JP2017091934A - プラズマ処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】均一な処理を実現できるプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法を提供する。【解決手段】プラズマが形成される処理室が内部に配置された真空容器上部を構成して前記プラズマを形成するための電界が透過する誘電体製の窓部材と、この窓部材の上方に配置され前記電界が内側を伝播する第1の導波管と、この第1の導波管と前記窓部材との間に配置され当該第1の導波管からの前記電界が内部に導入されて前記窓部材に供給される第2の導波管とを備え、前記第2の導波管が、前記窓部材の中心部上方に配置された中心側の導波管と当該中心側導波管の外周側でこれを囲んで配置された複数の外周側の導波管と、前記中心側及び外周側の導波管から前記窓部材に導入される前記電界に所定の位相差を形成する手段と、前記導入される前記電界の透過率を異ならせる手段とを備えたプラズマ処理装置。【選択図】 図1
Description
本発明は、真空容器内部に配置された処理室内に供給された処理用のガスを当該処理室内に供給された電界を用いてプラズマを形成し、この処理室内に配置された半導体ウエハ等の処理対象である基板状の試料を処理するプラズマ処理装置に係り、特に、プラズマを形成するための電界を処理室外部に配置された導波路を通して伝播させ処理室に供給するプラズマ処理装置に関する。
半導体デバイスを製造する工程では、一般にプラズマを用いて半導体ウエハ上面上に予め配置されたマスクを含む複数の膜層をエッチングするドライエッチングが行われている。このようなドライエッチングを行うためのプラズマ処理装置は、一般に、真空容器及びこれの内部に配置された処理室と、真空容器に接続され処理室内に処理用のガスを供給するガス供給装置、処理室内の圧力を排気するターボ分子ポンプ等の真空ポンプ、処理室内に配置されその上面に基板が載置される試料台、処理室内に前記処理用のガスを励起してプラズマを発生させるための電界を処理室内に供給するプラズマ発生装置等を備えて構成されている。
近年の半導体デバイスの製造工程においては、光リソグラフィーによるデバイスを構成する回路の微細化は限界に近づいており、更に大きなデバイスの集積度を実現するために、多重露光やスペーサパターニング等のプロセスが主流になりつつある。このような多重露光やSADP(Self Aligned Double Patterning)に代表されるスペーサパターニングプロセスでは、従来の技術よりも上記膜層をドライエッチングする工程の数が増加している。
一方で、このようなエッチングの工程の増加により、工程において生じる基板の面内方向についての僅かなエッチング性能の均一性の低下が積算されて大きな均一性の低下とて顕在化してしまうという問題が生じていた。このため、基板の面内方向いついて許容される均一性の低下の量が小さくなり、所期の結果を歩留まり良く達成することが難しくなってきている。このことから、最先端ロジックを代表とする半導体デバイスを製造する工程、特にFEOL(Front End Of Line)工程では、基板をその面内方向についてより高い均一性で処理することが求められている。
従来のプラズマ処理装置においては、基板の面内方向についての均一性を実現する手法として、処理室内部および当該内部のガスやプラズマ等の粒子の排気の流れを軸対称化する技術や、形成するプラズマの密度や強度を軸対称化する技術が用いられてきた。特に、処理室内に供給されたガスの粒子を励起してプラズマを形成する電界としてマイクロ波等の高周波電力によるものを用いるものにおいて、高周波電力による電界の強度の分布は直接的にプラズマの密度や強度の分布に影響を与えることから、この電界の分布を所望なものに調節する技術が開発されてきた。
例えば、プラズマを形成するための電界としてマイクロ波によるものを用いるプラズマ処理装置では、真空容器を構成して当該マイクロ波の電界は、これが透過できる誘電体製の部材を通してその下方に位置する処理室内に供給されるものが一般的である。このような構成では板状の誘電体製の部材の下方でプラズマが生成されるため、誘電体製の部材下方におけるマイクロ波の電界の強度が高い箇所ではプラズマの密度も高くなり、当該電界強度が低い箇所ではプラズマの密度は低くなる。
このような分布が生じてしまうプラズマの密度や強度を軸対称化する技術としては、マイクロ波の円偏波を形成することによりマイクロ波の電界の強度をその進行方向について周期的に変化させて、強度を電界の進行方向に沿った円偏波の軸周りに時間的に平坦化させるものが、従来より知られている。この従来技術を用いることにより、電界の円偏波の中心と基板の中心とを合致または近接させて配置することで基板上面に軸対称なエッチング処理を施すことを図っている。
また、基板の半径方向についてのエッチング処理の均一性を向上させるための技術として、伝播される電界の強度や密度を処理室または基板の中心部とその外周部とで異ならせて伝播する導波管の構成を備えたものが知られている。このような従来の技術の例は、特開平7−296990号公報(特許文献1)に記載されている。
本従来技術は、円筒形の容器内部の処理室と、その上方に配置されマイクロ波の電界の円偏波が内部を伝播する導波管と、処理室と導波管との間に配置されたバッファ室内において処理室の中心軸あるいは処理室内に配置される半導体ウエハの中心軸の上方に配置された二次導波管とを備え、二次導波管の内部に回転する角度によって当該二次導波管を伝播するマイクロ波の電界の透過率が変化する手段を配置したプラズマ処理装置が開示されている。このプラズマ処理装置では、二次導波管内を通って処理室内に供給される電界の強度または密度と二次導波管外部のバッファ室内部を通って処理室内に供給する電界の強度または密度とが、二次導波管内の電界の透過率を調節する手段によって所期の異なるにされることで、処理室内での電界またはプラズマの密度や強度が所期の分布を有するものに調節される。
上記の従来技術では、次の点について考慮が不十分であったため、問題が生じていた。
すなわち、上記の従来技術は、処理室上方に配置されて真空容器を構成する誘電体製の板状の部材であってマイクロ波の電界が透過する窓部材の上方にマイクロ波の電界の分布を処理室または窓部材の中央部と外周部とで異なるものに調節する構成を有している。しかしながら、このような構成においては、ある条件下で誘電体製の窓部材内部をマイクロ波が進行する際に、当該窓部材を囲むリアクタ壁との境界でマイクロ波の一部が反射して誘電体窓の中心側へ向かって進行してもともとの中心部のマイクロ波の電界と合成されることで、窓部材の外周部に対して中心部のマイクロ波の電界の強度が高くってしまう。
このために処理室の内部においても処理室の外周側部分に対して中心部の電界の強度及びプラズマ密度が高くなり、ウエハに対して均一な処理ができなくなるという問題が生じていた。このような問題点について上記従来技術では考慮されていなかった。
本発明の目的は、均一な処理を実現できるプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法を提供することにある。
上記目的は、その内側が減圧されてプラズマが形成される処理室が内部に配置された真空容器と、この真空容器上部を構成して前記プラズマを形成するための電界が透過する誘電体製の窓部材と、この窓部材の上方に配置され前記電界が内側を伝播する第1の導波管と、この第1の導波管と前記窓部材との間に配置され当該第1の導波管からの前記電界が内部に導入されて前記窓部材に供給される第2の導波管と、処理室内部に配置され処理対象のウエハが載置される試料台とを備え、前記第2の導波管が、前記窓部材の中心部上方に配置された中心側の導波管と当該中心側導波管の外周側でこれを囲んで配置された複数の外周側の導波管と、前記中心側及び外周側の導波管から前記窓部材に導入される前記電界に所定の位相差を形成する手段と、前記導入される前記電界の透過率を異ならせる手段とを備えたプラズマ処理装置により達成される。
また、真空容器内部に配置されその内側が減圧される処理室内に配置された試料台上に処理対象のウエハを載置し、前記真空容器上部を構成して前記プラズマを形成するための電界が透過する誘電体製の窓部材の上方に配置された第1の導波管及びこの第1の導波管と前記窓部材との間に配置された第2の導波管を通して電界を前記窓部材に供給して、当該窓部材を透過した前記電界を用いて前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを処理するプラズマ処理方法であって、前記第2の導波管が、前記窓部材の中心部上方に配置された中心側の導波管と当該中心側導波管の外周側でこれを囲んで配置された複数の外周側の導波管とを備え、前記中心側及び外周側の導波管の間でこれら導波管から前記窓部材に所定の位相差を形成するとともに透過率を異ならせて前記電界を供給することにより達成される。
本発明によれば、誘電体製の窓部材の内部で電界がその中心部に集中する程度を調節して下方の処理室に伝播される電界とこれにより形成されるプラズマの窓部材または処理室あるいはウエハ等試料の半径方向または周方向についての分布を所望のものに実現することができ、試料表面のプラズマによる処理の量やその特性と処理結果としての形状の寸法の分布を所望のものに近付けることができる。
