以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。本発明は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値などは例示である。なお、以下の説明や各図において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[画像形成装置の構成例]
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置のシステム構成の概略を示す全体構成図である。本実施形態では、複写機に適用する場合を例に挙げている。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、静電気を用いて用紙Sに画像を形成する電子写真方式を採用しており、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせるタンデム形式のカラー画像形成装置である。この画像形成装置1は、原稿搬送部10と、用紙収納部20と、画像読取部30と、画像形成部40と、中間転写ベルト50と、2次転写部60と、定着部70と、制御基板80とを有する構成となっている。
原稿搬送部10は、原稿Gをセットする原稿給紙台11と、複数のローラ12と、搬送ドラム13と、搬送ガイド14と、原稿排出ローラ15と、原稿排出トレイ16とを有している。原稿給紙台11にセットされた原稿Gは、複数のローラ12及び搬送ドラム13によって、画像読取部30の読取位置に1枚ずつ搬送される。搬送ガイド14及び原稿排出ローラ15は、複数のローラ12及び搬送ドラム13により搬送された原稿Gを原稿排出トレイ16に排出する。
用紙収納部20は、装置本体の下部に配置されており、用紙Sのサイズや種類に応じて複数設けられている。この用紙Sは、給紙部21により給紙されて搬送部23に送られ、搬送部23によって転写位置である2次転写部60に搬送される。また、用紙収納部20の近傍には、手差部22が設けられている。この手差部22からは、ユーザによってセットされる、用紙収納部20に収納されていないサイズの用紙やタグを有するタグ紙、OHPシート等の特殊紙が転写位置へ送られる。
画像読取部30は、原稿搬送部10により搬送された原稿G又は原稿台31に載置された原稿の画像を読み取って、画像データを生成する。具体的には、原稿Gの画像がランプLによって照射される。このランプLからの照射光に基づく原稿Gからの反射光は、第1ミラーユニット32、第2ミラーユニット33、レンズユニット34の順に導かれて、撮像素子35の受光面に結像する。撮像素子35は、入射した光を光電変換して所定の画像信号を出力する。撮像素子35から出力された画像信号は、A/D変換されることにより画像データとして作成される。
また、画像読取部30は、画像読取制御部36を有している。画像読取制御部36は、A/D変換によって作成された画像データに、シェーディング補正やディザ処理、圧縮等の周知の画像処理を施して、制御基板80に搭載されたRAM(不図示)に格納する。なお、画像データは、画像読取部30から出力されるデータに限定されず、画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピュータや他の画像形成装置などの外部装置から受信したデータであってもよい。
用紙収納部20と画像読取部30との間には、画像形成部40と像担持体である中間転写ベルト50とが配置されている。画像形成部40は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成するために、第1〜第4の4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kを有する。
第1の画像形成ユニット40Yは、イエローのトナー像を形成し、第2の画像形成ユニット40Mは、マゼンダのトナー像を形成する。また、第3の画像形成ユニット40Cは、シアンのトナー像を形成し、第4の画像形成ユニット40Kは、ブラックのトナー像を形成する。これら4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kは、それぞれ同一の構成を有している。したがって、ここでは、第1の画像形成ユニット40Yについて説明する。
