5の各々のX方向(副走査方向)の幅は、スポット光SPのサイズに応じた太さである。例えば、スポット光SPの実効的なサイズ(直径)が3μmの場合は、走査ラインLのX方向の幅も3μmとなる。なお、スポット光SPの実効的なサイズとは、スポット光SPの基板P上での光強度分布(ほぼガウス分布)のピーク値に対して強度が半値となる幅、或いは強度が1/e2となる幅とする。
図2に示すように、走査ラインL1〜L5は、中心面Cを挟んで、回転ドラム22の周方向に2列に配置される。奇数番の走査ラインL1、L3、L5は、中心面Cに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)の基板P上に位置し、偶数番の走査ラインL2、L4は、中心面Cに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板P上に位置する。走査ラインL1〜L5は、基板Pの幅方向、つまり、回転ドラム22の回転軸AXに沿って略平行となっている。
走査ラインL1、L3、L5は、基板Pの幅方向(主走査方向)に沿って所定の間隔を空けて直線上に配置され、走査ラインL2、L4も同様に、基板Pの幅方向(主走査方向)に沿って所定の間隔を空けて直線上に配置されている。このとき、走査ラインL2は、基板Pの幅方向において、走査ラインL1と走査ラインL3との間に配置される。同様に、走査ラインL3は、基板Pの幅方向において、走査ラインL2と走査ラインL4との配置にされる。走査ラインL4は、基板Pの幅方向において、走査ラインL3と走査ラインL5との間に配置される。
奇数番の走査ラインL1、L3、L5の各々に沿って走査されるレーザ光LBのスポット光SPの主走査方向は、一次元で同じ方向(+Y方向)となっている。偶数番の走査ラインL2、L4の各々に沿って走査されるレーザ光LBのスポット光SPの主走査方向は、一次元で同じ方向(−Y方向)となっている。これにより、走査ラインL3、L5の描画開始位置と、走査ラインL2、L4の描画開始位置とはY方向に関して隣接(一致若しくは僅かに重畳)する。また、走査ラインL1、L3の描画終了位置と、走査ラインL2、L4の描画終了位置とはY方向に関して隣接(一致若しくは僅かに重畳)する。なお、走査ラインL1〜L5の各々に沿って走査されるレーザ光LBのスポット光SPの走査距離は同一とする。
次に、図3、または図6を参照して描画ユニットUの構成について説明する。なお、各描画ユニットU(U1〜U5)は、同一の構成を有することから、描画ユニットU2についてのみ説明し、他の描画ユニットUについては説明を省略する。
図3に示すように、描画ユニットU2は、例えば、集光レンズ30、描画用光学素子(光変調素子)32、吸収体34、コリメートレンズ36、反射ミラー38、フォーカスレンズ40、シリンドリカルレンズ42、反射ミラー44、8面体のポリゴンミラー(光走査部材)46、反射ミラー48、f−θレンズ50、および、シリンドリカルレンズ52を有する。
描画ユニットU2に入射するレーザ光LBは、鉛直方向の上方から下方(−Z方向)に向けて進み、集光レンズ30を介して描画用光学素子32に入射する。集光レンズ30は、描画用光学素子32に入射するレーザ光LBを描画用光学素子32内でビームウエストとなるように集光(収斂)させる。描画用光学素子(変調器)32は、レーザ光LBに対して透過性を有するものであり、例えば、音響光学変調器(AOM:Acousto-Optic Modulator)が用いられる。
描画用光学素子(AOM)32は、後述するAOM駆動部DR2(図6参照)からの駆動信号(高周波信号)がオフの状態のときは、入射したレーザ光LBを吸収体34側に透過し、AOM駆動部DR2からの駆動信号(高周波信号)がオンの状態のときは、入射したレーザ光LBを回折させて1次回折光となって反射ミラー38に向かわせる。吸収体34は、レーザ光LBの外部への漏れを抑制するためにレーザ光LBを吸収する光トラップである。AOM駆動部DR2は、描画用光学素子32に印加すべき描画用の駆動信号(超音波の周波数)をパターンデータ(白黒を表す「0」、「1」のビットマップによる描画データ)に応じて高速にオン/オフすることによって、レーザ光LBが1次回折光となって反射ミラー38に向かう状態(描画用光学素子のオン状態)、吸収体34に向かう状態(描画用光学素子32のオフ状態)とのいずれかにスイッチングされる。このことは、基板P上で見ると、感光面に達するレーザ光LB(スポット光SP)の強度が、パターンデータに応じて高レベルと低レベル(例えば、ゼロレベル)のいずれかに高速に変調されることを意味する。なお、図6において、AOM駆動部DR1は、描画ユニットU1の描画用光学素子32を駆動するAOM駆動部DRであり、同様に、AOM駆動部DR3、DR4、DR5は、描画ユニットU3、U4、U5の描画用光学素子32を駆動するAOM駆動部DRである。
コリメートレンズ36は、描画用光学素子32から反射ミラー38に向かうレーザ光LBを平行光にする。反射ミラー38は、入射したレーザ光LBを−X方向に反射させて、フォーカスレンズ40およびシリンドリカルレンズ42を介して反射ミラー44に照射する。反射ミラー44は、入射したレーザ光LBをポリゴンミラー46に照射する。ポリゴンミラー(回転多面鏡)46は、Z方向に延びる回転軸46aと、回転軸46aの周りに形成された複数の反射面46b(本実施の形態では8つの反射面46b)とを有する。回転軸46aを中心にこのポリゴンミラー46を所定の回転方向に回転させることで、反射面46bに照射されるレーザ光LBの反射角を連続的に変化させることができる。これにより、1つの反射面46bによって、基板P上に照射されるレーザ光LBのスポット光SPを主走査方向(基板Pの幅方向、Y方向)に走査することができる。このため、ポリゴンミラー46の1回転で、基板P上にスポット光SPが走査される走査ライン(描画ライン)L2の数は最大8本となる。ポリゴンミラー46は、ポリゴン駆動源(例えば、モータや減速機構等)Ma2によって一定の速度で回転する。このポリゴンミラー46によってスポット光SPを走査することができる最大走査長よりも走査ラインL2の長さは短く設定されており、この最大走査長の略中央付近に、走査ラインL2を設定することが好ましい。例えば、実際のパターン描画に寄与する走査ラインL2の長さが基板P上で50mmの場合、スポット光SPの最大走査長は、51mm〜52mm程度に設定され、走査ラインL2の主走査方向の前後に、0.5mm〜1mm程度の拡張部分が設けられる。なお、描画ユニットU1のポリゴンミラー46を回転させるポリゴン駆動源MaをMa1とし、同様に、描画ユニットU3、U4、U5のポリゴンミラー46を回転させるポリゴン駆動源MaをMa3、Ma4、Ma5とする。
反射ミラー38と反射ミラー44との間に設けられたY方向に母線を有するシリンドリカルレンズ42は、フォーカスレンズ40と協働して、前記主走査方向と直交する非走査方向(Z方向)に関して、レーザ光LBをポリゴンミラー46の反射面46b上にスリット状に集光(収斂)する。このシリンドリカルレンズ42と後述のシリンドリカルレンズ52によって、反射面46bがZ方向に対して傾いた場合(Z軸と平行な状態から傾いた面倒れ)があっても、その影響を抑制することができ、基板P上に照射されるレーザ光LB(スポット光SP)の照射位置がX方向にずれることを抑制される。
ポリゴンミラー46で反射したレーザ光LBは、反射ミラー48によって−Z方向に反射され、Z軸と平行な光軸AXuを有するf−θレンズ50に入射する。f−θレンズ50は、基板Pに投射されるレーザ光LBの主光線が走査中は常に基板Pの表面の法線となるようなテレセントリック系の光学系である。f−θレンズ50への入射角θは、ポリゴンミラー46の回転角(θ/2)に応じて変わる。f−θレンズ50は、その入射角θに比例した像高位置にレーザ光LBのスポット光SPを集光する。焦点距離をfとし、像高位置をyとすると、f−θレンズ50は、y=f・θ、の関係を有する。したがって、このf−θレンズ50によって、レーザ光LBをY方向に正確に等速度で走査することが可能になる。f−θレンズ50から照射されたレーザ光LBは、シリンドリカルレンズ52を介して、基板P上に直径数μm程度の略円形の微小なスポット光SPとなって照射される。シリンドリカルレンズ52は、f−θレンズ50と協働して基板P上に集光されるレーザ光LBのスポット光SPを、直径数μm程度の微小な円形にする。シリンドリカルレンズ52の母線はY方向と平行となっており、図3中ではX方向の屈折力(パワー)がY方向の屈折力(パワー)よりも大きくなるように設定されている。これにより、基板P上にスポット光SPが形成され、このスポット光(走査スポット光)SPは、ポリゴンミラー46によって、Y方向に延びる走査ラインL2に沿って一方向に1次元走査される。
このように、基板PがX方向に搬送されている状態で、各描画ユニットU1〜U5によって、レーザ光LBのスポット光SPを主走査方向(Y方向)に1次元に走査することで、スポット光SPが基板P上に相対的に2次元走査されて、基板Pの露光領域Wに所定のパターンを描画露光することができる。なお、図3に示す参照符号54は、原点センサ54を示す。原点センサ54は、ポリゴンミラー46の各反射面46bによるスポット光SPの走査開始タイミングを示すパルス状の開始信号(原点信号)st2を発生する。原点センサ54は、ポリゴンミラー46の回転位置が、反射面46bによるスポット光SPの走査を開始することができる所定位置にくると開始信号st2を発生する。原点センサ54は、ポリゴンミラー46の反射面46bに光を照射する照射部54aと、その反射光を受光するスリット状の光電検出器(開始信号出力部)54bとを有する。光電検出器54bは、照射部54aからの反射光を受光すると、スポット光SPの主走査方向への走査開始(或いは描画開始)を示すパルス状の開始信号(原点信号)st2を出力する。
ポリゴンミラー46の回転位置が、反射面46bによるスポット光SPの走査を開始することができる所定位置に来る度に照射部54aからの光が光電検出器54bに向けて出力されるように、原点センサ54が設けられている。これにより、光電検出器54bは、ポリゴンミラー46の回転位置が所定位置に来る度に、パルス状の開始信号st2を出力する。つまり、ポリゴンミラー46の各反射面46bが所定の位置に来ると、光電検出器54bは、反射光を受光して開始信号st2を出力する。したがって、ポリゴンミラー46が1回転する期間で、スポット光SPの走査が8回行われるので、光電検出器54bもこの1回転する期間で8回開始信号st2を出力することになる。この原点センサ54(光電検出器54b)が検出した開始信号st2は、図6に示す制御部20に送られる。光電検出器54bが開始信号st2を出力してから所定時間後に、スポット光SPの走査ラインL2に沿った描画動作が開始する。この原点センサ54は、言うまでもないが、各描画ユニットUに設けられており、描画ユニットU1の原点センサ54から出力される開始信号stをst1とし、同様に、描画ユニットU3、U4、U5の原点センサ54から出力される開始信号stをst3、st4、st5とする。
図1に示すアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)は、図2に示すように、基板P上に形成されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を検出するためのものであり、Y方向に沿って3つ設けられている。このアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)の基板P上における検出領域Vw(Vw1〜Vw3)は、回転ドラム22の円周面で支持されている。このアライメントマークKsは、基板P上の露光領域(デバイス形成領域)Wに描画すべきパターンに対応した光分布と基板Pとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。つまり、アライメントマークKsを検出することで基板Pの位置を検出することができる。このアライメントマークKsは、図2に示すように、基板Pの幅方向の両端側に、基板Pの長尺方向に沿って一定間隔で形成されているとともに、基板Pの長尺方向に沿って並んだ露光領域Wと露光領域Wとの間で、且つ、基板Pの幅方向中央にも形成されている。なお、露光ヘッド18は、基板Pに対して電子デバイス用のパターン露光を繰り返し行うことから、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔LSをあけて露光領域Wが複数設けられている。
アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)は、アライメント用の照明光を基板Pに投影して、CCD、CMOS等の撮像素子でその反射光を撮像する。基板位置検出部としてのアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)は、露光ヘッド18から照射されるスポット光SPよりも基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。アライメント顕微鏡AM1は、検出領域(検出視野)Vw1内に存在する基板Pの+Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs1を撮像し、アライメント顕微鏡AM2は、検出領域Vw2内に存在する基板Pの−Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs2を撮像する。アライメント顕微鏡AM3は、検出領域Vw3内に存在する基板Pの幅方向中央に形成されたアライメントマークKs3を撮像する。アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)が撮像した撮像信号(画像データ)ig(ig1〜ig3)は、制御部20に送られる。なお、アライメント用の照明光は、基板P上の感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば、波長500〜800nm程度の光である。また、検出領域Vw(Vw1〜Vw3)の基板P上の大きさは、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の大きさやアライメント精度(位置計測精度)に応じて設定されるが、100〜500μm角程度の大きさである。
図1に示すエンコーダヘッドEN(EN1〜EN3)は、回転ドラム22の回転位置(基板Pの移動量や移動位置)を光学的に検出するものである。エンコーダヘッドEN(EN1〜EN3)は、図4に示すように、回転ドラム22の両端部に設けられるスケール部GPa、GPbの各々と対向する。なお、図4においては、スケール部GPaに対向した3つのエンコーダヘッドEN1〜EN3だけが示されているが、スケール部GPbにも同様のエンコーダヘッドEN1〜EN3が対向して配置されている。スケール部GPa、GPbの目盛は、回転ドラム22の外周面の周方向の全体に亘って環状にそれぞれ形成されている。スケール部GPa、GPbは、回転ドラム22の外周面の周方向に一定のピッチ(例えば、20μm)で凹状または凸状の格子線(目盛)を刻設した回折格子であり、インクリメンタル型スケールとして構成される。このスケール部GPa、GPbは、回転軸AX周りに回転ドラム22と一体に回転する。
基板Pは、回転ドラム22の両端のスケール部GPa、GPbより内側に巻き付けられるように構成される。スケール部GPa、GPbの外周面と、回転ドラム22に巻き付けた基板Pの外周面とが同一面(回転軸AXから同一半径)となるように設定されている。これにより、エンコーダヘッドEN1〜EN3は、回転ドラム22に巻き付いた基板P上の描画面と同じ径方向位置でスケール部GPa、GPbを検出することができ、計測位置と処理位置(スポット光SPの走査位置、アライメントマークKsの検出位置)とが回転ドラムの径方向に異なることで生じる計測上のアッベ誤差を小さくすることができる。
