JP2017097193A - 光偏向装置及び光走査装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光偏向装置において、ミラー部への入射光によるミラー部の劣化を抑制する。
【解決手段】光偏向装置30は、光偏向器1と、支持枠31と、支持枠31に対して光偏向器1を並進方向へ変位自在に結合するダンパ32と、支持枠31に対して光偏向器1を縦方向Rに並進させる静電アクチュエータ35とを備える。静電アクチュエータ35による縦方向Rの光偏向器1の変位量は、レーザ装置22からの入射光Laがミラー面2aに生成するスポット領域Sの縦方向Rの長さより大きくされる。
【選択図】図2
【解決手段】光偏向装置30は、光偏向器1と、支持枠31と、支持枠31に対して光偏向器1を並進方向へ変位自在に結合するダンパ32と、支持枠31に対して光偏向器1を縦方向Rに並進させる静電アクチュエータ35とを備える。静電アクチュエータ35による縦方向Rの光偏向器1の変位量は、レーザ装置22からの入射光Laがミラー面2aに生成するスポット領域Sの縦方向Rの長さより大きくされる。
【選択図】図2
Description
本発明は、光偏向器を備える光偏向装置及び光走査装置に関する。
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の製造技術により製造された光偏向器を、車両の前照灯や画像表示装置等で、利用することが知られている(例:特許文献1,2)。
このような光偏向器は、光源から同一光路で入射される光を反射するミラー部と、ミラー部を所定の回転軸線の回りに往復回動させて、ミラー部に入射した光の反射方向を変更する回動アクチュエータとを備える。
特許文献1等に記載されている一般的な光偏向器では、ミラー部における光の入射点(=反射点)は、不動である。
特許文献2の画像表示装置は、走査光内のスペックルノイズを抑制するために、光偏向器を搭載する台座と、該台座を支持する支持体との間に、台座を並進振動させる圧電アクチュエータを配設し、ミラー部の回動作動中、光偏向器を圧電アクチュエータにより並進振動させる。圧電アクチュエータは、具体的には、複数の圧電カンチレバーを蛇腹状に直列に結合し、隣接する圧電カンチレバーのそれぞれ対向する電極の電気極性が逆極性となるように又は該対向する電極に対し位相が異なる交流電圧が印加されることにより、圧電カンチレバー面内で互いに逆方向に屈曲変形する構成となっている。
したがって、特許文献2の光偏向器では、ミラー部における光の入射点は、光偏向器の作動中、圧電アクチュエータによる光偏向器の並進振動に伴い、変位する。
光偏向器を特に前照灯に使用する場合、光偏向器からの走査光による照射領域内では十分に遠方の照射地点も所定の照度を確保する必要がある。このため、レーザ光源として大出力のものが要求される。
一方、MEMSの製造技術で製造された光偏向器のミラー部は、基板層に、ミラー面としての薄い金属層を成膜して製造するので、強いレーザ光がミラー面に入射すると、ミラー面の劣化が生じるという問題がある。ミラー面の劣化原因の例を挙げると、次のとおりである。
(a)ミラー面の汚染による反射劣化
デバイスとしての光偏向器の完成後又は使用中に僅かな炭素がミラー面に堆積して、ミラー面を汚染する。これにより、ミラー面が、レーザ光を吸収して、反射率を低下させる。
デバイスとしての光偏向器の完成後又は使用中に僅かな炭素がミラー面に堆積して、ミラー面を汚染する。これにより、ミラー面が、レーザ光を吸収して、反射率を低下させる。
(b)ミラー材料の吸収
可視領域でのミラー面の反射率を高めるために、ミラー面の層には金属酸化物からなる誘電膜を用いる。しかし、原子レベルでみると、誘電膜は、化学量論比にならない場合がある。その場合、誘電膜は、レーザ光の吸収により発熱するので、ミラー面は変質してしまう。
可視領域でのミラー面の反射率を高めるために、ミラー面の層には金属酸化物からなる誘電膜を用いる。しかし、原子レベルでみると、誘電膜は、化学量論比にならない場合がある。その場合、誘電膜は、レーザ光の吸収により発熱するので、ミラー面は変質してしまう。
(c)多光子吸収による影響
高出力レーザによるミラー材料の多光子吸収により、ミラー面の原子が励起される。その場合、その一部は蒸発するので、ミラー面の膜厚が減少する。この結果、ミラー面の反射率はしだいに低下していく。
高出力レーザによるミラー材料の多光子吸収により、ミラー面の原子が励起される。その場合、その一部は蒸発するので、ミラー面の膜厚が減少する。この結果、ミラー面の反射率はしだいに低下していく。
ミラー部に光が照射されているときに照度が所定レベル(所定レベルの詳細は後述)以上となるミラー面上の領域を「スポット領域」と呼ぶことにすると、特許文献2の画像表示装置において、スポット領域の変位は、スポット領域の中心点(最大照度点)が少し変位する程度に留まる。すなわち、スポット領域の全体としては、ほぼ一定位置に留まっている。したがって、支持体に対する台座の変位にもかかわらず、ミラー面上に、常にスポット領域の内側に留まるスポット領域部分が残り、該スポット領域部分については、ミラー面の劣化を抑制することは困難である。
また、特許文献2の圧電アクチュエータは、複数の圧電カンチレバーを蛇腹状の配列で直列に結合する構造になっていて、隣接する圧電カンチレバーのそれぞれ対向する電極の電気極性が逆極性となるように又は対向する電極に対し位相が異なる交流電圧が印加されることにより、圧電カンチレバー面内で互いに逆方向に屈曲変形するものである。したがって、該圧電アクチュエータにより該圧電アクチュエータの屈曲変形方向に光偏向器を最大変位させても、最大変位量が屈曲変形方向のミラー面のスポット領域の長さを超えることはほぼ困難である。
本発明の目的は、入射光によるミラー面の劣化を抑制することができる光偏向装置及び光走査装置を提供することである。
本発明の光偏向装置は、
光源から同一光路で入射される光を反射するミラー部と、前記ミラー部を所定の回転軸線の回りに往復回動させて、前記ミラー部に入射した光の反射方向を変更する回動アクチュエータとを備えた光偏向器と、
前記光偏向器を支持する支持部と、
