本発明の成形体は、メタクリル樹脂組成物からなるものである。当該メタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂〔A〕およびフェノキシ樹脂〔B〕を含有する。当該メタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂〔A〕100質量部に対するフェノキシ樹脂〔B〕の含有量が0.1質量部以上30質量部以下である。当該メタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂〔A〕とフェノキシ樹脂〔B〕とを合計したものを80質量%以上含む。
〔メタクリル樹脂〔A〕〕
メタクリル樹脂〔A〕は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位のみを含有してなる重合体(以下、これをメタクリル樹脂〔A0〕と記すことがある。)またはメタクリル酸メチルに由来する構造単位と他の単量体に由来する構造単位を含有してなるランダム共重合体(以下、このランダム共重合体をメタクリル樹脂〔A1〕と記すことがある。)である。メタクリル樹脂〔A〕として市販のメタクリル樹脂を用いることができる。
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A1〕は、耐熱性などの観点から、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の総含有量が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
メタクリル樹脂〔A1〕は、メタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。メタクリル酸メチル以外の単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルネニル、メタクリル酸ジシクロペンタニルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸アリールエステル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;などの一分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を一つだけ有するビニル系単量体を挙げることができる。
メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)の下限が、好ましくは58%、より好ましくは59%、さらに好ましくは60%である。メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕の三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)の上限は、特に制限されないが、成形性の観点から、好ましくは99%、より好ましくは85%、さらに好ましくは77%、よりさらに好ましくは65%、最も好ましくは64%である。
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(以下、単に「シンジオタクティシティ(rr)」と称することがある。)は、連続する3つの構造単位の連鎖(3連子、triad)が有する2つの連鎖(2連子、diad)が、ともにラセモ(rrと表記する)である割合である。なお、ポリマー分子中の構造単位の連鎖(2連子、diad)において立体配置が同じものをメソ(meso)、逆のものをラセモ(racemo)と称し、それぞれm、rと表記する。
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(%)は、重水素化クロロホルム中、30℃で1H−NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、式:(X/Y)×100にて算出することができる。
メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の重量平均分子量MwA1が、好ましくは5万〜20万、より好ましくは5.5万〜16万、さらに好ましくは6万〜12万である。MwA1が高くなるほど、メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕から得られる成形体の強度が高くなる傾向がある。MwA1が低くなるほど、メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕の成形加工性が良好になり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基づいて算出されるポリスチレン換算の数平均分子量MnA1に対する重量平均分子量MwA1の比MwA1/MnA1が、好ましくは1.0以上5.0以下、好ましくは1.2以上2.5以下、さらに好ましくは1.3以上1.7以下である。MwA1/MnA1が低くなるほど、耐衝撃性や靭性が良好になる傾向がある。MwA1/MnA1が高くなるほど、メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕の溶融流動性が高くなり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、分子量200000以上の成分(高分子量成分)の含有量が、好ましくは0.1〜10%、より好ましくは0.5〜5%である。また、本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、分子量15000未満の成分(低分子量成分)の含有量が、好ましくは0.1〜5%、より好ましくは0.2〜3%である。メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕が高分子量成分および低分子量成分をこの範囲にて含有していることで、成形性が向上し、フィルムにする場合、均一な膜厚のフィルムを得やすい。
分子量200000以上の成分の含有量は、GPCで測定されたクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積のうちの、分子量200000の標準ポリスチレンの保持時間より前に検出されるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積の割合として算出する。分子量15000未満の成分の含有量は、GPCで得られるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積のうちの、分子量15000の標準ポリスチレンの保持時間より後に検出されるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積の割合として算出する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる測定は、以下のようにして行う。溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いる。分析装置として、示差屈折率検出器(RI検出器)を備えた東ソー株式会社製のHLC−8320(品番)を使用した。試験対象のメタクリル樹脂4mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解させて、試験対象溶液を調製した。カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35ml/分で、試験対象溶液20μlを注入して、クロマトグラムを測定した。
クロマトグラムは、試験対象溶液と参照溶液との屈折率差に由来する電気信号値(強度Y)をリテンションタイムXに対してプロットしたチャートである。
分子量400〜5000000の範囲の標準ポリスチレンをゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定し、リテンションタイムと分子量との関係を示す検量線を作成した。クロマトグラムの高分子量側の傾きがゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。クロマトグラムが複数のピークを示す場合は、最も高分子量側のピークの傾きがゼロからプラスに変化する点と、最も低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。
メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートが、好ましくは0.1〜30g/10分以上、より好ましくは0.5〜20g/10分、さらに好ましくは1〜15g/10分である。
メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、ガラス転移温度が、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは123℃以上である。メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕のガラス転移温度の上限は、特に制限はないが、好ましくは131℃である。
ガラス転移温度は、DSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度である。DSC曲線は、測定対象樹脂を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量計を用いて、230℃まで昇温し、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で昇温させたときの、2回目の昇温時の示差走査熱量測定で得られるものである。
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A〕は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位とを含有するランダム共重合体(以下、このランダム共重合体をメタクリル樹脂〔A2〕と記すことがある。)であってもよい。環構造を主鎖に有する構造単位を含有することによってメタクリル樹脂及びそれから得られる成形体の耐熱性が向上する。よって、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位とを含有するメタクリル樹脂〔A2〕における、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の総含有量を、上述した範囲よりも低くすることができる。例えば、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位とを含有するメタクリル樹脂〔A2〕における、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の総含有量は、好ましくは20〜99質量%、より好ましくは30〜95質量%、さらに好ましくは40〜90質量%である。環構造を主鎖に有する構造単位の総含有量は、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%である。メタクリル酸メチルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位とを含有するメタクリル樹脂〔A2〕はメタクリル酸メチルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位以外の他の構造単位を有してもよい。係る構造単位は前述したようなメタクリル酸メチル以外の単量体として例示した単量体に由来する構造単位であることができる。
環構造を主鎖に有する構造単位としては、>CH−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、−C(=O)−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、−C(=O)−N−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、または>CH−O−CH<基を環構造に含む構造単位が好ましい。
環構造を主鎖に有する構造単位は、無水マレイン酸、N−置換マレイミドなどのような重合性不飽和炭素−炭素二重結合を有する環状単量体をメタクリル酸メチルなどと共重合させることによって、または重合によって得られたメタクリル樹脂の分子鎖の一部を分子内縮合環化させることによって、メタクリル樹脂〔A2〕に含有させることができる。
>CH−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位としては、β−プロピオラクトンジイル(別名:オキソオキセタンジイル)構造単位、γ−ブチロラクトンジイル(別名:2−オキソジヒドロフランジイル)構造単位、δ−バレロラクトンジイル(別名:2−オキソジヒドロピランジイル)構造単位などのラクトンジイル構造単位を挙げることができる。なお、式中の「>」は結合手が2つあることを意味する。
例えば、δ−バレロラクトンジイル構造単位としては、式(Ib)で表される構造単位を挙げることができる。δ−バレロラクトンジイル構造単位としては、式(Ic)で表される構造単位が好ましい。