上記した以外の構成および効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の実施の形態を図面を用いて以下説明する。
以下、本発明の実施例を図1乃至15を用いて説明する。図1は、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
本実施例に係るプラズマ処理装置は、真空容器内部に配置された処理室内にプラズマを形成するために当該処理室内に供給される電界としてマイクロ波の電界を用いて処理室内に供給された処理用ガスの原子または分子等の粒子を励起してプラズマ化して、処理室内に配置された半導体ウエハ等基板状の試料上面に予め形成されたマスクと処理対象の膜層とを含む膜構造をエッチングするものである。特には、電界と共に処理室内に磁界を供給して、これら電界と磁界との間で特定の共振(ECR=Electron Cyclotron Resonance:電子サイクロトロン共鳴)を相互作用を生起させてプラズマを形成する、所謂、マイクロ波ECR型のプラズマエッチング処理装置である。
図1に示されるプラズマ処理装置100は、円筒形を有して内部に処理対象の基板状の試料である半導体製のウエハ107が配置されてプラズマが形成される空間である処理室115を有した真空容器104と、その外側上方に配置されて処理室115内にマイクロ波の電界および当該マイクロ波の周波数に合わせた強度の磁界とを供給してプラズマを形成するプラズマ形成装置とを備えて構成されている。また、真空容器104の下方には図示されていない真空ポンプと排気用管路とが真空容器104の底面に連結されて配置されている。
真空容器104の上部は、円板形状を有して円筒形の側壁の上端上方に、当該円板の外周縁下面と真空容器104の側壁との間にOリング等のシール部材を挟んで載せられる石英等の誘電体製の窓部材105が配置され、シール部材により窓部材105の内外が気密に封止されて真空容器104が構成されている。窓部材105の上方には、マイクロ波の電界が処理室115に向けて内部を伝播する第1の導波管103と、窓部材105の上面と第1の導波管103の下端部との間に配置され第1の導波管103より径が大きく窓部材105上方に載せられた円筒形の空洞部116とが配置されている。
第1の導波管103は、下端部から上下方向にその軸が延在する断面が円形を有した円筒部と、この円筒部の上端部にその一端部が連結され当該上端部から水平方向にその軸が延在する断面が矩形(方形)の方形部と、これら円筒部と方形部との間でこれらを接続する変換部と、方形部の他端側に配置されマイクロ波の電界を発振して形成するマグネトロン等のマイクロ波電源101とを備えている。さらに、空洞部116及び真空容器104の外周と空洞部116上方の第1の導波管103の外周を囲んで配置されて直流電力が供給されて上記磁界を形成する複数段のコイル(ソレノイドコイル)106及びこれを囲んで配置されたヨークとが配置されている。
なお、本実施例では、第1の導波管103の円筒部の途中に、内部を伝播するマイクロ波の電界を円偏波化する円偏波器102が配置されている。また、空洞部116の下面を構成する窓部材105の上面上方には、円形の金属等導電体製の導体板114とその中心部及びその外周部の上方に配置され円筒形を有した金属製の複数の第2の導波管113が配置されている。
真空容器104内部の窓部材105下方の処理室115は、円筒形状を有し気密に区画された空間である。処理室115内の下部には、ウエハ107がその上方に裁置される円形の上面を有し円筒形状を備えた試料台108が配置されている。
試料台108は円筒または円板形状を有した金属製の基材を備え、基材の上部に配置され平坦な上面を有した凸部の当該上面は、アルミナ或いはイットリア等のセラミクスの材料から構成された図示しない誘電体製の膜により覆われてウエハ107がその上に載せられる載置面を構成する。基材の内部には、円板または円筒の中心軸の周りに多重の円弧状あるいは螺旋状に冷媒流路が配置されている。この冷媒流路には、その入口及び出口と管路を介して連結された図示しない真空容器104外部の冷凍サイクルを有したチラーユニット等冷媒温度調節器において温度が所定の範囲内の値に調節された冷媒が冷媒流路内に導入されて熱交換した後に流出して冷媒温度調節器に戻り温度調節されて再度供給されて循環する。
基材の円筒形の凸部上面を覆って配置された誘電体製の膜内部には処理室115内にプラズマが形成されて実施されるウエハ107の処理中に静電気力によりウエハ107を膜上面に静電吸着するための直流電力が供給されると共に、プラズマの電位との電位差に応じてプラズマ中のイオン等の荷電粒子をウエハ107上面に誘引するためのバイアス電位をウエハ107上面上方に形成するための高周波電力が供給される膜状の電極が複数配置されている。本実施例においてこの電極は、真空容器104外部に配置された直流電源109及び高周波電源110の各々とローパスフィルタである高周波フィルタ回路111およびマッチング回路112を介して電気的に接続されている。なお、本実施例の誘電体膜内の複数の電極の各々は、直流電源109の異なる極性の端子と電気的に接続されて異なる極性が付与される。
試料台108の上面上方でこれに対向して配置された窓部材105の平坦な下面の下方には、窓部材105下面と隙間を開けて配置され処理室115の天井面を構成して試料台108上面に面した板状の部材であって中央部に処理用ガスが内部を通って処理室115内に導入される複数のガス供給孔が配置された石英等の誘電体製のシャワープレートが配置されている。シャワープレートと窓部材105との間の隙間は図示しない処理用ガスのタンク等の貯留部と管路及びその上に配置されたガスの流量または速度の調節器を介して連通されている。
また、図示していないが、真空容器104の底部には排気用の管路を介して上記ターボ分子ポンプの入口と試料台108下方の処理室115の下部とを連通する排気口が配置されている。さらに、本実施例では、排気口とターボ分子ポンプの入口との間の排気用の管路上に、管路の内側の流路を横切る方向の軸周りに回転可能に配置された複数枚の板状部材であるフラップの回転の角度により流路の断面積を増減して調節する排気調節バルブが配置され、真空ポンプの動作により排気口から外に流出する処理室115内のガスや粒子の流量あるいは速度を調節可能に構成されている。
上記の構成を備えたプラズマ処理装置100において、上面に予め形成されたマスク及び処理対象の膜層を含む複数の膜層を有する膜構造が未処理のウエハ107は、真空容器104の外側の側壁と連結された別の真空容器である真空搬送容器の内部の減圧された搬送室を、この搬送室内に配置されたロボットアーム等のウエハ搬送機の伸縮するアーム先端部のウエハ載置部に載せられて保持されて搬送される。次に、真空容器104内の処理室115と真空搬送容器内部の真空搬送室との間で上下に移動可能に配置されこれらの間の連通を開放または気密に閉塞するゲートバルブが開放された状態で、ロボットアームのアームが図示しない制御装置からの指令信号に基づいて伸長させ、ウエハ107を載せた状態で先端部に配置されたウエハ載置部を処理室115内部に進入させる。
ウエハ107を載せたウエハ載置部が試料台108の上面上方に到達した状態でアームの伸長が停止され、ウエハ107が試料台108上面に受け渡される。具体的には、図示していない試料台108内部に収納されていた複数本のピンが試料台108上面上方に移動して先端を突出させてウエハ108裏面に当接させさらにアームのウエハ載置部から上方まで持ち上げて離間させた状態にした後、ロボットのアームが制御部からの指令に基づいて収縮して試料台108の上面から移動し、ピンが降下して再度試料台108内部に収納されると、ウエハ107が試料台108上面に載置される。
ロボットのアームが収縮して処理室115内部から退出し真空容器104外部の搬送室内に戻り収納された後、ゲートバルブが移動して真空容器104の側壁に配置され処理室115と搬送室との間を連通してロボットのアームがその内側を通りウエハ107が処理室115に対して搬入および搬出されるゲートの開口を気密に閉塞して、処理室115内部が搬送室に対して密閉される。この状態で、ガス貯留部からの単一のまたは複数の種類の物質のガスが混合された処理用ガスは、ガスの管路を通りこの管路上に配置された流量調節器により流量が調節されて窓部材105とシャワープレートとの間の隙間に流入した後、この隙間内で拡散して、所定の流量、速度でガス供給孔から処理室115内に上方から流入する。
制御部からの指令信号に基づいた真空ポンプ及び排気調節バルブの動作により、処理室115から排気口を通した排気の流量、速度が調節され、シャワープレートのガス導入孔から供給される処理用ガスの流量、速度と排気口からの排気の流量、速度とのバランスにより、処理室115内の圧力がウエハ107の処理に適した範囲内の圧力に調節される。さらにまた、試料台108上面に載せられたウエハ107は直流電源109からの直流電力が試料台108の誘電体製の膜内部の膜状の電極に供給されて当該膜に形成された静電気力によって膜上面に吸着され、膜の上面とウエハ107の裏面との間にHe等の熱伝達性を有したガスが供給されることで、ウエハ107と試料台108内部の冷媒流路を流れる所定の温度の冷媒との間の熱伝達が促進される。