エンコーダヘッドEN1〜EN3は、スケール部GPa、GPbに向けて計測用の光ビームを照射し、その反射光束(回折光)を光電検出することにより、スケール部GPa、GPbの周方向の位置に応じた検出信号sd(回折格子の移動に伴う位相差90度の2相信号と回転ドラム22の1回転毎の原点信号)を制御部20に出力する。これにより、回転ドラム22の回転角度(回転位置)を検出することができる。なお、エンコーダヘッドEN1が検出した検出信号sdをsd1とし、エンコーダヘッドEN2、EN3が検出した検出信号sdをsd2、sd3とする。
エンコーダヘッドEN1は、設置方位線Le1上に配置されている。設置方位線Le1は、XZ平面において、エンコーダヘッドEN1の計測用の光ビームのスケール部GPa、GPb上への照射領域(読取位置)と、回転軸AXとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Le1は、XZ平面において、アライメント顕微鏡AM1〜AM3の検出領域Vw1〜Vw3と回転軸AXとを結ぶ線となっている。つまり、XZ平面において、エンコーダヘッドEN1の読取位置と回転軸AXとを結ぶ線と、アライメント顕微鏡AM1〜AM3の検出領域Vw1〜Vw3と回転軸AXとを結ぶ線とは、同じ方位線となっている。
エンコーダヘッドEN2は、設置方位線Le2上に配置されている。設置方位線Le2は、XZ平面において、エンコーダヘッドEN2の計測用の光ビームのスケール部GPa、GPb上への照射領域(読取位置)と、回転軸AXとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Le2は、XZ平面において、走査ラインL1、L3、L5と回転軸AXとを結ぶ線となっている。つまり、XZ平面において、エンコーダヘッドEN2の読取位置と回転軸AXとを結ぶ線と、走査ラインL1、L3、L5と回転軸AXとを結ぶ線とは、同じ方位線となっている。
エンコーダヘッドEN3は、設置方位線Le3上に配置されている。設置方位線Le3は、XZ平面において、エンコーダヘッドEN3の計測用の光ビームのスケール部GPa、GPb上への照射領域(読取位置)と、回転軸AXとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Le3は、XZ平面において、走査ラインL2、L4と回転軸AXとを結ぶ線となっている。つまり、XZ平面において、エンコーダヘッドEN3の読取位置と回転軸AXとを結ぶ線と、走査ラインL2、L4と回転軸AXとを結ぶ線とは、同じ方位線となっている。図1に示すように、設置方位線Le2、Le3が中心面Cに対して角度±θとなるように、複数の描画ユニットU1〜U5およびエンコーダヘッドEN2、EN3が配置されている。
次に、図5を参照して、露光ヘッド18および回転ドラム22を支持する支持フレーム60について説明する。図5は、支持フレーム60の構成を示す図である。支持フレーム60は、本体フレーム62と、3点支持部64と、第1光学定盤66と、移動機構(駆動機構)68と、第2光学定盤70とを有する。支持フレーム60は、温調チャンバーECV内に格納されている。本体フレーム62は、回転ドラム22と、テンション調整ローラRT1(不図示)、RT2を回転可能に支持している。3点支持部64は、本体フレーム62の上端に設けられ、回転ドラム22の上方(+Z方向)に設けられた第1光学定盤66を3点で支持する。
第2光学定盤70は、第1光学定盤66の上方側(+Z方向側)に設けられ、移動機構68を介して第1光学定盤66に設置されている。第2光学定盤70は、その盤面が第1光学定盤66の盤面と平行になっている。第2光学定盤70は、露光ヘッド18を支持するものである。第2光学定盤70は、露光ヘッド18の描画ユニットU1、U3、U5を回転ドラム22の回転軸AXに対して搬送方向の上流側(−X側)で、且つ、基板Pの幅方向(Y方向)に沿って並列に支持する。また、第2光学定盤70は、露光ヘッド18の描画ユニットU2、U4を回転軸AXに対して搬送方向の下流側(+X側)で、且つ、基板Pの幅方向(Y方向)に沿って並列に支持する。
移動機構68は、第1光学定盤66および第2光学定盤70のそれぞれの盤面を平行に保った状態で、鉛直方向(Z方向)に延びる回転軸Iを中心に、第1光学定盤66に対して第2光学定盤70を回転させることができる。また、移動機構68は、第1光学定盤66および第2光学定盤70のそれぞれの盤面を平行に保った状態で、回転軸Iを中心に、第1光学定盤66に対して第2光学定盤70をX方向およびY方向の少なくとも一方にシフト移動させることができる。この回転軸Iは、中心面Cにおいて鉛直方向(Z方向)に延在するとともに、回転ドラム22に巻き付けられた基板Pの表面内の所定点(基板Pの幅方向における中心点)を通っている(図2参照)。そして、移動機構68は、第1光学定盤66に対して第2光学定盤70を回転またはシフト移動させることで、回転ドラム22の巻きつけられた基板Pに対する複数の描画ユニットU1〜U5の位置を調整することができる。つまり、移動機構68は、回転軸Iを中心に露光ヘッド18(描画ユニットUn)を回動させたり、X方向およびY方向の少なくとも一方にシフト移動させることができる。
図6は、制御部20の機能的な構成を示すブロック図である。制御部20は、システムコントローラ80、ドラム制御部82、ポリゴン制御部84、画像解析部86、アライメント位置情報生成部88、露光コントローラ90、クロック生成部92、AOM制御部DG(DG1〜DG5)、および、移動機構制御部94を備える。制御部20は、コンピュータとプログラムが記憶された記憶媒体とを有し、コンピュータがプログラムを実行することで、本実施の形態の制御部20として機能する。
システムコントローラ80は、回転ドラム22の回転速度指令値をドラム制御部82に出力し、ドラム制御部82は、回転速度指令値に基づいてドラム駆動源M(ギアモータ、ダイレクトドライブモータ等)を制御する。ドラム制御部82は、回転ドラム22の回転速度が回転速度指令値となるように、ドラム駆動源Mをフィードバック制御する。ドラム駆動源Mは、回転ドラム22の回転速度に応じた速度信号を検出するエンコーダを有し、速度信号をドラム制御部82に出力する。したがって、ドラム制御部82は、回転速度指令値とドラム駆動源Mから送られてきた速度信号とに基づいて、ドラム駆動源Mをフィードバック制御する。これにより、回転ドラム22が回転速度指令値に応じた回転速度で回転する。なお、エンコーダヘッドEN1〜EN3の少なくとも1つからの検出信号Sd(2相信号)を回転ドラム22の回転速度に応じた速度信号に変換し、それをドラム制御部82に供給して回転ドラム22の回転速度制御に利用してもよい。エンコーダヘッドEN1〜EN3とスケール部GPa、GPbとを含むエンコーダシステム(計測機構)は、計測分解能をサブミクロンオーダーにすることが可能であるため、変換された速度信号も高精度にすることができる。
システムコントローラ80は、ポリゴンミラー46の回転数指令値をポリゴン制御部84に出力し、ポリゴン制御部84は、回転数指令値に基づいて各描画ユニットU(U1〜U5)のポリゴン駆動源Ma(Ma1〜Ma5)を制御する。ポリゴン制御部84は、各描画ユニットUのポリゴンミラー46の回転数が回転数指令値となるように、ポリゴン駆動源Ma(Ma1〜Ma5)をフィードバック制御する。各ポリゴン駆動源Ma1〜Ma5は、ポリゴンミラー46の回転数に応じた回転数信号を検出するエンコーダを有し、回転数信号をドラム制御部82に出力する。したがって、ポリゴン制御部84は、回転数指令値と各描画ユニットUのポリゴン駆動源Maから送られてきた回転数信号とに基づいて、各描画ユニットUのポリゴン駆動源Maをフィードバック制御する。これにより、各描画ユニットU(U1〜U5)のポリゴンミラー46が回転数指令値に応じた回転数で回転する。
本実施の形態では、図1に示したように、光源装置(パルス光源装置)14からのビームLBを、光導入光学系16内の反射ミラーやビームスプリッタ等によって、各描画ユニットU1〜U5に分配し、パターンデータ(描画データ)に応答してビームを強度変調する描画用光学素子(AOM)32を描画ユニットU1〜U5毎に設けた。そのため、各描画ユニットU1〜U5のポリゴンミラー46は、同じ回転速度(回転数)で正確に回転するように制御される。しかしながら、ポリゴンミラー46の1つの反射面当たりの回転角度をΔθp(8面の場合は45度)、基板P上の走査ラインLn(或いはスポット光SPの最大走査長)の長さに対応してf−θレンズ50に入射するビームの偏向角度(走査角度)をθs(f−θレンズ50の光軸に対して±θs/2の角度範囲)としたとき、Nを2以上の整数として、Δθp>N・(θs/2)が成り立つ場合は、N個の描画ユニットUnの各々に、光源装置14からのビームLBをAOM(またはAOD)等によって光学的にスイッチングして時分割に振分けることができる。ここで、θs/(2Δθp)は、ポリゴンミラー46の1つの反射面による走査効率βを表し、走査効率βが50%未満で33%以上の場合は、整数Nを2とし、走査効率βが33%未満で25%以上の場合は、整数Nを2または3とし、走査効率βが25%未満で20%以上の場合は、整数Nを2、3、4のいずれかにすることが可能である。
そのように、光源装置14からのビームLBを時分割にスイッチングして、N個の描画ユニットUnのいずれか1つに選択的に導入する場合は、N個の描画ユニットUnの各々のポリゴンミラー46の回転速度を同期させるだけでなく、回転角度の位相も同期させる必要がある。そこで、図6中のポリゴン制御部84には、N個の描画ユニットUの各々に図3のように設けた原点センサ54からの開始信号(原点信号)stに基づいて、N個のポリゴンミラー46の各回転角度を所定の位相関係に維持する位相同期化回路も設けられる。
画像解析部86は、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)が撮像した画像データig(ig1〜ig3)を解析して、アライメントマークKsの位置(検出領域Vw1〜Vw3内でのアライメントマークKsの位置)を検出して、アライメント位置情報生成部88に出力する。また、エンコーダヘッドEN1は、回転ドラム22の回転位置に応じて検出した検出信号sd1をアライメント位置情報生成部88に出力する。上述したように、アライメント顕微鏡AM1とエンコーダヘッドEN1とは、設置方位線Le1上に配置されているので、アライメント顕微鏡AM1によってアライメントマークKsが撮像されたときに、エンコーダヘッドEN1が読み取るスケール部GPa、GPbの位置(すなわち検出信号sd1の2相信号を入力する不図示のカウンタ回路の計数値)は、回転ドラム22の回転角度位置、すなわち基板Pの移動位置を表すことになる。これにより、基板P上のアライメントマークKs(露光領域W)の位置と、回転ドラム22の回転角度位置との対応関係を求めることができる。
アライメント位置情報生成部88は、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)が検出したアライメントマークKsの検出領域Vw1〜Vw3に対する位置と、エンコーダヘッドEN1が検出した回転ドラム22の回転角度位置とに基づいて、基板P上にパターンを露光する露光領域Wの基板P上の位置と回転ドラム22の回転角度位置との相対関係を示す情報(アライメント位置情報)を生成して、露光コントローラ90に出力する。なお、エンコーダヘッドEN1とアライメント位置情報生成部88との間には、エンコーダヘッドEN1が検出した検出信号Sd1の2相信号を内挿補間してスケール部GPa、GPbの回折格子の位置変化をデジタル処理によって計数する不図示のカウンタ回路が設けられ、回転ドラム22の回転角度変化(回転位置変化)による基板Pの副走査方向の位置変化をサブミクロンの分解能で計測する。図6中に示した他のエンコーダヘッドEN2、EN3に対しても、検出信号Sd2、Sd3の各々をデジタル処理してスケール部GPa、GPbの回折格子の位置変化を計数する不図示のカウンタ回路が設けられている。
クロック生成部(クロック発生器)92は、発振回路を有し、露光コントローラ90の制御にしたがって所定周波数Fs(所定周期Ts)のクロック信号CLKを発生する。クロック生成部92は、発生したクロック信号CLKをAOM制御部DG(DG1〜DG5)に出力するとともに、光源装置14に出力する。光源装置14は、クロック生成部92が生成したクロック信号CLKに応答してレーザ光(パルス光)LBを射出するように光源(パルス光源)14aを駆動させる。したがって、光源14aが発光するパルス光LBの発光周波数Feは、クロック信号CLKの周波数である所定周波数Fsとなり、光源14aの発光周期は、クロック信号CLKと同期しており、所定周期Tsとなる。光源装置14をファイバーアンプレーザ光源とした場合、光源14aは赤外波長域の種光を発生する半導体レーザ光源であり、クロック信号CLKに応答して発生するパルス状の種光は、Qスイッチ方式等によって、数ピコ秒〜数十ピコ秒と極めて短い発光時間にすることができる。そのため、光源装置14から出力される紫外波長域のビームLBも、発光時間が数ピコ秒〜数十ピコ秒と極めて短いパルス光となる。
エンコーダヘッドEN2によって読み取られるスケール部GPa、GPbの回転角度位置の情報(回転ドラム22の回転位置に応じて検出した検出信号Sd2の2相信号を計数するカウンタ回路の計数値)は、AOM制御部DG1、DG3、DG5および露光コントローラ90に送られる。エンコーダヘッドEN3によって読み取られるスケール部GPa、GPbの回転角度位置の情報(回転ドラム22の回転位置に応じて検出した検出信号Sd3の2相信号を計数するカウンタ回路の計数値)は、AOM制御部DG2、DG4および露光コントローラ90に送られる。AOM制御部DG1は、描画ユニットU1の描画用光学素子(AOM)32を駆動するAOM駆動部DR1を制御し、AOM制御部DG2は、描画ユニットU2の描画用光学素子32を駆動するAOM駆動部DR2を制御するものである。同様に、AOM制御部DG3、DG4、DG5は、描画ユニットU3、U4、U5の描画用光学素子(AOM)32を駆動するAOM駆動部DR3、DR4、DR5を制御するものである。
上述したように、エンコーダヘッドEN2と、描画ユニットU1、U3、U5によって走査される走査ラインL1、L3、L5とは、XZ平面において、設置方位線Le2上に配置されている。したがって、エンコーダヘッドEN2は、走査ラインL1、L3、L5に沿ってスポット光SPを走査するときの、回転ドラム22の回転角度位置を検出することができる。また、エンコーダヘッドEN3と、描画ユニットU2、U4によって走査される走査ラインL2、L4とは、XZ平面において、設置方位線Le3上に配置されている。したがって、エンコーダヘッドEN3は、走査ラインL2、L4に沿ってスポット光SPが走査されるときの、回転ドラム22の回転角度位置を検出することができる。
各AOM制御部DG(DG1〜DG5)には、各描画ユニットU(U1〜U5)に設けられた原点センサ54(光電検出器54b)からの開始信号st(st1〜st5)が入力される。つまり、AOM制御部DG1には、描画ユニットU1に設けられた原点センサ54からの開始信号st1が入力され、AOM制御部DG2には、描画ユニットU2に設けられた原点センサ54からの開始信号st2が入力される。同様に、AOM制御部DG3、DG4、DG5には、描画ユニットU3、U4、U5に設けられた原点センサ54からの開始信号st3、st4、st5が入力される。
