以下、本発明の光導波路支持体の製造方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路支持体>
まず、製造方法の説明に先立ち、本発明の光導波路支持体の製造方法により製造される光導波路支持体の一例について説明する。
図1は、本発明の光導波路支持体の製造方法により製造される光導波路支持体の一例を示す斜視図である。
図1に示す光導波路支持体1は、所定の間隔で配置されている2本の光導波路11と、2本の光導波路11を支持する支持シート21と、を有する。
2本の光導波路11は、それぞれ長尺のシート状をなしており、長手方向の一端と他端との間で相互に光信号を伝送可能になっている。図1に示す光導波路11は、それぞれ主面を平面視したとき長方形をなしており、対向する短辺に光入出射面が位置している。
光導波路11は、光ファイバーや複数の光ファイバーを束ねてなる光ファイバー集合体であってもよいが、本実施形態では、シート状の光導波路である場合について説明している。
図2は、図1に示す光導波路支持体1の平面図である。なお、図2では、光導波路11の内部に形成されているコア部113とクラッド部114との境界を破線にて示している。
光導波路11は、図2に示すように、並列する4本のコア部113と、コア部113の側方に隣接するクラッド部114と、を含んでいる。コア部113は、クラッド部114よりも屈折率が高いため、コア部113に入射した光はコア部113に閉じ込められた状態で伝送される。
光導波路11の構成材料としては、例えば、ガラス材料、樹脂材料、あるいはこれらの複合材料等が挙げられる。このうち、少なくとも一部が樹脂材料で構成された光導波路11について、光導波路支持体1がより好ましく用いられる。このような光導波路11は、硬度や曲げ剛性といった機械的特性がやや低いため、支持シート21によって支持されることにより、光導波路11に負荷をかけることなくハンドリングすることが可能になる。このため、機械的特性に劣る光導波路11であっても品質を劣化させることなく容易に取り扱うことができる。
なお、1本の光導波路11に形成されるコア部113の本数は、4本に限定されず、1〜3本であっても、5本以上であってもよい。
また、光導波路支持体1が有する光導波路11の本数も、2本以上(複数)であれば特に限定されず、3本以上であってもよいが、多数の光導波路11を容易にハンドリング可能であるという効果と、光導波路支持体1の大きさと、のバランスから4〜30本程度であるのが好ましい。
また、複数の光導波路11は、配列した状態で支持シート21に支持されている。配列パターンとしては、特に限定されないが、例えば、複数の光導波路11の長軸同士が互いに平行になるパターンが挙げられる。これにより、光導波路支持体1の全体の面積を抑えつつ、多数の光導波路11を支持シート21に支持させることができる。
なお、互いに平行とは、完全な平行だけでなく、長軸同士がなす角度が20°以下となるように隣り合う光導波路11同士が傾いている配置も含む。また、光導波路11の長軸とは、光導波路11の主面において最大長さをとり得る軸のことをいい、短軸とは、長軸に直交する方向において最大長さをとり得る軸のことをいう。
また、図1に示すように2本の光導波路11が所定の間隔で配置されていることにより、光導波路11同士の接触を防止することができる。これにより、光導波路11同士の接触に伴う光導波路11の損傷を抑制することができる。
なお、2本の光導波路11は、必ずしも離間している必要はなく、互いに接していてもよい。この場合、例えば、クラッド部114の幅を十分に確保するなどして、コア部113に損傷が及ぶのを抑制することができる。
また、支持シート21が光導波路11を支持(固定)する位置は、特に限定されず、図1に示すように光導波路11の主面であっても、主面同士を繋ぐ面である側面であってもよい。しかしながら、支持シート21によって光導波路11における光の入出射が妨げられることは望ましくないため、支持シート21は、光導波路11の光路と干渉しない位置に設けられるのが好ましい。これにより、光導波路11は、支持シート21に支持された状態、すなわち光導波路支持体1の状態であっても、光の入出射が可能になる。このため、光導波路支持体1の状態のまま、例えば光導波路11の光路が健全か否かを検査する作業(光学特性の検査作業)を行うことができ、かかる観点からもハンドリング性が良好になる。そして、後に詳述するが、光導波路支持体1の状態のまま検査作業を行えば、複数の光導波路11は、相互の位置関係が高い精度で保たれた状態で検査に供されるため、より正確な検査を効率よく行うことができる。