この状態で、処理室115内にプラズマを形成するための電界と磁界とが供給される。マイクロ波電源101において発振され形成されたマイクロ波の電界は、第1の導波管103の方形部内部を所定のモードを形成して水平方向に伝播され方形部の一端側の部分に配置された変換部において方向が変えられて方形部と異なるモードが形成され円筒部を下向きに伝播して円筒部の上下端部の間に配置された円偏波器102に到達する。マイクロ波の電界は円偏波器102において円偏波化され、円筒部の上下方向の軸の周りについて回転することにより電界の軸対称性を向上させて、円筒部の下端から空洞部116に導入された後、窓部材105を透過して処理室116内に上方から供給される。
第1の導波管103の下端部から空洞部116に導入されたマイクロ波の電界は、空洞部116内で複数の第2の導波管113の内部を通る電界とて分岐され、第2の導波管113内から窓部材105内部伝播した後、シャワープレートを透過して処理室116上方からに導入される。さらに、複数段または複数巻のソレノイドコイル106が真空容器104及び空洞部116の周囲でこれらを囲んで配置され、マイクロ波の周波数に合わせてソレノイドコイル106が発生し処理室115内に供給される磁界とマイクロ波の電界とにより生起するECR効果により、処理室115内の処理用ガスの原子または分子が励起されて処理室115内にプラズマが形成される。
プラズマが形成されると、高周波電源110から高周波電力が試料台108の誘電体製の膜内の電極に供給され、ウエハ107上面上方に、プラズマの電位に応じたバイアス電位が形成される。プラズマの電位とバイアス電位との電位差に応じてプラズマ中のイオン等の荷電粒子がウエハ107の表面の方向に誘引されウエハ107上面に衝突することにより、予めウエハ107表面に形成された膜構造の処理対象の膜層とプラズマ中のラジカル等活性を有した反応性の粒子との相互作用が促進されてエッチング処理が進行する。
真空容器104外部に配置され処理室115内の処理の進行や膜厚さ等を検出する図示しない検出器により、所望の処理の終点が検出された場合に、制御部から指令信号が発信され高周波電源110からの高周波電力の誘電体膜内の電極への供給が停止され、プラズマが消火されて処理が停止する。さらに、制御部からの指令信号に基づいて、処理室115内部の処理用ガスの排気後ウエハ107の静電気力による静電吸着が解除された後、試料台108内のピンが上昇してウエハ107を試料台108上面上方に離間させて持ち上げて保持した状態で、ゲートバルブの動作によりゲートが開放されてロボットアームのアームが伸長して処理室115内の試料台108上方までアーム先端部のウエハ載置部を移動させウエハ107がウエハ載置部に受け渡される。
その後、制御部からの指令に応じてロボットアームのアームが収縮してウエハ107をゲートを通して搬送室に搬出すると、次の処理対象のウエハ107が有れば、上記の手順と同様に当該ウエハ107がゲートを通して処理室115内に搬送されて試料台108に載置されて処理が施される。次の処理対象のウエハ107が無いと制御部において判断された場合には、ゲートバルブによりゲートが閉塞されて次の処理対象のウエハ107が搬入されるまで処理室115での処理が終了する。
図2乃至8を用いて、本実施例において処理室115内に導入される電界の分布を調節する構成を説明する。図2は、図1に示す実施例に係る電界の分布を調節する構成の概略を模式的に示す斜視図である。
図3は、図2に示す電界の分布を調節する構成の概略を模式的に示す上面図及び縦断面図である。図3(a)は、図2に示す第2の導波管113を中心部上方から見た上面図及び図3(b)は、図3(a)の破線X−X’で示す線に沿った縦断面を示す図である。
図4は、図3に示す中心部の導波路の一例の構成の概略を模式的に示す横断面図及び縦断面図である。図4(a)は、図3(a)に示す第2の導波管113の中央部の導波管201の構成の概略を模式的に示す横断面図であり、図4(b)は当該導波管201の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。図4(c)は、図4(a),(b)に示す導波管201の別の例の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
これらの図において、処理室115またはウエハ107の半径方向について、マイクロ波の電界に所望の分布を形成する構成は、空洞部116内に配置され、上下面が平坦または平滑な形状を備えた円板形状を有する窓部材105と同径を有してこの上面上方でこれを覆って配置された円板形状を有する導体板114と、導体板114の上面上方で円板の外周部に配置された複数の円筒形を有した導波管202と中心部に配置された円筒形を有した導波管201を備えている。本例において、導波管201,202は同じ径でその軸方向が等しくされた円筒形の外形及び内部の空間を有しているが、これら第2の導波管は内部の空間を所定のモードで電界が下方に向けて伝播できる導波路を構成していれば良く、形状は矩形その他任意の形状であっても良い。
さらに、導波路を構成するために管を用いずに任意の形状の部材に配置された貫通孔を用いても良い。本実施例では、所期の効果を十分に得るうえで導波路内を単一のモードの電界が下方に伝播可能な円筒形の形状および寸法の導波管が空洞部116内部の窓部材105上方であって第1の導波管103下端部下方の円筒形の空洞内に備えられている。
本例では、導波管201及び全ての導波管202は、内部に同径の円筒形の導波路としての空間を有し、各々の導波路内に第1の導波管103から導入されたマイクロ波の電界がその最低次モードであるTE11モードのみ伝播する直径90mmの円筒形の空間を備えている。また、外周部の導波管202は、その下端から窓部材105及びシャワープレートを通して処理室115内に伝播する電界の窓部材105または処理室115あるいは試料台108もしくはウエハ107の中心の軸周りについての不均一を低減するために、当該中心に対応する導体板114上の箇所からの所定の半径方向の距離(半径位置)に各導波管202内部の導波路の中心が当該軸周りに等しいかこれと見做せる程度に近似した角度毎に複数個配置され、その個数は可能な限り多く配置されている。
なお、導波管201,202の独立性を保つために、各導波管202の外周側壁は導波管201の外周側壁との間で50mm以上、各々の導波管202同士の間で10mm以上の間隔が開けられて配置されている。本例の導波管201の上下方向の長さはL1、同様に導波管202の長さはL2とする。
また、中心部の導波管201の内部の円筒形の導波路内には、全長L1を有した誘電率εrの誘電体301が配置され導波路が当該誘電体301により稠密に充填されている。さらに、導波管201には、導波管201内で励振されるマイクロ波の電界のモードが取りうる励振の軸方向のうちで電界の進行方向(通常は、上下に延在する導波管201の中心軸に対して垂直な平面の面内の方向)において、任意の2つ方向にその軸が延在する2本の導体棒302,303が配置されている。
このような構成を備えた本実施例では、導波管201,202の内部を伝播したマイクロ波の電界は、各導波管の出口においてその位相が180°異なるもの、即ち反転したものとなるように何れかの導波管が位相差を形成する手段を備えている。この構成においては、誘電体301の全長L1および導波管202の全長L2は式1で関連付けられるため、何れか一方が定められると他方は式1を用いて一意に定まることになる。
ここでλcは円形導波管におけるカットオフ波長であり、円形導波管の半径aを用いて式2で表される。
このように導体板114または空洞部116内の空間の中央側と外周側とで位相を異ならせた電界は、導体板114の下方の誘電体製の窓部材105にその上面から進入する。そして、導波管202内を伝播したマイクロ波の電界は窓部材105の内部または表面を外周側領域から中心部に向かって窓部材105の面内方向または空洞部116の半径方向に進行すると共に、導波管201内を伝播したマイクロ波の電界は中心部領域から外周に向かって面内方向または半径方向に進行し、互いに位相が反転しているこれらの電界が窓部材105の表面または内部で合成された結果、導波管201,202の下方の空洞部116の中心部と外周部との間で窓部材105内部または表面のマイクロ波の電界は相互にその振幅を低減させ打ち消し合う。
さらに、本実施例においては、導波管201,202の間で内部を伝播するマイクロ波の電界の透過率を異ならせ或いは可変に調節することにより、窓部材105の中心部及びその外周側部分に導入されるマイクロ波の電界の量を増減させ窓部材105の内部または表面での上記打ち消し合いまたは相殺の程度が調節されている。このような導波管201,202での電界の透過率の量の増減は、導体棒302,303を用いて行われる。