各AOM制御部DG(DG1〜DG5)は、露光コントローラ90の制御にしたがって、描画ユニットU(U1〜U5)の描画用光学素子32をオン/オフにスイッチングするための「0」または「1」の1ビットのデータ列で構成される描画データ列DL(DL1〜DL5)を順次出力する。この描画データ列DLは、各描画ユニットUによって描画されるパターンに応じた描画データ(ビットマップデータ)を、主走査方向への走査ラインL1〜L5毎に分割したものである。AOM駆動部DR1〜DR5は、AOM制御部DG1〜DG5から順次出力された描画データ列DL1〜DL5に応じてオン/オフの駆動信号(高周波信号)を描画ユニットU1〜U5の描画用光学素子32に出力する。これにより、各描画ユニットUによって走査ラインLに沿って基板P上に描画されるスポット光SPの強度が変調され、基板P上の露光領域Wに電子デバイス用のパターンを描画することができる。なお、露光コントローラ90は、システムコントローラ80からの露光指令に基づいて、クロック生成部92およびAOM制御部DG1〜DG5を制御する。
次に、図7を参照して、AOM制御部DG(DG1〜DG5)について詳しく説明する。図7は、AOM制御部DGの構成を示す図である。なお、各AOM制御部DGは、同様の構成を有することから、AOM制御部DG1を例に挙げて説明する。AOM制御部DG1は、可変遅延素子100、Yアドレス生成部102、Xアドレス生成部104、および、描画データ記憶部106を備える。
可変遅延素子(遅延素子)100には、入力されたパルス状の開始信号(原点信号)st1を所定時間遅延させてYアドレス生成部102に出力する。可変遅延素子100の遅延時間は、露光コントローラ90の制御にしたがって任意の値に変更可能である。同様に、AOM制御部DG2に設けられる可変遅延素子100には、描画ユニットU2に設けられた原点センサ54からの開始信号st2が入力され、AOM制御部DG3、DG4、DG5の各々に設けられる可変遅延素子100には、描画ユニットU3、U4、U5に設けられた原点センサ54からの開始信号st3、st4、st5が入力される。
Yアドレス生成部(第1計数部)102は、主走査方向の走査ラインL1に沿って走査されるスポット光SPの走査位置に対応した値(または走査量)をデジタル計数するものである。Yアドレス生成部102は、スポット光SPの寸法(直径)よりも小さい分解能でスポット光SPの走査量をデジタル計数する。また、Yアドレス生成部102は、走査ラインL1に沿って照射されるスポット光SPの位置間隔(分解能)でスポット光SPの走査位置(または走査量)をデジタル計数する。本実施の形態では、スポット光SPの寸法を3μmとする。ここで、光源装置14は、クロック信号CLKに応じてパルス状のレーザ光(パルス光)LBを発光するので、所定周波数Fs(所定周期Ts)でスポット光SPが基板Pに照射される。また、上述したように、描画ユニットU1のポリゴンミラー46の回転によって、スポット光SPが走査ラインL1に沿って走査されるので、所定周波数Fs(所定周期Ts)およびポリゴンミラー46の回転数によって、走査ラインL1に沿って照射されるスポット光SPの位置間隔(分解能)が決まる。
本実施の形態では、走査ラインL1に沿ってスポット光SPが1/2(1.5μm)オーバーラップするように、つまり、走査ラインL1に沿って照射されるスポット光SPの位置間隔(分解能)がスポット光SPの半分(1.5μm)となるように、所定周波数Fs(所定周期Ts)およびポリゴンミラー46の回転数が定められている。したがって、Yアドレス生成部102に含まれるアドレスカウンタは、クロック生成部92から出力されるクロック信号CLKをカウントしてくことで、走査ラインL1に沿って走査されるスポット光SPの走査位置(または走査量)を、スポット光SPの寸法(3μm)よりも小さく、且つ、走査ラインL1に沿って照射されるスポット光SPの位置間隔の分解能(1.5μm)で、デジタル計数することができる。このYアドレス生成部102は、スポット光SPの主走査方向への走査開始を示す開始信号st1が可変遅延素子100から送られてくると、カウント値をリセット(0)した後、クロック生成部92から出力されるクロック信号CLKをデジタル計数(カウント)する。これにより、スポット光SPの描画開始位置からのスポット光SPの移動量をスポット光SPのサイズ以下の分解能でカウント(計測)することができる。なお、可変遅延素子100を設けた理由は、開始信号st1が出力されてから実際にスポット光SPが基板P上の走査ラインL1の描画開始点に照射されるまでに、先に説明した0.5〜1mmの拡張領域に対応したタイムラグがあること、また基板Pに既に形成された下地パターンとの重ね合せのために、主走査方向(Y方向)に関する描画開始点をミクロンオーダーで調整する場合があるからである。
ここで、例えば、走査ラインL1の長さを30mm、ポリゴンミラー46の1つの反射面によって基板P上で走査されるスポット光SPの最大走査長を32mm(拡張領域が走査ラインL1の前後の1mm)とし、実効的な直径が3μmのスポット光SPの1パルスを1.5μmずつオーバーラップさせながらスポット光SPを走査ラインLに沿って基板P上に照射する場合、1回の走査で照射されるスポット光SPのパルス数は、20000(30mm/1.5μm)となる。また、走査ラインL1に沿ったスポット光SPの走査時間を200μsecとすると、Yアドレス生成部102は、この間に少なくともクロック信号CLKを20000回カウントしなければならないので、クロック信号CLKの所定周波数Fsは、20000/200=100MHzとなり、光源装置14は100MHz以上でパルス発振可能であればよい。なお、30mmの走査ラインL1に沿ったスポット光SPの走査時間を200μsecにする場合、ポリゴンミラー46の反射面数を8面、ポリゴンミラー46の1つの反射面当たりの走査効率βを30%とすると、ポリゴンミラー46の回転速度(r.p.m)は、毎分11,250回転に設定される。
同様に、AOM制御部DG2の場合も、Yアドレス生成部102内のアドレスカウンタは、可変遅延素子100から開始信号st2が送られてくると、カウント値をリセット(0)した後、クロック生成部92から出力されるクロック信号CLKをカウントすることで、走査ラインL2に沿って走査されるスポット光SPの走査位置(または走査量)をスポット光SPのサイズ以下の分解能でデジタル計数する。AOM制御部DG3、DG4、DG5の場合も、Yアドレス生成部102内のアドレスカウンタは、可変遅延素子100から開始信号st3、st4、st5が送られてくると、カウント値をリセット(0)した後、クロック生成部92から出力されるクロック信号CLKをカウントすることで、走査ラインL3、L4、L5に沿って走査されるスポット光SPの走査位置(または走査量)をスポット光SPのサイズ以下の分解能でデジタル計数する。
以上のように、Yアドレス生成部102によって計数されるカウント値は、クロック信号CLKの1パルス(スポット光SPの1パルス)毎にインクリメントされて、描画データ記憶部106に印加される。描画データ記憶部106内に記憶されるビットマップ形式の描画データは、基板P上に描画すべきパターンを、例えば、基板P上で3μm角の画素に分解し、その画素を1ビットとしてスポット光SPで描画するか否かを「1」、「0」の論理値で表すように設定されている。すなわち、走査ラインL1の長さを30mmとした場合は、1ライン分の描画に関しては10000画素分のビットデータ(描画データ列DL1)が描画データ記憶部106に記憶されている。しかしながら、本実施の形態においては、走査ラインL1に沿った描画ビームの1回の走査中に、クロック信号CLKの20000パルス(スポット光SPのパルス数)で1ライン分の描画が行われる。そこで本実施の形態では、クロック信号CLKの2パルスを描画データ上の1画素に対応させた状態で、描画データ記憶部106から描画データ列DL1が出力されるように設定する。
そのために、描画データ記憶部106には、Yアドレス生成部102によるカウント値を入力して、その値を1/2にする分周器(割算器)106Aが設けられる。もちろん、1画素の基板P上での寸法を1.5μm角とし、1ライン分の描画に関しては20000画素分のビットデータが記憶可能な場合は、分周器106Aを通すことなく、Yアドレス生成部102によるカウント値のインクリメントに応答して、20000画素分のビットデータを順次出力してもよい。なお、分周器106Aは、Yアドレス生成部102内に設けて、クロック信号CLKを1/2に分周した後のクロックパルスを、Yアドレス値を生成するアドレスカウンタで計数してもよい。
また、Xアドレス生成部(第2計数部)104は、回転ドラム22による描画ユニットU(走査ラインL)に対する副走査方向(+X方向)への基板Pの相対移動量を、スポット光SPの寸法(実効的な直径)よりも小さい分解能でデジタル計数(カウント)する。詳しくは、Xアドレス生成部104は、エンコーダヘッドEN2が検出した検出信号Sd2を不図示のカウンタ回路で内挿補間してデジタル処理をすることにより、回転ドラム22の角度変化、すなわち、回転ドラム22の外周面の周方向の基板Pの移動量(相対移動量)を、スポット光SPの実効的な直径よりも小さい分解能でデジタル計数する。
したがって、Xアドレス生成部104内のアドレスカウンタは、エンコーダヘッドEN2が検出した検出信号Sd2(2相信号)のカウンタ回路と同等のものとなる。しかしながら、エンコーダヘッドEN2のカウンタ回路は、スケール部GPa、GPb(回転ドラム22)の1回転毎に原点信号によってリセットされてしまう。そこで、Xアドレス生成部104内のアドレスカウンタは、回転ドラム22の1回転毎の原点信号によってリセットされずに、スケール部GPa、GPbの移動位置(または移動量)を継続して計数するようなカウンタ回路としてもよい。さらに、基板P上での1画素の寸法が、3μm角であって、エンコーダヘッドEN2に接続されたカウンタ回路によって計測される基板Pの移動量の計測分解能が、例えば0.5μmである場合、Xアドレス生成部104は、エンコーダヘッドEN2に接続されたカウンタ回路の計数値を、所定の比率で分周して、分解能を落としたカウント値を生成するようにしてもよい。
本実施の形態では、副走査方向においても、スポット光SPの実効的な直径の1/2(1.5μm)だけ、1つの走査ライン上のスポット光SPと次の走査ライン上のスポット光SPとがオーバーラップするように、ポリゴンミラー46の回転速度と回転ドラム22の回転速度(基板Pの送り速度)とが、図6中のシステムコントローラ80等によって同期制御される。つまり、副走査方向においても、スポット光SPが照射される位置間隔(隣接する走査ラインのX方向の間隔)をスポット光SPの直径の半分(1.5μm)とし、1画素に対して2つのスポット光SPが対応する。そのため、描画データ記憶部106には、Xアドレス生成部104内のアドレスカウンタによるカウント値を入力して、その値を所定の比率1/n(例えば、1/2、1/3、1/5等)で分周する除算器(または乗算器)106Bが設けられる。基板P上の画素の大きさを3μm角、副走査方向における走査ラインの基板P上での間隔を1.5μmとし、エンコーダヘッドEN2によって計測される基板Pの移動量の計測分解能を0.5μmとした場合、除算器(または乗算器)106Bは、Xアドレス生成部102によるカウント値を、1/6にしたデジタル値をアドレス値として生成する。これにより、除算器(または乗算器)106Bは、基板Pが3μm移動する度にインクリメントされるアドレス値を生成する。なお、エンコーダヘッドEN2による計測分解能は、例えば、0.26μm、0.19μmといった端数であっても、除算器(または乗算器)106Bに設定される比率1/nのnを整数以外の値に変えることで、除算器(または乗算器)106Bは、基板Pが3μm移動する度にインクリメントされるアドレス値を生成することができる。
なお、AOM制御部DG3、DG5においても同様に、Xアドレス生成部104は、エンコーダヘッドEN2が検出した検出信号Sd2に基づいて副走査方向への基板Pの移動位置(または移動量)をデジタル計数する。また、AOM制御部DG2、DG4においては、Xアドレス生成部104が、エンコーダヘッドEN3から出力される検出信号Sd3に基づいて計測される基板Pの副走査方向への移動位置(または移動量)をデジタル計数する。AOM制御部DG2〜DG5の各々も、図7に示したような分周器106Aと除算器106Bとを備えている。
ここで、露光コントローラ90は、アライメント位置情報生成部88が生成したアライメント位置情報に基づいて、基板P上にパターンを露光する露光領域Wの基板P上の位置と回転ドラム22との回転位置との相対関係を特定している。つまり、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)によって検出されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の基板P上の位置と、エンコーダヘッドEN1によって検出される回転ドラム22の回転角度位置とに基づいて、パターンの描画を開始すべき基板P上の位置に対応する回転ドラム22の角度位置を認識している。そして、エンコーダヘッドEN1と、エンコーダヘッドEN2およびEN3との周方向の相対的距離Loが既知であること、スケール部GPa(GPb)中の1ヶ所に形成される原点パターンによって、エンコーダヘッドEN1〜EN3の各々に接続されたカウンタ回路がゼロリセットされることから、露光コントローラ90は、エンコーダヘッドEN2およびエンコーダヘッドEN3で計測される回転ドラム22の回転位置に基づいて、パターンの描画を開始すべき基板P上の位置が、走査ラインL1、L3、L5上、または走査ラインL2、L4上に来たか否かを判断することができる。露光コントローラ90は、パターンの描画を開始すべき基板P上の位置(基板Pの搬送方向に関する露光領域Wの先端部)が、走査ラインL1、L3、L5上に来たと判断すると、AOM制御部DG1、DG3、DG5のXアドレス生成部104のカウント値をリセットする(0にする)。また、露光コントローラ90は、パターンの描画を開始すべき基板P上の位置が、走査ラインL2、L4上に来たと判断すると、AOM制御部DG2、DG4のXアドレス生成部104のカウント値をリセットする(0にする)。これにより、Xアドレス生成部104は、描画を開始すべき基板P上の位置が走査ラインL1〜L5上に来たときからの、基板Pの副走査方向への移動位置(または移動量)を、スポット光SPの実効的な直径よりも小さい分解能でカウントすることができる。
描画データ記憶部(データ記憶部)106は、描画データを記憶している。描画データ記憶部106は、描画ユニットU1がパターンを描画するための描画データを記憶している。描画データ記憶部106は、主走査方向(Yスキャン方向)に沿った方向を行とし、副走査方向(Xスキャン方向)に沿った方向を列とするように2次元に分解された複数の画素データで構成されるマトリクス状のビットマップデータとして描画データを記憶している。この画素データは、「0」または「1」の1ビットのデータである。「0」の画素データは、基板P上に照射するスポット光SPの強度を低レベル(例えば、ゼロレベル)にすることを意味し、「1」の画素データは、基板P上に照射するスポット光SPの強度を高レベルにすることを意味している。なお、AOM制御部DGがDG2の場合には、描画データ記憶部106は、描画ユニットU2が描画すべきパターンに応じた描画データを記憶する。同様に、AOM制御部DGがDG3、DG4、DG5の場合には、描画データ記憶部106は、描画ユニットU3、U4、U5が描画すべきパターンに応じた描画データを記憶する。