なお、支持面積が広くなり、光導波路11を安定的に支持することが可能という観点からすれば、特に光導波路11の主面を支持するように構成されているのが好ましい。
支持シート21は、粘着性を有し、この粘着性によって2本の光導波路11を支持(固定)している。したがって、支持シート21は、粘着性を有するシートであれば、特に限定されない。
図1に示す支持シート21は、シート状をなしており、主面を平面視したとき長方形をなしている。そして、支持シート21は、その長軸が、光導波路11の長軸と交差するように配置されている。
光導波路11と支持シート21との交差角、すなわち光導波路11の長軸と支持シート21の長軸とがなす角度は、特に限定されないが、鋭角側の角度が30〜90°であるのが好ましく、60〜90°であるのがより好ましい。これにより、1枚の支持シート21によって多数の光導波路11をより安定的に支持することができる。その結果、多数の光導波路11を効率よくハンドリングすることが可能な光導波路支持体1が得られる。
なお、支持シート21の長軸とは、支持シート21の主面において最大長さをとり得る軸のことをいい、短軸とは、長軸に直交する方向において最大長さをとり得る軸のことをいう。
支持シート21のアスペクト比、すなわち短軸の長さに対する長軸の長さの比は、特に限定されないが、1.5〜100程度であるのが好ましく、2〜50程度であるのがより好ましい。これにより、1枚の支持シート21によって支持可能な光導波路11の数を多く確保することができ、かつ、支持シート21において十分な曲げ剛性が確保され、支持シート21を把持したときでも光導波路支持体1を安定してハンドリングすることができる。
また、光導波路支持体1を平面視したとき、支持シート21の長手方向の端部211は、光導波路11と重なっていてもよいが、好ましくは複数の光導波路11が配置されている領域よりも外側にはみ出しているのが好ましい。換言すれば、図2において、2本(複数)の光導波路11を包含する領域を「領域A」としたとき、支持シート21の長手方向の端部211は、いずれも領域Aの外側にはみ出している。このような構成にすることで、光導波路支持体1のハンドリング性がより良好になる。すなわち、光導波路支持体1をハンドリングする作業者や装置は、支持シート21のうち、領域Aからはみ出した部分を把持すれば、作業者や装置が光導波路11に接触することなくハンドリングすることができる。このため、かかる接触による光導波路11の損傷や汚染等を防止しつつ、多数の光導波路11を同時にハンドリングすることができる。その結果、多数の光導波路11を搬送したり、各種作業に供したりするのを効率よく行うことができる。
なお、このときの支持シート21のはみ出し長さL1は、特に限定されないものの、支持シート21の全長(長軸の長さ)の0.1〜50%程度であるのが好ましく、1〜30%程度であるのがより好ましい。はみ出し長さL1を前記範囲内に設定することにより、光導波路支持体1の全体が大きくなり過ぎるのを避けつつ、作業者や装置が支持シート21を把持するために必要かつ十分な面積を確保することができる。
一方、光導波路支持体1を平面視したとき、支持シート21の短手方向の端部212は、光導波路11の長手方向の端部111と重なっていてもよいが、好ましくは光導波路11の端部111とずれている。これにより、光導波路11の端部111と支持シート21との間に十分な距離が確保される。その結果、例えば光導波路11の一方の端部111に光を入射し、他方の端部111から出射する光量を測定するという検査作業を行うとき、出射した光が支持シート21に当たって散乱してしまうおそれが小さくなる。よって、光学検査の際、より正確な光量を測定することができるようになる。
支持シート21と光導波路11の端部111との距離L2は、光導波路11の曲げ剛性等に応じて適宜設定され、特に限定されないものの、光導波路11の全長(長軸の長さ)の0.01〜30%程度であるのが好ましく、0.05〜10%程度であるのがより好ましい。また、距離L2は、光導波路11の曲げ剛性等に応じて異なるものの、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.3〜10mm程度であるのがより好ましい。距離L2を前記範囲内に設定することにより、光学検査に対して支持シート21が悪影響を及ぼすのを避けつつ、支持シート21によって光導波路11をより確実に支持することができる。