第1の画像形成ユニット40Yは、像担持体であるドラム状の感光体(感光体ドラム)41と、感光体41の周囲に配置された帯電部42と、露光部43と、現像部44と、クリーニング部45とを有している。感光体41は、不図示の駆動モータによる駆動の下に回転する。帯電部42は、感光体41に電荷を与えることにより感光体41の表面を一様に帯電する。露光部43は、原稿Gから読み取られた画像データ又は外部装置から送信された画像データに基づいて、感光体41の表面に対して例えばレーザビームによって露光を行うことにより、感光体41上に静電潜像を形成する。
現像部44は、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を用いて、感光体41上に形成された静電潜像を現像する。トナーは、画像を形成する粒子である。キャリアは、現像部44内でのトナーとの混合において摩擦帯電によりトナーに適正な電荷を与える機能と、感光体41と対向する現像領域にトナーを搬送する機能と、感光体41上の静電潜像にトナーが忠実に現像できるように現像電界を形成する機能とを持っている。現像部44には、感光体41に現像剤を供給する現像スリーブ46を有している。この現像部44は、感光体41に形成された静電潜像にイエローのトナーを付着させる。これにより、感光体41の表面には、イエローのトナー像が形成される。
なお、第2の画像形成ユニット40Mの現像部44は、感光体41にマゼンタのトナーを付着させ、第3の画像形成ユニット40Cの現像部44は、感光体41にシアンのトナーを付着させる。そして、第4の画像形成ユニット40Kの現像部44は、感光体41にブラックのトナーを付着させる。
クリーニング部45は、感光体41の表面に残留しているトナーを除去する。
感光体41上に付着したトナーは、中間転写体である中間転写ベルト50に転写される。中間転写ベルト50は、無端状に形成されており、複数のローラに掛け渡されている。この中間転写ベルト50は、不図示の駆動モータによる駆動の下に、感光体41の回転(移動)方向とは逆方向に回転する。
中間転写ベルト50における各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kの感光体41と対向する位置には、1次転写部51が設けられている。この1次転写部51は、中間転写ベルト50にトナーと逆極性の電圧を印加させることで、感光体41上に付着したトナーを中間転写ベルト50に転写する。
そして、中間転写ベルト50が回転することで、4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kで形成されたトナー像が、中間転写ベルト50の表面に順次転写される。これにより、中間転写ベルト50上には、イエロー、マゼンダ、シアン及びブラックのトナー像が重なり合うことによってカラー画像が形成される。
また、中間転写ベルト50に対向した状態でベルトクリーニング装置53が設けられている。このベルトクリーニング装置53は、用紙Sへのトナー画像の転写を終えた中間転写ベルト50の表面を清掃する。
中間転写ベルト50の近傍で、かつ搬送部23の用紙搬送方向の下流には、2次転写部60が配置されている。この2次転写部60は、搬送部23によって搬送されてきた用紙Sを中間転写ベルト50に接触させることにより、中間転写ベルト50の外周面上に形成されたトナー像を用紙Sに転写する。
2次転写部60は、2次転写ローラ61を有している。2次転写ローラ61は、対向ローラ52に圧接されている。そして、2次転写ローラ61と中間転写ベルト50とが接触する部分は、2次転写ニップ部62となる。この2次転写ニップ部62の位置は、中間転写ベルト50の外周面上に形成されたトナー像を用紙Sに転写する転写位置である。
2次転写部60における用紙Sの排出側には、定着部70が設けられている。この定着部70は、用紙Sを加圧及び加熱して、転写されたトナー像を用紙Sに定着させる。定着部70は、例えば、一対の定着部材である定着上ローラ71及び定着下ローラ72で構成されている。定着上ローラ71及び定着下ローラ72は、互いに圧接した状態で配置されており、定着上ローラ71と定着下ローラ72との圧接部として定着ニップ部が形成される。
