JP2017095527A - 活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】、良好な硬化性を備えつつ、湿し水の供給量が少ない場合においても印刷汚れを軽減することのできる活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物を提供すること。【解決手段】エチレン性不飽和結合を備えた化合物、及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物であって、上記光重合開始剤の少なくとも一部として、下記一般式(1)で表すアシルホスフィンオキシド化合物を組成物中に6質量%〜12質量%含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物を用いる。下記一般式(1)において、R1はアシル基又はアリール基であり、R2はアリール基であり、R3はアリール基である。【選択図】なし
Description
本発明は、活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物に関する。
オフセット印刷は、油性であるオフセット印刷用インキ組成物(以下、「インキ組成物」又は「インキ」と適宜省略する。)が水に反発する性質を利用した印刷方式であり、凹凸を備えた印刷版を用いる凸版印刷方式とは異なり、親油性の画像部と親水性の非画像部とを備えた、凹凸のない印刷版を用いることを特徴とする。この印刷版を用いて印刷を行う場合、まず、湿し水を印刷版に接触させて非画像部の表面に水膜を形成させた後に、インキ組成物を印刷版に供給する。すると、供給されたインキ組成物は、水膜の形成された非画像部には反発して付着せず、親油性の画像部のみに付着する。こうして、印刷版の表面にインキ組成物による画像が形成され、次いでそれがブランケット及び紙に順次転移することにより印刷が行われる。なお、印刷の際に印刷版へ供給される湿し水は、過剰であれば印刷紙面に水跡を生じたり印刷物における濃度低下を生じたりして好ましくなく、不足であれば印刷紙面に汚れを生じて好ましくない。このため、印刷に際して、適正な印刷紙面の得られる湿し水供給量の範囲というものが存在する。この湿し水供給量の適正な範囲は水幅と呼ばれてインキ組成物の銘柄ごとに異なる傾向があり、一般には、水幅の広いインキ組成物ほど印刷に際して使いやすいとされている。
ところで、オフセット印刷により得られた印刷物は、その表面に付着しているインキ組成物が十分に乾燥した状態とならなければ、印刷物を重ねた際に裏移りを生じたり、指で印刷物に触れた際にインキが付着したりするので、後工程に回したり、商品として流通させたりすることができない。したがって、オフセット印刷を行った後に、印刷物の表面に付着したインキ組成物を乾燥させる工程が必要となる。こうした工程を短時間で行うために、近年では活性エネルギー線硬化型のインキ組成物を用いた印刷が盛んに行われるようになっている。
このタイプのインキ組成物には、モノマーやオリゴマー等といった重合性化合物と、紫外線や電子線等の活性エネルギー線が照射された際に当該重合性化合物を重合させる重合開始剤と、が含まれる。そのため、このインキ組成物を用いて印刷された未乾燥状態の印刷物の表面に活性エネルギー線が照射されると、そこに含まれる重合性化合物が互いに重合して高分子量化する。その結果、印刷物の表面に存在するインキ組成物は瞬時にべとつきのない(すなわち乾燥した)皮膜に変化する。このような乾燥方式を採用するインキ組成物として各種のものが提案されている(例えば、特許文献1、2等を参照)。なお、この工程で用いられる活性エネルギー線としては紫外線や電子線が挙げられるが、装置のコストや扱いやすさなどに鑑みて紫外線が選択されることが多い。
活性エネルギー線硬化型のインキ組成物は、そうでない従来型のインキ組成物に比べて開発の歴史が浅く、従来型のインキ組成物に比べて印刷適性面で見劣りする場面も多い。例えば、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物を用いてオフセット印刷を行うと、従来型のインキ組成物に比べて水幅が狭く、湿し水の供給量を絞った場合に印刷紙面が汚れやすく、湿し水の供給量を増やした場合に濃度低下を生じやすい傾向がある。これは、ビヒクル(主としてオリゴマー)の分子量が従来型のインキ組成物と比べて小さいことが要因の一つとして考えられる。一例であるが、従来型のインキ組成物では数十万もの分子量をもつ樹脂がビヒクルとして用いられるが、活性エネルギー硬化型のインキ組成物では反応性の観点から数万程度の分子量のものがビヒクルとして用いられる。このような水幅の問題は、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物を用いた印刷においてしばしば生じるものであり、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物は印刷汚れを生じやすいという印象をユーザーに与えるものとなっている。