距離L2が前記下限値を下回ると、入射光の状態あるいは受光素子の条件によっては、光学検査に対して支持シート21が悪影響を及ぼすおそれが出てくる一方、距離L2が前記上限値を上回ると、光導波路11の機械的特性等によっては、支持シート21と光導波路11の端部111とが離れ過ぎてしまい、例えば支持シート21を把持して持ち上げたときに光導波路11の端部111が大きく垂れ下がるため、安定したハンドリングが見込めなくなるおそれがある。
また、支持シート21の幅(短軸の長さ)は、光導波路11の全長と同じであったり、全長より長くてもよいが、光導波路11の全長より短いことが好ましい。これにより、光導波路11の端部111が支持シート21からはみ出すことになり、光学検査に対して支持シート21が悪影響を及ぼすのを避けることができる。また、支持シート21によって光導波路11を十分に支持することができ、例えば検査工程において光導波路11の端部111が撓み易くなって検査作業の効率が低下するのを避けることができる。
支持シート21の構成材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエーテル系樹脂のような各種樹脂材料、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金のような各種金属材料、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスのような各種ガラス材料、アルミナ、ジルコニアのような各種セラミックス材料等が挙げられる。また、これらのうちの2種以上を複合した複合材料も用いられる。
このうち、支持シート21の構成材料としては、樹脂材料を含む材料が好ましく用いられる。これにより、支持シート21によって光導波路11を損傷させるおそれを小さくすることができる。
また、支持シート21の厚さは、構成材料の機械的特性や支持する光導波路11の数、支持シート21の形状やサイズ等に応じて適宜設定され、特に限定されないものの、一例として20〜1000μm程度であるのが好ましく、50〜500μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持シート21には、多数の光導波路11を支持するのに必要な剛性に加え、適度な可撓性が付与される。その結果、支持シート21を介して外部から振動等が加わったときでも、その振動を緩和させることができ、振動によって光導波路11が脱落したりするのを抑制することができる。
また、支持シート21については、その透光性を問わないものの、好ましくは透光性を有するものとされる。これにより、支持シート21越しに光導波路11の外観を視認することができるようになる。このため、光導波路支持体1の状態でも、光導波路11の外観を検査する作業を行うことができる。その結果、検査作業の効率化を図ることができる。また、光導波路支持体1によれば、複数の光導波路11を並べた状態を容易に維持することができるので、同時に複数の光導波路11の外観を容易に検査することもできる。
支持シート21の全光線透過率は、特に限定されないが、50%以上であるのが好ましく、75%以上であるのがより好ましい。これにより、支持シート21越しであっても光導波路11の外観をより正確に検査することができる。
なお、支持シート21の全光線透過率は、JIS K 7375に規定された全光線透過率の求め方に準拠して測定され、測定波長は600〜1800nmの範囲である。また、上記全光線透過率は、厚さ100μmの試験片についての測定値である。
また、支持シート21は、前述したように粘着性を有し、この粘着性によって2本の光導波路11を支持している。
かかる粘着性は、支持シート21自体が発現するものであっても、支持シート21が基材と粘着層との積層体であってかかる粘着層が発現するものであってもよい。
このように粘着性によって光導波路11を支持することにより、適度な力で支持することができるので、支持によって光導波路11が損傷を受けたりするおそれを小さくすることができる。また、支持シート21から光導波路11を取り外すときも、比較的小さな力で外すことができるので、光導波路11が損傷を受け難くなる。
粘着層の厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、3〜50μm程度であるのがより好ましい。