描画データ記憶部106は、Xアドレス生成部104からの計数値(カウント値)を除算器106Bで1/nにしたアドレス値(以下、Xアドレス値とも呼ぶ)に応じて、マトリクス状のビットマップデータの列(描画データ列DL1)の1つを選択し、選択した列(描画データ列DL1)内の画素データ(例えば、画素寸法が3μm角の場合は10000画素分)を、Yアドレス生成部102での計数値(カウント値)を1/2にする分周器106Aからのアドレス値(以下、Yアドレス値とも呼ぶ)に応じて、順次、AOM駆動部DR1に出力する。つまり、Xアドレス生成部104(および除算器106B)は、描画データ記憶部106に記憶された2次元のビットマップデータのうち、1つの走査ラインに沿って描画される画素データの列方向(副走査方向)のアドレス(位置)を指定し、Yアドレス生成部102(および分周器106A)は、描画データ記憶部106に記憶された2次元のビットマップデータのうち、1つの走査ラインに沿って描画される画素データの行方向(主走査方向)のアドレス(位置)を指定している。このようにして、選択した列の画素データがAOM駆動部DR1に順次出力される。AOM駆動部DR1は、「0」の画素データがAOM制御部DG1から送られてくると、基板P上におけるスポット光SPの強度が低レベルとなるように、描画ユニットU1の描画用光学素子(AOM)32に出力する駆動信号(高周波信号)をオフ状態にする。また、AOM駆動部DR1は、「1」の画素データがAOM制御部DG1から送られてくると、基板P上におけるスポット光SPの強度が高レベルとなるように、描画ユニットU1の描画用光学素子(AOM)32に出力する駆動信号(高周波信号)をオン状態にする。
ここで、描画データ記憶部106から順次出力される描画データ列DL1の画素データは、分周器106Aで生成されるYアドレス値がインクリメントされる度に、隣りの画素の画素データの値に更新される。Yアドレス生成部102や分周器106Aのインクリメント(カウントアップ)は、クロック信号CLKのクロックパルスと同期しているので、描画データ記憶部106からAOM駆動部DR1に送出される画素データ列のビットレート(周波数)も、クロック信号CLKの所定周波数Fsに同期している。したがって、描画用光学素子32をオン/オフに切り換えることが可能な変調周期と、Yアドレス生成部102(および分周器106A)のカウント周期(デジタル計数周期)と、光源装置14からのビームLBの発光周期とは、クロック信号CLKの周期(所定周期Ts)と同期している。
他のAOM制御部DG2〜DG5の各々についても、同様に、描画データ記憶部106は、除算器106Bが生成するXアドレス生成部104での計数値の1/nのアドレス値に応じて、マトリクス状のビットマップデータの列の1つを選択し、選択した列内の画素データ(例えば、画素寸法が3μm角の場合は10000画素分)を、Yアドレス生成部102での計数値(カウント値)を1/2にする分周器106AからのYアドレス値に応じて、順次、対応したAOM駆動部DR2〜DR5に出力する。
次に、AOM制御部DG1の制御の下でスポット光SPによって描画されるパターンについて説明する。なお、AOM制御部DG2〜DG5の制御の下でスポット光SPによって描画されるパターンは、AOM制御部DG1と同様の制御によって行うことができるので、説明を省略する。図8は、描画データ記憶部106に記憶されている描画データ(ビットマップ)の一例を示している。図8では、説明をわかり易くするため、描画データは、画素データを6(行)×M(列)のマトリクス状に配置したマトリクスデータとする。描画データの副走査方向に対応したXスキャン方向(列方向)に沿って記された「m0、m1、m2、m3、・・・」は、画素データの列方向の番地位置(アドレス)を示し、主走査方向に対応したYスキャン方向(行方向)に沿って記された「n0〜n5」は、画素データの行方向の番地位置(アドレス)を示している。番地位置(アドレス)m0、m1、m2、・・・の各列は、図7に示した除算器106Bで生成されるXアドレス値(計数値)によってアクセスされ、番地位置(アドレス)n0〜n5の各行は、図7に示した分周器106Aで生成されるYアドレス値(計数値)によってアクセスされる。
ここで、図9は、スポット光SPの主走査方向への走査開始(描画開始)タイミングに正確に同期した速度(設計上の一定速度)で、基板Pが副走査方向に搬送されているときに、図8のような描画データに基づいて基板P上に描画露光されるパターンを示す図である。図9において、クロック信号CLKの各クロックパルスに応答して基板P上に照射されるスポット光SPの強度が高レベル(オン状態)の場合を実線で表し、基板P上でのスポット光SPの強度が低レベル、或いはゼロレベル(オフ状態)の場合を破線で表している。スポット光SPが描画用光学素子32によってオン状態でもオフ状態でも、光源装置14の発光周波数Fe(クロック信号CLK)とポリゴンミラー46の回転速度とを同期させることで、スポット光SPが主走査方向に直径の1/2だけ走査される度に光源装置14からのビームLBがパルス発光される。上述したように、ポリゴンミラー46は、一定の回転数で回転しているので、主走査方向へのスポット光SPの走査開始タイミング(開始信号st1が出力されるタイミング)は一定の周期(所定の周期)で到来し、レーザ光LBの発光周波数Feも一定なので、主走査方向に沿って基板Pに照射されるスポット光SPの位置間隔も、スポット光SPの実効的な直径の1/2(例えば1.5μm)で一定である。
さらに、本実施の形態では、副走査方向に沿って照射されるスポット光SPの位置間隔は、主走査方向に沿って照射されるスポット光SPの位置間隔(例えば1.5μm)と同じとするので、スポット光SPの主走査方向への走査開始タイミング(開始信号st1の発生タイミング)が到来する度に、主走査方向に沿って照射されるスポット光SPの位置間隔(例えば1.5μm)分だけ基板Pが副走査方向に移動するように同期制御される。図9で示したYスキャン開始タイミングt0、t0’、t1、t1’・・・t6、t6’は、基板P上での画素ピッチ(3μm)の1/2の1.5μmだけ、基板Pが副走査方向に移動する毎に、原点センサ54から開始信号st1が発生するタイミングでもある。先に例示したように、8面のポリゴンミラー46が11,250r.p.mの速度で回転している場合、開始信号(原点信号)st1が発生する時間間隔は、約666.7μSとなり、この時間間隔の間に、基板Pをスポット光SPの実効的な直径(3μm)の1/2だけ移動させるには、基板Pが1.5μm/666.7μS≒2.25mm/Sの速度で移動するように、回転ドラム22の回転速度を制御すればよい。
また、Xスキャン位置x0は、最初の列(番地位置m0の列)の描画データ列DL1に応じてスポット光SPが走査されるべき副走査方向における基板P上の位置を示し、Xスキャン位置x1は、2番目の列(番地位置m1の列)の描画データ列DL1でスポット光SPが走査されるべき副走査方向における基板P上の位置を示している。同様に、Xスキャン位置x2〜x6は、3番目〜7番目の列(番地位置m2〜m6の各列)の描画データ列DL1でスポット光SPが走査されるべき副走査方向における基板P上の位置を示している。このXスキャン位置x0、x1、x2、x3、x4、x5、x6は、1画素の寸法に対応して3μmずつずれている。
図9に示すように、各Yスキャン開始タイミングt0、t0’〜t6、t6’と、各Xスキャン位置x0〜x6とが同期している場合には、図8に示す描画データに応じたパターンが綺麗に基板Pに描画される。図9から明らかなように、Yスキャン開始タイミングt0’、t1’、t2’・・・t6’の各々でも、開始信号st1に応答して、スポット光SPの走査ラインL1に沿った走査が行われるが、その際の描画データは、Xスキャン位置x0、x1、x2、・・・x6の各々で使われたデータと同じものになる。
図9に示すように、各Yスキャン開始タイミングt0、t0’・・・t6、t6’と、各Xスキャン位置x0〜x6とが同期している状態では、Yスキャン開始タイミングt0〜t6(開始信号st1の発生タイミングを1/2に分周したもの)が到来する度に、開始信号st1のみに応答して、AOM駆動部DR1に出力する描画データの列を、番地位置m0→m1→m2→m3→・・・・の順にシフトさせる第1の手法でも、描画データに応じたパターンを綺麗に描画することができる。しかしながら、回転ドラム22の回転速度(基板Pの搬送速度)が理想速度より遅い場合や速い場合、すなわち、基板Pの搬送速度とポリゴンミラー46の回転速度とが所定の同期状態からずれてきた場合、Yスキャン開始タイミングt0、t0’・・・t6、t6’と、Xスキャン位置x0〜x6とが同期しない。したがって、Yスキャン開始タイミングt0〜t6が到来する度に、開始信号st1のみに応答してAOM駆動部DR1に出力する描画データの列をシフトさせては読み出す第1の手法では、綺麗なパターンを描画することはできない。その理由について図10、図11を用いて説明する。
図10は、基板Pの搬送速度が、図9の基板Pの搬送速度(理想速度)より僅かに遅く搬送されている状態を示し、Yスキャン開始タイミング(開始信号st1の発生時点)を基準にしてみたときに、図8の描画データを第1の手法で描画露光する様子を説明する図である。図11は、図10に示すパターン露光によって、実際に基板Pに描画露光されたパターンを示す図である。なお、図10、図11では、説明を判り易くするためにYスキャン開始タイミングt0´〜t6´を省略したが、実際のパターン描画動作では、図9のように、スポット光SPが直径の約1/2ずつオーバーラップしてパターンを描画している。図10で示すパターン描画の動作においては、Yスキャン開始タイミングt0〜t6を基準にしているので、Yスキャン開始タイミングt0〜t6の時間的な間隔は、ポリゴンミラー46の回転速度に変動が無い場合、図9のYスキャン開始タイミングの間隔と同一である。しかしながら、Xスキャン位置x0、x1、x2、・・・・の間隔は、基板Pの搬送速度が僅かに遅くなったことにより、図9のXスキャン位置x0、x1、x2、・・・・の間隔より長くなっている。
基板Pが理想速度(ポリゴンミラー46の回転速度と精密な同期状態となる搬送速度)よりも遅く搬送されている状態で、Yスキャン開始タイミングt0〜t6が到来する度に、開始信号st1のみに基づいて、AOM駆動部DR1に出力される1つの走査ライン分の描画データの列を、副走査方向である番地位置m0→m1→m2→m3→・・・・の順に自動的にシフトさせると、Xスキャン位置x1〜x6が走査ラインL1上に来る前に、Xスキャン位置x1〜x6に対応する該描画データ列DL1でのスポット光SPの走査が実行されてしまう。これにより、実際に基板P上に描画露光されるパターンは、図11に示すように、図9に示すパターンを基板Pの長尺方向(副走査方向)に沿って圧縮した形状となってしまう。逆に、基板Pが理想速度より速く搬送されている場合は、図示しないが、図9に示すパターンを基板Pの長尺方向に沿って伸長した形状となる。
なお、パターンの描画を開始すべき基板P上のXスキャン位置x0(スタート点)と走査ラインL1とが一致したか否かは、エンコーダヘッドEN2によって検出される回転ドラム22の回転角度位置に基づいて精密に判断できる。したがって、基板P上の露光領域Wに描画されるパターンは、露光領域Wの副走査方向の先端部(描画のスタート点)については一致させることができるが、上記のように基板Pの搬送速度に誤差が生じたりすると、露光領域Wの副走査方向の後端部(描画の終了点)は、設計上の位置から長尺方向にずれた位置に形成されてしまう。
これに対して、本実施の形態で説明する発明の態様では、このように基板Pの搬送速度(回転ドラム22の回転速度)が変動して、ポリゴンミラー46の回転速度との同期精度が劣化した場合であっても、パターンの描画露光の精度低下を抑制できることを説明する。
まず初めに、図9を参照して、スポット光SPの主走査方向への走査開始タイミングに同期して、基板Pが副走査方向に理想速度で搬送されているときの、本発明の態様の描画露光について説明する。なお、上述したように、説明をわかり易くするために、スポット光SPの主走査方向への走査開始タイミングに同期して、基板Pが副走査方向に一定の速度で搬送されているときには、照射されるスポット光SPの位置間隔は、主走査方向および副走査方向ともにスポット光SPの直径の1/2の1.5μmとし、Yアドレス生成部102と分周器106Aとで生成されるYスキャン方向(主走査方向)に関するYアドレス値の分解能、およびXアドレス生成部104と除算器106Bとで生成されるXスキャン方向(副走査方向)に関するXアドレス値の分解能は、いずれも基板P上で1画素の寸法に対応した3μmとする。したがって、描画データ記憶部106のメモリ部に記憶されている図8のようなビットマップデータは、スポット光SPの照射位置が主走査方向に3μm移動するごとに、列方向(Xスキャン方向)の特定の列中に記憶された描画データ列(ビット列)DL1を行方向(Yスキャン方向)に1画素ずつアクセス(読み出し)される。
露光コントローラ90は、アライメント位置情報生成部88からのアライメント位置情報およびエンコーダヘッドEN2によって検出される回転ドラム22の回転位置(カウンタ回路の計数値)に基づいて、パターンの描画を開始すべき基板P上のXスキャン位置x0が、走査ラインL1上に来たか否かを判断する。露光コントローラ90は、Xスキャン位置x0が走査ラインL1上に来たと判断すると(Yスキャン開始タイミングt0)、Xアドレス生成部104のカウント値を、クロック信号CLKの1周期よりも短い時間で「0」リセットする。これにより、除算器106Bで生成されるXアドレス値も初期値「0」にセットされる。したがって、描画データ記憶部106は、Xアドレス値「0」に対応する列「m0」(最初の列)を選択(指定)する。
一方、Yアドレス生成部102は、可変遅延素子100を介して開始信号st1を受信した瞬間に、それまでのカウント値を「0」リセットしてから、クロック信号CLKのクロックパルスをカウントしていく。これにより、分周器106Aで生成されるYアドレス値は、初期値「0」からクロック信号CLKの1/2の周波数(Fe/2)でカウントアップされる。したがって、描画データ記憶部106は、Xアドレス値で選択された列「m0」における行方向(Yスキャン方向)の画素データ(ビット列)を、分周器106Aで生成されるYアドレス値に応じて、順次AOM駆動部DR1に出力する。これにより、Yスキャン開始タイミングt0においては、例えば図8のような列「m0」中の描画データ列DL1(011111)に応じて、基板Pに達するビーム(スポット光)の強度を変調させながら、走査ラインL1に沿ったスポット光の1回の走査が行われる。すなわち、描画データ記憶部106は、分周器106Aで生成されるYアドレス値が「0」の場合は、列「m0」中の最初の番地「n0」の画素データ「0」を出力し、Yアドレス値がインクリメントされる度に、番地「n1」、「n2」、「n3」、・・・の順にアクセスされ、各番地に記憶された画素データ(「0」または「1」)が、クロック信号CLKの1/2の周波数(Fe/2)で描画データ列DL1として出力される。スポット光SPはクロック信号CLKの周波数Feに応答してパルス発光しているので、図9に示したように、基板P上では、互いに1/2ずつオーバーラップした2パルス分のスポット光によって1画素分が描画されることになる。