定着上ローラ71の内部には、加熱部が設けられている。この加熱部からの輻射熱により定着上ローラ71のローラ部が温められる。そして、定着上ローラ71のローラ部の熱が用紙Sへ伝達されることにより、用紙S上のトナー像が定着される。
用紙Sは、2次転写部60によってトナー像が転写された面(定着対象面)が定着上ローラ71と向き合うように搬送され、定着ニップ部を通過する。したがって、定着ニップ部を通過する用紙Sには、定着上ローラ71と定着下ローラ72とによる加圧と、定着上ローラ71のローラ部の熱による加熱が行われる。
定着部70の用紙Sの搬送方向の下流には、切換ゲート24が配置されている。切換ゲート24は、定着部70を通過した用紙Sの搬送路を切り換える。すなわち、切換ゲート24は、用紙Sの片面への画像形成におけるフェースアップ排紙を行う場合に、用紙Sを直進させる。これにより、用紙Sは、一対の排紙ローラ25によって排紙される。また、切換ゲート24は、用紙Sの片面への画像形成におけるフェースダウン排紙を行う場合、及び用紙Sの両面への画像形成を行う場合に、用紙Sを下方に案内する。
フェースダウン排紙を行う場合は、切換ゲート24によって用紙Sを下方に案内した後に、用紙反転搬送部26によって用紙Sの表裏を反転して上方に搬送する。これにより、表裏が反転された用紙Sは、一対の排紙ローラ25によって排紙される。用紙Sの両面への画像形成を行う場合は、切換ゲート24によって用紙Sを下方に案内した後に、用紙反転搬送部26によって用紙Sの表裏を反転する。そして、表裏が反転された用紙Sは、再給紙路27によって再び転写位置へ送られる。
一対の排紙ローラ25の下流側には、用紙Sを折ったり、用紙Sに対してステープル処理等を行ったりする後処理装置を配置してもよい。
[画像形成装置の各部のハードウェア構成]
次に、画像形成装置1の各部のハードウェア構成について、図2を参照して説明する。図2は、画像形成装置1の各部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、画像形成装置1は、制御部100を備えている。この制御部100は、上述の制御基板80(図1参照)上に構成されている。
制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)101と、CPU101が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)102と、CPU101の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)103とを有している。なお、ROM102としては、例えば、通常電気的に消去可能なプログラマブルROMを用いることができる。
RAM103には、画像形成部40で形成(プリント/出力)する画像のカバレッジの情報や、現像剤走行時間(現像剤の耐久情報)の計測情報等が記憶される。カバレッジの情報は、一般的に、トナー濃度制御に用いられる。カバレッジとしては、例えば、CPU101による制御の下に、画像形成部40で形成した画像のカバレッジの他、当該カバレッジを積算して算出する一定区間の平均カバレッジが用いられる。カバレッジ、平均カバレッジの各情報や現像剤走行時間の計測情報は、後述するトナーの劣化抑制の制御の際に用いられる。
CPU101は、画像形成装置1の全体を制御する。このCPU101は、HDD(Hard Disk Drive)104、操作表示部105、トナー濃度センサ106及び通信部107にそれぞれシステムバス108を介して接続されている。さらに、CPU101は、画像読取部30、画像処理部90、画像形成部40、給紙部21及び定着部70にそれぞれシステムバス108を介して接続されている。
HDD104は、画像読取部30で読み取って得た原稿画像の画像データを記憶したり、出力済みの画像データ等を記憶したりする。操作表示部105は、液晶表示装置(LCD)や有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイからなるタッチパネルである。この操作表示部105は、ユーザに対する指示メニューや取得した画像データに関する情報等を表示する。さらに、操作表示部105は、複数のキーを備え、ユーザのキー操作による各種の指示、文字、数字などのデータの入力を受け付けて、入力信号を制御部100に出力する。
