以下、図1〜9を参照して、本発明の燃料タンク用弁装置の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。
図1,2に示すように、この燃料タンク用弁装置10(以下、「弁装置10」という)は、第1フロート弁40が収容される第1ケーシング20と、その下方に装着される第1キャップ27と、第2フロート弁45が収容される第2ケーシング30と、その下方に装着される第2キャップ35と、前記第1ケーシング20及び第2ケーシング30の上方に装着されて両者を連結すると共に、天井壁61,62を設けたカバー部材50とから構成されるハウジング15を有している。
まず、第1ケーシング20、第2ケーシング30、及び、それらに収容される第1フロート弁40、第2フロート弁45等について説明する。
第1ケーシング20は、下方が開口した円筒状をなし、通孔21aが形成された周壁21を有している。また、第1ケーシング20の上方には、第1開口23が形成された第1仕切壁22が設けられている。この第1仕切壁22の上面であって、第1開口23の外周には、環状突部22aが突設されている。また、第1ケーシング20の周壁21の所定箇所には、複数の取付ブラケット24が設けられており、該取付ブラケット24に燃料タンクに設けられた図示しない係止片が係合することで、図示しない燃料タンクに第1ケーシング20が取付けられるようになっている。
更に、第1仕切壁22の上面であって、前記環状突部22aの内側からは、筒状をなした筒状壁25が立設している。なお、図2に示すように、この筒状壁25は、第1ケーシング20にカバー部材50が装着された状態で、後述するカバー部材50の第1天井壁61の内面に当接しない高さで立設している。また、この筒状壁25の所定位置には、同第1筒状壁25の内部空間に連通する切欠き25aが、軸方向に沿って形成されている(図1参照)。更に、筒状壁25の切欠き25aの周縁からは、外径方向に向かって次第に広がるリブ25b,25bが立設されており、第1仕切壁22の上面に溜まった燃料を、第1筒状壁25内に戻しやすくしている。
上記第1ケーシング20の下方開口部には、底面に通孔27aを設けた第1キャップ27が装着されており、それによって、第1仕切壁22の下方に、第1フロート弁40を収容する第1弁室V1が画成される(図2参照)。第1キャップ27の通孔27a及び前記第1ケーシング20の通孔21aにより、第1弁室V1が燃料タンク内に連通している。
第1弁室V1内には、第1キャップ27との間に第1スプリングS1を介在させて、第1フロート弁40が昇降可能に収容されている。この第1フロート弁40の上方には、揺動可能な弁頭41が装着されている(図2参照)。
一方、第2ケーシング30は、下方部分が拡径し上方部分がそれよりも縮径した円筒状をなし、通孔31aが形成された周壁31を有している。この第2ケーシング30は、第1ケーシング20よりも小径で長さも短くなっている。また、周壁31の縮径した上方部分の外周には、シールリング34が装着され(図2参照)、同周壁31の拡径した下方部分の外周には、一対の係止爪31b,31bが設けられている(図1参照)。
更に第2ケーシング30の上方には、第2開口33が形成された第2仕切壁32が設けられている。図2に示すように、この第2仕切壁32は、前記第1仕切壁22よりも高い位置に形成されている。なお、この第2仕切壁32と前記第1仕切壁22とが、本発明における「仕切壁」をなしている。
上記第2ケーシング30の下方開口部には、底面に通孔35aを設けた第2キャップ35が装着されており、それによって、第2仕切壁32の下方に、第2フロート弁45を収容する第2弁室V2が画成される(図2参照)。なお、この第2弁室V2及び前記第1弁室V1が、本発明における「弁室」をなしている。第2キャップ35の通孔35a及び前記第2ケーシング30の通孔31aにより、第2弁室V2が燃料タンク内に連通している。
第2弁室V2内には、第2キャップ35との間に第2スプリングS2を介在させて、第2フロート弁45が昇降可能に収容されている。この第2フロート弁45の上方には、弁頭46が設けられている。
図2に示すように、第1フロート弁40又は第2フロート弁45は、燃料が浸漬していない状態では、その自重により各スプリングS1,S2を圧縮して、各キャップ27,35上に載置され、第1開口23や第2開口33が開いた状態に保持される。