前記光偏向器と前記支持部との間に介在し、前記光偏向器を前記支持部に対して所定方向へ変位自在に結合する結合部材と、
前記ミラー部に前記光が照射されているときに照度が所定レベル以上となる前記ミラー部のミラー面上の領域の前記所定方向の長さより大きい変位量で、前記光偏向器を前記所定方向へ並進させる静電アクチュエータとを備えることを特徴とする。
光源から同一光路で入射される光を反射するミラー部と、前記ミラー部を所定の回転軸線の回りに往復回動させて、前記ミラー部に入射した光の反射方向を変更する回動アクチュエータとを備えた光偏向器と、
前記光偏向器を支持する支持部と、
前記光偏向器と前記支持部との間に介在し、前記光偏向器を前記支持部に対して所定方向へ変位自在に結合する結合部材と、
前記ミラー部に前記光が照射されているときに照度が所定レベル以上となる前記ミラー部のミラー面上の領域の前記所定方向の長さより大きい変位量で、前記光偏向器を前記所定方向へ並進させる静電アクチュエータとを備えることを特徴とする。
ミラー部に光が照射されているときに照度が所定レベル以上となるミラー面上の領域を「スポット領域」と呼ぶことにして、本発明によれば、光偏向器を所定方向へ並進させるアクチュエータとして、圧電アクチュエータでなく静電アクチュエータが採用されるので、所定方向への光偏向器の並進量を圧電アクチュエータに比して支障なく増大することができる。そして、静電アクチュエータが、光偏向器を所定方向にスポット領域の長さより大きい変位量で並進させることにより、スポット領域として常に光が照射されるミラー面上の領域がなくなる。こうして、ミラー面の劣化を抑制することができる。
本発明において、前記支持部は、前記光偏向器を包囲する枠状支持部であり、
前記結合部材は、前記所定方向に対して直角方向に対峙する前記光偏向器の部位と前記枠状支持部の部位とを結合していることが好ましい。
前記結合部材は、前記所定方向に対して直角方向に対峙する前記光偏向器の部位と前記枠状支持部の部位とを結合していることが好ましい。
ここで、結合部材は、光偏向器の所定方向の並進量を確保するために、該所定方向に適度の変形性を有する必要がある。また、光偏向器の並進を安定化させるためには、所定方向に対して直角方向に所定の剛性を有する必要がある。一般に、同一方向に変形性と剛性との両方を有する構造物は複雑な構造となるが、変形性及び剛性を、直交する一方向及び他方向にそれぞれ分けてもつ構造物は簡単な構造のものが広く知られている。
そこで、結合部材が、所定方向に対して直角方向に対峙する光偏向器の部位と枠状支持部の部位とを結合しているという上記の構成によれば、結合部材は、光偏向器の所定方向の並進量を確保する方向と、光偏向器の並進を安定化させる方向とが直交する結合部材となる。この結果、結合部材として簡単な構造のものを支障なく採用することができる。
本発明において、前記静電アクチュエータは、複数の櫛歯が、前記所定方向に相互に対峙する前記光偏向器側の部位及び前記枠状支持部側の部位にそれぞれ形成されて、前記光偏向器側の複数の櫛歯と前記枠状支持部側の複数の櫛歯とが前記所定方向にかみ合っている1対の櫛歯型電極を有し、該1対の櫛歯型電極間に印加される電圧によって、前記光偏向器側の複数の櫛歯と前記枠状支持部側の複数の櫛歯とのかみ合い量が変更されることが好ましい。
この構成によれば、静電アクチュエータの1対の電極を、複数の櫛歯が所定方向にかみ合ってかみ合い量が変更される櫛歯型電極とされる。このような櫛歯型電極の静電アクチュエータでは、複数の櫛歯は所定方向に対して直角方向に配列されることになるので、静電アクチュエータを所定方向に小型化しつつ、所望のアクチュエータ力の得るための櫛歯の枚数確保を円滑に実施することができる。
本発明の光走査装置は、
前記光偏向装置と、
前記ミラー部の往復回動中に、前記静電アクチュエータにより前記光偏向器を並進させる制御装置とを備えることを特徴とする。
前記光偏向装置と、
前記ミラー部の往復回動中に、前記静電アクチュエータにより前記光偏向器を並進させる制御装置とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、光偏向器の並進はミラー部の往復回動中に変位するので、光偏向器の作動中の発熱部位としてのミラー面上のスポット領域は、ミラー部の往復回動中、ミラー面上で場所を移動する。これにより、ミラー面上の発熱部位が長時間にわたり同一場所に留まることが回避され、ミラー面の劣化を抑制することができる。
本発明の光走査装置は、
前記光偏向装置と、
前記ミラー部の往復回動停止中に、前記静電アクチュエータにより前記光偏向器を並進させる制御装置とを備えることを特徴とする。
前記光偏向装置と、
前記ミラー部の往復回動停止中に、前記静電アクチュエータにより前記光偏向器を並進させる制御装置とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、光偏向器はミラー部の往復回動停止中に並進するので、結合部材は、光偏向器の並進に伴う変形力と、ミラー部の往復回動に起因する変形力とを同時に受けることを回避される。これにより、結合部材の変形負荷が軽減され、結合部材の寿命を伸ばすことができる。
図1は光偏向器1の概略構成図である。なお、図1に光源として図示されているレーザ装置22は、光偏向器1の構成要素には含まれない。光偏向器1は、MEMSの製造技術を用いて製造される。光偏向器1は、中心に回動自在に配置されるミラー部2、ミラー部2を外側から包囲する内側矩形枠3、及び内側矩形枠3を外側から包囲する外側矩形枠4を備えている。
図1に図示のミラー部2は真正面を向いている状態で示されている。なお、真正面の向きとは、ミラー部2の表面に形成されているミラー面2aの法線が、光偏向器1を構成するSOI基板における積層方向(厚み方向)と同一方向になっている向きである。
光偏向器1の構成を説明する便宜上、外側矩形枠4の長辺方向及び短辺方向に対して平行な方向をそれぞれ横方向Q(所定方向に対する直角方向の一例)及び縦方向R(所定方向の一例)と定義する。また、光偏向器1の厚み方向の両面について、レーザ装置22が出射した光がミラー部2の入射光Laとして入射する側の面を表面と定義し、表面とは反対側の面を裏面と定義する。光偏向器1は、その作動時に運動したり変位したりする要素(例:ミラー部2等)を含むが、光偏向器1の構成を、ミラー面2aを真正面に向けている時の各部の状態で説明する。