トナー濃度センサ106は、現像部44内に配置され、後述するトナー濃度の制御のために、現像部44のトナー濃度を検出する。トナー濃度センサ106として、例えば、現像剤の透磁率の変化を検知する透磁率検知型トナー濃度センサを用いることができる。ただし、トナー濃度センサ106としては、透磁率検知型トナー濃度センサに限られるものではない。トナー濃度センサ106の検出値は、システムバス108を介して制御部100に供給される。
通信部107は、外部の情報処理装置の一例であるPC(パーソナルコンピュータ)120から送信されるジョブ情報を、通信回線110を介して受け取る。そして、受け取ったジョブ情報を、システムバス108を介して制御部100に送る。ジョブ情報には、形成する画像の画像データと、その画像データに対応付けられた使用する用紙の種類及び枚数などの情報が含まれている。
なお、本実施形態では、外部装置としてパーソナルコンピュータを適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、外部装置としては、例えばファクシミリ装置等その他各種の装置を適用することができる。
画像読取部30は、原稿画像を光学的に読み取って電気信号に変換する。例えば、カラー原稿を読み取る場合は、一画素当たりRGB各10ビットの階調の輝度情報を持つ画像データを生成する。画像読取部30によって生成された画像データや、画像形成装置1に接続された外部装置の一例であるPC120から送信される画像データは、画像処理部90に送られ、画像処理される。画像処理部90は、受信した画像データに対してアナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮、周期ムラ(画像の周期的な濃度ムラ)補正等の処理を行う。
例えば、画像形成装置1でカラー画像を形成する場合、画像読取部30等によって生成されたR・G・Bの画像データを画像処理部90における色変換LUT(Look Up Table)に入力する。そして、画像処理部90は、R・G・BデータをY・M・C・Kの画像データに色変換する。そして、色変換した画像データに対して、階調再現特性の補正、濃度補正LUTを参照した網点などのスクリーン処理、あるいは細線を強調するためのエッジ処理などを行う。周期ムラ補正の詳細については後述する。
制御部100は、CPU101による制御の下に、画像形成装置1の全体を制御する。具体的には、制御部100は、画像形成部40を駆動制御し、画像濃度制御用のトナー像または画像形成用のトナー像を形成し、中間転写ベルト50に1次転写するとともに、2次転写部60を駆動制御し、中間転写ベルト50が担持するトナー画像を用紙Sに2次転写する。また、制御部100は、定着部70を駆動制御し、用紙Sを加圧及び加熱して、トナー画像を用紙Sに定着させる。さらに、制御部100は、像担持体である感光体41の帯電電位や現像バイアス電位の制御を行う。
上記構成の画像形成装置1において、トナー消費、トナー補給が極端に少ないプリント動作が長時間続く状態を低カバレッジと呼称し、トナー消費、トナー補給が極端に多いプリント動作が長時間続く状態を高カバレッジと呼称する。
[劣化トナーについて]
低カバレッジの画像を連続してプリントした場合、現像部44内ではトナーが消費され難くなるため、トナーが現像部44内で長時間に亘って撹拌される。これにより、トナーに付着している帯電制御剤などの外添剤がトナーに埋没したり、トナーから離脱したりしてしまい、トナーの帯電性能が低下し、図3に示すように、弱帯電トナーや未帯電トナーなどの劣化トナーが増加する。図3には、0%カバレッジ印字時(実線)と5%カバレッジ印字時(破線)の現像部44中のトナー帯電量の分布を示している。
劣化トナーは、電気的に不安定である。そのため、正常に帯電したトナーが、現像されない感光体41の非露光部(白地部)に移動してしまう現象が発生する。この現象をトナーかぶり(地肌汚れ)と呼称する。また、劣化トナーは、キャリアに対する付着力も低下する。そのため、現像部44の現像ローラ上のキャリア穂から離脱して感光体41上や現像部44の上部に飛散する不具合が発生する。この不具合をトナーこぼれと呼称する。