式(Ib)中、R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基であり、R16は−COORであり、Rは水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。*は結合手を意味する。
なお、式(Ib)における、有機残基としては、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、および−CN基等を挙げることができる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。「Ac」はアセチル基を示す。有機残基は、その炭素数が、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
δ−バレロラクトンジイル構造単位は、隣り合う二つのメタクリル酸メチルに由来する構造単位の分子内環化などによって、メタクリル樹脂〔A2〕に含有させることができる。
−C(=O)−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位としては、2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位、2,6−ジオキソジヒドロピランジイル構造単位、2,7−ジオキソオキセパンジイル構造単位などを挙げることができる。
例えば、2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位としては、式(IIa)で表される構造単位を挙げることができる。2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位としては、式(IIb)で表される構造単位が好ましい。
式(IIa)中、R21およびR22はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。*は結合手を意味する。
なお、式(IIa)における、有機残基としては、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、および−CN基等を挙げることができる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。「Ac」はアセチル基を示す。有機残基は、その炭素数が、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
R21およびR22がいずれも水素原子である場合、製造容易性および固有複屈折の調節等の観点から、通常、スチレン等が共重合されていることが好ましい。具体的にはWO2014/021264 Aに記載されているような、スチレンに由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合体を挙げることができる。
2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位は、無水マレイン酸の共重合などによって、メタクリル樹脂〔A2〕に含有させることができる。*は結合手を意味する。
2,6−ジオキソジヒドロピランジイル構造単位としては、式(IIIa)で表される構造単位、式(IIIb)で表される構造単位を挙げることができる。2,6−ジオキソジヒドロピランジイル構造単位としては、式(IIIc)で表される構造単位が好ましい。
式(IIIa)中、R31およびR32はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。*は結合手を意味する。
式(IIIb)中、R33およびR34はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。*は結合手を意味する。
なお、式(IIIa)および(IIIb)における、有機残基としては、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、および−CN基等を挙げることができる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。「Ac」はアセチル基を示す。有機残基は、その炭素数が、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
2,6−ジオキソジヒドロピランジイル構造単位は、隣り合う二つのメタクリル酸メチルに由来する構造単位の分子内環化などによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。
−C(=O)−N−C(=O)−基を環構造に含む構造単位(なお、Nが有するもう一つ結合手は表記を省略している。)としては、2,5−ジオキソピロリジンジイル構造単位、2,6−ジオキソピペリジンジイル構造単位、2,7−ジオキソアゼパンジイル構造単位などを挙げることができる。
例えば、2,6−ジオキソピペリジンジイル構造単位としては、式(IVa)で表される構造単位を挙げることができる。2,6−ジオキソピペリジンジイル構造単位としては、式(IVb)で表される構造単位が好ましい。
式(IVa)中、R41およびR42はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R43は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基である。*は結合手を意味する。
原料入手の容易さ、費用、耐熱性などの観点から、R41およびR42はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であることが好ましく、R43は水素原子、メチル基、n−ブチル基、シクロへキシル基またはベンジル基であることが好ましい。
2,5−ジオキソピロリジンジイル構造単位としては、式(Va)で表される構造単位を挙げることができる。2,6−ジオキソピペリジンジイル構造単位としては、式(Vb)で表される構造単位または式(Vc)で表される構造単位が好ましい。
式(Va)中、R52およびR53はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜14のアルキル基であり、R51は、炭素数7〜14のアリールアルキル基、または無置換の若しくは置換基を有する炭素数6〜14のアリール基である。アリール基に置換される基は、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数7〜14のアリールアルキル基である。*は結合手を意味する。
2,5−ジオキソピロリジンジイル構造単位は、N−置換マレイミドの共重合などによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。
>CH−O−CH<基を環構造に含む構造単位としては、オキセタンジイル構造単位、テトラヒドロフランジイル構造単位、テトラヒドロピランジイル構造単位、オキセパンジイル構造単位などを挙げることができる。なお、式中の「>」は結合手が2つあることを意味する。
例えば、テトラヒドロピランジイル構造単位としては、式(VIa)で表される構造単位を挙げることができる。
式(VIa)中、R61およびR62はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基、または環構造を有する炭素数3〜20の炭化水素基である。*は結合手を意味する。
R61およびR62としては、それぞれ独立に、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基(式(VI-1))、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−イル基(式(VI-2))、t−ブチル基(式(VI-3))、または4−t−ブチルシクロヘキサニル基(式(VI-4))が好ましい。なお、式(VI-1)〜(VI-4)中、+は結合位置を示す。
上記の環構造を主鎖に有する構造単位のうち、原料および製造の容易さの観点から、δ−バレロラクトンジイル構造単位、または2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位が好ましい。
メタクリル樹脂〔A2〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の重量平均分子量MwA2が、好ましくは5万〜20万、より好ましくは5.5万〜16万、さらに好ましくは6万〜12万である。MwA2が高くなるほど、メタクリル樹脂〔A2〕から得られる成形体の強度が高くなる傾向がある。MwA2が低くなるほど、メタクリル樹脂〔A2〕の成形加工性が良好になり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
メタクリル樹脂〔A2〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の数平均分子量MnAに対する重量平均分子量MwAの比MwA/MnAが、好ましくは1.0以上5.0以下、好ましくは1.2以上3.0以下である。MwA2/MnA2が低くなるほど、耐衝撃性や靭性が良好になる傾向がある。MwA2/MnA2が高くなるほど、メタクリル樹脂〔A2〕の溶融流動性が高くなり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
メタクリル樹脂〔A2〕は、230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートが、好ましくは0.1〜20g/10分以上、より好ましくは0.5〜15g/10分、さらに好ましくは1〜10g/10分である。
また、メタクリル樹脂〔A2〕は、ガラス転移温度が、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。メタクリル樹脂〔A2〕のガラス転移温度の上限は、特に制限はないが、好ましくは140℃である。
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A〕は、1種のメタクリル樹脂によって前記特性を満たすようにしたものであってもよいし、複数種のメタクリル樹脂の混合物によって前記特性を満たすようにしたものであってもよい。
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A〕を構成する1種または2種以上のメタクリル樹脂は、どのような製法で得られたものであってもよい。例えば、メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチルを重合することによってまたはメタクリル酸メチルと他の単量体とを重合することによって得ることができる。重合は、公知の方法にて行うことができる。重合の方法としては、連鎖移動の形態による分類で、例えば、ラジカル重合、アニオン重合などを挙げることができる。また、反応液の形態による分類で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを挙げることができる。前述したメタクリル樹脂〔A〕の各特性は、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量や添加時期、重合開始剤の種類や量や添加時期などの重合条件を調整することによって実現できる。このような重合条件による特性制御は当業者においてよく知られた技術であり、目的とする特性を有する樹脂を製造することは当業者にとって困難なことではない。
さらに、前記のような重合によって得られた樹脂を前述したような分子内環化させることによってメタクリル樹脂〔A2〕を得ることができる。
〔フェノキシ樹脂〔B〕〕
本発明において、上記フェノキシ樹脂〔B〕は、熱可塑性を有する高分子量エポキシ樹脂であり、ヒドロキシ基含有部を有する鎖および芳香族ユニットを有するポリヒドロキシポリエーテルのことを指す。具体的には、上記フェノキシ樹脂〔B〕は、下記式(1)で表されるユニットを1種以上含み、かつ下記式(1)で表されるユニットに由来する構造単位を50質量%以上含むものである。フェノキシ樹脂〔B〕は、下記式(1)で表されるユニットを10〜1000個含むことが好ましく、より好ましくは15〜500個、さらに好ましくは30〜300個含むことが好ましい。
前記フェノキシ樹脂〔B〕の数平均分子量は、好ましくは3000〜100000、より好ましくは5000〜80000、最も好ましくは10000〜50000である。数平均分子量がこの範囲にあることで、耐熱性が高く、強度が高い成形体を得ることができる。また、数平均分子量がこの範囲にあることで、成形体にする際のメタクリル樹脂〔A〕との粘度差を大きくでき、フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXを大きくすることが容易となる。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したクロマトグラムを標準ポリスチレンの分子量に換算して算出する。