1対のトーションバー(弾性梁)5は、縦方向Rにミラー部2の一側(図1では斜め右上側)及び他側(図1では斜め左下側)に配設され、ミラー部2と内側矩形枠3とを結合している。トーションバー5は、内側矩形枠3には結合することなく、分離されていてもよい。
内側アクチュエータ6a,6bは、縦方向Rにはミラー部2に対して共に一側で、横方向Qにはトーションバー5に対して一側(図1では斜め左上側)及び他側(図1では斜め右下側)にそれぞれ配設されている。内側アクチュエータ6c,6dは、縦方向Rにはミラー部2に対して共に他側で、横方向Qにはトーションバー5に対して一側及び他側にそれぞれ配設されている。
以下、内側アクチュエータ6a〜6dについて特に区別しないときは、「内側アクチュエータ6」と総称する。内側アクチュエータ6は、横方向Qに延在して、トーションバー5と内側矩形枠3とを結合している。内側アクチュエータ6は、ユニモルフカンチレバーとして構成されている圧電アクチュエータである。
外側アクチュエータ7a,7bは、横方向Qに内側矩形枠3の一側及び他側にそれぞれ配設されるとともに、内側矩形枠3と外側矩形枠4との間に介在して、内側矩形枠3と外側矩形枠4とを結合している。外側アクチュエータ7a,7bについて特に区別しないときは、「外側アクチュエータ7」と総称する。外側アクチュエータ7は、複数のユニモルフ圧電カンチレバーをミアンダライン(蛇腹状ライン)に沿って直列に結合したものとなっている。
電極パッド8a,8bは、外側矩形枠4の横方向Qの一側及び他側の短辺部の表面に形成され、光偏向器1の表面に沿って形成された配線(図示せず)や光偏向器1内に埋め込まれている配線層(図示せず。典型的には通常はグランド配線)を介して内側アクチュエータ6等の電極と接続されている。以下、電極パッド8a,8bについて特に区別しないときは、「電極パッド8」と総称する。
外側矩形枠4は、下から順にハンドリング層13、中間酸化膜層14及び活性層15が積層されているSOI(Silicon On Insulator)基板を含む。外側矩形枠4の表面は、熱酸化シリコン膜16となっている。ハンドリング層13及び活性層15はSi(ケイ素)から成る。中間酸化膜層14及び熱酸化シリコン膜16は二酸化ケイ素から成る。
光偏向器1は、車両前照灯や映像装置(後述の図8の光走査装置119の一例)に装備されるときは、車両前照灯等の構成要素としてレーザ装置22と共に組み込まれる。レーザ装置22からの入射光Laは、ミラー部2の回動角に関係なく、同一の光路124(同一光路の一例)でミラー部2に入射する。ミラー部2は、入射光Laをミラー部2の回動角に応じた向きに反射して、反射光Lbを出射する。光偏向器1が装備された光走査装置では、反射光Lbは走査光として使用される。
入射光Laは、光束(光ビーム)として所定の断面径を有するので、入射光Laがミラー部2のミラー面2aに入射して生成する照射領域は、点にならず、照度が、中心点で最大で、中心点から離れるに連れて減少する照度分布となる。該照度分布は、典型的には、該照射領域の中心点をピークとするガウス分布になる。
入射光Laがミラー部2のミラー面2aに照射されているときにミラー面2a上で照度が所定レベル以上となる領域を「スポット領域S」と定義する。該所定レベルは、例えば、光偏向器1の設計者が、ミラー面2aの製品寿命をどの程度にするかの観点で決定する。ミラー面2aの製品寿命を長くするときほど、該所定レベルは小さい値に設定される。該所定レベルが小さいときほど、スポット領域Sの径が増大する。
ミラー部2のみの作動について概略的に説明する。ミラー部2は、回動アクチュエータの一例である内側アクチュエータ6の作動によりトーションバー5の軸線(第1回転軸線)の回りに往復回動する。ミラー部2は、これも回動アクチュエータの一例である外側アクチュエータ7の作動により、第1回転軸線に直交しかつミラー部2のミラー面2aに含まれる第2回転軸線の回りに往復回動する。ミラー部2が真正面を向いている時は、第1及び第2回転軸線は、それぞれ縦方向R及び横方向Qに揃う。
例えば、第1回転軸線の回りのミラー部2の往復回動の周波数は15kHzであり、第2回転軸線の回りのミラー部2の往復回動の周波数は60Hzである。
反射光Lbは、直接、反射光Lbの照射先の走査領域に向かうか、又は図示しない光学系を経由してから、走査領域に向かう。光偏向器1が車両前照灯に装備される場合、典型的な車両前照灯では、反射光Lbは、第1回転軸線の回りのミラー部2の往復回動により車両前方の走査領域を左右方向に走査する。また、反射光Lbは、第2回転軸線の回りのミラー部2の往復回動により車両前方の走査領域を前後方向に走査する。
図2は光偏向装置30の正面図である。光偏向装置30の横方向Q及び縦方向Rは、図1で定義した光偏向器1についての縦方向R及び横方向Qと同一に定義する。支持枠31(支持部又は枠状支持部)の横方向は、外側矩形枠4の長辺に対峙する辺(以下、「横辺部」という)が延在する方向と定義し、支持枠31の縦方向は、外側矩形枠4の短辺に対峙する辺(以下、「縦辺部」という)が延在する方向と定義する。
また、支持枠31に対する光偏向器1の中立位置を定義する。光偏向器1の中立位置とは、支持枠31の横方向及び縦方向が横方向Q及び縦方向Rに揃い、かつ偏向器1の中心(この例では外側矩形枠4の対角線の交点)が支持枠31の中心(この例では支持枠31の対角線の交点)に重なる位置であると定義する。以下の光偏向装置30の構成についての説明では、光偏向器1は中立位置にあるものとする。光偏向器1は後述の静電アクチュエータ35a,35bにより中立位置に対して並進されるので、支持枠31の横方向及び縦方向は、横方向Q及び縦方向Rに一致する。
ダンパ32a,32b(結合部材の一例)は、横方向Qに光偏向器1の一側及び他側にそれぞれ配設され、光偏向器1と支持枠31との間に介在して、光偏向器1を支持部材としての支持枠31に縦方向Rに変位自在に結合する。以下、ダンパ32a,32bについて特に区別しないときは、「ダンパ32」と総称する。
