以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態の一例として、電子写真方式のプリンタについて説明する。まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタの構成を示す概略構成図である。図1に示されるように、このプリンタは、イエロー(Y),シアン(C),マゼンタ(M),黒(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kを備えている。符号の末尾に添えられたY,C,M,Kという添字は、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナー像を形成するための手段であることを示す。なお、Y,C,M,Kの色順は、図1に示される順に限られるものでなく、他の並び順であっても構わない。
図2は、実施形態に係るプリンタの画像形成ユニットの構成を示す構成図である。図2に示されるように、画像形成ユニット1Yに設けられた潜像担持体たるドラム状の感光体2Yの周囲には、帯電手段たる帯電ローラ3Y、現像手段たる現像装置4Y、クリーニング装置5Yなどが配設されている。ゴムローラからなる帯電ローラ3Yは、感光体2Yの表面に接触しながら回転するようになっている。実施形態に係るプリンタでは、かかる帯電ローラ3Yに対して、帯電バイアスとして、AC成分を含まないDCバイアスを印加する接触DC帯電方式を採用している。なお、帯電ローラ3Yには、接触AC帯電ローラ方式や非接触帯電ローラ方式などの他の方式を採用することもできる。
現像装置4Y内には、イエロートナーと磁性キャリアとを含有する現像剤が収容されている。この現像剤は、平均粒径4.9〜5.5μmのトナーと、ブリッジ抵抗が12.1[LogΩ・cm]以下である小粒径・低抵抗キャリアとを含有するものである。現像装置4Yは、感光体2に対向した現像剤担持体たる現像ローラ4aY、現像剤を搬送・撹拌するスクリュー、トナー濃度センサー等から構成される。現像ローラ4aYは、中空で回転自在なスリーブと、これに連れ回らないように内包されるマグネットローラとから構成されている。
画像形成ユニット1Yは、感光体2Yと、その周囲に配設された帯電ローラ3Y、現像装置4Y、クリーニング装置5Yとを1つのユニットとして共通の保持体に保持させたプロセスカートリッジとして構成されている。プリンタ本体に対して着脱可能になっており、その寿命到達持に一度に消耗部品を交換できるようになっている。他色用の画像形成ユニット1C,1M,1Kは、トナーとしてシアントナー、マゼンタトナー、黒トナーを用いるが、それ以外の構成は、Y用の画像形成ユニット1Yと同様である。
画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kの下方には、潜像書込手段たる光書込ユニット6が配設されている。光書込ユニット6は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、画像データに基づいて各色の感光体2Y,2C,2M,2Kの表面に対してレーザー光Lの光走査を行う。この光走査により、感光体2Y,2C,2M,2K上に、イエロー,シアン,マゼンタ,黒用の静電潜像が形成される。
画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kの上方には、トナー像を感光体2Y,2C,2M,2Kから中間転写ベルト7を介して記録シートSに転写する中間転写ユニット8が配置されている。中間転写ベルト7は、複数のローラに張架されながら、少なくとも何れか1つのローラの回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。中間転写ユニット8は、中間転写ベルト7の他、一次転写ローラ9Y,9C,9M,9K、ブラシローラ、クリーニングブレードを具備するクリーニング装置10、二次転写バックアップローラ11、光学センサーユニット20などを備えている。
一次転写ローラ9Y,9C,9M,9Kは、中間転写ベルト7を感光体2Y,2C,2M,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、感光体2Y,2M,2C,2Kと、中間転写ベルト7のおもて面とが当接するY,C,M,K用の一次転写ニップが形成されている。中間転写ユニット8は、黒用の画像形成ユニット1Kよりもベルト移動方向下流側で、二次転写バックアップローラ11の近傍にてベルトループ外側に位置する二次転写ローラ12を備えている。二次転写ローラ12は、二次転写バックアップローラ11との間に中間転写ベルト7挟み込んで二次転写ニップを形成している。
二次転写ローラ12の上方には、定着ユニット13が配設されている。定着ユニット13は、互いに回転しながら当接して定着ニップを形成する定着ローラと加圧ローラとを備えている。定着ローラは、ハロゲンヒータを内蔵し、定着ローラ表面が所定の温度となるように、電源からのヒータへ電力が供給され、加圧ローラとの間に定着ニップを形成している。
プリンタ本体の下部には、出力画像が記録される記録媒体たる記録シートSを複数枚重ねて収容する給紙カセット14a、14b、給紙ローラ、レジストローラ対15などが配設されている。また、プリンタ本体の側面には、側面から手差しで給紙を行うための手差しトレイ14cが備えられている。また、中間転写ユニット8や定着ユニット13の図中右側には、両面印刷時に記録シートSを再び二次転写ニップへ搬送するための両面ユニット16が設けられている。
プリンタ本体の上部には、画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kの現像装置にトナーを補給するトナー補給容器17Y、17C、17M、17Kが配設されている。また、プリンタ本体には、廃トナーボトル、電源ユニットなども設けられている。
次に、プリンタの動作について説明する。まず、帯電電源ユニットから出力される帯電バイアスが印加される帯電ローラ3Yと感光体2Yとの接触領域で感光体2Yの表面を一様に帯電させる。所定の電位に帯電した感光体2Yの表面には、光書込ユニット6によって画像データに基づくレーザー光Lの走査がなされ、これによって感光体2Yに静電潜像が書き込まれる。静電潜像を担持した感光体2Yの表面が感光体2Yの回転に伴って現像装置4Yに到達すると、感光体2Yと対向配置される現像ローラ4aYにより、感光体2Yの表面の静電潜像にYトナーが供給される。これにより、感光体2Yの表面にYトナー像が形成される。現像装置3Y内には、トナー濃度センサーの出力に応じて、トナー補給容器17Yから適量のYトナーが補給される。
同様の動作が画像形成ユニット1C,M,Kにおいても所定のタイミングで行われる。これにより、感光体2Y,2C,2M,2Kの表面に、Y,C,M,Kトナー像が形成される。これらY,C,M,Kトナー像は、Y,C,M,K用の一次転写ニップで中間転写ベルト7のおもて面に順に重ね合わせて一次転写されていく。この一次転写は、一次転写ローラ9Y,9C,9M,9Kに、転写電源によってトナーと逆極性の電圧が印加されることで行われる。
記録シートSは、給紙カセット14a、14b、もしくは手差しトレイ14cのいずれかから搬送され、レジストローラ対15に到達したところで一旦停止する。そして、所定のタイミングに合せてレジストローラ対15が回転して記録シートSを二次転写ニップへ向けて送り出す。
中間転写ベルト7上に重ね合わされたY,C,M,Kトナー像は、二次転写ローラ12と中間転写ベルト7とが当接する二次転写ニップで記録シートSに二次転写される。この二次転写は、二次転写電源によって二次転写ローラ12にトナーと逆極性の電圧が印加されることで行われる。記録シートSは、二次転写ニップを出た後に定着ユニット13に向けて搬送されて定着ニップに挟み込まれる。記録シートS上のトナー像は、定着ニップにて定着ローラからの熱により加熱定着される。トナー像が定着せしめられた記録シートSは、片面印刷の場合には、各搬送ローラによって機外に排出される。また、両面印刷の場合、記録シートSは、各搬送ローラによって両面ユニット16へ搬送されて反転され、先に画像が形成された面とは反対側の面に、上述したように画像が形成された後に機外に排出される。