そして、ポリゴンミラー46の回転速度と基板Pの搬送速度とが精密に同期している状態で、図9のように、次のYスキャン開始タイミングt0’(次の開始信号st1)が到来すると、基板PはYスキャン開始タイミングt0から1.5μmだけ副走査方向に進んでいるが、画素ピッチの3μm未満なので、Xアドレス生成部104を介して除算器106Bで生成されるXアドレス値は、Yスキャン開始タイミングt0のときの値から変化しない。これにより、除算器106Bで生成されるXアドレス値「0」に対応して、描画データ記憶部106は、ビットマップデータ中の列「m0」(1番目の列)を選択(指定)し続ける。Yスキャン開始タイミングt0’においても、Yアドレス生成部102は、可変遅延素子100を介して開始信号st1を受信し、それまでのカウント値をゼロリセットした後、直ちにクロック信号CLKをカウントしていく。したがって、描画データ記憶部106は、選択した列「m0」中の描画データ列(ビット列)DL1を、分周器106Aで生成されるYアドレス値のインクリメントに応じて、順次AOM駆動部DR1に出力する。これにより、Yスキャン開始タイミングt0’においても、列「m0」の描画データ列DL1(011111)に応じて、ビームの強度が変調されながらスポット光SPが走査ラインL1に沿って走査される。このようにして、Yスキャン開始タイミングt0’で描画されるスポット光SPは、直前のYスキャン開始タイミングt0で描画されたスポット光SPに対して、副走査方向(Xスキャン方向)に実効的なスポット径の1/2程度だけオーバーラップして照射される。
さらに、ポリゴンミラー46の回転速度と基板Pの搬送速度とが精密に同期している状態で、3番目のYスキャン開始タイミングt1(開始信号st1)が到来すると、基板Pは、1番目のYスキャン開始タイミングt0から3μmだけ副走査方向に進んでいるので、Xアドレス生成部104を介して除算器106Bで生成されるXアドレス値はインクリメントされ、「1」となる。これにより、描画データ記憶部106は、ビットマップデータ中のXアドレス値「1」に対応する列「m1」(2番目の列)を選択(指定)する。Yスキャン開始タイミングt1においては、Xスキャン位置x1は、走査ラインL1上にある。Yスキャン開始タイミングt1が到来すると、Yアドレス生成部102は、可変遅延素子100を介して開始信号st1を受信し、それまでのカウント値をゼロリセットした後、直ちにクロック信号CLKをカウントしていく。したがって、描画データ記憶部106は、選択された列「m1」中に記憶された画素データ列を、Yアドレス値に応じて順次AOM駆動部DR1に出力する。これにより、Yスキャン開始タイミングt1においては、列「m1」の描画データ列DL1(011111)に応じて、ビームの強度が変調されながら、スポット光SPが走査ラインL1に沿って走査される。
先のYスキャン開始タイミングt0’と同様に、各Yスキャン開始タイミングt1’、t2’・・・t6’では、基板Pが直前のYスキャン開始タイミングt1、t2・・・t6から、1.5μmだけ進んでいるだけなので、除算器106Bで生成されるXアドレス値は変化しない。描画データ記憶部106は、Yスキャン開始タイミング1’、t2’・・・t6’の各々では、直前のYスキャン開始タイミングt1、t2・・・t6の際に選択されたビットマップデータ中の列「m1」、「m2」・・・「m6」における画素データを、分周器106Aで生成されるYアドレス値に応じて順次AOM駆動部DR1に出力する。これにより、各Yスキャン開始タイミングt1’、t2’・・・t6’においては、列「m1」、「m2」、・・・「m6」の各描画データ列DL1(011111、000011、000011、000111、000111、000011)に応じて強度変調されたビームによるスポット光SPが、走査ラインL1に沿って走査される。
また、先のYスキャン開始タイミングt1と同様に、各Yスキャン開始タイミングt2、t3、t4、t5、t6においては、基板Pは、各々2つ前のYスキャン開始タイミングt1、t2、t3、t4、t5から3μm進んでいるので、Xアドレス生成部104のカウント値に基づく除算器106BからのXアドレス値がインクリメントされる。描画データ記憶部106は、各Yスキャン開始タイミングt2、t3、t4、t5、t6において、インクリメントされたXアドレス値に対応する列「m2」、「m3」、「m4」、「m5」、「m6」を選択し、選択した列における画素データを、Yアドレス生成部102のカウント値に基づく分周器106AからのYアドレス値に応じて順次AOM駆動部DR1に出力する。これにより、各Yスキャン開始タイミングt2、t3、t4、t5、t6においては、ビットマップデータ中の列「m2」、「m3」、「m4」、「m5」、「m6」の各々の描画データ列DL1(000011、000011、000111、000111、000011)に応じて強度変調されたビームLBのスポット光SPが走査ラインL1に沿って走査される。なお、各Yスキャン開始タイミングt2、t3、t4、t5、t6においては、基板P上で副走査方向の目標位置として設定されるXスキャン位置x2、x3、x4、x5、x6は、走査ラインL1上にある。
このように、スポット光SPの主走査方向への走査開始タイミングに同期して、基板Pが副走査方向に理想速度で搬送されているときは、本発明の態様であっても、描画データに応じたパターンを綺麗に描画露光することができる。
次に、図12および図13を参照して、基板Pの搬送速度が、図9の基板Pの搬送速度(理想速度)より遅くなったときの、本発明の態様の描画露光について説明する。図12は、ポリゴンミラー46の回転速度が図9の場合と同一で安定しており、基板Pの搬送速度が、図9の場合の基板Pの搬送速度(理想速度)より少し遅くなった状態で、Yスキャン開始タイミング(開始信号st1)、すなわち時間軸を基準にしてパターンの描画動作を誇張して説明する図である。図13は、図12に示すパターンの描画動作によって、実際に基板P上に描画露光されるパターンを座標系(XY位置)を基準にして表した図である。なお、基板搬送機構12は、基本的には基板Pの搬送速度が理想速度(目標となる指定速度に対して所定誤差範囲で安定した速度)となるように、基板Pを搬送しているが、回転ドラム22の重量が大きく慣性モーメントが大きい場合は、その回転速度の制御応答性が低くなり、基板Pの搬送状態等によっては、基板Pの搬送速度を理想速度に戻すのに時間がかかる場合がある。
ポリゴンミラー46の回転速度は図9の場合と同じなので、図12に示すように、各Yスキャン開始タイミングt0、t0’、t1、t1’・・・毎のスポット光SPによる主走査方向への画素データに応じた描画動作は、図9の場合と同様なので説明を省略する。図9の場合と異なる点は、時間軸を基準とした場合、Yスキャン開始タイミングt0、t0’、t1、t1’・・・の各々に対して、基板P上の対応すべきXスキャン位置x0、x1、x2、・・・が、基板Pの搬送速度の低下により副走査方向に徐々にずれてくることである。すなわち、図12のように、Yスキャン開始タイミングt0とXスキャン位置x0とが一致していても、Yスキャン開始タイミングt1、t2、t3、t4・・・と時間とともに、図9では一致していたXスキャン位置x1、x2、x3、x4・・・が徐々にずれてくる。一方で、基板PのXスキャン位置は、Xアドレス生成部104のカウント値に基づいて除算器106Bで生成されるXアドレス値によって規定されており、描画データ記憶部106のメモリに記憶されたビットマップデータは、基板Pの搬送速度に関らず、基板Pが副走査方向に3μmだけ移動する度に、「m1」、「m2」、「m3」・・・の順に画素データ列がアクセス(選択)される。
すなわち、座標系上でみると、Xスキャン位置x0、x1、x2、・・・(画素データ列「m1」、「m2」、「m3」・・・の選択タイミング)の各々は、副走査方向に沿って基板P上に3μm間隔で設定されるが、スキャン開始タイミングt0、t0’、t1、t1’・・・は、副走査方向に関して1画素当りに2回だけではなく、所々で3回になる。図12の場合、Xスキャン位置x3とx4の間では、3回のYスキャン開始タイミングt3’、t4、x4’が発生する。図12では、基板P上に照射されたスポット光SPの位置のみを時間軸を基準にして表しており、副走査方向(Xスキャン方向)に関して、スポット径の1/2程度でオーバーラップするものとした。そのため、時間軸を基準にすると、描画データ列「m1」、「m2」、「m3」・・・は、副走査方向に僅かに拡大したように配置される。
しかしながら、実際に基板P上に描画されるパターンは、図13に示すように、基板P上では副走査方向に3μmごとに描画データ列「m1」、「m2」、「m3」・・・が割り振られるので、図11のように描画されたパターンが副走査方向に縮むようなことはない。但し、図9のように、ポリゴンミラー46の回転速度と基板Pの搬送速度とが精密に同期している場合と比べると、パターンの一部分では副走査方向に関して1パルス(1スポット光)分だけ余分に描画されることがある。図9の場合、例えばYスキャン方向のアドレス値n5に対応したクロック信号CLKのクロックパルスに応答して照射されるスポット光SPのXスキャン方向の数は、7画素分に対して14である。それに対し、図13の場合は、同じアドレス値n5に対応したクロックパルスに応答して照射されるスポット光SPのXスキャン方向の数は、7画素分に対して15になっている。
すなわち、基板Pの搬送速度が目標値に対して遅い場合は、基板P上で副走査方向に離接して走査されたスポット光SP同士が、副走査方向にスポット径の1/2よりも僅かに大きな量でオーバーラップすることになる。例えば、基板Pの搬送速度が目標値(理想値)に対して10%低下しているとすると、副走査方向に離接して走査されたスポット光SP(直径3μm)同士の間隔は1.5μmから1.35μmに減少し、オーバーラップ量はスポット径の1/2(1.5μm)から1.65μmに増加する。逆に、基板Pの搬送速度が目標値(理想値)に対して10%増加した場合は、副走査方向に離接して走査されたスポット光SP(直径3μm)同士のオーバーラップ量は、スポット径の1/2(1.5μm)に対して10%低下し、1.35μmになる。
このように、Xアドレス生成部104のカウント値(基板Pの移動量)に応じて除算器106Bで生成されるXアドレス値に応答して、Yスキャン開始タイミング時に選択すべき描画データ列DL1の列「m0」、「m1」、「m2」・・・を順次指定するので、基板Pの搬送速度が理想速度より遅くなったとしても、基板Pが副走査方向(Xスキャン方向)に1画素分だけ移動する間は、同じ列中の描画データ(描画データ列DL)を繰り返し使用することができ、図13に示すように、図9に示すパターンと略同等または近い形状のパターンを描画することができる。
また、基板Pの搬送速度が、図9で説明した目標速度(理想速度)よりも僅かに速くなった場合でも、本実施の形態では、除算器106Bで生成されるXアドレス値に応答して、Yスキャン開始タイミング時に選択すべき描画データ列DL1の列「m0」、「m1」、「m2」・・・を順次指定するので、図9に示すパターンと略同等または近い形状のパターンを基板P上に描画することができる。その場合は、基板Pの搬送速度が目標値(理想値)に対して増加しているので、副走査方向に離接して走査されたスポット光SP(直径3μm)同士のオーバーラップ量は、スポット径の1/2(1.5μm)よりも小さくなるだけである。但し、基板Pの搬送速度が目標値(理想値)に対して2倍以上になると、副走査方向に離接して走査されたスポット光SP(直径3μm)同士のオーバーラップ量がゼロになってしまい、基板Pに描画されたパターンの一部欠損や断線等の品質劣化が生じる。そのため、そのような設定にならないように、ポリゴンミラー46の回転速度、クロック信号CLKの周波数(発光周波数Fe)、および基板Pの搬送速度は適切な関係に設定される。
一般に、この種の回転ドラム22の回転駆動制御では、1回転中に生じ得る速度ムラ(回転ドラム22の外周面の周速度)を±1%以下にすることが可能である。しかしながら、先に例示したように、基板Pの理想速度が2.25mm/Sの場合、1回転中に±1%の速度変動が生じると、それは基板Pの移動速度が±22.5μm/Sだけ変化したことになり、基板P上に設定する画素寸法の3μm角、スポット光SPの主走査の副走査方向の間隔1.5μm等に比べると、大きな変動要因となり得る。しかしながら、本実施の形態では、エンコーダヘッドEN2等によって求められる回転ドラム22の外周面(基板P)の移動位置を表す除算器106Bの出力値(Xアドレス値)によって、描画データ記憶部106のメモリ中に記憶された描画データ列(m0、m1、m2・・・)を選択しているので、その程度の速度変動があっても、描画品質を低下させることが無い。
以上のように、基板Pの搬送速度が、ポリゴンミラー46の回転速度と精密に同期した速度(理想速度)に対して変動したとしても、描画データ上のパターンと略同等または近い形状で基板P上にパターン描画することができる。しかしながら、基板Pの搬送速度が理想速度よりも遅くなる場合は、副走査方向に離接するスポット光SPのオーバーラップ量が増加し、基板Pの搬送速度が理想速度よりも早くなる場合は、副走査方向に離接するスポット光SPのオーバーラップ量が減少するため、搬送速度が理想速度から変化した範囲では、基板Pの感光層に与えられる単位面積当たりの平均的な露光量(ドーズ)が変わる場合もある。そのような場合は、エンコーダヘッドENnからの2相信号を内挿してデジタル計数するカウンタ回路からの計数出力に基づいて、回転ドラム22の回転速度の変動を計測しつつ、その変動量に応じて光源装置14から出力されるビームLBの強度を動的に微調整する光強度調整器を設けるとよい。或いは、描画ユニットU1〜U5の各々に設けられている描画用光学素子(AOM)32に印加される高周波の駆動信号の振幅を可変して回折効率を調整する回路を図6中の各AOM駆動部DR1〜DR5に設けてもよい。なお、基板Pの感光層に与えられる単位面積当たりの平均的な露光量(ドーズ)を積極的に増加させたい場合は、単純には基板Pの搬送速度を低下させるだけでよく、基板Pの搬送速度を変えたくない場合は、ポリゴンミラー46の回転速度と光源装置14からのビームLBのパルス発光の周波数Fe(クロック信号CLKの周波数Fs)とを、露光量の増分(%)に応じて高めればよい。
〔変形例1〕
以上の実施の形態では、描画ユニットU1〜U5の各々のポリゴンミラー46は一定の回転速度で回転させ、その速度に対応して、光源装置14の発光周波数Fe(クロック信号CLK)を設定し、基板Pが理想速度で搬送されているときは、基板P上で隣接してパルス照射されるスポット光SP同士が、主走査方向と副走査方向とでスポット光SPの直径の約1/2でオーバーラップするように設定した。しかしながら、光源装置14が、さらに高い発振周波数でパルス発光可能な場合は、基板P上で隣接してパルス照射されるスポット光SP同士の主走査方向に関するオーバーラップ量を、スポット光の直径の約3/4、或いは約7/8に設定することもできる。例えば、図9のような描画動作において、光源装置14からのビームLBのパルス周波数を、発光周波数Fe(実施の形態では100MHz)に対して2倍(200MHz)にした場合は、オーバーラップ量をスポット光の直径の約3/4とし、発光周波数Fe(実施の形態では100MHz)に対して4倍(400MHz)にした場合は、オーバーラップ量をスポット光の直径の約7/8とすることができる。これによって、基板Pの感光層に与えられる露光量を増大させたり、描画されたパターンの像質(現像後のレジスト像の品質等)を向上させたりすることができる。
光源装置14をファイバーレーザ光源とし、発光周波数Feを200MHzとした場合は、図7中の分周器106Aは、クロック信号CLK(200MHz)を1/4分周する構成とし、発光周波数Feを400MHzとした場合は、分周器106Aは、クロック信号CLK(400MHz)を1/8分周する構成とすればよい。
〔変形例2〕