ここで、感光体41の帯電電位(感光体41おける未露光部電位)をV0とし、現像バイアス電位をVdcとする。通常、感光体41の表面電位V0と現像バイアス電位の直流成分Vdcとの間に電位差|V0−Vdc|を持たせることで、トナーかぶりの発生を抑制している。この電位差|V0−Vdc|をかぶりマージン電位と呼称する。かぶりマージン電位は、一般に、トナーかぶりを発生せず、かつ、キャリア付着を発生しない値(以下、「初期設定値」と記述する)に設定される。このかぶりマージン電位が初期設定値よりも小さくなると、図5に示すように、劣化トナーは感光体41の非露光部(白地部)に移動しやすくなる。
また、低カバレッジの画像を連続してプリントした後、画像カバレッジが高カバレッジの画像に切り替わった場合、通常、高カバレッジの画像で消費されるトナーを補給するために急激なトナー補給が行なわれる。その際、急激に補給されたフレッシュなトナーは帯電性能が高いため優先的に帯電される。これにより、トナー補給を行わずに低カバレッジ画像のプリントに長時間攪拌されたトナー(以下、「準劣化トナー」と記述する)の帯電量が低下して一部が弱帯電トナーや未帯電トナーの劣化トナーとなり、トナーかぶりやトナーこぼれが発生する(図4、図6参照)。
図4には、低カバレッジの画像を連続してプリントした後に、高カバレッジの画像を連続してプリントした場合の0%カバレッジ印字時(実線)と5%カバレッジ印字時(破線線)の現像部44中のトナー帯電量の分布を示している。また、図6には、低カバレッジの画像を連続してプリントした後に、高カバレッジの画像をプリントした場合における現像部44中の劣化トナーの変化を示している。図6において、実線は一般技術の場合を示し、破線は非作像領域で劣化トナーを排出する従来技術の場合を示している。また、実線及び破線の太い線は劣化トナーを示し、実線及び破線の細い線は準劣化トナーを示している。
上述したように、低カバレッジの画像を連続してプリントした場合に、トナーの劣化が促進される。また、低カバレッジの画像を連続してプリントした後に、画像カバレッジが高カバレッジに切り替わった場合に、急激なトナー補給によって発生する劣化トナーが増加し、トナーこぼれやトナーかぶりによって画質不良が発生する。
そこで、本実施形態に係る画像形成装置1では、低カバレッジの画像を連続してプリントした場合でも、より効率よくトナーの劣化を抑制できるようにする。以下に、その具体的な実施例について説明する。各実施例の処理は、制御部100(図2参照)による制御の下に実行されるものとする。以下では、出力(プリント)する画像のカバレッジが第1所定値以下の場合を低カバレッジとし、第1所定値よりも高い第2所定値以上の場合を高カバレッジとして説明する。また、第1所定値と第2所定値との間のカバレッジが通常カバレッジとなる。
[実施例1]
実施例1は、低カバレッジの画像を連続してプリントした場合の制御の例である。実施例1の低カバレッジ時の制御について、図7を用いて説明する。
制御部100は、プリントする画像のカバレッジが所定値以下の低カバレッジの場合、感光体41の帯電電位V0または現像バイアス電位Vdcを制御することにより、かぶりマージン電位|V0−Vdc|を初期設定値よりも小さく設定する。この制御モードを、劣化トナー排出モード1と呼称する。ここで、「初期設定値」とは、一般に、かぶりマージン電位|V0−Vdc|として設定される、トナーかぶりを発生せず、かつ、キャリア付着を発生しない値である。
劣化トナー排出モード1では、低カバレッジの画像が連続した場合、用紙間のかぶりマージンを小さくして用紙間に劣化トナーを選択的にかぶらせて劣化トナーを現像部44内から消費する。この劣化トナー排出モード1のとき、プリントする画像が高カバレッジ画像に切り替わることに備えて、低カバレッジのトナー濃度目標値Tc_Lを、高カバレッジのトナー濃度目標値Tc_Hよりも高く設定する(図7の1)。
制御部100には、現像部44に設けられたトナー濃度センサ106(図2参照)によって検出されるトナー濃度Tcの情報が与えられる。制御部100は、劣化トナー排出モード1において、現像部44のトナー濃度Tcがトナー濃度目標値Tc_Lに到達した後も低カバレッジの画像が所定の時間続いた場合、画像形成プロセスにおける非作像領域の割合を増やし、非作像領域にトナー帯を作成する制御を行う(図7の2)。この制御モードを、劣化トナー排出モード2と呼称する。