フェノキシ樹脂〔B〕のガラス転移温度は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、95℃以上が最も好ましい。フェノキシ樹脂〔B〕のガラス転移温度が低いと、得られる成形体の耐熱性が低くなってしまう。フェノキシ樹脂〔B〕のガラス転移温度の上限は、特に規定しないが、一般的には、150℃である。フェノキシ樹脂(B)のガラス転移温度が高すぎると、得られるメタクリル樹脂組成物よりなる成形体が脆くなってしまう。
フェノキシ樹脂〔B〕の末端の構造としては、エポキシ基を含んでいないことが好ましい。フェノキシ樹脂〔B〕の末端にエポキシ基を含んでいると、得られるメタクリル樹脂組成物からなる成形体は、ゲル欠点が多いものになりやすい。
上記フェノキシ樹脂〔B〕に下記式(1)で表されるユニットが2種以上含まれる場合、これらはランダム、交互又はブロックの形態で含まれることができる。
上記式(1)中、Xは、少なくとも一つのベンゼン環を含む2価基であり、Rは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。
具体的には、式(1)中、Xは、下記式(2)〜(4)のような化合物に由来する2価基であることが好ましい。なお。2価基を構成する2つの置換基の位置は構造上可能なものであれば特に限定はないが、下記式(2)〜(4)中のベンゼン環上の水素原子を2つ引き抜いてなる2価基が好ましい。特に、下記式(2)と(4)中の異なるベンゼン環上の水素原子を合計で2つ引き抜いて2価基となるものが好ましい。
上記式(2)中、R1は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキレン基またはシクロアルキリデン基又はR1に原子が存在せず直接結合したナフタレン構造や、ビフェニル構造を示し、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又は炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基であり、n及びmは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。
上記式(3)中、R4は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又は炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基であり、pは、1〜4の整数である。
上記式(4)中、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基又は炭素数3〜20のシクロアルキレン基またはシクロアルキリデン基又はR6、R7に原子が存在せず直接結合したナフタレン構造や、ビフェニル構造を示し、であり、R5及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又は炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基であり、q及びrは、それぞれ独立に1〜4の整数である。
また、上記式(1)中、Xは、3環構造を有する芳香族炭化水素に由来する2価基であっても良い。具体例としてはフルオレン構造やカルバゾール構造を例示することができる。
上記式(2)から(4)で表される化合物に由来する2価基の具体的な例は、下記の構造を有する二価のフェノール誘導体に由来する2価基であるが、これらに限定されるものではない。下記構造中のベンゼン環上の水素原子を引き抜いてなる2価基が好ましい。特に、異なるベンゼン環上の水素原子を合計で2つ引き抜いて2価基となるものが好ましい。
上記式(1)で表されるユニットは、特に、下記式(6)で表されるユニットであることが好ましい。またフェノキシ樹脂〔B〕は、下記式(6)で表されるユニットを1種以上含み、当該ユニットを10〜1000個含むことが好ましい。
(6)
上記式(6)中、R9は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキレン基またはシクロアルキリデン基又はR1に原子が存在せず直接結合したナフタレン構造や、ビフェニル構造を示し、R10は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。
上記式(6)で表されるユニットは、特に下記式(7)で表されるユニットであることが好ましい。
これらフェノキシ樹脂〔B〕としては、新日鉄住金化学のYP−50やYP−50S、三菱化学のjERシリーズ、InChem社のフェノキ樹脂であるPKFEやPKHJ等を用いることができる。
本発明に用いられるフェノキシ樹脂〔B〕は、2価フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応、あるいは2価フェノール化合物と2官能エポキシ樹脂との重付加反応から得ることができ、溶液中あるいは無溶媒下に従来公知の方法で得ることができる。
本発明のメタクリル樹脂組成物に含有されるメタクリル樹脂〔A〕100質量部に対するフェノキシ樹脂〔B〕の含有量は、0.1質量部以上30質量部以下であり、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。フェノキシ樹脂〔B〕の含有量が0.1質量部より小さいと、空気雰囲気下での耐熱分解性が低く、得られる成形体の接着性に劣る。フェノキシ樹脂〔B〕の含有量が30質量部より大きいと耐熱性が低下したり、位相差が大きくなったりしてしまう。
フェノキシ樹脂の含有量がこの範囲にあることで、接着性が高く、耐熱分解性が高い成形体が得られる。またフィルムにした場合、延伸させてもフィルムの厚さ方向の位相差を小さくできる。また、メタクリル樹脂組成物の成形時の熱分解を少なくできるため、溶融成形時の金型等の成形装置の汚れを抑制できる。例えば押出成形でフィルムを製造する際のロール汚れを抑制できる。
本発明の成形体を構成するメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂〔A〕とフェノキシ樹脂〔B〕とを合計したものを80質量%以上含み、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは94〜100質量%、さらに好ましくは96〜100質量%含む。
本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート系重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリル系コアシェルゴム、アクリル系ブロック共重合体、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどが挙げられる。かかる含有され得る他の重合体として透明性、耐熱性の観点からポリカーボネート樹脂が好ましい。これら重合体のメタクリル樹脂組成物中の含有量は20質量%以下であり、10質量%以下であることが好ましい。
本発明に用いても良いポリカーボネート樹脂〔C〕は、特に限定されない。ポリカーボネート樹脂〔C〕としては、多官能ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物との反応によって得られる重合体を挙げることができる。本発明においては、メタクリル樹脂〔A〕との相溶性、得られる成形体の透明性が良いという観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
ポリカーボネート樹脂〔C〕は、メタクリル樹脂〔A〕との相溶性、並びに得られる成形体の透明性、表面平滑性などの観点から、300℃、1.2KgでのMVR値が、好ましくは1〜10万cm3/10分、より好ましくは80〜400cm3/10分、さらに好ましくは100〜300cm3/10分、よりさらに好ましくは130〜250cm3/10分、最も好ましくは150〜230cm3/10分である。
また、本発明に用いられるポリカーボネート樹脂〔C〕は、メタクリル樹脂〔A〕との相溶性、並びに得られる成形体の透明性、表面平滑性などの観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したクロマトグラムを標準ポリスチレンの分子量に換算して算出される重量平均分子量が、好ましくは5000〜75000、より好ましくは13000〜33000、さらに好ましくは14000〜30000、よりさらに好ましくは15000〜28000、最も好ましくは18000〜27000である。なお、ポリカーボネート樹脂〔C〕のMVR値や重量平均分子量の調節は末端停止剤や分岐剤の量を調整することによって行うことができる。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂〔C〕のガラス転移温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。該ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度の上限は、通常180℃である。ここで、ガラス転移温度は、JIS K7121(昇温速度20℃/分)で測定される中間点ガラス転移温度である。
ポリカーボネート樹脂〔C〕の製造方法は、特に限定されない。例えば、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融重合法(エステル交換法)など公知の方法を挙げることができる。また、本発明に好ましく用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂は、溶融重合法で製造したポリカーボネート樹脂原料に、末端ヒドロキシ基量を調整するための処理を施して成るものであってもよい。
また、ポリマーボネート樹脂〔C〕は、住化スタイロンポリカーボネート社、帝人社、三菱エンジニアリングプラスチックス社、バイエル、SABICなどから入手可能である。
本発明の成形体を構成する好ましい形態のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂〔A〕100質量部に対する前記ポリカーボネート樹脂〔C〕の含有量が0.1質量部以上8質量部以下、より好ましくは、0.5質量部以上5質量部以下である。この範囲にあることで、メタクリル樹脂〔A〕とフェノキシ樹脂〔B〕およびカーボネート樹脂〔C〕は完全に相溶するため、透明性が高く、表面平滑性の良好な成形体が得られる。またこの範囲にあることで、フィルムにおいては、得られる延伸フィルムの位相差を小さくすることができる。
本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体などの添加剤を含有していてもよい。
本発明に用いられる紫外線吸収剤〔D〕は、熱可塑性樹脂に配合されることがある公知の紫外線吸収剤である。紫外線吸収剤〔D〕の分子量が200以下であると、メタクリル樹脂組成物を成形する際に発泡が発生するなどの問題が生じることがあるため、紫外線吸収剤〔D〕の分子量の下限値は好ましくは300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは600以上である。
一般に、紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ベンゾトリアゾール類(ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物)、トリアジン類(トリアジン骨格を有する化合物)が好ましい。ベンゾトリアゾール類またはトリアジン類は、紫外線による樹脂の劣化(例えば、黄変など)を抑制する効果が高い。
ベンゾトリアゾール類としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN234)、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール〕(ADEKA社製;LA−31)、2−(5−オクチルチオ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどを挙げることができる。
トリアジン類としては、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA社製;LA−F70)や、その類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製;CGL777、TINUVIN460、TINUVIN479など)、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。
その他に、波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤を好ましく用いることができる。このような紫外線吸収剤としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社製;商品名サンデユボアVSU)などを挙げることができる。
WO2011/089794A1、WO2012/124395A1、特開2012−012476号公報、特開2013−023461号公報、特開2013−112790号公報、特開2013−194037号公報、特開2014−62228号公報、特開2014−88542号公報、特開2014−88543号公報等に開示される複素環構造の配位子を有する金属錯体を紫外線吸収剤〔D〕として用いることができる。