例えば、任意の導波管においてその内部でその軸方向を横切って配置される導体棒が1本で且つ当該導波管内部の導波路を伝播するマイクロ波の電界が直線偏波である場合では、導体棒がその軸方向をマイクロ波の電界の励振軸の方向に対して平行に配置されると電界は全て反射されて導波路内を電界が伝播しないことになり透過率は0%となる。一方で、導体棒の軸方向が上記励振軸に対して垂直に配置されると電界は導体棒の影響を受けずに全ての量が透過することになり透過率は100%となる。
ここで、マイクロ波の電界が円偏波である場合には、電界が励振される方向は1方向ではなく電界の進行方向の周りに周期的に回転するため、任意の時間において励振される方向は円筒形を有した導波管201または導波管202の中心の軸に垂直な面内において任意の方向を向いている。このため、導体棒が上記導波管内で軸を横切る方向に1本だけ配置された場合は、当該導体棒が上記面内でどの方向を向いていても、所定の期間で平均すると一定の透過率になってしまうことから、透過率の大きさを導体棒の方向を変化させても透過率を増減させることはできないことになる。
一方で、任意の導波管内の空間の中心軸方向に垂直な面内において、互いに直交する2つのベクトルを仮想的に設定した場合、円偏波マイクロ波の励振軸はいずれの瞬間においても必ずこの2つのベクトルの重ね合わせで記述される。例えば、図4(a)に示すように、この2つのベクトルに各々が平行な2つの方向に1本ずつ導体棒301,302が配置され、且つこれら導体棒301,302の軸方向が角度θ(以下単にθと称する)を成しているとする。
θが90°である場合には、導波管の内部に進入した円偏波のマイクロ波の電界はこれら導体棒の箇所において全て反射され導体棒の下方の領域には伝播しないことになり、当該導波管の電界の透過率は0%となる。発明者らの検討によれば、上記角度θを90°よりも小さくした場合には反射の程度もそれに伴って小さくなり(透過率は増大し)、θ=0°の場合には透過率は最大(100%)になる。発明者らは、このように導波管の内部に配置された複数の導体棒の成す角度θを増減する構成により、円偏波の電界であっても導波管を伝播する電界の透過率を増減できるという知見を得て、本実施例を想起したものである。
なお、図3(b)及び図4(b)において、本実施例の2本の導体棒302,303は円筒形状を有した導波管201の内部の導波路において円筒の軸に垂直な1つの平面上に配置されているが、導体棒302,303は当該導波路内において電界の進行方向に垂直な平面上に配置されていれば良く、各々が上下方向に延在する導波路の軸方向について異なる高さ位置の平面上に配置されていても良い。
図4(c)は、このような構成を備えた導波管201の例を示している。本図に示される実施例において、中心部の導波管201は上下方向に高さが異なる同径の複数個の円筒を備えて構成されている。
導波管201の最上部の円筒401の内部の空間は、その円筒の長さの寸法がL3を有した誘電率がεr1である誘電体405により稠密に充填されている。さらに、最下部の円筒405の内部の空間は、円筒の長さの寸法がL6で誘電率εr2の誘電体406により稠密に充填されている。これらの円筒の間には、導体棒302,303の各々が内部に配置され、上下方向の長さがL4およびL5である円筒形の導波管402及びその下方の導波管403が配置されている。この構成において、寸法L3,L4,L5,L6は次の式3を満たすものとする。
また、上記の例では導体板114中央部上方の導波管201の内部にのみ誘電体301を配置しているが、式4を満たすものであれば、外周側部分に配置された導波管202内部に石英等の電界が透過する誘電体製の円筒または円板形の部材を管の半径方向に稠密に配置しても良い。内部の誘電体製の部材は導波管201,202の上下方向に延在する中心軸方向の長さと同じ長さを有しているもの(つまり、内部の円筒形の空間と同じ形状でこの全体を満たす形状)である必要はなく、導波管の軸方向の一部のみが充填される、つまり軸方向長さより短い長さの円筒または円板形の誘電体製の部材が当該導波管の内部で半径方向について稠密に配置された構成であっても良い。
このような導波管201及び導波管202を備えた構成を図5を用いて説明する。図5は、図3に示す実施例に係る電界の分布を調節する構成の別の例の概略を模式的に示す横断面図及び縦断面図である。図5(a)は、別の例の構成の横断面図であり、図5(b)は、図5(a)の破線X−X’に沿った縦断面を示す断面図である。
本図に示される例において、導体板114の外周側部分の上面に配置された円筒形を有した導波管501はその内部部に誘電率ε1で中心軸の方向の長さがM1の円筒形を有した誘電体503が配置されている。誘電体503は、その円筒の半径が導波管501内の円筒形の導波路のものと等しくされ、中心軸方向の長さM1が導波路のものより小さくされ、底面は導波路の下端であって導波管501の底面と等しくされている。
また、導波管501と導体板114の中心から同じ半径位置にその管の中心軸が配置された円筒形の別の導波管502の内部には、誘電率ε2で中心軸の方向の長さがM2の誘電体504が配置されている。この誘電体504も円筒の半径が導波管502内の円筒形の導波路のものと等しくされている。
これと同様に、他の導体板114の外周側の領域上方に配置された円筒形の外周側導波管の内部に、所定の誘電率と長さを備えて各々の導波管内の円筒形の導波路と半径と等しい円筒形または円板形の誘電体が配置されている。各々の外周側の導波管内を伝播した電界の位相は、各導波管の下端であって窓部材105の上面で中央部の導波管201の下端または窓部材105の上面での電界の位相と反転したものにされ、これを実現できるように各導波管内に配置された各々の誘電体の誘電率は同一でなくても良い。
外周側部分に配置された複数の導波管において、これらの内部の導波路の底部に配置された誘電体の導波路の軸方向の長さを各々M1,M2,M3,…Mi,…MN(Nは導体板114の外周側部分に配置された導波管の個数を示す自然数)とし、導波路内でこれら誘電体がない部分の長さをN1,N2,N3…Ni,…NNと表す。さらに、導体板114の中心部の導波管201内の底部に配置された円筒形の誘電体505の軸方向の長さをL7、誘電体がない部分の長さL8とすると、式4は次のように表される。
本実施例のように、円筒形を有した空洞部116の内部に導入された円偏波の電界を、空洞部116下部に同心状に配置された複数の導波管201,202を通して、下方の処理室115へ伝播する電界の伝播の量を半径方向または周方向について調節して所期の分布を実現しようとするプラズマ処理装置において、図3,4に示すように導波管201の内部に所定の角度θを成すようにその軸方向を異ならせて配置された2本の導体棒302,303により円偏波マイクロ波の電界の透過率を調節しようとすると、導波管201における電界の透過率を最大(θ=0°)にした場合でも、導波管201内部を振幅の方向を周期的に回転させて導波管201の軸方向下向きに伝播する電界は、振幅の方向が導体棒302,303と平行になる方向において反射される。すなわち、導波管201内のマイクロ波の電界の透過率は100%にはならず、これ以下の値に成らざるを得ない。
このため、上記の実施例においては、導体板114または空洞部116の中央部の導波管201内を伝播したマイクロ波の電界の強度は、外周側部に配置された導波管202内を伝播した電界の強度を必ず下回ることになる。そこで、本実施例では、図3に示すように、中心部に配置された導波管201内を伝播して窓部材105に進入したマイクロ波の電界の強度と外周側部に配置された導波管202内を伝播して窓部材105において中心部に向かって進行してきたマイクロ波の電界の強度とが整合するように、導波管202内にも1方向にのみ指向性を持った導体棒203を配置している。
本実施例において導体棒203の軸方向は、電界の円偏波の形成を阻害しないように、各々の円筒形の導波路の中心軸が導体板114の中心からの所定の半径位置の円周上に位置する円筒形を有する導波管202の導波路の所定の上下(高さ)方向の位置で当該導波路の中心軸を通る上記円周の水平な接線に合致するかこれと見做せる程度に近似した向きにされている。このような導体棒203を配置することにより、外周部の導波管202内の導体棒203の軸の向きは、進行の方向の軸周りに回転する円偏波のマイクロ波の電界の励振軸または振幅の方向がどの向きであっても、常にこれに垂直になり当該円偏波の形成や伝播が阻害されることが抑制され、導波管201内の導体棒301,302の軸方向の成す角度θを0°とした場合の当該導波管201を伝播して窓部材105に導入されるマイクロ波の電界の強度と外周部の導波管202を伝播して窓部材105内を中央側に向けて進行するマイクロ波の電界の強度とを整合させ、同一または所期の差のものとすることができる。
上記本実施例における導波管内に配置した2本の導体棒の軸の成す角度θとこの導波管内を伝播するマイクロ波の電界の透過率との関係について図6を用いて説明する。図6は、図2に示す実施例に係る電界の分布を調節する構成において導波路の軸方向から見て2つの導体棒のなす角度θの変化に対するマイクロ波の電界の透過率の変化を示すグラフである。