上記状態で、燃料タンク内の燃料液面が上昇し、各フロート弁40,45が燃料に浸漬されると、各スプリングS1,S2の付勢力及び各フロート弁40,45自体の浮力により、各フロート弁40,45が上昇するようになっている(図8及び図9参照)。
そして、第1フロート弁40は、燃料タンク内の液面が設定された満タン液面に達すると、第1開口23を閉塞して、それ以上の過給油を防止する満タン規制弁をなし、第2フロート弁45は、燃料の揺動等によって燃料タンク内の液面が異常に上昇したときに、第2開口33を閉塞して、燃料の外部漏出を防ぐ燃料流出防止弁をなしている。
また、図2に示すように、前記第2ケーシング30の周壁31の縮径した上方部分の内側には、負圧弁37aを有するチェック弁37が収容されている。このチェック弁37は、燃料タンク内の圧力上昇時に第2開口33を開いて、燃料蒸気を燃料タンク外に排出し、一方、燃料タンク内の圧力低下時には、負圧弁37aが開いて、外部空気を燃料タンク内に流入する。
次に、上記第1ケーシング20及び第2ケーシング30の上方に装着されて、両者を互いに連結して一体化させる、カバー部材50について説明する。
図1に示すように、このカバー部材50は、略円筒状をなす第1筒部51と、同じく略円筒状をなす第2筒部52と、両筒部51,52どうしを接続する略角筒状をなした連結部53とを有している。また、連結部53内には、第1筒部51内に形成される後述の第1通気室R1と、第2筒部52内に形成される後述の第2通気室R2とを連通させる、連通路R3が設けられている。
なお、図4においては、第2開口33及び第1開口23は図示されていないが、これらがあるものとした場合に、第2開口33側から第1開口23側へ向かう経路が符号Pで図示される。前記連通路R3は、この経路Pに沿って直線状に延びている。
そして、第1筒部51の上方に、円板状をなした第1天井壁61が配置され、第2筒部52の上方に、円板状をなした第2天井壁62が配置されている。これらの第1天井壁61及び第2天井壁62が、本発明における「天井壁」をなしている。また、この実施形態では、第1天井壁61及び第2天井壁62は、カバー部材50と一体形成されているが、別体としてもよい。なお、この実施形態では、第1天井壁61の方が、第2天井壁62よりも拡径している。
また、前記第1筒部51の下方開口部の周縁からは、外径方向に向けて環状のフランジ部55が延設されている。このフランジ部55を、第1ケーシング20の第1仕切壁22の外周縁部に溶着させることで、第1ケーシング20とカバー部材50とが連結される。この状態では、図2及び図5に示すように、第1筒部51の内側に、筒状壁25が同心状に配置されると共に、同第1筒部51の下方開口部に、第1開口23を有する第1仕切壁22が配置される。
更に、第2筒部52の下方開口部の周縁から下方に向けて、一対の係止片56,56が垂設されている。そして、第2筒部52内に、第2ケーシング30の周壁31の縮径した上方部分を挿入し、その一対の係止爪31b,31bを、前記一対の係止片56,56の係止孔56a,56aに係止させることで(図4参照)、第2ケーシング30が、シールリング34を介して気密的にカバー部材50に連結される(図2参照)。
なお、各ケーシング20,30と、カバー部材50との連結構造は、上記態様に限定されるものではなく、公知の様々なものを採用することができる。
上記カバー部材50は、上記のように各ケーシング20,30が連結されることで、各筒部51,52の下方開口が各仕切壁22,32により覆われ、上方開口が第1天井壁61及び第2天井壁62で覆われる。それによって、第1筒部51内に設けられ前記第1弁室V1の上方に配置された第1通気室R1と、第2筒部52内に設けられ前記第2弁室V2の上方に配置された第2通気室R2と、第1通気室R1と第2通気室R2とに連通する前記連通路R3とからなる、本発明における「通気室」が画成される。なお、本実施形態においては、図2に示すように、第1弁室V1及び第2弁室V2が水平方向に並んで(横並びに)配置されている。
ところで、燃料タンク内に燃料が所定量貯留され、満タン規制弁たる第1フロート弁40が上昇して第1開口23を閉塞した状態では(図8参照)、燃料タンク内の燃料蒸気や空気等は、主として、第2弁室V2、第2開口33、第2通気室R2、連通路R3を順次通過して、第1通気室R1へと流動するようになっており、この流路をエバポラインとする。