このような金属錯体の中心金属としては、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛が好ましく用いられる。また、これら金属錯体を紫外線吸収剤として用いるために、低分子化合物や重合体などの媒体に金属錯体を分散させることが好ましい。該金属錯体の含有量は、本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物に対して、好ましくは0.01質量%〜5質量%、より好ましくは0.1質量%〜2質量%である。前記金属錯体は380nm〜400nmの波長におけるモル吸光係数が大きいので、十分な紫外線吸収効果を得るために添加する量が少なくて済む。添加量が少なくなればブリードアウト等による成形体外観の悪化を抑制することができる。また、前記金属錯体は耐熱性が高いので、成形加工時の劣化や分解が少ない。さらに前記金属錯体は耐光性が高いので、紫外線吸収性能を長期間保持することができる。
なお、紫外線吸収剤のモル吸光係数の最大値εmaxは、次のようにして測定する。シクロヘキサン1Lに紫外線吸収剤10.00mgを添加し、目視による観察で未溶解物がないように溶解させる。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U−3410型分光光度計を用いて、波長380〜450nmでの吸光度を測定する。紫外線吸収剤の分子量(MUV)と、測定された吸光度の最大値(Amax)とから次式により計算し、モル吸光係数の最大値εmaxを算出する。
εmax=〔Amax/(10×10-3)〕×MUV
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。これらの中、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤を質量比で0.2/1〜2/1で使用するのが好ましく、0.5/1〜1/1で使用するのがより好ましい。
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(ADEKA社製;商品名:アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製;商品名:IRGAFOS168)3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサー3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製;商品名:アデカスタブPEP−36)などを挙げることができる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製;商品名IRGANOX1076)などが好ましい。
熱劣化防止剤としては、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
該熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジt−アミル−6−(3’,5’−ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが好ましい。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などが挙げられる。
離型剤としては、成形品の金型からの離型を容易にする機能を有する化合物である。離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。本発明においては、離型剤として、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、高級アルコール類/グリセリン脂肪酸モノエステルの質量比が、2.5/1〜3.5/1の範囲で使用するのが好ましく、2.8/1〜3.2/1の範囲で使用するのがより好ましい。
高分子加工助剤としては、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。高分子加工助剤としては、極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。
耐衝撃性改質剤としては、アクリル系ゴムもしくはジエン系ゴムをコア層成分として含むコアシェル型改質剤;ゴム粒子を複数包含した改質剤、アクリル系ブロック共重合体などが挙げられる。
有機色素としては、樹脂に対しては有害とされている紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
蛍光体として、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などが挙げられる。
これらの添加剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの添加剤は、メタクリル樹脂〔A〕、フェノキシ樹脂〔B〕やポリカーボネート樹脂〔C〕などを製造する際の重合反応液に添加してもよいし、製造されたメタクリル樹脂〔A〕、フェノキシ樹脂〔B〕やポリカーボネート樹脂〔C〕などに添加してもよいし、メタクリル樹脂組成物を調製する際に添加してもよい。本発明のメタクリル樹脂組成物に含有される添加剤の合計量は、得られるフィルムの外観不良を抑制する観点から、メタクリル樹脂〔A〕に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
本発明のメタクリル樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、フェノキシ樹脂〔B〕の存在下にメタクリル酸メチルを含む単量体混合物を重合してメタクリル樹脂〔A〕を生成させる方法や、メタクリル樹脂〔A〕およびフェノキシ樹脂〔B〕を溶融混練する方法などを挙げることができる。これらのうち溶融混練法は工程が単純であるので、好ましい。溶融混練の際に、必要に応じて他の重合体や添加剤を混合してもよいし、メタクリル樹脂〔A〕を他の重合体および添加剤と混合した後にフェノキシ樹脂〔B〕と混合してもよいし、フェノキシ樹脂〔B〕を他の重合体および添加剤と混合した後にメタクリル樹脂〔A〕と混合してもよいし、その他の方法でもよい。混練は、例えば、ニーダールーダー、単軸または二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合装置または混練装置を使用して行なうことができる。これらのうち、二軸押出機が好ましい。混合・混練時の温度は、使用するメタクリル樹脂〔A〕およびフェノキシ樹脂〔B〕の溶融温度などに応じて適宜調節することができるが、好ましくは110℃〜300℃である。
本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物は、透明性や耐熱性やフィルム化した際の厚さ方向の位相差が小さいという観点から、メタクリル樹脂〔A〕を好ましくは73〜99質量%、より好ましくは80〜97質量%、さらに好ましくは85〜95質量%含む。
また、本発明のメタクリル樹脂組成物は、フィルム化した際の厚さ方向の位相差が小さいという観点から、フェノキシ樹脂〔B〕を好ましくは0.1〜8質量%、より好ましくは1〜6質量%含む。
また、本発明のメタクリル樹脂組成物にポリカーボネート樹脂〔C〕を含む場合、得られるフィルムの厚さ方向の位相差を小さくする観点から、ポリカーボネート樹脂〔C〕を好ましくは0.1〜8質量%、より好ましくは0.5〜5質量%含むである。
また、本発明のメタクリル樹脂組成物に紫外線吸収剤〔D〕を含む場合、得られるフィルムの紫外領域の透過率を低くする観点から、紫外線吸収剤〔D〕を好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%含むである。
本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が、好ましくは120℃以上、より好ましくは123℃以上、さらに好ましくは124℃以上である。メタクリル樹脂組成物のガラス転移温度の上限は特に制限はないが、好ましくは130℃である。
本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物をGPCにて測定して決定されるMwは、好ましくは50000〜200000、より好ましくは6000〜160000、さらに好ましくは70000〜120000である。メタクリル樹脂組成物をGPCにて測定して決定される分子量分布は、好ましくは1.2〜2.5、より好ましくは1.3〜2.0である。Mwや分子量分布がこの範囲にあると、メタクリル樹脂組成物の成形加工性が良好となり、耐衝撃性や靭性に優れた成形体を得易くなる。
本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物を230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートは、好ましくは0.1〜6g/10分、さらに好ましくは0.5〜5g/10分、最も好ましくは1.0〜3g/10分である。
本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物は、3.2mm厚さのヘイズが、3.0%以下が好ましく、2.0%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましい。
本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物は、空気雰囲気下、290℃に加熱し30分経過したときの熱重量減少率が、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。
本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物は、保存、運搬、または成形時の利便性を高めるために、ペレットなどの形態にすることができる。
メタクリル樹脂組成物からなる本発明の成形体は、少なくともひとつの面において、表層(Y)と当該表層から垂直に成形体内部方向に深さ1μmの位置の深層(X)とのフェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXが1.5以上である。
メタクリル樹脂組成物からなる本発明の成形体を得る成形方法としては、例えば溶融混練工程と押出工程がある押出成形法、射出成形法などの溶融成形法などが好ましい。これらの方法を採用することで、メタクリル樹脂組成物が溶融した状態で、メタクリル樹脂と比較して粘度の低いフェノキシ樹脂が成形体の表層に偏在し、偏光子などの他の部材との接着性が高い成形体が得られる。
本発明の成形体の用途としては、例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;ペンダント、ミラーなどのインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバーなどの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機用ディスプレイカバーなどの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;ディスプレイ装置のフロントライト用導光板およびフィルム、バックライト用導光板及びフィルム、液晶保護板、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板、反射材などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;自動車内装用表面材、携帯電話の表面材、マーキングフィルムなどのフィルム部材;洗濯機の天蓋材やコントロールパネル、炊飯ジャーの天面パネルなどの家電製品用部材;その他、温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスクなどが挙げられる。
本発明の成形体は、透明性に優れ、他の部材との接着性に優れる。例えば、各種カバー、各種端子板、プリント配線板、スピーカー、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、また、映像・光記録・光通信・情報機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等のファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板の保護フィルム、光スイッチ、光コネクター、液晶ディスプレイ、液晶ディスプレイ用導光フィルム・シート、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ用導光フィルム・シート、プラズマディスプレイ、プラズマディスプレイ用導光フィルム・シート、電子ペーパー用導光フィルム・シート、位相差フィルム・シート、偏光フィルム・シート、偏光板保護フィルム・シート、偏光子保護フィルム・シート、波長板、光拡散フィルム・シート、プリズムフィルム・シート、反射フィルム・シート、反射防止フィルム・シート、視野角拡大フィルム・シート、防眩フィルム・シート、輝度向上フィルム・シート、液晶やエレクトロルミネッセンス用途の表示素子基板、タッチパネル、タッチパネル用導光フィルム・シート、各種前面板と各種モジュール間のスペーサーなど、各種の光学用途へ特に好適に適用可能である。