また、粘着層の構成材料としては、例えば、シリコーン系粘着剤、ポリ塩化ビニル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エラストマー系粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、ポリビニルエーテル樹脂系粘着剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
支持シート21の粘着力は、特に限定されないが、0.01〜30[N/20mm]であるのが好ましく、0.05〜20[N/20mm]であるのがより好ましい。これにより、多数の光導波路11を支持するときでも、光導波路11が剥離することなく、確実に支持することができる。その結果、光導波路支持体1のハンドリング性をより高めることができる。また、光導波路11に対して支持シート21を粘着させた後、位置の修正等で再び剥がすときでも、光導波路11に損傷が及ぶのを防ぐことができる。
なお、支持シート21の粘着力は、例えば、JIS Z 0237:2009に準拠して測定される。
また、支持シート21の粘着性は、いわゆる微粘着タイプであっても、紫外線(UV)硬化タイプであっても、熱硬化タイプであってもよいが、微粘着タイプまたはUV硬化タイプであるのが好ましい。
微粘着タイプの場合、環境によらず、一定の粘着力が期待できるので、かかる観点から光導波路11の脱着を容易に行うことができるという利点がある。
一方、UV硬化タイプの場合、UVの照射の有無あるいは照射量によって、粘着力を調整することができる。このため、光導波路11の脱着に際してUVの照射を行うことにより、脱着をより容易に行うことができる。一般的には、UVの照射によって粘着力が低下するタイプが多い。この場合、UV照射後の粘着力は、特に限定されないが、UV照射前の粘着力の0.1〜50%程度であるのが好ましく、0.5〜20%程度であるのがより好ましい。このような粘着力の差を伴うことにより、例えば大きな粘着力によって光導波路11を確実に支持するという効果と、粘着力が低下することによって光導波路11の支持を容易に解除するという効果と、を両立させることができるという利点がある。
また、UV硬化タイプの場合には、支持シート21のうち、光導波路11を支持していない領域B(図2参照)の粘着性を、事後的に低下させることができる。これにより、領域Bに異物等が付着したり、領域Bに光導波路11が付着してしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
換言すれば、支持シート21では、光導波路11を支持していない領域Bの粘着性は、光導波路11を支持している領域C(図2参照)の粘着性よりも小さいことが好ましい。このような支持シート21によれば、光導波路11を確実に支持するという効果と、領域Bに異物等が付着するのを抑制するという効果と、を両立させることができる。その結果、多数の光導波路11を同時に搬送等するときでも、異物付着による光導波路11の損傷等が抑えられるため、よりハンドリング性に富んだ光導波路支持体1が得られる。
領域Bの粘着力は、領域Cの粘着力よりも小さければよいが、好ましくは領域Cの粘着力の0.1〜50%程度であるのが好ましく、0.5〜20%程度であるのがより好ましい。これにより、上記の効果がより顕著になる。
なお、UV硬化タイプは、紫外線以外の放射線(赤外線、可視光、電子線等)により硬化するタイプも含む。
また、支持シート21の平面視形状は、長方形に限定されず、いかなる形状であってもよく、例えば、長円形のような円形、六角形、八角形のような多角形等であってもよい。
以上のように、光導波路支持体1は、複数の光導波路11を同時に搬送したり、各種工程に供したりするといったハンドリングを可能にする。
また、光導波路11に直接触れないでハンドリングすることができるので、光導波路11に汚染や傷等をもたらすおそれが小さくなり、光導波路11の光学特性が低下するのを抑制することができる。
また、複数の光導波路11を並べた状態が維持されるので、光導波路11同士の位置精度あるいは光導波路11と支持シート21との位置精度をそれぞれ高く保つことができる。このため、例えば、光導波路11の光学特性を検査するとき、光導波路支持体1の状態のまま検査を行えば、前述した位置精度の恩恵を受けることができ、光軸合わせ等を簡単に行うことができる。その結果、検査作業を正確にかつ効率よく行うことができる。
また、光導波路支持体1は、必要に応じてロール状に巻き取られた状態で保管や搬送等に供されてもよい。
さらに、光導波路支持体1は、箱体等に収容されることにより、そのまま梱包に供される。これにより、梱包作業を効率よく行うことができる。
<光導波路支持体の製造方法>
≪第1実施形態≫
