JP2017101350A - キュプラ繊維材料を用いた炭素材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
これに対し、以下の特許文献1に記載されるように、セルロースの脱水を促進する物質を含む状態で加熱することで、より高い効率で且つより迅速にセルロースを炭化することができるという発想で、今までに、セルロースの脱水を促進する物質として、リン酸、硫酸、塩酸、リン酸二アンモニウム、リン酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、リン、ホウ素などの無機酸や塩などが提案されている。しかしながら、これらの無機酸や塩を使用してもセルロースの熱分解を十分に防ぐことは不可能であった。
以上のことから、本発明者らは、紡績糸、フィラメント糸、紙、不織布、織物及び編物などの一次元から三次元に至る種々の微視的又は巨視的形態である繊維又は二次元や三次元的構造の構造体であるキュプラ系材料を原料とすることで上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]キュプラ繊維材料にスルホン酸を吸着させる工程;及び
前記スルホン酸を吸着させたキュプラ繊維材料を、不活性ガス雰囲気中、600〜2800℃の温度により加熱処理する工程;
を含む、炭素材料の製造方法。
[2]前記加熱処理したキュプラ繊維材料を、不活性ガス雰囲気中、1800〜3000℃の温度での再加熱処理を行う工程;
をさらに含む、前記[1]に記載の方法。
[3]前記キュプラ繊維材料にスルホン酸を吸着させる工程が、スルホン酸水溶液にキュプラ繊維材料を浸漬させることにより行われる、前記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記スルホン酸水溶液中のスルホン酸の濃度が、0.1〜2.0モル/Lである、前記[3]に記載の方法。
[5]前記スルホン酸が、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びカンファースルホン酸からなる群から選ばれる1種以上である、前記[3]又は[4]に記載の方法。
[6]前記キュプラ繊維材料が、紡績糸、フィラメント糸、紙、不織布、織物、及び編物からなる群から選択される形態にある、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]生成物である炭素材料の形態が、原料として用いたキュプラ繊維材料の形態を維持している、前記[6]に記載の方法。
本実施形態の炭素材料の製造方法は、キュプラ繊維材料にスルホン酸を吸着させる工程(スルホン酸吸着工程);及び前記スルホン酸を吸着させたキュプラ繊維材料を不活性ガス雰囲気中で600〜2800℃で加熱処理する工程(炭素化工程)を含むことを特徴とする。
前記加熱処理工程(炭素化工程)においては、上記のスルホン酸との吸着工程を経たキュプラ系材料をその形態を維持した状態で管状路や電気炉を用いて窒素又はアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で熱処理する。熱処理によりスルホン酸由来の少量の硫黄系ガスが発生する場合がある。この場合、排気管に活性炭素のような吸着材を充填し脱硫処理を行うことが好ましい。
さらに、前記炭素化工程で得られた炭素材料をその形状を維持した状態で管状路や電気炉を用いてアルゴンガス雰囲気下、1800〜3000℃、好ましくは1800℃〜2800℃で再加熱処理を行うことで、セルロース構造体の最初の形態が維持された状態で、部分的にグラファイト化してもよい(グラファイト化工程)。この再熱処理温度が1800℃未満であるとグラファイト化(結晶化)の進行が殆ど起こらず、他方、3000℃を超えても、グラファイト化の程度は殆ど変わらなくなる。熱処理時間は、熱処理温度にもよるが、好ましくは0.5〜1時間である。
最初の炭素化工程で得られた炭素材料は、サイズの収縮はあるものの、ほぼ形態を保持したままであり、電導度が10S/cm程度の材料である。この炭素材料をグラファイト工程において1800℃〜3000℃で熱処理することにより、グラファイト化が進行し、その結果、電導度も向上し、数十S/cm以上になる。
長さ40mm、幅15mmの試験片を支点間距離80mmの間隔で半径2mmの支点上に両面テープで固定した。半径5mmの圧子を試験片中心に当て、変位速度30mm/minの条件のもとで3点曲げ試験を行った。試験にはAUTOGRAPH万能試験機(定格100kN、島津製作所製)を用いた。反力及び試験片中央に生じる表面ひずみを、ロードセル及び試験片表裏に貼り付けたひずみゲージを用いて測定した。各条件での測定回数は5とした。
通電性(比抵抗値):2枚の5cm角(厚さ1cm)の金メッキした電極でシートの両面を全面が接触するように挟み、圧力10MPaにおけるシートの両電極間の電気抵抗値を測定し、この電気抵抗値R(Ω)と測定時のシートの厚さT(cm)と設置面積S(cm2)=5×5とから、下式:
比抵抗値(Ωcm)=[S/T]×R
より求めた。
初期試料(酸浸漬前)および炭化後試料を120℃、真空下で2時間乾燥させた後、重量を測定した。初期試料重量をW1、炭化後試料重量をW2とした時、下式:
炭素化率(%)=W2/W1×100
より求めた。
メタンスルホン酸の1.0モル/L水溶液に、試料であるキュプラ長繊維織物(100×100mm、目付76g/m2、経糸84dtex−45フィラメント、緯糸84dtex−45フィラメント、経密度125本/インチ、緯密度87本/インチ)を室温下、10分間浸漬した。その後、キュプラ繊維織物を水溶液から取り出し、室温で12時間、乾燥した。メタンスルホン酸の吸着量は33質量%であった。この試料を2枚の炭素板に挟み、電気炉でアルゴンガス雰囲気下、800℃で60分間加熱し、炭素化した。さらに、1100℃までアルゴンガス雰囲気下で昇温させ、30分加熱した。このとき、アルゴンガスの排気管に脱硫のために少量の活性炭を入れておいた。炭素化後、電気炉内を室温にし、炭素化試料(炭化織物)を取り出した。炭素化収率を確認したところ、炭素化収率は38質量%であった。3点曲げ試験法により、強度は0.4GPa、弾性率は250GPaを示した。また、電気伝導度は18S/cmであった。結果を以下の表1に示す。