実施形態に係るプリンタは、環境変動や経時における画像品質の安定化を図るために、所定のタイミングでプロセスコントロール処理と呼ばれる制御を実施する。プロセスコントロール処理では、感光体2Yに複数のパッチ状Yトナー像からなるYパッチパターン像を現像し、それを中間転写ベルト7に転写する。また、感光体2C,2M,2Kにも、同様にしてC,M,Kパッチパターン像を形成する。そして、それらのパッチパターン像における各トナー像のトナー付着量を、光学センサーユニット20で検出し、その検出結果に基づいて現像バイアスVbなどの作像条件を調整する。
図3は、実施形態に係るプリンタの電気回路の要部を示すブロック図である。また、図4は、プロセスコントロールにおける演算処理の流れを示すフローチャートである。図3に示されるように、制御部30には、画像形成ユニット1Y,1C,1M,1K、光書込ユニット6、給紙モータ81、レジストモータ82、中間転写ユニット8、光学センサーユニット20などが電気的に接続されている。この制御部30は、演算処理や各種プログラムを実行するCPU30aと、データを記憶するRAM30bとを備えている。なお、給紙モータ81は、各給紙カセットや給紙トレイの給紙ローラの駆動源になっている。また、レジストモータ82は、レジストローラの駆動源になっている。
光学センサーユニット20は、中間転写ベルト7のベルト幅方向に所定の間隔をおいて並ぶ複数の反射型フォトセンサーを有している。それぞれの反射型フォトセンサーは、中間転写ベルト7や中間転写ベルト7上の後述するパッチ状トナー像の光反射率に応じた信号を出力するように構成されている。トナー付着量検知手段たる反射型フォトセンサーは、4つ設けられている。そのうちの3つは、Y,M,Cトナー像やY,C,M付着トナーに応じた出力を行えるように、ベルト表面上における正反射光及び拡散反射光の両方をとらえて、それぞれの光量に応じた出力を行う。残りの1つは、Kトナー像やK付着トナーに応じた出力を行うように、ベルト表面上における正反射光だけをとらえてその光量に応じた出力を行う。
制御部30は、主電源の投入時や、所定時間経過した後の待機時、所定枚数以上のプリントを出力したあとの待機時など、所定のタイミングで、プロセスコントロール処理を実施する。具体的には、この所定のタイミングが到来すると、まず、図4に示されるように、通紙枚数、印字率、温度、湿度などの環境情報を取得する(ステップS1)。次に、画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kにおけるそれぞれの現像特性を把握する。具体的には、それぞれの色について、現像ガンマγと現像開始電圧を算出する(ステップS2)。
その算出過程は次の通りである。即ち、まず、感光体2Y,2C,2M,2Kを回転させながらそれぞれを一様に帯電せしめる。この帯電については、帯電バイアスVcとして通常のプリント時における一様な値(例えば−700V)とは異なり、その絶対値を大きくしていく。光書込ユニット6によるレーザー光Lの走査によって感光体2Y,2C,2M,2Kに、パッチ状Yトナー像,パッチ状Cトナー像、パッチ状Mトナー像、パッチ状Kトナー像用の静電潜像を形成する。それらを現像装置12Y,12C,12M,12Kによって現像することで、感光体2Y,2C,2M,2K上にY,C,M,Kパッチパターン像を形成する。なお、現像の際に、制御部30は、各色の現像ローラ(4a)に印加する現像バイアスVbの絶対値も徐々に大きくしていく。現像バイアスVb、帯電バイアスVcは、何れも負極性のDCバイアスからなる。
Y,C,M,Kパッチパターン像は、図5に示されるように、中間転写ベルト7上に重なり合わずに、ベルト幅方向に並ぶように転写される。具体的には、Yパッチパターン像YPPは、中間転写ベルト7の幅方向における一端部に転写される。また、Cパッチパターン像CPPは、ベルト幅方向において、Yパッチパターン像よりも少し中央側にずれた位置に転写される。また、Mパッチパターン像MPPは、中間転写ベルト7の幅方向における他端部に転写される。また、Kパッチパターン像KPPは、ベルト幅方向において、Kパッチパターン像よりも少し中央側にずれた位置に転写される。
光学センサーユニット20は、互いにベルト幅方向の異なる位置でベルトの光反射特性を検知する第1反射型フォトセンサー20a、第2反射型フォトセンサー20b、第3反射型フォトセンサー20c、及び第4反射型フォトセンサー20dを有している。これら4つの反射型フォトセンサーのうち、第3反射型フォトセンサー20cは、黒トナーの付着に起因するベルト表面の光反射特性の変化を検知するように、正反射光だけを検知するものを採用している。これに対し、その他の反射型フォトセンサーは、Y,C又はMトナーの付着に起因するベルト表面の光反射特性の変化を検知するように、正反射光と拡散反射光との両方を検知するタイプのものである。
第1反射型フォトセンサー20aは、中間転写ベルト7の幅方向の一端部に形成されたYパッチパターン像YPPのパッチ状Yトナー像のYトナー付着量を検知する位置に配設されている。また、第2反射型フォトセンサー20bは、ベルト幅方向において、Yパッチパターン像YPPの近くに位置するCパッチパターン像CPPのパッチ状Cトナー像のCトナー付着量を検知する位置に配設されている。また、第4反射型フォトセンサー20dは、中間転写ベルト7の幅方向の他端部に形成されたMパッチパターン像MPPのパッチ状Mトナー像のMトナー付着量を検知する位置に配設されている。また、第3反射型フォトセンサー20cは、ベルト幅方向において、Mパッチパターン像MPPの近くに位置するKパッチパターン像KPPのパッチ状Kトナー像のKトナー付着量を検知する位置に配設されている。なお、第1反射型フォトセンサー20a、第2反射フォトセンサー20b、及び第4反射型フォトセンサー20dの3つは、それぞれトナー像の色が黒以外の3色(Y,C,M)であれば、そのトナー付着量を検知することができる。
制御部30は、光学センサーユニット20の4つの反射型フォトセンサーから順次送られてくる出力信号に基づいて、各色のパッチ状トナー像の光反射率を演算し、演算結果に基づいてトナー付着量を求めてRAM30aに格納していく。なお、中間転写ベルト7の走行に伴って光学センサーユニット20との対向位置を通過した各色のパッチパターン像は、クリーニング装置10によってベルトおもて面からクリーニングされる。
次に、RAM30aに格納した画像濃度データ(トナー付着量)と、別途RAM150bに格納した露光部電位(潜像電位)のデータとから、図6に示される直線近似式(Y=a×Vb+b)を算出する。同図の2次元座標において、x軸は、露光部電位Vlから、そのときに印加した現像バイアスVbを減じた値、すなわち現像ポテンシャル(Vl−Vb)を示している。Y軸は、単位面積当たりのトナー付着量(y)を示す。図6には、パッチ状トナー像の数に対応した数だけ、X−Y平面上にデータがプロットされる。そのプロットされた複数のデータに基づいて、直線近似をおこなうX−Y平面上の区間を決定する。その後、その区間内で、最小自乗法をおこなって直線近似式(y=a×Vb+b)を得る。このとき直線近似式に基づいて、現像ガンマγと現像開始電圧Vkとが算出される。現像ガンマγは直線近似式の傾きとして算出され(γ=a)、現像開始電圧Vkは直線近似式とX軸との交点として算出される(Vk=−b/a)。こうして、各色の画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kの現像特性が算出される(ステップS2)。
次に、求めた現像特性に基づいて、帯電電位(地肌部電位)Vdの目標値(目標帯電電位)と、露光部電位Vlの目標値(目標露光部電位)と、現像バイアスVbとが求められる(ステップ3)。具体的には、目標帯電電位や目標露光部電位は、現像ガンマγと、帯電電位Vdや露光部電位Vlとの関係を予め定めたテーブルに基づいて求める。これにより、現像ガンマγに適した目標帯電電位及び目標露光部電位を選択することができる。また、現像バイアスVbは、次のようにして求められる。即ち、現像ガンマγと現像開始電圧Vkとの組み合わせによって最大トナー付着量を得るための現像ポテンシャルを求め、その現像ポテンシャルを得ることができる現像バイアスVbを求める。そして、その現像バイアスVbと地肌ポテンシャルとに基づいて、目標帯電電位が求められる。現像ローラの現像スリーブの表面は、現像バイアスVbとほぼ同じ値になることから、感光体の表面が目標帯電電位に帯電し、適切に露光していれば、狙いの現像ポテンシャルや地肌ポテンシャルを得ることができる。