具体的には、例えば、携帯電話、デジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイ等の各種液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、耐候性に優れている点から、例えば、建築用内・外装用部材、カーテンウォール、屋根用部材、屋根材、窓用部材、雨どい、エクステリア類、壁材、床材、造作材、道路建設用部材、再帰反射フィルム・シート、農業用フィルム・シート、照明カバー、看板、透光性遮音壁など、公知の建材用途へも特に好適に適用可能である。
本発明の成形体は、太陽電池用途として太陽電池表面保護フィルム、太陽電池用風刺フィルム、太陽電池用裏面保護フィルム、太陽電池用基盤フィルム、ガスバリアフィルム基材、ガスバリアフィルム用保護フィルムなどへも適用可能である。
成形体の一形態である本発明のフィルムの製法は、押出成形法、射出成形法が好ましい。押出成形法によれば、メタクリル樹脂組成物がダイから押し出される際に、メタクリル樹脂と比較して粘度の低いフェノキシ樹脂が成形体表層に偏在しやすい。射出成型法によれば、メタクリル樹脂組成物が金型へ射出される際にメタクリル樹脂と比較して粘度の低いフェノキシ樹脂が成形体表層に偏在しやすい。
押出成形法によって成形を行う場合、シリンダーの温度は一定であることが好ましい。上記ダイの温度が変動すると、メタクリル樹脂組成物の流動状態が変化するため、成形体表層と当該表層から垂直に成形体内部方向に深さ1μmの位置の深層のフェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比(以下、フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXと称することがある)が変動することがある。シリンダーの温度のズレは、好ましくは設定温度±0.5℃以下であり、より好ましくは0.2℃以下である。また、シリンダーの温度は、メタクリル樹脂組成物のガラス転移温度+50〜+150℃程度が好ましい。温度が低いとメタクリル樹脂とフェノキシ樹脂の粘度差が小さく、フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXが小さくなる。温度が高すぎると樹脂の劣化により光学特性と力学物性が低下することがある。
押出成形法のうち、良好な表面平滑性、良好な鏡面光沢、低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、前記メタクリル樹脂組成物を溶融状態でTダイから押出し、次いでそれを二つ以上の鏡面ロールまたは鏡面ベルトで挟持して成形することを含む方法が好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルトは、金属製であることが好ましい。一対の鏡面ロールまたは鏡面ベルトの間の線圧は、好ましくは2N/mm以上、より好ましくは10N/mm以上、さらにより好ましくは30N/mm以上である。
また、鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度は共に130℃以下であることが好ましい。また、一対の鏡面ロール若しくは鏡面ベルトは、少なくとも一方の表面温度が60℃以上であることが好ましい。このような表面温度に設定すると、押出機から吐出される前記メタクリル樹脂組成物を自然放冷よりも速い速度で冷却することができ、表面平滑性に優れ、ヘイズが低く、フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXが大きいフィルムを製造し易い。
射出成形法によって成形を行う場合、シリンダーの温度は一定であることが好ましい。上記ダイの温度が変動すると、メタクリル樹脂組成物の流動状態が変化するため、フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXが変動することがある。シリンダーの温度のズレは、好ましくは設定温度±0.5℃以下であり、より好ましくは0.2℃以下である。また、シリンダーの温度は、メタクリル樹脂組成物のガラス転移温度+50〜+200℃程度が好ましい。温度が低いとメタクリル樹脂とフェノキシ樹脂の粘度差が小さく、フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXが小さくなる。温度が高すぎると樹脂の劣化により光学特性と力学物性が低下することがある。
射出成型する際の射出圧はメタクリル樹脂組成物の粘度特性(流動性)、成形品の形状や肉厚、または金型の構造によって適宜決定することができる。保圧は、射出圧によって金型が略充填された後、金型のゲート部分が完全に冷却固化するまでの一定時間かけられる圧力であり、特に限定されないが、好ましくは100kgf/cm2以上、より好ましくは150kgf/cm2以上である。保圧を100kgf/cm2未満とすると成形体にひけが発生することがある。また、保圧の上限は、金型の型締め圧力の範囲内で決定することが望ましい。保圧が金型の型締め圧力を越えると、冷却途中の金型が開いてしまうおそれがあり、成形品にバリが発生することがある。
射出成型する際の金型温度は、好ましくは30〜130℃、より好ましくは50〜120℃ある。金型温度が30℃未満では金型内でメタクリル樹脂組成物の流動性が悪くなり、成形不良の要因となってしまう。金型温度が130℃を超えると、フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXが小さくなる。
射出成型した後の冷却時間は、シリンダー温度、金型温度、成形体の厚みなどによって適宜変更され得る。冷却時間を長くすれば、成形品の変形を減少させることができが、サイクル時間が長くなってしまう。一方、冷却時間を短くすると、成形品の固化が不十分となり、それによって成形品の変形や寸法安定性の悪化をもたらせてしまう。
本発明の成形体の一態様であるフィルムは延伸処理を施したものであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、一軸延伸、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法などが挙げられる。延伸時の温度は、均一に延伸でき、高い強度のフィルムが得られるという観点から、100〜200℃が好ましく、120℃〜160℃がより好ましい。延伸は、通常長さ基準で100〜5000%/分で行われる。延伸の後、熱固定を行うことによって、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。
本発明のフィルムの厚さは、特に制限されないが、光学フィルムとして用いる場合、その厚さは、好ましくは1〜300μm、より好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。
本発明のフィルムは、厚さ40μmにおけるヘイズが、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下である。これにより、表面光沢や透明性に優れる。また、液晶保護フィルムや導光フィルムなどの光学用途においては、光源の利用効率が高まり好ましい。さらに、表面賦形を行う際の賦形精度に優れるため好ましい。
本発明のフィルムは、偏光子保護フィルムとして用いる場合、波長590nmの光に対する面内方向位相差Reが、フィルムの厚さ40μmの時に、好ましくは15nm以下、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下、特に好ましくは3nm以下、最も好ましくは1nm以下である。
本発明のフィルムは、偏光子保護フィルムとして用いる場合、波長590nmの光に対する厚さ方向位相差Rthが、フィルムの厚さ40μmの時に、好ましくは−5nm以上5nm以下、より好ましくは−4nm以上4nm以下、さらに好ましくは−3nm以上3nm以下、特に好ましくは−2nm以上2nm以下、最も好ましくは−1nm以上1nm以下である。
面内位相差および厚さ方向位相差がこのような範囲であれば、位相差が小さいため、位相差に起因する画像表示装置の表示特性への影響が顕著に抑制され得る。より具体的には、干渉ムラや3Dディスプレイ用液晶表示装置に用いる場合の3D像の歪みが顕著に抑制され得る。
なお、面内方向位相差Reおよび厚さ方向位相差Rthは、それぞれ、以下の式で定義される値である。
Re=(nx−ny)×d
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
ここで、nxはフィルムの遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルムの進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率であり、d(nm)はフィルムの厚さである。遅相軸は、フィルム面内の屈折率が最大になる方向をいい、進相軸は、面内で遅相軸に垂直な方向をいう。
本発明のフィルムの表面に機能層を設けてもよい。機能層としては、ハードコート層、アンチグレア層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、防眩層、静電気防止層、防汚層、微粒子などの易滑性層等を挙げることができる。機能層は片面だけに設けても良いし、両面に設けても良い。
本発明のフィルムは、他の部材との接着性が高く、透明性が高く、耐熱性が高く、空気雰囲気下での耐熱分解性が高く、位相差が小さく、また薄くできるため、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、液晶保護板、携帯型情報端末の表面材、携帯型情報端末の表示窓保護フィルム、導光フィルム、銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブを表面に塗布した透明導電フィルム、各種ディスプレイの前面板用途などに好適である。特に本発明のフィルムは偏光子との接着性が高いため、偏光子保護フィルムに好適である。
本発明のフィルムは透明性、耐熱性を高くできるため、光学用途以外の用途として、IRカットフィルムや、防犯フィルム、飛散防止フィルム、加飾フィルム、金属加飾フィルム、太陽電池のバックシート、フレキシブル太陽電池用フロントシート、シュリンクフィルム、インモールドラベル用フィルム、ガスバリアフィルム基材用フィルムに使用することができる。
本発明の成形体の表層(Y)と当該表層から垂直に成形体内部方向に深さ1μmの位置の深層(X)とにおける、フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXの分析手法を説明する。
測定機器は飛行時間二次イオン質量分析(TOF−SIMS)、二次イオン質量分析法のダイナミックモード(D−SIMS)、X線光電子分光装置(XPS)などを用いることができる。原則として、飛行時間二次イオン質量分析(TOF−SIMS)を用いて測定すれば良い。
本発明の成形体の表層(Y)とは、成形体表面から該表層から垂直に成形体内部方向に深さ10nmの範囲である。
各測定機器で得られる深さの情報が異なるが、飛行時間二次イオン質量分析(TOF−SIMS)では成形体の表面から垂直に成形体内部方向に約1nmと表面近傍の情報を得ることができ、深さ10nmまでの範囲を好適に分析できる。そのため、飛行時間二次イオン質量分析(TOF−SIMS)を用いることが好ましい。
フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXのうち、成形体の表層(Y)での値IYに相当する値の測定方法について説明する。IYは、フェノキシ樹脂に由来するシグナル強度の値である。
各測定機器を用いて成形体表面から垂直に成形体内部方向に10nmまでの層を分析し、フェノキシ樹脂〔B〕に由来するシグナル強度を観測する。観測されたシグナル強度の最大値を代表値IYとする。
フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXのうち、前記表層(Y)から垂直に成形体内部方向に深さ1μmの位置の深層(X)での値Ixに相当する値の測定方法について説明する。IXは、フェノキシ樹脂に由来するシグナル強度の値である。
測定前に成形体に前処理を行い、深層(X)を露出させて分析できるようにする。前処理の方法は特に制限はないが、ミクロトームやSAICASなどを用いて切削してもよいし、スパッタイオン源にアルゴンクラスターイオンを用いてスパッタしてもよい。前処理した成形体を、各測定機器を用いて前処理した成形体の切削した面もしくはスパッタした面を複数回分析し、得られるフェノキシ樹脂に由来するシグナル強度の平均値を代表値Ixとする。
フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比IY/IXは、前述のフェノキシ樹脂に由来するシグナル強度IY、IXを以下の式に当てはめての計算を行う。
フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比=IY/IX
フェノキシ樹脂〔B〕のシグナル強度比はフェノキシ樹脂の成形体中の偏析の度合いを示しており、その絶対値が大きいほど成形体表面にフェノキシ樹脂が偏析している状態である。