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、良好な硬化性を備えつつ、湿し水の供給量が少ない場合においても印刷汚れを軽減することのできる活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、この種のインキ組成物にて常用されているある種の光重合開始剤が印刷時の汚れを顕著に発生させ、その影響は、光重合開始剤を多く配合する必要のある紫外線LED硬化タイプのインキ組成物にて特に大きくなることを見出した。その一方で、本発明者らは、光重合開始剤の一種であるアシルホスフィンオキシド化合物が、インキ組成物における良好な硬化性を発揮しつつも印刷時における汚れ発生の原因にならないことを見出した。このような知見をもとに、本発明者らは、アシルホスフィンオキシド化合物をインキ組成物中に6質量%〜12質量%添加してインキ組成物の硬化における寄与の大部分又は全てをアシルホスフィンオキシド化合物に担わせることで、印刷時における汚れの発生を大幅に削減できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
本発明は、エチレン性不飽和結合を備えた化合物、及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物であって、上記光重合開始剤の少なくとも一部として、下記一般式(1)で表すアシルホスフィンオキシド化合物を組成物中に6質量%〜12質量%含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物である。
(上記一般式(1)中、R1はアシル基又はアリール基であり、R2はアリール基であり、R3はアリール基である。)
上記アシルホスフィンオキシド化合物は、下記一般式(2)で表す化合物であることが好ましい。
(上記一般式(2)中、R1及びR2はそれぞれ上記一般式(1)におけるものと同様であり、R4はそれぞれ独立にアルキル基であり、nは0〜5の整数である。)
上記アシルホスフィンオキシド化合物は、下記一般式(3)又は(4)で表す化合物であることが好ましい。
(上記一般式(3)中、R4はそれぞれ独立にアルキル基であり、nは0〜5の整数である。上記一般式(4)中、R4はそれぞれ独立にアルキル基であり、mは0〜5の整数である。)
上記アシルホスフィン化合物が、下記化学式(5)で表す2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、又は下記化学式(6)で表すビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドであることが好ましい。
上記アシルホスフィンオキシド化合物を組成物中に9質量%〜12質量%含むことが好ましい。
上記光重合開始剤として、さらにα−ヒドロキシアルキルフェノン化合物及び/又はジアルキルアミノベンゾフェノン化合物を含むことが好ましい。
上記光重合開始剤としてのα−アミノアルキルフェノン化合物の含有量が4質量%未満であることが好ましい。
本発明によれば、良好な硬化性を備えつつ、湿し水の供給量が少ない場合においても印刷汚れを軽減することのできる活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物が提供される。
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物の一実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものでなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物(以下、インキ組成物と適宜省略する。)は、オフセット印刷に適用されるインキ組成物であり、紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射を受けて硬化する能力を備える。後述するように、本発明のインキ組成物は、エチレン性不飽和結合を備えた化合物(モノマーやオリゴマー等)と光重合開始剤とを含有し、活性エネルギー線の照射を受けた際に光重合開始剤から生じたラジカルがエチレン性不飽和結合を備えた化合物を高分子量化させることで硬化する。そのため、印刷直後に印刷物の表面でべたついているインキ組成物に活性エネルギー線が照射されると、瞬時にこのインキ組成物が硬化して皮膜となり、乾燥(タックフリー)状態となる。
本発明のインキ組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線は、後述する光重合開始剤における化学結合を開裂させてラジカルを生じさせるものであればよい。このような活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が例示される。これらの中でも、装置のコストや扱いやすさという観点からは、活性エネルギー線として紫外線が好ましく例示される。活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、その波長としては、用いる光重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜決定されればよいが、380nm以下を挙げることができる。このような紫外線を発生させる紫外線照射装置としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、希ガスを封入したエキシマランプ、紫外線発光ダイオード(LED)等を挙げることができる。