また、図3及び図4に示すように、第1筒部51の内周からは、内径方向に向けて突出壁部57が突出しており、該突出壁部57に、第1通気室R1の内部と外部とを連通させる、燃料蒸気排出口58(以下、「排出口58」という)が形成されいいる。この実施形態では、第1筒部51の内周であって、前記連通路R3の流出口とは周方向に対向する位置に、第1通気室R1に連通するように排出口58が設けられている。なお、排出口58の形成位置は特に限定されない。
更に、第1筒部51の外周であって、前記排出口58の外周縁からは、燃料タンク外に配置される配管との接続用の、燃料蒸気配管59(以下、「配管59」という)が延設されている。この実施形態の配管59は、前記経路P(図4参照)の延長線上に配置される。なお、配管59は、前記経路Pに対して所定角度で屈曲していてもよく、特に限定はされない。
また、燃料タンク内への給油時に燃料タンク外へと排出される、燃料タンク内の空気や燃料蒸気は、主として、第1弁室V1、第1開口23を通過して、第1通気室R1に流入し、更に排出口58から配管59へと流入して、配管59に接続されたキャニスタ等へ排出されるようになっており、この流路をベントラインとする。
そして、図3に示すように、この実施形態の弁装置10は、天井壁(ここでは第1天井壁61)に爪部66,66を有する一対の軸部65,65が形成されていると共に、該第1天井壁61とは別体で形成された壁部材70を有している。また、この壁部材70は、第2開口33から通気室へ向かうのを遮るように配置されると共に、第1天井壁61に対して隙間C1を介して取付けられるようになっている(図2参照)。
図6に示すように、この実施形態の壁部材70は、第1天井壁61に対して隙間C1を介して対向配置される基部71を有しており、この基部71が、第1天井壁61に後述する係合手段を介して係合するようになっている。
この実施形態における基部71は、一方向に長く伸びる長板状をなしていると共に、所定間隔をあけて、長孔状をなした一対の貫通孔76,76が形成されている。なお、各貫通孔76は、その長軸側が、底壁72の長手方向に直交して配置されている(図6(b)参照)。
これらの一対の貫通孔76,76に、第1天井壁61から延設した一対の軸部65,65が挿通されると共に、軸部先端に設けられた爪部66,66が、貫通孔76,76の裏側周縁に係合するようになっている(図7参照)。
すなわち、この実施形態では、貫通孔76と、爪部66とが、本発明における「係合手段」をなしている。また、基部71の、第1天井壁61とは反対側の面、すなわち、貫通孔76の裏側の面が、第1天井壁61側に設けた爪部66,66に係合する係合面76aをなしている。
なお、「係合手段」としては、上記形状に限定されるものではなく、天井壁に対して壁部材を係合可能であればよい。例えば、爪部を壁部材に設け、貫通孔を天井壁側に設けたり(これについては後述する)、係合片を、溝や凹部、係合突起等に係合させたり、係合片どうしで係合させたりしてもよい。
各貫通孔76の内周は、軸部65の外周よりも大きく形成されており、貫通孔76に軸部65が挿通された状態で、貫通孔76の内周に間隙Eが形成されるようになっている(図7参照)。したがって、軸部65を伝って流れる燃料を、貫通孔76及び間隙Eを通じて、貫通孔76の裏側へ落下させることが可能となっている(図7参照)。
また、前記基部71には、係合手段との係合面71aよりも、天井壁側に向けて立壁73,74が立設されている。具体的には、基部71の天井壁側の面であって、長手方向に沿った両側縁部から、互いに平行となるように一対の立壁73,74が立設されている。そして、基部71が天井壁に対して係合手段(貫通孔76及び爪部66)を介して係合したときに、一対の立壁73,74の立設方向の先端が、第1天井壁61の内面に対して近接して配置されて、所定の隙間C1が形成されるようになっている(図2参照)。
更に、この実施形態における壁部材70は、基部71と、一対の立壁73,74との間に、内部空間が形成されると共に、上方側(基部71から離反した側)に開口が設けられ、長手方向両側に内部空間に連通する側孔75,75が形成された、断面略コ字形の長枠状をなしている。