本発明の成形体と偏光子等の他の部材との接着性を向上させるためには、成形体表層にフェノキシ樹脂が偏析している方が好ましい。IY/IXは、1.5以上が好ましく、1.7以上がより好ましい。また、成形体表層にフェノキシ樹脂が偏在することで、他の部材との接着性を向上させるために必要なフェノキシ樹脂の含有量を抑えることができるため、メタクリル樹脂の含有量を多くし、成形体のガラス転移温度を高くすることができる。
シグナル強度の測定において、飛行時間二次イオン質量分析(以下、単にTOF−SIMSと称することがある)を用いた表面分析手法を説明する。一次イオン源にビスマスクラスターイオン源(Bi3 2+)を、スパッタイオン源にフラーレンイオン源を用い(C60 2+)を用い、ネガティブイオン取得モードで測定を行うことが望ましい。フェノキシ樹脂に由来するイオンとしては、C15H15O−を用いる。また、TOF−SIMS測定の留意点として、スパッタの影響による試料表面の帯電現象を防ぐため、電子銃からの電子照射などによる適切な帯電補正処理を行うことが望ましい。また、スパッタ時のクレータのエッジ部の情報はノイズとなるため、エッジ近傍の情報を取得せぬよう、分析領域はスパッタ領域の中心部のみに限定することが望ましく、具体的には分析領域の面積がスパッタ領域の20%以下となることが望ましい。
本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体に他材料層が積層された積層体においては、フェノキシ樹脂由来のシグナル強度を測定する場合、他材料層を除去してから本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体の分析を行う必要がある。他材料層を除去する方法に制限はないが、メタクリル樹脂組成物に対して貧溶媒となる溶剤などを用いて他材料層を除去してもよいし、他樹脂層を剥離して除去してもよいし、ミクロトームやSAICASなどを用いて他樹脂層を切削してもよいし、スパッタイオン源にアルゴンクラスターイオンを用いて他樹脂層を取り除いてもよい。これらの方法は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルム、偏光子保護フィルムまたは位相差フィルムを少なくとも1枚含むものである。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子と本発明の偏光子保護フィルムが接着剤層を介して積層されてなるものである。
本発明の好ましい一実施形態に係る偏光板は、偏光子11の一方の面に、接着剤層12、および本発明の偏光子保護フィルム14がこの順で積層され、偏光子11のもう一方の面に、接着剤層15、および光学フィルム16がこの順で積層されてなるものである。すなわち、本発明の偏光子保護フィルム14/接着剤層12/偏光子11/接着剤層15/光学フィルム16の構成をとる積層体である。
接着剤層12と接する本発明の偏光子保護フィルム14の表面には易接着層13を設けても良いが、本発明の偏光子保護フィルム14の場合、好適には易接着層13を設けずとも接着性を保持できる。易接着層13を設けた場合、接着剤層12と偏光子保護フィルム14の接着性がより良好となる点で好ましいが、生産性とコストの点では劣る。
上記ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)で染色して一軸延伸することによって得られる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を任意の適切な方法(例えば、樹脂を水または有機溶媒に溶解した溶液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法)にて製膜することによって得ることができる。
該ポリビニルアルコール系樹脂は、重合度が、好ましくは100〜5000、さらに好ましくは1400〜4000である。また、偏光子に用いられるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さは、偏光板が用いられるLCDの目的や用途に応じて適宜設定され得るが、代表的には5〜80μmである。
本発明の偏光板に設けることができる接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されない。接着剤層を構成する接着剤として、例えば、水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト系接着剤、UV硬化型接着剤などを用いることができる。これらのうち、水系接着剤およびUV硬化型接着剤が好適である。
水系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニルポリマー系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系等を例示できる。このような水系接着剤には、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒も配合することができる。前記水系接着剤としては、ビニルポリマーを含有する接着剤などを用いることが好ましく、ビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。またポリビニルアルコール系樹脂には、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などの水溶性架橋剤を含有することができる。特に偏光子としてポリビニルアルコール系のポリマーフィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤を用いることが、接着性の点から好ましい。さらには、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤が耐久性を向上させる点からより好ましい。前記水系接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。
また前記接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。金属化合物フィラーにより、接着剤層の流動性を制御することができ、膜厚を安定化して、良好な外観を有し、面内が均一で接着性のバラツキのない偏光板が得られる
接着剤層の形成方法は特に制限されない。例えば、上記接着剤を対象物に塗布し、次いで加熱または乾燥することによって形成できる。接着剤の塗布は本発明の偏光子保護フィルムまたは光学フィルムに対して行ってもよいし、偏光子に対して行ってもよい。接着剤層を形成した後、偏光子保護フィルム若しくは光学フィルムと偏光子とを押し合わせることによって両者を積層することができる。積層においてはロールプレス機や平板プレス機などを用いることができる。加熱乾燥温度、乾燥時間は接着剤の種類に応じて適宜決定される。
接着剤層の厚さは、乾燥状態において、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.03〜5μmである。
本発明の偏光板に施すことができる易接着処理は、偏光子保護フィルムと偏光子とが接する面の接着性を向上させるものである。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理等の表面処理が挙げられる。
また、易接着層を設けることも可能である。易接着層としては、としては、例えば、反応性官能基を有するシリコーン層が挙げられる。反応性官能基を有するシリコーン層の材料は、特に制限されないが、例えば、イソシアネート基含有のアルコキシシラノール類、アミノ基含有アルコキシシラノール類、メルカプト基含有アルコキシシラノール類、カルボキシ含有アルコキシシラノール類、エポキシ基含有アルコキシシラノール類、ビニル型不飽和基含有アルコキシシラノール類、ハロゲン基含有アルコキシラノール類、イソシアネート基含有アルコキシシラノール類が挙げられる。これらのうち、アミノ系シラノールが好ましい。シラノールを効率よく反応させるためのチタン系触媒や錫系触媒を上記シラノールに添加することにより、接着力を強固にすることができる。また上記反応性官能基を有するシリコーンに他の添加剤を加えてもよい。他の添加剤としては、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂などの粘着付与剤;紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤等を挙げることができる。また、易接着層として、セルロースアセテートブチレート樹脂をケン化させたものからなる層も挙げられる。
上記易接着層は公知の技術により塗工、乾燥して形成される。易接着層の厚さは、乾燥状態において、好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは10〜50nmである。塗工の際、易接着層形成用薬液を溶剤で希釈してもよい。希釈溶剤は特に制限されないが、アルコール類が挙げられる。希釈濃度は特に制限されないが、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%である。
光学フィルム16は本発明の偏光子保護フィルムであってもよいし、別の任意の適切な光学フィルムであってもよい。用いられる光学フィルムは、特に制限されず、例えば、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、メタクリル樹脂等からなるフィルムが挙げられる。
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネート等が挙げられる。これらのなかでも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、富士フイルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカミノルタ社製の「KCシリーズ」等が挙げられる。
環状ポリオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などが挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、ポリプラスチックス株式会社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」が挙げられる。
本発明のフィルムを除く光学フィルム16を構成するメタクリル樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切なメタクリル樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリメタクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル− メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。
本発明のフィルムを除く光学フィルム16を構成するメタクリル樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A 、特開2013−033237やWO2013/005634号公報に記載のメタクリル酸メチルとマレイミド系単量体を共重合したアクリル樹脂、WO2005/108438号公報に記載の分子内に環構造を有するアクリル樹脂、特開2009−197151号公報に記載の分子内に環構造を有するメタクリル樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高ガラス転移温度(Tg)メタクリル樹脂が挙げられる。
本発明のフィルムを除く光学フィルム16を構成するメタクリル樹脂として、ラクトン環構造を有するメタクリル樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
ラクトン環構造を有するメタクリル樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有するメタクリル樹脂が挙げられる。
本発明の偏光板は、画像表示装置に使用することができる。画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置、液晶表示装置が挙げられる。液晶表示装置は、液晶セルと、当該液晶セルの少なくとも片側に配置された上記偏光板とを有する。
この際、本発明の偏光子保護フィルムは、上記偏光板の少なくとも液晶セル側に設けられることが好ましい。
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、物性値等の測定は以下の方法によって実施した。
(重合転化率)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 Inert CAP 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)を繋ぎ、インジェクション温度を180℃に、検出器温度を180℃に、カラム温度を60℃(5分間保持)から昇温速度10℃/分で200℃まで昇温して、10分間保持する条件に設定して、測定を行い、この結果に基づいて重合転化率を算出した。