本実施の形態では、基板Pの搬送速度がある範囲内で変動しても、正確なパターン描画が可能であるが、搬送速度が大きく変動するような状況では、基板Pの搬送速度の変動に追従して、ポリゴンミラー46の回転速度と光源装置14のビームの発光周波数Feを動的に変化させるような構成にしてもよい。例えば、基板Pの搬送速度の目標値が2.25mm/Sである状況から、2倍の4.5mm/Sの目標値に変更する場合、回転ドラム22の回転速度を上げながら、ポリゴンミラー46の回転速度と光源装置14のビームの発光周波数Feを、基板Pの搬送速度の新たな目標値4.5mm/Sに対応するように調整する。ポリゴンミラー46の回転速度や光源装置14のビームの発光周波数Feの調整は短時間で完了するが、回転ドラム22の回転速度の変更が完了までにはある程度の時間が必要である。通常であれば、基板Pが新たな目標値4.5mm/Sの速度で安定走行する状態になってからパターン描画動作が開始されるが、本実施の形態であれば、基板Pが新たな目標値4.5mm/Sの速度に達する前、例えば、新たな目標値の80%程度の速度に達した時点から、パターン描画動作が開始可能である。また、回転ドラム22の回転速度が新たな目標値に静定する直前に、サーボ制御の特性によってはオーバーシュートやアンダーシュートと言った僅かな速度ムラが生じるが、本実施の形態であれば、そのような速度ムラの影響を受けることなく、精密なバターン描画が可能である。したがって、基板P上の露光領域Wにパターンを描画する露光工程の生産性(タクト)が向上する。
[第2の実施の形態]
ここで、基板Pは、フレキシブルなシート基板であるため、部分的に歪んで回転ドラム22に支持されたり、基板Pの長尺方向が回転ドラム22の回転軸AXに対して傾いて支持されたりする場合がある。そのため、スポット光SPが走査される走査ラインLに沿ったパターンの描画位置を主走査方向(基板Pの幅方向)に微少にシフト(位置補正)したり、スポット光SPが走査される走査ラインの長さを微少に伸縮(倍率補正)したりする必要が生じる場合もある。また、基板P上の露光領域Wの副走査方向の長さ(露光長)が、基板Pの伸縮によって設計上の露光長から変化している場合、露光長の変化に対応した描画動作も必要となる。
そこで、まず、走査ラインLに沿って描画されるパターンを主走査方向へ微少量(例えば、拡張領域0.5mm〜1mmの半分以下の量)だけ全体的に位置補正する場合について説明する。露光コントローラ90は、走査ラインL(L1〜L5)に沿って描画されるパターンを主走査方向へシフトさせたい量に応じて、図7に示したAOM制御部DG(DG1〜DG5)の可変遅延素子100の遅延量(遅延時間)を変える。例えば、描画されるパターンの位置を主走査方向に沿って+Y方向側に微少量シフトしたい場合は、露光コントローラ90からの指令によって、AOM制御部DG1、DG3、DG5の可変遅延素子100の遅延量(遅延時間)を初期値より大きくする。これにより、AOM制御部DG1、DG3、DG5のYアドレス生成部102への開始信号st1、st3、st5の入力タイミングは遅くなるので、Yアドレス生成部102によるクロック信号CLKの0からのカウント開始が遅くなる。したがって、分周器106AがYアドレス値を0からカウントアップするタイミングも遅れ、Yスキャン開始タイミング(t0、t0’、t1、t1’・・・)において、描画データ記憶部106から描画データ列DL1、DL3、DL5が出力されるタイミングも遅くなる。その結果、走査ラインL1、L3、L5の各々に沿って描画されるパターンの位置も主走査方向に沿って全体的に+Y方向側にずれることになる。なお、可変遅延素子100は、クロック信号CLKのクロックパルスを設定された遅延時間に対応した数だけ計数するプリセットカウンタ回路と、プリセットカウンタ回路が設定されたクロックパルス数を計数したら、開始信号st1、st3、st5をYアドレス生成部102に通すゲート回路等で構成される。
逆に、走査ラインL1、L3、L5の各々に沿って描画されるパターンの位置を主走査方向に沿って−Y方向側に微少量シフトしたい場合は、露光コントローラ90は、AOM制御部DG1、DG3、DG5の可変遅延素子100の遅延量(遅延時間)を初期値より小さくする。これにより、AOM制御部DG1、DG3、DG5のYアドレス生成部102への開始信号st1、st3、st5の入力タイミングは早くなり、Yアドレス生成部102によるクロック信号CLKの0からのカウント開始が早くなる。したがって、分周器106AがYアドレス値を0からカウントアップするタイミングも早まり、Yスキャン開始タイミング(t0、t0’、t1、t1’・・・)において、描画データ記憶部106から描画データ列DL1、DL3、DL5が出力されるタイミングも早くなる。その結果、走査ラインL1、L3、L5の各々に沿って描画されるパターンの位置も主走査方向に沿って−Y方向側にずれることになる。
先に例示したように、発光周波数Fe(クロック信号CLK)を100MHz、基板P上の走査ラインL1〜L5を30mm、走査効率βが30%の8面のポリゴンミラー46の回転速度を11250r.p.mとした場合、直径3μmのスポット光SPは、クロック信号CLKの1クロックパルスごとに、1.5μmずつ走査ラインに沿って移動して照射される。したがって、可変遅延素子100が計数するクロック信号CLKのクロックパルス数をCdpとすると、走査ラインL1、L3、L5の各々に沿って描画されるパターンの描画開始位置は、初期位置に対して、Cdp×1.5μmだけ主走査方向(±Y方向)にシフトさせることができる。その初期位置は、可変遅延素子100に設定される遅延量の初期値に対応したものであるが、各走査ラインL1〜L5の主走査開始側の端部に設定される拡張領域0.5mm〜1mmの半分程度の位置になるように設定される。
次に、走査ラインLに沿って描画されるパターンの長さ(主走査方向の描画長)を微少量だけ伸縮させる描画倍率の補正について説明する。露光コントローラ90は、倍率補正すべき描画長の伸縮量に応じて、クロック生成部92が生成するクロック信号CLKの周波数を所定周波数Fs(発光周波数Fe)から変動させる。例えば、30mmの描画長を1%だけ縮小する場合は、クロック信号CLKの周波数を初期の所定周波数Fsに対して1%だけ高くし、30mmの描画長を1%だけ拡大する場合は、クロック信号CLKの周波数を初期の所定周波数Fsに対して1%だけ低くすればよい。このように、クロック信号CLKの周波数を初期の所定周波数Fsに対して±1%変化させると、走査ラインLに沿って並ぶ直径3μmのスポット光SP(パルス光)の間隔が、初期値の1.5μmに対して±1%だけ変化する。そのため、先に例示したように、30mmの描画長を20000パルスのスポット光SPで描画する設定とした場合、補正後の描画長は、20000×(1±0.01)×1.5μm=30±0.3mmとなる。なお、クロック信号CLKの周波数(発光周波数Fe)を描画倍率の補正のために微調整する場合は、図7に示した分周器106Aの分周比を微調整前の値(1/2、1/4、1/8等のいずれか1つの値)から変更する必要はない。
基板PをPETやPEN等の樹脂材料によるフィルムとした場合、主走査方向における基板Pの伸縮量(拡大率、縮小率)は、基板Pの厚み、直前の処理プロセスで受けた温度や湿度、基板Pに成膜された材料の種類や膜厚、さらには回転ドラム22上に支持されたときに付与されるテンション(内部応力)等によって大きく変化し得るが、1000〜5000ppm程度を上限とした描画倍率補正に対応できるように、クロック信号CLKの周波数を初期の所定周波数Fsに対して微調整できればよい。
なお、以上の描画倍率補正の方式では、走査ラインLに沿ったスポット光SPの1回の走査期間中のクロック信号CLKの周波数(発光周波数Fe)を一定となるようにしたが、走査ラインLに沿ったスポット光SPの1回の走査期間中に、Yアドレス生成部102に印加されるクロック信号CLKの周期を部分的(局所的)に変化させてもよい。先に例示したように、クロック信号CLKを100MHzとして、スポット光SPの1回の走査中に、クロックパルスの20000パルス分のスポット光SPで描画長30mmに渡ってパターン描画される場合、例えば、クロックパルスの1000パルス毎に、連続した2つのクロックパルス間の時間(周期)を微調整してもよい。すなわち、分周器106AでYアドレス値がゼロからカウントアップされるパターン描画開始時から、クロック信号CLKの1クロックパルス目から1000クロックパルス目までは、所期の周波数Fs(100MHz)に対応した10nSの周期とし、1000クロックパルス目と次の1001クロックパルス目との間の周期は、例えば9nS、或いは11nSとし、1001クロックパルス目から2000クロックパルス目までは再び10nSの周期とし、それを20000クロックパルスまで繰り返す。
すなわち、クロック信号CLKの20000クロックパルスの間、原則としては、クロックパルス間の周期を10nSとするが、クロックパルスの1001番目、2001番目、3001番目、4001番目、・・・、19000番目のクロックパルスの位置では、周期を9nS或いは11nSに補正する。クロックパルスの周期の10nSは、スポット光SPが主走査方向に1.5μmだけ走査する時間に対応しており、クロックパルスの周期が10nSから9nSに補正されたところでは、スポット光SPが主走査方向に1.35μm(1.5μm×9/10)だけ走査され、クロックパルスの周期が10nSから11nSに補正されたところでは、スポット光SPが主走査方向に1.65μm(1.5μm×11/10)だけ走査される。このように、Yアドレス生成部102に印加されるクロック信号CLKの周期(所期値は10nS)を、1000クロックパルス毎に19ヶ所で周期を9nSに補正した場合は、20000クロックパルスで描画されるパターンの描画長(所期値は30mm)を、19×(1.5μm×1/10)=2.85μmだけ縮小させることができる。これは、倍率補正として、95ppm(2.85μm/30mm)で制御できることを意味する。逆に、1000クロックパルス毎に19ヶ所で周期を11nSに補正した場合は、2.85μmだけ拡大させることができる。このように、Yアドレス生成部102に印加されるクロック信号CLKの周期を部分的(局所的)に変化させる方法によれば、倍率補正をppmオーダーできめ細かく制御することができる。
次に、露光領域Wの副走方向(Xスキャン方向)における長さ(露光長)の伸縮に対応した描画動作について説明する。図7に示したAOM制御部DG(DG1〜DG5)の描画データ記憶部106は、露光コントローラ90の制御の下、通常は、図8に示したビットマップデータ中から、除算器106Bで生成されるXアドレス値のインクリメントに応じて、列m0、m1、m2、m3・・・の順に、記憶された画素データを描画データ列DL(DL1〜DL5)として読み出して出力する。しかしながら、図6中のアライメント位置情報生成部88によって逐次取得される各アライメントマークKs1〜Ks3(図2)の位置関係から、露光領域W(基板P)の露光長が副走査方向に伸縮していると露光コントローラ90が判断した場合は、露光長の伸縮量に応じて、ビットマップデータ中の画素データの列m0、m1、m2、m3・・・の所々で、読み出す列を飛ばしたり、同じ列を2度読み出したりするように制御する。すなわち、描画データ列DL(DL1〜DL5)として読み出すべきビットマップデータ中の列m0、m1、m2、m3・・・を、露光領域Wの露光長の伸縮量に応じたXスキャン方向の適当な位置毎に、意図的にずらす(シフトする)ように制御する。
具体的に説明すると、AOM制御部DG(DG1〜DG5)の描画データ記憶部106は、基板P上にパターン描画される露光領域Wの露光長を、設計値に対して副走査方向に、例えば1/1000(0.1%)だけ伸縮させる場合は、図7に示した除算器106Bで生成されるXアドレス値が1000回(所定回)インクリメントされる度に、ビットマップデータ中から本来選択されるべき画素データの列m1000、m2000、m3000・・・ではなく、それらの1つ手前の列m999、m1999、m2999、・・・に戻って再度同じ画素データを読み出す2回選択動作、或いは、それらの1つ先の列m1001、m2001、m3001・・・に飛んで画素データを読み出す飛越選択動作を行う。そのような描画動作の一例を、図14を参照して説明する。
図14は、基板P上に実際に描画される露光領域Wの副走査方向(Xスキャン方向)の露光長を、設計上の露光長に対して、1/1000(0.1%)だけ伸縮させる場合に、図7中の除算器106Bで生成されるXアドレス値に応じた画素データの列m0、m1、m2、m3・・・の選択の様子を示す図である。図14においても、スポット光SPの主走査方向への走査開始タイミングに同期して、基板Pが副走査方向に一定の速度(理想速度)で搬送されているものとする。したがって、図14に示すように、スポット光SPによるYスキャン開始タイミングt0、t0’、t1、t1’、t2、t2’・・・・は、先の図9(または図1、13)と同様に、基板Pが副走査方向に画素寸法(3μm角)の1/2(1.5μm)だけ移動する毎に発生し、副走査方向に隣接して照射されるスポット光SP同士は、直径の1/2(1.5μm)程度でオーバーラップする。なお、図14では図示を省略したが、Yスキャン開始タイミングt998、t999、t1000、t1001の各々の前後にも、Yスキャン開始タイミングt998’、t999’、t1000’、t1001’が存在し、Yスキャン開始タイミングt1998、t1999、t2000、t2001の各々の前後にも、Yスキャン開始タイミングt1998’、t1999’、t2000’、t2001’が存在する。なお、図14中の各列m0、m1、m2、・・・、m2001・・・を構成する矩形は、1画素のデータ(「0」または「1」)を記憶する1ビット分のメモリセルに相当する。
また、先の図9と同様に、Yスキャン開始タイミングt0、t1、t2、t3、・・・t998、t999、t1000、t1001、・・・、t1998、t1999、t2000、t2001、・・・の各々は、基板P上での副走査方向の画素寸法(3μm)毎のXスキャン位置x0、x1、x2、x3、・・・、x998、x999、x1000、x1001、・・・、x1998、x1999、x2000、x2001、・・・に対応している。さらに、先に説明した実例と同様、スポット光SPによる描画長を30mmとし、画素寸法を3μm角とするので、画素データの列m0、m1、m2、・・・、m2001・・・の各々は、行方向(Yスキャン方向)に並ぶ10000画素(ビット)分のメモリセルの番地位置n0、n1、n2、・・・、n9999、n10000・・・に記憶される。
描画する露光領域Wの副走査方向における露光長を設計値に対して0.1%だけ伸長(拡大)させる場合は、AOM制御部DG(DG1〜DG5)の描画データ記憶部106は、除算器106Bで生成されるXアドレス値が「999」になるまでは、Xアドレス値に応じた画素データの列m0、m1、m2、・・・、m999をビットマップデータ中から順次選択し、選択された列の画素データ(10000画素分)を図7中の分周器106Aで生成されるYアドレス値(番地位置n0、n1、n2、・・・、n10000)のインクリメントに同期して、ビットシリアルな描画データ列DL(DL1〜DL5)としてAOM駆動部DR(DR1〜DR5)に出力する。
そして、除算器106Bで生成されるXアドレス値が「999」から「1000」になったときは、描画データ記憶部106が、Xアドレス値「1000」に対応した本来の列m1000を選択せずに、1つ前のXアドレス値「999」に対応する列m999を選択し続けるように制御する。すなわち、Xアドレス値が「998」、「999」、「1000」、「1001」とインクリメントされる際、Xアドレス値「998」に対しては列m998の画素データが選択され、Xアドレス値「999」に対しては列m999の画素データが選択され、そしてXアドレス値「1000」に対しては列m999の画素データが選択され、Xアドレス値「1001」に対しては列m1000の画素データが選択される。それ以降、Xアドレス値が「1999」に達するまでは、「Xアドレス値−1」にシフトした画素データの列がXアドレス値のインクリメントに応答して順次選択され、描画データ列DL(DL1〜DL5)となって出力される。以上の動作によって、列m999の画素データ列に応じたYスキャン方向の画素列が、図14中の拡大時のデータ列mの選択制御に示すように、副走査方向の位置x999と位置x1000の2列分に渡って描画される。その結果、画素データの列m0〜m999(Xスキャン方向に1000画素分)を描画する間に、副走査方向に移動する基板Pの移動量は、設計上の移動量(3μm×1000)に対して、1画素分(3μm)だけ長くなり、所定の割合(0.1%)で副走査方向に拡大したパターンが描画される。