なお、この光偏向装置30では、光偏向器が並進する所定方向が縦方向Rに設定される。光偏向器が並進する所定方向を横方向Qにすることもできるが、特に縦方向Rに設定した理由は次のとおりである。すなわち、第2回転軸線の回りのミラー部2の往復回動周波数(60Hz)は、第1回転軸線の回りのミラー部2の往復回動周波数(15kHz)より低い。したがって、回転軸線の回りのミラー部2の往復回動に同期して、光偏向器1を並進振動させる場合には、低い方の回動周波数に同期して並進振動させる方がダンパ32の変形負荷が軽減されて、寿命を伸ばすことができるからである。
ダンパ32は、横方向Qに往復しつつ、縦方向Rに進むミアンダラインに沿って延在する構造になっている。このミアンダ構造では、ダンパ32は、横方向Qには変形を制限されて、横方向Qに大きな剛性を有することになる。また、縦方向Rには、所定の変形量(設定並進量)以下の範囲では変形し易くなって、該所定の変形量以下では剛性は小さくなる。さらに、ダンパ32は、縦方向Rの変形において、Uターン状の連結部を開閉することになるので、縦方向Rに所定のダンパ作用を有する。
ダンパ32が横方向Qに大きな剛性を有することは、光偏向器1が縦方向Rに並進する期間に、横方向Qへの光偏向器1の揺れが抑制されるので、光偏向器1の並進運動が安定化する。
静電アクチュエータ35a,35bは、縦方向Rに光偏向器1に対して一側及び他側において光偏向器1と支持枠31との間に配設される。以下、静電アクチュエータ35a,35bについて特に区別しないときは、「静電アクチュエータ35」と総称する。静電アクチュエータ35は、支持枠31に対する光偏向器1の縦方向位置Rhを制御する。
静電アクチュエータ35は、それぞれ光偏向器1側及び支持枠31側に形成された櫛歯40,41を備える。櫛歯40,41は、横方向Qに一定間隔で配列され、縦方向Rに突出している。櫛歯40と櫛歯41とは、縦方向Rに相互にかみ合うように、所定の間隙を形成しつつ、横方向Qに交互に並んで配列されている。縦方向Rの櫛歯40と櫛歯41とのかみ合い量は、後述の印加電圧Va,Vbにより変更される。
基辺部45a,45bは、正面視で外側矩形枠4の上下の辺部の中央部を構成している。側辺部47a,47bは、正面視で外側矩形枠4の左右の辺部と、外側矩形枠4の上下の辺部の左右の両端部とを構成する。
スリット44aは基辺部45aと側辺部47aとを区切る。スリット44bは基辺部45aと側辺部47bとを区切る。スリット44cは基辺部45bと側辺部47aとを区切る。スリット44dは基辺部45bと側辺部47bとを区切る。スリット44a〜44dによる区切りの具体的構造は、後述のスリット51a〜51dによる区切りの具体的構造(例:図6)と同一である。
電極パッド46a,46bは、それぞれ基辺部45a,45bに形成される。
以下、スリット44a〜44dについて特に区別しないときは、「スリット44」と総称する。基辺部45a,45bについて特に区別しないときは、「基辺部45」と総称する。電極パッド46a,46bについて特に区別しないときは、「電極パッド46」と総称する。側辺部47a,47bについて特に区別しないときは、「側辺部47」と総称する。
基辺部52a,52bは、正面視で支持枠31の上下の辺部の中央部を構成している。側辺部54a,54bは、正面視で支持枠31の左右の辺部と、支持枠31の上下の辺部の左右の両端部とを構成する。
スリット51aは基辺部52aと側辺部54aとを区切る。スリット51bは基辺部52aと側辺部54bとを区切る。スリット51cは基辺部52bと側辺部54aとを区切る。スリット51dは基辺部52bと側辺部54bとを区切る。スリット51a〜51dによる区切りの具体的構造は、図6において後述する。
電極パッド53a,53bは、それぞれ基辺部52a,52bに形成される。複数の電極パッド60aは側辺部54aに縦方向Rに一列に形成される。複数の電極パッド60bは側辺部54bに縦方向Rに一列に形成される。
以下、スリット51a〜51dについて特に区別しないときは、「スリット51」と総称する。基辺部52a,52bについて特に区別しないときは、「基辺部52」と総称する。電極パッド53a,53bについて特に区別しないときは、「電極パッド53」と総称する。側辺部54a,54bについて特に区別しないときは、「側辺部54」と総称する。電極パッド60a,60bについて特に区別しないときは、「電極パッド60」と総称する。
基辺部45と、基辺部45から支持枠31の方へ突出する複数の櫛歯40とは、静電アクチュエータ35の光偏向器1側の櫛歯型電極を構成する。基辺部52と、基辺部52から光偏向器1の方へ突出する複数の櫛歯41とは、静電アクチュエータ35の支持枠31側の櫛歯型電極を構成する。光偏向器1側の櫛歯型電極と支持枠31側の櫛歯型電極とは、縦方向Rに対峙している。
光偏向装置30をパッケージに収納したときには、外側矩形枠4上の電極パッド8,46は、支持枠31の側辺部54上の電極パッド60を経由して、パッケージの電極に接続される。具体的には、外側矩形枠4上に形成された電極パッド8,46は、支持枠31上の電極パッド60のいずれかに1:1の関係でボンディングワイヤにより接続される。支持枠31の表面の電極パッド53,60は、さらに、パッケージの端子にも1:1の関係でボンディングワイヤにより接続される。
光偏向器1、支持枠31及びダンパ32は、MEMSの製造技術を使用して、同時に製造される。製造方法については図3〜図6を参照して後述する。
静電アクチュエータ35の単体としての作用を説明する。静電アクチュエータ35が光偏向器1と共働するときの静電アクチュエータ35の作用については、図8及び図9を参照して後述する。
櫛歯40,41の電位は、厳密には、後述の図5の櫛歯40,41の活性層15の露出面の電位であって、電極パッド46,53に印加された電位と等しい。
電極パッド46,53間に電圧差があると、櫛歯40と櫛歯41とは、±の符号の異なる電荷の帯電状態になって、縦方向Rに相互に引き合う。電極パッド46a−53a間の電圧差をVa、電極パッド46b−53b間の電圧差をVbとする。
光偏向器1の縦方向位置Rhは、光偏向器1の中立位置ではRh=0とし、中立位置に対して縦方向Rの一側及び他側において、それぞれRh>0、Rh<0と定義する。また、静電アクチュエータ35bにおける電極間引力をFaとし、静電アクチュエータ35aにおける電極間引力をFbとする。Fa=k1・Va、Fb=k1・Vbとなる。ただしk1は比例定数である。