次に、本発明の光導波路支持体の製造方法の第1実施形態について説明する。
図3〜5は、それぞれ本発明の光導波路支持体の製造方法の第1実施形態を説明するための斜視図である。なお、図3〜5では、図1に示す光導波路支持体1を製造する方法について図示している。
第1実施形態に係る光導波路支持体1の製造方法は、[1]光導波路シート10と粘着性を有する粘着シート30(キャリアシート)とが積層されてなる積層シート40を準備する準備工程と、[2]光導波路シート10を切断して光導波路11を切り出す切断工程と、[3]光導波路シート10のうち光導波路11以外の余白部分12を除去し、光導波路11を残存させる余白除去工程と、[4]光導波路11と支持シート21とを積層する支持シート積層工程と、[5]粘着シート30に放射線を照射するとともに、光導波路11をマスクとして支持シート21に放射線を照射し、照射領域の粘着性を低減させる放射線照射工程と、[6]粘着シート30を除去する粘着シート除去工程と、[7]光導波路支持体1を検査する検査工程と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
[1]準備工程
まず、複数の光導波路11が形成されている(内包する)光導波路シート10と、粘着性を有する粘着シート30と、が積層されてなる積層シート40を準備する。
光導波路シート10は、図3(a)に示すように、複数の光導波路11を含んでいる(内包している)。すなわち、光導波路シート10は、複数の光導波路11とそれ以外の余白部分12とで構成されており、光導波路11に対応する領域を切り出すことにより、個別の光導波路11を得ることができるようになっている。
なお、光導波路11は、いかなる方法で形成されたものであってもよく、例えば、放射線を部分的に照射することで屈折率を変化させる方法、フォトリソグラフィー技術を用いて屈折率の異なる材料を適宜成膜する方法等により形成されたものであってもよい。
また、図3(a)に示す破線は、光導波路11の外縁、すなわち光導波路11と余白部分12との境界に対応しているものの、物理的な境界が存在していなくてもよい。
図3に示す粘着シート30は、光導波路シート10の外形とほぼ同じ外形をもつシートである。なお、粘着シート30の外形形状は、これに限定されず、光導波路シート10より小さくても大きくてもよい。
粘着シート30は、粘着性を有しており、この粘着性によって光導波路シート10に積層される。
粘着シート30の粘着性は、紫外線(UV)硬化タイプである。UV硬化タイプの場合、UVの照射の有無あるいは照射量によって、粘着力を調整することができる。このため、光導波路シート10と積層したり、あるいは、積層後に光導波路シート10から剥離したりする作業を効率よく行うことができる。
UV照射前の粘着力は相対的に大きいので、この状態で光導波路シート10と粘着シート30とを積層することにより、積層シート40が得られる。
なお、UV硬化タイプは、紫外線以外の放射線(赤外線、可視光、電子線等)により硬化するタイプも含む。
また、粘着シート30の粘着性は、粘着シート30自体が発現するものであっても、粘着シート30が基材と粘着層との積層体であってかかる粘着層が発現するものであってもよい。
粘着層の厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、3〜50μm程度であるのがより好ましい。
また、粘着層の構成材料としては、例えば、シリコーン系粘着剤、ポリ塩化ビニル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エラストマー系粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、ポリビニルエーテル樹脂系粘着剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
粘着シート30の粘着力は、特に限定されないが、0.01〜30[N/20mm]であるのが好ましく、0.05〜20[N/20mm]であるのがより好ましい。これにより、積層シート40において光導波路シート10と粘着シート30とが互いにずれるのを防止することができる。
なお、粘着シート30の粘着力は、例えば、JIS Z 0237:2009に準拠して測定される。
[2]切断工程
次に、光導波路シート10を切断して、光導波路11を切り出す(図3(b)参照)。