更に、前記立壁74の立設方向の先端部であって、その長さ方向中央には、後述する第2リブ69が挿入されるリブ挿入溝74aが形成されている。
また、前記基部71の係合面71a側であって、前記立壁73に整合する長手方向に沿った一側縁部からは、天井壁とは離れる方向に向けて、長板状の燃料阻止壁78が垂設されている。図2に示すように、この燃料阻止壁78は、天井壁に係合手段を介して壁部材70を取付けたときに、前記軸部65の先端よりも突出し、かつ、同軸部65よりも、前記排出口58寄りに配置されている。
なお、本発明における壁部材としては、上記構造に限定されるものではない。例えば、単に板状の基部だけとしたり、基部の一側縁から1つの立壁を垂設させた、断面略L字状をなしていたり、或いは、長方形のブロック状等をなしていたりしてもよく、天井壁に対して隙間を介して取付けることが可能であれば、その形状や構造は特に限定されない。
再び、ハウジング15側の説明に戻ると、図3及び図4に示すように、前記第1天井壁61の内面のほぼ中央からは、壁部材70の一対の貫通孔76,76に対して、所定の間隙Eを介して挿通される、一対の軸部65,65が延設されている。また、これらの一対の軸部65,65は、前記連通路R3の流出口と、前記排出口58との間に配置されていると共に、第1通気室R1内であって、かつ、前記第1ケーシング20の筒状壁25内に配置されるようになっている(図2参照)。
この実施形態における一対の軸部65,65は、前記壁部材70の長孔状をなした貫通孔76,76に対応して、第1天井壁61の内面から撓み可能に長板状に垂設されている。また、一対の軸部65,65の延出方向の先端内面からは、互いに近接する方向に向けて爪部66,66がそれぞれ突設されている。各爪部66,66は、先端側に向けて高さが次第に低くなるテーパ面66a,66aが形成されていると共に、基部側に前記天井壁に対して平行な平坦面状をなした係合面66b,66bが形成されている。
更に図2に示すように、第1天井壁61の内面から軸部65の係合面66bまでの長さL1は、前記壁部材70における基部71の係合面76a(貫通孔76の裏面)から立壁73,74の先端面までの長さL2よりも大きくなるように設定されている。
そして、図2、図3(a)及び図7に示すように、これらの一対の軸部65,65が、壁部材70の基部71の一対の貫通孔76,76に挿通されると共に、その爪部66,66の係合面66b,66bが、貫通孔76,76の裏側周縁の係合面76a,76aに係合したとき、すなわち、壁部材70の基部71が天井壁に対して係合手段を介して係合したときに、前記一対の立壁73,74の立設方向の先端が、第1天井壁61の内面に対して近接して配置されて、所定の隙間C1(図2参照)が形成され、それによって、第1天井壁61に対して所定の隙間C1を介して壁部材70が取付けられるようになっている。この隙間C1によって、天井壁を伝って流れる燃料を捕捉可能となっている。
このときの隙間C1は、3mm以下であることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがより好ましい。
なお、軸部は一対でなくてもよく、1つでも2つ以上でもよい。また、軸部の形状や構造としては、壁部材の貫通孔に挿通されるか、又は、軸方向から見て、軸部が貫通孔の内径側に位置していればよく、特に限定はされない。この実施形態では、軸部に係合面を設けたが、軸部と異なる位置に係合面を設けてもよい。更に、この実施形態では、天井壁側の軸部65の爪部66と壁部材70の貫通孔76との機械的な係合によって、天井壁に壁部材70を取付けているが、例えば、接着や溶着等によって壁部材を天井壁に対して取付けてもよく、天井壁への壁部材の取付け時に、天井壁と壁部材との間に隙間を形成することができれば、どのような取付方法でも構わない。
また、図3(a)、図4及び図5に示すように、第1天井壁61には、壁部材70が取付けられた状態で、壁部材70の基部71の側孔75,75から、その内部空間に入り込む、一対の第1リブ68,68が延出している。
この実施形態における一対の第1リブ68,68は、第2開口33側から第1開口23側へ向かう経路P(図4参照)に対して直交するように、第1天井壁61の内面から突設した、直線状に延びるリブ状をなしており、その長手方向一端が前記一対の軸部65,65の外側面に連結され、長手方向他端が、カバー部材50の第1筒部51の対向する内周面にそれぞれ連結されている。すなわち、第1天井壁61の内面における、各軸部65の外側面と第1筒部51の内周面との間が、第1リブ68によって遮断された構造となっている。