図7において、制御パラメータAは、低カバレッジ画像のプリントが続く所定の時間である。制御パラメータAを一定のプリント枚数とすることもできる。劣化トナー排出モード2では、非作像領域の割合を増やす、例えば用紙間の間隔を広げて生産性を落とす。用紙間の間隔が無限大はジョブの停止を意味する。用紙間の間隔を広げることで、劣化トナーの排出効率を上げ、トナー補給動作を制限する。トナー補給動作の制限には、トナー補給動作の停止も含まれる。ここでは、トナー補給動作を停止するものとする。劣化トナーの排出効率を上げることで、低カバレッジ画像の連続プリントで増加した劣化トナーや準劣化トナーが排出される(図7の3)。
トナー補給動作の停止により、トナー濃度Tcが低下する。トナー濃度Tcが高カバレッジのトナー濃度目標値Tc_Hよりも小さい所定の劣化トナー排出モード閾値Tc_th1に到達するまでトナー補給動作を停止する。そして、トナー濃度Tcが所定の劣化トナー排出モード閾値Tc_th1まで低下した後、劣化トナー排出モード2を停止し、トナー補給動作を再開して劣化トナー排出モード1に戻る(図7の4)。トナー補給動作が再開されることで、トナー濃度Tcが上がり始める。以降、低カバレッジ画像のプリントが続く限り、同様の処理が繰り返して実行される(図7の5)。
上述したように、実施例1の制御では、低カバレッジ画像のプリント(出力)が連続した場合に、低カバレッジのトナー濃度目標値Tc_Lを、高カバレッジのトナー濃度目標値Tc_Hよりも高く設定する。これにより、現像部44内のトナーが単位時間あたりに受けるストレスを相対的に低減できるため、より効率よくトナーの劣化を抑制し、劣化トナー及び準劣化トナーの発生を抑えることができる。
[実施例2]
実施例2は、低カバレッジの画像を連続してプリントした後、画像カバレッジが高カバレッジの画像に切り替わった場合の制御の例である。実施例2の低カバレッジ画像を連続してプリントした後、画像カバレッジが高カバレッジ画像に切り替わった場合の制御について、図8を用いて説明する。
制御部100においては、CPU101による制御の下に、プリント(出力)する画像のカバレッジの時間を積算し、その積算時間の一定区間における平均カバレッジの算出が行われている。ここで、「一定区間」とは、一定のプリント枚数であったり、一定の時間だったりする。
制御部100は、低カバレッジ画像のプリントを検知後、劣化トナー排出モード1を開始し、低カバレッジのトナー濃度目標値Tc_Lを、高カバレッジのトナー濃度目標値Tc_Hよりも高く設定する(図8の1)。その後、制御部100は、プリント中の画像カバレッジが第2所定値以上で、かつ、一定区間の平均カバレッジが第1所定値以下の状態を検知する。これにより、低カバレッジ画像のプリントが所定の時間続いた後、画像カバレッジが高カバレッジの画像に切り替わったことを検知できる。図8において、制御パラメータBは、低カバレッジ画像のプリントが続く所定の時間である。制御パラメータBを一定のプリント枚数とすることもできる。
制御部100は、低カバレッジの画像から高カバレッジの画像に切り替わったと判断すると、前の低カバレッジ画像のプリントが、所定の時間(制御パラメータB)以上であれば、劣化トナー排出モード1を継続したままトナー補給動作を制限する(図8の2)。トナー補給動作の制限には、トナー補給動作の停止も含まれる。ここでは、トナー補給動作を停止するものとする。そして、トナー濃度目標値を、低カバレッジのトナー濃度目標値Tc_Lから高カバレッジのトナー濃度目標値Tc_Hに下げる。
高カバレッジの画像のプリント動作により、現像部44内の準劣化トナーと劣化トナーが消費される。用紙間では、劣化トナー排出モード1を継続しているため、劣化トナーの排出も進む(図8の3)。
トナー補給動作の停止により、トナー濃度Tcが低下する。トナー濃度Tcが所定の劣化トナー排出モード閾値Tc_th2に到達するまでトナー補給を停止する。そして、トナー濃度Tcが所定の劣化トナー排出モード閾値Tc_th2まで低下した後、劣化トナー排出モード1を停止し、トナー補給動作を再開する(図8の4)。
実施例2の制御による現像部44中の劣化トナー量の変化、即ち低カバレッジ後の高カバレッジにおける現像部44中の劣化トナー量の変化について、図9を用いて説明する。図9において、実線は実施例2の場合を示し、破線は非作像領域で劣化トナーを排出する従来技術の場合を示している。また、実線及び破線の太い線は劣化トナーを示し、実線及び破線の細い線は準劣化トナーを示している。