本発明のインキ組成物は、エチレン性不飽和結合を備えた化合物、及び光重合開始剤を含み、その光重合開始剤の少なくとも一部としてアシルホスフィンオキシド化合物を組成物中に9質量%〜12質量%含むことを特徴とする。また、本発明のインキ組成物は、着色成分(本発明において、インキ組成物に白色や金属色を付与する成分も着色成分に含めるものとする。)を含んでもよい。本発明のインキ組成物が着色成分を含む場合には、そのインキ組成物は例えば画像や文字等の印刷用途に用いることができるし、本発明のインキ組成物が着色成分を含まない場合には、そのインキ組成物は例えばコーティング等の用途に用いることができる。以下、各成分について説明する。
[エチレン性不飽和結合を備えた化合物]
エチレン性不飽和結合を備えた化合物は、後述する光重合開始剤より生じたラジカルによって重合して高分子量化する成分であり、モノマーやオリゴマー等と呼ばれる成分である。また、オリゴマーよりもさらに高分子量であるポリマーについてもエチレン性不飽和結合を備えたものが各種市販されている。このようなポリマーも上記モノマーやオリゴマーによって、又は当該ポリマー同士によって架橋されて高分子量化することができる。そこで、こうしたポリマーを、上記モノマーやオリゴマーとともにエチレン性不飽和結合を備えた化合物として用いてもよい。
エチレン性不飽和結合を備えた化合物は、後述する光重合開始剤より生じたラジカルによって重合して高分子量化する成分であり、モノマーやオリゴマー等と呼ばれる成分である。また、オリゴマーよりもさらに高分子量であるポリマーについてもエチレン性不飽和結合を備えたものが各種市販されている。このようなポリマーも上記モノマーやオリゴマーによって、又は当該ポリマー同士によって架橋されて高分子量化することができる。そこで、こうしたポリマーを、上記モノマーやオリゴマーとともにエチレン性不飽和結合を備えた化合物として用いてもよい。
モノマーは、エチレン性不飽和結合を有し、上記のように重合して高分子量化する成分であるが、重合する前の状態では比較的低分子量の液体成分であることが多く、樹脂成分を溶解させてワニスとする際の溶媒とされたり、インキ組成物の粘度を調節したりする目的にも用いられる。モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ備える単官能モノマーや、分子内にエチレン性不飽和結合を2つ以上備える2官能以上のモノマーが挙げられる。2官能以上のモノマーは、インキ組成物が硬化するのに際して分子と分子とを架橋することができるので、硬化速度を速めたり、強固な皮膜を形成させたりするのに寄与する。単官能のモノマーは、上記のような架橋能力を持たない反面、架橋に伴う硬化収縮を低減させるのに寄与する。これらのモノマーは、必要に応じて各種のものを組み合わせて用いることができる。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のアルキルアクリレート、(メタ)アクリル酸、エチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、アクリオロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等を挙げることができる。これらの単官能モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
2官能以上のモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2,4−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオ−ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2,4−ペンタンジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオ−ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートトリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノーAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマー;等を挙げることができる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA;3官能)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DITMPTA;4官能)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA;6官能)、グリセリンプロポキシトリアクリレート(GPTA;3官能)、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA;2官能)等を好ましく挙げることができる。これらの2官能以上のモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