Fa,Fbは、光偏向器1の縦方向Rのそれぞれ+側及び−側に並進させる力となる。こうして、光偏向器1を縦方向Rの+側に並進させるときは、Fa>Fb+αとなるように、Va,Vbが制御される。なお、αは、ダンパ32の縦方向Rの復元力である。光偏向器1を縦方向Rの−側に並進させるときは、Fa+α<Fbとなるように、Va,Vbが制御される。光偏向器1を縦方向位置Rhを維持するときは、Rh>0のときは、Fa=Fb+αになるように、また、Rh<0のときは、Fa+α=Fbになるように、Va,Vbが制御される。
図3は、SOIから成膜板を製造する過程の説明図であり、光偏向装置30を製造する時のエッチング開始前までの積層過程がSTEP1→STEP2→STEP3の順番で示されている。光偏向装置30の光偏向器1、支持枠31及びダンパ32は、MEMSの製造技術を使用して、同一のSOI基板から製造される。図3において上側及び下側がそれぞれ光偏向装置30の表面側及び裏面側に対応している。
STEP(工程)1では、SOI基板66が用意される。SOI基板66は、下(裏面側)から順番にハンドリング層13、中間酸化膜層14及び活性層15の積層から成る。
次に、STEP2では、熱酸化炉(拡散炉)においてSOI基板66の裏面及び表面を酸化する。これにより、熱酸化シリコン膜69,70がSOI基板66の裏面及び表面に形成される。熱酸化シリコン膜69,70の厚みは、例えば0.1〜1.0μmとする。
次に、STEP3では、熱酸化シリコン膜70の表面に、下部電極層73、圧電体層74及び上部電極層75を順次形成する。
下部電極層73は、詳細には上下2層の金属薄膜から成る。下層の金属薄膜にはチタン(Ti)が用いられ、上層の金属薄膜には白金(Pt)が用いられている。各金属薄膜は、例えば、スパッタ法や電子ビーム蒸着法等により成膜する。
圧電体層74には、圧電材料として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられる。圧電体層74の厚みは、例えば1〜10μm程度とする。圧電体層74は、例えば、反応性アーク放電を利用したイオンプレーティング法により成膜される。
反応性アーク放電を利用した具体的なイオンプレーティング法については、例えば、本願出願人の出願に係る特開2001−234331号公報、特開2002−177765号公報、特開2003−81694号公報に記載された手法を参照されたい。
このアーク放電プラズマを利用した反応性イオンプレーティング法は、プラズマガンで真空容器内に発生させた高密度酸素プラズマ中で原料金属を加熱蒸発させ、真空容器内又は半導体基板上において各金属蒸気と酸素とが反応することにより、半導体基板上に圧電膜を形成するものである。
圧電膜の下地として、例えば化学溶液堆積法(CSD(Chemical Solution Deposition)法)によりシード層を形成することで、より優れた圧電特性を有する圧電膜を形成することができる。なお、圧電膜は、例えばスパッタ法、ゾルゲル法等により成膜してもよい。
上部電極層75の材料としては、例えばPt、Au、及びIrのうちから選ばれる。上部電極層75は、例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等により成膜する。上部電極層75の厚みは、例えば10〜200nm程度とする。
図3のSTEP3の積層板を「成膜板」と呼ぶことにする。成膜板に対して、さらに、MEMSの製造技術を使用した処理が行われ、最終的に完成した光偏向装置30の各部位の積層構造を図4〜図6において説明する。
図4は、横方向Qに光偏向装置30の支持枠31から外側アクチュエータ7までの範囲を、ダンパ32を通る横方向Qの積層断面で切った積層断面図である。図4において、左側から順に、支持枠31、ダンパ32、外側矩形枠4及び外側アクチュエータ7が完成時の積層構造で示されている。
図4の各部位において、成膜板の層のうちで存在しない層は、成膜板に対するエッチングにより削り取られたことを意味する。なお、図4では、支持枠31、ダンパ32、外側矩形枠4及び外側アクチュエータ7は、相互に分離しているが、光偏向装置30の平面視では、相互に結合している。
外側アクチュエータ7の箇所は、成膜板に対し、中間酸化膜層14から上部電極層75までの積層構造が残される。外側矩形枠4の箇所は、成膜板に対し、熱酸化シリコン膜69から下部電極層73までの積層構造が残される。また、外側矩形枠4において、下部電極層73は、電極パッド8の輪郭(例:円形)に加工されている。ダンパ32の箇所は、成膜板に対し、中間酸化膜層14から熱酸化シリコン膜70までの積層構造が残される。
支持枠31の箇所は、成膜板に対し、熱酸化シリコン膜69から下部電極層73までの積層構造が残される。また、支持枠31において、下部電極層73は、電極パッド60の輪郭に加工されている。
図5は、静電アクチュエータ35を縦方向R(伸縮方向)の積層断面で切った積層断面図である。櫛歯40の箇所は、成膜板に対し、中間酸化膜層14から熱酸化シリコン膜70までの積層構造が残される。基辺部45の箇所は、成膜板に対し、熱酸化シリコン膜69から熱酸化シリコン膜70までの積層構造が残される。基辺部45は、さらに、熱酸化シリコン膜70にコンタクトホールを形成後、金属層80が、熱酸化シリコン膜70の上に成膜され、電極パッド46として熱酸化シリコン膜70のコンタクトホールを介して活性層15のSi層に接続されている。活性層15の露出側面は、静電アクチュエータ35の帯電面として機能する。金属層80から電極パッド46の形成は例えばパターニングが利用される。
金属層80は、成膜板の製造後に成膜板の表面全体に成膜される。金属層80は、成膜板におけるミラー部2の部位においては、ミラー面2aとして機能する。金属層80の材料としては、例えばAu,Pt,Ag(銀),Al(アルミニウム)等が用いられる。