さらに、除算器106Bで生成されるXアドレス値が「1999」から「2000」になったときは、描画データ記憶部106が、Xアドレス値「2000」に対応した本来の列m2000を選択せずに、2つ前のXアドレス値「1998」に対応する列m1998を選択するように制御される。すなわち、Xアドレス値が「1998」、「1999」、「2000」、「2001」とインクリメントされる際、Xアドレス値「1998」に対しては列m1997の画素データが選択され、そして、Xアドレス値「1999」とXアドレス値「2000」の両方に対しては列m1998の画素データが選択され、Xアドレス値「2001」に対しては列m1999の画素データが選択される。それ以降、Xアドレス値が「2999」に達するまでは、「Xアドレス値−2」にシフトした画素データの列がXアドレス値のインクリメントに応答して順次選択され、描画データ列DL(DL1〜DL5)となって出力される。以上の動作によって、列m1998の画素データ列に応じたYスキャン方向の画素列が、図14中の拡大時のデータ列mの選択制御に示すように、副走査方向の位置x1999と位置x2000の2列分に渡って描画される。その結果、画素データの列m1000〜m1999(Xスキャン方向に1000画素分)を描画する間に、副走査方向に移動する基板Pの移動量は、設計上の移動量(3μm×1000)に対して、1画素分(3μm)だけ長くなり、所定の割合(0.1%)で副走査方向に拡大したパターンが描画される。
以上のような制御によって描画すべき露光領域Wの露光長を拡大(伸張)する場合は、除算器106Bで生成されるXアドレス値が1000カウント分増加する回数をQDとしたとき、1000カウント分増加する度に、「Xアドレス値−QD」だけ負方向にシフトしたシフトXアドレス値を生成する減算器(または、加算器)を、図7に示した描画データ記憶部106中に設け、減算器で生成されるシフトXアドレス値に応じて、ビットマップデータ中の画素データの列mを選択すればよい。
また、描画すべき露光領域Wの副走査方向の露光長を設計上の値から一定の割合(例えば0.1%)で縮小する場合、AOM制御部DG(DG1〜DG5)の描画データ記憶部106は、除算器106Bで生成されるXアドレス値が「998」となるまでは、Xアドレス値に応じたビットマップデータ中の画素データの列「m0」、「m1」、「m2」、・・・、「m998」を順次選択し、選択された列の画素データ(10000画素分)を図7中の分周器106Aで生成されるYアドレス値(番地位置n0、n1、n2、・・・、n10000)のインクリメントに同期して、ビットシリアルな描画データ列DL(DL1〜DL5)としてAOM駆動部DR(DR1〜DR5)に出力する。
そして、除算器106Bで生成されるXアドレス値が「998」から「999」になったときは、描画データ記憶部106が、Xアドレス値「999」に対応した本来の列m999を選択せずに、1つ後のXアドレス値「1000」に対応する列m1000を選択するように制御する。すなわち、列m999の画素データの描画が省かれることになる。それ以降、Xアドレス値が「1998」になるまでの間、「Xアドレス値+1」にシフトした画素データの列がXアドレス値のインクリメントに応答して順次選択され、描画データ列DL(DL1〜DL5)となって出力される。以上の動作によって、列m999の画素データ列に応じたパターン描画がスキップされるので、図14中の縮小時のデータ列mの選択制御に示すように、副走査方向の位置x998と位置x999の間で、画素寸法(3μm角)の間引きが行われる。その結果、画素データの列m0〜m999(Xスキャン方向に1000画素分)を描画する間に、副走査方向に移動する基板Pの移動量は、設計上の移動量(3μm×1000)に対して、1画素分(3μm)だけ短くなり、所定の割合(0.1%)で副走査方向に縮小したパターンが描画される。
さらに、除算器106Bで生成されるXアドレス値が「1997」から「1998」になるときは、描画データ記憶部106が、Xアドレス値「1998」に対応した本来の列m1998を選択せずに、2つ後のXアドレス値「2000」に対応する列m2000を選択するように制御される。それ以降、Xアドレス値が「2997」に達するまでは、「Xアドレス値+2」にシフトした画素データの列がXアドレス値のインクリメントに応答して順次選択され、描画データ列DL(DL1〜DL5)となって出力される。以上の動作によって、列m1999の画素データ列に応じたパターン描画がスキップされるので、図14中の縮小時のデータ列mの選択制御に示すように、副走査方向の位置x1997と位置x1998の間で、画素寸法(3μm角)の間引きが行われる。その結果、画素データの列m1000〜m1999(Xスキャン方向に1000画素分)を描画する間に、副走査方向に移動する基板Pの移動量は、設計上の移動量(3μm×1000)に対して、1画素分(3μm)だけ相対的に短くなり、所定の割合(0.1%)で副走査方向に縮小したパターンが描画される。
以上のような制御によって描画すべき露光領域Wの露光長を縮小(収縮)する場合は、除算器106Bで生成されるXアドレス値が1000カウント分増加する回数をQDとしたとき、1000カウント分増加する度に、「Xアドレス値+QD」だけ正方向にシフトしたシフトXアドレス値を生成する加算器を、図7に示した描画データ記憶部106中に設け、加算器で生成されるシフトXアドレス値に応じて、ビットマップデータ中の画素データの列mを選択すればよい。
以上の実施の形態では、副走査方向に並ぶ複数の画素データの列m0、m1、m2、・・・中の最初から、1000番地(特定番地間隔とする)毎の特定の列m999、m1999、m2999、・・・を指定し、その特定の列の画素データを続けて2回描画することで、描画すべき露光領域Wの副走査方向に関する全長(露光長)を0.1%だけ拡大し、特定の列の画素データの描画を飛ばす(スキップする)ことで、描画すべき露光領域Wの副走査方向に関する全長(露光長)を0.1%だけ縮小した。このことから、例えば、図6中のアライメント位置情報生成部88で取得された複数のマークKs1〜Ks3の配置関係(アライメント結果)に基づいて、基板P自体の副走査方向に関する伸縮の度合い、或いは、下地パターンが形成された露光領域Wの副走査方向に関する伸縮の度合いを求め、その伸縮の度合いに応じて、複数の画素データの列m0、m1、m2、・・・中で特定の列と指定するための特定番地間隔を定めればよい。例えば、露光長を0.05%だけ伸縮させる場合は、特定番地間隔を2000番地間隔とし、露光長を0.2%だけ伸縮させる場合は、特定番地間隔を500番地間隔とすればよい。したがって、アライメント結果から求まる伸縮率(%またはppm)の逆数を特定番地間隔として設定すればよい。
以上のことから、描画すべき露光領域Wの露光長を設計値に対して伸縮させるためには、シフトXアドレス値を生成する加算器(または減算器)に与える回数QDの値の極性(正負)を変えるだけでよい。そのようなシフトXアドレス値を生成する機能を加えたAOM制御部DG(DG1〜DG5)の変形例を図15に示す。図15のAOM制御部DG(DG1〜DG5)の構成は、基本的に図6の構成と同じであるが、特定番地間隔を計数して回数QDの値を出力するカウンタ回路106Cと、除算器106Bで生成されるXアドレス値と回数QDの値とを加算したシフトXアドレス値を出力する加算器106Dとが付加される。カウンタ回路106Cには、露光コントローラ90から送られてくる伸縮率に応じた特定番地間隔の1/2の値がプリセットされる。そして、カウンタ回路106Cは、除算器106Bから出力されるXアドレス値の最下位ビット(LSB)の変化(0→1)をカウントアップし、カウントアップした値がプリセットされた値を越えたときは、カウントアップした値をゼロリセットするとともに、回数QDの絶対値をインクリメントする。なお、露光コントローラ90からは、伸縮の極性(拡大か縮小か)を表すフラグ信号がカウンタ回路106Cに送られており、カウンタ回路106Cは、フラグ信号の極性が負の場合は、回数QDの絶対値を負数(1の補数)にして加算器106Dに印加する。
[第3の実施の形態]
先の図6にて説明したように、移動機構制御部94は、露光コントローラ90の制御の下、図5に示した移動機構68を制御することで、回転軸Iを中心に露光ヘッド18(描画ユニットU1〜U5)を回動させる。露光コントローラ90は、アライメント位置情報生成部88が生成したアライメント位置情報に基づいて、移動機構制御部94を制御する。このアライメント位置情報から、基板Pの搬送状態もわかるので、露光コントローラ90は、基板Pの長尺方向が回転ドラム22の回転軸AXに対して傾いている場合、つまり、主走査方向が基板P、或いは露光領域Wの幅方向に対して傾いている場合は、露光ヘッド18が回動するように移動機構制御部94を制御する。露光コントローラ90は、基板P、或いは露光領域Wの幅方向と主走査方向(走査ラインL)とが平行となるように移動機構制御部94を制御する。なお、図5に示した移動機構68が露光ヘッド18をX方向およびY方向の少なくとも一方に平行移動させる微動機構を有する場合、移動機構制御部94は、露光コントローラ90の制御の下、露光ヘッド18(描画ユニットU)を回転軸Iの回りに回動させるとともに、露光ヘッド18(描画ヘッド)をX方向またはY方向に微動して、回転ドラム22の外周面上(基板P上)での走査ラインL1〜L5の位置を調整してもよい。
図16は、基板Pの幅方向が回転ドラム22の回転軸AXに対して傾いた状態で基板Pが回転ドラム22に搬送されている様子を誇張して表した図であり、このとき、露光ヘッド18(描画ユニットU1〜U5)を回転軸Iの回りに回動させて主走査方向(走査ラインL1〜L5)と基板Pの幅方向とを平行にしたときの図である。図16に示すように、基板Pの長尺方向が回転ドラム22の回転軸AXに対して傾いている場合であっても、基板Pは、+X方向に沿って搬送されるため、走査ラインL3、L5と走査ラインL2、L4とは、基板Pの幅方向に関して描画開始位置付近で互いに重複する方向に僅かにシフトする。逆に、走査ラインL1、L3と走査ラインL2、L4とは、基板Pの幅方向に関して描画終了位置が互いに離間する方向に僅かにシフトする。このように、基板Pを長尺方向に搬送する間に、回転ドラム22の回転軸AXの方向(Y方向)に対して基板Pの幅方向が傾いた状態になった場合、走査ラインL1〜L5の各々で基板P上に描画されるパターン同士が、基板Pの幅方向に関して良好な精度でつながらない現象、すなわち、継ぎ誤差が発生する。継ぎ誤差の程度は、走査ラインL1〜L5と回転軸AXとのXY面内での相対的な傾き量に応じて変化する。
そのため、走査ラインL1、L3、L5、または、走査ラインL2、L4の位置を基板Pの幅方向(主走査方向)に僅かにシフトさせれば、走査ラインL3、L5と走査ラインL2、L4との描画開始位置を基板Pの幅方向に関して不要な重複を無くして隣接させ、走査ラインL1、L3と走査ラインL2、L4との描画終了位置を基板Pの幅方向に関して不要な離間を無くして隣接させることができる。つまり、走査ラインL1〜L5と回転軸AXとがXY面内で相対的に傾いて設定される状態のときは、走査ラインL1、L3、L5、または、走査ラインL2、L4の各々の位置を主走査方向に僅かにシフトすること、或いは、併せて走査ラインL1〜L5の各々の主走査方向に関する描画倍率を微調整することによって、基板P上の露光領域Wの全体に形成すべきパターンを、良好な継ぎ精度で描画露光することができる。
具体的には、走査ラインL1、L3、L5の位置を、+Y方向側に主走査方向に沿ってシフトする、または、走査ラインL2、L4の位置を、−Y方向側に主走査方向に沿ってシフトすることで、継ぎ誤差を低減することができる。この走査ラインL(L1〜L5)の主走査方向へのシフトは、先の図7、または図15中の可変遅延素子100に設定される遅延時間(クロック信号CLKのクロックパルスのカウント数)によって、スポット光SPの実効的な直径(3μm)の約1/2(1.5μm)の分解能で調整可能である。
ここで、走査ラインL1、L3、L5、または、走査ラインL2、L4を主走査方向に沿ってシフトさせて、基板Pの露光領域Wに対して全走査ラインL1〜L5で、許容範囲以上の継ぎ誤差が生じないようにパターン描画したとしても、基板Pは、走査ラインL1〜L5の位置では+X方向に沿って搬送されるため、各描画ユニットU1〜U5によって基板P上に描画される露光領域は、図17Aに誇張して示すように、平行四辺形の形状となってしまう。これにより、描画ユニットU1〜U5全体で露光される露光領域Wも平行四辺形の形状となってしまう。
そこで、基板Pの長尺方向の回転ドラム22の回転軸AXに対する傾き度合いに応じて、走査ラインL(L1〜L5)に沿ってスポット光SPを走査する度に(Yスキャン開始タイミングの度に)、走査ラインL(L1〜L5)を、図17Bに示すように、主走査方向にシフトすることで、各描画ユニットU1〜U5の露光領域を平行四辺形から四角形の形状に補正することができる。これにより、描画ユニットU1〜U5全体で露光される露光領域Wも四角形の形状に補正することができ、基板Pの長尺方向の回転ドラム22の回転軸AXに対して傾いていないときの露光領域Wの形状と同じにすることができる。走査ラインLに沿ったスポット光SPの走査を開始する度に、走査ラインLを主走査方向にシフトする量を徐々に増加させる。このシフト動作は、先の図7、または図15中の可変遅延素子100に設定される遅延時間(クロック信号CLKのクロックパルスのカウント数)を徐々に増減することで実行でき、シフト量の増減量は、基板Pの幅方向の回転ドラム22の回転軸AXに対する傾きに応じて決まる。図17Bのように、基板Pの長尺方向の回転ドラム22の回転軸AXに対する傾き角をθ(ラジアン)、走査ラインLの間隔をΔx(近似的にスポット光SPの直径の1/2)とすると、シフトする量の増加量は、Δx×sinθで表すことができ、傾き角θが充分に小さい場合は、Δx×θで近似できる。つまり、走査ラインLに沿ったスポット光SPの走査を開始する度(Yスキャン開始タイミングt0、t0’、t1、t1’、t2、t2’、・・・の度)に、Δx×θずつシフトさせていく。この間隔Δxはスポット光SPの実効的な直径の1/2として既知であり、傾き角θは、図6中のアライメント位置情報生成部88が収集したマークKs1〜Ks3の位置関係から露光コントローラ(検出部)90が求めることができる。
先の実例で説明したように、スポット光SPの主走査方向のパルス間隔は直径3μmのスポット径の1/2(1.5μm)に対応し、図7(または図15)中の可変遅延素子100による遅延時間の分解能もクロック信号CLKの1周期分の時間(基板P上で1.5μmの長さに)に相当するため、傾き角θが小さい場合は、Δx×θで決まるシフト量が1.5μmよりも小さくなる。そこで、Xスキャン方向(副走査方向)のスポット光SPによる走査回数(Yスキャン開始タイミングの回数)をCxとし、Cx・(Δx×θ)≧Δx(Cx・θ≧1)となる走査回数Cxごとに、可変遅延素子100によってクロック信号CLKの1周期分ずつ遅延時間を増加(または減少)させてもよい。
また、描画ユニットU1、U3、U5と、描画ユニットU2、U4とは、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔距離で設けられているので、走査ラインL2、L4に沿ったスポット光SPの走査は、走査ラインL1、L3、L5のスポット光SPの走査が終了してから所定時間Td経過後に行われる。したがって、図17A、図17Bに示すような、走査ラインL2、L4でのシフト動作(可変遅延素子100に設定される遅延時間の一定のレートによる増減)は、走査ラインL1、L3、L5でのシフト動作に対して、所定時間Tdが経過した後に行う必要がある。走査ラインL1、L3、L5と、走査ラインL2、L4との基板Pの長尺方向における間隔距離をLtとし、基板Pの搬送速度をvとすると、この所定時間Tdは、Td=Lt/v、で表すことができる。