制御部30は、次に、帯電バイアスVcを決定する。具体的には、目標帯電電位が得られる帯電バイアスVcは、感光体表面層の摩耗量や、環境に影響される帯電ローラの電気抵抗などに応じて変化する。そこで、制御部30は、環境(温湿度)及び感光体走行距離の組み合わせから、目標帯電電位を得ることが可能な帯電バイアスVcを求めるためのアルゴリズムを記憶している。このアルゴリズムは、予めの実験に基づいて構築されたものである。そして、環境センサー52による温湿度の検知結果、及びRAMに記憶している感光体走行距離の組み合わせにより、目標帯電電位を得ることが可能な帯電バイアスVcを、アルゴリズムを用いて求める。
現像剤の性質として、地汚れは初期に比べて経時の方が悪く、逆にキャリア付着(エッジキャリア付着)は経時に比べて初期の方が悪い状態である。そのため、現像剤の使用に伴って、最適な地肌ポテンシャルは大きな値の方にシフトする。また一般的に、高温高湿環境では、トナーの帯電量が低いために地汚れが悪化し、逆に低温低湿環境では、キャリア付着が不利になる。このため、本実施形態に係る画像濃度制御においては、地肌ポテンシャルを初期/経時+環境で最適な値にシフトさせる。
既に実験によって地肌汚れとキャリア付着を目標以下にするのに最適な地肌ポテンシャルは各条件において求められている。このため、帯電ローラやキャリアの劣化及び温湿度の変化などの環境情報があれば、ある程度の補正は可能である。しかし、実験時との誤差や予想外の因子により最適な地肌ポテンシャルが変動する可能性がある。一方、現像開始電圧Vkは感光体2上への現像が開始される電圧として考えることができるので、現像開始電圧Vkの絶対値と同等以上の地肌ポテンシャルがないと地汚れが悪くなると考えられる。
そこで、制御部30は、図4に示されるように、ステップS3の工程後に、狙いの現像開始電圧Vk’を決定する(ステップS4)。狙いの現像開始電圧Vk’はあらかじめ実験により環境情報と紐付けされテーブル化されており、最初に取得した環境情報からテーブルを参照して狙いの現像開始電圧Vk’を決定する。そして、現像開始電圧Vkと狙いの現像開始電圧Vk’との差分の量で区分を決定する(ステップS5)。例えば、現像開始電圧Vkが狙いの現像開始電圧Vk’に対して+40V以上離れていれば区分1、+40V未満+20V以上で区分2、+20V未満0V以上で区分3というように区分分けする。そして、現像開始電圧Vkがどの区分にあるか特定し、区分毎に補正量を決定する(ステップS6)。次に、ステップS3で求めた帯電電位Vdと現像バイアスVbとから算出される地肌ポテンシャルに対して、ステップS5で決定された補正量を加算して目標地肌ポテンシャルを算出する。そして、この目標地肌ポテンシャルが得られるように帯電バイアスVcを決定する(ステップS7)。
図7は、現像ポテンシャルや地肌ポテンシャルを説明するためのグラフである。図7に示されるように、地肌ポテンシャルは、帯電電位Vdと現像バイアスVbとの差分であり、画像の非画像部(地肌部分)において作用するものである。地肌ポテンシャルが小さいと地汚れが発生し易くなる一方で、地肌ポテンシャルが大きいとキャリア付着が発生し易くなることから、地肌ポテンシャルを適切な値に設定する必要がある。
図8は、地肌ポテンシャルと、地汚れやキャリア付着の度合いとの関係の一例を示すグラフである。この例では、プロセスコントロール処理の実施により、地肌ポテンシャルの理論値が140[V]に設定された例を示している。理論値と表現したのは、次に説明する理由による。即ち、プロセスコントロール処理により、適切な帯電電圧Vdと現像バイアスVbとの関係に基づいて地肌ポテンシャルが決定され、それに基づいて帯電バイアスVcが決定されることは既に述べた通りである。しかし、その帯電バイアスVcにより、帯電電位Vdが目標帯電電位になっているとは限らない。これは、帯電ローラと感光体との間の放電開始電圧が、様々な要因によって変化し、それによって同じ帯電電位Vdを得るための帯電バイアスVcが変化するからである。プロセスコントロール処理では、帯電バイアスVcを決定するにあたり、環境や感光体走行距離を考慮しているが、あくまでも理論的なアルゴリズムによるものであるので、その通りになるとは限らない。また、同じ帯電電位Vdを得るための帯電バイアスVcの値は、環境や感光体走行距離とは異なる他のパラメータによって変化する。
同図に示される例では、地肌ポテンシャルが140[V]になっていれば、地汚れ及びキャリア付着の両方を抑えることができる。そこで、制御部30は、プロセスコントロールの際に、たとえば140[V]の地肌ポテンシャルと、所望の現像ポテンシャルとが得られるように、目標帯電電位を決定している。ところが、帯電電位Vdを得るための帯電バイアスVcの値が様々な要因によって変化してしまうことから、プロセスコントロール処理によって決定した帯電バイアスVcによってその目標帯電電位が得られているとは限らない。場合によっては、実際の帯電電位Vdが目標帯電電位(図示の例では140V)から大きくずれることもある。すると、同図において、実際の地肌ポテンシャルが170Vを超えてキャリア付着が発生したり、実際の地肌ポテンシャルが110Vを下回って地汚れが発生したりする。
既に述べたように、ゴムローラからなる帯電ローラ(例えば3Y)には、帯電バイアスVcが印加される。感光体(例えば2Y)の帯電電位Vdは、図9に示されるように、「Vd=a×Vc+b」という式で表される特性を示す。aは図9に示されるグラフの傾きであり、bはグラフにおけるVd軸切片であり、マイナスの値になる。グラフにおけるVc軸切片は、帯電ローラと感光体との間における放電開始電圧とほぼ同じ値になる。また、傾きaは、ほぼ1になる。
実施形態に係るプリンタにおいては、既に述べたように、感光体に接触させた帯電ローラに対して直流成分だけからなる帯電バイアスを印加する接触DC帯電方式を採用している。接触DC帯電方式では、帯電バイアスとしてAC/DC重畳バイアスを用いる方式とは異なり、AC電源を必要としないことから、低コスト化を図ることができる。その一方で、帯電ローラと感光体との間に交番電界を形成しないことから、帯電バイアスVcの値を同図のグラフに示される放電開始電圧よりも大きくしないと、帯電ローラと感光体との間で放電を生じせしめることができず、感光体を全く帯電させることができない。また、帯電させることができたとしても、放電開始電圧が環境、感光体表面層の摩耗量、帯電ローラの電気抵抗や汚れ量などに応じて変動することから、同じ帯電バイアスVcの条件下では帯電電位Vdが変動してしまう。このため、AC帯電方式に比べて、所望の帯電電位Vdを安定して得ることが難しくなる。
図10は、帯電電位Vdと感光体走行距離xとの関係を示すグラフである。感光体走行距離xは、感光体の回転に伴う感光体表面の移動距離の累積値である。図示のように、帯電電位Vdは、「Vd=ex+f」という式で表される特性を示す。eは同グラフの傾きである。fは、グラフのVd軸切片である。傾きeや切片fの値は一定ではなく、経時的にランダムに変化する。これは次に説明する理由による。即ち、感光体の表面には、クリーニングブレードや現像剤などが摺擦することから、感光体表面層は経時的に摩耗していく。この摩耗に伴って、感光体の静電容量は経時的に大きくなっていき、それに伴って放電開始電圧が低下して、帯電電位Vdが上昇していく。また、画像面積、画像の形状(例えば縦帯のように主走査方向に一部分だけ画像が存在する形状:この場合には画像に接触する感光体箇所の摩耗が進む)、環境、キャリア付着量など、多様な因子によって磨耗量が変化する。加えて、帯電ローラの表面のトナーやトナー添加剤による汚れの状況はランダムに変化して、それに応じて放電開始電圧も変化する。これらのことから、傾きeや切片fは経時的にランダムに変化するのである。このような変化があったり、感光体表面層の磨耗量を直接計測することができなかったりすることから、算術的な手法によって帯電電位Vdを求めることは非常に困難である。
一方、電子写真プロセスにおいて、安定した画像濃度を得るためには、露光量(潜像の書込光量)を適切に制御する必要がある。露光量が適正値よりも多くなると、ドット径やライン幅が大きくなって、中間調部において画像形状が潰れたようになる。また、適正値よりも少なくなると、ハイライト部が白抜けになることもある。
図11は、帯電電位Vdと露光量適正値との関係を示すグラフである。感光体の状態が初期状態である場合には、帯電電位Vdは、「Vd=cK+d」という式で表される特性を示す。cはグラフの傾きであり、dはグラフのVd軸切片である。露光量を一定にした場合、所望の画像濃度を得るためには帯電電位Vdを安定化させる必要がある。また、感光体の状態が古くなっていくと、帯電電位Vdと露光量適正値との関係式は、「Vd=c‘K+d’」というように変化していく。このため、露光量を一定にしただけでは、所望の画像濃度を維持することはできない。