これらの第1リブ68,68は、天井壁に付着した燃料が排出口58へ向かうのを遮ると共に、同燃料を一対の軸部65,65側へと導くものである(図4の矢印F4参照)。なお、第1リブ68は、軸部65の外側面や第1筒部51の内周面に連結されていなくてもよく、天井壁に壁部材70が取付けられた状態で、壁部材70の基部71の側孔75,75から内部空間に入り込むことが可能であれば、どのような形状でもよい。
更に、図2及び図3(a)に示すように、第1天井壁61には、第2仕切壁32に形成した第2開口33側から、壁部材70に向けて延びる第2リブ69が形成されている。
この実施形態の第2リブ69は、第2開口33が形成された第2通気室R2に連通する、略角筒状をなした連結部53の流出口の周縁部から、前記第1天井壁61の内面に沿って、軸部65により取付けられる壁部材70に向けて、前記経路P(図4参照)に沿って直線状に延出する薄肉リブ状をなしており、その先端部は、前記一対の軸部65,65の間に入り込むように延びている(図2及び図3(a)参照)。
この第2リブ69は、第2開口33側から連結部53の流出口を介して第1通気室R1側に流出した燃料を、壁部材70側や一対の軸部65,65側へと導く役割をなすものである。なお、この第2リブ69は、一対の軸部65,65の間に至るまで延びていなくてもよく、壁部材70側に向けて延びていれば、どのような形状であっても構わない。
また、図7に示すように、軸部65の爪部66によって、第1天井壁61に対して隙間C1を介して、壁部材70が取付けられた状態で、更に、壁部材70の基部71の底壁72の内面と、第1リブ68との間にも、隙間C2が形成されるようになっている。更に、図2に示すように、軸部65の爪部66によって、第1天井壁61に対して隙間C1を介して、壁部材70が取付けられた状態で、壁部材70の立壁74のリブ挿入溝74aの内面と、第2リブ60との間にも、隙間C3が形成されるようなっている。これらの隙間C2やC3によっても、第1リブ68や、第2リブ69、軸部65を伝って流れる燃料を捕捉可能となっている。
なお、この実施形態においては、天井壁に対して、壁部材70は、その全域に亘って隙間を介して取付けられているが(図2及び図7参照)、部分的に隙間を設けて、他の部分は天井壁に当接させてよい。
次に、上記構成からなる本発明の弁装置10の作用効果について説明する。
まず、カバー部材50の天井壁への壁部材70の取付け方法について説明する。図3(a)に示すように、壁部材70の燃料阻止壁78を排出口58側に向けると共に、一対の貫通孔76,76を、天井壁から垂設した一対の軸部65,65に整合させて、この状態で天井壁に対して壁部材70を近接する方向に押し込む。すると、テーパ面66a,66aを介して爪部66,66が押圧されて、一対の軸部65,65が押し広げられていき、爪部66,66の頂部(外向きに最も出っ張った部分)が、貫通孔76,76を通過して裏側に至ると、一対の軸部65,65が弾性復帰して、爪部66,66の係合面66b,66bが貫通孔76,76の裏側の係合面76a,76aに係合し、第1天井壁61に対して所定の隙間C1を介して壁部材70を取付けることができる(図3(b)及び図7参照)。
そして、図2に示すように、燃料タンク内への燃料が十分に給油されておらず、第1フロート弁40又は第2フロート弁45が燃料に浸漬していない状態では、第1開口23や第2開口33が開いている。
この状態で燃料タンク内に燃料が給油されると、前記ベントライン(第1弁室V1、第1開口23、第1通気室R1、排出口58、配管59)を通って、燃料タンク内の空気や燃料蒸気が燃料タンク外のキャニスタ等に排出される。
そして、燃料タンク内に燃料が給油されて、燃料タンク内の燃料液面が上昇すると、燃料が、第1キャップ27の通孔27aや第1ケーシング20の通孔21aを通って第1弁室V1内に流入し、第1フロート弁40に燃料が所定高さ以上浸漬すると、第1スプリングS1及び第1フロート弁40自体の浮力により、第1フロート弁40が浮き上がり、図8に示すように、弁頭41が第1仕切壁22の第1開口23を閉塞するので、燃料タンク内の空気や燃料蒸気の排出量が低下して、それ以上の燃料給油を防止することができる。