オリゴマーは、上記のように重合して高分子量化する成分であるが、もともとが比較的高分子量の成分であるので、インキ組成物に適度な粘性や弾性を付与する目的にも用いられる。オリゴマーとしては、エポキシ樹脂等といったエポキシ化合物に含まれるエポキシ基を酸や塩基で開環させた後に生じる水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるエポキシ変性(メタ)アクリレート、ロジン変性エポキシアクリレート、二塩基酸とジオールとの縮重合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエステル変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル化合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエーテル変性(メタ)アクリレート、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との縮合物における末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるウレタン変性(メタ)アクリレート等を挙げることができる。このようなオリゴマーは市販されており、例えば、ダイセル・サイテック株式会社製のエベクリルシリーズ、サートマー社製のCN、SRシリーズ、東亜合成株式会社製のアロニックスM−6000シリーズ、7000シリーズ、8000シリーズ、アロニックスM−1100、アロニックスM−1200、アロニックスM−1600、新中村化学工業株式会社製のNKオリゴ等の商品名で入手することができる。これらのオリゴマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
エチレン性不飽和結合を備えたポリマーは、上述のモノマーやオリゴマーとともに高分子量化する成分であり、活性エネルギー線が照射される前から大きな分子量を備えているので、インキ組成物の粘弾性の向上に役立つ成分である。このようなポリマーは、例えば、低粘度の液体であるモノマー中に溶解又は分散された状態で用いられる。エチレン性不飽和結合を備えたポリマーとしては、ポリジアリルフタレート、未反応の不飽和基を備えたアクリル樹脂、アクリル変性フェノール樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、ポリジアリルフタレートは、上記モノマーやオリゴマーとの相溶性が特に優れているので好ましく用いることができる。
インキ組成物中における、エチレン性不飽和結合を備えた化合物の含有量は、30〜80質量%が好ましく、40〜75質量%がより好ましく、50〜70質量%がさらに好ましい。エチレン性不飽和結合を備えた化合物の含有量が上記の範囲であることにより、良好な硬化性と良好な印刷適性とを両立できる。また、上記モノマーとオリゴマーとの比率は、質量比で、モノマー:オリゴマー=4:1〜1:1が好ましく、モノマー:オリゴマー=3:1〜1:1がより好ましく、モノマー:オリゴマー=2:1〜1:1がさらに好ましい。モノマーとオリゴマーとの比率が上記の範囲であることにより、良好な硬化性と印刷適性とを両立できる。また、エチレン性不飽和結合を備えたポリマーの含有量としては、5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。ポリマーの含有量が上記の範囲であることにより、インキ組成物に適度な粘弾性を付与してミスチング等の発生を抑制できるとともに、インキ組成物の良好な硬化性を確保することができるので好ましい。
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射を受けてラジカルを発生させる成分であり、生じたラジカルが上記エチレン性不飽和結合を備えた化合物を重合させ、インキ組成物を硬化させる。本発明のインキ組成物では、こうした光重合開始剤の少なくとも一部として、下記一般式(1)で表すアシルホスフィンオキシド化合物を組成物中に6質量%〜12質量%含む。
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射を受けてラジカルを発生させる成分であり、生じたラジカルが上記エチレン性不飽和結合を備えた化合物を重合させ、インキ組成物を硬化させる。本発明のインキ組成物では、こうした光重合開始剤の少なくとも一部として、下記一般式(1)で表すアシルホスフィンオキシド化合物を組成物中に6質量%〜12質量%含む。
上記一般式(1)中、R1は、アシル基又はアリール基である。このようなアシル基としては、アリールカルボニル基が例示され、中でもアルキル置換アリールカルボニル基が好ましく例示される。また、アリール基としては、フェニル基、アルキル置換フェニル基等が例示され、中でもフェニル基が好ましく例示される。