図12は、地汚れIDと、地肌ポテンシャルと、エッジキャリア付着(感光体に対するキャリア付着量)との関係を示すグラフである。地汚れIDは、感光体の地肌部のトナーを粘着テープに転写して画像濃度を測定した値である。また、エッジキャリア付着は、エッジ部を強調した領域を多く含む特定の画像を出力した際に、感光体における画像のエッジ付近に付着した磁性キャリアをカウントした値である。図示のように、地肌ポテンシャルが下がると地肌汚れIDが上昇し、この逆に地肌ポテンシャルが上がるとエッジキャリア付着が上昇する。図示の例では、地肌ポテンシャルの適正値が180V程度になっており、地肌ポテンシャルについては適正値の±30V内に留めないと、地肌汚れやキャリア付着が発生してしまう。この適正値は、機種毎によって異なるが、同じ機種であれば、それほど大きく変動しない。
そこで、制御部30は、プロセスコントロール処理を実施した後、必要に応じて、目標帯電電位が得られるように帯電バイアスVcの値を決定する帯電バイアス決定処理を実施するようになっている。
図13は、制御部30によって実施される定期ルーチン処理の流れを示すフローチャートである。この定期ルーチン処理において、制御部30は、まず、プロセスコントロール処理の実行タイミングについて、到来したか否かを判定する(S1)。そして、到来していない場合には(S1でN)、定期ルーチン処理を直ちに終了する。一方、到来した場合には(S1でY)、S2以降のフローを実行する。
S2においては、上述したプロセスコントロール処理を実施する。なお、プロセスコントロール処理の開始の前に、連続プリント動作を行っている場合には、連続プリント動作を一時中止してから、プロセスコントロール処理を開始する。
制御部30は、プロセスコントロール処理を終えると、次に、Y,C,M,Kの各色の現像装置にそれぞれ収容されている現像剤のトナー濃度を調整するトナー濃度調整処理を実施する(S3)。プロセスコントロールにおいては、トナー濃度の目標値を変更することもあることから、プロセスコントロールの後に、トナー濃度を調整するのである。現状のトナー濃度が目標値よりも低い場合には現像剤にトナーを補給し、現状のトナー濃度が目標値よりも高い場合には、必要に応じてトナー消費量のトナー像を現像してトナーを強制消費させる。
トナー濃度調整処理を終えると、次に、帯電バイアス決定処理の必要性について判断する。具体的には、感光体走行距離がある閾値まで長くなると、プロセスコントロールにおいて求めた目標帯電電位と、実際の帯電電位Vdとのずれが生じ始めることが経験的に解っている。これに対し、感光体走行距離が閾値まで到達していない場合には、前述のずれはそれほど生じないことが経験的に解っている。そこで、制御部30は、感光体走行距離が10km(閾値)未満である場合には(S4でN)、判定用のフラグをOFFにした後に(S8)、S9に進み、ここでフラグセット中でない(=トナー濃度調整処理の必要なし)と判定して、定期ルーチン処理を終了する。
感光体走行距離が閾値に達していても、環境によっては、目標帯電電位と実際の帯電電位Vdとのずれ量が比較的小さい値になることも経験的に解っている。具体的には、温度がある閾値以下の場合には、ずれ量が大きくなるので帯電バイアス決定処理の実施が必要になる。また、温度が閾値を超えていても、絶対湿度が低すぎたり高すぎたりする場合には、ずれ量が大きくなるので帯電バイアス決定処理の実施が必要になる。それら以外のケースでは、ずれ量が比較的小さくなるので、帯電バイアス決定処理の必要性は低い。
そこで、制御部30は、感光体走行距離が10kmを超える場合には(S4でY)、次に、10℃(閾値)以下であるか否かを判定する(S5)。そして、10℃以下である場合には(S5でY)、フラグをセットした後に(S7)、上述したS9を経て、帯電バイアス決定処理(S10)を実行する。また、10℃以下でない場合には(S4でN)、絶対湿度について適正範囲内であるか否かを判定する(S6)。例えば、5mg/m3よりも高く且つ18mg/m3よりも低い(適正範囲内)か否かを判定する。そして、そうでない場合には(S6でN)、先に述べたS7、S9を経て帯電バイアス決定処理(S10)を実施する。これに対し、絶対湿度が適正範囲内にある場合には(S6でY)、先に述べたS8、S9を経て、帯電バイアス決定処理を実施することなく定期ルーチン処理を終了する。
このように、感光体走行距離と、環境センサー52による検知結果(温湿度)とに基づいて、帯電バイアス決定処理の実施タイミングを決定することで、不必要な帯電バイアス決定処理の実施を抑えて装置のダウンタイムを低減することができる。なお、帯電バイアス決定処理を実施した場合には、再びトナー濃度調整処理を実施してから、定期ルーチン処理を終えるようにしてもよい。
帯電バイアス決定処理において、制御部30は、各色についてそれぞれ次のような処理を行って、各色の地汚れパターンを中間転写ベルト7上に形成する。即ち、まず、光書込ユニット6を停止させた状態で感光体を回転駆動させながら、帯電バイアスVcを段階的に変化させて、感光体表面の周方向において互いに帯電電位Vdの異なる複数の被検領域を具備する地肌電位パターン部を形成する。そして、それら被検領域を感光体の回転に伴って現像位置に通すことで、複数の被検領域(互いに異なる地肌ポテンシャルが作用している)に対してそれぞれの地肌ポテンシャルに応じた量の地汚れトナーを付着させる。そして、それら複数の被検領域に付着した地汚れトナーからなる地汚れパターンを中間転写ベルト7に一次転写する。なお、Y,C,M,Kの地汚れパターンは、ベルト移動方向において互いに重ならないようにベルトおもて面に一次転写される。
図14は、Y用の画像形成ユニット1Yにおける地肌電位パターン部形成時の各電位の経時変化を示すグラフである。制御部30は、Y用の地肌電位パターン部を形成する際には、図示のように、現像バイアスVbを一定の値に維持したまま、帯電バイアスVcを段階的に変化させていく。現像バイアスVb、帯電バイアスVcのそれぞれとして、マイナス極性のものを用いていることから、同図に示されるグラフの位置が下になるほど、バイアスの絶対値が大きいことを示している。帯電バイアスVcについては、9段階に変化させているが、例えば初めの1段階目では、帯電バイアスVcとして1350[−V]の直流バイアスを出力する。その後、感光体表面移動距離で10mmに相当する時間が経過する毎に、帯電バイアスVcの絶対値を20Vずつ小さくしていく。つまり、2段目は1330[−V]、3段目は1310[−V]・・・である。
このようにしてY用の感光体2Yの表面に形成した地肌電位パターン部を現像位置に通したら、それによって生じたY地汚れパターンをY用の一次転写ニップで中間転写ベルト7のおもて面に転写する。他色の地汚れパターンについても同様にして形成して中間転写ベルト7のおもて面に転写する。
なお、地汚れパターンは、地肌電位パターン部における複数の被検領域のそれぞれに対応する複数の地汚れパターン内被検領域を具備している。実施形態に係るプリンタは、地汚れパターン内被検領域のトナー付着量を検知した結果を、地肌電位パターン部においてその地汚れパターン内被検領域に対応する被検領域の地汚れトナー付着量を検知した結果として扱う。
制御部30は、中間転写ベルト7に地汚れパターンを一次転写しながら、中間転写ベルト7の地汚れパターンが光学センサーユニット20との対向位置(検知位置)に進入するタイミングで反射型フォトセンサーからの出力を取得、記憶する。そして、地汚れパターンにおける複数の地汚れパターン内被検領域のそれぞれについて、出力値の平均に基づいてトナー付着量(地汚れトナー量)を取得する。その後、それらの地汚れトナー量や、それぞれの地汚れトナー量に対応する被検領域の帯電バイアスVcに基づいて、地汚れIDを許容限界ギリギリの値にする帯電バイアスVcを特定し、その結果に基づいて、帯電バイアス補正量を求める。そして、通常のプリント時に採用する帯電バイアスVcの設定値を、帯電バイアス補正量の分だけシフトさせて更新する。これにより、感光体の表面をほぼ目標帯電電位で帯電させて所望の地肌ポテンシャルを確保することで、地汚れやキャリア付着の発生を抑えることができる。