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布)
各製造例、実施例および比較例で得られたメタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂のMw、フェノキシ樹脂のMnおよび各樹脂の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値を算出した。ベースラインはGPCチャートの高分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てマイナスからゼロに変化する点を結んだ線とした。
GPC装置:東ソー株式会社製、HLC−8320
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。
溶離剤: テトラヒドロフラン
溶離剤流量: 0.35ml/分
カラム温度: 40℃
検量線:標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成
(三連子表示のシンジオタクティシティ(rr))
メタクリル樹脂の1H−NMRスペクトルを、核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用いて、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、室温、積算回数64回の条件にて、測定した。そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と、0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、次いで、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)を式:(X/Y)×100にて算出した。
(イミド化率)
メタクリル樹脂10mgを重水素化クロロホルム1gに溶解し、室温にて1H−NMRスペクトルを、核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用いて、室温、積算回数64回の条件にて、測定した。得られたスペクトルより、エステル基に帰属されるメチル基の積分強度からイミド基に帰属されるメチル基の積分強度への転換率を用いて、イミド化率とした。
(ガラス転移温度Tg)
メタクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂およびメタクリル樹脂組成物を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所製、DSC−50(品番))を用いて、230℃まで1回目の昇温をし、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で2回目の昇温をさせる条件にてDSC曲線を測定した。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
(熱重量減少率)
メタクリル樹脂組成物を、熱重量測定装置(島津製作所製、TGA−50)を用いて、空気雰囲気下、290℃に加熱し30分経過した時点での熱重量減少率を測定し、耐熱分解性を評価した。
(メルトボリュームフローレート(MVR))
ポリカーボネート樹脂を、JIS K7210に準拠して、300℃、1.2kg荷重、10分間の条件で測定した。
(全光線透過率)
各実施例および比較例で得られた二軸延伸フィルムから試験片を切り出し、その全光線透過率をJIS K7361−1に準じて、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定した。またメタクリル樹脂組成物の評価は、3.2mm厚の成形体を熱プレスにて成形し、同様にして全光線透過率を測定した。
(ヘイズ)
各実施例および比較例で得られた二軸延伸フィルムから試験片を切り出し、そのヘイズをJISK7136に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定した。またメタクリル樹脂組成物の評価は、3.2mm厚の成形体を熱プレスにて成形し、同様にしてヘイズを測定した。
(膜厚方向の位相差(Rth))
各実施例および比較例で得られた二軸延伸フィルムから40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片を、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、40°傾斜方向の位相差値から3次元屈折率nx、ny、nzを求め、厚さ方向位相差Rth=((nx+ny)/2−nz)×dを計算した。試験片の厚さd(nm)は、デジマティックインジケータ(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定し、屈折率nは、デジタル精密屈折計(カルニュー光学工業株式会社 KPR−20)で測定した。
(面内位相差(Re))
各実施例および比較例で得られた二軸延伸フィルムから40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片を、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、面内位相差Reを測定した。
(接着性)
各実施例および比較例で得られた偏光板の、偏光子保護フィルムと接着剤層との接着性を、以下の基準で評価した。この基準において、接着剤層が材料破壊した場合、偏光子保護フィルムと接着剤層との接着性が良いことを示す。
作製した偏光板の偏光子保護フィルムと偏光子をオートグラフで250mm/分の速度で引っ張り、90度剥離試験を実施した。この時、以下の基準で判断をした。
A:接着剤層が材料破壊したフィルムが10サンプル中、5サンプル以上であった。
B:接着剤層が材料破壊したフィルムが10サンプル中、4サンプル以下しか取得できなかった。
(成形体最表面と成形体内部とのシグナル強度の比IY/IX)
飛行時間型二次イオン質量分析計(TOF−SIMS)を用い、フィルムの表面(Y)と当該表層から垂直に成形体内部方向に深さ1μmの位置の深層(X)のフェノキシ樹脂由来のイオン強度比の分析を行った。フェノキシ樹脂に由来するイオンとして、C15H15O−イオン用いた。
フィルムの表面(Y)から厚み方向に10nmまでの層のイオン強度の最大値IY、SAICASを用いて当該表面から1μm切削した層(X)のイオン強度の10回以上測定した平均値IYを用い、フェノキシ樹脂のシグナル強度比IY/IXを算出した。
IY及びIYの測定に際しては、いずれも一次イオン源にはビスマスクラスターイオン源(Bi3 2+)を使用し、電流値0.2ピコアンペア、加速電圧25キロボルトとし、測定モードは高質量分解能モード(バンチングモード)を選択した。スパッタイオン源にはフラーレンイオン源を用い(C60 2+)、電流値1ナノアンペア、加速電圧10キロボルトとした。サイクルタイムは100マイクロ秒とし、質量電荷比約800程度までの2次イオンを取得した。分析の際には128x128ピクセルに測定範囲を区切りイオンビームの照射モードはランダムラスターモードとして測定範囲を走査することとした。深さ方向分析はノンインターレイスドモード(Non Interraced Mode)に設定し、2回イオンビームが測定範囲を走査する(2フレーム)するごとに1回スパッタリングするように設定し測定を実施した(2フレーム/スキャン)。測定時には測定領域の帯電防止のためにフラッドガン(電子銃)から電子ビームを照射しつつ測定した。測定条件は以下の通りとした。
装置:ION−TOF社製 TOF−SIMS5(ファイブ)
スパッタ範囲:300マイクロメートルx300マイクロメートル
2次イオン取得範囲:スパッタ範囲の中央部200x200マイクロメートル
(製造例1)(メタクリル樹脂〔A−1〕の製造)
撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、室温下にて、トルエン290質量部、1,2−ジメトキシエタン14.5質量部、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液13.3質量部、および濃度1.3Mのsec−ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95%、n−ヘキサン5%)1.5質量部を仕込んだ。撹拌しながら、これに、15℃にて、蒸留精製したメタクリル酸メチル100質量部を30分間かけて滴下した。滴下終了後、15℃で90分間撹拌した。溶液の色が黄色から無色に変わった。この時点におけるメタクリル酸メチルの重合転化率は100%であった。
得られた溶液にトルエン270質量部を加えて希釈した。次いで、希釈液をメタノールに注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、Mwが70000で、分子量分布が1.06で、シンジオタクティシティ(rr)が75%で、ガラス転移温度が131℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔A−1〕を得た。
(製造例2)(メタクリル樹脂〔A−2〕の製造)
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0054質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.203質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は48質量%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、Mwが101000で、分子量分布が1.87で、シンジオタクティシティ(rr)が52%で、ガラス転移温度が120℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔A−2〕を得た。
(製造例3)(メタクリル樹脂〔A−3〕の製造)
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0074質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.28質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は52質量%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、Mwが82000で、分子量分布が1.92で、シンジオタクティシティ(rr)が51%で、ガラス転移温度が120℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔A−3〕を得た。
(製造例4)(メタクリル樹脂〔A−4〕の製造)
メタクリル樹脂〔A−1〕60質量部およびメタクリル樹脂〔A−2〕40質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出してメタクリル樹脂〔A−4〕を製造した。
(製造例5)(メタクリル樹脂〔A−5〕の製造)
スクリュー回転数120rpm、温度250℃に設定された二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)に、メタクリル樹脂〔A−3〕を2kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた。ノズルから樹脂100質量部に対して2質量部のモノメチルアミン(イミド化剤:三菱ガス化学株式会社製)を注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のモノメチルアミンを20Torrに減圧されたベント口から排出した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化することにより、メタクリル系樹脂〔A−5’〕を得た。
次いで、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数100rpmに設定された二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)に、ホッパーからメタクリル系樹脂〔A−5’〕を1kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた。ノズルから樹脂100質量部に対して0.8質量部の炭酸ジメチルと0.2質量部のトリエチルアミンの混合液を注入し樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルを20Torrに減圧されたベント口から排出した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化し、酸価を低減したメタクリル系樹脂〔A−5”〕を得た。
さらに、スクリュー回転数100rpm、温度230℃に設定された二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)にメタクリル系樹脂〔A−8”〕を供給量1kg/hrの条件で投入した。ベント口の圧力を20Torrに減圧して未反応の副原料などを含む揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化することにより、メタクリル樹脂〔A−5〕を得た。