光導波路シート10の切断方法は、積層シート40のうち、光導波路シート10のみを切断し、粘着シート30を切断しない方法、すなわちハーフカット可能な方法であれば、特に限定されない。例えば、機械的方法であっても、レーザー加工法であっても、電子線加工法であっても、ウォータージェット加工法であっても、熱加工法等であってもよい。
なお、本工程では、光導波路シート10に加えて、粘着シート30がその厚さ方向に一部切断されてもよい。すなわち、粘着シート30が厚さ方向において完全に切断されなければ、多少切り込みが入ってもよい。
また、光導波路シート10についても、その厚さ方向の一部のみが切断された状態であってもよい。この場合、切断されずにつながっている部分は、後述する工程において、余白部分12を除去するとともに切断されればよい。
なお、切り出されるときの光導波路11同士の間隔は、その後の工程において光導波路支持体1が作製されるときにおいても、そのまま維持されることとなる。したがって、本工程における光導波路11同士の間隔は、その後の工程における便宜等を考慮して設定される。
一例として、光導波路11同士の間隔は、光導波路11の幅(短軸の長さ)の0.1〜10倍程度であるのが好ましく、0.5〜5倍程度であるのがより好ましい。これにより、例えば検査工程において、隣り合う光導波路11同士の間で検査結果に影響を及ぼし合うおそれを低減することができる。また、光導波路11同士の間隔が長くなり過ぎることによる弊害、例えば光導波路支持体1が大きくなり過ぎて、かえってハンドリング性が低下してしまうのを防止することができる。
また、光導波路シート10の切断形状は、図3に示す形状に限定されない。例えば、隣り合う光導波路11の間を切断する切断線が、隣り合う光導波路11同士で共有されるような切断形状であってもよい。この場合、隣り合う光導波路11同士の間隔は、切断ツールによる切り代(カーフ幅)と等しくなる。これにより、隣り合う光導波路11同士の間隔を、より精密に制御することができる。
[3]余白除去工程
次に、光導波路シート10のうち、光導波路11以外の余白部分12を除去する。これにより、図4(a)に示すように、光導波路11が粘着シート30上に残存することとなる。
余白部分12を除去する方法としては、例えば余白部分12を引っ張って粘着シート30から強制的に引き剥がす方法が挙げられる。
この他、粘着シート30の粘着性がUV硬化タイプである場合には、余白部分12を引き剥がす前に、余白部分12に対して選択的にUVを照射するようにしてもよい。これにより、余白部分12の粘着性が低減するため、引き剥がす作業をより容易に行うことができる。
余白部分12に対して選択的にUVを照射するためには、例えば、余白部分12に対応する開口を備えたマスク等を介してUVを照射するようにすればよい。
[4]支持シート積層工程
次に、図4(b)に示すように、光導波路11と支持シート21とを積層する。支持シート21は、光導波路11の粘着シート30側とは反対側の面に貼り付けられる。これにより、支持シート21と粘着シート30との間に光導波路11が挟まれた状態となる。
ここで、複数の光導波路11は、切断工程において切り出されたときの位置精度が維持されたまま、支持シート21によって支持される。一般にシートの切断は、数値制御等を利用して全自動または半自動に行われるため、いずれの方法を用いても高い位置精度が期待できる。そして、ハーフカットによって切り出された複数の光導波路11は、粘着シート30に支持された状態で余白除去工程に供されるため、余白除去工程を経てもこの高い位置精度はそのまま維持される。したがって、本工程では、高い位置精度が維持されたまま支持シート21によって支持することができる。その結果、最終的には、光導波路11同士の高い位置精度あるいは光導波路11と支持シート21との高い位置精度が、そのまま光導波路支持体1に引き継がれる。このようにして得られた光導波路支持体1は、例えば、光導波路11の光学特性を検査する工程にそのまま供されることができ、この際、高い位置精度の恩恵を受けて、光軸合わせ等を簡単に行うことができる。その結果、検査作業を正確にかつ効率よく行うことができる。
なお、本工程は、必要に応じて行えばよく、例えば前述したように工程[3]で得られた積層体を光導波路支持体とする場合、本工程を省略することができる。
[5]放射線照射工程
次に、粘着シート30に放射線を照射するとともに、光導波路11をマスクとして支持シート21に放射線を照射する。すなわち、粘着シート30越しに(図4(b)の下方から)支持シート21に向けて放射線を照射し、粘着シート30、および、支持シート21のうち光導波路11が重なっていない部分に、それぞれ放射線を到達させる。