また、車両が旋回したり大きく傾いたりして、燃料タンク内の燃料液面が上昇すると、燃料が、第2キャップ35の通孔35aや第2ケーシング30の通孔31aを通って第2弁室V2内に流入し、第2フロート弁45に燃料が所定高さ以上浸漬すると、第2スプリングS2及び第2フロート弁45自体の浮力により、第2フロート弁45が浮き上がり、図9に示すように、弁頭46が第2仕切壁32の第2開口33を閉塞するので、燃料が第2開口33を通って第2通気室R2内に流入することが阻止されて、燃料タンク外への燃料漏れを防止することができる。
ところで、車両が悪路を走行して上下に振動したり左右に揺動したり、或いは、急旋回したりすると、燃料や燃料の飛沫が、第2開口33から第2通気室R2内に勢いよく流入することがある。そして、第2通気室R2内に流入した燃料は、連結部53内の連通路R3を通り、その流出口から第1通気室R1内に入り込む。その後、第1通気室R1内に流入した燃料は、第1仕切壁22上に自然落下して切欠き25aを通じて、第1開口23に流入して燃料タンク内に戻される場合もあるが、多くの燃料は、第1天井壁61に付着したり貼り付いたりして、第1天井壁61を伝って排出口58側へと流れる(図2の矢印F1参照)。
このとき、この弁装置10においては、第1天井壁61とは別体の壁部材70を設け、該壁部材70が、第2開口33から第1通気室R1側へ流出した燃料が、キャニスタ側に連通する排出口58へ向かうのを遮るように配置されると共に、第1天井壁61に対して隙間C1を介して取付けられている(図2参照)。そのため、燃料が排出口58へ向かうのを、壁部材70で遮ることができると共に、第1天井壁61を伝って流れる燃料を、第1天井壁61と壁部材70との隙間C1によって、いわゆる毛細管現象のように吸引されるようにして、捕捉しやすくすることができ、排出口58からの燃料漏れを効果的に抑制することができる。
このとき、この実施形態においては、基部71が第1天井壁61に対して係合手段(貫通孔76及び爪部66)を介して係合したときに、一対の立壁73,74の立設方向の先端が、第1天井壁61の内面に対して近接して配置されて、所定の隙間C1が形成されるようになっているので(図2参照)、立壁73,74のスペースを用いて、係合手段を形成しやすくなると共に、天井壁と壁部材との隙間を確実に形成することができ、燃料をより確実に捕捉することができ、また、立壁73,74によって燃料流出も抑制することができる。
また、この実施形態においては、壁部材70の基部71から燃料阻止壁78が設けられているので、この燃料阻止壁78によって、排出口58側へ流れようとする燃料を遮って、燃料が排出口58側へ流れることを更に抑制することができる。
更に、この実施形態においては、図7に示すように、壁部材70は貫通孔76が形成された基部71を有し、第1天井壁61からは、壁部材70の貫通孔76に所定間隙Eを介して挿通される軸部65が延設されている。そのため、第1天井壁61に付着した燃料が、図7の矢印F2に示すように、軸部65を伝わって、貫通孔76及び所定間隙Eを通って、貫通孔76の裏側から落下させやすくすることができる。その結果、燃料を燃料タンク内に戻しやすくすることができると共に、排出口58への流入を抑制することができる。
また、この実施形態においては、前記係合手段は、壁部材70の基部71に形成された貫通孔76と、天井壁から延設した軸部65の先端側に設けられて、貫通孔76の裏側の係合面76aに係合する爪部66とからなるので、軸部65の撓み代を確保しやすくすることができると共に、天井壁と壁部材との隙間を、爪部66が貫通孔76の裏側に係合するときに、爪部66を貫通孔76の裏側に係合させやすくすることができ(オーバーストロークとして利用できる)、壁部材70を天井壁に装着しやすくすることができる(隙間がないと、貫通孔76に軸部65を挿通させて、爪部66が貫通孔76の裏側を乗り越えるときに、立壁73,74が天井壁にぶつかり、係合させにくくなる)。