上記一般式(1)中、R2は、アリール基である。このようなアリール基としては、フェニル基、アルキル置換フェニル基等が例示され、中でもフェニル基が好ましく例示される。
上記一般式(1)中、R3は、アリール基である。このようなアリール基としては、フェニル基、アルキル置換フェニル基等が例示され、中でもアルキル置換フェニル基が好ましく例示される。
上記一般式(1)で表されるアシルホスフィンオキシド化合物として、より具体的には、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(2)で表される化合物は、上記一般式(1)におけるR3としてフェニル基、又はアルキル置換フェニル基が選択されたものである。
上記一般式(2)中、R1及びR2は、それぞれ上記一般式(1)におけるものと同様である。上記一般式(2)中、R4は、それぞれ独立にアルキル基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が例示されるが、これらの中でもメチル基が好ましく例示される。また、上記一般式(2)中、nは、0〜5の整数である。nは、1〜5の整数であることが好ましく、3であることがさらに好ましい。
上記一般式(1)又は(2)で表されるアシルホスフィンオキシド化合物として、より具体的には、下記一般式(3)又は(4)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(3)又は(4)で表される化合物は、上記一般式(2)におけるR2としてフェニル基が選択され、上記一般式(2)におけるR1としてフェニル基、ベンゾイル基、又はアルキル置換ベンゾイル基が選択されたものである。
上記一般式(3)中、R4は、それぞれ独立にアルキル基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が例示されるが、これらの中でもメチル基が好ましく例示される。また、上記一般式(3)中、nは、0〜5の整数である。nは、1〜5の整数であることが好ましく、3であることがさらに好ましい。
上記一般式(4)中、R4は、それぞれ独立にアルキル基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が例示されるが、これらの中でもメチル基が好ましく例示される。また、上記一般式(4)中、nは、0〜5の整数である。nは、1〜5の整数であることが好ましく、3であることがさらに好ましい。また、上記一般式(4)中、mは、0〜5の整数である。mは、1〜5の整数であることが好ましく、3であることがさらに好ましい。
上記一般式(1)〜(4)で表されるアシルホスフィンオキシド化合物として、さらに具体的には、下記化学式(5)で表される2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、又は下記化学式(6)で表されるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドが好ましく挙げられる。これらの化合物は、例えば、BASF社からLUCIRIN TPOや、IRGACURE819という製品名で市販されている。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表されるアシルホスフィンオキシド化合物の組成物中における含有量は、6〜12質量%であり、9〜12質量%が好ましく、9〜11質量%がより好ましい。アシルホスフィンオキシド化合物が6質量%以上であることにより、他の光重合開始剤の量を削減しつつ(すなわち印刷時の汚れを抑制しつつ)、良好な硬化性を維持することができるので好ましい。また、アシルホスフィンオキシド化合物が12質量%以下であることにより、アシルホスフィンオキシド化合物が過剰となることを防止できるのでコスト面から好ましい。
既に説明したように、光重合開始剤として上記のアシルホスフィンオキシド化合物をインキ組成物に適用することにより、他の光重合開始剤を用いたときに観察される印刷中の汚れが軽減される。一般に、インキ組成物中の光重合開始剤の含有量は18質量%程度までであるので、インキ組成物中に6〜12質量%、好ましくは9〜12質量%含まれるアシルホスフィンオキシド化合物は、インキ組成物に含まれる光重合開始剤の主要な成分となる。したがって、硬化性を考慮して、上記アシルホスフィンオキシド化合物以外の光重合開始剤を添加しても印刷物の汚れに対する影響は軽微であり、したがってこのような光重合開始剤を添加しても構わない。