通常のプリント動作時において、制御手段としての制御部30は、帯電電源ユニット50に対して帯電バイアスVcの出力命令信号を送るが、このときに、帯電バイアスVcの設定値に応じた信号を送る。これにより、帯電電源ユニット50から設定値と同じ帯電バイアスVcを出力させる。なお、帯電電源ユニット50は、Y,C,M,K用の帯電ローラに対してそれぞれ独立した値の帯電バイアスVcを出力することが可能である。
図15は、中間転写ベルト7上に一次転写されたY地汚れパターンYJPを示す模式平面図である。同図では、便宜上、Y地汚れパターンYJP内における複数の各地汚れパターン内被検領域の境界に一点鎖線を描いている。なお、地汚れパターンをベルト幅方向の全域に渡って存在させる必要は必ずしもない。ベルト幅方向の全域のうち、反射型フォトセンサーによって検知される領域だけに地汚れパターンを存在させればよく、反射型フォトセンサーによって検知されない領域については、地肌部のままにしておかないでトナー像を形成してもよい。図15では、実際には、地汚れトナーをベルト幅方向の全域に渡って付着させており、中間転写ベルト7上にトナー像を形成していない。但し、地汚れパターンの存在領域を明確にするために、あえてベルト幅方向の一部領域だけに点線を付し、その点線の領域だけをY地汚れパターンYJPとしている。具体的には、本プリンタでは、4つの反射型フォトセンサーのうち、第1反射型フォトセンサー20aによってY地汚れパターンYJPの地汚れトナー量を検知することから、図中点線で示されるように、第1反射型フォトセンサー20aの直下を通る領域だけをY地汚れパターンYJPとしている。仮に、Y地汚れパターンの地汚れトナー量を第4反射型フォトセンサー20dによって検知する場合には、Y地汚れパターンは同図の点線の領域ではなく、2点鎖線で示される領域になる。
同図に示されるように、実施形態に係るプリンタでは、Y地汚れパターンYJPの直後に、位置特定用のYトナー像YSTを形成する。これは、図14に示されるように、9段階目の帯電バイアスVcが出力された後、帯電バイアスVcの絶対値を1段階目の値よりも大きくした感光体領域に対して光書込が行われることで静電潜像が形成されたものである。
制御部30は、図15のY地汚れパターンYJPが第1反射型フォトセンサー20aの直下(検知位置)に進入する理論上のタイミング(所定の計時値)よりも少し早いタイミングで、サンプリング処理を開始する。このサンプリング処理は、第1反射型フォトセンサー20aの出力値を高速の時間間隔でサンプリングして記憶していく処理である。そして、第1反射型フォトセンサー20aの出力値が大きく変化したタイミングを、位置特定用のYトナー像YSTが第1反射型フォトセンサー20aの直下に進入したタイミングとして記憶するとともに、サンプリング処理を終了する。そして、サンプリングデータを時系列で区分けして、Y地汚れパターンYJPの各被検領域に対応するサンプリングデータ群をそれぞれ構築する。このようにしてサンプリングデータ群を構築することは、各被検領域についてそれぞれ検知位置への進入タイミングを特定することと同意である。
各被検領域についてそれぞれサンプリングデータ群を構築したら、それぞれのサンプリングデータを平均した結果に基づいて、各被検領域のトナー付着量を求める。
Y地汚れパターンYJPについてだけ説明したが、C,M,K地汚れパターンについても、それぞれ同様にしてパターンの直後に形成した位置特定用のトナー像を形成し、その検知タイミングに基づいて、各被検領域のサンプリングデータ群を構築する。なお、Y,C,Mの3色についてはそれぞれ、第1反射型フォトセンサー20a、第2反射型フォトセンサー20b、又は第4反射型フォトセンサー20dの何れかに検知される位置であれば、地汚れパターンをベルト幅方向のどの位置に形成してもかまわない。但し、実施形態に係るプリンタでは、後述する理由により、第1反射型フォトセンサー20a又は第4反射型フォトセンサー20dに検知される位置に形成している。
また、Kについては、4つの反射型フォトセンサーの何れかに検知される位置であれば、K地汚れパターンをベルト幅方向のどの位置に形成してもかまわない。第1反射型フォトセンサー20a、第2反射型フォトセンサー20b、又は第4反射型フォトセンサー20dであっても、正反射光の出力値だけを用いれば、Kトナー付着量を正確に求めることができるからである。但し、本プリンタでは、後述する理由により、K地汚れパターンも、第1反射型フォトセンサー20a又は第4反射型フォトセンサー20dに検知される位置に形成している。
実施形態に係るプリンタにおいては、現像ポテンシャルによって静電潜像へのトナーの転移を積極的に促した位置特定用のトナー像が反射型フォトセンサーによる検知位置に進入すると、センサーの出力値が大きく変化する。このため、反射型フォトセンサーの出力変化に基づいて、位置特定用のトナー像が検知位置に進入したタイミングを正確に測定することが可能である。そのタイミングと、地汚れパターンにおける各被検領域がそれぞれ検知位置に進入するタイミングとの時差は、次のようになる。即ち、地汚れパターンを形成するために帯電バイアスVcを段階的に変化させ始めたタイミングと、地汚れパターンの各被検領域がそれぞれ検知位置に進入するタイミングとの時差よりも大幅に小さくなる。このように時差が小さくなることで、帯電バイアスVcを段階的に変化させ始めたタイミングを基準にして各被検領域の検知位置への進入タイミングを特定する場合とは異なり、進入タイミングを正確に特定することが可能になる。これにより、地汚れパターンの各被検領域の検知位置への進入タイミングを精度良く特定することができないことに起因する地汚れやキャリア付着の発生を抑えることができる。
実施形態に係るプリンタのように、近似直線に基づいて帯電バイアスを決定するものでは、地肌電位パターン部として、電位を僅かしか異ならせていない多数の被検領域を設けて所望の最小電位から最大電位までを包含させた大きなものを形成する必要がない。比較的大きな電位差のある被検領域を小数設けて最小電位から最大電位までを包含させた小型の地肌電位パターン部を形成すればよい。このため、電位を僅かしか異ならせていない多数の被検領域を設けて所望の最小電位から最大電位までを包含させた大きな地肌電位パターン部を形成する構成に比べて、次のような効果を奏することができる。即ち、地肌電位パターン部を形成したり、複数の地汚れパターン内被検領域のトナー付着量(地汚れトナー量)を検知したりすることによるダウンタイムの増加を抑えることができる。
実施形態に係るプリンタにおいて、ステーション間距離は100mmに設定されている。ステーション間距離は、互いに隣り合う画像形成ユニットのベルト移動方向の配設ピッチであり、これは、互いに隣り合う一次転写ニップの距離と同じである。そして、ベルト移動方向において、地汚れパターンの先端から、位置特定用のトナー像の後端に至るまでの長さを、ステーション間距離(100mm)よりも短くしている。これにより、全ての色の地汚れパターンをベルト幅方向の同じ位置に形成しているにもかかわらず、それらの重なり合いを回避することができている。しかも、それぞれの地汚れパターンの形成をほぼ同時に開始して、帯電バイアス決定処理の実行時間の短縮化を図ることができている。
図16は、地汚れパターンの各地汚れパターン内被検領域における地汚れトナー量と、
想定地肌ポテンシャルとの関係を示すグラフである。同図では、互いに異なる形状のプロット点で結ばれる複数のグラフが描かれているが、それらは、互いに異なる感光体走行距離の画像形成ユニットで実験した結果に基づく特性を示している。想定地肌ポテンシャルは、帯電バイアスVcや光書込強度に基づいて求められる数値である。基本的には、感光体の地肌部が帯電バイアスVcと同じ電位に帯電しているとみなして、地肌ポテンシャルを帯電バイアスVcと現像バイアスVbとの電位差として求めたものである。但し、例外として、地肌部に弱めの光書込を行って地肌部電位を現像バイアスVbよりも小さくした場合には、想定される地肌部における弱光書込後の電位と現像バイアスVbとの電位差を想定地肌ポテンシャルとしている。光書込を行った部位は厳密には地肌部ではないが、ここでは便宜的に地肌部として扱うことにしている。同図において、マイナスの符号が付された想定地肌ポテンシャルは、地肌部の弱光書込後の電位と現像バイアスVbとの差である。実際の地肌ポテンシャルは、感光体の劣化度合いやトナー帯電量などによって想定地肌ポテンシャルとは大きく異なってくる場合がある。