[第4の実施の形態]
次に、描画用光学素子(AOM)32の特性について説明する。図18は、駆動信号による描画用光学素子32のオン/オフのスイッチングによって、描画用光学素子32から出力される出力光(1次回折光として偏向されたビームのスポット光SP)の状態を示すタイムチャートである。光源装置14から出力されるパルス状のレーザ光LBが、描画ユニットU1〜U5の各々の描画用光学素子32を用いて強度変調されることは、上述したとおりである。つまり、描画用光学素子32は、AOM駆動部DRからの駆動信号がオン状態のときは基板P上のスポット光SPの強度を高レベルにし、駆動信号がオフ状態のときは基板P上のスポット光SPの強度を低レベル(ゼロレベル)にする。
しかしながら、描画用光学素子(AOM)32には、駆動信号のオンからオフへの立下りの瞬間から、入射ビームを回折偏向している状態をほぼ完全に中止するまでの間に応答遅れが存在する。そのため、駆動信号がオンからオフに切り換わっても、描画用光学素子(AOM)32からの出力ビーム(1次回折光)の強度は、瞬時には立ち下がらず徐々に減少してゼロになるような現象を示す(図18)。このような応答遅れに伴って出力ビームの強度が暫時減少することを、ここでは、描画用光学素子32の透過率の変動と呼び、透過率変動の期間を透過率の過渡時間(基板Pに照射される出力ビームの強度が時間経過とともに変動する時間)と呼ぶ。駆動信号がオンからオフに切り換わった場合は、描画用光学素子32の透過率が変動する過渡時間においては基板P上のスポット光SPの強度は、本来の低レベル(ゼロレベル)よりも高くなってしまい、描画されるパターンのエッジ部等に過度な露光を与えてしまうことになる。逆に、駆動信号がオフからオンに切り換わったときも同様で、描画用光学素子32の透過率は、直ぐには立ち上がらずに過渡時間を伴って徐々に増加する。したがって、駆動信号がオフからオンになった場合も、描画用光学素子32の透過率の過渡時間においては基板Pに照射されるスポット光SPの強度が、所定の高レベルよりも低くなってしまい、描画されるパターンのエッジ部等が露光量不足になることがある。
そこで、本実施の形態においては、描画用光学素子32の変調タイミング(オン/オフの切り換わりタイミング)と、光源装置14から出力されるパルス状のレーザ光LBの発光タイミングとを所定時間ずらすことで、描画用光学素子32の透過率の過渡時間内に光源装置14からのレーザ光LBのパルス発光のタイミングが重ならないようにする。これにより、描画用光学素子32によるスポット光SPの強度を高レベルと低レベルとに確実に切り換えることができる。具体的には、描画データ列DLに応じて描画用光学素子32の駆動信号をオン/オフ制御するAOM駆動部DRと描画用光学素子32との間、または、AOM駆動部DRとAOM制御部DGとの間に、遅延素子を介装することで、描画用光学素子32に入力される駆動信号を所定時間ずらすことができる。その遅延素子による遅延時間は、描画用光学素子32の透過率の過渡時間程度に設定される。また、先に説明したように、光源装置14から出力されるレーザ光LBのパルス発光のタイミングは、クロック信号CLKに同期しており、描画データ記憶部106から送出される描画データ列DLの画素ビットデータの送出もクロック信号CLKに同期している。したがって、いずれか一方の同期関係に一定の遅延(描画用光学素子32の透過率の過渡時間程度)を与えるような遅延素子を設けてもよい。
[第5の実施の形態]
図19は、基板P上に描画すべき露光領域W中のパターンの露光長を、副走査方向に設計値に対して伸縮させる場合の他の方式を説明するタイムチャートを示し、図20は、図19の方式を実現するためのAOM制御部(露光制御部)DGが有する回路ブロック図を示す。先の図14で説明した方法では、副走査方向に並ぶ多数の画素データ列m0、m1、m2、m3、・・・のうち、副走査方向の1000画素目毎の特定の画素データ列m999、m1999、m2999、・・・を2回使うことで露光長の拡大を行い、副走査方向の1000画素目の画素データ列m999、m1999、m2999、・・・を省くことで露光長の縮小を行った。しかしながら、特定の画素データ列の部分に、副走査方向の線幅がクリティカルなパターンが存在する場合、1画素分のデータの付加や削除が描画品質上で問題になることもある。そこで、本実施の形態では、エンコーダヘッドEN1〜EN3によるエンコーダシステム(カウンタ回路を含む)が、基板P上に設定される画素寸法(例えば3μm角)或いはスポット光の実効的な寸法(例えば直径3μm)よりも十分に高い分解能で、基板Pの移動量を計測していることを利用し、副走査方向の所々、例えば1000画素目ごとに、基板P上に設定される1画素分の寸法をみかけ上で短く計測したり、長く計測したりすることで、よりきめ細かく露光長を伸縮させるようにした。なお、計測の分解能が高いと言うことは、エンコーダシステムのカウンタ回路がインクリメントする1デジットが、基板Pの移動量に換算して、より小さなピッチ寸法に相当するという意味である。
図19では、一例として、先の図14と同様に1000画素目の画素データ列m9999と、その前後の画素データ列m998、m1000、m1001を拡大して示し、1画素の寸法は、設計上で3μm角とする。本実施の形態では、計測機構であるエンコーダシステム(エンコーダヘッドEN1〜EN3と、それらに対応したカウンタ回路を含む)による基板Pの移動量の計測分解能が、画素寸法に比べて10倍高い0.3μmとする。したがって、本実施の形態では、図20に示すように、エンコーダヘッドEN2(またはEN3)からの2相信号Sd2(またはSd3)を内挿して作られる計数パルス列の各パルスは、基板Pが0.3μm移動する度に送出される。エンコーダ用カウンタ回路300がカウントアップした計数パルス列によるデジタル計数値(例えば並列32ビット)は、回転ドラム22の回転制御や露光位置の管理等に使われる。
図20のエンコーダ用カウンタ回路300が送出するデジタル計数値のLSB(最下位ピット)の変化は、図19中の計数パルス列の変化と同じなる。そこで、エンコーダ用カウンタ回路300からのLSB(計数パルス列)を入力してカウントアップするとともに、そのカウントアップ値が、プリセット値Nx分になったら、ゼロリセット信号(パルス)302aを出力してカウントアップした値をクリアして、再度、計数パルス列をカウントアップする可変分周器302を設ける。そして、本実施の形態のXアドレス生成部104は、そのゼロリセット信号302aをインクリメントすることによって、画素データ列m0、m1、m2、m3、・・・の各々に対応したビットマップデータ上のXアドレス値を生成する。プリセット値Nxは、図19のように、画素寸法(3μm角)をエンコーダシステムによる計測分解能(0.3μm)で除した値(10)を標準値とし、露光コントローラ90によってセットされる。露光コントローラ90は、基板Pが、例えば1000画素分だけ移動したときに選択されて描画される画素データ列m999に関しては、プリセット値Nxを標準値10から9にセットし、次の画素データ列m1000以降では、再び、プリセット値Nxを標準値10にセットするように動作する。
したがって、図19に示すように、画素データ列m0〜m998までは、プリセット値Nxは標準値10にセットされるため、基板Pが1画素寸法(3μm)だけ移動する度に、画素データ列m0〜m998が順次選択されて、パターン描画が行われる。そして、次の画素データ列m999に基づくパターン描画の際には、可変分周器302がエンコーダシステムからの計数パルス列を9カウントするとゼロリセット信号302aを発生するので、Xアドレス生成部104で生成されるXアドレス値はインクリメントされ、次の画素データ列m1000のXスキャン方向の番地が指定される。このように、プリセット値Nxが標準値10に対して1だけ小さい値9にセットされた画素データ列m999は、基板Pが副走査方向に2.7μmだけ移動している間の描画に使われる。同様に、次の1000番地目である特定の画素データ列m1999、さらに2000番地目である特定の画素データ列m2999、・・・・も、基板Pが副走査方向に2.7μmだけ移動している間だけ描画に使われる。すなわち、本実施形態では、エンコーダシステムからの計数パルス列の計測分解能が、基板P上に設定される画素寸法の1/Nに対応している場合、副走査方向の特定の番地の画素(主走査方向に並ぶ画素列)に対応した基板Pの移動量を、(N±α)/N(α≠0)倍だけ変化させることによって、露光領域Wの全体の露光長を伸縮させている。
以上の動作により、露光領域Wに対するパターン描画の開始から、1000画素目、2000画素目、3000画素目、・・・の各々の画素のみが、副走査方向に画素寸法の1/10だけ縮んで描画されることなる。すなわち、本実施の形態では、副走査方向に1000画素分の長さ3000μmの描画を行う度に、0.3μmだけ副走査方向に縮小したパターンを描画することができ、露光領域Wに描画されるパターン全体の副走査方向の露光長を、0.01%(100ppm)だけ縮小させることができる。もちろん、露光領域Wに描画されるパターン全体の副走査方向の露光長を拡大する場合は、可変分周器302にセットされるプリセット値Nxを標準値10に対して1だけ大きい値11にセットするだけでよい。また、プリセット値Nxを標準値10に対して±1だけ増減させるXアドレス位置は、1000番地毎に限られず、任意の番地毎でよく、例えば、5000番地毎に設定した場合は、0.002%(20ppm)と、きめ細かな伸縮調整(補正)が可能となる。しかも、副走査方向の離散的な特定の画素に対してだけのみ、みかけ上の画素寸法を1画素分の画素寸法(3μm)よりも十分に小さい値だけ補正しているだけなので、微細なパターンを描画する際に、伸縮補正する画素部にクリティカルな線幅(例えば線幅6〜9μm)のパターンが存在しても、その線幅を大きく異ならせることが避けられる。
また、以上の本実施の形態では、可変分周器302にセットされるプリセット値Nxの標準値10から9または10への変更タイミングは、Xアドレス生成部104によって生成されるXアドレス値が、所定の番地数(例えば1000番地毎)になったか否かを、露光コントローラ90で判定して設定するのがよい。さらに、プリセット値Nxの標準値(10)に対する増減分は、±1に限られず、±2、±3、・・・であってもよい。本実施の形態は、エンコーダ用カウンタ回路300のデジタル計数値のLSBの計測分解能が、画素寸法(例えば3μm角)の1/2(1.5μm)程度しかない場合であっても同様に適用可能である。この場合、プリセット値Nxの標準値は2となり、描画すべきパターンを副走査方向に縮小する場合は、標準値2を1にセットして、伸縮補正する特定の画素の見かけ上の寸法を1.5μmにすればよく、描画すべきパターンを副走査方向に拡大する場合は、標準値2を3にセットして、伸縮補正する特定の画素の見かけ上の寸法を4.5μmにすればよい。
以上の本実施の形態では、エンコーダシステムからの計数パルス列の計測分解能(例えば0.3μm)が、基板P上に設定される画素寸法(例えば3μm)の1/N(例えばN=10)に対応している場合、副走査方向の特定の番地(例えば1000番地毎)に位置する特定の画素(主走査方向に並び画素列)を描画する際は、数値αを0以外でNより小さい整数または実数としたとき、すなわち、N>α>0としたとき、基板Pの1画素に相当する移動量を、本来の画素寸法に対して、(N±α)/N倍だけ変化させることになる。なお、画素寸法と計数パルス列の計測分解能との比率である数値Nは、整数に限られず、実数であってもよい。したがって、副走査方向に離散的に位置する特定の画素では、数値αをN>α>0の範囲に設定することで、副走査方向の画素寸法(基板Pの移動量)を設計上の値から伸縮させたような状態でパターン描画が行われ、副走査方向に並ぶ特定の画素以外の画素では、数値αをゼロに設定することで、副走査方向の画素寸法(基板Pの移動量)が設計上の値と一致するような状態でパターン描画が行われる。
以上の各実施の形態、変形例によれば、AOM制御部DG(DG1〜DG5)の描画データ記憶部106は、パターンを描画するための描画データを、主走査方向に沿った方向を行とし、副走査方向に沿った方向を列とするように2次元に分解された複数の画素データで構成されるマトリックスデータ(ビットマップデータ)として記憶するとともに、除算器106B(図7、図15)、またはXアドレス生成部104(図20)によって生成されるXアドレス値に応じて、マトリックスデータ(ビットマップデータ)中の行方向に並ぶ列を選択し、選択した列における列方向の画素データを、分周器106A(Yアドレス生成部102)で生成されるYアドレス値に応じて順次描画ユニットU(U1〜U5)の描画用光学素子32に出力する。これにより、非常に短い走査時間間隔でのスポット光の走査中に、基板Pの相対移動の速度が変化した場合であっても、露光精度の低下を抑制することができる。
以上の各実施の形態や変形例では、設計上のパターンのうち、主走査方向に沿って延びる最小幅の線状パターンが、描画データの列方向(副走査方向)に2画素以上となるように画素寸法が設定され、1画素分のスポット光SPによる走査が副走査方向に複数回(2回以上)行われるように設定(同期)されている。したがって、描画露光したパターンの一部が消失することを防止することができる。
なお、上記実施の形態では、光源装置14は、パルス状のレーザ光LBを発光周波数Feで発光するようにしたが、光源装置14は、連続光を照射してもよい。この場合でもYアドレス生成部102は、クロック信号CLKをカウントすることで、スポット光SPの主走査方向への移動量をデジタル計数してもよいし、ポリゴンミラー46の回転速度からスポット光SPの主走査方向への走査量をデジタル計数してもよい。
さらに、各実施の形態や変形例では、基板Pを回転ドラム22の外周面に巻き付けて、円筒面に沿って移動させるようにしたが、表面が平面状の基板ステージによって基板Pを平坦に支持した状態で長尺方向(副走査方向)に移動させてもよい。その場合、基板ステージが基板Pを吸着支持する構成であるときは、基板ステージを基板Pの長手方向に1次元に移動させる移動機構と、基板ステージの直線的な移動位置(移動量)を計測するエンコーダシステム、或いは測長用干渉計による計測機構が設けられる。また、平坦な支持表面、または湾曲した支持表面を有し、その支持表面と基板Pの裏面との間に気体や液体による流体ベアリングの層を形成する基板ホルダによって、基板Pを非接触状態(若しくは低摩擦状態)で支持してもよい。その場合は、基板Pの幅方向の両側の各々に、基板Pの長尺方向にピッチを有する回折格子を連続的に刻設し、その回折格子の移動量を画素寸法よりも小さい分解能で計測するようなエンコーダシステム(エンコーダヘッドEN1〜EN3と同様の構成)を計測機構として設ければよい。
また、基板P上にパターンを露光する露光ヘッド18は、描画データに応じて角度や段差が制御される多数のマイクロミラーを有するDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)に照明光を照射し、DMDで反射された光束(パターンに応じて強度分布が変調される光ビーム)を基板P上に照射するマスクレス方式の露光ヘッドであってもよい。この場合、基板Pの移動位置を計測する計測機構は、DMDの1つのマイクロミラーから基板P上に投射される光ビーム(スポット光)のサイズ、または基板P上に設定される画素寸法よりも小さい分解能で移動量を計測するように設定される。