櫛歯41及び基辺部52の箇所は、成膜板に対し、共に熱酸化シリコン膜69から熱酸化シリコン膜70までの積層構造が残される。基辺部52は、さらに、金属層80が、熱酸化シリコン膜70の上に成膜され、電極パッド53として熱酸化シリコン膜70のコンタクトホールを介して活性層15のSi層に接続されている。金属層80から電極パッド53の形成は例えばパターニングが利用される。
櫛歯40では、活性層15より下のハンドリング層13及び熱酸化シリコン膜69が切除されているのに対し、櫛歯41では、それらが切除されていない。理由は、支持部としての支持枠31に対して可動部側の光偏向器1を軽量化して、ダンパ32の負担を軽減するためと、光偏向器1の並進の加速性を向上させるためである。
図6は、静電アクチュエータ35の支持枠31側の部分を横方向Qの積層断面で切った積層断面図である。スリット51の下端は、中間酸化膜層14の上面に達し、中間酸化膜層14の上面がスリット51において支持枠31の表面側に露出している。なお、図6の積層断面では、スリット51a,51bしか図示していないが、その他のスリット44,51c,51d及び後述の図7のスリット100,108も、下端が中間酸化膜層14の上面に達する深さにされる。
スリット51は、側辺部54のSiの活性層15と基辺部52のSiの活性層15とを電気的に分離する役目を有する。スリット51により、基辺部52の活性層15の電圧は、電極パッド53の印加電圧に等しくなるものの、側辺部54の活性層15の電圧は、電極パッド53の印加電圧とは異なる値(例えばグランド電圧)を保持することができる。
図7は別の光偏向装置90の正面図である。図2の光偏向装置30に対する光偏向装置90の相違点は、光偏向装置90には、並進量センサ94a,94bが追加されたことである。その他の構造は、光偏向装置30と光偏向装置90とは同一である。光偏向装置90において、光偏向装置30の構造部位と同一の構造部位は、光偏向装置30の該同一の構造部位に付けた符号と同一の符号を付けて、説明は省略し、相違点についてのみ説明する。
並進量センサ94a,94bは、光偏向器1に対して縦方向Rの一側及び他側において、光偏向器1と支持枠31との間に配設される。以下、並進量センサ94a,94bについて特に区別しないときは、「並進量センサ94」と総称する。
並進量センサ94の構造は、静電アクチュエータ35の構造とほぼ同一である。静電アクチュエータ35の構造との相違点は、櫛歯の本数が並進量センサ94は静電アクチュエータ35に比して少ないという点と、1対の電極間に電圧を印加する代わりに、1対の電極間の静電容量を検出する点である。なお、図7は、光偏向装置90の構造を模式的に描いたものであり、櫛歯40,41及び歯95,96の図示の本数は、現実の製品における本数と一致するものではない。
並進量センサ94は、静電アクチュエータ35に対して横方向Qの一側、すなわち電極パッド60aが配備されている側に、配設されている。なお、並進量センサ94は、静電アクチュエータ35に対して横方向Qの他側、すなわち電極パッド60bが配備されている側に、配設することもできる。また、静電アクチュエータ35及び並進量センサ94を、横方向Qに並進量センサ94の配置側とは反対側(図7では右側)にずらして、並進対象の光偏向器1の横方向Qの両半部の重量が均衡するようにしてもよい。
並進量センサ94は、それぞれ外側矩形枠4側及び支持枠31側に形成されて、縦方向Rに支持枠31側及び外側矩形枠4側に突出する歯95,96を有している。歯95,96の突出量は櫛歯40,41の突出量と等しい。平面視で歯95,96の幅は、櫛歯40,41の幅と同一であっても、相違していてもよい。
並進量センサ94の歯95は、外側矩形枠4の長辺部において基辺部45a,45bに隣接する基辺部102a,102bから突出している。基辺部102a,102bは、横方向Qの一側ではスリット100a,100bにより側辺部47aに対して区切られ、横方向Qの他側ではスリット44a,44bにより基辺部45a,45bに対して区切られている。電極パッド103a,103bは、基辺部102a,102bに形成され、基辺部102a,102bの活性層15に接続されている。外側矩形枠4の積層構造において、スリット100a,100bの下端は、図6のスリット51a,51bのように、中間酸化膜層14の上面に達し、横方向Qに両側の活性層15を電位的に分離させている。
並進量センサ94a,94bの歯96は、支持枠31の横辺部において基辺部52a,52bに隣接する基辺部110a,110bから突出している。基辺部110a,110bは、横方向Qの一側ではスリット108a,108bにより側辺部54aに対して区切られ、横方向Qの他側ではスリット51a,51cにより基辺部52a,52bに対して区切られている。電極パッド113a,113bは、基辺部110a,110bに形成され、基辺部110a,110bの活性層15に接続されている。支持枠31の積層構造において、スリット108a,108bの下端は、図6のスリット51a,51bのように、中間酸化膜層14の上面に達し、両側の活性層15を電位的に分離させている。
以下、スリット100a,100bについて特に区別しないときは、「スリット100」と総称する。基辺部102a,102bについて特に区別しないときは、「基辺部102」と総称する。電極パッド103a,103bについて特に区別しないときは、「電極パッド103」と総称する。スリット108a,108bについて特に区別しないときは、「スリット108」と総称する。基辺部110a,110bについて特に区別しないときは、「基辺部110」と総称する。電極パッド113a,113bについて特に区別しないときは、「電極パッド113」と総称する。
電極パッド103は、支持枠31の対応する電極バッド60にボンディングワイヤを介して接続され、該対応する電極バッド60は、さらに、ボンディングワイヤを介してパッケージの端子に接続されている。電極パッド113は、電極バッド60に介することなく、ボンディングワイヤを介してパッケージの端子に直接接続されている。
前述したように、静電アクチュエータ35では、電極パッド46,53に電圧が印加されて、静電アクチュエータ35の縦方向Rの長さが電極パッド46−53間の電位差に応じて変化する。これに対し、並進量センサ94では、並進量センサ94の縦方向Rの長さに応じた静電容量が電極パッド103−113間に検出される。したがって、電極パッド103−113間の静電容量から中立位置に対する光偏向器1の縦方向位置Rh(縦方向Rの位置)を検出することができる。