同図においては、画像形成ユニットによって、グラフの特性が大きく異なっている。図中で一番上側のグラフ(▲のプロット点で結ばれたグラフ)の特性を示した画像形成ユニットでは、次のような現象が認められる。即ち、比較的小さな想定地肌ポテンシャルの条件で地汚れトナーを付着させられた感光体被検領域に対応する地汚れパターン内被検領域で比較的多くの地汚れトナー量を発生させている。このことから、その画像形成ユニットでは、次のような現象が発生していると考えられる。即ち、現像剤の劣化によってトナー帯電量(Q/M)が比較的低くなったり、放電開始電圧が比較的高くなって帯電電位Vdが目標帯電電位よりも低くなったりして、地肌ポテンシャルが狙いからずれて、地汚れが発生し易くなっていると考えられる。このような画像形成ユニットでは、帯電バイアスVcをより大きな値(負極性のバイアスなので絶対値をより大きな値)に調整して、実際の帯電電位Vdを引き上げることで、地肌ポテンシャルを狙いの値に近づけて地汚れの発生を抑える必要がある。
一方、図中で「□」のプロット点で結ばれたグラフの特性を示した画像形成ユニットでは、次のような現象が認められる。即ち、比較的大きな想定地肌ポテンシャルの条件で地汚れトナーを付着させられた感光体被検領域に対応する地汚れパターン内被検領域の地汚れトナー量が比較的少ない値に抑えられている。このことから、その画像形成ユニットは、放電開始電圧が比較的低くなって帯電電位Vdが目標帯電電位よりも高くなって、キャリア付着が発生し易くなっていると考えられる。このような画像形成ユニットでは、帯電バイアスVcをより小さな値(負極性のバイアスなので絶対値をより小さな値)に調整して、実際の帯電電位Vdを引き下げることで、キャリア付着の発生を抑える必要がある。
図17は、中間転写ベルト7に一次転写された地汚れパターン内被検領域の地汚れトナー量の検知結果と、想定地肌ポテンシャルとの関係の一例を示すグラフである。同図において、黒丸のプロット点が地汚れトナー量の検知結果である。この例では、地汚れパターン内被検領域の地汚れトナー量と、想定地肌ポテンシャルとの関係を示す特性が、図中の実線のような曲線になる。図示のように、この特性では、地汚れトナー量を、実施形態に係るプリンタにおいて設定されている限界付着量(=0.005mg/cm2)にする想定地肌ポテンシャルが192[V]になる。よって、帯電バイアスVcの絶対値を、この想定地肌ポテンシャルに対応する値と同等以上に設定すれば、地汚れトナー量を限界付着量以下に留めることができる。
同図において、一点鎖線で描かれた直線は、地汚れトナー量の全ての検知結果を用いて求めた、地汚れトナー量と想定地肌ポテンシャルとの関係を示す近似直線である。この近似直線は、周知の最小二乗法を用いて求められたものである。かかる近似直線を用いて、地汚れトナー量を限界付着量にする想定地肌ポテンシャルを特定すると、その値は図示のように181[V]になり、実際の192[V]よりも小さくなる。これは、地汚れトナー量を限界付着量にする帯電バイアスVcの値を実際よりも小さく見積もっていることを意味するので、一点鎖線の近似直線に基づいて帯電バイアスVcの値を決定すると、地汚れを引き起こすおそれがでてくる。
地汚れトナー量を限界付着量にする帯電バイアスVcの値を実際よりも小さく見積もってしまう理由は、次の通りである。即ち、地汚れトナー量と想定地肌ポテンシャルとの関係を示す特性曲線は、想定地肌ポテンシャルが比較的小さな値になる部分(高付着量部分)のグラフの傾きが比較的大きくなる。これに対し、想定地肌ポテンシャルが比較的大きな値になる部分(低付着量部分)のグラフの傾きが比較的小さくなる。限界付着量は後者の部分に存在するのに対し、全部分で近似直線を求めると、マイナスの誤差を引き起こし易くなるのである。
一方、同図において、二点鎖線で描かれた直線は、地汚れトナー量の全ての検知結果からなる検知データ群のうち、最小値=0.003から最大値=0.030までの範囲内にある検知結果だけを抽出した抽出データ群に基づいて求められた近似直線を示している。その範囲は、限界付着量である0.005も包含している。このような抽出データ群に基づいて求められた近似直線の傾きは、一点鎖線の近似直線に比べて、特性曲線における限界付着量付近での傾きに近くなる。このような近似直線に基づいて、地汚れトナー量を限界付着量にする想定地肌ポテンシャルを特定すると、その値は図示のように195[V]になり、実際の192[V]との誤差がごく僅かなものになる。よって、帯電バイアスVcの適正値をより精度良く求めることができる。
そこで、制御部30は、地汚れパターンにおける複数の地汚れパターン内被検領域の地汚れトナー量を検知した全てのデータからなる検知データ群の中から、下限値(=0.003)以上、上限値(=0.03)以内の範囲内のデータだけを抽出する。そして、図18に示されるように、抽出によって得られた抽出データ群を用いて、最小二乗法によって近似直線(地汚れトナー量−想定地肌ポテンシャル)を求める。なお、抽出データ群におけるデータ数が2つ以下であった場合には、直線近似ができないことから、帯電バイアス決定処理を終了する。
制御部30は、このようにして近似直線を求めたら、次に、その近似直線に基づいて、限界超え付着量となる想定地肌ポテンシャルを限界超え地肌ポテンシャルP1として特定する。限界超え付着量は、地汚れIDを許容範囲のギリギリに留める地汚れトナー量よりも僅かに多い値であり、予めの実験によって定められた定数である。そして、下限値と上限値との間の値になっている。換言すると、限界超え付着量を下限値と上限値との間にするように、下限値や上限値が定められている。実施形態に係るプリンタでは、限界超え付着量として、限界付着量よりも僅かに大きい0.006[mg/cm2]を採用している。
制御部30は、限界超え付着量となる限界超え地肌ポテンシャルP1を特定したら、帯電バイアス補正量βを次の式に基づいて求める。即ち、「β=P1−(P2−S1)」という式である。この式において、P2は、プロセスコントロール処理において求められた適正地肌ポテンシャル理論値である。プロセスコントロール処理では、その適正地肌ポテンシャル理論値P2に基づいて、プリント動作中の帯電バイアスVcの値が決定されている。前記式におけるS1は、所定のマージン量である。このマージン量S1は、予めの実験によって定められた定数である。適正地肌ポテンシャル理論値P2からマージン量S1を減じることは、限界超え地肌ポテンシャルP1に対してマージンS1を加算することを意味している。これにより、現状で地汚れトナー量を確実に許容範囲にする想定地肌ポテンシャルが求められる。
実施形態に係るプリンタでは、マージン量S1として20[V]を採用している。このため、例えば、適正地肌ポテンシャル理論値P2が160[V]であり、且つマージン量S1が20[V]であり、限界超え地肌ポテンシャルP1が180[V]である場合には、帯電バイアス補正量βは、次のようにして求められる。即ち、「β=180−(160−20)=40[V]」と求められる。なお、本プリンタでは、帯電バイアス補正量βの上限値を30[V]に設定していることから、帯電バイアス補正量βの算出結果がこの例のように40[V]になった場合には、帯電バイアス補正量βが上限値と同じ30[V]に補正される。
制御部30は、帯電バイアス補正量βを求めたら、プロセスコントロール処理で決定した帯電バイアスVcの値から帯電バイアス補正量βを減じることで、帯電電位Vdをほぼ目標帯電電位にすることが可能な値に帯電バイアスVcを補正する。なお、帯電バイアス補正量βがプラスの値である場合、帯電バイアスVcはよりマイナス側に大きな値に補正されることから、実際の地肌ポテンシャルがより大きくなって地汚れの発生が抑えられるようになる。これに対し、帯電バイアス補正量βがマイナスの値である場合、制御部30は、帯電バイアスVcを帯電バイアス補正量βの絶対値の分だけプラス側にシフトさせた値(絶対値を小さくした値)に補正する。これにより、実際の地肌ポテンシャルがより小さくなってキャリア付着の発生が抑えられるようになる。
図19は、感光体走行距離がある程度まで大きくなった感光体における帯電電位Vdと、感光体の軸線方向における位置との関係を示すグラフである。A3サイズの画像幅=300mmに対して、作像幅を320mmとし、10mm位置と、160mm位置と、310mm位置とに反射型フォトセンサーを設けて帯電電位Vdを測定した結果に基づいて作成されたものである。感光体の軸線方向においては、端部箇所のほうが中央箇所に比べて帯電電位Vdが低下しており、地汚れを発生させ易くなることがわかる。