図6において、横軸は制御パラメータとしての角度θの値を、縦軸は導体板114または空洞部116の中心部に配置された導波管201におけるマイクロ波の電界の透過率の値を示している。本図に示すように、θが増大するに伴って透過率の値は単調に増大する。このことから、θの値をパラメータとして0°乃至90°の間の任意の範囲内で調節して増減させることで、導波管201内を伝播して下端から窓部材105に導入されるマイクロ波の電界の量またはその導体棒の設置された箇所を通って透過する率を所期のものに変化させることが可能となることが判る。
次に、上記本実施例により得られる作用・効果について図7,8を用いて説明する。図7は、図2に示す電界の分布を調節する構成において中心部の導波路の軸方向から見て2つの導体棒のなす角度θの複数の値における電界の振幅の時間変化の例を示すグラフである。図8は、図7に示す電界の分布を調節する構成において中心部の導波路の軸方向から見て2つの導体棒のなす角度θの複数の値におけるウエハの半径方向についてのプラズマの密度及びエッチング速度の分布を模式的に示すグラフである。
図7(a)は、図2乃至4に示した実施の例において、導波管201の軸方向から見て、導波管201内に配置された2本の導体棒301,302の軸方向の成す角度θ=0°にした場合の導波管201の下端と接した導体板114下方の窓部材105の中心部におけるマイクロ波の電界の振幅の時間変化に対する変化を示すグラフである。この場合、導波管201内を伝播するマイクロ波の電界の透過率は100%にされていると想定される。
図7(a)において、一点鎖線は中心部の導波管201を伝播して窓部材105の中心部に導入されたマイクロ波の電界の強度701を、破線は外周部の導波管202を伝播して誘窓部材105に導入されて窓部材105の中心部に向かって進行してきたマイクロ波の電界の強度702を、実線は上記の2つのマイクロ波の電界が合成された電界の強度703を示している。後述する図7(b)、図7(c)の各々においても同様である。
上記のように、導波管201内を伝播して窓部材105に導入されたマイクロ波の電界と、導波管202内を伝播して窓部材105に導入されたマイクロ波電界とは、各々の内部に配置され所定の誘電率や寸法を有した誘電体301,405,406,503,504等の作用により180°の位相差を有し位相が反転している。そのため、図7(a)に示されるように、導波管201を伝播して窓部材105の中心部に導入された電界の強度701の時間に対する変化と、外周部の導波管202を伝播して窓部材105に導入されその中心部に向かって進行してきた電界の強度702の時間に対する変化も位相が反転している。
さらに、図3に示すように、導体棒203の作用によって、導波管201を伝播して窓部材105の中心部に導入された電界の強度701の時間変化の振幅は、導波管202を伝播して窓部材105に導入されその中心部に向かって進行してきた電界の強度802の時間変化の振幅と合致するかまたは同一と見做せる程度に近似した値に調節される。したがって、窓部材105に導入された上記2つの電界が窓部材105の中心部において合成され形成された電界803は、当該2つの電界が互いに相殺するため、実線で示したようにその時間に対する変化は振幅が0になり、この結果、窓部材105の下方に配置された円筒形の処理室115の径方向の中央部における電界の強度も0になる。
この条件で、処理室115内に形成されたプラズマの処理室115またはウエハ107の径方向の密度の分布、及び当該プラズマによりエッチング処理されるウエハ107のエッチング速度(エッチングレート)の処理室115またはウエハ107の分布を図8(a)に示す。プラズマの密度の値は試料台108上面上方の所定の高さでの水平な面内での中心から任意の半径位置における値をシミュレーション等で検出したものである。
本図に示すように、導波管201の電界の透過率が100%にされた図7(a)の条件では、プラズマの密度の分布は処理室115またはウエハ107の外周側の箇所での値よりも中心側の箇所での値が低くなるものとなる。それに対応して、ウエハ107上面の処理対象膜のエッチングレートの分布も、処理室115またはウエハ107の外周側の箇所での値よりも中心側の箇所での値が低くなるものとなる。
図7(b)を用いて、電界の透過率を別の値に設定した条件での窓部材105での電界について説明する。本例では、導波管201の軸方向から見て、導波管201内の導体棒301,302の成す角度θ=90°にされた場合について説明する。この条件では、導波管201内を伝播して導体棒301,302を通るマイクロ波の電界の透過率は0%になると想定される。
この条件では、導波管201内のマイクロ波の電界は、導体棒301,302を通って下端から窓部材105に進入できない。このため、図7(b)に示すように、導波管201を伝播して誘電体窓105の中心部に導入された電界の強度701は0になる。
したがって、導波管201内を伝播して窓部材105の中心部に導入された電界と、導波管202内を伝播して窓部材105に導入されてその中心部に向かって進行してきた電界とが窓部材105の中心部において合成された電界の強度703は、図7(b)の実線に示すように、導波管202内から伝播してきた電界の強度702と等しいものとなり、その振幅の大きさは最大値をとる。
この条件で、処理室115内に形成されたプラズマの処理室115またはウエハ107の径方向の密度の分布、及び当該プラズマによりエッチング処理されるウエハ107のエッチング速度(エッチングレート)の処理室115またはウエハ107の分布を図8(b)に示す。本条件では、プラズマの密度の分布は処理室115またはウエハ107の中心側の箇所の値より対して外周側の箇所の値が低くなるものとなり、それに対応してウエハ107表面の面内方向についてエッチングレートの分布も中心側の箇所より外周側の箇所の値が低くなるものとなる。
次に、図7(c)を用いて、電界の透過率を別の値に設定した条件での窓部材105での電界について説明する。本例では、導波管201の軸方向から見て、導波管201内の導体棒301,302の成す角度θ=20°にされた場合について説明する。この条件では、導波管201内を伝播して導体棒301,302を通るマイクロ波の電界の透過率は50%になると想定される。
この条件では、導波管201内を伝播して窓部材105に導入されたマイクロ波の電界の強度701は、時間に対する変化の振幅が導波管202を伝播して誘電体窓105に導入され中心部に向かって進行してきた電界の強度702の時間に対する変化の振幅の半分程度になる。したがって、導波管201内を伝播して窓部材105の中心部に導入された電界と導波管202内を伝播して窓105に導入されその中心部に向かって進行してきた電界とが当該中心部において合成された電界の強度703は、これら2つの電界の位相は反転していることから、導波管202内を伝播して窓105に導入されその中心部に向かって進行してきた電界の強度が半分程度低減されることになり、図7(c)において実線で示すように、電界の強度703の時間に対する変化の振幅は、図7(b)における電界の強度703のものの半分程度となる。
この条件で、処理室115内に形成されたプラズマの処理室115またはウエハ107の径方向の密度の分布、及び当該プラズマによりエッチング処理されるウエハ107のエッチング速度(エッチングレート)の処理室115またはウエハ107の分布を図8(c)に示す。本条件では、プラズマの密度の分布は、プラズマの密度は処理室115またはウエハ107の中心側の箇所の値と外周側の箇所の値とが図8(a),(b)と比較して同程度に近くなり、それに対応してウエハ107表面の面内方向についてマエッチングレートの分布もウエハ107の中心側の箇所の値と外周側の箇所の値とが図8(a),(b)と比較して同程度に近くなる。
このような作用・効果を有する実施例において、ウエハ107表面に配置された膜構造の処理対象の膜層のエッチング処理の速度等特性や処理後の形状の寸法の当該ウエハ107表面の面内方向についてのバラつきを抑制する手順について説明する。例として、ウエハ107表面の面内方向についてのエッチングレートの分布が、図8(b)に示すように中心側の箇所の値より外周側の箇所の値より低くなってしまう、所謂中央部が高い分布となる処理において、分布の値のバラつきを低減する手順を考える。
このような場合には、導波管201内に導体棒301,302を導波管201の軸方向上方から見て導体棒301,302の成す角θが20°程度となるように配置して、図8(c)に示すようなプラズマの密度の分布を実現することで、エッチング処理のバラつきを低減することができる。また、上記ウエハ107表面の面内方向についてのエッチングレートのバラつきがプラズマの密度のバラつきではなくウエハ107表面上方でのガス流れの量や速度の分布、ウエハ107表面の膜構造の開口率等の別の機械的要因によってエッチングレートの分布が外周の箇所での値より中央側の箇所での値が大きくなるものであると判定された場合には、角度θが0°程度となるように導波管201内の導体棒301,302を配置して、図8(a)に示すように外周側の箇所のプラズマの密度が中央側の箇所のものより高くできるような電界の分布にすることで、機械的な要因によるエッチングレートのバラつきをプラズマの密度の分布により補正して、ウエハ107表面の面内方向についての加工後の形状、寸法の不均一を低減することができる。