アシルホスフィンオキシド化合物以外の光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]ブタン−1−オン等が挙げられる。このような光重合開始剤は市販されており、例えばBASF社からイルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア184、イルガキュア379等の商品名で、Lamberti社からDETX等の商品名で入手することができる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの光重合開始剤の中でも、α−ヒドロキシアルキルフェノン化合物及び/又はジアルキルアミノベンゾフェノン化合物を上記アシルホスフィンオキシド化合物と組み合わせて用いることが好ましい。これらの光重合開始剤は、印刷時における汚れの発生への影響が比較的小さいので、アシルホスフィンオキシド化合物を用いることによる印刷時の汚れ発生の抑制効果を大きく損なわない。
α−ヒドロキシアルキルフェノン化合物としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン等が例示される。ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等が例示される。
また、上記の光重合開始剤の中でも、α−アミノアルキルフェノン化合物は、これを用いることにより高い硬化性が得られる反面、印刷時の汚れに悪い影響を及ぼしがちである。このような観点からは、光重合開始剤としてα−アミノアルキルフェノン化合物を用いる場合には、インキ組成物中におけるその含有量を4質量%未満とするのが好ましく、インキ組成物中におけるその含有量を2質量%未満とすることがより好ましく、インキ組成物中にそれを含まないことがより好ましい。
α−アミノアルキルフェノン化合物としては、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]ブタン−1−オン等が挙げられる。
アシルホスフィンオキシド化合物以外の光重合開始剤を用いる場合、インキ組成物中におけるその含有量は、0〜10質量%程度とするのが好ましい。含有量をこの範囲とすることにより、印刷時の汚れを抑制することができる。
[着色成分]
着色成分は、インキ組成物に着色力や隠蔽力等を付与するために添加される成分であり、着色顔料、白色顔料、金属パウダー等が挙げられる。このような着色成分としては、従来からインキ組成物に使用されている有機及び/又は無機顔料を特に制限無く挙げることができる。なお、本発明のインキ組成物において着色成分は必須でなく、着色成分を含まない場合にはコーティング用途等に好ましく用いられる。
着色成分は、インキ組成物に着色力や隠蔽力等を付与するために添加される成分であり、着色顔料、白色顔料、金属パウダー等が挙げられる。このような着色成分としては、従来からインキ組成物に使用されている有機及び/又は無機顔料を特に制限無く挙げることができる。なお、本発明のインキ組成物において着色成分は必須でなく、着色成分を含まない場合にはコーティング用途等に好ましく用いられる。
着色成分としては、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等のイエロー顔料、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド等のマゼンタ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等のシアン顔料、カーボンブラック等の黒色顔料、酸化チタン等の白色顔料、アルミニウムペースト、ブロンズパウダー等の金属パウダー等が例示される。
着色成分の含有量としては、インキ組成物の全体に対して8〜30質量%程度が例示されるが、特に限定されない。なお、着色されたインキ組成物を調製する場合、補色として他の色の着色成分を併用したり、他の色のインキ組成物を添加したりすることも可能である。
[その他の成分]
本発明のインキ組成物には、上記の各成分に加えて、必要に応じて他の成分を添加することができる。このような成分としては、体質顔料、樹脂成分、重合禁止剤、分散剤、リン酸塩等の塩類、ポリエチレン系ワックス・オレフィン系ワックス・フィッシャートロプシュワックス等のワックス類、アルコール類、植物油や鉱物油等の油成分等が挙げられる。
本発明のインキ組成物には、上記の各成分に加えて、必要に応じて他の成分を添加することができる。このような成分としては、体質顔料、樹脂成分、重合禁止剤、分散剤、リン酸塩等の塩類、ポリエチレン系ワックス・オレフィン系ワックス・フィッシャートロプシュワックス等のワックス類、アルコール類、植物油や鉱物油等の油成分等が挙げられる。
体質顔料は、インキ組成物に適度な印刷適性や粘弾性等の特性を付与するための成分であり、通常のオフセット印刷用インキ組成物で用いられる各種のものを用いることができる。このような体質顔料としては、クレー、カオリナイト(カオリン)、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素(シリカ)、ベントナイト、タルク、マイカ、酸化チタン等が例示される。こうした体質顔料の添加量としては、インキ組成物全体に対して0〜33質量%程度が例示されるが、特に限定されない。