図20は、感光体走行距離がある程度まで大きくなった画像形成ユニットの帯電ローラの電気抵抗と、帯電ローラの軸線方向における位置との関係を示すグラフである。感光体走行距離がある程度大きくなると、帯電ローラの軸線方向の端部がシリカ(トナー添加剤)で汚れることで、端部の電気抵抗が中央部よりも上がる。これにより感光体の10mm位置と、160mm位置と、310mm位置とで帯電電位Vdの偏差が生ずる。
そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、Y,C,M,Kの各色の地肌電位パターン部及び位置特定用トナー像の組み合わせを、感光体や帯電ローラの端部に対応するベルト幅方向端部に形成する。より詳しくは、各色についてそれぞれ、前述の組み合わせを、第1反射型フォトセンサー20aに対応するベルト幅方向一端部、又は第4反射型フォトセンサー20dに対応するベルト幅方向他端部に形成する。これにより、地汚れの発生を敏感に検知することができる。
なお、望ましくは、各色についてそれぞれ、前述の組み合わせをベルト幅方向一端部、ベルト幅方向他端部の両方に形成し、地汚れパターンの各被検領域のトナー付着量をそれぞれ一端部と他端部とで検知し、それらの平均値を求めることが望ましい。これにより、より適切な帯電バイアス補正量βを求めることができるようになる。
図14に示されるように、実施形態に係るプリンタでは、地肌電位パターン部を形成する際に、帯電バイアスVcを段階的に上昇させている。これは、帯電バイアスVcを絶対値の大きな値から小さな値に段階的に変化させることを意味しており(帯電バイアスVcがマイナス極性であることから下降するほど絶対値が大きくなる)、地肌ポテンシャルを段階的に小さくしていくことになる。つまり、各被検領域を地汚れトナー量の小さなものから順に帯電バイアスVcの設定によって感光体に形成していく。地汚れが発生するということは、僅かではあるものの、現像剤のトナーが消費されてトナー濃度を低下させていることになる。地汚れトナー量の少ない被検領域から順に感光体に形成していくことで、地肌電位パターン部の先端から後端までを形成する過程で現像剤のトナー濃度を少しずつ低下させていくようにしている。これにより、トナー濃度の低下に起因する被検領域に対する地汚れトナー量の不適切化を抑えて、地汚れ性能をより高精度に検出することができる。そして、トナーを多く消費する位置特定用トナー像を地肌電位パターン部よりも感光体表面移動方向の後側に形成することで、その現像タイミングを地汚れパターン後端部の現像タイミングよりも後にしている。これにより、位置特定用トナー像の現像によるトナー濃度の低下による地汚れ性能検出精度の低下を回避することができる。
また、位置特定用トナー像については、必ずしも、地肌電位パターン部よりも感光体表面移動方向の前側や後側に形成する必要はない。例えば、図21に示されるように、位置特定用のYトナー像を、Y地汚れパターンYJPに対してベルト幅方向(=感光体軸線方向)に並べて形成してもよい。図示の例では、第1反射型フォトセンサー20aによる検知位置を通るようにベルト幅方向の一端部に形成されたY地汚れパターンYJPの横に位置特定用のYトナー像YSTを形成している。そして、そのYトナー像YSTが第2反射型フォトセンサー20bによる検知位置に進入したタイミングに基づいて、一端部のY地汚れパターンYJPの各被検領域が第1反射型フォトセンサー20aによる検知位置に進入するタイミングを特定する。他端部のY地汚れパターンYJPの各被検領域が第4反射型フォトセンサー20dによる検知位置に進入するタイミングも特定する。かかる構成では、各被検領域の進入タイミングをより精度良く特定することができる。
また、地汚れトナー量と想定地肌ポテンシャルとの関係を示す近似直線を求める代わりに、地汚れトナー量と帯電バイアスVcとの関係を示す近似直線を求め、その近似直線に基づいて、帯電バイアスVcを決定するようにしてもよい。
また、地汚れパターンを形成する際に、現像バイアスVbを一定にした状態で帯電バイアスVcを段階的に変化させる例について説明したが、その逆に、帯電バイアスVcを一定にした状態で現像バイアスVbを段階的に変化させてもよい。
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
図22は、中間転写ベルト7に一次転写された地汚れパターン内被検領域の地汚れトナー量の検知結果と、想定地肌ポテンシャルとの関係の第二例を示すグラフである。この第二例では、前記関係を示す特性曲線(実線で描かれた曲線)が、比較的高い想定地肌ポテンシャルの領域でグラフの傾きを急激に小さくする特性になっている。この特性において地汚れトナー量を限界付着量(0.005)と同じにする想定地肌ポテンシャルは、図示のように158[V]である。
同図において、二点鎖線で描かれた直線は、実施形態と同様に、検知データ群のうち、最小値=0.003〜最大値=0.030の第一抽出範囲内にあるデータだけを抽出した第一抽出データ群に基づいて求めた近似直線である。この近似直線に基づいて地汚れトナー量を限界付着量と同じにする想定地肌ポテンシャルを求めると、図示のように、190[V]となり、実際の158[V]よりもかなり大きくなる。よって、実施形態と同様にして帯電バイアス補正量βを求めると、補正後の帯電バイアスVcを必要以上に大きくしてキャリア付着を発生させるおそれがある。
図中の一点鎖線で描かれた直線は、実施形態とは異なり、検知データ群のうち、最小値、最大値がともに第一抽出範囲の最小値、最大値よりも大きな値になっている第二抽出範囲内にあるデータだけを抽出した第二抽出データ群に基づいて求めた近似直線である。第二抽出範囲の最小値は0.010、最大値は0.050である。第二抽出データ群に基づいて求めた近似直線を用いて、地汚れトナー量を限界付着量と同じにする想定地肌ポテンシャルを求めると、図示のように、152[V]となり、実際の158[V]にかなり近い値になる。但し、先に示した図18のグラフのような特性曲線において、第二抽出データ群に基づいて求めた近似直線を用いて、地汚れトナー量を限界付着量と同じにする想定地肌ポテンシャルを求めると、結果が実際よりもかなり小さな値になる。このため、地汚れを引き起こすおそれがある。
キャリア付着の発生をできるだけ抑えるという観点からすれば、第二抽出データ群に基づいて求めた近似直線を採用することが望ましいが、図18のグラフのような特性曲線であると、地汚れを引き起こすおそれがでてくるのである。
そこで、実施例に係るプリンタの制御部30は、まず、第二抽出データ群に基づいて求めた第二近似直線(例えば一点鎖線の直線)を用いて、地汚れトナー量を限界超え付着量(0.006)と同じにする限界超え地肌ポテンシャルP1を求める。そして、「β=P1−(P2−S1)」という式に基づいて、帯電バイアス補正量βを求める。このとき、マージン量S1については、第二抽出データ群を用いる場合の20[V]よりも大きな90[V]を採用することで、地汚れ対策により有利な値にする。そして、適正地肌ポテンシャル理論値P2を帯電バイアス補正量βの分だけ補正した値を仮適正地肌ポテンシャルとして求める。
次に、制御部30は、実施形態と同様に、第一抽出データ群に基づいて第一近似直線(例えば二点鎖線の直線)を求める。そして、この第一近似直線に対し、仮適正地肌ポテンシャルを代入して求められる想定地肌ポテンシャルを仮限界付着量とする。この仮限界付着量と、実際に設定されている限界付着量(=0.005)とを比較した結果が、仮限界付着量>限界付着量であれば、第一近似直線を用いて求めた帯電バイアス補正量βを採用すると、補正量の不足によって地汚れを引き起こす可能性が高い。つまり、地汚れトナー量と想定地肌ポテンシャルとの関係を示す特性が、図18のグラフのような特性になっている可能性が高い。そこで、制御部30は、仮限界付着量>限界付着量である場合には、実施形態と同様に、第一近似直線に基づいて求めた帯電バイアス補正量βを採用する。