低カバレッジでは、トナー濃度センサ106(図2参照)の検知結果に基づく周知のトナー濃度制御によってトナー濃度を高めに制御する(図9の1)。そして、画像カバレッジが低カバレッジから高カバレッジに切り替わった場合、トナー補給動作を制限(停止を含む)する(図9の2)。図9にハッチングで示した区間が、トナー補給制限期間となっている。
このトナー補給制限期間では、非作像領域での劣化トナーの排出を継続しながら、高カバレッジ画像のプリントで準劣化トナーの消費が行われる(図9の3)。また、高カバレッジに追従するようにトナー補給量を戻しても、準劣化トナーを排出した後なので、劣化トナーの増加は発生しない(図9の4)。
上述したように、実施例2では、画像カバレッジが低カバレッジから高カバレッジに切り替わった際に、非作像領域における劣化トナー排出モード1の制御を継続しつつ、消費トナーに対してトナー補給を少なくする、または停止する。これにより、低カバレッジ画像のプリント時に現像部44内で長時間撹拌されて発生した準劣化トナーを優先的に消費して、現像部44外に排出することができる。
また、トナー濃度が所定の劣化トナー排出モード閾値Tc_th2(高カバレッジ画像でもベタ濃度が最低限維持できるトナー濃度)まで低下した後、トナー補給量を増やす、またはトナー補給を開始する。これにより、低カバレッジ時にトナー濃度を事前に高く制御して高カバレッジに切り替わった後にフレッシュトナーの補給を減らして現像部44内の準劣化トナーを優先的に消費することができるため、急激なトナー補給によるトナーこぼれやトナーかぶりを抑制することができる。
[実施例3]
実施例3は、劣化トナー排出モード1,2を制御するための各制御パラメータの例である。実施例3の各制御パラメータについて、図10を用いて説明する。
図10において、制御パラメータAは、実施例1において、低カバレッジ画像のプリントが続く所定の時間(または、一定のプリント枚数)であり、低カバレッジのトナー濃度が低カバレッジのトナー目標値Tc_Lに到達してからの低カバレッジの積算値でもある。現像剤の耐久が進むほど劣化トナーが増えるため、制御パラメータAの値を現像剤走行時間に応じて制御する、例えば通常カバレッジ時よりも小さく制御する。
制御パラメータBは、実施例2において、低カバレッジから高カバレッジに切り替わったと判断した場合の、前の低カバレッジの継続時間であり、低カバレッジから高カバレッジに切り替わったときの低カバレッジの積算値(区間カバレッジ)でもある。制御パラメータBは、現像部44内で長時間撹拌されたトナーがどれだけ準劣化状態になっているかを示す指標となる。現像剤の耐久が進むほどトナーが帯電し難くなる(準劣化トナーになりやすい)ため、制御パラメータBの値を現像剤走行時間に応じて制御する、例えば通常カバレッジ時よりも小さく制御する。
制御パラメータCは、低カバレッジ時のトナー目標値Tc_Lである。現像剤が新しいほど帯電性能が良いため、低カバレッジ時のトナー目標値Tc_Lについては、通常カバレッジ時よりも高く制御する。制御パラメータDは、低カバレッジ後の高カバレッジ時の劣化トナー排出モード閾値Tc_th2である。現像剤が新しいほど現像性が良いので、低カバレッジ後の高カバレッジ時の劣化トナー排出モード閾値Tc_th2を現像剤走行時間に応じて制御する、例えば通常カバレッジ時よりも低く制御する。
上述した制御パラメータA〜Dの現像剤走行時間に対する値を示す制御テーブルの一例を表1に示す。表1において、pはプリント枚数である。また、現像剤走行時間の計測情報は、制御部100によって管理されている。
図10において、制御パラメータEは、低カバレッジから高カバレッジに切り替わった後のトナー補給制限の度合いである。制御パラメータBの値が大きい場合は、制御パラメータEの傾きが大きくなるようにトナー補給を制御する。現像部44内の準劣化トナーの量が多いほど低カバレッジ後の高カバレッジ時のトナー補給制限を大きくする、即ちトナー補給量を小さくする。制御パラメータEの傾き最大は、トナー補給制限最大、即ちトナー補給停止ということになる。
制御パラメータBの値と制御パラメータEの傾きの関係を示す制御テーブルの一例を表2に示す。
[実施例4]