逆に、何らかの機械的な要因によりウエハ107表面でのエッチングレートの分布が上記とは逆に中心側の箇所の値より外周側の箇所での値が高くなっている場合には、角度θが90°程度となるように導体棒301,302を配置して図8(b)のように中心側の箇所のプラズマの密度を外周側の箇所の値より高い分布を実現することで、機械的な要因によるエッチング速度のバラつきをプラズマの密度の分布により補正して、ウエハ107の面内方向についてエッチング処理の不均一を低減することができる。
上記の通り、上記実施例は、プラズマを形成するために供給されるマイクロ波の電界が処理室115の上方に窓部材105を挟んで配置された空洞部116内で処理室の半径方向あるいは周方向について異なる位置に配置された第2の導波管113について、これを構成する複数の導波管201,202の少なくとも何れかの内部に配置された導体棒302、303のなす角θを、半径方向あるいは周方向に異なる値に調節してこれらの導波管内を伝播する透過率を試料の半径方向あるいは周方向について所望の値に調節する構成を備えている。これによりウエハ107を処理する条件に応じてこれに適した所望の電界の強度の分布が処理室115内に実現され、ウエハ107上面の面内方向について膜構造の処理対象の膜層の処理の所望の分布が実現される。
また、上記の実施例では、マイクロ波の電界は円偏波として第1の導波管空洞部116及び処理室115に供給されることでウエハ107の周方向について電界またはプラズマの強度とこれによるウエハ107の処理の特性及びその結果のバラつきをより抑制する作用・効果を奏しているが、円偏波にされた電界でなくとも上記電界の分布を調節する構成を用いることでウエハ107または処理室115の半径または周方向に強度の分布を実現することが出来る。
〔変形例〕
上記実施例の構成の一部を異なるものにした例について以下説明する。
上記実施例の構成の一部を異なるものにした例について以下説明する。
上記実施例では、ウエハ107を処理する条件に応じて、導体板114または空洞部116の中心部に配置された導波管201の軸方向上方から見て導波管201内部に配置された2本の導体棒302,303の軸方向のなす角θを設定し導波管201を伝播する電界の所望の透過率を得る構成の例が示されている。このような導体棒302,303の成す角度θを所望の値に変化させて電界の透過率を任意に変動させるように、何れか一方または両方の導体棒302,303を導波管201の軸に周りに回転可能な構成を備えてもよい。このような構成を備えたプラズマ処理装置を図9乃至15を用いて説明する。
図9は、図1に示す本発明の実施例の変形例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。図10は、図9に示す変形例に係るプラズマ処理装置の空洞部内に配置された第2の導波管を構成する中心部の導波管の構成の概略を模式的に示す斜視図である。
図11は、図9に示す変形例に係るプラズマ処理装置の空洞部内に配置された第2の導波管を構成する中心部の導波管の構成の概略を模式的に示す上面図、縦断面図及び横断面図である。図11(a)は、図10に示す中心部の導波管201の中心軸上方から見た上面図、図11(b)は導波管201の中心軸を含む縦断面図、図11(c)は導波管201内に配置された導体棒303の水平方向に延在する軸を含む水平面に沿った横断面図である。図12は、図11に示す変形例に係るプラズマ処理装置における中心部の導波路における電界の透過率を調節する構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
図11は、図9に示す変形例に係るプラズマ処理装置の空洞部内に配置された第2の導波管を構成する中心部の導波管の構成の概略を模式的に示す上面図、縦断面図及び横断面図である。図11(a)は、図10に示す中心部の導波管201の中心軸上方から見た上面図、図11(b)は導波管201の中心軸を含む縦断面図、図11(c)は導波管201内に配置された導体棒303の水平方向に延在する軸を含む水平面に沿った横断面図である。図12は、図11に示す変形例に係るプラズマ処理装置における中心部の導波路における電界の透過率を調節する構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
図9に示すプラズマ処理装置100は、図1に示した実施例と同様に、マイクロ波の電界とともにソレノイドコイルで形成された磁場を処理室内に供給してこれらの相互作用としてのECR(Electron Cyclotron Resonance)を用いてプラズマを形成して半導体ウエハ等の基板状の試料をエッチング処理するプラズマ処理装置である。以下、本図で図1の実施例と同じ符号が引用されたものについては、特に必要の無い限り説明を省略している。
本図に示すプラズマ処理装置100において、空洞部116の内部で電界の分布を調節するために導体板114と複数の導波管201,202を含む第2の導波管123とを備えた構成は実施例1のものと同様である。そして、本例では、図10,11に示すように、第2の導波管113を構成し導体板114の中央部上方に配置された円筒形の導波管201は上下方向に複数(本例では2個)の同径の円筒形状の導波管1001,1002に分けられて配置されている。
そして、これら上下に分けられた導波管1001,1002の円筒部分のうち導体棒302を含む上段の導波管1001は、導波管201の中心軸の周りに回転可能に構成されている。一方、下段の導波管1002は導波管201の中心軸に対して回転しないよう固定されており、上段の導波管1001を回転させる量を図示しない制御部からの指令信号により調節することで、当該中心軸の上方から見て各々の導波管1001,1002が備える導体棒301,302の軸方向が成す角度θを可変に調節可能に構成されている。
本実施例は、このように配置された上段の導波管1001を中心軸の周りで回転させるため、導波管1001の回転角度を調節するモータ901を備え、モータ901からの駆動力が上段の導波管1001に伝達される構成を備えている。なお、本例でも導波管201を構成する円筒形を有した上段の導波管1001、下段の導波管1002内部に、その内部の円筒と同径の円筒形の誘電体が配置されて、内部の空間は径方向及び上下方向について石英等の材料による誘電体により稠密に充填されている。
図12に、図9に示す電界の透過率を可変に調節する構成を拡大して示す。上記の通り、本例では、上段の導波管1001を下段の導波管1002およびこれが接続されて固定された導体板114に対して、これら導波管または導波管201の上下方向に延在する中心軸の周りに角度自在に回転可能に構成されている。そして、上段の導波管1001の下端部にはモータ901が発生する駆動力が伝達される。
本例の下段の導波管1002は、上部の円筒形状の部分とその下端部を構成して円筒の外周側で半径方向に延在するフランジ部とを備えた縦断面が凸上の形状を有し、凸形状の中心部に配置された上部の円筒形状の上端面から導体板114の上面と対向して配置されるフランジ部の平坦な下面の中心部までを貫通する円筒形の貫通孔が導波路として配置されている。フランジ部は下方の導体板114に対して位置が固定されている。
下段の導波管1002の上方には、円筒形状部分の上方に載せられて円筒の上端面と外側面とを覆って配置された上段の導波管1001が配置されている。上段の導波管1001は、上部の円筒形状部分がその上下方向の中心軸を下段の導波管の円筒形状部分またはその内側に配置された貫通孔の導波路の上下方向の中心軸と合致またはこれと見做せる程度に近似した位置にされて配置されている。
さらに、上部の円筒形状部分の外周側部分の下端部は下方に延在しており、上段の導波管1001が下段の導波管1002上に中心軸を合わせて載せられた状態で、上段の導波管1001の当該下方に延在した外周側部分が下段の導波管1002上部の円筒形状の部分の外側壁を覆っている。また、下段の導波管1002と同様に、上段の導波管1001は、その上部の円筒形部分の上端面に開口を有した円筒形の貫通孔が内部に配置され、当該貫通孔は半径を下段の導波管1002の中心軸と合致またはこれと見做せる程度に近似させた値にされ、且つ上部の導波管1001が下部の導波管1002の上方に載せられた状態で、その中心軸を下段の導波管1002の中心軸と合致またはこれと見做せる程度に近似させた位置に配置されて、導波管201内部で段差を小さくされた導波路を構成している。
さらに、上段の導波管1001の円筒形の下端部の外周縁は、モータ901の回転力が伝達される端部とギア1302を介して連結されて、モータ901から供給される当該回転のトルクが伝達される構成を備えている。図示しない制御部は、モータ901に指令信号を発信し、これに基づいて、所定のトルクと回転数とで駆動されたモータ901からの駆動力が伝達された上部の導波管1001が、下段の導波管1002の上部の円筒形状部分の上方でその外周側壁に沿って両者の上下方向の中心軸周りに所望の角度だけ回転する。