一方、仮限界付着量>限界付着量でない場合には、第二近似直線に基づいて求めた帯電バイアス補正量βを採用しても、地汚れを引き起こす可能性が低い。そこで、制御部30は、仮限界付着量>限界付着量でない場合には、第二近似直線に基づいて求めた帯電バイアス補正量βを採用する。これにより、図22のような高い想定地肌ポテンシャル領域で急激にグラフの傾きが小さくなる特性であっても、帯電バイアスVcの適正値を精度良く求めることができる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、潜像担持体(例えば感光体2)と、帯電バイアスを印加されながら前記潜像担持体の表面を帯電せしめる帯電手段(例えば帯電ローラ3)と、帯電後の前記表面に潜像を書き込む潜像書込手段(例えば光書込ユニット6)と、前記潜像を現像してトナー像を得る現像手段(例えば現像装置4)と、互いに異なる帯電バイアスによって帯電させた複数の被検領域を具備する地肌電位パターン部を前記潜像担持体の表面に形成し、前記現像手段との対向位置に通した複数の前記被検領域のトナー付着量を検知した結果に基づいて、画像形成動作中の帯電バイアスの値を決定する帯電バイアス決定処理を実施する制御手段(例えば制御部30)とを備える画像形成装置において、前記帯電バイアス決定処理にて、複数の前記被検領域のトナー付着量を検知して得た検知データ群の中から、所定の抽出範囲内にあるデータだけを抽出して前記帯電バイアスの決定に用いるように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
態様Aにおいて、地肌電位パターン部における複数の被検領域のトナー付着量を検知して得た検知データ群の中から、地汚れのトナー付着量について所定の許容限界を包含し且つ許容限界に近い所定の抽出範囲内にあるデータだけを抽出して帯電バイアスの決定に用いることができるので、検知データ群の全体を用いて帯電バイアスを決定する場合に比べて、帯電バイアスの適正値を精度良く決定することができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記帯電バイアス決定処理にて、前記検知データ群の中から、前記抽出範囲内にあるデータだけを抽出して得た抽出データ群に基づいて、トナー付着量と、前記潜像担持体の地汚れに影響を及ぼす所定のパタメータとの関係を示す近似直線を求め、この近似直線を用いて画像形成動作中の帯電バイアスの値を決定するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
態様Bにおいて、地肌電位パターン部における複数の被検領域のトナー付着量を検知して得た検知データ群の中からデータを抽出する際の抽出範囲として、地汚れのトナー付着量について所定の許容限界を包含し且つ許容限界に近い範囲を採用したとする。すると、帯電バイアス等の所定のパラメータと、トナー付着量との関係を示す特性グラフが非常に湾曲した湾曲グラフになった場合に、その湾曲グラフの全体を直線に近似するのではなく、全体における許容限界に近い湾曲箇所だけを直線に近似することになる。このような近似によって得た近似直線を用いることで、湾曲グラフの全体を直線に近似した近似直線を用いる場合に比べて、帯電バイアスの適正値を精度良く求めることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、前記帯電バイアス決定処理にて、前記抽出データ群としての第一抽出データ群とは別に、前記検知データ群の中から、前記抽出範囲としての第一抽出範囲よりも下限値、上限値のそれぞれが高い第二抽出範囲内にあるデータだけを抽出して第二抽出データ群を構築し、前記近似直線としての第一近似直線(例えば図22の二点鎖線で描かれた直線)とは別に、前記第二抽出データ群に基づいて前記関係を示す第二近似直線(例えば図22の一点鎖線で描かれた直線)を求め、前記第二近似直線に基づいて決定した帯電バイアスの適正値を前記第一近似直線に代入して前記適正値に対応するトナー付着量を求め、その結果が適正である場合には、前記第一近似直線に基づく値の代わりに、前記適正値を画像形成動作中の帯電バイアスの値として決定するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、実施例で説明したように、前記関係を示す曲線グラフが、その全域のうち、比較的低いトナー付着量の領域で傾きを急激に小さくする特性である場合であっても、帯電バイアスの補正不足による地汚れの発生を抑えることができる。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、前記帯電バイアス決定処理にて、前記適正値が不適正である場合には、前記第一近似直線に基づいて画像形成動作中の帯電バイアスの値を決定するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、実施例で説明したように、前記関係を示す曲線グラフが、そのの全域のうち、比較的低いトナー付着量の領域で傾きを急激に小さくしない特性である場合に、帯電バイアスの過剰な補正によるキャリア付着の発生を抑えることができる。
[態様E]
態様Eは、態様B〜Dの何れかにおいて、前記帯電バイアス決定処理にて、前記地肌電位パターン部を前記現像手段との対向位置に通して地汚れパターンを形成した後、前記地汚れパターンを中間転写体(例えば中間転写ベルト7)に転写し、前記中間転写体上の前記地汚れパターンにおける複数の前記被検領域のそれぞれに対応する複数の地汚れパターン内被検領域のトナー付着量をトナー付着量検知手段(例えば光学センサーユニット20)によって検知した結果に基づいて、画像形成動作中の帯電バイアスの値を決定するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、地汚れパターンの地汚れパターン内被検領域のトナー付着量を検知することで、潜像担持体の地肌電位パターン部における被検領域の地汚れトナー量を検知することができる。
[態様F]
態様Fは、態様Eにおいて、前記地汚れパターンとともに、所定の位置特定用トナー像を前記潜像担持体の表面に形成した後、前記地汚れパターン及び位置特定用トナー像を前記中間転写体に転写し、その後、トナー付着量検知手段の出力変化に基づいて前記位置特定用のトナー像を前記トナー付着量検知手段による検知位置に進入させたタイミングを特定し、この特定結果に基づいて複数の前記地汚れパターン内被検領域の前記検知位置への進入タイミングをそれぞれ特定する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成では、中間転写体上に地汚れパターンとともに形成した位置特定用のトナー像がトナー付着量検知手段による検知位置に進入すると、トナー付着量検知手段の出力値が大きく変化する。このため、トナー付着量検知手段の出力変化に基づいて、位置特定用のトナー像が検知位置に進入したタイミングを正確に測定することが可能である。この位置特定用のトナー像の近くに地汚れパターンを形成すれば、地汚れパターンの複数の地汚れパターン内被検領域が検知位置に進入したタイミングを正確に特定することが可能になる。これにより、地汚れパターンの複数の地汚れパターン内被検領域について検知位置への進入タイミングを精度良く特定することができないことに起因する地汚れやキャリア付着の発生を抑えることができる。
[態様G]
態様Gは、態様Fにおいて、前記地肌電位パターン部を形成する際に、前記帯電バイアスを大きな値から小さな値に段階的に変化させる処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様H]
態様Hは、態様Gにおいて、前記位置特定用のトナー像を、前記潜像担持体の表面における前記地肌電位パターン部よりも表面移動方向の後側に形成する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様I]
態様Iは、態様F〜Hの何れかにおいて、前記トナー付着量検知手段として、前記地汚れパターンの表面に沿いつつ前記地汚れパターンの移動方向と直交する方向である移動直交方向における互いに異なる位置でトナー付着量を検知する複数のトナー付着量検知手段を設け、且つ、前記帯電バイアス決定処理にて、それぞれのトナー付着量検知手段による検知結果を用いて前記帯電バイアスの値を決定する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様J]
態様Jは、態様F〜Iの何れかにおいて、前記地汚れパターンの全域のうち、前記地汚れパターンの表面に沿いつつ前記地汚れパターンの移動方向と直交する方向における端部付近の領域、のトナー付着量を検知するように、前記トナー付着量検知手段を配設したことを特徴とするものである。
[態様K]
態様Kは、態様A〜Iの何れかにおいて、環境を検知する環境検知手段(例えば環境センサー52)を設け、前記潜像担持体の表面移動距離の累積値と、前記環境検知手段による検知結果とに基づいて、前記帯電バイアス決定処理の実施タイミングを決定するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。