キュプラ長繊維織物の代わりにキュプラ長繊維不織布(100×100mm、目付120g/m2)を用いた以外は実施例1と同様にして炭化不織布を作製した。メタンスルホン酸の吸収量は、35質量%であった。得られた炭化不織布の炭素化収率は37質量%であった。3点曲げ試験法により、強度は0.3GPa、弾性率は40GPaを示した。電気伝導率は15S/cmであった。結果を以下の表1に示す。
実施例1で得られた炭化織物を、2枚の炭素板に挟み、電気炉でアルゴンガス雰囲気下、2600℃で30分間加熱し、グラファイト化を行った。得られたグラファイト化織物の炭素化率は35%であった。3点曲げ試験法により、強度は1.1GPa、弾性率は600GPaを示した。電気伝導率は33S/cmであった。結果を以下の表1に示す。
実施例2で得られた炭化不織布を、2枚の炭素板に挟み、電気炉でアルゴンガス雰囲気下、2600℃で30分間加熱し、グラファイト化を行った。得られたグラファイト化不織布の炭素化率は34%であった。3点曲げ試験法により、強度は0.5GPa、弾性率は100GPaを示した。電気伝導率は31S/cmであった。結果を以下の表1に示す。
実施例1で用いたキュプラ長繊維織物を、メタンスルホン酸への浸漬を行わず、そのまま電気炉でアルゴンガス雰囲気下、800℃で60分間加熱し、炭素化した。さらに、1100℃までアルゴンガス雰囲気下で昇温させ、30分加熱した。炭素化後、電気炉内を室温にし、炭素化試料を取り出した。炭素化収率を確認したところ、炭素化収率は9質量%であった。3点曲げ試験法により、強度は0.1GPa、弾性率は40GPaを示した。電気伝導率は11S/cmであった。実施例1と比較し、メタンスルホン酸への浸漬を行わないと炭素化収率が低い上に、強度と弾性率ともに低かった。結果を以下の表1に示す。
キュプラ長繊維織物の代わりに綿織物(100×100mm、目付97g/m2、経糸30/1、緯糸36/1、経密度73本/インチ、緯密度63本/インチ)を用いた以外は実施例1と同様にして炭化織物を作製した。メタンスルホン酸の吸収量は、24質量%であった。得られた炭化織物の炭素化収率は31質量%であった。3点曲げ試験法により、強度は0.2GPa、弾性率は100GPaを示した。電気伝導率は12S/cmであった。実施例1と比較し、綿織物では強度と弾性率ともに低かった。結果を以下の表1に示す。
キュプラ長繊維織物の代わりにビスコースレーヨン織物(100×100mm、目付76g/m2、経糸84dtex−30フィラメント、緯糸133dtex−50フィラメント、経密度106本/インチ、緯密度74本/インチ)を用いた以外は実施例1と同様にして炭化織物を作製した。メタンスルホン酸の吸収量は、29質量%であった。得られた炭化織物の炭素化収率は33質量%であった。3点曲げ試験法により、強度は0.3GPa、弾性率は150GPaを示した。電気伝導率は15S/cmであった。実施例1と比較し、ビスコースレーヨン織物では強度と弾性率ともに低かった。結果を以下の表1に示す。
キュプラ長繊維織物の代わりにサイザル麻紙(100×100mm、目付80g/m2)を用いた以外は実施例2と同様にして炭化不織布を作製した。メタンスルホン酸の吸収量は、21質量%であった。得られた炭化不織布の炭素化収率は28質量%であった。3点曲げ試験法により、強度は0.1GPa、弾性率は20GPaを示した。電気伝導率は12S/cmであった。実施例2と比較し、サイザル麻紙では強度と弾性率ともに低かった。結果を以下の表1に示す。
Claims (7)
- キュプラ繊維材料にスルホン酸を吸着させる工程;及び
前記スルホン酸を吸着させたキュプラ繊維材料を、不活性ガス雰囲気中、600〜2800℃の温度により加熱処理する工程;
を含む、炭素材料の製造方法。 - 前記加熱処理したキュプラ繊維材料を、不活性ガス雰囲気中、1800〜3000℃の温度での再加熱処理を行う工程;
をさらに含む、請求項1に記載の方法。 - 前記キュプラ繊維材料にスルホン酸を吸着させる工程が、スルホン酸水溶液にキュプラ繊維材料を浸漬させることにより行われる、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記スルホン酸水溶液中のスルホン酸の濃度が、0.1〜2.0モル/Lである、請求項3に記載の方法。
- 前記スルホン酸が、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びカンファースルホン酸からなる群から選ばれる1種以上である、請求項3又は4に記載の方法。
- 前記キュプラ繊維材料が、紡績糸、フィラメント糸、紙、不織布、織物、及び編物からなる群から選択される形態にある、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 生成物である炭素材料の形態が、原料として用いたキュプラ繊維材料の形態を維持している、請求項6に記載の方法。
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JP2018196553A (ja) * | 2017-05-24 | 2018-12-13 | 株式会社三共 | 遊技機 |
CN114605850A (zh) * | 2022-04-12 | 2022-06-10 | 湖州交科新材料科技有限公司 | 一种汉麻基路用高性能复合木质素纤维及其制备方法 |
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JP2001009247A (ja) * | 1999-07-02 | 2001-01-16 | Asahi Chem Ind Co Ltd | 炭素中空繊維膜用のセルロース系中空繊維膜および炭素中空繊維膜の製造方法 |
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