これにより、本変形例に係るプラズマ処理装置100は、運転中の任意の時刻、例えばウエハ107の処理の開始前やウエハ107の処理中の任意の時刻或いは(例えプラズマが形成されていても)複数の工程で実施されるウエハ107のエッチング処理の当該工程の間の任意の時刻において、導波管201の中心軸上方から見て上段の導波管1001内に配置された導体棒301と下段の導波管1002内に配置された導体棒302の各々軸方向の成す角度θが所望のものとなるように調節することができる。このような回転による角度θの増減の調節を容易にするため、図4に示すように、導波管201が長さL3およびL6の誘電体301が充填された導波管401,404と、導体棒302,303を含む各々長さL4,L5の導波管402,403とで複数段に分割された構成を備えても良い。
さらに、このような角度θの値を任意の時刻で可変に調節し導波管201内を伝播する電界の透過率を増減させて、ウエハ107上面の面内方向についてエッチング処理により形成される溝や孔構造の深さのバラつきを抑制してより均一に近づけた処理の結果を実現するために、ウエハ107上面の中心部および外周側部における上記膜構造の処理対象膜の残り膜厚さを膜厚モニタを用いて光学的に検出した結果を用いて、予め実験や試験用のウエハ107の処理等を実施して得られたデータを用いて作成したデータベースや評価関数に基づいて所望の処理の結果を得られる角度θを算出し、これに基づいて制御部から指令信号をモータ901に発信するようにしても良い。
本例では、上記のように導波管201を構成する上下2段の導波管の各々に配置された導体棒302,303のうち、上段側に配置した導体棒302を導波管201の円筒形の導波路の中心軸に対して回転させる構成を備えている。図13乃至15を用いて、本例が角度θの値を調節して導波管201内を伝播する電界の透過率を増減させてウエハ107上面の面内方向についてのエッチングレートのバラつきを低減する動作の流れについて説明する。
図13は、図1に示す実施例において、中心部の導波路の軸方向から見て2つの導体棒のなす角度θの変化に対するウエハの中心部のエッチング速度と外周部のエッチング速度との比の変化を示すグラフである。図14は、図9に示す変形例においてウエハの処理中に調節されるエッチング深さの差の時間変化を模式的に示すグラフである。
図15は、図1に示す実施例が実施する図14に示すエッチング深さの差の調節の動作の流れの例を示すフローチャートである。
図13に示すように、図1に示す実施例および図9に示す変形例において、ウエハ107上面の半径方向についてのエッチングレートの値の差は、角度θが90°に近づくほど大きくなる。すなわち、ウエハ107上面の中心部のエッチングレート(エッチング速度)と外周側の箇所におけるエッチングレートとの比率は、角度θが増大して90°に近付くにつれて増大し(中心部のエッチング速度が相対的に高くなり)、角度θが減少して0°に近付くにつれて比率が減少する(中心部のエッチング速度が相対的に小さくなる)。
この例において、パラメータとして調節する角度θの初期値として中心部と外周部のエッチング速度が等しくなる角度(本実施例では20°)として、十分小さいステップ幅1301でθを増減して中心部と外周部のエッチング速度の差を所望の値にして、所望のエッチング処理の結果の分布を得ることができる。
図14を用いて膜厚モニタによりウエハ107上面の膜構造の残り膜厚さを検出した結果を用いて角度θを調節して、ウエハ107の面内方向についてのエッチング形状の分布を調節する動作の流れを示す。本図の動作では、ウエハ107の中心部と外周側部分とでのエッチングによる溝または孔の深さ或いは残り膜厚さの差の絶対値が予め定められた許容値(1401)以上になったことが制御部により検出された場合に、角度θを変化させてエッチング深さや残り膜厚さの差を低減させ、ウエハ107上面の面内方向についてのエッチング結果として得られる形状の寸法のバラつきを低減して処理後の形状を均一に近付ける。
例えば、エッチング処理を実施している期間中にウエハ107の中心部と外周側部分のエッチング量の差の絶対値が予め設定された許容値(1401)を超えたことが図示されない制御部に検出された場合、制御部が内部に配置されたROM或いはRAM,HDD等の記憶装置に記憶されたアルゴリズムとデータとを用いて演算器によって算出した十分小さいステップ幅1402だけ角度θを変化させる指令信号をモータ901に発信し、モータ901の回転動作により伝達された駆動力に応じて、図9の第2の導波管123の中央部の導波管201を構成する上段の導波管1001が下段の導波管1002と合致した上下方向の中心軸周りに回転し導波管201内の導波路を横切って配置された導体棒302の軸方向を導体棒303の軸方向に対して変化させ、第2の導波管123を構成する導波管201,202内を伝播した電界であってこれらの導波管の下方に位置した処理室115における電界のうち、エッチング速度が大きな方の強度を低くする。
本例では、外周側部分に対して中心部のエッチング速度が高い場合には、導波管201内に配置した導体棒302,303のなす角度θは、予め定められたステップ幅1402で0°以上20°未満の範囲内で小さくされ、導波管201におけるマイクロ波の電界の透過率がステップ幅1402に対応した値の分だけ高くされる。このような調節が、所定の許容値以下となったことが検出されるまで、少なくとも1回以上繰り返される。
このような調節により、処理室115内の試料台108上方のプラズマの生成領域において、その中心部に対して外周側部分の電界の強度が相対的に高くされプラズマの密度も外周部が相対的に高くされる。一方、中心部に対して外周部のエッチング速度が高いことが検出された場合には、角度θがステップ幅1402で20°以上90°以下の範囲内で大きくされ、処理室115内のプラズマ生成領域において、その外周側部分の値に対して中心部の電界の強度が相対的に高くされプラズマの密度も相対的に高くされる。
このような調節の動作の流れを図15を用いて説明する。ウエハ107上面の膜構造の処理対象の膜層のエッチング処理が開始された(START)後、処理の終点が検出される或いは予め定められた処理を実行する時間が終了したことが検出される(ステップ1502)まで、予め定められた時間間隔でウエハ107上面の中心部と外周側部分との各々の所定の箇所でエッチングの量、例えばエッチング深さまたは残り膜厚さが検出されてモニタリングされ、是等の差の値が図示しない制御部により検出される(ステップ1501)。
ステップ1502において処理の終了が検出されず、処理が継続された状態でウエハ107中心部と外周側部分のエッチング深さの差が所定の許容値を超えたと制御部において判定された場合(ステップ1503)、ステップ1504に移行して外周側部分に対して中心部のエッチング速度の方が高い場合には角度θを20°より大きく、中心部に対して外周側部分のエッチング速度の方が高い場合はθを20°以下とするように、ステップ幅1402毎に角度θを変化させるように導体棒302を有する上段の導波管1001を下段の導波管1002または導体板114に対してその軸回りに回転させる(ステップ1505)。
この後、エッチング深さの差の時間に対する変化の大きさ(エッチング深さの差の時間変化の傾き)が上記の時間間隔で検出され(ステップ1506)、当該エッチング深さの時間変化の傾きが、0になってウエハ107上面の面内方向についてのエッチング速度が等しくなったかこれと見做せる程度に十分小さい値(図14上1405)以下になったことが検出される(ステップ1507)まで、ステップ幅1402毎にθを変化させて(ステップ1508)、ステップ1505からステップ1507の動作が繰り返される。
角度θをステップ1402毎に変化させ続けた結果、エッチング深さ差の傾きが所定の値(1404)以下になってウエハ107上面の中心部と外周側部分のエッチング速度が等しくなったと見做せると制御部に判定された場合には、現在の角度θの値が制御部内の記憶装置に記憶され(ステップ1509)た後、一旦エッチング深さの差を解消するために当初エッチング速度が高かった側の電界の強度が制御範囲内における最小値にされエッチング速度が最小限にする制御が行われる(ステップ1510)。この動作におけるエッチング速度の変化が図14上1403に示されている。
例えば、当初ウエハ107上面の外周側部分に対して中心部のエッチング速度が高かった場合には、角度θが0°に、;逆に当初は外周側部分に対して中心部のエッチング速度が低かった場合にはθを90°に調節される。その後、所定の時間間隔でエッチング深さの差が検出され(ステップ1511)てその値が導体棒302を回転させる動作のタイムラグを考慮して予め定められた緩衝範囲(1504)内になったか否かが判定される(ステップ1512)。
制御部においてエッチング深さの差が緩衝範囲(1504)内になったことが検出されるとエッチング深さ差が解消された判定され、ステップ1509において記憶されたθの値が読み出され(ステップ1513)、制御部からの指令信号に応じて当該角度θの値となるように導体棒301または上部の導波管1001の回転が行なわれる。この後、ステップ1501に移行して、この角度θに応じた透過率で伝播された強度の分布を有する電界を用いてプラズマが形成され、ウエハ107上面の面内方向について所望のエッチング速度の分布でエッチング処理が続行され、処理の終点まで実行される。