なお、並進量センサ94の出力としての静電容量は、静電容量センサの周知の静電容量検出方式を使用する。すなわち、櫛歯95,96のかみ合い量(縦方向Rの重複量)が増大すると、静電容量は増大し、逆に、かみ合い量が減少すると、静電容量は減少する。並進量センサ94の静電量は、例えば既知のCV変換回路を用いて検出することができる。
図8は光走査装置(スキャナ)119のブロック図である。光走査装置119は、例えば、車両に搭載される前照灯装置や、スクリーンに映像を生成する映像装置である。光走査装置119は、制御装置120と、光偏向装置30又は90とを装備する。並進量センサ94は、光偏向装置90には装備されるが、光偏向装置30には装備されていない。
制御装置120は、レーザ装置22、水平走査用アクチュエータとしての内側アクチュエータ6、垂直走査用アクチュエータとしての外側アクチュエータ7、及び並進用アクチュエータとしての静電アクチュエータ35に制御信号を出力する。制御装置120は、並進量センサ94から検知信号を入力する。
制御装置120が内側アクチュエータ6a,6cに出力する制御信号と、制御装置120が内側アクチュエータ6b,6dに出力する制御信号とは、波形及び周波数が同一で、位相が逆位相となっている。なお、内側アクチュエータ6と外側アクチュエータ7とは、共にユニモルフカンチレバーであるので、それらの制御信号は、交流電圧ではなく、直流電圧となる。
この光偏向器1では、内側矩形枠3は、横方向Qの両側の外側アクチュエータ7a,7bから縦方向Rの下端を変位させられることにより、ミラー部2を第2回転軸線の回りに回動する形式であるので、制御装置120から外側アクチュエータ7a,7bに出力される制御信号は同一になる。しかしながら、各外側アクチュエータ7では、横方向Qの配列順に奇数番のカンチレバーと偶数番のカンチレバーとは、光偏向器1の表裏方向に相互に逆向きに湾曲する必要がある。したがって、奇数番のカンチレバーと偶数番のカンチレバーとは、制御装置120から、波形と周波数とが同一で、位相が逆位相である制御信号を受ける。
制御装置120は、レーザ装置22がレーザ光として出射する入射光Laの点灯、消灯、及び光度を制御する。入射光Laの光度は、ミラー部2におけるスポット領域Sの照度及び面積に関係するとともに、光偏向装置30又は90からの走査光としての反射光Lbの照射先の走査領域の照度にも影響を与える。
制御装置120は、内側アクチュエータ6及び外側アクチュエータ7の印加電圧及び周波数を制御する。内側アクチュエータ6及び外側アクチュエータ7の印加電圧の波形は、例えば正弦波や三角波である。内側アクチュエータ6及び外側アクチュエータ7の印加電圧の周波数は、典型的には、それぞれ15kHz及び60Hzである。この結果、ミラー部2は、内側アクチュエータ6により第1回転軸線の回りに15kHzで往復回動しつつ、外側アクチュエータ7により第2回転軸線の回りに60Hzで往復回動する。15kHzは、大まかな値であり、実際には第1回転軸線の回りのミラー部2の共振周波数と等しくされる。
光偏向装置30又は90が車両用前照灯に装備される場合には、第1及び第2回転軸線の回りのミラー部2の往復回動により、走査光が車両前方の走査領域を左右方向及び前後方向に走査するように、光偏向装置30又は90は、縦方向R及び横方向Qの向きを調整されて、車両用前照灯内に組み込まれる。なお、光偏向装置30又は90の光の入射側又は出射側に光学装置を適宜配備することができる。こうして、車両前方の照射領域が、光偏向器1からの走査光により車両左右方向には15kHzにより走査され、車両の前後方向には60Hzで走査される。
制御装置120による静電アクチュエータ35の制御について、図8と共に図9を参照して説明する。
図9は、光偏向器1の並進に因るミラー部2の移動とミラー面2a上のスポット領域Sの位置との関係を示している。なお、図9において、左側に円形に記載されているミラー部2は正面視であり、右側に矩形に記載されているミラー部2は左側面視となっている。
制御装置120は、静電アクチュエータ35へ制御信号を出力し、静電アクチュエータ35を介して支持枠31に対する光偏向器1の縦方向Rの位置としての縦方向位置Rhを変更する。図9において、Pu,Pdは、静電アクチュエータ35による光偏向器1の並進範囲(縦方向Rの範囲)の一側及び他側の端位置を示している。
レーザ装置22からの入射光Laの光路124は、光偏向器1の縦方向位置Rhの変化にもかかわらず、固定(又は不動)、すなわち同一光路となっている。また、光偏向器1の縦方向位置Rhの変化は、静電アクチュエータ35による光偏向器1の縦方向Rの並進により行われる。したがって、ミラー面2a上のスポット領域の位置が変化しても、第1及び第2回転軸線の回りのミラー部2の回動角が同一であれば、光偏向器1からの反射光Lbの出射方向は同一となる。
図9において、Ds,D1,D2はいずれも縦方向Rの長さを示し、Dsはスポット領域Sの長さ、D1は、ミラー部2が位置Puにある時のミラー面2aの中心Oとスポット領域Sの中心との間の長さ、D2は、ミラー部2が位置Pdにある時のミラー面2aの中心Oとスポット領域Sの中心間の長さをそれぞれ示している。Ds≦D1+D2の関係がある。典型的にはD1=D2である。
制御装置120は、静電アクチュエータ35aの電極パッド46a−53a間の電圧差Va、及び静電アクチュエータ35bの電極パッド46b−53b間の電圧差Vbを制御して、支持枠31の内周側において光偏向器1を縦方向Rに並進させ、光偏向器1の縦方向位置Rhを変更する。
光偏向器1の縦方向位置Rhの変更により、ミラー面2a上のスポット領域の相対位置が変化する。光偏向器1の縦方向位置Rhを変更する並進は、光偏向器1の作動中(ミラー部2の往復回動中又は走査中)、すなわち第1及び第2回転軸線の回りのミラー部2の往復回動中に行われてもよいし、光偏向器1の作動停止中(ミラー部2の往復回動停止中又は走査停止中)、すなわち第1及び第2回転軸線の回りのミラー部2の往復回動の停止中に行われてもよい。