具体的には、粘着シート30は、放射線を遮るものがないので、ほぼ全面に放射線が到達する。一方、図2に示す支持シート21のうち、光導波路11を支持している領域Cでは、光導波路11の陰になって放射線が到達しないあるいは到達する光量が小さくなる。また、光導波路11が支持されていない領域Bには、光導波路11の陰になっていないので十分な光量の放射線が到達する。その結果、領域Bでは、UV硬化が生じて粘着性が低減する。そして、前述したように、領域Bの粘着性を領域Cの粘着性よりも小さくすることができる。
また、上記観点から、粘着シート30は、透光性を有していることが好ましい。具体的には、粘着シート30の光線透過率は、特に限定されないが、60%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。これにより、粘着シート30越しに放射線を照射したとき、支持シート21まで放射線を確実に到達させることができる。
なお、粘着シート30の光線透過率は、例えば、JIS A 5759:2008に規定された建築窓ガラス用フィルムに関する規格のうち、6.6.3紫外線透過率試験方法に準じて測定される。このとき、試験片として厚さ100μmのシートを用い、測定波長を365nmとする。
一方、光導波路11をマスクとして十分に機能させるためには、光導波路11の透光性が低いことが好ましい。これにより、領域Cに到達する放射線の線量(光量)が抑えられ、領域Cの粘着性が著しく低下するのを防止することができる。その結果、放射線を照射しても、光導波路11が支持シート21によって支持される状態が解除されてしまうのを防止することができる。具体的には、光導波路11の光線透過率は、放射線の照射強度や照射時間によっても異なるが、粘着シート30の光線透過率より5%以上低いことが好ましく、10%以上低いことが好ましい。これにより、光導波路11の光線透過率と粘着シート30の光線透過率との差が十分に大きくなるため、放射線の照射強度や照射時間を適宜調整することによって、領域Cの粘着性を確保しつつ、領域Bの粘着性を十分に低減させることができる。その結果、最終的に、領域Bに異物や光導波路11が付着してしまう不具合を防止し得る光導波路支持体1が得られる。
なお、光導波路11の光線透過率は、例えば、JIS A 5759:2008に規定された建築窓ガラス用フィルムに関する規格のうち、6.6.3紫外線透過率試験方法に準じて測定される。このとき、試験片として厚さ100μmのシートを用い、測定波長を365nmとする。
放射線の照射量は、特に限定されないが、50mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下であるのが好ましく、100mJ/cm2以上500mJ/cm2以下であるのがより好ましい。この範囲内で放射線を照射することにより、UV硬化タイプの粘着シート30や支持シート21の粘着性を効率よく調整することができる。
また、本工程において放射線を照射した後の粘着シート30の粘着力については、支持シート21の粘着力よりも小さいことが好ましい。すなわち、放射線を照射した後の粘着シート30と光導波路11との粘着力は、支持シート21と光導波路11との粘着力よりも小さいことが好ましい。これにより、後述する粘着シート除去工程において、光導波路11から粘着シート30を剥離するとき、それに伴って光導波路11から支持シート21までも剥離してしまうのを防止することができる。
[6]粘着シート(キャリアシート)除去工程
また、工程[5]において粘着シート30越しに放射線が照射されることにより、粘着シート30の粘着性も低減させることができる。これにより、光導波路11から粘着シート30を容易に剥離(除去)することができるようになる。その結果、光導波路11同士の位置関係あるいは光導波路11と支持シート21との位置関係を維持したまま、支持シート21のみで光導波路11を支持させることができる。これにより、例えば、その後の工程において支持シート21から光導波路11を容易に取り外したり、光導波路11の検査工程を行い易くしたりすることのできる、ハンドリング性が良好な光導波路支持体1が得られる(図5(a)参照)。
また、このようにして作製された光導波路支持体1は、その状態のまま、例えば光導波路11の光路が健全か否かを検査する作業(光学特性の検査作業)に供することができる。この検査作業は、例えば以下のように行うことができる。
[7]検査工程