更に、この実施形態においては、第1天井壁61には、壁部材70が取付けられた状態で、壁部材70の基部71の側孔75,75から、その内部空間に入り込む、一対の第1リブ68,68が延出している(図4参照)。そのため、図4の矢印F3に示すように、第1天井壁61に付着した燃料が、壁部材70を回りこんで、排出口58側へ流動しようとしても、第1リブ68によって阻止されると共に、燃料が第1リブ68を伝って、壁部材70の内部空間へと導いて(図4の矢印F4参照)、貫通孔76から落下させることができる。その結果、燃料タンク内に燃料を戻しやすくして、排出口58への燃料の流入を抑制することができる。
また、この実施形態においては、壁部材70の基部71から燃料阻止壁78が設けられており、この燃料阻止壁78は、第1天井壁61に壁部材70を取付けたときに、軸部65の先端よりも突出し、かつ、同軸部65よりも、排出口58寄りに配置されているので(図2参照)、第1天井壁61及び軸部65を伝って流れる燃料を、燃料阻止壁78で遮って(図2の矢印F5参照)、排出口58側へ流れることを抑制することができる。
更に、この実施形態においては、第1天井壁61には、第2開口33側から壁部材70に向けて延びる第2リブ69が形成されているので、第2開口33から第2通気室R1に流出し且つ連通路R3の流出口から第1通気室R1内に流入した燃料が、第2リブ69を伝って流れて、壁部材70側へと流れるため、排出口58への燃料の流入を抑制することができる。
また、この実施形態においては、軸部65は、第1天井壁61から垂設された一対のものからなり、第1リブ68は、一対の軸部65,65の外側面に連結された一対のものからなり、第2リブ69は、一対の軸部65,65の間に入り込むように延びている。そのため、第1天井壁61に付着した燃料を、一対の第1リブ68,68を介して一対の軸部65,65へと導くことができると共に、第2開口33から第2通気室R1に流出し且つ連通路R3の流出口から第1通気室R1内に流入した燃料は、第2リブ69を介して一対の軸部65,65の間へと導くことができ、排出口58への燃料の流入をより効果的に抑制することができる。
図10〜13には、本発明の燃料タンク用弁装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態の燃料タンク用弁装置10A(以下、「弁装置10A」)は、天井壁と壁部材との係合構造が異なっている。
すなわち、図10に示すように、第1天井壁61の内面に対して所定間隔をあけて対向配置された長板状の支持壁80と、該支持壁80の長手方向に直交する両側縁部から立設して、第1天井壁61の内面に連結した一対の側壁81,81とが形成されている。一対の側壁81,81の外側面から前記一対の第1リブ68,68が延設されており、また、第2リブ69が、支持壁80及び側壁81,81で形成された空間内に至るように延出している。また、前記支持壁80には、長孔状をなした一対の貫通孔82,82が形成されている。この貫通孔82の表側の面が、後述する壁部材70Aの爪部79が係合する係合面82aをなしている。
一方、図10及び図11に示すように、この実施形態の壁部材70Aは、基部71に一対の切欠き孔71a,71aが形成されており、該切欠き孔71aを介して、天井壁側に向けて一対の軸部77,77が立設されており、該一対の軸部77,77の先端外面からは、上方にテーパ面79aを有し、下方側に平坦な係合面79bを有する、爪部79,79が突設されている。なお、各爪部79の係合面79bが、前記貫通孔82の係合面82aが係合する(図13参照)。すなわち、この実施形態では、天井壁側の支持壁80の貫通孔82と、壁部材側の爪部79とが、本発明における「係合手段」をなしている。
そして、図10に示すように、天井壁側の支持壁80の一対の貫通孔82,82に、壁部材70Aの一対の軸部77,77を整合させて、壁部材70Aを押し込むことで、軸部先端の爪部79,79の係合面79b,79bが、貫通孔82,82の係合面82a,82aに係合して、第1天井壁61に対して所定の隙間C1を介して、壁部材70Aを取付けることができる(図12及び図13参照)。
なお、この壁部材70Aにおいても、係合手段との係合面79bよりも、天井壁側に向けて立壁73,74が立設されており、基部71が第1天井壁61に係合手段を介して係合したときに、立壁73,74の先端が、第1天井壁61に近接して配置されて、隙間C1が形成されるようになっている(図12及び図13参照)。
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。