静電アクチュエータ35による光偏向器1の並進を走査実行中に行うときは、該並進変位を、第2回転軸線の回りのミラー部2の往復回動に同期して、行うことができる。なお、光偏向器1の並進変位を、第2回転軸線の回りのミラー部2の往復回動に同期して、行うときに、第2回転軸線の回りのミラー部2の往復回動の周波数を並進変位の周波数に一致させる必要はない。並進変位の周波数を第2回転軸線の回りのミラー部2の往復回動の周波数の整数倍にしたり、整数分の1にしてもよい。
ミラー面2a上のスポット領域は、ミラー面2aに対する入射光Laの照射による発熱領域でもあるので、光偏向器1の並進変位を、ミラー部2の往復回動に同期及び非同期に関係なく、走査実行中に行うことにより、ミラー面2a上の発熱領域が変化し、ミラー面2aの劣化を抑制することができる。
なお、以下のように、光偏向器1の並進速度を、走査実行中にミラー部2の往復回動に同期して、制御すれば、ミラー面2aの劣化抑制に一層有利となる。すなわち、第2回転軸線回りのミラー部2の往復回動速度は往復回動範囲の両端において低下するので、ミラー部2が往復回動範囲の両端位置に来た時に、往復回動範囲の中心位置に来た時よりも、光偏向器1の並進速度が増大させる制御を行う。これにより、ミラー面2aにおけるスポット領域Sの移動速度が均一化し、ミラー面2aのスポット領域Sの経路上の各部位の発熱時間が均一化する。
ミラー部2の往復回動中に光偏向器1を並進させるときは、縦方向Rの光偏向器1の並進範囲の内側に、ミラー面2a上でスポット領域Sが縦方向Rに重ならない光偏向器1の縦方向位置Rhを切替位置として複数設定して、各切替位置を所定時間間隔で切り替えるようにすることができる。その場合、切替位置の変更期間では、光偏向器1は並進するが、切替終了から次の切替開始までの期間は、ミラー部2の往復回動中にもかかわらず、光偏向器1の並進は停止している。
D1+D2≧3・Dsになるように、静電アクチュエータ35による光偏向装置30の最大並進量を大きくすることができる場合、静電アクチュエータ35による光偏向器1の並進範囲の内側にミラー面2a上でスポット領域Sが縦方向Rに重ならない光偏向器1の縦方向位置Rhとしての切替位置を3個以上、設定することができる。
静電アクチュエータ35による光偏向器1の並進を走査停止中に行うときは、ダンパ32は、光偏向器1の並進に伴う変形力と、ミラー部2の往復回動に起因する変形力とを同時に負荷されることを回避される。これにより、ダンパ32の変形負荷が軽減され、ダンパ32の寿命を伸ばすことができる。
静電アクチュエータ35による光偏向器1の並進を走査停止中に行うときの頻度は、例えば1回/日、1回/週又は1回/月にすることもできる。
本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々に変形して実施することもできる。
例えば、図示の例では、入射光Laは、レーザ装置22から直接、ミラー面2aに入射し、走査光としての反射光Lbは、ミラー面2aから直接、走査領域に向かうようになっている。しかしながら、レーザ装置22と光偏向器1との間、又は光偏向器1と走査領域との間に光路変更のための光学系を介在させてもよい。
実施形態では、光偏向装置30又は90は、光走査装置としての車両用前照灯に装備されて、反射光Lbで車両前方の照射領域を走査する。しかしながら、本発明の光走査装置は、映像装置等のその他の光走査装置であってもよい。映像装置では、光偏向装置の作動中、レーザ装置22の出力で増減して、スクリーン上の各走査点の輝度を制御することにより、スクリーン上に画像を生成することができる。
実施例では、光源としてレーザ装置22が使用され、入射光Laはレーザ光となっているが、光源としてはレーザ光源以外のものも採用することができる。
1・・・光偏向器、2・・・ミラー部、2a・・・ミラー面、22・・・レーザ装置、6・・・内側アクチュエータ(回動アクチュエータ)、7・・・外側アクチュエータ(回動アクチュエータ)、30,90・・・光偏向装置、31・・・支持枠(支持部又は枠状支持部)、32・・・ダンパ(結合部材)、35・・・静電アクチュエータ、40,41・・・櫛歯、119・・・光走査装置、124・・・光路。
Claims (5)
- 光源から同一光路で入射される光を反射するミラー部と、前記ミラー部を所定の回転軸線の回りに往復回動させて、前記ミラー部に入射した光の反射方向を変更する回動アクチュエータとを備えた光偏向器と、
前記光偏向器を支持する支持部と、
前記光偏向器と前記支持部との間に介在し、前記光偏向器を前記支持部に対して所定方向へ変位自在に結合する結合部材と、
前記ミラー部に前記光が照射されているときに照度が所定レベル以上となる前記ミラー部のミラー面上の領域の前記所定方向の長さより大きい変位量で、前記光偏向器を前記所定方向へ並進させる静電アクチュエータとを備えることを特徴とする光偏向装置。 - 請求項1記載の光偏向装置において、
前記支持部は、前記光偏向器を包囲する枠状支持部であり、
前記結合部材は、前記所定方向に対して直角方向に対峙する前記光偏向器の部位と前記枠状支持部の部位とを結合していることを特徴とする光偏向装置。 - 請求項2記載の光偏向装置において、
前記静電アクチュエータは、複数の櫛歯が、前記所定方向に相互に対峙する前記光偏向器側の部位及び前記枠状支持部側の部位にそれぞれ形成されて、前記光偏向器側の複数の櫛歯と前記枠状支持部側の複数の櫛歯とが前記所定方向にかみ合っている1対の櫛歯型電極を有し、
該1対の櫛歯型電極間に印加される電圧によって、前記光偏向器側の複数の櫛歯と前記枠状支持部側の複数の櫛歯とのかみ合い量が変更されることを特徴とする光偏向装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光偏向装置と、
前記ミラー部の往復回動中に、前記静電アクチュエータにより前記光偏向器を並進させる制御装置とを備えることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光偏向装置と、
前記ミラー部の往復回動停止中に、前記静電アクチュエータにより前記光偏向器を並進させる制御装置とを備えることを特徴とする光走査装置。
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