まず、図5(b)に示すように、光導波路11の一方の端部111に発光素子51を対向させ、光導波路11の他方の端部111に受光素子52を対向させる。そして、発光素子51から出射した光を光導波路11に入射させ、光導波路11から出射した光を受光素子52で受光する。そして、受光した光の光量を測定することにより、光学特性を検査することができる。このとき、複数の光導波路11は、互いに高い位置精度を維持しているので、例えば1本の光導波路11に対して光軸合わせをした場合、別の光導波路11に対する光軸合わせを効率よく行うことができ、検査作業の効率化を図ることができる。
さらに、光導波路支持体1は、その後の工程、例えば光導波路11の端部111に光コネクター等を取り付ける工程にそのまま供することができる。これにより、光導波路11を直接把持することなく光導波路11を固定しながら取り付け作業を行うことができるため、光導波路11に損傷等の不具合を及ぼすことなく効率よく光コネクター等を取り付けることができる。
同様に、光導波路支持体1は、その後の工程、例えば光導波路11の端面を研磨する工程にもそのまま供することができる。この場合も、光導波路11を直接把持することなく光導波路11を固定することができるので、効率よく作業を行うことができる。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光導波路支持体の製造方法の第2実施形態について説明する。
以下、第2実施形態に係る光導波路支持体の製造方法について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
本実施形態は、支持シート積層工程および粘着シート(キャリアシート)除去工程が省略されている以外、第1実施形態と同様である。すなわち、図4(a)に示す光導波路支持体1’は、光導波路11とそれを支持するシートとを備える積層体という点で、図1に示す光導波路支持体1と同等であるともいえるので、本実施形態は、かかる光導波路支持体1’を製造する方法に相当する。
本実施形態に係る光導波路支持体1’の製造方法は、[1]光導波路シート10と粘着シート30(キャリアシート)とが積層されてなる積層シート40を準備する準備工程と、[2]光導波路シート10を切断して光導波路11を切り出す切断工程と、[3]光導波路シート10のうち光導波路11以外の余白部分12を除去し、光導波路11を残存させる余白除去工程と、[4]粘着シート30に放射線を照射し、照射領域の粘着性を低減させる放射線照射工程と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
[1]準備工程
まず、第1実施形態と同様、複数の光導波路11が形成されている光導波路シート10と、粘着性を有する粘着シート30と、が積層されてなる積層シート40を準備する(図3(a)参照)。
[2]切断工程
次に、第1実施形態と同様、光導波路シート10を切断して光導波路11を切り出す(図3(b)参照)。
[3]余白除去工程
次に、第1実施形態と同様、光導波路シート10のうち、光導波路11以外の余白部分を除去する(図4(a)参照)。
[4]放射線照射工程
次に、粘着シート30(キャリアシート)に放射線を照射し、照射領域の粘着性を低減させる。すなわち、光導波路11越しに(図4(a)の上方から)粘着シート30に向けて放射線を照射する。これにより、粘着シート30のうち、光導波路11が重なっていない部分に放射線が到達する。一方、粘着シート30のうち、光導波路11を支持している領域には、光導波路11の陰になって放射線が到達しないあるいは到達する光量が小さくなる。その結果、照射領域の粘着性を選択的に低減させることができる。以上により、光導波路支持体1’が得られる。かかる光導波路支持体1’は、支持シート21が粘着シート30に置き換わっている点で第1実施形態と異なるものの、粘着性によって複数の光導波路11を支持している点では同等であるため、光導波路支持体1と等価である。
なお、放射線は、必ずしも光導波路11越しに照射する必要はなく、粘着シート30の粘着性を選択的に低減させる必要がない場合には、接着シート30の光導波路11とは反対側から(図4(a)の下方から)粘着シート30に向けて放射線を照射すればよい。かかる方法によっても、光導波路支持体1’が得られる。
その後、必要に応じて、検査工程を行うようにしてもよい。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の光導波路支持体の製造方法は、前述した実施形態に任意の工程が付加されたものであってもよいし、前述した実施形態の工程順序を入れ替えたものであってもよい。