メタクリル樹脂〔A−5〕は、イミド化率が3.6モル%、Mwが82000、Mw/Mnが1.95、ガラス転移温度が124℃、酸価が0.27mmol/gであった。
メタクリル樹脂〔A−1〕〜〔A−5〕の主な物性を表1に示す。
使用したフェノキシ樹脂を以下に記載し、物性を表2に示した。
〔B−1〕:新日鉄住金化学社製、YP-50S(品番)
〔B−2〕:InChem社製、PKFE(品番)
使用したポリカーボネート樹脂を以下に記載し、物性を表3に示した。
〔C−1〕:住化スタイロンポリカーボネート社製、カリバー 301−40(品番)、MVR(300℃、1.2Kg)=40cm3/10分
〔C−2〕PC3:住化スタイロンポリカーボネート社製、SD POLYCA TR−2201(品番)、MVR(300℃、1.2Kg)=210cm3/10分
使用した紫外線吸収剤を以下に記載した。
〔D−1〕:2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA社製;LA−F70)
〔D−2〕:2,2‘−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェノール](ADEKA社製;LA−31)
その他の重合体としてアクリル系ブロック重合体を使用した。
(製造例6) (ブロック共重合体〔E−1〕の製造)
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン1885質量部と、1,2−ジメトキシエタン94質量部と、濃度0.45Mイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液101質量部とを入れた。これにsec−ブチルリチウム0.13質量部を加えた。さらにこれにメタクリル酸メチル100質量部を加え、室温で1時間反応させてメタクリル酸メチル重合体〔c11〕を得た。反応液に含まれるメタクリル酸メチル重合体〔e11〕の重量平均分子量Mwe11は45800であった。
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル74.4質量部とアクリル酸ベンジル25.6質量部との混合液を0.5時間かけて滴下して、メタクリル酸メチル重合体〔e11〕の末端から重合反応を継続させて、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔e11〕とアクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔e2〕とからなるジブロック共重合体〔E−1〕を得た。反応液に含まれるブロック共重合体〔E−1〕は、重量平均分子量MwCB−1が92000、重量平均分子量MwCB−1/数平均分子量MnE−1が1.06であった。メタクリル酸メチル重合体〔e11〕の重量平均分子量が45800であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルからなるアクリル酸エステル重合体〔e2〕の重量平均分子量を46200と決定した。アクリル酸エステル重合体〔e2〕に含まれるアクリル酸ベンジルの割合は25.6質量%であった。
続いて、反応液にメタノール7質量部を添加して重合を停止させた。その後、反応液を大量のメタノールに注ぎジブロック共重合体〔E−1〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥させた。アクリル酸エステル重合体ブロック〔e2〕の質量に対するメタクリル酸エステル重合体ブロック〔e11〕の質量の比は50/50であった。
(製造例7) (ブロック共重合体〔E−2〕の製造)
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン3510質量部と、1,2−ジメトキシエタン175質量部と、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液90質量部とを入れた。これにsec−ブチルリチウム0.20質量部を加えた。さらにこれにメタクリル酸メチル100質量部を加え、室温で1時間反応させてメタクリル酸メチル重合体〔e11〕を得た。反応液に含まれるメタクリル酸メチル重合体〔e11〕の重量平均分子量Mwe11は10000であった。
次いで、反応液を−30℃にし、アクリル酸n−ブチル337質量部を0.5時間かけて滴下することによって、メタクリル酸メチル重合体〔e11〕の末端から重合反応を継続させて、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔e11〕とアクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔e2〕とからなるジブロック共重合体を得た。反応液に含まれるジブロック重合体の重量平均分子量は44000であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック〔e11〕の重量平均分子量が10000であったので、アクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔e2〕の重量平均分子量を34000と決定した。アクリル酸エステル重合体〔e2〕に含まれるアクリル酸ベンジルの割合は0質量%であった。
続いて、メタクリル酸メチル240質量部を添加して、反応液を室温に戻し、8時間攪拌することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック〔e2〕の末端から重合反応を継続させて、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔e11〕とアクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔e2〕とメタクリル酸メチル重合体ブロック〔e12〕とからなるトリブロック共重合体〔E−2〕を得た。
その後、反応液にメタノール7質量部を添加して重合を停止させた。その後、反応液を大量のメタノールに注ぎトリブロック共重合体〔E−2〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥させた。トリブロック共重合体〔E−2〕は重量平均分子量MwE−2が68000、MwE−2/MnE−2が1.08であった。ジブロック共重合体の重量平均分子量が44000であったので、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔e12〕の重量平均分子量を24000と決定した。アクリル酸エステル重合体ブロック〔e2〕の質量に対するメタクリル酸エステル重合体ブロック〔e11〕と〔e12〕の合計質量の比は50/50であった。
ブロック共重合体〔E−1〕〜〔E−2〕の物性を表4に示す。
使用した高分子加工助剤を以下に記載した。なお、ここでMMAはメタクリル酸メチルに由来する構造単位を意味し、BAはアクリル酸ブチルに由来する構造単位を意味する。
F−1:株式会社三菱レイヨン社製メタブレンP550A(平均重合度:7734、MMA88質量%/BA12質量%)
F−2:株式会社クレハ社製パラロイドK125P(平均重合度:19874、MMA79質量%/BA21質量%)
(製造例8)
メタクリル樹脂〔A−1〕100質量部、フェノキシ樹脂〔B−1〕4質量部、加工助剤〔F−1〕2質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出してメタクリル樹脂組成物〔1〕を製造した。
(製造例9〜17)
表5に示す配合とする以外は製造例8と同じ方法でメタクリル樹脂組成物〔2〕〜〔10〕を製造した。
(実施例1)
メタクリル樹脂組成物〔1〕を、80℃で12時間乾燥させた。20mmφ単軸押出機(OCS社製)を用いて、シリンダー温度260℃±0.2℃にて、メタクリル樹脂組成物〔1〕を150mm幅のTダイから押し出した。それを各々表面温度85℃のロール2本にて引き取り、幅110mm、厚さ160μmのフィルムを得た。製造されたフィルムについての全光線透過率、380nm透過率、ヘイズ、熱重量減少率、接着性およびガラス転移温度を測定した。得られたフィルムの物性を表6に示す。
前記の手法にて得られた厚さ160μmのフィルムを、二辺が押出方向と平行となるように100mm×100mmの小片に切り出し、パンタグラフ式二軸延伸試験機(東洋精機(株)製)により、ガラス転移温度+10℃の延伸温度、一方向150%/分の延伸速度、一方向2倍の延伸倍率で押出方向と平行な方向を先に、次いでその垂直方向という順に逐次二軸延伸し(面積比で4倍)、10秒間保持の条件で延伸し、次いで室温下に取り出すことで急冷して、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムについての位相差(Re、Rth)および接着性の測定結果を表6に示す
(実施例2)
メタクリル樹脂組成物〔1〕を、80℃で12時間乾燥させた。 住友重機械工業株式会社製射出成形機:SE−180DU−HPを用いて、メタクリル樹脂組成物〔1〕を、シリンダ温度280℃、金型温度75℃、成形サイクル1分で射出成形して、長さ110mm、幅110mm、厚さ500μmのフィルムを製造した。製造されたフィルムについての全光線透過率、380nm透過率、ヘイズ、熱重量減少率、接着性およびガラス転移温度を測定した。得られたフィルムの物性を表6に示す。
前記の手法にて得られた厚さ500μmのフィルムを、二辺が押出方向と平行となるように100mm×100mmの小片に切り出し、パンタグラフ式二軸延伸試験機(東洋精機(株)製)により、ガラス転移温度+10℃の延伸温度、一方向150%/分の延伸速度、一方向2倍の延伸倍率で押出方向と平行な方向を先に、次いでその垂直方向という順に逐次二軸延伸し(面積比で4倍)、10秒間保持の条件で延伸し、次いで室温下に取り出すことで急冷して、厚さ125μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムについての位相差(Re、Rth)および接着性の測定結果を表6に示す。
(実施例3〜9、比較例1および2)
メタクリル樹脂組成物〔1〕の代わりにメタクリル樹脂組成物〔2〕〜〔10〕を用いた以外は実施例1と同じ方法でフィルム並びに二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表6に示す。
(比較例3)
メタクリル樹脂組成物〔4〕を、80℃で12時間乾燥させた。油圧成形機(東邦マシナリー(株)製)を用いて、250℃にて3分間予熱し、50kg/cm2にてプレス成形して110mm×110mm、厚さ160μmのフィルムを製造した。製造されたフィルムについての全光線透過率、380nm透過率、ヘイズ、熱重量減少率およびガラス転移温度を測定した。得られたフィルムの物性を表6に示す。
<偏光子の作製と接着性評価>
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬して膨潤させた。次いで、0.3重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=0.5/8)の30℃のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3.5倍まで延伸した。その後、65℃の4重量%のホウ酸水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。延伸後、70℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ22μmの偏光子を得た。
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製)38.3質量部、トリプロピレングリコールジアクリレート(商品名:アロニックスM−220,東亞合成社製)19.1質量部、アクリロイルモルホリン(興人社製)38.3部、および光重合開始剤(商品名:KAYACURE DETX−S,ジエチルチオキサントン,日本化薬社製)1.4質量部を混合して50℃で1時間撹拌して活性エネルギー線硬化型接着剤を得た。
実施例、比較例で得られたフィルム(以下、フィルムaという。)および二軸延伸フィルムにコロナ放電処理を施した。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を、フィルムaのコロナ処理面に、乾燥後の厚さが500nmとなるように塗布して、接着剤層を形成させた。
接着強さを評価するため、偏光子の片面に、接着剤層を偏光子側に向けて、前記フィルムaを、小型ラミネーターを用いて重ね合わせた。両面からIRヒーターを用いて50℃に加温し、積算照射量1000mJ/cm2の紫外線を両面に照射して、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させ、偏光子の片面にフィルムaを積層してなる偏光板を得た。
得られた偏光板を100mm×10mmに切り出し、オートグラフを用いて接着性の評価を行った。結果を表6に示す