以上のように、本例に係るプラズマ処理装置100では、適用する処理条件に応じてマイクロ波の電界の透過率を任意に制御するため導体棒302、303のどちらか一方、もしくは両方を導波管の中心軸に対して回転可能に構成され、かつ処理中にウエハ107上面の中心部と外周におけるエッチング量の分布が所期のものに近づくように、導体棒302,303の軸間のなす角θが調節され、ウエハ107上面の面内方向においてエッチング量またはその特性の所期のものからのズレが低減され、所望の処理結果が実現される。
上記の実施例では、導波管201内に配置された導体棒302,303を用いて透過率を調節する構成を説明した。一方で、このような導体棒を配置したことによる電界の円偏波の阻害を抑制するために、外周側の導波管202においてのみ電界の透過率を調節しても良い。このような構成を図16を用いて説明する。
図16は、本発明の別の実施例の係るプラズマ処理装置の電界の分布を調節する構成の概略を模式的に示す斜視図である。図16(a)は、本例の第2の導波管113を中心部上方から見た上面図及び図16(b)は、図16(a)の破線X−X’で示す線に沿った縦断面を示す図である。
本例では、中心部の導波管201内に導体棒は配置されておらず、外周部の導波管202の各々に2本の導体棒203,601が配置されている。このうち導体棒203の方向は、図3に示す実施例1の導体棒203と同じものである。
一方、本例の複数の導波管202内に配置された導体棒601は、各々が導体棒203との間で上方から見て所定の角θを成して配置されている。当該角度θは、全ての導波管202において等しくされている。
さらに、導体棒203を基準として導体棒601のなす角θの符号を時計回り方向を正、反時計回り方向を負とすると、全ての外周部の導波管202においてθの正負も等しいものにされている。尚、本実施例においても、導波管201,202及び導体板114の相対的な位置の構成は、実施例1と同等のものにされている。このような構成の本実施例では、導体棒601の方向は各導波管202において空洞部116または処理室115あるいは試料台108とその上方のウエハ107の中心周りの方向について、対称性を有している。
このような角度θで導体棒203,601を配置することにより、全ての外周部の導波管202では円偏波の電界は全ての励振軸方向について平均した透過率が等しくされる。このことにより、円偏波の電界が阻害されることが抑制され透過率の調節の精度を向上させることが可能となる。
このような構成において、中心の導波管201の長さL1と外周部の導波管202の長さL2、およびそれぞれに充填する誘電体の誘電率εrx,εryの関係は式5で表される。
実施例1では外周側部分に配置された導波管202の各々の長さは異なっても良いが、本実施例では円偏波の全ての励振軸方向についての透過率を平均して等しくするうえでは、全ての導波管202においてその中心軸の方向の長さの寸法L2は等しいことが望ましい。
このような本実施例においては、実施例1と同様に、中心部の導波管201に対して外周部の導波管202の電界の透過率が調節されていることにより、処理室115内においてウエハ107上面の面内方向についての電界の強度、プラズマの密度の分布を所望のものに調節される。このことにより、ウエハ107上面の面内方向について所望のエッチング速度等のエッチング量の分布が実現できる。
以上の通り、上記の実施例により、適用する処理条件に応じてマイクロ波の電界の透過率が任意に制御され、ウエハ107上面の面内方向においてエッチング処理のバラつきが低減され処理の結果が均一に近付けられる。これにより、均一な処理を実現できるプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法が提供できる。
100…プラズマ処理装置、
101…マイクロ波発生用電源、
102…円偏波器、
103…第1の導波管、
104…真空容器、
105…窓部材、
106…コイル、
107…被処理基板、
108…試料台、
109…高周波電源、
110…直流電源、
111…高周波フィルタ、
112…マッチング回路、
113…第2の導波管、
114…導体板、
201…導波管、
202…導波管、
203…導体棒、
301…誘電体、
302…導体棒、
303…導体棒、
401,402,403,404…導波管、
405,406…誘電体、
501,502…導波管、
503,504…誘電体、
901…モータ、
1001…上段の導波管、
1002…下段の導波管、
1601…導体棒。
101…マイクロ波発生用電源、
102…円偏波器、
103…第1の導波管、
104…真空容器、
105…窓部材、
106…コイル、
107…被処理基板、
108…試料台、
109…高周波電源、
110…直流電源、
111…高周波フィルタ、
112…マッチング回路、
113…第2の導波管、
114…導体板、
201…導波管、
202…導波管、
203…導体棒、
301…誘電体、
302…導体棒、
303…導体棒、
401,402,403,404…導波管、
405,406…誘電体、
501,502…導波管、
503,504…誘電体、
901…モータ、
1001…上段の導波管、
1002…下段の導波管、
1601…導体棒。
Claims (10)
- その内側が減圧されてプラズマが形成される処理室が内部に配置された真空容器と、この真空容器上部を構成して前記プラズマを形成するための電界が透過する誘電体製の窓部材と、この窓部材の上方に配置され前記電界が内側を伝播する第1の導波管と、この第1の導波管と前記窓部材との間に配置され当該第1の導波管からの前記電界が内部に導入されて前記窓部材に供給される第2の導波管と、処理室内部に配置され処理対象のウエハが載置される試料台とを備え、
前記第2の導波管が、前記窓部材の中心部上方に配置された中心側の導波管と当該中心側導波管の外周側でこれを囲んで配置された複数の外周側の導波管と、前記中心側及び外周側の導波管から前記窓部材に導入される前記電界に所定の位相差を形成する手段と、前記導入される前記電界の透過率を異ならせる手段とを備えたプラズマ処理装置。
- 請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記電界の透過率を異ならせる手段が、前記第2の導波管の前記中心側の導波管または前記外周側の複数の導波管各々の導波管内にその軸方向を異ならせて配置された複数の導体製の棒状の部材であるプラズマ処理装置。
- 請求項1または2に記載のプラズマ処理装置であって、
前記位相差を形成する手段が、前記中心側の導波管及び外周側の導波管の内部に配置され厚さまたは材料が異なる誘電体製の部材を備えたプラズマ処理装置。
- 請求項1乃至3の何れかに記載のプラズマ処理装置であって、
前記第2の導波管が、前記窓部材の上方に隙間をあけて配置された金属製の板部材に配置された円筒形の空間であるプラズマ処理装置。
- 請求項1乃至4の何れかに記載のプラズマ処理装置であって、
前記第1の導波管から前記第2の導波管に供給される電界が円偏波であるプラズマ処理装置。
- 真空容器内部に配置されその内側が減圧される処理室内に配置された試料台上に処理対象のウエハを載置し、前記真空容器上部を構成して前記プラズマを形成するための電界が透過する誘電体製の窓部材の上方に配置された第1の導波管及びこの第1の導波管と前記窓部材との間に配置された第2の導波管を通して電界を前記窓部材に供給して、当該窓部材を透過した前記電界を用いて前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを処理するプラズマ処理方法であって、
前記第2の導波管が、前記窓部材の中心部上方に配置された中心側の導波管と当該中心側導波管の外周側でこれを囲んで配置された複数の外周側の導波管とを備え、前記中心側及び外周側の導波管の間でこれら導波管から前記窓部材に所定の位相差を形成するとともに透過率を異ならせて前記電界を供給するプラズマ処理方法。
- 請求項6に記載のプラズマ処理方法であって、
前記第2の導波管の前記中心側の導波管または前記外周側の複数の導波管各々の導波管内にその軸方向を異ならせて配置された複数の導体製の棒状の部材によって前記電界の透過率を異ならせるプラズマ処理方法。
- 請求項6または7に記載のプラズマ処理方法であって、
前記中心側の導波管及び外周側の導波管の内部に配置され厚さまたは材料が異なる誘電体製の部材を備えて前記位相差が形成されるプラズマ処理方法。
- 請求項6乃至8の何れかに記載のプラズマ処理方法であって、
前記第2の導波管が、前記窓部材の上方に隙間をあけて配置された金属製の板部材に配置された円筒形の空間であるプラズマ処理方法。
- 請求項6乃至9の何れかに記載のプラズマ処理方法であって、
前記第1の導波管から前記第2の導波管に円偏波の前記電界を供給するプラズマ処理方法。
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JP2019057375A (ja) * | 2017-09-20 | 2019-04-11 | 株式会社日立ハイテクノロジーズ | プラズマ処理装置 |
-
2015
- 2015-11-16 JP JP2015223581A patent/JP2017091934A/ja active Pending
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