実施例4は、実施例1及び実施例2のトナー劣化抑制の簡易的な制御の例である。図11は、実施例4のトナー劣化抑制の簡易的な制御の一例を示すフローチャートである。実施例4の制御フローは、制御部100のCPU101(図2参照)による制御の下に実行される。ここでは、一例として、通常カバレッジのトナー濃度目標値を4%とする。
(実施例1の制御)
CPU101は、まず、プリントする画像カバレッジを判断し(ステップS11)、低カバレッジ画像(例えば、黒化率1%以下)である場合、図7に示した実施例1の低カバレッジ時の制御を行う。具体的には、CPU101は、プリントする画像カバレッジが低カバレッジ画像の場合、感光体41の帯電電位V0を、かぶりマージン電位|V0−Vdc|が20Vになるまで下げて劣化トナー排出モード1を開始し、トナー濃度目標値を4%から例えば6%に上げる(ステップS12)。
次に、CPU101は、低カバレッジのプリント枚数が例えば10kp続いた否かを判断し(ステップS13)、10kp続いた場合は(S13のYES)、ジョブを停止し、トナー補給も停止する(ステップS14)。このとき同時に、像担持体(感光体41)を回転させながらトナー帯を像担持体上に作成する劣化トナー排出モード2を開始する。10kp続いていない場合は(S13のNO)、本制御フローの処理を終了する。
次に、CPU101は、トナー濃度Tcが劣化トナー排出モード閾値Tc_th1、例えば2.4%まで低下したか否かを判断する(ステップS15)。次いで、CPU101は、トナー濃度Tcが2.4%まで低下したのであれば(S15のYES)、劣化トナー排出モード2を停止し、トナー補給とジョブを再開し(ステップS16)、本制御フローの処理を終了する。そして、低カバレッジ画像が続く限り、本制御フローの一連の処理を繰り返す。トナー濃度Tcが2.4%まで低下していなければ(S15のNO)、ステップS14に戻る。
(実施例2の制御)
CPU101は、ステップS11でプリントする画像カバレッジが、高カバレッジ画像(例えば、黒化率25%以上)であると判断した場合、図8に示した実施例2の低カバレッジ画像を連続してプリントした後、画像カバレッジが高カバレッジ画像に切り替わった場合の制御を行う。具体的には、CPU101は、高カバレッジ画像であると判断した場合、その前の低カバレッジ画像が図8の制御パラメータに相当する一定のプリント枚数、例えば5kp以上続いたか否かを判断する(ステップS17)。
CPU101は、低カバレッジ画像が5kp以上続いた場合(S17のYES)、低カバレッジ画像を連続してプリントした後、画像カバレッジが高カバレッジ画像に切り替わったものと判断する。そして、CPU101は、低カバレッジ時に行っていた劣化トナー排出モード1を継続したままトナー補給を停止する(ステップS18)。
次に、CPU101は、トナー濃度Tcが劣化トナー排出モード閾値Tc_th2、例えば2.4%まで低下したか否かを判断する(ステップS19)。次いで、CPU101は、トナー濃度Tcが2.4%まで低下したのであれば(S19のYES)、トナー補給を再開し(ステップS20)、2.4%まで低下していなければ(S19のNO)、ステップS18に戻る。次に、CPU101は、画像カバレッジが低カバレッジ以外であるならば劣化トナー排出モード1を停止し、トナー濃度目標値を6%から4%に戻し(ステップS21)、本制御フローの処理を終了する。
CPU101は、ステップS11でプリントする画像カバレッジが通常カバレッジと判断した場合、あるいは、ステップS17で低カバレッジ画像が5kp以上続いていないと判断した場合(S17のNO)は、ステップS21の処理を実行した後、本制御フローの処理を終了する。
[変形例]
以上、本発明について実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例に記載の範囲には限定されない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で上記実施例に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1として複写機を例に挙げたが、この適用例に限られるものではない。すなわち、本発明は、複写機の他、プリンタ装置、ファクシミリ装置、印刷機、複合機など、電子写真方式の画像形成装置全般に対して適用可能である。