樹脂成分は、インキ組成物に適度な印刷適性や粘弾性等の特性を付与するのに寄与する成分である。このような樹脂成分としては、従来から印刷用のインキ組成物用途に用いられてきた各種の樹脂を挙げることができるが、上記モノマーやオリゴマーとの相溶性を有するものであることが好ましく、スチレン−アクリル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性石油樹脂、ロジンエステル樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂、植物油変性アルキド樹脂、石油樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、スチレン−アクリル樹脂は、上記モノマーやオリゴマーとの相溶性が特に優れるので好ましく用いることができる。
スチレン−アクリル樹脂は、スチレンとアクリル酸エステルとの共重合体であり、市販のものを各種用いることができる。スチレン−アクリル樹脂を用いる場合、固形であるスチレン−アクリル樹脂を上記モノマーに溶解させてワニスとし、それをインキ組成物の調製の際に添加して用いるのが簡便である。この場合、ワニス中におけるスチレン−アクリル樹脂の含有量としては、ハンドリング性等を考慮して適宜決定されればよいが、一例として5〜50質量%程度を挙げることができる。
インキ組成物中に樹脂成分を添加する場合、インキ組成物中におけるその含有量は、5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、5〜10質量%がさらに好ましい。樹脂成分の含有量が上記の範囲であることにより、インキ組成物に適度な粘弾性を付与してミスチング等の発生を抑制できるとともに、インキ組成物の良好な硬化性を確保することができるので好ましい。
重合禁止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール化合物や、酢酸トコフェロール、ニトロソアミン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン等を好ましく例示することができ、中でもブチルヒドロキシトルエンをより好ましく例示することができる。インキ組成物にこのような重合禁止剤が添加されることにより、保存時に重合反応が進行してインキ組成物が増粘するのを抑制できる。インキ組成物中の重合禁止剤の含有量としては、0.1〜1質量%程度を例示することができる。
分散剤は、インキ組成物中に含まれる着色成分や体質顔料を良好な状態に分散させるために用いられる。このような分散剤は、各種のものが市販されており、例えばビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYK(商品名)シリーズ等を挙げることができる。
上記の各成分を用いて本発明のインキ組成物を製造するには、従来公知の方法を適用できる。このような方法としては、上記の各成分を混合した後にビーズミルや三本ロールミル等で練肉して顔料(すなわち着色成分及び体質顔料)を分散させた後、必要に応じて添加剤(重合禁止剤、アルコール類、ワックス類等)を加え、さらに上記モノマー成分や油成分の添加により粘度調整することが例示される。インキ組成物における粘度としては、ラレー粘度計による25℃での値が10〜60Pa・sであることを例示できるが、特に限定されない。
以下に実施例を挙げて本発明のインキ組成物をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載では、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は質量部を意味する。
表1及び2に示す配合で各材料を混合した後、三本ロールミルにて練肉し、実施例1〜8、及び比較例1のインキ組成物を調製した。なお、表1及び2に示した配合量は質量部であり、各材料の内容は下記に示すものとした。
カーボンブラック:カーボンブラック、三菱化学株式会社製、製品名MA−7
体質顔料:炭酸カルシウム、白石工業株式会社製、製品名白艶華T−DD
オリゴマー:塩素化ポリエステルアクリレート、サートマー社製、製品名CN736
モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
イルガキュア184:BASF社製、商品名イルガキュア184、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(α−ヒドロキシアルキルフェノン化合物)
イルガキュア369:BASF社製、商品名イルガキュア369、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(α−アミノアルキルフェノン化合物)
TPO:BASF社製、商品名LUCIRIN TPO、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(アシルホスフィンオキシド化合物)
EAB−SS:大同化成株式会社製、商品名EAB−SS、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物)
体質顔料:炭酸カルシウム、白石工業株式会社製、製品名白艶華T−DD
オリゴマー:塩素化ポリエステルアクリレート、サートマー社製、製品名CN736
モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
イルガキュア184:BASF社製、商品名イルガキュア184、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(α−ヒドロキシアルキルフェノン化合物)
イルガキュア369:BASF社製、商品名イルガキュア369、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(α−アミノアルキルフェノン化合物)
TPO:BASF社製、商品名LUCIRIN TPO、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(アシルホスフィンオキシド化合物)
EAB−SS:大同化成株式会社製、商品名EAB−SS、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物)
[硬化性評価]
各実施例及び比較例のインキ組成物のそれぞれについて、RI−2型展色機2分割ロール(明製作所製)により、印刷インキ組成物量0.1mL/204cm2をアート紙(三菱特アート110K)に展色したものを試験片とし、その後、160W/cmのメタルハライドランプ(焦点距離13cm、集光型、1灯;ヘレウス社製)を使用して試験片に紫外線を照射した。その際、指触によりタックフリーになる硬化速度で評価した。評価基準は下記の3段階とし、表1及び2に評価結果を記載した。
(評価基準)
○ :硬化速度が100m/min以上である
△ :硬化速度が60m/min以上、100m/min未満である
× :硬化速度が60m/min未満である
各実施例及び比較例のインキ組成物のそれぞれについて、RI−2型展色機2分割ロール(明製作所製)により、印刷インキ組成物量0.1mL/204cm2をアート紙(三菱特アート110K)に展色したものを試験片とし、その後、160W/cmのメタルハライドランプ(焦点距離13cm、集光型、1灯;ヘレウス社製)を使用して試験片に紫外線を照射した。その際、指触によりタックフリーになる硬化速度で評価した。評価基準は下記の3段階とし、表1及び2に評価結果を記載した。
(評価基準)
○ :硬化速度が100m/min以上である
△ :硬化速度が60m/min以上、100m/min未満である
× :硬化速度が60m/min未満である
[印刷紙面汚れ評価]
各実施例及び比較例インキ組成物のそれぞれについて印刷機を使用した実印刷を行い、その際の印刷紙面汚れを評価した。印刷に際しては、印刷機をLITHRONE LS426、湿し水をKG−502(1.5%;株式会社小森コーポレーション製)、印刷用紙を三菱特アート紙(菊版)として、標準水量から水ダイヤルを5ポイント下げた場合の印刷紙面における汚れ度合いを評価した。評価基準は下記の通りであり、その結果を表1及び表2の「印刷紙面汚れ」欄に示す。
○:印刷紙面の汚れが認められなかった
△:印刷紙面の汚れがわずかに認められた
×:印刷紙面の汚れが顕著に認められた
各実施例及び比較例インキ組成物のそれぞれについて印刷機を使用した実印刷を行い、その際の印刷紙面汚れを評価した。印刷に際しては、印刷機をLITHRONE LS426、湿し水をKG−502(1.5%;株式会社小森コーポレーション製)、印刷用紙を三菱特アート紙(菊版)として、標準水量から水ダイヤルを5ポイント下げた場合の印刷紙面における汚れ度合いを評価した。評価基準は下記の通りであり、その結果を表1及び表2の「印刷紙面汚れ」欄に示す。
○:印刷紙面の汚れが認められなかった
△:印刷紙面の汚れがわずかに認められた
×:印刷紙面の汚れが顕著に認められた
表1及び表2から明らかなように、本発明のインキ組成物によれば良好な硬化性と印刷時の汚れの抑制とを両立できることがわかる。また、実施例のなかでも、アシルホスフィンオキシド化合物を9質量%未満とすると、α−アミノアルキルフェノン化合物の不在下では硬化性が不足する傾向となり(実施例5)、α−アミノアルキルフェノン化合物の存在下では硬化性は維持できるものの印刷時の汚れが発生しがちであることがわかる。これらのことから、硬化性の維持と汚れの抑制という観点からは、アシルホスフィンオキシド化合物を9質量%以上用いることが特に好ましいことが理解できる。
Claims (7)
- 前記アシルホスフィンオキシド化合物を組成物中に9質量%〜12質量%含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物。
- 前記光重合開始剤として、さらにα−ヒドロキシアルキルフェノン化合物及び/又はジアルキルアミノベンゾフェノン化合物を含む請求項1〜5のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物。
- 前記光重合開始剤としてのα−アミノアルキルフェノン化合物の含有量が4質量%未満である請求項1〜6のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物。
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